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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042897
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】予測処理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/50 20180101AFI20220308BHJP
【FI】
G16H50/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148575
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(71)【出願人】
【識別番号】319004663
【氏名又は名称】株式会社Smart119
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】川上 英良
(72)【発明者】
【氏名】中田 孝明
(72)【発明者】
【氏名】山尾 恭生
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】集中治療室に入室した患者に関する予測を行う予測処理システムを提供する。
【解決手段】予測処理システム1において、予測モデル生成処理部20は、過去に集中治療室に入室した患者毎のデータを複数のグループに分類し、分類されたグループ毎の検査値の欠測値の補完を行う。そして、それを学習用データとテスト用データに分割し、学習用データについて、データセットの全てとカテゴリ値の項目データを連結して教師データを生成し、機械学習を実行し、結果を予測モデル記憶部21に記憶する。入力受付部22は、集中治療室への患者入室に伴い、患者ベッドの識別情報と紐付けて患者データの入力を受付ける。分類処理部23は、受付けた患者のデータに基づき患者のグループを判定する。予測処理部24は、患者の検査値データの欠測値を補完し、予測モデル記憶部21に記憶した予測モデルに対し、受付け及び補完した患者データを入力し、予測処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のデータを用いて集中治療室における患者に関する予測を行う予測処理システムであって,
患者のデータの入力を受け付ける入力受付処理部と,
前記入力を受け付けたデータを用いて,集中治療室における患者に関する予測を行う予測処理部と,
前記予測した結果を出力する出力処理部と,
を有することを特徴とする予測処理システム。
【請求項2】
前記予測処理システムは,
前記入力を受け付けたデータのうち,前記患者の検査値を用いて前記患者を分類する分類処理部,を有しており,
前記予測処理部は,
前記分類したグループに応じて前記集中治療室における患者に関する予測を行う,
ことを特徴とする請求項1に記載の予測処理システム。
【請求項3】
前記予測処理部は,
前記分類したグループに応じて,前記入力を受け付けたデータのうち,前記患者の検査値における欠測値を補完して,前記集中治療室における患者に関する予測を行う,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の予測処理システム。
【請求項4】
前記出力処理部は,
医療従事者用コンピュータと説明用コンピュータとで異なる結果を出力する制御を行う,
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の予測処理システム。
【請求項5】
前記出力処理部は,
前記予測した結果を出力する画面において,医療従事者用と説明用とで表示を切り替える選択部,を表示させる,
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の予測処理システム。
【請求項6】
前記予測処理システムは,
集中治療室に入室した過去の患者のデータとその患者の集中治療室における結果のデータとの入力を受け付け,前記患者に関する予測モデルを生成する予測モデル生成処理部,
を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の予測処理システム。
【請求項7】
集中治療室に入室した過去の患者のデータとその患者の集中治療室における結果のデータとの入力を受け付け,前記患者に関する予測モデルを生成する予測モデル生成処理部,
を有することを特徴とする予測処理システム。
【請求項8】
前記予測モデル生成処理部は,
前記過去の患者のデータとして,少なくとも患者の検査値のデータの入力を受け付け,
前記検査値を用いて前記患者をグループに分類し,
前記分類したグループに応じて,前記患者の検査値における欠測値を補完し,前記患者に関する予測モデルを生成する,
ことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の予測処理システム。
【請求項9】
前記グループは,
血液検査の項目の検査値,感染症の項目の検査値,呼吸器の項目の検査値のいずれか一以上を用いて分類する,
ことを特徴とする請求項8に記載の予測処理システム。
【請求項10】
前記予測モデル生成処理部は,
機械学習により前記予測モデルを生成する,
ことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の予測処理システム。
【請求項11】
前記予測モデル生成処理部は,
前記機械学習の手法として,ランダムフォレストによる手法または勾配ブースティングによる手法のいずれかを用いる,
ことを特徴とする請求項10に記載の予測処理システム。
【請求項12】
前記予測は,
集中治療室に入室した患者の予後,在院期間,集中治療室における治療として必要な所定のイベントに関する予測のうちいずれか一以上である,
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の予測処理システム。
【請求項13】
コンピュータを,
患者のデータの入力を受け付ける入力受付処理部,
前記入力を受け付けたデータを用いて,集中治療室における患者に関する予測を行う予測処理部,
前記予測した結果を出力する出力処理部,
として機能させることを特徴とする予測処理プログラム。
【請求項14】
コンピュータを,
集中治療室に入室した過去の患者のデータとその患者の集中治療室における結果のデータとの入力を受け付け,前記患者に関する予測モデルを生成する予測モデル生成処理部,
として機能させることを特徴とする予測処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,集中治療室に入室した患者に関する予測を行う予測処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
入室した患者あるいはその親族にとって,患者がいつ退室できるか,また生存して退室できるかは重要である。とくに,集中治療室(ICU)に入室した患者は重症度が高いので,集中治療室から生存して退室できるか,いつ退室できるかは重要である。
【0003】
また,医学研究の観点からも,集中治療室に入室した患者の退室までの日数は重要である。たとえばある症状で集中治療室に入室した患者に対しての入室日数が予測できていれば,ある処置を行った場合にその患者が早く退室できたとすれば,その処置は有効である可能性が高い,と推測が行える。
【0004】
また病院経営の観点からも,患者の回転率は重要である。そのため,患者の回転率で病床数などの計画を行うシステムが下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-252092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載された発明は,入室患者の回転率で病床数や設備規模などの計画を行う医療機関の急性期医療需要予測システムである。
【0007】
しかし,特許文献1に記載された発明では,集中治療室に入室した患者に関する予測を行うことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは,上記課題に鑑み,集中治療室に入室した患者に関する予測を行う予測処理システムを発明した。
【0009】
第1の発明は,患者のデータを用いて集中治療室における患者に関する予測を行う予測処理システムであって,患者のデータの入力を受け付ける入力受付処理部と,前記入力を受け付けたデータを用いて,集中治療室における患者に関する予測を行う予測処理部と,前記予測した結果を出力する出力処理部と,を有する予測処理システムである。
【0010】
本発明のように構成することで,集中治療室に入室した患者に関する予測を行うことができる。
【0011】
上述の発明において,前記予測処理システムは,前記入力を受け付けたデータのうち,前記患者の検査値を用いて前記患者を分類する分類処理部,を有しており,前記予測処理部は,前記分類したグループに応じて前記集中治療室における患者に関する予測を行う,予測処理システムのように構成することができる。
【0012】
患者に関する予測を行う場合,検査値の項目を用いて分類したグループに応じて予測をした方が予測の精度が高いことを本発明者らは見いだした。すなわち,患者に対して行われる検査は,患者の症状に応じて変化する。そのため患者の検査値のデータは完全なものではなく,欠測値がある。別の見方をすれば,患者の検査値の有無によって,似たような症状の患者ごとにグループ化して分類することができる。そして,症状が似ていれば予測の精度を向上させやすい。そのため,本発明のように構成することで,予測の精度を向上させることができる。
【0013】
上述の発明において,前記予測処理部は,前記分類したグループに応じて,前記入力を受け付けたデータのうち,前記患者の検査値における欠測値を補完して,前記集中治療室における患者に関する予測を行う,予測処理システムのように構成することができる。
【0014】
患者の検査値にはすべてのデータがあるわけではなく,欠測値がある。そのため,欠測値をそのままにして予測をすると,予測の精度が低くなる。そこで,本発明のように,グループに応じた欠測値を補完したうえで予測を行うことで,予測の精度を向上させることができる。
【0015】
上述の発明において,前記出力処理部は,医療従事者用コンピュータと説明用コンピュータとで異なる結果を出力する制御を行う,予測処理システムのように構成することができる。
【0016】
上述の発明において,前記出力処理部は,前記予測した結果を出力する画面において,医療従事者用と説明用とで表示を切り替える選択部,を表示させる,予測処理システムのように構成することができる。
【0017】
