(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042911
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】含塩素プラスチック廃棄物の減容脱塩素装置、ならびに含塩素プラスチック廃棄物を、そこに含まれる塩素を分離しながら減容化する方法。
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20220308BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220308BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
B09B3/00 303G
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020159081
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】520368758
【氏名又は名称】プラスチック再生エネルギー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井尻 正彦
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA08
4D004AB06
4D004AC05
4D004AC07
4D004BA06
4D004CA22
4D004CA29
4D004CA32
4D004CB08
4D004CB21
4D004CB32
4D004CB36
4D004CB43
4D004CC03
4D004DA06
4D004DA11
4F401AA13
4F401AB10
4F401BA06
4F401BB20
4F401CA33
4F401CA51
4F401CA61
4F401CA64
4F401CA69
4F401CA90
4F401CB02
4F401CB11
4F401CB12
4F401CB15
4F401CB18
4F401CB35
4F401CB40
4F401DA11
4F401EA46
4F401FA01Z
4F401FA09Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】塩素を含むプラスチック廃棄物から、塩素を分離除去し、かつ、該プラスチック廃棄物を減容化できる減容脱塩素装置の提供。
【解決手段】含塩素プラスチック廃棄物の減容化ユニット(2)と、塩素ガスを塩酸に変換する塩素処理ユニット(3)と、これらの接続導管(25)とを含む、含塩素プラスチック廃棄物のバッチ式減容脱塩素装置(1)であって、前記減容化ユニット(2)は、含塩素プラスチック廃棄物を収容するための処理槽、前記処理槽との間に空隙を形成して前記処理槽を収容する外側容器(5)であって、前記含塩素プラスチック廃棄物を前記処理槽に投入するための投入口(6)を有する外側容器、塩素ガス排出口(12)、および、前記処理槽内に熱を供給するための熱源を備え、前記塩素処理ユニット(3)は、前記減容化ユニット(2)と一緒に移動可能な、前記バッチ式減容脱塩素装置(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含塩素プラスチック廃棄物の減容化のための減容化ユニット(2)と、塩素ガスを塩酸に変換するための塩素処理ユニット(3)と、前記減容化ユニット(2)と前記塩素処理ユニット(3)とを接続する導管(25)とを含む、含塩素プラスチック廃棄物のバッチ式減容脱塩素装置であって、
前記減容化ユニット(2)は、
- 含塩素プラスチック廃棄物を収容するための処理槽(4)、
- 前記処理槽(4)との間に空隙を形成して前記処理槽(4)を収容する外側容器(5)であって、前記含塩素プラスチック廃棄物を前記処理槽(4)に投入するための投入口(6)を有する外側容器、
- 塩素ガス排出口(12)、および
- 前記処理槽(4)内に熱を供給するための熱源(7)
を備え、
前記塩素処理ユニット(3)は、塩素ガスと接触させるための水を収容するための容器(17)を備え、
前記導管(25)は、前記塩素ガス排出口(12)から出る塩素ガスを、前記容器(17)中に導くように、前記塩素ガス排出口(12)と前記塩素処理ユニット(3)とを接続しており、
前記塩素処理ユニット(3)は、前記減容化ユニット(2)と一緒に移動可能なように、前記減容化ユニット(2)に固定されている、
前記バッチ式減容脱塩素装置。
【請求項2】
前記塩素処理ユニット(3)が、前記外側容器(5)の外表面に取り付けられた支持体(27)に担持されることによって、前記減容化ユニット(2)に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項3】
キャスター(26)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項4】
一回の含塩素プラスチック廃棄物の投入量が5,000kg未満の小型装置であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項5】
前記減容化ユニット(2)が、処理槽(4)内に窒素ガスを導入するための窒素ガス導入口(13)を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項6】
前記減容化ユニット(2)が、前記含塩素プラスチック廃棄物を攪拌するための攪拌手段(14)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項7】
前記処理槽(4)および前記導管(25)が、耐腐食性材料からなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項8】
前記処理槽(4)が耐食合金からなり、前記導管(25)が石英からなることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項9】
前記減容化ユニット(2)が吸い込み式送風器(8)を備え、前記吸い込み式送風機(8)は、前記熱源(7)によって加熱された空気を、前記処理槽(4)内に熱風として供給するように配置されていることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項10】
