(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042837
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】誤り率測定装置、及び誤り率測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/02 20060101AFI20220308BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20220308BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20220308BHJP
H04L 13/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G01R29/02 L
H04L1/00 C
H04L25/02 302A
H04L13/00 315A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148455
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】南 昂孝
【テーマコード(参考)】
5K014
5K029
5K035
【Fターム(参考)】
5K014GA02
5K014GA03
5K029KK23
5K029KK27
5K035EE04
5K035GG02
5K035KK04
(57)【要約】
【課題】ジッタ測定が正しく行えたかどうかを容易に判断することができ、正しく測定が行えていない場合には正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能な誤り率測定装置、及び誤り率測定方法を提供する。
【解決手段】誤り率測定装置1は、誤り率の測定範囲を規定する上限値と下限値を設定するパラメータ設定部7a、被測定信号として入力するデータとクロック信号の位相関係を操作しつつ被測定信号の誤り率を測定させる測定制御部7c、操作された位相関係と、測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき被測定信号のジッタ値を算出するジッタ測定制御部7e、バスタブ特性を示すグラフと、バスタブ曲線に関連付けて表された上限値及び下限値を示す情報と、を含むジッタ測定画面71を、表示部5に表示させる表示制御部7fを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定信号として入力するデータの誤り率の測定範囲を規定する上限値と下限値を設定する設定手段(6、7a)と、
前記データの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作手段(3a2、7b)と、
前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記誤り率を測定する誤り率測定手段(3b)と、
前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作手段により操作された前記位相関係と、前記誤り率測定手段により測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき前記被測定信号のジッタ値を算出するジッタ算出手段(7e)と、
前記バスタブ特性を示すグラフ(72a)と、前記グラフにおけるバスタブ曲線(72a1)に関連付けて表された前記設定手段により設定された前記上限値及び前記下限値を示す情報(72c、72d)と、を含むジッタ測定画面(71)を、表示部(5)に表示させる表示制御手段(7f)と、
を具備することを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記バスタブ曲線を近似する近似線(72b)をさらに表示することを特徴とする請求項1に記載の誤り率測定装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記近似線の傾きが規定の条件を満たしていない場合、前記ジッタ測定が正しく行われなかったことを報知する報知情報(73a)をさらに表示することを特徴とする請求項2に記載の誤り率測定装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記報知情報を、前記ジッタ算出手段により算出されたジッタ値の項目に対応付けて表示することを特徴とする請求項3に記載の誤り率測定装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記報知情報として、前記ジッタ測定が正しく行われなかったことを示す記号、若しくは文字の少なくともいずれか一方を表示することを特徴とする請求項3または4に記載の誤り率測定装置。
【請求項6】
前記表示制御手段は、前記報知情報を、特定の色、若しくは表示パターンのいずれか一方で表示することを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の誤り率測定装置。
【請求項7】
前記近似線の傾きが規定の条件を満たしていない理由として、設定された前記誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことを特定する手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことが特定された場合、前記ジッタ測定画面に表示されている前記誤り率の測定範囲を設定するツール(74e)に関連付けて前記誤り率の測定範囲の設定が狭過ぎることを報知する報知メッセージ(74f)をさらに表示することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の誤り率測定装置。
【請求項8】
前記理由として、設定された前記誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことを特定した場合、適正な誤り率測定範囲を推定する手段をさらに有し、
前記表示制御手段は、前記適正な誤り率測定範囲を設定することを促す再設定支援メッセージ(74g)を、前記報知メッセージに近接して表示することを特徴とする請求項7に記載の誤り率測定装置。
【請求項9】
被測定信号として入力するデータの誤り率の測定範囲を規定する上限値と下限値を設定する設定ステップ(S1)と、
前記データの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作ステップ(S5)と、
前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記誤り率を測定する誤り率測定ステップ(S6)と、
前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作ステップにより操作された前記位相関係と、前記誤り率測定ステップにより測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき前記被測定信号のジッタ値を算出するジッタ算出ステップ(S9)と、
前記バスタブ特性を示すグラフ(72a)と、前記グラフにおけるバスタブ曲線(72a1)に関連付けて表された前記設定ステップにより設定された前記上限値及び前記下限値を示す情報(72c、72d)と、を含むジッタ測定画面(71)を、表示部(5)に表示させる表示制御ステップ(S10、S20)と、
を有することを特徴とする誤り率測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定信号として入力されるデータとクロック信号の位相関係と、測定された誤り率との関係を示す、所謂、バスタブ特性に基づきジッタを測定して測定結果を表示する誤り率測定装置、及び誤り率測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやモバイル端末によるデータ通信量の増加に伴い、通信システムは膨大なデータを扱うようになり、通信システムを構成する各種の通信機器のインタフェースは高速化とシリアル伝送化が進んでいる。このような通信機器で採用されているPCIe(登録商標)(Peripheral Component Interconnect Express)などのハイスピードシリアルバス(High Speed Serial Bus)の規格では、LTSSM(Link Training and Status State Machine:「リンク状態管理機構」)と呼ばれるステートマシンにより、デバイス間の通信の初期化やリンク速度の調整などが管理されている。
【0003】
インタフェースの高速化が進む上記通信機器における信号の品質評価の指標の一つとして、受信データのうちビット誤りが発生した数と受信データの総数との比較として定義されるビット誤り率(Bit Error Rate:BER)が知られている。BER測定を行う誤り率測定装置の一般的な構成として、例えば、パルスパターン発生器(Pulse Pattern Generator:PPG)から規格が定める特定パターンを高速に切り替えて出力し、該特定パターンを受信した被試験対象(Device Under Test:DUT)が送出する被測定信号を誤り率測定器(ED)側で受信してビット誤り率を測定する構成が知られている。