医療従事者が把握すべき情報をそのまま患者,その家族,親族,近親者などに提示することが好ましくない場合もある。そこで,その表示を切り替えることが好ましい。本発明のように構成することでそれを実現することができる。
【0018】
上述の発明において,前記予測処理システムは,集中治療室に入室した過去の患者のデータとその患者の集中治療室における結果のデータとの入力を受け付け,前記患者に関する予測モデルを生成する予測モデル生成処理部,を有する予測処理システム。
【0019】
第7の発明は,集中治療室に入室した過去の患者のデータとその患者の集中治療室における結果のデータとの入力を受け付け,前記患者に関する予測モデルを生成する予測モデル生成処理部,を有する予測処理システムである。
【0020】
集中治療室に入室した患者の予測は,これらの発明のように処理される予測モデルを用いて行うことができる。
【0021】
上述の発明において,前記予測モデル生成処理部は,前記過去の患者のデータとして,少なくとも患者の検査値のデータの入力を受け付け,前記検査値を用いて前記患者をグループに分類し,前記分類したグループに応じて,前記患者の検査値における欠測値を補完し,前記患者に関する予測モデルを生成する,予測処理システムのように構成することができる。
【0022】
患者に関する予測モデルを生成する場合,検査値の項目を用いて分類したグループに応じて予測モデルを生成した方が予測の精度が高いことを本発明者らは見いだした。すなわち,患者に対して行われる検査は,患者の症状に応じて変化する。そのため患者の検査値のデータは完全なものではなく,欠測値がある。別の見方をすれば,患者の検査値の有無によって,似たような症状の患者ごとにグループ化して分類し,そのグループごとに予測モデルを生成すれば,予測精度を向上させることができる。そのため,本発明のように構成することで,予測精度の高い予測モデルを生成することができる。
【0023】
上述の発明において,前記グループは,血液検査の項目の検査値,感染症の項目の検査値,呼吸器の項目の検査値のいずれか一以上を用いて分類する,予測処理システムのように構成することができる。
【0024】
グループを分類する際には,本発明の観点に基づいて行うとよい。
【0025】
上述の発明において,前記予測モデル生成処理部は,機械学習により前記予測モデルを生成する,予測処理システムのように構成することができる。
【0026】
予測処理を行う場合には,さまざまな方法があるが,機械学習を用いることが好ましい。
【0027】
上述の発明において,前記予測モデル生成処理部は,前記機械学習の手法として,ランダムフォレストによる手法または勾配ブースティングによる手法のいずれかを用いる,予測処理システムのように構成することができる。
【0028】
機械学習の手法にもさまざまな方法があるが,本発明者らによる予測モデルの評価の結果,ランダムフォレストによる手法または勾配ブースティングによる手法が予測の精度が高いことを見いだした。そこで,本発明のように構成することがよい。
【0029】
上述の発明において,前記予測は,集中治療室に入室した患者の予後,在院期間,集中治療室における治療として必要な所定のイベントに関する予測のうちいずれか一以上である,予測処理システムのように構成することができる。
【0030】
予測を行う対象にはさまざまな対象があるが,本発明のような対象が一例としてある。
【0031】
第1の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,患者のデータの入力を受け付ける入力受付処理部,前記入力を受け付けたデータを用いて,集中治療室における患者に関する予測を行う予測処理部,前記予測した結果を出力する出力処理部,として機能させる予測処理プログラムである。
【0032】
第7の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,集中治療室に入室した過去の患者のデータとその患者の集中治療室における結果のデータとの入力を受け付け,前記患者に関する予測モデルを生成する予測モデル生成処理部,として機能させる予測処理プログラムである。
【発明の効果】
【0033】
本発明の予測処理システムを用いることによって,集中治療室に入室した患者に関する予測を行うことができる。とくに入室した患者が生存して退室できるか,いつ退室できるかなどを予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の予測処理システムの全体の構成の一例を模式的に示す概念図である。
図2】本発明の予測処理システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
図3】本発明の予測処理システムにおける予測モデル生成処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の予測処理システムにおける予測処理の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
図5】予測モデル生成処理の概念を模式的に示す図である。
図6】患者の基本情報に関する項目の一例を示す図である。
図7】患者の検査値の項目の一例を示す図である。
図8】患者の検査値の項目の一例を示す図である。
図9】患者の検査値の項目の一例を示す図である。
図10】患者のバイタルデータの項目の一例を示す図である。