前記減容化ユニット(2)が、前記空隙内に少なくとも一つの補助熱源(11)を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項11】
前記処理槽(4)及び投入口(6)が、前記含塩素プラスチック廃棄物を金属製カゴに入れて投入できるように構成されている、請求項1~10のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項12】
含塩素プラスチック廃棄物の減容化のための減容化ユニット(2)と、塩素ガスを塩酸に変換する塩素処理ユニット(3)と、前記減容化ユニット(2)と前記塩素処理ユニット(3)を接続する導管(25)とを含む、含塩素プラスチック廃棄物のバッチ式減容脱塩素装置であって、1回のプラスチック廃棄物処理量が5,000kg未満の小型装置であり、
前記減容化ユニット(2)は、
- 含塩素プラスチック廃棄物を収容するための処理槽(4)であって、背面板、互いに対向する1対の側面板、底板および天板と任意選択的に前面板とからなる直方体状の処理槽(4)、
- 前記処理槽(4)との間に空隙を形成して前記処理槽(4)を収容する外側容器(5)であって、前面板、背面板、互いに対向する1対の側面板、底板および天板からなる直方体状であり、前記前面板が前記含塩素プラスチック廃棄物を前記処理槽(4)に投入するための投入口(6)を有する外側容器(5)、
- 前記処理槽(4)内から前記外側容器(5)を貫通して前記減容化ユニット外部へと通ずる塩素ガス排出口(12)、
- 前記空隙内に配置された、前記処理槽内に熱を供給するための電気的熱源(7)、
- 前記熱源(7)によって加熱された空気を、前記処理槽(4)内に熱風として供給するように前記空隙内に配置された吸い込み式送風器(8)、
- 前記空隙内に配置された、少なくとも1つの補助熱源(11)、
- 前記処理槽(4)内に窒素ガスを導入するための窒素ガス導入口(13)、
および
- 前記含塩素プラスチック廃棄物を撹拌するための撹拌手段(14)、
を備え、
ここで、前記外側容器(5)はその底板の外表面にキャスター(26)を備え、前記処理槽(4)及び投入口(6)は、前記含塩素プラスチック廃棄物を金属製カゴに入れて投入できるように構成されており、
前記塩素処理ユニット(3)は、塩素ガスと接触させるための水を収容するための容器(17)を備え、
前記導管(25)は、前記塩素ガス排出口(12)から出る塩素ガスを、前記容器(17)中に導くように、前記塩素ガス排出口(12)と前記塩素処理ユニット(3)とを接続しており、ここで、前記導管(25)は、前記導管(25)内を流れる塩素ガスを前記容器(17)側に送風するための送風手段(19)と、塩素ガスを冷却するための冷却手段(21)とを備え、
前記塩素処理ユニット(3)は、前記外側容器(5)の外表面に取り付けられた支持体(27)に担持されることによって、前記減容化ユニット(2)に固定されており、
前記処理槽(4)および前記導管(25)は耐腐食性材料からなる、
前記のバッチ式減容脱塩素装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一つに記載の装置を用いてバッチ式で行われる、含塩素プラスチックから、脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物を得る方法であって、次のステップ:
(i)前記含塩素プラスチック廃棄物を、前記処理槽(4)中に投入するステップ;
(ii)前記処理槽(4)内の温度を、230~270℃に加熱して、前記含塩素プラスチック廃棄物から塩素ガスを発生させるステップ;
(iii)生じた塩素ガスを塩素ガス排出口(12)および導管(25)を介して前記塩素処理ユニット(3)内に送り、そこで水と接触させて塩酸を生成するステップ;
(iv)前記処理槽(4)内の温度を、330~370℃に加熱して、前記含塩素プラスチック廃棄物を軟化または半溶融させるステップ;
(v)前記処理槽(4)内の冷却により、軟化または半溶融させたプラスチック廃棄物を固化して、脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物を得るステップ;
を含む、前記方法。
【請求項14】
ステップ(ii)および/または(iv)において、前記プラスチック廃棄物が攪拌されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(i)において、前記含塩素プラスチック廃棄物が、金属製カゴに入れられた状態で前記処理槽(4)内に投入されることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
以下のステップ:
(vi)前記脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物を、前記処理槽(4)内に窒素を導入しつつ、前記減容化ユニット(2)から回収するステップ、
をさらに含むことを特徴とする、請求項13~15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
ステップ(vi)において、前記脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物が、前記金属製カゴに入れられており、そしてカゴごと取り出すことによって回収されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以下のステップ:
(vii)前記塩酸を前記塩素処理ユニット(3)から回収するステップ、
をさらに含むことを特徴とする、請求項13~17のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含塩素プラスチック廃棄物の減容脱塩素装置に関する。
【0002】
本発明はまた、含塩素プラスチック廃棄物を、そこに含まれる塩素を分離・除去しながら減容化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
