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特開2022-42817顔料分散剤組成物及びその製造方法、顔料分散液、並びに活性エネルギー線硬化型インクジェットインク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042817
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】顔料分散剤組成物及びその製造方法、顔料分散液、並びに活性エネルギー線硬化型インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20220308BHJP
   C09D 11/326 20140101ALI20220308BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220308BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
C09D17/00
C09D11/326
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/01 127
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148425
(22)【出願日】2020-09-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100220205
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 伸和
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 博之
(72)【発明者】
【氏名】村上 賀一
(72)【発明者】
【氏名】釜林 純
(72)【発明者】
【氏名】藤田 寿康
(72)【発明者】
【氏名】荒井 一孝
(72)【発明者】
【氏名】吉川 幸男
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J037
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FC01
2C056FD20
2C056HA44
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA08
2H186DA09
2H186FA07
2H186FB04
2H186FB13
2H186FB15
2H186FB36
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB56
2H186FB58
4J037AA02
4J037AA22
4J037AA30
4J037CC12
4J037CC17
4J037EE28
4J037FF23
4J037FF28
4J039AD21
4J039BA04
4J039BA13
4J039BA35
4J039BE01
4J039BE22
4J039BE27
4J039CA07
4J039EA06
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】ビニル系のモノマーに由来する構成単位を主体とする顔料分散剤を含みながらも、揮発性成分の含有量が大幅に低減されており、顔料の分散性に優れた顔料分散液及びインクを調製することができる、比較的容易に製造可能な環境配慮型の顔料分散剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリグリコール成分と、一般式(1)で表されるマクロモノマーに由来する構成単位(1)及び官能基含有ビニル系モノマーに由来する構成単位(2)を有するポリマー成分と、を含有し、ポリグリコール成分が、ポリアルキレングリコール等であり、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1質量%以下の顔料分散剤組成物である。
(Rは水素原子又はメチル基を示し、RはCHCH又はCHCHOCHCHを示し、m+n=20~100である)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CHCH、CHCH(CH)、及びCHCHCHCHからなる群より選択される少なくとも一種のアルキレン鎖を有する分子量1,000以上4,000以下のポリグリコール成分と、
下記一般式(1)で表される分子量1,000~4,000のマクロモノマーに由来する構成単位(1)50~80質量%、カルボキシ基含有ビニル系モノマー及びアミノ基含有ビニル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種の官能基含有ビニル系モノマーに由来する構成単位(2)5~25質量%、並びにその他のモノマーに由来する構成単位(3)0~45質量%を有する、数平均分子量5,000~20,000のポリマー成分と、を含有し、
前記ポリグリコール成分が、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキル(炭素数1~18)エーテル、及びポリアルキレングリコールジアルキル(炭素数1~4)エーテルからなる群より選択される少なくとも一種であり、
沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1質量%以下である顔料分散剤組成物。
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、RはCHCH又はCHCHOCHCHを示し、m+n=20~100である)
【請求項2】
前記ポリマー成分が、前記構成単位(1)、前記構成単位(2)、及び前記構成単位(3)の合計を基準として、連鎖移動剤に由来する構成単位(4)5質量%以下をさらに有する請求項1に記載の顔料分散剤組成物。
【請求項3】
前記連鎖移動剤が、ヨウ素、ドデカンチオール、及びチオグリセロールからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記ポリマー成分中の前記構成単位(4)の含有量が、前記構成単位(1)、前記構成単位(2)、及び前記構成単位(3)の合計を基準として、0.5~3質量%である請求項2に記載の顔料分散剤組成物。
【請求項4】
前記カルボキシ基含有ビニル系モノマーが、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、1-(メタ)アクリロイルオキシフタレート、及び1-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,4-ベンゼントリカルボン酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記アミノ基含有ビニル系モノマーが、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及びビニルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種であり、
前記その他のモノマーが、α-メチルスチレンである請求項1~3のいずれか一項に記載の顔料分散剤組成物。
【請求項5】
前記ポリグリコール成分が、プロピレンオキサイド単位を30質量%以上含む、25℃における粘度が2Pa・s以下の液体である請求項1~4のいずれか一項に記載の顔料分散剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の顔料分散剤組成物の製造方法であって、
前記ポリグリコール成分を重合溶剤とし、前記マクロモノマー及び前記官能基含有ビニル系モノマーを含むモノマー成分を、ラジカル発生剤の存在下、50℃以上の温度で重合する工程を有する顔料分散剤組成物の製造方法。
【請求項7】