図11】患者ごとの検査値の項目のデータの有無の一例を示す図である。
図12】患者を検査値の項目で分類した状態の一例を示す図である。
図13】予後の予測モデルの精度を示す表の一例である。
図14】予後の予測モデルの精度を示すグラフの一例である。
図15】在院日数(長期)の予測モデルの精度を示す表の一例である。
図16】在院日数(長期)の予測モデルの精度を示すグラフの一例である。
図17】在院日数(短期)の予測モデルの精度を示す表の一例である。
図18】在院日数(短期)の予測モデルの精度を示すグラフの一例である。
図19】出力結果を表示した画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の予測処理システム1の全体の構成の一例を図1に示す。また,本発明の予測処理システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を図2に示す。
【0036】
予測処理システム1は,管理コンピュータ2を用いる。管理コンピュータ2は,サーバやパーソナルコンピュータ,可搬型通信端末などのコンピュータによって実現される。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやROM,ハードディスク,SSDなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報の通信を行う通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には,入力装置73と表示装置72とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,タブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0037】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力が行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0038】
各コンピュータは一台でその機能が実現されていてもよいし,その機能が複数台によって実現されていてもよい。その場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0039】
さらに,本発明の予測処理システム1における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0040】
予測処理システム1は,予測モデル生成処理部20と予測モデル記憶部21と入力受付処理部22と分類処理部23と予測処理部24と出力処理部25とを有する。
【0041】
予測モデル生成処理部20は,後述する予測処理部24で予測処理を行うための予測モデルを生成する。予測モデルを生成するためには,過去のデータ,とくに過去に集中治療室に入室した患者のデータに基づいて,機械学習などの学習処理を実行することで実現できる。予測モデル生成処理部20で生成する予測モデルは,予後(生存して集中治療室を退室したか,死亡して集中治療室を退室したか)および/または集中治療室の在院日数(集中治療室にいる日数)の予測であるが,それに限定するものではない。なお本実施例では在院日数として日単位の場合を説明しているが,時間単位でもよく,在院期間であればよい。
【0042】
予測モデル生成処理部20は,以下のような処理を実行する。予測モデル生成処理の概念を図5に示す。
【0043】
予測モデル生成処理部20は,過去に集中治療室に入室した患者ごとの基本情報,検査値,バイタルデータなどのデータの入力を受け付ける。また患者ごとに,予後および/または在院日数の結果が対応づけられている。基本情報における項目としては,年齢,性別,血液型,入室日時など,患者自身の属性データや患者の過去の病歴などが含まれる。この際に,氏名などの患者個人を識別可能なデータは削除した匿名化データを用いることが好ましい。図6に患者の基本情報に関する項目の一例を示す。検査値における項目としては,集中治療室に入室した患者に対して行った検査の結果値が含まれ,血液検査の結果値,感染症の結果値,呼吸器系の結果値などが一例としてある。図7乃至図9に患者の検査値の項目の一例を示す。図7乃至図9で,丸が付されている検査値の項目については,後述するグループ1乃至グループ3で用いる検査値の項目を示している。またバイタルデータとは患者の生体情報であり,脈拍,血圧,体温,酸素飽和度などがその項目の一例として含まれる。図10に患者のバイタルデータの項目の一例を示す。
【0044】
入力を受け付けた過去のデータについて,検査値に基づく分類を行う。すなわち集中治療室に入室する患者に対しては,必ずしもすべての検査が行われているわけではない。そのため,患者によっては存在する検査値と,存在しない検査値(欠測値)とがある。その場合,欠測値をそのまま補完して予測モデルを生成してもよいが,検査値に基づいてグループごとに分類をし,それぞれ予測モデルを生成したほうが予測精度が高いことが発明者らによって判明した。そこで,検査値に基づく分類を行う。
【0045】