工場、市場や家庭等からプラスチック廃棄物が回収されているが、このようなプラスチック廃棄物は様々な形態・形状を有している。そしてこれらのプラスチック廃棄物は概して嵩が大きいため、それらをリサイクルするとしても、その嵩高さが運送コストを引き上げ、ひいてはリサイクルコストも押し上げてしまう。このような嵩高さの問題に関して、例えば特許文献1には、このようなプラスチックを加熱し、軟化させてその体積を減少させる廃プラスチック材減容装置が記載されている。
【0004】
しかしながら、プラスチック廃棄物は、各プラスチックを分別することが困難であるため、ポリ塩化ビニル等が混在した状態で回収されることが多く、そのような廃棄物の場合には、そこに含まれる塩素分がリサイクルの際に悪影響を及ぼすためにリサイクルを行うことができず、焼却されるか、または埋め立てられることによって処理されているのが現状である。また、そのようなプラスチック廃棄物は、単なる焼却処理を施すと、有害ガスである塩素ガス等が発生するため、環境汚染という観点からも問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、塩素を含むプラスチック廃棄物から、塩素を分離除去し、かつ、該プラスチック廃棄物を減容化できる減容脱塩素装置を提供することである。
【0007】
本発明はまた、移動可能な小型の減容脱塩素装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の別の目的は、作業が容易であり、安全な運転が可能である減容脱塩素装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる別の目的は、塩素を含むプラスチック廃棄物から、効率的に塩素を除去するとともに、減容化されたプラスチック廃棄物処理物を得ることが可能な減容脱塩素装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、以下の記載から明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたものであり、以下に関する:
1.含塩素プラスチック廃棄物の減容化のための減容化ユニット(2)と、塩素ガスを塩酸に変換するための塩素処理ユニット(3)と、前記減容化ユニット(2)と前記塩素処理ユニット(3)とを接続する導管(25)とを含む、含塩素プラスチック廃棄物のバッチ式減容脱塩素装置であって、
前記減容化ユニット(2)は、
- 含塩素プラスチック廃棄物を収容するための処理槽(4)、
- 前記処理槽(4)との間に空隙を形成して前記処理槽(4)を収容する外側容器(5)であって、前記含塩素プラスチック廃棄物を前記処理槽(4)に投入するための投入口(6)を有する外側容器、
- 塩素ガス排出口(12)、および
- 前記処理槽(4)内に熱を供給するための熱源(7)
を備え、
前記塩素処理ユニット(3)は、塩素ガスと接触させるための水を収容するための容器(17)を備え、
前記導管(25)は、前記塩素ガス排出口(12)から出る塩素ガスを、前記容器(17)中に導くように、前記塩素ガス排出口(12)と前記塩素処理ユニット(3)とを接続しており、
前記塩素処理ユニット(3)は、前記減容化ユニット(2)と一緒に移動可能なように、前記減容化ユニット(2)に固定されている、
前記バッチ式減容脱塩素装置。
2.前記塩素処理ユニット(3)が、前記外側容器(5)の外表面に取り付けられた支持体(27)に担持されることによって、前記減容化ユニット(2)に固定されていることを特徴とする、上記1に記載のバッチ式減容脱塩素装置。
3.キャスター(26)を備えることを特徴とする、上記1または2に記載のバッチ式減容脱塩素装置。
4.一回の含塩素プラスチック廃棄物の投入量が5,000kg未満の小型装置であることを特徴とする、上記1~3のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
5.前記減容化ユニット(2)が、処理槽(4)内に窒素ガスを導入するための窒素ガス導入口(13)を有することを特徴とする、上記1~4のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
6.前記減容化ユニット(2)が、前記含塩素プラスチック廃棄物を攪拌するための攪拌手段(14)を有することを特徴とする、上記1~5のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
7.前記処理槽(4)および前記導管(25)が、耐腐食性材料からなることを特徴とする、上記1~6のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
8.前記処理槽(4)が耐食合金からなり、前記導管(25)が石英からなることを特徴とする、上記1~6のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
9.前記減容化ユニット(2)が吸い込み式送風器(8)を備え、前記吸い込み式送風機(8)は、前記熱源(7)によって加熱された空気を、前記処理槽(4)内に熱風として供給するように配置されていることを特徴とする、上記1~8のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
10.前記減容化ユニット(2)が、前記空隙内に少なくとも一つの補助熱源(11)を有することを特徴とする、上記1~9のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
11.前記処理槽(4)及び投入口(6)が、前記含塩素プラスチック廃棄物を金属製カゴに入れて投入できるように構成されている、上記1~10のいずれか一つに記載のバッチ式減容脱塩素装置。
12.含塩素プラスチック廃棄物の減容化のための減容化ユニット(2)と、塩素ガスを塩酸に変換する塩素処理ユニット(3)と、前記減容化ユニット(2)と前記塩素処理ユニット(3)を接続する導管(25)とを含む、含塩素プラスチック廃棄物のバッチ式減容脱塩素装置であって、1回のプラスチック廃棄物処理量が5,000kg未満の小型装置であり、
前記減容化ユニット(2)は、
- 含塩素プラスチック廃棄物を収容するための処理槽(4)であって、背面板、互いに対向する1対の側面板、底板および天板と任意選択的に前面板とからなる直方体状の処理槽(4)、
- 前記処理槽(4)との間に空隙を形成して前記処理槽(4)を収容する外側容器(5)であって、前面板、背面板、互いに対向する1対の側面板、底板および天板からなる直方体状であり、前記前面板が前記含塩素プラスチック廃棄物を前記処理槽(4)に投入するための投入口(6)を有する外側容器(5)、