活性エネルギー線硬化型インクジエットインクを製造するために用いられる顔料分散液であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の顔料分散剤組成物、顔料、及び光重合性モノマーを含有する顔料分散液。
【請求項8】
請求項7に記載の顔料分散液及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散剤組成物及びその製造方法、顔料分散液、並びに活性エネルギー線硬化型インクジェットインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インク、塗料、及びコーティング剤等の製品は、通常、有機溶剤を含有する塗工液である。このため、これらの製品の塗工後には有機溶剤が揮発するので、環境負荷が高いといった課題があった。このような課題を解決すべく、有機溶剤を実質的に含有しない環境配慮型の製品が提案されている。例えば、水を主要な媒体とする水性塗工液や、着色された樹脂粉末による粉体塗装等がある。さらに、ビニル系、エポキシ系、又はオキセタン系のモノマーを有機溶剤に代えて用いた塗工液であって、塗工後に熱や光でモノマーを重合して塗膜を形成する、揮発成分を実質的に含有しない、紫外線硬化型インクや電子線硬化型インク等の活性エネルギー線硬化型インク等が提案されている。
【0003】
近年、包装材や容器を印刷基材とする、パソコンから画像を直接送信して色鮮やかな印刷物をオンデマンドで得ることができる、顔料を着色剤とする紫外線硬化型のインクジェットインク(UVIJインク)が開発されている。このUVIJインクは、高速印刷に対応すべく、吐出性や顔料の分散安定性等の特性を向上させる必要がある。すなわち、顔料が安定して微分散されたUVIJインク用の顔料分散液が必要とされている。
【0004】
このような顔料分散液を得るために、界面活性剤のような低分子量の顔料分散剤の他、ポリマー型の高分子量の顔料分散剤が用いられている。なかでも、顔料の分散性及び分散安定性を向上させる観点から、ビニル系モノマーを重合して得られるポリマー型の顔料分散剤が頻繁に用いられている。なお、このようなポリマー型の顔料分散剤は、通常、有機溶剤に溶解及び希釈された溶液の状態で用いられている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-157077号公報
【特許文献2】特開2013-177580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2等で提案された顔料分散剤を用いて調製した顔料分散液には有機溶剤が含まれるので、この顔料分散液を用いて調製したUVIJインクにも、有機溶剤が含まれることになる。有機溶剤等の揮発性分を実質的に含有しない、環境配慮型の顔料分散剤を得るには、溶液重合等で得られるポリマー溶液から蒸留等によって有機溶剤を除去するといった操作が必要となる。このため、有機溶剤の除去工程が必要になる等、工程が複雑化及び煩雑化する等の不具合があった。
【0007】
また、有機溶剤を用いることなく重合して得られる、ポリエステルやポリアミド等の顔料分散剤がある。しかしながら、有機溶剤等の液媒体を使用せずにビニル系モノマーを主要な構成単位とする顔料分散剤を重合して製造することは困難である。さらに、固形分100%の状態で重合することも可能ではあるが、高圧及び高温条件に耐えうる特殊な押出機等の混錬機が必要となるので、汎用性に欠けるといった問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、ビニル系のモノマーに由来する構成単位を主体とする顔料分散剤を含みながらも、揮発性成分の含有量が大幅に低減されており、顔料の分散性に優れた顔料分散液及びインクを調製することができる、比較的容易に製造可能な環境配慮型の顔料分散剤組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の顔料分散剤組成物の製造方法、並びに上記の顔料分散剤組成物を用いて得られる顔料分散液及び活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、以下に示す顔料分散剤組成物が提供される。
[1]CHCH、CHCH(CH)、及びCHCHCHCHからなる群より選択される少なくとも一種のアルキレン鎖を有する分子量1,000以上4,000以下のポリグリコール成分と、下記一般式(1)で表される分子量1,000~4,000のマクロモノマーに由来する構成単位(1)50~80質量%、カルボキシ基含有ビニル系モノマー及びアミノ基含有ビニル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種の官能基含有ビニル系モノマーに由来する構成単位(2)5~25質量%、並びにその他のモノマーに由来する構成単位(3)0~45質量%を有する、数平均分子量5,000~20,000のポリマー成分と、を含有し、前記ポリグリコール成分が、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキル(炭素数1~18)エーテル、及びポリアルキレングリコールジアルキル(炭素数1~4)エーテルからなる群より選択される少なくとも一種であり、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1質量%以下である顔料分散剤組成物。
【0010】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、RはCHCH又はCHCHOCHCHを示し、m+n=20~100である)
【0011】
[2]前記ポリマー成分が、前記構成単位(1)、前記構成単位(2)、及び前記構成単位(3)の合計を基準として、連鎖移動剤に由来する構成単位(4)5質量%以下をさらに有する前記[1]に記載の顔料分散剤組成物。
[3]前記連鎖移動剤が、ヨウ素、ドデカンチオール、及びチオグリセロールからなる群より選択される少なくとも一種であり、前記ポリマー成分中の前記構成単位(4)の含有量が、前記構成単位(1)、前記構成単位(2)、及び前記構成単位(3)の合計を基準として、0.5~3質量%である前記[2]に記載の顔料分散剤組成物。
[4]前記カルボキシ基含有ビニル系モノマーが、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、1-(メタ)アクリロイルオキシフタレート、及び1-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,4-ベンゼントリカルボン酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種であり、前記アミノ基含有ビニル系モノマーが、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、及びビニルイミダゾールからなる群より選択される少なくとも一種であり、前記その他のモノマーが、α-メチルスチレンである前記[1]~[3]のいずれかに記載の顔料分散剤組成物。
[5]前記ポリグリコール成分が、プロピレンオキサイド単位を30質量%以上含む、25℃における粘度が2Pa・s以下の液体である前記[1]~[4]のいずれかに記載の顔料分散剤組成物。
【0012】
また、本発明によれば、以下に示す顔料分散剤組成物の製造方法が提供される。
[6]前記[1]~[5]のいずれかに記載の顔料分散剤組成物の製造方法であって、前記ポリグリコール成分を重合溶剤とし、前記マクロモノマー及び前記官能基含有ビニル系モノマーを含むモノマー成分を、ラジカル発生剤の存在下、50℃以上の温度で重合する工程を有する顔料分散剤組成物の製造方法。
【0013】
さらに、本発明によれば、以下に示す顔料分散液及び活性エネルギー性硬化性インクジェットインクが提供される。