ここでは,グループ1乃至グループ4の4グループに分類をする。グループ1は,検査値の項目のうち,GOT,GPT,LDH,ALP,G-GTP,CHE,AMY,CPK,TP,Alb,UA,UN,CRE,T-Bil,Na,K,Cl,Ca,T-CHO,CRPのいずれかに値がある場合,グループ2は,検査値の項目のうち,WBC,RBC,HGB,HCT,MCV,MCH,MCHC,RDW,PLT,PCT,MPV,PDW,FDP,AT3,ST,SEG,EO,BA,MO,LYのいずれかに値がある場合,グループ3は,検査値の項目のうち,pH,pCO,pO,HCO ,TCO,BEecf,BE_B,SO,SOC,THb,THbc,Hct,Na,K,ClCa++,AG,Glu,Lac,OHb,COHb,Methb,HHbのいずれかに値がある場合,グループ4はグループ1からグループ3のいずれにも属しない場合で分類をする。グループ1は,概略,血液検査の項目の検査値が含まれる場合,グループ2は感染症の項目の検査値が含まれる場合,グループ3は呼吸器の項目の検査値が含まれる場合を示している。なおこの分類は,一例であって,これに限定するものではなく,ほかの分類であってもよい。
【0046】
このように過去のデータについて検査値に基づいて分類を行った後,グループごとに用いる検査値の項目のデータについて,欠測値の一部または全部の補完を行う。グループごとに用いる検査値の項目はあらかじめ設定しておく。たとえばグループ1に分類した患者のデータについて,グループ1で用いる検査値の項目のデータに欠測値があれば,その項目のデータを補完する。グループ2に分類した患者のデータについて,グループ2で用いる検査値の項目のデータに欠測値があれば,その項目のデータを補完する。グループ3に分類した患者のデータについて,グループ3で用いる検査値の項目のデータに欠測値があれば,その項目のデータを補完する。グループ4に分類した患者のデータについては,補完処理は行わず,処理対象から除外する。なお,欠測値の補完処理の前に,過去のデータのうち,カテゴリ値をとる項目のデータは,いったん分離しておき,補完した後のデータに再度,連結する。ここでカテゴリ値とは,血液型(A,B,O,AB,不明),心不全(あり,なし)のように離散値(連続値ではない)をとる項目のデータを示す。
【0047】
欠測値の補完にはさまざまな補完方法,たとえば平均値代入法,回帰代入法,LOCF,多重代入法などがあり,いずれを用いてもよい。ここでは多重代入法を用いることで,予測モデルの精度向上を図ることができるので,以下,その場合を説明する。
【0048】
入力した過去のデータであってカテゴリ値を分離したデータについて,多重代入法を行うため,配列0~9のデータセットを用意する。そしてそれぞれの配列に,入力を受け付けた過去のデータ(補完前のデータ)を代入する。したがって,この段階では,各配列0~9に代入されたデータは同じである。
【0049】
つぎに,補完前の配列0~9の各データセットに対して,多重代入法により欠測値を補完する。これによって,補完後の配列0~9の各データセットのデータは,それぞれ異なる値で欠測値が補完され,異なる10個のデータセット(配列0~9のデータセット)ができる。
【0050】
そして,このデータセットについて,train/test分割を行い,学習用データに用いる部分とテスト用データに用いる部分に分割する。学習用データとテスト用データの分割は,任意の割合によって分割してよいが,たとえば8:2,7:3のように分割する。
【0051】
予測モデル生成処理部20は,学習用データの部分に分割したデータについて,配列0~9の異なるデータセットをすべて行連結して一つのデータセットとする。一方,テスト用データの部分に分割したデータについては,配列0~9の異なるデータセット(テストデータ0乃至テストデータ9)のファイルとして保存する。
【0052】
予測モデル生成処理部20は,行連結して生成した一つのデータセットに対して,上述で分離したカテゴリ値の項目のデータを連結したデータセットを生成する。そして,補完後の10個のデータセットをすべて行連結をすることで,一つの学習用のデータとしての教師データを生成する。そのため,グループごとに一つずつの教師データを生成する。あるグループに分類された過去のデータが3,000件とすると,30,000件の教師データができる。
【0053】
予測モデル生成処理部20は,グループごとの教師データと,そのグループにおける患者ごとの予後および/または在院日数の結果とを用いて,所定の機械学習の方法にしたがって機械学習を実行する。なお機械学習にはさまざまな学習方法を用いることができる。たとえばニューラルネットワークを用いた手法,ランダムフォレストを用いた手法,勾配ブースティングを用いた手法などがある。詳細は後述するが,本発明の発明者らによる評価では,ランダムフォレストを用いた手法,勾配ブースティングを用いた手法(とくにXGBoostによる手法)による予測モデルの精度が高い。
【0054】
なおテストデータに基づく評価は,テストデータ0乃至テストデータ9における患者ごとに以下の処理を実行することで実現できる。
【0055】
すなわち,テストデータ0乃至テストデータ9のそれぞれに当該患者のカテゴリ値を連結して10個のテストデータを生成する。そして10個のテストデータをそれぞれ,予測モデル生成処理部20が生成した予測モデル(予測モデル記憶部21に記憶した予測モデル)に入力し,予後および/または在院日数について予測の結果を出力させる。この場合,10個のテストデータについてそれぞれ予測結果が得られるので,所定の方法で1個の予測結果として出力する。たとえば中央値を予測結果として出力してもよいし,平均値を予測結果として出力してもよい。