- 前記処理槽(4)内から前記外側容器(5)を貫通して前記減容化ユニット外部へと通ずる塩素ガス排出口(12)、
- 前記空隙内に配置された、前記処理槽内に熱を供給するための電気的熱源(7)、
- 前記熱源(7)によって加熱された空気を、前記処理槽(4)内に熱風として供給するように前記空隙内に配置された吸い込み式送風器(8)、
- 前記空隙内に配置された、少なくとも1つの補助熱源(11)、
- 前記処理槽(4)内に窒素ガスを導入するための窒素ガス導入口(13)、
および
- 前記含塩素プラスチック廃棄物を撹拌するための撹拌手段(14)、
を備え、
ここで、前記外側容器(5)はその底板の外表面にキャスター(26)を備え、前記処理槽(4)及び投入口(6)は、前記含塩素プラスチック廃棄物を金属製カゴに入れて投入できるように構成されており、
前記塩素処理ユニット(3)は、塩素ガスと接触させるための水を収容するための容器(17)を備え、
前記導管(25)は、前記塩素ガス排出口(12)から出る塩素ガスを、前記容器(17)中に導くように、前記塩素ガス排出口(12)と前記塩素処理ユニット(3)とを接続しており、ここで、前記導管(25)は、前記導管(25)内を流れる塩素ガスを前記容器(17)側に送風するための送風手段(19)と、塩素ガスを冷却するための冷却手段(21)とを備え、
前記塩素処理ユニット(3)は、前記外側容器(5)の外表面に取り付けられた支持体(27)に担持されることによって、前記減容化ユニット(2)に固定されており、
前記処理槽(4)および前記導管(25)は耐腐食性材料からなる、
前記のバッチ式減容脱塩素装置。
13.上記1~12のいずれか一つに記載の装置を用いてバッチ式で行われる、含塩素プラスチックから、脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物を得る方法であって、次のステップ:
(i)前記含塩素プラスチック廃棄物を、前記処理槽(4)中に投入するステップ;
(ii)前記処理槽(4)内の温度を、230~270℃に加熱して、前記含塩素プラスチック廃棄物から塩素ガスを発生させるステップ;
(iii)生じた塩素ガスを塩素ガス排出口(12)および導管(25)を介して前記塩素処理ユニット(3)内に送り、そこで水と接触させて塩酸を生成するステップ;
(iv)前記処理槽(4)内の温度を、330~370℃に加熱して、前記含塩素プラスチック廃棄物を軟化または半溶融させるステップ;
(v)前記処理槽(4)内の冷却により、軟化または半溶融させたプラスチック廃棄物を固化して、脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物を得るステップ;
を含む、前記方法。
14.ステップ(ii)および/または(iv)において、前記プラスチック廃棄物が攪拌されることを特徴とする、上記13に記載の方法。
15.ステップ(i)において、前記含塩素プラスチック廃棄物が、金属製カゴに入れられた状態で前記処理槽(4)内に投入されることを特徴とする、上記13または14に記載の方法。
16.以下のステップ:
(vi)前記脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物を、前記処理槽(4)内に窒素を導入しつつ、前記減容化ユニット(2)から回収するステップ、
をさらに含むことを特徴とする、上記13~15のいずれか一つに記載の方法。
17.ステップ(vi)において、前記脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物が、前記金属製カゴに入れられており、そしてカゴごと取り出すことによって回収されることを特徴とする、上記16に記載の方法。
18.以下のステップ:
(vii)前記塩酸を前記塩素処理ユニット(3)から回収するステップ、
をさらに含むことを特徴とする、上記13~17のいずれか一つに記載の方法。
【0012】
本発明に従う装置、方法を用いることにより、塩素を含むプラスチック廃棄物、すなわち含塩素プラスチック廃棄物から、塩素を効率的に分離除去し、かつ、該プラスチック廃棄物を効率的に減容化することができる。また、本発明の装置は、小型で移動可能であるため、例えばプラスチック廃棄物が回収された場所に当該装置を容易に移動させることができ、従ってその回収現場で、プラスチック廃棄物を、そこに含まれる塩素を安全に除去して塩酸として回収しながら、減容化することが可能である。さらに、本発明では、容易かつ短時間の作業で、含塩素プラスチック廃棄物を脱塩素化かつ減容化することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
【0014】
図1、2は、本発明の減容脱塩素装置1の例示的な実施形態を示す。これらの図に示されるように、本発明の減容脱塩素装置1は、塩素を含むプラスチック廃棄物を減容化する減容化ユニット2と、前記プラスチック廃棄物から発生する塩素ガスを塩酸に変換する塩素処理ユニット3と、これらの減容化ユニット2および塩素処理ユニット3を接続して、減容化ユニット2内で発生した塩素ガスを塩素処理ユニット3内に導く導管25とを備える。
【0015】
減容化ユニット2は、前記プラスチック廃棄物を減容化させる機能を有する。減容化ユニット2は、前記プラスチック廃棄物を、好ましくは密閉して(または実質的に密閉して)収容するための処理槽4、処理槽4との間に空隙を形成して処理槽4を収容する外側容器5を備えており、該外側容器5は前記プラスチック廃棄物を前記処理槽4に投入するための、好ましくは開閉式の、投入口6を有している。投入口6から処理槽4内にプラスチック廃棄物を投入し、処理槽4内を加熱して昇温させることにより、プラスチック廃棄物を軟化または半溶融化させ、その後冷却することにより減容化されたプラスチック廃棄物処理物が得られる。
【0016】
外側容器5は、これを含めた減容脱塩素装置が移動可能となるような大きさを有していることが好ましい。好ましくは、外側容器5は、1100~2500mm(W)x 1100~2500mm(D)x 1100~2500mm(H)、例えば1200~2300mm(W)x 1200~2300mm(D)x 1200~2300mm(H)の外径寸法を有する。また、外側容器5は、例えば、2~8m3、好ましくは4~6m3の容積を有することができる。外側容器5には、従来から熱風乾燥装置等の加熱装置の外側容器に使用されている材料を使用することができ、例えば、鋼板、好ましくは冷間圧延鋼板を使用することができる。