[7]活性エネルギー線硬化型インクジエットインクを製造するために用いられる顔料分散液であって、前記[1]~[5]のいずれかに記載の顔料分散剤組成物、顔料、及び光重合性モノマーを含有する顔料分散液。
[8]前記[7]に記載の顔料分散液及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ビニル系のモノマーに由来する構成単位を主体とする顔料分散剤を含みながらも、揮発性成分の含有量が大幅に低減されており、顔料の分散性に優れた顔料分散液及びインクを調製することができる、比較的容易に製造可能な環境配慮型の顔料分散剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記の顔料分散剤組成物の製造方法、並びに上記の顔料分散剤組成物を用いて得られる顔料分散液及び活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<顔料分散剤組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の顔料分散剤組成物の一実施形態は、分子量1,000以上4,000以下のポリグリコール成分と、数平均分子量5,000~20,000のポリマー成分とを含有する。ポリグリコール成分は、CHCH、CHCH(CH)、及びCHCHCHCHからなる群より選択される少なくとも一種のアルキレン鎖を有する、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキル(炭素数1~18)エーテル、及びポリアルキレングリコールジアルキル(炭素数1~4)エーテルからなる群より選択される少なくとも一種である。また、ポリマー成分は、下記一般式(1)で表される分子量1,000~4,000のマクロモノマーに由来する構成単位(1)50~80質量%と、カルボキシ基含有ビニル系モノマー及びアミノ基含有ビニル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種の官能基含有ビニル系モノマーに由来する構成単位(2)5~25質量%と、その他のモノマーに由来する構成単位(3)0~45質量%とを有する。そして、本実施形態の顔料分散剤組成物は、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下である。以下、本実施形態の顔料分散剤組成物の詳細について説明する。
【0016】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、RはCHCH又はCHCHOCHCHを示し、m+n=20~100である)
【0017】
(ポリグリコール成分)
本実施形態の顔料分散剤組成物は、特定のモノマーをポリグリコール成分(以下、「ポリマー(1)」とも記す)中で重合してポリマー成分(以下、「ポリマー(2)」とも記す)を形成することで得ることができる、ポリグリコール成分と、顔料分散剤として機能するポリマー成分とを含有する、好ましくはポリグリコール成分及びポリマー成分のみを実質的に含有する組成物である。すなわち、ポリグリコール成分(ポリマー(1))は、重合溶剤として機能するとともに、顔料の濡れ性、レベリング性、塗膜の柔軟性、及び顔料分散性を向上させ、かつ、顔料分散助剤としての機能しうる成分である。ポリマー(1)は、重合溶剤としても機能しうる成分であることから、室温(25℃)~重合温度の範囲内で液状であるとともに、ポリマー成分(ポリマー(2))を含有する状態であっても混合撹拌が容易な粘度であることが好ましい。具体的には、ポリマー(1)の25℃における粘度は、10Pa・s以下であることが好ましい。
【0018】
ポリマー(1)は、CHCH、CHCH(CH)、及びCHCHCHCHからなる群より選択される少なくとも一種のアルキレン鎖を有する分子量1,000以上4,000以下、好ましくは2,000~3,000のポリグリコール成分である。ポリマー(1)の分子量が1,000未満であると、分子量が小さい揮発性成分を含む場合がある。一方、ポリマー(1)の分子量が4,000超であると、粘度が高くなりすぎる場合があるとともに、室温(25℃)~重合温度の範囲内で液状にならない場合がある。ポリマー(1)の分子量は、ポリマー(1)の水酸基価から算出される数平均分子量を意味する。
【0019】
ポリマー成分(1)は、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキル(炭素数1~18)エーテル、及びポリアルキレングリコールジアルキル(炭素数1~4)エーテルからなる群より選択される少なくとも一種である。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールランダムコポリマー、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールランダムコポリマー、ポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールランダムコポリマー、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリテトラメチレングリコールランダムコポリマー、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールポリプロピレングリコールトリブロックコポリマー、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコールトリブロックコポリマー等を挙げることができる。
【0020】
ポリアルキレングリコールモノアルキル(炭素数1~18)エーテルは、上記のポリアルキレングリコールの片末端のヒドロキシ基が炭素数1~18のアルキル基でエーテル化されたものである。炭素数1~18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、セチル基、オクタデシル基、ベヘニル基等を挙げることができる。
【0021】
ポリアルキレングリコールジアルキル(炭素数1~4)エーテルは、上記のポリアルキレングリコールの両末端のヒドロキシ基が炭素数1~4のアルキル基でエーテル化されたものである。両末端の炭素数1~4のアルキル基は、同一であっても異なっていてもよい。炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。
【0022】
ポリグリコール成分(ポリマー(1))は、プロピレンオキサイド単位を30質量%以上含む液体であることが好ましく、50~80質量%含む液体であることがさらに好ましい。また、ポリグリコール成分(ポリマー(1))は、25℃における粘度が2Pa・s以下の液体であることが好ましく、2Pa・s以下の液体であることがさらに好ましい。エチレンオキサイド単位やテトラメチレンオキサイド単位の含有量が多いポリマー(1)は固化しやすくなるので、取り扱い性が低下する傾向にある。一方、プロピレンオキサイド単位の含有量が多いポリマー(1)は固化しにくいので、室温でも液状となりやすく、取り扱い性に優れている。ポリグリコール成分(ポリマー(1))の25℃における粘度は、B型粘度計を使用し、粘度に合わせたローターを用いる方法によって測定される値である。
【0023】
ポリマー(1)は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、耐圧容器等を使用し、開始剤及び触媒の存在下、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、及びテトラヒドロフラン等のモノマーを室温(25℃)~200℃で冷却しながら重合することで、ポリマー(1)を得ることができる。開始剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等を用いることができる。触媒としては、水酸化ナトリウム、カリウムメチラート等のアルカリ金属を用いることができる。