【0004】
一方で、擬似ランダム(Pseudo-random bit sequence:PRBS)パターン等の各種デジタルデータの通信試験の分野では、単位インターバルuiでの遅延時間とビット誤り率(BER値)との関係を示す特性、いわゆるバスタブ特性からジッタのヒストグラムを求め、そのジッタヒストグラムからランダムジッタの推定値を得る技術(BERテスタ)が知られている(例えば、特許文献1。段落0004、0012、0028~0035、
図1、
図2参照)。
【0005】
今日、上述した誤り率測定装置においても、特許文献1に記載されたBERテスタのように、バスタブ特性からジッタを測定する機能を有するものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バスタブ特性からジッタを測定する機能を有する誤り率測定装置は、一般に、可変遅延器(
図3参照)によってクロック信号(Clock)と被測定信号として入力されるデータ(Data)の位相関係を操作しながら誤り率を測定し、ジッタの計算を実施する構成を有している。さらにこの種の誤り率測定装置は、例えば、上限値と下限値を指定し、誤り率の測定範囲を限定することで測定効率を上げることができるようになっている。
【0008】
近年、この種の誤り率測定装置においても、ビットレートの増加により誤り率測定に高い精度が求められるようになっており、誤り率測定範囲等の測定パラメータを正しく設定しないと精度の高い測定がますます困難になりつつある。
【0009】
このような状況下において、この種の従来の誤り率測定装置では、上限値と下限値に制限を設けずに誤り率の測定範囲を受け付け、しかも、誤り率の測定判範囲が絞り過ぎかどうかに拘わらずジッタの計算を可能とする構成を有していた。
【0010】
このため、従来の誤り率測定装置では、測定範囲を絞り過ぎることでバスタブ曲線中に十分な測定ポイントが得られないことがあり、そのような状態下でバスタブ測定が実施されることがあった。この場合、不確かなジッタ値が得られ、これがジッタ測定結果としてそのまま表示されてしてしまうこともあった。
【0011】
また、従来の誤り率測定装置では、誤り率の測定範囲を設定する項目が設けられているが、ジッタ測定結果を表示するジッタ測定画面が、ジッタ測定結果と同時に当該項目を表示する構成とはなっていなかった。このため、従来の誤り率測定装置では、ジッタ測定のための設定が正しいかどうかを目視によって確認することが困難であった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、ジッタ測定が正しく行えたかどうかを容易に判断することができ、正しく測定が行えていない場合には正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能な誤り率測定装置、及び誤り率測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る誤り率測定装置は、被測定信号として入力するデータの誤り率の測定範囲を規定する上限値と下限値を設定する設定手段(6、7a)と、前記データの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作手段(3a2、7b)と、前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと前記既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記誤り率を測定する誤り率測定手段(3b)と、前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作手段により操作された前記位相関係と、前記誤り率測定手段により測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき前記被測定信号のジッタ値を算出するジッタ算出手段(7e)と、前記バスタブ特性を示すグラフ(72a)と、前記グラフにおけるバスタブ曲線(72a1)に関連付けて表された前記設定手段により設定された前記上限値及び前記下限値を示す情報(72c、72d)と、を含むジッタ測定画面(71)を、表示部(5)に表示させる表示制御手段(7f)と、を具備することを特徴とする。
【0014】
この構成により、本発明の請求項1に係る誤り率測定装置は、ジッタ測定画面のグラフ上にバスタブ曲線に関連付けて表された上限値と下限値を示す情報を目安に、現在設定中の誤り率の測定範囲内にジッタの算出に十分な測定ポイントがあるかどうかを目視によって確認することができる。測定ポイントが少なく、測定が正しくできていないと判断される場合には、正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る誤り率測定装置は、前記表示制御手段は、前記バスタブ曲線を近似する近似線(72b)をさらに表示する構成であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明の請求項2に係る誤り率測定装置は、バスタブ曲線に沿って表示される近似線を目視によって確認でき、近似線の傾き具合から測定が正しく行われているどうかを推測可能になる。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る誤り率測定装置は、前記表示制御手段は、前記近似線の傾きが規定の条件を満たしていない場合、前記ジッタ測定が正しく行われなかったことを報知する報知情報(73a)をさらに表示する構成であってもよい。
【0018】
この構成により、本発明の請求項3に係る誤り率測定装置は、表示された報知情報によって、測定が正しく行われているどうかを容易に判断することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る誤り率測定装置は、前記表示制御手段は、前記報知情報を、前記ジッタ算出手段により算出されたジッタ値の項目に対応付けて表示する構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明の請求項4に係る誤り率測定装置は、表示された報知情報が対応付けられている項目を特定し、当該項目のジッタ値が正しい測定値ではないことを一目で認識することができる。
【0021】
また、本発明の請求項5に係る誤り率測定装置は、前記表示制御手段は、前記報知情報として、前記ジッタ測定が正しく行われなかったことを示す記号、若しくは文字の少なくともいずれか一方を表示する構成としてもよい。
【0022】
この構成により、本発明の請求項5に係る誤り率測定装置は、表示されている報知情報を発見し易く、測定が正しく行われているどうかについてもより判断し易くなる。
【0023】
また、本発明の請求項6に係る誤り率測定装置は、前記表示制御手段は、前記報知情報を、特定の色、若しくは表示パターンのいずれか一方で表示する構成であってもよい。
【0024】
この構成により、本発明の請求項6に係る誤り率測定装置は、表示色や、点灯あるいは点滅等の表示パターンによって報知情報がさらに発見し易くなり、測定が正しく行われているどうかをさらに判断し易くなる。
【0025】
また、本発明の請求項7に係る誤り率測定装置は、前記近似線の傾きが規定の条件を満たしていない理由として、設定された前記誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことを特定する手段をさらに有し、前記表示制御手段は、前記誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことが特定された場合、前記ジッタ測定画面に表示されている前記誤り率の測定範囲を設定するツール(74e)に関連付けて前記誤り率の測定範囲の設定が狭過ぎることを報知する報知メッセージ(74f)をさらに表示する構成としてもよい。
【0026】
この構成により、本発明の請求項7に係る誤り率測定装置は、報知メッセージを見ることでより広い誤り率の測定範囲への再設定が必要であることに容易に気付くことができ、報知メッセージが関連付けられているツールを用いて簡単に再設定を行うことができる。
【0027】
また、本発明の請求項8に係る誤り率測定装置は、前記理由として、設定された前記誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことを特定した場合、適正な誤り率測定範囲を推定する手段をさらに有し、前記表示制御手段は、前記適正な誤り率測定範囲を設定することを促す再設定支援メッセージ(74g)を、前記報知メッセージに近接して表示する構成であってもよい。
【0028】