【0017】
処理槽4は、外側容器5内に当該外側容器5との間に空隙を形成して収容されており、この処理槽4内において、プラスチック廃棄物が加熱されることにより、これが軟化または半溶融化される。処理槽4の大きさは、外側容器5内に当該外側容器5との間に空隙を形成して収容され得る大きさであれば特に限定されないが、好ましくは、500~1000mm(W)x 500~1000mm(D)x 500~1000mm(H)、例えば600~800mm(W)x 600~800mm(D)x 600~800mm(H)の槽内寸法を有する。また、処理槽4は、少なくともその内側表面が、好ましくはその全体が、耐腐食性材料、特に塩素分による腐食に耐える材料からなる。前記材料の例としては、耐食合金、好ましくはAlloy C276(例えばHASTELLOY(登録商標)C-276)を挙げることができる。このような処理槽4を使用することにより、プラスチック廃棄物からの腐食性ガス、特に塩素含有ガスの発生下でも、問題なく減容化・脱塩素化を行うことが可能である。
【0018】
本発明の1つの好ましい実施態様では、前面板と背面板と互いに対向する1対の側面板と底板と天板とからなる直方体状の外側容器5内に、前面板(任意)と背面板と互いに対向する1対の側面板と底板と天板とからなる直方体状の処理槽4が収容されている。
【0019】
また、減容化ユニット2は、外側容器5に投入口6を有する。好ましくは、外側容器5の前面板が投入口6を有する。前面板全体が投入口6を構成していてもよいが、好ましくは、前面板の一部が投入口6を構成している。投入口6は、好ましくは開閉式であって、より好ましくは扉構造を有し、例えば片開き式扉または観音開き式扉であることができる。従って、例えば前面板の一部が片開き式または観音開き式の扉構造を有することができる。
【0020】
本発明の1つの実施態様において、処理槽4は前面板を持たず、この場合、外側容器5の投入口6から直接、前記プラスチック廃棄物が処理槽4内に投入される。
【0021】
本発明の別の実施態様では、処理槽4も、好ましくはその前面板に投入口を有する。この場合も、前面板全体が投入口を構成していてもよく、または前面板の一部が投入口を構成していてもよい。該投入口は、好ましくは開閉式であって、より好ましくは扉構造を有し、例えば片開き式扉または観音開き式扉であることができる。従って、例えば前面板の一部が片開き式または観音開き式の扉構造を有することができる。このように処理槽4が投入口、好ましくは扉を有する場合には、外側容器5の投入口と処理槽4の投入口は二重投入口、好ましくは二重扉(外扉と内扉)を構成していてもよい。これらの投入口は連動して開閉する機構を有していてもよく、あるいは一体化された投入口として構成されていてもよい。
【0022】
減容化ユニット2は、処理槽4内に熱を供給するための熱源7を備える。熱源7は、好ましくは電気的熱源であり、より好ましくは電気ヒーターである。本発明の1つの好ましい実施態様において、熱源7は熱風として熱を処理槽4内に供給する。熱源7は、例えば、前記空隙内に、または外側容器5の外側に配置される。好ましくは、熱源7は前記空隙内に、例えば外側容器5の内表面に固定して、配置される。
【0023】
また、本発明の1つの好ましい実施態様において、減容化ユニット2は、吸い込み式送風器8を備え、前記熱源7によって加熱された空気を、前記処理槽4内に熱風として供給するように配置されている。
【0024】
本発明の1つの好ましい実施態様において、熱源7は前記空隙内に配置され、前記空隙内の空気が熱源7によって加熱される。そして、例えば、吸い込み式送風器8も前記空隙内に(好ましくは、熱源7に近接して)配置され、これはさらに処理槽4内に直結するように配置される。吸い込み式送風器8は、例えば送風器駆動用のモーター10によって駆動して、加熱された空気を熱風として処理槽4内に供給する。ここで、例えばモーター10の回転力はベルト9を介して吸い込み式送風器8に伝えられる。モーター10は典型的には、外側容器5の外側に接続することができる。
【0025】
上記のような熱源を用いることにより、加熱処理作業が容易ととなるとともに、作業時間の短縮が可能となる。また、このような熱源は小型化することが可能であり、従って、小型で移動可能な減容化ユニットを実現することができる。
【0026】
また、減容化ユニット2は、任意選択的に1つまたは複数の補助熱源11を有する。好ましくは、減容化ユニット2は、補助熱源11を、処理槽4内および/または前記空隙内に、それぞれ例えば処理槽4の内表面、外表面または内外表面両面に、および/または外側容器5の内側表面に固定して配置することによって備えていてもよい。例えば、補助熱源11が前記空隙内に配置された場合には、熱源7による空隙内の空気の加熱を補助することができ、そのように加熱された空気が前記の吸い込み式送風器8によって処理槽4内に熱風として供給される。好ましくは、補助熱源11は電気的熱源であり、より好ましくは電気ヒーターである。このような補助熱源を備えることにより、加熱処理作業の容易性のさらなる向上や、作業時間のさらなる短縮が可能となる。
【0027】
減容化ユニット2はまた、塩素ガス排出口12を備える。処理槽4内で前記プラスチック廃棄物を加熱して軟化または半溶融化させると、前記プラスチック廃棄物は塩素分を含むために、塩素含有ガス、特に塩素ガスが発生する。減容化ユニット2は、塩素ガス排出口12を介して、このようなガスを処理槽4から排出する。塩素ガス排出口12は、処理槽4内から外側容器5を貫通して減容化ユニット2外部へと通じている。塩素ガス排出口12は例えば管の形態であってもよい。塩素ガス排出口12を配置する場所は特に限定はされないが、導管への接続の容易さ等の観点から、例えば減容化ユニット2の上部(例えば処理槽4および外側容器5の天板側)に配置することができる。
【0028】
塩素ガス排出口12は、少なくともその内側表面が、好ましくはその全体が、耐腐食性材料、特に塩素分による腐食に耐える材料からなる。前記材料の例としては、耐食合金、好ましくはAlloy C276(例えばHASTELLOY(登録商標)C-276)を挙げることができる。このような材料を使用することにより、損傷を受けることなく塩素ガスを排出することが可能である。