【0024】
(ポリマー成分)
ポリマー成分(ポリマー(2))は、顔料を液媒体中に分散させる顔料分散剤として機能する成分であり、一般式(1)で表されるマクロモノマーに由来する構成単位(1)を50~80質量%、好ましくは55~75質量%有する。ポリマー(2)は、ポリマー(1)と近似した構造を有するマクロモノマーに由来する構成単位(1)を多く含むことから、ポリマー(1)と相溶しやすく、均一な混合溶液である顔料分散剤組成物とすることができる。また、ポリマー(2)は、カルボキシ基やアミノ基といった官能基を持った主鎖と、この主鎖にグラフトした、マクロモノマーに由来する構成単位(1)で形成されたグラフト鎖とを有する。官能基を持った主鎖が顔料に吸着するとともに、グラフト鎖が分散媒体に溶解することで、顔料粒子を反発させ、顔料分散液やインク等の保存安定性を高めることができる。また、ポリマー(2)は、マクロモノマーに由来する構成単位(1)を多く含むので、グラフト鎖の密度が高く、立体反発により顔料の分散安定性を高めることができる。
【0025】
マクロモノマーは、下記一般式(1)で表される分子量1,000~4,000、好ましくは分子量2,000~3,500のモノマーである。
【0026】
(前記一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、RはCHCH又はCHCHOCHCHを示し、m+n=20~100である)
【0027】
一般式(1)中、m+n=20~100であり、好ましくはm+n=30~75である。m+nの値が20未満であると、十分な立体障害を得ることができず、顔料の分散安定性を高めることが困難になる。一方、m+nの値が100超であると、分子量が大きすぎるので、顔料分散剤組成物や、それを用いて得られる顔料分散液の粘度が過度に上昇しやすく、取り扱い性が低下する。mとnの比は特に限定されないが、m>nの関係を満たすこと、すなわちオキシプロピレン単位を相対的に多く含有することが好ましい。m>nの関係を満たすマクロモノマーは液状になりやすいので、取り扱い性が向上する。
【0028】
マクロモノマーは、従来公知の方法で製造することができる。例えば、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートモノマーと、その片末端にアミノ基を有するポリアルキレングリコールモノメチルエーテルとを反応させることで製造することができる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート等を挙げることができる。上記の反応は無溶剤の条件下で実施することが、得られるマクロモノマーに低沸点溶剤が実質的に含まれなくなるために好ましい。
【0029】
ポリマー(2)は、カルボキシ基含有ビニル系モノマー及びアミノ基含有ビニル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種の官能基含有ビニル系モノマーに由来する構成単位(2)を5~25質量%、好ましくは10~20質量%有する。この構成単位(2)を含む官能基を持ったポリマー鎖が、分散対象となる顔料粒子に吸着する。ポリマー(2)中の構成単位(2)の含有量が5質量%未満であると、官能基の量が不足してしまい、顔料への吸着性が低下する。一方、ポリマー(2)中の構成単位(2)の含有量が25質量%超であると、官能基の量が多すぎるので、耐水性や耐酸・アルカリ性等の耐薬品性が低下する。
【0030】
カルボキシ基含有ビニル系モノマーとしては、スチレンカルボン酸、(メタ)アクリル酸、アクリル酸二量体、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレエート、1-(メタ)アクリロイルオキシフタレート、1-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,4-ベンゼントリカルボン酸エステル、1-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,4-ナフタレントリカルボン酸エステル等を挙げることができる。なかでも、汎用性、入手・合成容易性、及び顔料との親和性等の観点から、カルボキシ基含有ビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、1-(メタ)アクリロイルオキシフタレート、1-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,4-ベンゼントリカルボン酸エステルが好ましい。
【0031】
アミノ基含有ビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、(メタ)アクリルアミドジメチルアミノプロピル等を挙げることができる。なかでも、汎用性、入手・合成容易性、及び顔料との親和性等の観点から、アミノ基含有ビニル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、ビニルイミダゾールが好ましい。
【0032】
官能基含有ビニル系モノマーとしては、カルボキシ基含有ビニル系モノマーのみを用いてもよく、アミノ基含有ビニル系モノマーのみを用いてもよい。さらには、カルボキシ基含有ビニル系モノマーとアミノ基含有ビニル系モノマーを併用してもよい。
【0033】
ポリマー(2)は、前述のマクロモノマー及び官能基含有ビニル系モノマー以外のその他のモノマーに由来する構成単位(3)を0~45質量%有することが好ましく、5~40質量%有することがさらに好ましい。その他のモノマーとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソステアリル基、ベヘニル基、シクロヘキシル基、トリメチルシクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、ノニルフェノキシエチル基、グリシジル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、ジシクロペンテニロキシエチル基、イソボルニル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基等の置換基を有する単官能(メタ)アクリレート;ポリ(n=2以上)アルキレン(炭素数2~4)グリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)アルキレン(炭素数2~4)グリコールモノアルキル(炭素数1~22)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)ヒドロキシアルカン酸(炭素数5~18)モノ(メタ)アクリレート等のマクロモノマーであるポリマー型の(メタ)アクリレート;スチレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ビニルカプロラクトン、α-メチルスチレン、2,4-ジフェニル-1-ブテン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニル等のビニルモノマー;等を挙げることができる。
【0034】
ポリマー(1)を重合溶剤として使用し、このポリマー(1)中で特定のモノマーを重合してポリマー(2)を合成する際に、生成するポリマー(2)の分子量が大きくなりすぎると、得られる顔料分散剤組成物の粘度が過度に高くなり、固化しやすくなる場合もある。また、重合速度が速すぎて、低分子量のモノマーが優先的に重合し、マクロモノマーが残存しやすくなることもある。ここで、α-メチルスチレンをその他のモノマーとして用いると、重合性を適度に抑えて制御することができるために好ましい。
【0035】
ポリマー(2)を重合する際には、連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤を用いることで、重合反応を制御し、生成するポリマー(2)の分子量が過度に増大するのを抑制することができる。