この構成により、本発明の請求項8に係る誤り率測定装置は、報知メッセージに近接して表示された再設定支援メッセージをみることで、当該再設定支援メッセージで示唆されている範囲を、適正な誤り率の測定範囲として容易に再設定することが可能になる。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の請求項9に係る誤り率測定方法は、被測定信号として入力するデータの誤り率の測定範囲を規定する上限値と下限値を設定する設定ステップ(S1)と、前記データの入力に合わせて該データの2値判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を順次変動させて前記データと前記クロック信号の位相関係を操作する位相操作を行う位相操作ステップ(S5)と、前記位相操作を伴う前記2値判定の判定結果を用いて前記データのパターンと前記既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき前記誤り率を測定する誤り率測定ステップ(S6)と、前記誤り率の測定に合わせて、前記位相操作ステップにより操作された前記位相関係と、前記誤り率測定ステップにより測定された前記誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき前記被測定信号のジッタ値を算出するジッタ算出ステップ(S9)と、前記バスタブ特性を示すグラフ(72a)と、前記グラフにおけるバスタブ曲線(72a1)に関連付けて表された前記設定ステップにより設定された前記上限値及び前記下限値を示す情報(72c、72d)と、を含むジッタ測定画面(71)を、表示部(5)に表示させる表示制御ステップ(S10、S20)と、を有することを特徴とする。
【0030】
この構成により、本発明の請求項9に係る誤り率測定方法は、ジッタ測定画面のグラフ上にバスタブ曲線に関連付けて表された上限値と下限値を示す情報を目安に、現在設定中の誤り率の測定範囲内にジッタの算出に十分な測定ポイントがあるかどうかを目視によって確認することができる。測定ポイントが少なく、測定が正しくできていないと判断される場合には、正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、ジッタ測定が正しく行えたかどうかを容易に判断することができ、正しく測定が行えていない場合には正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能な誤り率測定装置、及び誤り率測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施形態に係る誤り率測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る誤り率測定装置の制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る誤り率測定装置の誤り率測定器における信号受信部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る誤り率測定装置での誤り率測定によって得られるバスタブ特性の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る誤り率測定装置での複数のバスタブ特性のデータセットから正常なデータセットのみ選別して行うジッタ算出処理イメージを示す図である。
【
図6】
図4に示すバスタブ特性におけるバスタブ曲線の近似線の傾きによって定義されるランダムジッタRJ
rmsを説明するための模式図である。
【
図7】ジッタ測定に際して誤り率の測定範囲として設定可能な誤り率(BER)とQ(BER)値との関係を示す表図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る測定装置によるジッタ測定制御動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る測定装置によるジッタ測定画面の表示制御動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態に係る測定装置によるジッタ測定画面の表示例を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る測定装置による変形例に係るジッタ測定画面の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る誤り率測定装置、及び誤り率測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、パルスパターン発生器(Pulse Pattern Generator:PPG)2、誤り率測定器(Error Detector:ED)3、記憶部4、表示部5、操作部6、制御部7を備えて構成される。
【0035】
誤り率測定装置1は、操作部6による所定の測定開始操作に基づいてPPG2から任意のパルスパターンを有する試験信号を発生させ、該試験信号を受信したDUT10が送出する信号を被測定信号としてED3に入力して該被測定信号のビット誤り率を測定することでDUT10の性能評価を行う装置である。
【0036】
特に、本実施形態では、ED3が、被測定信号として入力するデータ(以下、入力データ)と、該入力データの2値判定(1か0かの判定)の処理に用いるクロック信号との位相関係をユーザ操作に応じて操作する位相操作制御機能を有している。また、ED3は、位相操作制御機能によって操作された入力データとクロック信号の位相関係(クロック遅延量)と、測定された誤り率との関係を示す特性、所謂、バスタブ特性を算出するとともに、算出したバスタブ特性に基づいて入力データのジッタを求めるジッタ算出処理機能をさらに有している。
【0037】
(ジッタについて)
ジッタは、ディジタル信号の時間軸方向の揺らぎである。この揺らぎの周期が長周期である時、具体的には変調周波数が10Hz以上の変調周波数で揺らぎが発生する場合にジッタと定義される。ジッタは様々なジッタ成分から構成されている。上述したTJは広がりが有限なDJと、無限な広がりを持つRJで構成されている。
【0038】
ジッタ量の単位には、ns(ナノ(10-9)秒)、ps(ピコ(10-12)秒)、fs(フェムト(10-15)秒)等の時間単位のほか、ユニットインターバル(Unit Interval:UI)が用いられる。UIとは、1bitあたりのジッタ量の比率で、Jitter量をTj[ps]、1bit の間隔を Tbit [ps]としたとき、下式(a)によって算出される。
Jitter[UI] = Tj /Tbit ・・・ (a)
【0039】
これにより、例えば、10Gbit/sの信号であれば、1bitの間隔は100psとなる。この信号に10psのジッタが存在すれば、ジッタ量は0.1UIと算出されることとなる。なお、バスタブ特性、及びバスタブ特性に基づくジッタ算出処理については後で
図4から
図8を参照して詳述する。
【0040】
性能評価の対象(被測定対象)であるDUT10は、背景技術の欄で挙げたインタフェースの高速化が進む通信機器等に用いられる、例えば、フリップフロップ(F/F)回路等の各種デバイスで構成されている。性能評価の種別は有線系に限られるものであり、DUT10は、PPG2及びED3と接続ケーブル等を用いて有線接続され、PPG2からの試験信号を受信し、その応答信号としての所定の規格の被測定信号をED3に送出する。DUT10が対応する規格の例としては、OIF CEI-56G-VSR-PAM4、IEEE802.3bs、PCI Express Gen6、CEI(Common Electrical Interface)、Ethernet(登録商標)などが挙げられる。DUT10は、ビット列からなるデータを表す信号を送信するものであれば、上述したF/F回路等以外のデバイスで構成されていてもよい。
【0041】
図1に示す誤り率測定装置1の構成において、PPG2は集積回路などによって構成される信号送信部2a、RAMなどのメモリによって構成されるデータ記憶部2bを有している。
【0042】
データ記憶部2bは、例えば128Mビットサイズからなる基準になるデータを予め記憶している。信号送信部2aは、データ記憶部2bから読み込んだデータを表す信号をDUT10に送信するようになっている。
【0043】
ED3は、信号受信部3a、誤り率測定部3bを有している。信号受信部3aは、DUT10から送信された被測定信号を受信し、受信した信号の入力データを誤り率測定部3bに出力するものであり、例えば、
図3に示すように、0/1判定器3a1、可変遅延器3a2を有している。
【0044】
0/1判定器3a1は、DUT10からの入力データ(被測定信号)を可変遅延器3a2から与えられるクロック信号に基づいて1または0の2値判定を行う。可変遅延器3a2は、入力データの2値判定の処理に用いる上記クロック信号の遅延量を順次変動させることにより、所定の位相範囲を対象に入力データとクロック信号の位相関係を操作する位相操作機能を有している。具体的に、可変遅延器3a2は、上記クロック信号を入力し、位相操作制御部7b(