【0029】
減容化ユニット2はさらに、窒素ガス導入口13を備えることができる。前記プラスチック廃棄物の加熱の間に、ガスの発生により、処理槽4内が爆発性雰囲気になってしまうおそれがあるため、爆発防止用に、窒素ガス導入口13から、不活性ガスである窒素(N2)ガスを処理槽4内に導入してもよい。窒素ガス導入口13は、減容化ユニット2外部から外側容器5を貫通して処理槽4内へと通じている。窒素ガス導入口13は、例えば管の形態であってもよい。窒素ガス導入口13を配置する場所は特に限定はされないが、例えば減容化ユニット2の底部(例えば処理槽4および外側容器5の底板側)に配置される。このような導入口を介して、当業者に公知の装置・方法により窒素ガスを処理槽4内に導入することができる。
【0030】
1つの好ましい実施態様において、減容化ユニット2は、前記プラスチック廃棄物を撹拌するための撹拌手段14を備える。本発明の装置では、処理槽4内において前記プラスチック廃棄物が加熱、好ましくは熱風によって加熱されるが、通常前記廃棄物の外側から軟化もしくは半溶融化が進行するため、前記廃棄物の内部を撹拌することによって、廃棄物全体にわたる十分な加熱を促進することができる。
【0031】
好ましくは、撹拌手段14は、撹拌棒軸部とその先端部に取り付けられた撹拌棒羽根部とを有する撹拌器である。この場合、撹拌棒羽根部は撹拌棒軸部の下側(
図1の上下方向における下側)に取り付けられている。撹拌手段14は、処理槽4の上下方向(
図1の上下方向)に延在するように少なくとも一本配置されている。前記撹拌棒軸部の長さ(
図1の上下方向の長さ)は、前記撹拌棒羽根部が前記プラスチック廃棄物内部に十分に到達するが、処理槽4の底面には触れないように設定される。前記撹拌棒羽根部の左右方向に関する寸法(
図1における左右方向での寸法)は、前記プラスチック廃棄物を十分に撹拌できる長さであれば特に限定されないが、例えば、5cm~30cmであることができる。
【0032】
本発明の1つの実施態様において、撹拌手段14は、撹拌棒軸部の上端部が減容化ユニット2の上部(例えば処理槽4および/または外側容器5の天板)に固定されているか、または撹拌棒軸部が処理槽4内から処理槽4および外側容器5を貫通して減容化ユニット2外部へ伸びるように、撹拌棒軸部の少なくとも一部が適切な固定手段を用いて当該装置に固定されている。これらの固定方法・手段は当業者によく知られている。好ましくは、減容化ユニット2は、前記撹拌棒軸部を回転させる回転機構としての撹拌手段用モーターを備えており、当該モーターによって、撹拌手段14が撹拌される。本発明の1つの実施態様では、前記撹拌手段用モーターが外側容器5の外表面に固定して配置されており、そこに、処理槽4内から処理槽4および外側容器5を貫通して伸びる撹拌手段14がその撹拌棒軸部の上端部を介して接続されることによって、撹拌手段14も減容化ユニット2に固定されている。当業者であれば、プラスチック廃棄物のタイプ、形状や量に応じて、適切な回転数を適宜設定することが可能である。
【0033】
1つの好ましい実施態様において、減容化ユニット2は換気抗15を有する。このような換気抗を設けることにより、処理槽4内の熱風の流れを良くすることができ、ひいては前記プラスチック廃棄物の加熱効率を高めることができる。換気抗15は、外部空気を給排して処理槽4内の換気を実現する機構を備えたものであれば特に限定されず、そのような換気機構を備えた換気手段やその設置方法は当業者に公知である。換気抗15を配置する場所は特に限定はされないが、外部空気の取り入れ効率等の観点から、例えば減容化ユニット2の上部(例えば処理槽4および外側容器5の天板側)に配置される。
【0034】
1つの好ましい実施態様において、減容化ユニット2は、処理槽4内の温度を測定するための温度計測器16を有する。温度計測器16は、処理槽4内の温度を測定できる温度測定手段を備えたものであれば特に限定されず、そのような温度測定手段やその設置方法は当業者に公知である。温度計測器16を配置する場所は特に限定はされないが、例えば、減容化ユニット2の上部(例えば処理槽4の天板側)に配置される。
【0035】
塩素処理ユニット3は、前記プラスチック廃棄物から発生した塩素ガスを塩酸に変換する機能を有する。塩素処理ユニット3は、水を収容するための容器17を備える。好ましくは、この水収容容器17は密閉型(実質的に密閉型)の容器であり、塩素ガスに耐性でありかつ塩酸を保持できる材料、好ましくはポリ塩化ビニルからなる(いわゆる塩ビ容器)。1つの好ましい実施態様において、水収容容器17は透明である。
【0036】
前記導管25により、前記塩素ガス排出口12から出る塩素ガスが、前記容器17中に導かれる。例えば、水収容容器17は、その上部(例えば上面部)に、導管導入口を有し、そこを介して前記導管25が接続される。好ましくは、前記導管25は、前記導入口から挿入され、その少なくとも一部が前記容器17内に突出するように、前記容器17に接続される。前記プラスチック廃棄物から発生した塩素ガスが、前記導管を通って水収容容器17内に導かれ、水収容容器17内に予め収容された水に接触させて溶解させることにより塩酸に変換される。水収容容器17内に予め収容される水の量は、発生した塩素ガスを十分に処理できる量であることが望ましく、当業者であればプラスチック廃棄物の処理量等に応じてそのような量を適切に設定することができる。例えば、水収容容器17の容積の1/2~1/4の量、例えば1/3程度の量の水を予め収容しておくことが好ましい。
【0037】
本発明の1つの実施態様において、塩素処理ユニット3は、水収容容器17の典型的には下部(例えば底面部)に、塩酸排出手段、例えばバルブ18を有していてもよい。このような塩酸排出手段により、生成した塩酸を容易に回収することができる。
【0038】