【0036】
連鎖移動剤としては、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、ヒドロキシエチルチオール、オクチルチオール、ドデシルチオール、ステアリルチオール、チオグリセロール等のチオール系化合物;ブロモメチルアクリル酸、ブロモメチルアクリル酸エチル、ベンジルメチルアクリル酸エチル等のα置換アクリレート化合物;アイオドトリクロロメタン、ヨウ素等のハロゲン化合物;S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、メチルシアノイソプロピルトリチオカルボナート等のトリチオカーボネート;2-シアノプロピルジチオベンゾエート等のチオエステル;等を挙げることができる。なかでも、臭気が弱く、沸点が高い、ヨウ素、ドデカンチオール、及びチオグリセロールが好ましい。
【0037】
ポリマー(2)を重合する際に連鎖移動剤を用いることで、連鎖移動剤に由来する構成単位(4)がポリマー(2)中に含まれるようになる。ポリマー(2)中の構成単位(4)の含有量は、構成単位(1)、構成単位(2)、及び構成単位(3)の合計を基準として、5質量%以下であることが好ましく、0.5~3質量%であることがさらに好ましく、1~2.5質量%であることが特に好ましい。ポリマー(2)中の連鎖移動剤に由来する構成単位(4)の含有量が多すぎると、ポリマー(2)の分子量が小さくなりすぎることがある。また、臭気や着色が生じやすくなることがある。
【0038】
ポリマー成分(ポリマー(2))の数平均分子量は5,000~20,000であり、好ましくは7,000~15,000である。ポリマー(2)の数平均分子量が5,000未満であると、顔料の分散安定性が不足する場合がある。一方、ポリマー(2)の数平均分子量が20,000超であると、顔料分散剤組成物や顔料分散液の粘度が高くなりすぎてしまい、取り扱い性が低下する場合がある。ポリマー(2)の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。なお、顔料分散剤組成物中のポリマー成分(ポリマー(2))の含有量は、30~70質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
<顔料分散剤組成物の製造方法>
本発明の顔料分散剤組成物の製造方法の一実施形態は、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1質量%以下である、好ましくは実質的に含有しない前述の顔料分散剤組成物を製造する方法であり、ポリグリコール成分(ポリマー(1))を重合溶剤とし、マクロモノマー及び官能基含有ビニル系モノマーを含むモノマー成分を、ラジカル発生剤の存在下、50℃以上の温度で重合する工程(重合工程)を有する。
【0040】
重合工程では、ポリマー(1)を重合溶剤とし、マクロモノマー及び官能基含有ビニル系モノマーを含むモノマー成分を重合する。モノマー成分を重合することで、ポリマー成分(ポリマー(2))が形成され、ポリマー(1)ポリマー(2)を含有し、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1質量%以下である、目的とする顔料分散剤組成物を得ることができる。モノマー成分として、その他のモノマーや連鎖移動剤を必要に応じて用いることができる。なお、重合溶剤としてのポリマー(1)と、モノマー成分とを含む重合反応系は、液状である。
【0041】
ラジカル発生剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系ラジカル発生剤;過酸化ベンゾイル等の過酸化物;等を用いることができる。ポリマー(1)、モノマー成分、及びラジカル発生剤を含有する反応溶液を、ラジカル発生剤の分解温度以上の温度であり、かつ、反応溶液を容易に撹拌しうる温度、具体的には50℃以上に加温して重合する。重合時の温度が50℃未満であると、ラジカル発生剤の分解速度が遅くなるので、得られるポリマー成分(ポリマー(2))の分子量が過度に大きくなるとともに、モノマー成分が残存しやすくなる。また、反応溶液の粘度が高すぎてしまい、撹拌しにくくなる場合がある。重合時の温度は、60~100℃とすることが好ましい。
【0042】
反応溶液中のモノマー成分の含有量は、30~70質量%とすることが好ましく、40~70質量%とすることがさらに好ましい。反応溶液中のモノマー成分の含有量を上記の範囲とすることで、反応溶液を効率的に撹拌しやすくなるとともに、残存するモノマー成分の量を低減することができる。
【0043】
得られる顔料分散剤組成物に含まれる可能性のある成分のうち、残存モノマーの一部が、沸点250℃以下の有機化合物に該当する。本実施形態の顔料分散剤組成物の製造方法では、重合反応を十分に進行させて、残存モノマー等の沸点250℃以下の有機化合物を残さないように制御する。例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)等により反応溶液中の残存モノマーの量をモニタリングしながら重合反応を進行させればよい。これにより、沸点250℃以下の有機化合物の含有量を極力低減させた、目的とする顔料分散剤組成物を得ることができる。なお、ポリマー(1)及びポリマー(2)が水溶性ポリマーである場合、顔料分散剤組成物を水で希釈してもよい。これにより、沸点250℃以下の有機化合物を実質的に含有しない、環境に優しい水性の顔料分散剤組成物とすることができる。
【0044】
本実施形態の顔料分散剤組成物は、例えば、塗料、水性インクジェットインク等のインク、グラビアインキ、コーティング剤等の各種製品を製造するための顔料分散剤として有用である。なかでも、揮発性成分を実質的に含有しないことから、本実施形態の顔料分散剤組成物は、紫外線硬化型インクや電子線硬化型インク等のすべてが塗膜成分となる活性エネルギー線硬化型インクを製造するための顔料分散剤として好適である。特に、顔料を微分散させることが可能であるとともに、保存安定性も高いことから、本実施形態の顔料分散剤組成物は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを製造するための顔料分散剤として好適である。
【0045】
<顔料分散液>
本発明の一実施形態である顔料分散液は、活性エネルギー線硬化型インクジエットインクを製造するために用いられる顔料分散液であり、前述の顔料分散剤組成物、顔料、及び光重合性モノマーを含有する。
【0046】
顔料としては、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、97、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、175、180、181、185、191、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、73、C.I.ピグメントレッド4、5、9、23、48、49、52、53、57、97、112、122、123、144、146、147、149、150、166、168、170、176、177、180、184、185、192、202、207、214、215、216、217、220、221、223、224、226、227、228、238、240、242、254、255、264、269、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントホワイト6等を挙げることができる。
【0047】