図2参照)からの遅延量の操作に基づいてクロック信号を遅延させて0/1判定器3a1に出力する。可変遅延器3a2は、位相操作制御部7bとともに、本発明の位相操作手段を構成する。
【0045】
かかる構成により、信号受信部3aでは、ユーザ操作に基づいてクロック遅延量(クロック信号とデータの位相関係)が操作され、そのときのクロック遅延量に応じて入力データの0/1判定器3a1による2値判定結果を誤り率測定部3bに出力する動作を行う。クロック遅延量の操作は、例えば、初期値から1周期の範囲で動かすように実施することができる。本実施形態に係る誤り率測定装置1では、クロック遅延量を初期値から1周期の範囲で動かして入力データの誤り率を測定することを1掃引と定義している。
【0046】
ED3において、誤り率測定部3bは、本発明の誤り率測定手段を構成するものであり、同期検出部3b1、比較部3b2を有している。同期検出部3b1は、データ記憶部2bから読み込んだ基準となるデータ(参照信号)と、受信した入力データとの同期を取る処理を実施し、同期が取れた場合にはその旨を比較部3b2へ通知する。
【0047】
比較部3b2は、例えば、排他的論理和回路(EX-OR)により構成され、同期検出部3b1から入力されるデータのパターン、すなわち、信号受信部3aによる被測定信号の2値判定信号のビットそれぞれと、上記参照信号(既定のパターン)とをシンボル(ビット)ごとに比較することにより、被測定信号のレベルと参照信号のレベルとが相違するビットエラーを測定する。2値信号と参照信号とのシンボルごとのビットの比較結果は、比較データとして記憶部4の所定の記憶領域に順次格納されるようになっている。ここで誤り率測定部3bは、上記比較データに基づき、全シンボル数に対するエラーとなったビットの割合を誤り率として算出し、算出した誤り率のデータを記憶部4にさらに記憶する構成であってもよい。
【0048】
記憶部4はまた、制御部7を構成する後述のパラメータ設定部7a、位相操作制御部7b、測定制御部7c、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7e、表示制御部7fを実現するためのプログラムや、上記各機能部がDUT10からの被測定信号の誤り率を測定するために必要な各種情報を記憶する。
【0049】
表示部5は、例えば液晶表示器などで構成され、BER測定に関わる設定画面や測定結果(ジッタ測定画面等)などを表示する。
【0050】
操作部6は、例えば操作ノブ、各種キー、スイッチ、ボタンや表示部5の表示画面上のソフトキーなどで構成される。操作部6は、ビット誤り率測定、ジッタ測定を行うための各種設定項目の設定、DUT10の測定開始や停止の指示、誤り率測定、ジッタ測定などの種々の動作制御を係る操作機能を有している。操作部6は、パラメータ設定部7aともに本発明の設定手段を構成する。
【0051】
制御部7は、上述した各種デバイスをDUT10としてビット誤り率(BER)を含む各種測定を行う際にPPG2、ED3、表示部5、操作部6を統括制御する。
【0052】
制御部7は、例えば
図2に示すように、パラメータ設定部7a、位相操作制御部7b、測定制御部7c、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7e、表示制御部7fを有している。
【0053】
パラメータ設定部7aは、バスタブ特性に基づくジッタ測定を行うための各種のパラメータを設定するものである。この種のパラメータとしては、測定対象の信号の規格、誤り率の測定範囲、位相操作パターン(クロック遅延量)、誤り率を算出するための位相操作の掃引回数(バスタブ特性の1データセットを得るために行う一連の位相操作を一掃引とする)などが挙げられる。
【0054】
位相操作制御部7bは、表示部5でのユーザ操作に基づいて信号受信部3aの可変遅延器3a2を制御し、入力データとクロック信号との位相関係を操作(変動)させる制御を行うようになっている。
【0055】
測定制御部7cは、設定された測定パラメータに基づいてPPG2から指定された規格のパルスパターンを有する試験信号を発生させ、該試験信号を受信したDUT10が送出する信号を被測定信号としてED3に入力して該被測定信号のビット誤り率を測定する誤り率測定制御を実行するとともに、誤り率測定に合わせてジッタを測定するジッタ測定のためのバスタブ特定算出部7d、ジッタ測定制御部7eの統括的な制御を行う。本実施形態において、測定制御部7cは、可変遅延器3a2、及び誤り率測定部3bを制御し、入力する入力データとクロック信号の位相関係を操作させつつ被測定信号の誤り率を測定する測定動作を実行させる制御を行う。
【0056】
バスタブ特性算出部7dは、位相操作制御部7bにより操作されるクロック遅延量と誤り率測定部3bでのビット誤り率測定結果との対応関係を示すバスタブ特性を算出するための演算機能部である。
【0057】
ジッタ測定制御部7eは、バスタブ特性算出部7dにより算出されたバスタブ特性に基づき、該バスタブ特性におけるバスタブ曲線部分を近似する近似線を規定し、該近似線の傾きによって定義されるジッタを算出するジッタ算出処理機能を有する。ジッタ測定制御部7eは、本発明のジッタ算出手段を構成している。
【0058】
表示制御部7fは、測定制御部7cの制御に基づく測定動作中のビット誤り率の測定結果、ジッタ測定結果、その他の各種情報を、表示部5に表示させる制御を行うものである。本実施形態において、表示制御部7fは、ジッタ測定制御部7eにより算出されたバスタブ特性を示すグラフ72aと、グラフ72aにおけるバスタブ曲線72a1に関連付けて表された誤り率の測定範囲の上限値及び下限値を示す情報72c、72dと、を含むジッタ測定画面71(
図11参照)を表示させる表示制御機能を有している。表示制御部7fは、本発明の表示制御手段を構成している。
【0059】
制御部7は、CPU(Central Processing Unit)、CPUを立ち上げるためのOS(Operating System)やその他のプログラム及び制御用のパラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUが動作に用いるOSやアプリケーションの実行コードやデータ等を記憶するRAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置などの不揮発性の記憶媒体などを有する。制御部7において、パラメータ設定部7a、位相操作制御部7b、測定制御部7c、バスタブ特性算出部7d、ジッタ測定制御部7e、表示制御部7fは、CPUがRAMの作業領域でROMに格納された所定のプログラムを実行することにより実現される。
【0060】
上記構成を有する誤り率測定装置1において、制御部7では、誤り率測定部3bでの被測定信号の誤り率の測定に合わせて、バスタブ特性算出部7dが被測定信号のバスタブ特性を算出し、ジッタ測定制御部7eがそのバスタブ特性からランダムジッタ(Random Jitter:RJ)と確定的ジッタ(Deterministic Jitter:DJ)とを分離して算出できるようになっている。
【0061】
バスタブ特性算出部7dにより算出される被測定信号のバスタブ特性の一例を
図4に示している。
図4において、横軸はDelay、すなわち、クロック遅延量(クロック信号と入力データの位相関係)を示し、縦軸は誤り率(BER値)を例えば対数log10(BER)により示している。
【0062】
図4におけるクロック遅延量の変動操作(同図の左端から右端に向けて動かす操作)は、位相操作制御部7bによる信号受信部3aの可変遅延器3a2に対する位延操作制御により行われる。位相操作制御は、入力データとクロック信号の位相関係(クロック遅延量)を例えば1周期の間隔で細かく操作する(動かす)ことができるようになっている。これにより、クロック遅延量を例えば初期値から1周期の範囲で決められた値(クロック遅延量)で動かしつつ、誤り率測定部3bでは、個々のクロック位相に対応する誤り率を測定することが可能となる。
【0063】
上述したクロック遅延量(Delay)の操作に対して、誤り率測定部3bで測定されるBER値を対応付けてグラフとして表すと、
図4に示すように、クロック遅延量を初期値から次第に大きくしていく過程で、例えば黒丸で示される各測定ポイントでのBER値が次第に小さくなっていく区間(第1の区間)と、その後、クロック遅延量を最終周期(1周期に相当する)までさらに大きくしていく過程で各測定ポイントでのBER値が次第に大きくなっていく区間(第2の区間)が現れるようになっている。第1の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線と、第2の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線とは左右対称であり、両者を合わせるとバスタブ形状をなしている。このため、
図4に示す一連のクロック遅延量対誤り率の特性は、一般にバスタブ特性と呼ばれている。本実施形態においても同様であり、以下、第1の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線、第2の区間における測定ポイントの集まりが描く曲線を、それぞれ、第1のバスタブ曲線、第2のバスタブ曲線と呼称するものとする。