導管25は、処理槽4内での前記プラスチック廃棄物の加熱により発生した塩素ガスを、塩素処理ユニット3内に導く機能を有する。導管25は、減容化ユニット2と塩素処理ユニット3を接続し、減容化ユニット2の処理槽4から出る塩素ガスをその中を通して塩素処理ユニット3に導くものであれば、その構成、形状、材質は特に限定されない。導管25は、その一方の端部(減容化ユニット接続端)で減容化ユニット2に、具体的には塩素ガス排出口12に接続され、他方の端部(塩素処理ユニット接続端)で、塩酸処理ユニット3に好ましくは導管導入口を介して接続される。導管25は、その少なくとも一部(塩素処理ユニット接続端側の一部)が、導管導入口を通って水収容容器17内に突出するように配置されていてもよい。また、導管25は、前記の突出部分が水収容容器17内に予め供された水に接触するように配置されても、または接触しないように配置されてもよい。
【0039】
導管25は、少なくともその内側表面が、好ましくはその全体が、耐腐食性材料、特に塩素分による腐食に耐える材料からなることが好ましい。前記材料の例としては、例えば石英を挙げることができる。好ましくは、前記材料は透明である。従って、例えば導管25は透明な石英管である。このような材料を使用することにより、損傷を受けることなく塩素ガスを塩素処理ユニット3内に導くことが可能である。
【0040】
好ましくは、導管25は、その中を流れる塩素ガスを前記容器側に送風するための送風手段、例えばファンのような送風器を備える。このような送風手段19を用いて塩素ガスの流れを作ることによって、処理槽4内で生じた塩素ガスを水収容容器17内まで円滑に効率よく導くことができる。例えば、送風手段19は減容化ユニットとの接続部位と塩素処理ユニットとの接続部位との間に配置することができる。送風手段19は、導管25内に塩素ガスの流れを生成できるものであれば特に限定されず、そのような送風手段やその設置方法は当業者に公知である。このような送風手段19の存在は、装置内全体における塩素ガスを含めた生成ガスの流れを良くすることによって、生成ガスに起因する爆発を抑制するという効果も有し得る。
【0041】
1つの好ましい実施態様において、導管25は、塩素ガスを検知するための塩素ガス検知器20を備える。塩素ガス検知器20は、処理槽4内で塩素ガスが発生し、塩素ガス排出口12や導管25内に塩素ガスが到達したことを検出するものである。塩素ガス検知器20は、塩素ガス排出口12や導管25内に塩素ガスが到達したことを検出できるものであれば特に限定されず、そのような検知器やその設置方法は当業者に公知である。好ましくは、塩素ガス検知器20は、送風手段19の上流(塩素ガスの流れ方向からみて上流)に配置される。例えば、塩素ガス検知器20は、塩素ガス排出口に近接して配置することができるが、あるいは、導管25に配置する代わりに、塩素ガス排出口12にまたは塩素ガス排出口12と導管25にまたがって配置してもよい。
【0042】
本発明の別の好ましい実施態様において、導管25は、塩素ガスを冷却するための冷却手段21を有する。好ましくは、導管25の少なくとも一部を冷却するように冷却手段21が配置される。例えば、導管25がその少なくとも一部が水収容容器17内に突出するように配置される場合には、その突出部分の一部または全体を冷却するように冷却手段21が配置される。冷却手段21は、導管25内を通る塩素ガスを冷却できるものであれば特に限定されない。本発明の1つの好ましい実施態様において、冷却手段21は、導管25の内側に水道管が配管され、その水道管内に水を循環させて冷却を行う構成を有しており、例えば冷却筒の形態を有している。前記水道管は、例えば、ポリ塩化ビニルからなることができる(いわゆる塩ビ管)。このような冷却手段を用いて塩素ガスを冷却して水と接触させることにより、塩素ガスから効率的に塩酸を得ることが可能である。ここで、冷却手段21は前記容器内の水に接触するように配置されても、または接触しないように配置されてもよい。
【0043】
なお、前記の冷却手段は、導管にではなく、塩素処理ユニットの一部として設けてもよく、その場合には、導管25において冷却すべき部分を、塩素処理ユニットに配置した冷却手段に供する(例えば冷却手段と接触させる)ことによって、当該部分の内部を通過する塩素ガスを冷却する。
【0044】
本発明の別の好ましい実施態様において、導管25はまた、当該導管25の開閉を行うためのバルブ、好ましくは電動バルブ22を有する。前記バルブを配置する位置は特に限定はされないが、例えば塩素ガス検知器20および送風手段19が存在する場合には、塩素ガス検知器20の下流(塩素ガスの流れ方向からみて)かつ送風手段19の上流(塩素ガスの流れ方向からみて)に配置してもよい。前記バルブは、管の開閉を好ましくは電動で行えるものであれば特に限定されず、そのようなバルブ、特に電動バルブやその設置方法は当業者に公知である。
【0045】
上述のように、導管25は、その一方の端部で減容化ユニット2の塩素ガス排出口12に接続されるが、あるいは、導管25は塩素ガス排出口12と一体化されていても、例えば一体成形されていてもよい。この場合、両部分(導管部分および塩素ガス排出口部分)は好ましくは同一の材料(例えば、上述の耐食合金や石英)から構成される。
【0046】
上記のような構成を有する本発明の減容脱塩素装置を用いることによって、処理槽4内に、含塩素プラスチック廃棄物を収容し、好ましくは実質的に無酸素状態で、当該廃棄物を加熱処理して軟化または半溶融化すること、および加熱処理中に生じる塩素ガスを、処理槽4から導管25を介して塩酸処理ユニット3中へと導入し、そこで水と接触させて塩酸に変換することができ、その結果、含塩素プラスチック廃棄物の減容化と、塩素含有プラスチック廃棄物からの塩素の分離除去を同時に達成することができる。
【0047】
本発明の減容脱塩素装置では、塩素処理ユニット3は、減容化ユニット2と一緒に移動可能なように減容化ユニット2に固定されている。例えば、減容化ユニット2の外側容器5の外表面に取り付けられた支持体27に担持されることによって、塩素処理ユニット3は減容化ユニット2に固定される。前記支持体は例えば金属材料からなる板であることができるが、塩素処理ユニット3を担持できるものであればその形状・材料は特に限定されない。
【0048】
本発明の1つの好ましい実施態様において、前記支持体27は、所望の高さで塩素処理ユニット3を担持できるように構成されている台である。前記支持体27は、外側容器5の外表面に係合または螺合等によって、または溶接等によって、取り付けることができ、取り付けた支持体、例えば台の上に塩素処理ユニット3が担持される。例えば、前記取り付け台は、断面が略L字状の金属板であり、