【0056】
このテストデータによる予測結果を確認することで,教師データに基づいて予測モデルの各種パラメータのチューニングを必要に応じて適宜行い,予測モデルを生成する。パラメータのチューニングは,公知の手法により行う。
【0057】
予測モデル生成処理部20が生成した予測モデルは,予測モデル記憶部21に記憶する。
【0058】
入力受付処理部22は,集中治療室に入室する患者のデータの入力を受け付ける。入力受付処理部22で入力を受け付けるデータとしては,集中治療室に入室する患者の基本情報,検査値,バイタルデータなどのデータの入力を受け付ける。
【0059】
分類処理部23は,入力を受け付けた患者が,どのグループに分類されるかを,検査値を用いて判定する。分類処理部23におけるグループの判定は,予測モデル生成処理部20におけるグループの判定と同じ処理により実行できる。
【0060】
予測処理部24は,患者が予測処理部24において,所定のグループ,たとえばグループ1乃至グループ3に分類されたときに,予測モデル記憶部21に記憶する予測モデルによって,予測処理を行う。たとえば患者の予後および/または在院日数を,予測モデル記憶部21に記憶する予測モデルによって予測する。
【0061】
出力処理部25は,予測処理部24で予測した結果,たとえば予後および/または在院日数を出力する。この出力は,たとえば表示装置72の画面に表示してもよいし,紙媒体や電子媒体で出力をしてもよい。
【0062】
集中治療室にあるベッドの検査機器から得られる検査値を逐次,入力受付処理部22で受け付けている場合,検査値を受け付ける都度,あるいは定期または不定期のタイミングごとに,予測処理部24による予測処理を実行し,出力処理部25で出力をしてもよい。
【実施例0063】
つぎに本発明の予測処理システム1を用いた処理プロセスの一例を図3および図4のフローチャートを用いて説明する。なお,以下の説明では,集中治療室に入室する患者の予後および在院日数を予測する場合を説明する。
【0064】
まず予測モデル生成処理を行う場合の処理プロセスを,図3のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
予測モデル生成処理部20は,過去に集中治療室に入室した患者ごとの基本情報,検査値,バイタルデータなどのデータの入力を受け付ける(S100)。ここでは,一例として,16,169件(16,169人分)のデータの入力を受け付ける。図11に,患者ごとの検査値の項目のデータの有無の一例を示す図である。図11は,x軸が検査値の項目であり,y軸が患者である。また,検査値の項目のデータがある場合を黒,検査値の項目のデータがない場合(欠測値の場合)を白で示している。
【0066】
そして,予測モデル生成処理部20は,入力を受け付けた16,169件のデータについて,患者ごとの検査値の項目のデータに基づいて,患者がどのグループに分類されるかを判定する(S110)。たとえば,グループ1は,検査値の項目のうち,GOT,GPT,LDH,ALP,G-GTP,CHE,AMY,CPK,TP,Alb,UA,UN,CRE,T-Bil,Na,K,Cl,Ca,T-CHO,CRPのいずれかに値がある場合,グループ2は,検査値の項目のうち,WBC,RBC,HGB,HCT,MCV,MCH,MCHC,RDW,PLT,PCT,MPV,PDW,FDP,AT3,ST,SEG,EO,BA,MO,LYのいずれかに値がある場合,グループ3は,検査値の項目のうち,pH,pCO,pO,HCO ,TCO,BEecf,BE_B,SO,SOC,THb,THbc,Hct,Na,K,ClCa++,AG,Glu,Lac,OHb,COHb,Methb,HHbのいずれかに値がある場合,グループ4はグループ1からグループ3のいずれにも属しない場合で分類をする。
【0067】
以上のように患者を分類した一例を図12に示す。図12では,16,169件の患者について,それぞれグループ1乃至グループ4に分類した場合を示している。
【0068】
予測モデル生成処理部20は,グループ4の患者のデータは処理対象から削除し,グループ1乃至グループ3のそれぞれについて,グループごとに用いる検査値の項目における欠測値の補完を行う(S120)。
【0069】
そして欠測値の補完を行ったあと,上述のように,train/test分割を行い,学習用データに用いる部分とテスト用データに用いる部分に分割をする。学習用データの部分に分割したデータについては,異なるデータセットをすべて行連結して一つのデータセットとし,そこにカテゴリ値の項目のデータを連結したデータセットとして教師データを生成する。これをグループ1乃至グループ3についてそれぞれ行う。
【0070】
以上のようにグループごとの教師データを生成すると,そのグループにおける患者ごとの結果,たとえば予後および/または在院日数の結果とを用いて,所定の機械学習の方法にしたがって,機械学習を実行する(S140)。本実施例では,機械学習の方法として,ニューラルネットワークを用いた手法,ランダムフォレストを用いた手法,XGBoostによる手法を用いた。
【0071】