【0064】
図4に示すバスタブ特性において、第1のバスタブ曲線、第2のバスタブ曲線に対しては、共に、それぞれの曲線を近似する近似線が引かれている。第1のバスタブ曲線の近似線は、例えば、log10(BER)=a1x+b1で表され、第1のバスタブ曲線の近似線は、例えば、log10(BER)=a2x+b2で表される。
【0065】
また、このバスタブ特性においては、縦軸における任意のBER値が、それぞれ、BER0、BER1、BERU、BERLとして指定されている。ここで、BER0は、確定的ジッタDJの推定に使用する基準誤り率であり、BER1はトータルジッタTJの推定に使用する基準誤り率である。BER0、BER1は、事前に決められている。
【0066】
BER
Uは、ジッタの計算に使用する誤り率の測定範囲の上限値であり、BER
Lは、ジッタの計算に使用する誤り率の測定範囲の下限値である。BER
U、BER
Lは、ジッタ測定に際してユーザが設定するようになっている(
図8のステップS1参照)。ジッタ測定に際して誤り率の測定範囲として設定可能な誤り率(BER)とQ(BER)値との関係を
図7に示している。
【0067】
ジッタ測定制御部7eは、ユーザによって設定された上限値BERUと下限値BERLとにより規定される誤り率の測定範囲としてジッタ算出処理を実施するようになっている。これにより、BER0からBER1までの範囲でBER測定を行う場合に比べて処理負荷及び処理時間を低減することができる。
【0068】
図4に示すバスタブ特性に基づいてランダムジッタRJ、確定的ジッタDJを算出する手法の一例として、以下に示す式(1)から式(4)を用いる方法が挙げられる。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0069】
式(1)において、NOM.INV(確率、平均、標準偏差)は、正規分布の累積分布関数の逆関数の値に対応するものである。TDは、Mark Ratioを表し、具体値としては例えば、1/2が設定されている。
【0070】
図4に示すバスタブ特性において、BER
U、及びBER
Lが設定されているときに、最小2乗法によって求められる上述した各近似線の係数a1、b1、a2、b2は、当該バスタブ特性について規定される図中のT
L、T
Uを用いて以下の式(5)及び式(6)で表すことができる。
【数5】
【数6】
【0071】
上記式(2)で表されるランダムジッタRJ
rmsは、上記式(5)、式(6)を代入することにより、下式(7)で表すことができる。式(7)によってランダムジッタRJ
rmsを算出可能であることは
図6の模式図からも理解できる。
【数7】
【0072】
さらにFを定義することにより、下式(8)から下式(10)を導くことができる。
【数8】
【数9】
【数10】
【0073】
上記式(10)において、(1/a1-1/a2)という係数は、近似線の傾きを示している。以上の式変換から、ランダムジッタRJrmsは以下2点の特質を有することが分かる。1つ目の特質は、F(BERL,BERU)は測定条件から決まる固定の係数である点であり、2つ目の特質は、2本の近似線の傾きの逆数からランダムジッタRJrmsを算出することができる点である。したがって、バスタブ測定においては、近似線の傾きを求めることが重要であることを理解することができる。
【0074】
さらに、確定的ジッタDJ、及びトータルジッタTJは、ランダムジッタRJ
rmsを用いて下式(11)、(12)により算出可能である。
【数11】
【数12】
【0075】
次に、本実施形態に係る誤り率測定装置1におけるジッタ測定の概略手順について
図5を参照して説明する。
図5に示すように、本実施形態に係る誤り率測定装置1では、規定回数の掃引により得られるバスタブ特性に関する複数のデータセットから正常でないデータセットを排除し、正しいデータセットのみを選別して該選別されたデータセットに基づいてジッタを算出するようになっている。
【0076】
1つのバスタブ特性を得る手順としては、それぞれ、Delayを初期値から1周期の範囲で動かして誤り率を測定する。ここでDelayを初期値から1周期の範囲で動かして誤り率を測定することを1掃引と定義し、1掃引によって得られたクロック信号とデータの位相関係と誤り率の関係をデータセットと定義する。
【0077】
バスタブ特性算出部7dは、可変遅延器3a2、位相操作制御部7bと協働して、
図5に示すように1掃引を複数回行うことで複数のデータセットを得ることができる。
図5の例では、5掃引を実施して5つのデータセットを得られる様子を示している。ここでバスタブ特性算出部7dは、バスタブ特性を正しく測定できないNGの要件を定義しておくことで、得られたデータセットがNGの要件を満たす場合には当該データセットを削除し、NGの要件に該当しないデータセットを残す選別機能を有する構成であってもよい。
図5においては、6掃引を実施して得られた6つのデータセットのうちの一つが上記選別機能によってNGと判定されて削除され、残された5つのデータセットを用いてジッタを算出する際の処理イメージを示している。
【0078】
ジッタ測定制御部7eは、残された4つのデータセットを用い、統計処理によってランダムジッタRJ、確定的ジッタDJ、トータルジッタTJ等の各種ジッタを計算する機能構成となっている。
【0079】
次に、誤り率測定装置1におけるジッタ測定制御動作について
図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0080】
誤り率測定装置1においてジッタ測定処理を行うにはまず、ユーザが操作部6を操作して所望の測定パラメータの値を入力し、パラメータ設定部7aがその入力された値を有する測定パラメータを設定する(ステップS1)。設定する測定パラメータとしては、試験信号の規格、誤り率の測定範囲、クロック信号の位相操作パターン、バスタブ測定の実施回数(掃引回数)が挙げられる。
【0081】
試験信号の規格は、例えば、各種パターン長を有する擬似ランダム(Pseudo Random Binary Sequence:PRBS)パターンの中から所望する一つのパターンを選択的に指定することで設定する。誤り率の測定範囲は、上限値(BERU)と下限値(BERL)を指定することで設定する。クロック信号の位相操作パターンとしては、変動させる単位位相量、1掃引の周期等を設定する。バスタブ測定の掃引回数は、例えば、5回等、任意の回数を設定する。
【0082】
測定パラメータの設定完了後、測定制御部7cは、ジッタ測定を開始することを指示するジッタ測定開始操作が行われたか否かを監視する(ステップS2)。ここでジッタ測定開始操作が行われてないと判定された場合(ステップS2でNO)、測定制御部7cは上記監視を続行する(ステップS2)。
【0083】
これに対し、ジッタ測定開始操作が行われたと判定された場合(ステップS2でYES)、測定制御部7cは、信号送信部2aからステップS1で設定された規格の試験信号を送信させるように制御する(ステップS3)。信号送信部2aから試験信号が送信された後、DUT10が該試験信号を受信すると、当該DUT10はその応答信号として被測定信号を送信する。
【0084】
ステップS3で信号送信部2aから試験信号を送信させる制御を行った後、測定制御部7cは、その試験信号に受信によりDUT10が送出する被測定信号(データ)を信号受信部3aの0/1判定器3a1に順次入力させるように制御する(ステップS4)。
【0085】
ステップS4でのデータの入力に合わせて、位相操作制御部7bは、信号受信部3aの可変遅延器3a2を、入力するデータ(入力データ)に対してクロック信号をステップS1で設定された位相操作パターンで遅延させるように制御する。具体的に、位相操作制御部7bは、初期値から1周期の範囲内で順に動かすようにクロック遅延量(Delay)を操作するように制御する(ステップS5)。この位相操作制御により、信号受信部3aの0/1判定器3a1からは、該遅延操作(位相操作)を受けたクロック信号を用いてデータの2値判定結果「0」または「1」が出力され、信号受信部3aから誤り率測定部3bに対しては上記データとその2値判定結果が送出される。
【0086】
引き続き、測定制御部7cは、誤り率測定部3bにおいて信号受信部3aから入力するデータとのその2値判定結果に基づいて誤り率測定処理を行うように制御する(ステップS6)。具体的に測定制御部7cでは、信号受信部3aから入力するデータとデータ記憶部2bから与えられる上記規格の試験信号の基準パターン(既定のパターン)とを同期させるように同期検出部3b1を制御する。次いで、測定制御部7cは、比較部3b2でデータの2値判定結果と上記基準パターンとを比較させ、その比較結果を記憶部4のBER測定結果記憶領域に記憶させるように制御する。これにより、ステップ6においては、初期値から1周期の範囲内のクロック遅延量の変動に対応する誤り率測定結果が得られる。
【0087】