なかでも、発色性、分散性、及び耐候性等の観点から、C.I.ピグメントイエロー74、83、109、128、139、150、151、154、155、180、181、185等の黄色顔料;C.I.ピグメントレッド122、170、176、177、185、269、C.I.ピグメントバイオレット19、23等の赤色顔料;C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、15:6等の青色顔料;C.I.ピグメントブラック7等の黒色顔料、C.I.ピグメントホワイト6等の白色顔料;がインクジェットインク用の顔料として好適である。
【0048】
顔料は、未処理の顔料であってもよく、その表面に官能基が導入された自己分散性顔料であってもよく、カップリング剤や活性剤等の表面処理剤やポリマーでその表面が処理された、又はカプセル化された処理顔料であってもよい。また、隠蔽力が必要とされる場合以外は、有機系の微粒子顔料が好ましい。さらに、高精彩で透明性の良好な画像を記録する場合には、ソルトミリング等の湿式粉砕又は乾式粉砕で微細化した顔料を用いることが好ましい。印刷時におけるノズル詰まりを回避すること等を考慮し、粒径1.0μm超の大きな粒子を除去し、平均粒子径0.2μm以下、無機顔料であれば平均粒子径0.4μm以下の顔料を用いることが好ましい。
【0049】
光重合性モノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマー、光硬化性オリゴマー、光硬化性ポリマー等の硬化成分を用いることができる。単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アダマンチルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、無水フタル酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物、アクリロイルモルホリン等のラジカル重合性モノマーを挙げることができる。
【0050】
多官能モノマー及び光硬化性オリゴマーとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(n=2以上)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(n=2以上)ジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパンジアクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロキシエチル)-ヒドロキシエチル-イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジエポキシと(メタ)アクリル酸とを反応させたエポキシジ(メタ)アクリレート等のエポキシポリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを反応させたウレタントリ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートと2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルジイソシアネートとポリ(n=6-15)テトラメチレングリコールとのウレタン化反応物に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させたウレタンジ(メタ)アクリレート等のウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンとコハク酸及び(メタ)アクリル酸とを反応させたポリエステル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンとコハク酸、エチレングリコール、及び(メタ)アクリル酸を反応させたポリエステル(メタ)アクリレート等のポリエステルポリ(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。
【0051】
光硬化性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエポキシ樹脂等のポリマーの末端や側鎖に、ラジカル重合性基である(メタ)アクリロイルオキシ基を複数導入したポリマー等を挙げることができる。さらに、カルボキシ基等を有する、アルカリ現像性を持たせた光硬化性ポリマーを用いることもできる。
【0052】
顔料分散剤液中の顔料の含有量は、有機顔料の場合は1~30質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがさらに好ましい。また、無機顔料の場合は、5~70質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。顔料分散液中、ポリマー成分(ポリマー(2))の含有量は、顔料100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、7.5~50質量部であることがさらに好ましい。ポリマー(2)の含有量が、顔料100質量部に対して5質量部未満であると、顔料の分散安定性が不十分になる場合がある。一方、ポリマー(2)の含有量が、顔料100質量部に対して100質量部超であると、粘度が過度に上昇しやすくなるとともに、インクジェットインクの吐出性が低下しやすくなり、形成される塗膜の物性や耐久性が低下することがある。
【0053】
本実施形態の顔料分散液は、従来公知の方法によって製造することができる。例えば、顔料、顔料分散剤組成物、及び光重合性モノマーを含有する混合物を、ペイントシェイカー、ボールミル、アトライター、サンドミル、横型メディアミル、コロイドミル、ロールミル等に入れ、顔料を微分散させることで、顔料分散液を調製することができる。なお、遠心分離機やフィルターを使用して粗大粒子を除去することが好ましい。必要に応じて、他の添加剤を添加してもよい。
【0054】
顔料分散液の粘度は、顔料の性質や、製造しようとする活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの粘度等を考慮して適宜調整すればよい。具体的には、有機顔料を用いた場合、顔料分散液の粘度は2~50mPa・sであることが好ましい。また、無機顔料を用いた場合、顔料分散液の粘度は5~100mPa・sであることが好ましい。
【0055】
<活性エネルギー線硬化型インクジェットインク>
本発明の一実施形態である活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(以下、単に「インク」とも記す)は、上述の顔料分散液及び光重合開始剤を含有する。
光重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトイン、ベンジル、ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどの硫黄化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド等のリン酸化合物;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1;カンファーキノン等を挙げることができる。照射する光の波長に応じて光重合開始剤の種類を選択すればよい。
【0056】
インクには、顔料分散液及び光重合開始剤以外の成分(その他の添加剤)をさらに含有させることができる。その他の添加剤とてしは、ニトロキサイド化合物等の光安定剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、染料、蛍光増白剤、レベリング剤、消泡剤、滑剤、増粘剤、帯電防止剤、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、黄変防止剤、ブルーイング剤、赤外線吸収剤、接着促進剤、防汚剤、撥水剤、硬化性触媒、シリカ等の無機フィラー、金属微粒子等を挙げることができる。但し、その沸点が250℃以下の有機化合物をその他の添加剤として用いないことが好ましい。