この3手法を用いて,上述のtrain/test分割によるテストデータを用いて,予後の各予測モデルの評価をしたところ,図13および図14の結果となった。図13は,予後を「死亡」と「死亡以外」の2値に分類した結果である。図14は,それぞれの手法において,x軸を特異度(specificity),y軸を再現率(sensitivity)とした場合のグラフである。図14(a)がニューラルネットワークを用いた手法の場合,図14(b)がランダムフォレストを用いた手法の場合,図14(c)がXGBoostを用いた手法の場合を示している。この結果,予後の予測モデルとしては,ランダムフォレストを用いた手法またはXGBoostを用いた手法(勾配ブースティングを用いた手法)が0.90に近い値若しくは0,90を超える値となっており,予測精度が高く,予測モデルとして優れていることが理解できる。図14では,実線がグループ1,破線がグループ2,一点鎖線がグループ3を示している。
【0072】
また,上述の3手法を用いて,上述のtrain/test分割によるテストデータを用いて,在院日数の各予測モデルの評価をしたところ,図15乃至図18の結果となった。なお,在院日数として,具体的な日数そのものを予測してもよいが,本実施例では,在院日数を複数の期間に分類をして予測をした。ここでは,在院日数を(1)0~7日,(2)8日~14日,(3)15日以上の3期間に分類をした。なお,15日以上としたのは,15日以上は1日あたりの診療報酬が下がるからである。また,予測モデルの評価は2値で行うため,パターンAとして(1)と(2),(3)の比較,パターンBとして(1),(2)と(3)の比較を行った。すなわち,パターンAでは,在院日数が2週間以内の場合と15日以上の場合とを比較することで在院日数が長期の場合の予測および評価,パターンBでは,在院日数が1週間以内の場合と8日以上の場合とを比較することで在院日数が短期の場合の予測および評価を行った。図15および図16がパターンA,図17および図18がパターンBである。
【0073】
図15はパターンA(2週間以上の在院日数)における予測を示す表であり,図16は,それぞれの手法において,x軸を特異度,y軸を再現率とした場合のグラフである。図16(a)がニューラルネットワークを用いた手法の場合,図16(b)がランダムフォレストを用いた手法の場合,図16(c)がXGBoostを用いた手法の場合を示している。図16では,実線がグループ1,破線がグループ2,一点鎖線がグループ3を示している。
【0074】
また図17はパターンB(1週間以内の在位日数)における予測を示す表であり,図18は,それぞれの手法において,x軸を特異度,y軸を再現率とした場合のグラフである。図18(a)がニューラルネットワークを用いた手法の場合,図18(b)がランダムフォレストを用いた手法の場合,図18(c)がXGBoostを用いた手法の場合を示している。図18では,実線がグループ1,破線がグループ2,一点鎖線がグループ3を示している。
【0075】
これらの結果,在院日数の予測モデルとしては,パターンAおよびパターンBのいずれの場合も,ランダムフォレストを用いた手法またはXGBoostを用いた手法(勾配ブースティングを用いた手法)が0.90に近い値となっており,予測精度が高く,予測モデルとして優れていることが理解できる。
【0076】
以上のように生成した予測モデルを,予測モデル生成処理部20が予測モデル記憶部21に記憶させる。
【0077】
つぎに,集中治療室に入室する患者の予後および在院日数の予測を,予測モデル生成処理部20で生成した予測モデルを用いて予測する場合の処理プロセスの一例を,図4のフローチャートを用いて説明する。
【0078】
集中治療室に患者が入室する場合,その患者が使用するベッドの識別情報(ベッド番号)などと紐付けて,当該患者の基本情報,検査値,バイタルデータなどのデータの入力を,入力受付処理部22で受け付ける(S200)。
【0079】
入力受付処理部22で受け付けた患者のデータの検査値に基づいて,当該患者がどのグループに分類されるかを,分類処理部23が判定する(S210)。そしてグループ4に分類された場合には,当該患者は,本願発明の予測処理システム1では予測することができないので,処理対象から除外する。
【0080】
グループ1乃至グループ3に分類されたときには,予測処理部24は,当該患者の検査値の項目のデータのうち,当該グループにおける欠測値を予測モデル生成処理部20における処理と同様の方法で補完し,予測モデル記憶部21に記憶した予測モデルに,S200で入力を受け付けたデータ,分類されたグループに応じた補完した検査値の項目のデータなどを入力値として入力し,予測処理を行う(S220)。
【0081】
そして,予測モデルによる予測処理の結果,予後および在院日数の予測が出力結果として出力されるので,出力処理部25が出力処理を行う(S230)。出力処理部25における出力結果を表示した画面の一例を図19に示す。図19では,患者をベッド番号ごとに,予後および在院日数の結果を表示した場合である。なお,在院日数の予測モデルとして,在院日数を2日以内,3日以内,7日以内,14日以内とより細分化した場合である。
【0082】
予後不良率は予測モデルから得られた出力結果の値に基づいて,当該患者が死亡により集中治療室を退室する場合の確率を示しており,在院日数は当該患者が集中治療室に入室してから退室するまでの期間の確率を示している。
【0083】
以上のような処理を実行することで,患者の予後および在院日数の予測を行うことができる。また,予後または在院日数のいずれかを予測してもよい。
【0084】