引き続き、測定制御部7cは、バスタブ特性算出部7dにバスタブ特性を演算させるように制御する(ステップS7)。この制御により、バスタブ特性算出部7dは、ステップS5でのクロック遅延量の操作制御とステップS6でのBER測定結果に基づき、クロック信号とデータの位相関係と、測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性のデータセットを生成する演算処理を実行する(ステップS7)。
【0088】
ステップS5、S6及びS7の処理は、
図5を参照して説明した処理、つまり、クロック遅延量(Delay)を初期値から1周期の範囲で動かして誤り率を測定する測定処理を1回(1掃引)実施してバスタブ特性のデータセット(1掃引に係るデータセット)を取得する処理に相当する。本実施形態において、測定制御部7cは、上記掃引を複数回(ステップS1で設定された既定の掃引回数)実施し、それぞれの回の掃引に対応する既定の数のデータセットを生成するように信号受信部3a、誤り率測定部3b及びバスタブ特性算出部7dを制御するようになっている。
【0089】
上述した複数回の掃引を行うべく、測定制御部7cは、ステップS7で1掃引によるバスタブ特性のデータセットを生成した後、掃引回数が規定回数に達したか否かを判定する(ステップS8)。ここで掃引回数が規定回数に達していないと判定された場合(ステップS8でNO)、ステップS3からステップS8までの処理を繰り返し実行する。
【0090】
上記処理を繰り返し実行する間に、掃引回数が規定回数に達したと判定された場合(ステップS8でYES)、測定制御部7cは、ジッタ測定制御部7eにジッタを算出することを指示する。ジッタ測定制御部7eは、上記指示に基づき、それまでに得られた複数のデータセット(それぞれが1掃引に係るデータセット)に基づくジッタの演算処理を行う(ステップS9)。この演算処理により、ジッタ測定制御部7eは、最終的には上記式(10)、式(11)、式(12)に基づいてそれぞれランダムジッタRJ、確定的ジッタDJ、トータルジッタTJのジッタ値を算出する。
【0091】
上述したステップS1からステップS9までの一連のジッタ測定処理中、表示制御部7fは、各処理ステップでの処理結果に基づいて、例えば、
図10に示す構成を有するジッタ測定画面71を表示部5に表示する制御を行う(ステップS10)。
【0092】
次に、表示制御部7fによるジッタ測定画面の表示制御動作について、
図9に示すフローチャートを参照して説明する。
【0093】
この表示制御が開始されると、表示制御部7fは、
図8に示すジッタ測定処理のステップS1で設定された誤り率の測定範囲を取得する(ステップS11)。
【0094】
次いで表示制御部7fは、
図8に示すジッタ測定処理中、上記各掃引により逐次ステップS7で生成されるバスタブ特性のデータセットを取得し(ステップS12)、さらには
図8に示すジッタ測定処理中のステップS9におけるジッタ測定結果を取得する(ステップS13)。
【0095】
引き続き、表示制御部7fは、ステップS11~S13で取得した誤り率の測定範囲、バスタブ特性のデータセット、ジッタ測定結果の各データに基づきジッタ測定画面71のベース画面に相当する画像データを生成する(ステップS14)。ここで生成されるベース画面は、例えば、
図10に示すジッタ測定画面71において、バスタブ特性におけるバスタブ曲線の近似線72b、誤り率の測定範囲を示す横線72c、72d、ジッタ測定が正しく行えなかった原因(理由)を報知する報知メッセージ74fを有せず、かつ、ジッタ測定が正しく行えなかったことを報知する表示態様(報知情報73aが表示されていない状態)とはなっていないときの画像内容を有するものである。以下においては、ベース画面に基づいて表示される画面をジッタ測定画面70と呼称することもある。
【0096】
ベース画面を生成した後、表示制御部7fは、ステップS11で取得した誤り率の測定範囲、及びステップS12で取得したバスタブ特性の両データに基づき、ベース画面におけるバスタブ特性表示領域72を対象に対し、それぞれ、誤り率の測定範囲を示す横線72c、72d、バスタブ曲線の近似線72bの画像を付加する画像処理を行う(ステップS15)。横線72c、72dは、本発明の上限値を示す情報、下限値を示す情報にそれぞれ相当するものである。
【0097】
次に、表示制御部7fは、ステップS15の画像処理に際して近似線72bが正常に引けたか否かを判定する(ステップS16)。この処理は、例えば、近似線72bの傾きを求めたうえで、その傾きが予め設定した値の範囲を超えていないか超えているかによって判定可能である。
【0098】
ここで近似線72bが正常に引けたと判定された場合(ステップS16でYES)、表示制御部7fは、ステップS15で生成した画像データに基づきジッタ測定画面70を表示部5に表示させる(ステップS20)。
【0099】
これに対し、近似線72bが正常に引けなかったと判定された場合(ステップS16でNO)、表示制御部7fは、近似線72bが正常に引けなかった理由(原因)、及びその原因を引き起こした設定項目を特定する(ステップS17)。ここで表示制御部7fは、例えば、上述した原因としては設定された誤り率の範囲が狭すぎること、その原因を引き起こした設定項目としては誤り率の測定範囲の設定状況を示すツール74e(
図10参照)であることをそれぞれ特定できる機能構成を有している。
【0100】
ステップS17で近似線72bが正常に引けなかった理由(原因)と、その原因を引き起こした設定項目を特定したうえで、表示制御部7fは、ステップS15で生成した画像データに対して後述のステップS18及びS19の画像処理を実行する。
【0101】
ステップS18において、表示制御部7fは、近似線72bが正常に引けなかった理由が誤り率の範囲が狭すぎるためであることを報知するための報知情報73a(
図10参照)の画像を画像データに付加する画像処理を行う。
【0102】
次いでステップS19において、表示制御部7fは、近似線72bが正常に引けなかった理由を、その理由を引き起こす原因となった設定項目に対応して表示させるための画像を画像データに付加する画像処理を行う。具体的に、表示制御部7fは、上記理由が誤り率の範囲が狭すぎるためであることを、その理由を引き起こす原因となった設定項目、例えば、誤り率の測定範囲の設定状況を表示するツール74e(
図10参照)に対応して表示させるための画像を画像データに付加する。
【0103】
さらに表示制御部7fは、ステップS18及びS19の画像処理が施された画像データに基づきジッタ測定画面71(
図10参照)を表示部5に表示させる(ステップS20)。ステップS20において、ジッタ測定画面71(
図101参照)、若しくは、ジッタ測定画面70を表示した後、表示制御部7fは、操作部6から表示終了の指示を受けることにより、当該表示画面の表示を停止し、一連の表示処理を終了する。
【0104】
次に、
図9に示す表示制御に基づくジッタ測定画面71の表示例について
図10を参照して説明する。
【0105】
図10に示すように、ジッタ測定画面71は、バスタブ測定表示領域72と、ジッタ測定表示領域73と、測定状況表示領域74と、を有している。バスタブ測定表示領域72は、例えば、縦軸に誤り率、横軸にクロック遅延量が目盛られたグラフ表示領域を有している。ジッタ測定表示領域73は、Opt Phase、Opt BER、TJ(E-12)、DJ、RJ、J2(2.5E-3)、J9(2.5E-10)等の項目ごとにジッタ測定結果をそれぞれ数字で表示する構成を有している。測定状況表示領域74は、ジッタ測定状況を項目ごとに表示するためのツール74a、74b、74c、74d、74eを備えている。ツール74a、74b、74c、74d、74eは、それぞれ、Threshold(0.000V)[単位:V]、Phase Unit、Phase Resolution[単位:mUI]、Jitter Calculation、Calculation Error Thresholdの各項目のジッタ測定状況を表示するようになっている。
【0106】
表示制御部7fは、
図9のステップS14の画像処理に基づき、
図10に示すジッタ測定画面71のバスタブ測定表示領域72に対してバスタブ特性を示すグラフ72aを表示する。また、表示制御部7fは、
図9のステップS15の画像処理に基づき、グラフ72a上にバスタブ特性におけるバスタブ曲線の近似線72bを表示する。近似線72bは、取得されたバスタブ特性の精度次第で正しく引ける場合と引けない場合が存在する。正しく引ける場合とは、近似線72bの傾きが、予め設定した傾きの範囲内にある場合である。
図10においては、右側にある第2のバスタブ曲線の近似線が予め設定した傾きを超えており、近似線72bが正しく引けていない例を挙げている。
【0107】
さらに表示制御部7fは、
図9のステップS11及びS15の処理に基づき、バスタブ測定表示領域72に表示されたグラフ72a上にユーザが設定した誤り率の測定範囲を示す情報を表示する。
図10に示すジッタ測定画面71では、誤り率の測定範囲は上限を示す横線72cと下限を示す横線72dが表示され、横線72cと横線72dとの間が誤り率の測定範囲として明示されるようになっている。特に、