【実施例0057】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0058】
<顔料分散剤組成物の製造>
(実施例1)
(a)マクロモノマーの合成
反応容器に、片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコール(PPG/PEG)モノメチルエーテル共重合体(商品名「ジェファーミンM2005」、ハンツマン社製、アミン価(実測値)28.05mgKOH/g)(M2005)100部(0.05mol)を入れた。メタクリル酸2-イソシアナトエチル(商品名「カレンズMOI」、昭和電工社製)(MOI)7.76部(0.05mol)を水冷しながら、30分間かけて反応容器内に滴下した。滴下後、反応液の一部をサンプリングし、赤外分光法(IR)により、MOI由来のイソシアネート基がほぼ完全に消失し、尿素結合が生成したことを確認した。これにより、一般式(1)で表されるマクロモノマーMA-1が生成したことを確認した。テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した、マクロモノマーMA-1のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は3,500、分散度(PDI=Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))は1.19であった。また、0.1mol/L 2-プロパノール性塩酸溶液を用いる電位差自動滴定装置によって、マクロモノマーMA-1のアミン価を測定することはできなかった。
【0059】
(b)顔料分散剤(ポリマー(2))の合成
上記の反応容器に、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノブチルエーテル共重合体(商品名「ユニルーブ50MB-11」、日油社製、水酸基価56.1mgKOH/g、水酸基価から算出した分子量1,000)(50MB-11)139.6部、メタクリル酸メチル(MMA)20.0部、メタクリル酸(MAA)10.0部、及び1-チオグリセロール(TGL)1.5部を添加した。窒素バブリングさせながら70℃まで加温した後、2,2’-アゾビス(イソ酪酸ジメチル)(商品名「V-601」、富士フイルム和光純薬社製)(V-601)0.2部を添加して4時間重合した。V-601 0.1部をさらに添加し、70℃で4時間重合して顔料分散剤であるポリマー(2)を形成し、顔料分散剤(ポリマー(2))の含有量が50%である顔料分散剤組成物COV-1を得た。形成したポリマー(2)のMnは13,500、PDIは2.10であった。ヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析法(HS-GCMS)により定量した残存モノマー(MMA、MAA)の含有量は、いずれも0.2%未満であり、その他の沸点250℃以下の有機化合物の含有量は0.1%未満であった。残存モノマーは、塗料中の揮発性有機化合物の測定に関するISO17895に準拠した測定方法によって定量した。0.1mol/Lエタノール性水酸化カリウム溶液を用いる中和滴定により測定したポリマー(2)の酸価は、46.5mgKOH/gであった。
【0060】
(実施例2~5)
表1に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、顔料分散剤組成物COV-2~5を得た。いずれの顔料分散剤組成物についても、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1%以下であることを確認した。表1中の略号の意味は以下に示す通りである。
・MB-38:ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ユニルーブMB-38」、日油社製
・DMPEG:ポリエチレングリコールジメチルエーテル
・STE:ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノステアリルエーテル、商品名「ブラウノンSA-30/70 2000R」、青木油脂社製
・50MB-72:ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ユニルーブ50MB-72」、日油社製
・M41:片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル共重合体、商品名「ゲナミンM41/2000」、クラリアント社製
・BzMA:メタクリル酸ベンジル
・CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
・HOMS:2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート
・PAMA:1-メタクリロイルオキシエチルフタレート
・TMA:無水トリメリット酸とメタクリル酸2-ヒドロキシエチルの付加反応物
【0061】
【0062】
(比施例1及び2)
表2に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、顔料分散剤組成物H-1及びH-2を得た。いずれの顔料分散剤組成物についても、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1%以下であることを確認した。表2中の略号の意味は以下に示す通りである。
・DMFDG:ジプロピレングリコールエーテルジメチルエーテル、日本乳化剤社製
【0063】
【0064】
(実施例6)
前述の実施例1と同様にして、マクロモノマーMA-1を合成した。次いで、反応容器に、50MB-11 159.6部、MMA15.0部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA)35.0部、及びα-メチルスチレン(αMS)1.5部を添加した。窒素バブリングさせながら70℃まで加温した後、V-601 0.2部を添加して4時間重合した。V-601 0.1部をさらに添加し、70℃で4時間重合して顔料分散剤であるポリマー(2)を形成し、顔料分散剤(ポリマー(2))の含有量が50%である顔料分散剤組成物COV-6を得た。形成したポリマー(2)のMnは9,500、PDIは1.91、アミン価は78.4mgKOH/gであった。また、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1%以下であることを確認した。
【0065】
(実施例7)
(a)マクロモノマーの合成
反応容器に、M2005 100部(0.05mol)を入れた。加温して溶融させたポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(商品名「ブラウノンEL-1530」、青木油脂社製、分子量約1,500)(EL1530)148.3部を添加し、撹拌して均一化した後、室温まで冷却した。MOI 7.76部(0.05mol)を水冷しながら、30分間かけて反応容器内に滴下した。滴下後、反応液の一部をサンプリングし、IRにより、MOI由来のイソシアネート基がほぼ完全に消失し、尿素結合が生成したことを確認した。これにより、一般式(1)で表されるマクロモノマーMA-4が生成したことを確認した。マクロモノマーMA-4のMnは3,300、PDIは1.15であり、アミン価を測定することはできなかった。
【0066】
(b)顔料分散剤(ポリマー(2))の合成
上記の反応容器に、MMA15.0部、DEAEMA35.0部、及びαMS1.5部を添加した。窒素バブリングさせながら70℃まで加温した後、V-601 0.2部を添加して4時間重合した。V-601 0.1部をさらに添加し、70℃で4時間重合して顔料分散剤であるポリマー(2)を形成し、顔料分散剤(ポリマー(2))の含有量が50%である顔料分散剤組成物COV-7を得た。形成したポリマー(2)のMnは8,700、PDIは1.88、アミン価は49.0mgKOH/gであった。また、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1%以下であることを確認した。