また,集中治療室に入室している患者には各種の検査機器が取り付けられ,その検査値が各検査機器から逐次得られている。そのため,入力受付処理部22で,逐次または定期的に(分単位,時間単位などの所定間隔ごとに),各検査機器からデータの入力を受け付けて,予測処理部24における予測処理を実行することで,逐次,予後および在院日数の予測を更新することができる。出力処理部25における出力結果は,集中治療室における医師や看護師などの医療従事者が利用する所定のコンピュータ(以下,「医療従事者用コンピュータという)の表示装置72に表示すると好ましい。
【実施例0085】
出力処理部25で出力する予測処理の結果を,集中治療室に入室している患者自身のほか,患者の家族,親族,近親者などに提示して説明することもできる。しかしこの場合,予後の予測は死亡する確率を示すことになるため,患者やその家族,親族,近親者などにとって提示することが適切とはいえない場合もある。
【0086】
そのため,出力処理部25は,医療従事者用コンピュータでは予後および在院日数の表示を行い,患者やその家族,親族,近親者などへの説明をすることに用いるコンピュータ(以下,「説明用コンピュータ」という)には予後を表示せず,在院日数の表示を行わせるように表示制御を行ってもよい。
【0087】
また出力処理部25は,予測を表示する画面において,予後の予測を表示するか否かを切り替え可能とするボタン,チェックボックス,プルダウンメニューなどの選択部を表示し,選択部における選択を受け付けて,予後の予測を表示するか否かを切り替え可能としてもよい。
【0088】
さらに出力処理部25は,在院日数についても,患者やその家族,親族,近親者などに詳細な情報を提供すると,かえってトラブルの元になりかねない場合もある。そのため,医療従事者用コンピュータでは,図19のように4段階の期間の表示を行う一方,説明用コンピュータでは,一週間以内,8日以上のように2段階の期間の表示のように,異なる期間の数による表示を行ってもよい。これは上述のように,出力処理部25が医療従事者用コンピュータと説明用コンピュータとで表示制御を行うほか,表示を切り替える選択部を用いて表示を切り替えてもよい。
【実施例0089】
本発明の予測処理システム1は,上述の各実施例では,予後および/または在院日数の予測を行う場合を説明したが,それ以外の予測モデルを生成し,予測を行ってもよい。たとえば,集中治療室における治療として必要な所定のイベントの発生の予測などを行ってもよい。
【0090】
このイベントとしては,臓器障害の発生の有無がある。たとえば脳であれば,鎮静評価(RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)による不穏の発生),意識レベル(GCS(Glasgow Coma Scale)による意識覚醒の発生),心臓であれば,不整脈(心室細動(Vf),心房細動(af))の発生の可能性,低血圧(たとえば平均血圧65mmHg以下)の発生の有無,頻脈(たとえば120回/分)の発生の可能性,循環作動薬の開始,離脱の期間,濃厚赤血球の輸血の開始の可能性がある。また肺であれば,気管挿管の可能性および抜管までの期間,酸素投与の開始の可能性および離脱までの期間,人工呼吸器の可能性および離脱までの期間,腎臓であれば尿量低下(たとえば0.3若しくは0.5mL/kg/時間)の可能性,血液浄化療法の開始の可能性および離脱までの期間,肝臓であれば新鮮凍結血漿の輸血の投与の可能性,凝固系であれば血小板の輸血の可能性,生体反応であれば発熱(たとえば38,39若しくは40度以上など)の可能性,低体温の可能性,敗血症の可能性,真菌感染の可能性,栄養であれば経腸栄養開始若しくは中断の可能性,嘔吐,下痢,下血の可能性,高血糖若しくは低血糖の可能性,血中乳酸値の上昇の可能性などが,一例としてあげられる。
【0091】
上記のうち,とくに,人工呼吸器の離脱までの期間の予測,尿量低下の予測,特定の疾患(たとえば敗血症)になる可能性の予測,輸血が必要となる可能性の予測などは有用である。
【0092】
これらの予測は,予測モデル生成処理部20で,過去の患者のデータと,その患者の人工呼吸器までの離脱までの期間,尿量,特定の疾患(たとえば敗血症)になったか,輸血が必要になったか,などのデータを結果として与えて機械学習させることで,同様に実現することができる。
【0093】
本発明は,本発明の趣旨を逸脱しない範囲において,適宜,設計変更が可能である。また処理は一例であり,その処理を異なる順番で実行することも可能である。さらに,画面の表示についても適宜,変更可能である。また,すべての機能を備えずとも,一部の機能のみを備えるのであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の予測処理システム1を用いることによって,集中治療室に入室した患者に関する予測を行うことができる。とくに入室した患者が生存して退室できるか,いつ退室できるかなどを予測することができる。
【符号の説明】
【0095】
1:予測処理システム
2:管理コンピュータ
20:予測モデル生成処理部
21:予測モデル記憶部
22:入力受付処理部
23:分類処理部
24:予測処理部
25:出力処理部
70:演算装置
71:記憶装置
72:表示装置
73:入力装置
74:通信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図17
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