図10の例では、上限がE-5、下限がE-6に設定された表示形態を示している。
【0108】
また、
図9のステップS14での画像処理により、表示制御部7fは、
図10に示すジッタ測定画面71のジッタ測定表示領域73に対し、項目ごとのジッタ測定結果を数字で表示する。
図10に示す例においては、例えばランダムジッタRJの測定結果として0.84(単位:ps ms)という数字が表示されている。ランダムジッタRJについて、表示制御部7fは、
図9のステップS18での画像処理に基づき、測定結果を示す数字の後に括弧書きの疑問符?を付加し、「0.84(?)ps ms」という形態で表示している。
図11において、「0.84(?)ps ms」という測定結果は、便宜的に、ジッタ測定画面の71の外方に拡大された形態で示されており、特定の色により表示されている。
【0109】
このように、表示制御部7fは、ジッタ測定画面71において、ジッタの測定結果を示す数字の後に、近似線72bが正常に引けないことを報知するための報知情報73aとして、疑問符を付加して表示するようになっている。
図11の例では、ジッタ測定表示領域73に表示される全ての項目に対して報知情報73aが表示されている。報知情報73aとしては、疑問符の他、ジッタ測定が正常に行えなかったことを暗示させる種々のマーク情報を表示してもよい。また、報知情報73aは文字や図形であってもよい。さらに報知情報73aの表示形態については、各種の色を用い、例えば、点灯、点滅等の種々のパターンにより通常の測定値の表示に比べてより目立つ形態で表示するようにすればよい。
【0110】
また、表示制御部7fは、
図9のステップS14の表示制御により、
図10のジッタ測定画面71の測定状況表示領域74に対して、測定状況に関する各項目の設定状況をさらに表示する。
図10に示す例では、測定状況に関する項目の一つであるCalculation Error Thresholdについて、誤り率の測定範囲を指定するツール74eを用いて、E-6 to E-7の範囲が誤り率の範囲として設定されているときの表示形態を示している。
【0111】
さらに表示制御部7fは、
図9のステップS19の画像処理に基づき、近似線72bが正常に引けなかった場合に、その理由を、近似線72bが正常に引けなかった原因を引き起こした項目に対応付けて表示するように制御する。
図10の例において、表示制御部7fは、設定されたE-6からE-7までの誤り率の測定範囲が狭すぎる設定であることがジッタ測定不良の原因であることを特定する(
図9のステップS17参照)ことにより、その原因を引き起こす要因である、例えば、測定状況表示領域74におけるCalculation Error Thresholdの項目内のツール74eに近接して、その原因を引き起こした理由を示す「too narrow!」という報知メッセージ74fを表示している。
【0112】
図10に示す表示形態を有するジッタ測定画面71によれば、ユーザは、グラフ72a上にバスタブ曲線72a1、に関連付けて表された上限値と下限値を示す横線72cと72dを目安に、現在設定中の誤り率の測定範囲内にジッタの算出に十分な測定ポイントがあるかどうかを目視によって確認することができる。測定ポイントが少なく、測定が正しくできていないと判断される場合には、正しい測定のための再設定を行うように対処することもできる。
【0113】
また、ジッタ測定画面71によれば、ユーザは、グラフ72a上に表示されたバスタブ曲線72a1とその近似線72bの関係を見ることで、ジッタ測定が正常に行われたかどうかについてのおおよその状況を把握することができる。
【0114】
また、ジッタ測定画面71のジッタ測定表示領域73内の項目(例えば、トータルジッタTJ)の測定結果の数字の後に報知情報73aが表示されているときには、ユーザは、当該項目のジッタ測定が正常に行えなかったことを明確に認識することができる。
【0115】
ジッタ測定画面71は、上記報知情報73aが表示されるときには、測定状況表示領域74におけるジッタ測定が正常に行えなかった原因を引き起こす項目に対応する項目(例えば、誤り率の測定範囲を示すツール74e)に関連付けてその理由を示す報知メッセージ74fが表示されることになる。
【0116】
これにより、例えば、誤り率の測定範囲を示すツール74eに関連付けて「too narrow」という報知メッセージ74fが表示されているときには、ユーザは、報知メッセージ74fを見ることで、ジッタ測定が正常に行えなかった原因が誤り率の測定範囲が狭すぎることが原因であることを容易に理解でき、さらにはツール74eを用いて誤り率の測定範囲を容易に設定し直すことができる。その際、バスタブ測定表示領域72に表示された横線72cと横線72dとにより現在設定中の誤り率の測定範囲が一目でわかり、ユーザは、それを目安にしてより広い範囲の設定を行う操作に容易に対応できるようになる。
【0117】
このように、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、DUT10から被測定信号として入力する入力データの誤り率の測定範囲を規定する上限値と下限値を設定するパラメータ設定部6と、入力データの入力に合わせて該入力データの2値(0または1)判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を順次変動させることにより、所定の位相範囲を対象に入力データとクロック信号の位相関係を操作する可変遅延器3a2、及び位相操作制御部7bと、位相関係の操作を伴う2値判定の判定結果を用いて入力データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき誤り率を測定する誤り率測定部3bと、誤り率測定部3bによる誤り率の測定動作に合わせて、可変遅延器3a2により操作された上記位相関係と、誤り率測定部3bにより測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき被測定信号のジッタ値を算出するジッタ測定制御部7eと、バスタブ特性を示すグラフ72aと、グラフ72aにおけるバスタブ曲線72a1に関連付けて表されたパラメータ設定部6で設定された上限値及び下限値を示す横線72c、72dと、を含むジッタ測定画面71を、表示部5に表示させる表示制御部7fと、を具備して構成されている。
【0118】
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、ジッタ測定画面71のグラフ72a上にバスタブ曲線72a1に関連付けて表された上限値と下限値を示す横線72c、72dを目安に、現在設定中の誤り率の測定範囲内にジッタの算出に十分な測定ポイントがあるかどうかを目視によって確認することができる。測定ポイントが少なく、測定が正しくできていないと判断される場合には、正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能となる。
【0119】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、表示制御部7fは、バスタブ曲線72a1を近似する近似線72bをさらに表示する構成を有する。この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、バスタブ曲線72a1に沿って表示される近似線72bを目視によって確認でき、近似線72bの傾き具合から測定が正しく行われているどうかを推測可能になる。
【0120】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、表示制御部7fは、近似線72bの傾きが規定の条件を満たしていない場合、ジッタ測定が正しく行われなかったことを報知する報知情報73aをさらに表示する構成である。この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、表示された報知情報73aによって、測定が正しく行われているどうかを容易に判断することができる。
【0121】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、表示制御部7fは、報知情報73aを、ジッタ測定制御部7eにより算出されたジッタ値の項目に対応付けて表示する構成を有する。この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、表示された報知情報73aが対応付けられている項目を特定し、当該項目のジッタ値が正しい測定値ではないことを一目で認識することができる。
【0122】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、表示制御部7fは、報知情報73aとして、ジッタ測定が正しく行われなかったことを示す記号、若しくは文字の少なくともいずれか一方を表示する構成を有している。
【0123】