【0067】
(実施例8~10)
表3に示す配合としたこと以外は、前述の実施例6と同様にして、顔料分散剤組成物COV-8~10を得た。いずれの顔料分散剤組成物についても、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1%以下であることを確認した。表3中の略号の意味は以下に示す通りである。
・MB-370:ポリプロピレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ユニルーブMB-370」、日油社製
・D-1200:ポリプロピレングリコール、商品名「ユニオールD-1200」、日油社製
・50MB-26:ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノブチルエーテル、商品名「ユニルーブ50MB-26」、日油社製
・EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル
・2-VP:2-ビニルピリジン
・4-VP:4-ビニルピリジン
・1-VI:1-ビニルイミダゾール
【0068】
【0069】
(比較例3及び4)
表4に示す配合としたこと以外は、前述の実施例6と同様にして、顔料分散剤組成物H-3及びH-4を得た。いずれの顔料分散剤組成物についても、沸点250℃以下の有機化合物の含有量が1%以下であることを確認した。表4中の略号の意味は以下に示す通りである。
・M600:片末端アミノ化ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールモノメチルエーテル共重合体、商品名「ジェファーミンM600」、ハンツマン社製
【0070】
【0071】
<紫外線硬化型インクジェットインク用の顔料分散液>
(実施例11~15、比較例5及び6)
(a)顔料分散液の製造
表5に示す種類及び量(部)の各成分を配合し、ディゾルバーを使用して2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、各色(イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(Bk)色、及び白(W)色)の顔料分散液を調製した。表5中、「シナジスト1」、「シナジスト2」、及び「シナジスト3」は、下記式(I)~(III)によってそれぞれ表される、塩基性基を有する色素誘導体である。また、表5中の略号の意味は以下に示す通りである。
・PY-150:商品名「レバスクリンエロー」、ランクセス社製
・PR-122:大日精化工業社製
・PB-15:4:大日精化工業社製
・カーボンブラック:MB-1000、三菱化学社製
・酸化チタン:商品名「JR-405」、テイカ社製
・BzA:アクリル酸ベンジル
・IBXA:アクリル酸イソボルニル
・PEA:アクリル酸2-フェニルエチル
・TBCHA:アクリル酸4-tert-ブチルシクロヘキシル
【0072】
【0073】
【0074】
(b)顔料分散液の評価
顔料分散液中の顔料の初期の粒子径、及び顔料分散液の初期の粘度を測定した。また、顔料分散液を70℃で1週間保存し、保存後の顔料の粒子径、及び顔料分散液の粘度を測定した。結果を表6に示す。顔料の粒子径は、動的光散乱式の粒子径分布測定装置(商品名「SZ-100」、堀場製作所社製)を使用して測定したメジアン径(D50)である。
【0075】
【0076】
実施例15で調製したW色顔料分散液-1を遮光したガラス瓶に入れ、60℃に設定した恒温槽内に1ヶ月間保存した。保存後の顔料分散液中の顔料の粒子径は237nmであり、保存後の顔料分散液の粘度は42.1mPa・sであった。これにより、保存によって物性はほとんど変化せず、高度な分散安定性が維持されていることがわかった。また、保存後の顔料分散液に上澄みはほとんど認められなかった。なお、若干粘稠な沈降物が僅かに確認されたが、振とうしたところ、元の顔料分散液の状態へと戻った。振とう後の顔料分散液中の顔料の粒子径は240nmであった。以上より、沈降により顔料の粒子径が僅かに大きくなったが、沈降物は容易に再度分散し、良好な分散状態に戻ることがわかった。
【0077】
(実施例16~20、比較例7及び8)
(a)顔料分散液の調製
表7に示す種類及び量(部)の各成分を用いたこと以外は、前述の実施例11~15、比較例5及び6と同様にして、各色の顔料分散液を調製した。表7中、「シナジスト4」、「シナジスト5」、及び「シナジスト6」は、下記式(IV)~(VI)によってそれぞれ表される、酸性基を有する色素誘導体である。
【0078】
【0079】
【0080】
(b)顔料分散液の評価
顔料分散液中の顔料の初期の粒子径、及び顔料分散液の初期の粘度を測定した。また、顔料分散液を70℃で1週間保存し、保存後の顔料の粒子径、及び顔料分散液の粘度を測定した。結果を表8に示す。
【0081】
【0082】
<紫外線硬化型インクジェットインク>
(実施例21~25、比較例9)
表9に示す種類及び量(部)の各成分を配合し、ディゾルバーを使用して十分に撹拌した。ポアサイズ10μm及び5μmのメンブランフィルターで順次ろ過し、紫外線硬化型インクジェットインクを得た。表9中、「ルシリンTPO」、「イルガキュア819」、及び「イルガキュア127」は、いずれもBASF社製の光重合開始剤の商品名である。いずれのインクもゲル化することなく、沈降物も生じなかった。
【0083】
【0084】
(実施例26~30)
表10に示す種類及び量(部)の各成分を用いたこと以外は、前述の実施例21~25、比較例9と同様にして、紫外線硬化型インクジェットインクを得た。いずれのインクもゲル化することなく、沈降物も生じなかった。
【0085】
【0086】
<紫外線硬化型インクジェットインクの評価>
調製した各インクをインクカートリッジにそれぞれ充填し、インクジェットプリンター(商品名「EB100」、コニカミノルタ社製)に取り付けた。このインクジェットプリンターを使用し、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに1時間連続してベタ画像を印刷した。その結果、いずれのインクについても、記録ヘッドのノズルに詰まりが生ずることなく、スムーズに印刷することができた。また、筋やヨレなどは全く認められず、吐出安定性は良好であった。
【0087】
また、上記のインクジェットプリンターを使用し、表面処理ポリプロピレン(OPP)フィルムにもベタ画像を印刷した。そして、PETフィルム及びOPPフィルムに印刷した画像にUVランプを使用して紫外線を照射し、塗膜を硬化させて各色の硬化画像を得た。各色の硬化画像にセロファンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン社製)を十分に押し当てた後に剥離した。画像の剥がれ具合を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって画像の密着性を評価した。結果を表11に示す。
◎:画像が全く剥がれなかった。
○:画像が僅かに剥がれた。
△:剥がれた面積の方が、剥がれなかった面積よりも小さかった。
×:剥がれた面積の方が、剥がれなかった面積よりも大きかった。
【0088】
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の顔料分散剤組成物及び顔料分散液は、環境に配慮した活性エネルギー線硬化型インクジェットインク用の顔料分散液を調製するための材料として有用である。また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、食品包装、電子部品包装、ラベル等の印刷用インクとして好適である。