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、表示されている報知情報73aを発見し易く、測定が正しく行われているどうかについてもより判断し易くなる。
【0124】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1において、表示制御部7fは、報知情報73aを、特定の色、若しくは表示パターンのいずれか一方で表示する構成である。この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、表示色や、点灯あるいは点滅等の表示パターンによって報知情報73aがさらに発見し易くなり、測定が正しく行われているどうかをさらに判断し易くなる。
【0125】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、近似線72bの傾きが規定の条件を満たしていない理由として、設定された誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことを特定する手段をさらに有し、表示制御部7fは、誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことが特定された場合、ジッタ測定画面71に表示されている誤り率の測定範囲を設定するツール74eに関連付けて誤り率の測定範囲の設定が狭過ぎることを報知する報知メッセージ74fをさらに表示する構成を有する。上記特定する手段は、前述した表示制御部7fに限らず、ジッタ測定制御部7eなど、他の機能部に設けられていてもよい。
【0126】
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、報知メッセージ74fを見ることでより広い誤り率の測定範囲への再設定が必要であることに容易に気付くことができ、該報知メッセージ74fが関連付けられているツールを用いて簡単に再設定を行うことができる。
【0127】
また、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、上記理由として、設定された誤り率の測定範囲が規定の測定範囲よりも狭いことを特定した場合、ジッタ測定が正常に行える適正な誤り率測定範囲を推定する手段をさらに有し、前記表示制御部7fは、上記適正な誤り率測定範囲を設定することを促す再設定支援メッセージ74gを、報知メッセージ74fに近接して表示する構成を有している。上記推定する手段は、前述した表示制御部7fに限らず、ジッタ測定制御部7eなど、他の機能部に設けられていてもよい。
【0128】
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定装置1は、報知メッセージ74fに近接してさらに表示された再設定支援メッセージ74gをみることで、当該再設定支援メッセージ74gで示唆されている範囲を、適正な誤り率の測定範囲として容易に再設定することが可能になる。
【0129】
また、本実施形態に係る誤り率測定方法は、DUT10から被測定信号として入力する入力データの誤り率の測定範囲を規定する上限値と下限値を設定する設定ステップ(S1)と、入力データの入力に合わせて該入力データの2値(0または1)判定の処理に用いるクロック信号の遅延量を順次変動させることにより、所定の位相範囲を対象に入力データとクロック信号の位相関係を操作する位相操作ステップ(S5)と、2値判定の判定結果を用いて入力データのパターンと既定のパターンを比較し、該比較結果に基づき誤り率を測定する誤り率測定ステップ(S6)と、誤り率測定ステップによる誤り率の測定動作に合わせて、位相操作ステップで操作された上記位相関係と、誤り率測定ステップで測定された誤り率との関係を示すバスタブ特性を算出し、該バスタブ特性に基づき被測定信号のジッタ値を算出するジッタ算出ステップ(S9)と、バスタブ特性を示すグラフ72aと、グラフ72aにおけるバスタブ曲線72a1に関連付けて表された上記設定ステップにより設定された上限値及び下限値を示す横線72c、72dと、を含むジッタ測定画面71を、表示部5に表示させる表示制御ステップ(S10、S20)と、を含んでいる。
【0130】
この構成により、本実施形態に係る誤り率測定方法は、ジッタ測定画面71のグラフ72a上にバスタブ曲線72a1に関連付けて表された上限値と下限値を示す横線72c、72dを目安に、現在設定中の誤り率の測定範囲内にジッタの算出に十分な測定ポイントがあるかどうかを目視によって確認することができる。測定ポイントが少なく、測定が正しくできていないと判断される場合には、正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能となる。
【0131】
(変形例)
本発明の変形例に係る誤り率測定装置(便宜的に、符号1Aを付して識別する。)は、
図10に示すジッタ測定画面71に代えて、
図11に示す構成を有するジッタ測定画面71Aを表示する表示制御機能を有する。誤り率測定装置1Aは、上記実施形態に係る誤り率測定装置1(
図1参照)と同等の構成を有し、制御部7の表示制御部7f(
図2参照)がジッタ測定画面71Aの表示制御を司っている。
【0132】
図11に示すように、ジッタ測定画面71Aはその基本構成がジッタ測定画面71(
図10参照)と同等であり、ジッタ測定画面71と同一の部分には同一の符号を付している。変形例に係るジッタ測定画面71Aは、測定状況表示領域74内に表示されている報知メッセージ74fに対応して再設定支援メッセージ74gがさらに表示される構成を有する点でジッタ測定画面71と異なっている。
【0133】
以下、変形例に係る誤り率測定装置1Aにおけるジッタ測定画面71Aの表示制御について、
図1及び
図2の機能ブロック図、
図9のフローチャートを援用して説明する。
【0134】
変形例に係る誤り率測定装置1Aにおいて、表示制御部7fは
図9に示すフローチャートに沿った表示制御を実行する。この表示制御において、例えば、ステップS18でジッタ測定が正常に行えなかった原因が誤り率測定範囲の設定が狭すぎることであることを特定した場合、表示制御部7fは、同ステップS10においてジッタ測定が正常に行える適正な誤り率測定範囲を推定する。
【0135】
その後、表示制御部7fは、ステップS19でジッタ測定画面71Aを表示する際、測定状況表示領域74の誤り率の測定範囲を設定するツール74eに対応付けて「too narrow」という報知メッセージ74fを表示する。その際、表示制御部7fは、
図9のステップS10で推定したジッタ測定が正常に行える適正な誤り率の測定範囲を示す情報を取り込み、当該情報に基づき適正な誤り率の測定範囲を設定することを促す、例えば、「E5~E8にしてはいかがですか?」という再設定支援メッセージ74gを、報知メッセージ74fに近接してさらに表示する。
【0136】
図11に示す表示形態を有するジッタ測定画面71Aによれば、ユーザは、測定状況表示領域74に表示された「too narrow」という報知メッセージ74fに近接してさらに表示された再設定支援メッセージ74gをみることで、当該再設定支援メッセージ74gで示唆されているE5~E8の範囲を、適正な誤り率の測定範囲として容易に再設定することが可能になる。
【0137】
上述した実施形態、及び変形例においては、NRZ信号を対象にジッタ測定を行う場合のジッタ測定画面71(
図10参照)、及びジッタ測定画面71A(
図11参照)の表示制御について述べたが、本発明における表示制御は、パルス振幅変調(Pulse-Amplitude Modulation)方式による多値PAM信号(PAM4信号等)の誤り率測定にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上のように、本発明に係る誤り率測定装置、及び誤り率測定方法は、ジッタ測定が正しく行えたかどうかを容易に判断することができ、正しく測定が行えていない場合には正しい測定のための再設定を容易に行うことが可能であるという効果を奏し、バスタブ特性に基づきジッタ測定を行う誤り率測定装置、及び誤り率測定方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0139】
1 誤り率測定装置
2 パルスパターン発生器(PPG)
3 誤り率測定器(ED)
3a 信号受信部
3a2 可変遅延器(位相操作手段)
3b 誤り率測定部(誤り率測定手段)
5 表示部
6 操作部(設定手段)
7 制御部
7a パラメータ設定部(設定手段)
7b 位相操作制御部(位相操作手段)
7c 測定制御部
7d バスタブ特性算出部
7e ジッタ測定制御部(ジッタ算出手段、特定する手段、推定する手段)
7f 表示制御部(表示制御手段、特定する手段、推定する手段)
10 DUT(被試験対象)
71、71A ジッタ測定画面
72 バスタブ測定表示領域
72a グラフ
72a1 バスタブ曲線
72b 近似線
72c 横線(上限値を示す情報)
72d 横線(下限値を示す情報)
73 ジッタ測定表示領域
73a 報知情報
74 測定状況表示領域
74e ツール
74f 報知メッセージ
74g 再設定支援メッセージ