図1に示すように、略直交している2つの部分のうち、一方の部分を外側容器5外表面への取り付けのために使用し、他方の部分に塩素処理ユニット3を担持することができる。なお、好ましくは、導管25も減容化ユニット2と塩素処理ユニット3に固定して接続されており、すなわちこれらのユニットと一体化された形態にある。
【0049】
本発明の減容脱塩素装置は小型であり、上記のような固定により各ユニットが一体化されることによって、特殊な運搬手段・装置を用いずに移動させること、例えばトラックの荷台等に搭載して移動させることが可能である。また、一体化されているため、装置稼働の前後に装置の分解・再構成を行う必要もない。
【0050】
本発明の別の好ましい実施態様において、前記の減容脱塩素装置は、キャスター26を備える。好ましくは、前記の減容脱塩素装置は、減容化ユニット2の外側容器5の底板外表面にキャスターを備える。キャスターは、減容脱塩素装置の重量を考慮して必要とされる許容荷重を有するものであれば特に限定はされず、そのような各種キャスターやその取り付け方法は当業者に公知である。上述のように、本発明の減容脱塩素装置は小型である上に一体化されているため、このようなキャスターを用いると特殊な運搬手段・装置や運搬のための過剰な人員が不要であり、運搬コストを抑えながら、プラスチック廃棄物の回収現場に運搬し、そこで当該廃棄物の減容化・脱塩素処理を行うことができる。
【0051】
本発明の減容脱塩素装置は、ガス還液パイプ23を有していてもよい。ガス還液パイプ23は、塩素処理ユニット3の水収容容器17内に導入される塩素ガスの量が過剰である場合、例えば水収容容器17内の水に溶解できる許容範囲を超えた場合に、塩素ガスを処理槽4内に戻す機能を有する。従って、導管25とは独立して、減容化ユニット2と塩素処理ユニット3を接続する。ガス還液パイプ23は、減容化ユニット2と塩素処理ユニット3を接続し、塩素処理ユニット3内からの還流ガスをその中を通過させて減容化ユニット2の処理槽4に戻すことができるものであれば、その構成・形状・材料は特に限定されない。ガス還液パイプ23は、少なくともその内側表面が、好ましくはその全体が、耐腐食性材料、特に塩素分による腐食に耐える材料からなることが好ましい。前記材料の例としては、例えば石英を挙げることができる。好ましくは、前記材料は透明である。従って、例えばガス還液パイプ23は透明な石英管である。また、1つの好ましい実施態様において、前記の減容脱塩素装置は、ガス還液パイプ23と減容化ユニット2との接続部に逆弁24を有する。当該逆弁により、還流ガスのみを塩素処理ユニット3から処理槽4内へ導くことができる。逆弁24は、上記機能を有するものであれば特に限定されず、そのような逆弁やその設置方法は当業者に公知である。
【0052】
本発明の1つの実施態様において、前記の減容脱塩素装置では、減容化ユニット2の処理槽4及び投入口6は、前記含塩素プラスチック廃棄物を金属製カゴに入れて投入できるように構成されている。前記のプラスチック廃棄物を金属製カゴに投入し(好ましくは収納し)、その後、当該カゴごと処理槽4の中に入れることにより、前記プラスチック廃棄物を容易に処理槽4内に収容することができ。また、処理後の廃棄物処理物についても、当該カゴに入れられている(好ましくは収納されている)ので、当該カゴごと処理槽4から取り出すことにより、容易に処理物を回収することが可能である。当該金属製カゴの大きさは、処理槽4内に収容できる大きさであれば特に限定されないが、好ましくは0.5以上の容積、例えば0.5~1.5m3の容積を有する。前記金属製カゴは、例えば網目状または多孔性の形状を有していてもよい。当該金属製カゴは、必要に応じて、処理物を前記カゴから離れやすくするために、その表面上にフッ素加工等が施してあってもよい。
【0053】
前記の減容脱塩素装置は、バッチ式で処理を行うための装置である。バッチ式により、より安全に減容脱塩素処理を実施することができる。
【0054】
上述のように、本発明の減容脱塩素装置は、その構成要素である減容化ユニット2および塩素処理ユニット3(および任意選択的に導管25)は一緒に移動可能なように一体化されている。そして、前記減容脱塩素装置は小型であり、好ましくは、1回のプラスチック廃棄物処理量が10,000kg未満、より好ましくは7,000kg未満、最も好ましくは5,000kg未満の小型装置である。従って、本発明の減容脱塩素装置は、特殊な運搬手段・装置なしに例えば4tトラック等によって運搬をすることが可能である。また、このように本発明の減容脱塩素装置は小型ではあるが、バッチごとの処理時間が短時間であり、処理操作も容易であるため、1日に何回もの処理が可能であり、十分な量の廃棄物(例えば1日あたり当該装置1台で15,000kg以上、好ましくは18,000kg以上の廃棄物)を処理することが可能である。
【0055】
本発明はまた、含塩素プラスチック廃棄物から、脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物を得るための方法に関する。前記方法は、バッチ式で行われる。好ましくは、前記方法は上述の装置を用いて実施される。
【0056】
前記方法は、
(i)前記含塩素プラスチック廃棄物を、前記処理槽4中に投入するステップ、
を含む。
【0057】
前記プラスチック廃棄物は、塩素を含有するプラスチックの廃棄物である。もちろん塩素分を含まないプラスチック廃棄物を処理することも可能ではあるが、上記装置・方法は、従来技術では焼却するか埋め立てられるしかなかった塩素分を含むプラスチック廃棄物を処理するための装置・方法であるため、通常は、前記プラスチック廃棄物は、含塩素プラスチック廃棄物である。塩素を含有するプラスチックとしては例えばポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)が挙げられるがこれらに限定はされない。また、前記廃棄物は、1種の塩素含有プラスチックからまたは2種以上の塩素含有プラスチックからなっていてもよいもよいが、通常、前記廃棄物は、塩素を含有するプラスチックの他に、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等の非塩素系プラスチックの廃棄物を含む。さらに、前記廃棄物は、木片、金属、紙などの付着物を含んでいてもよい。本願では、前記の装置および/または方法を用いることにより、1種またはそれ以上の塩素含有プラスチックの廃棄物はもとより、それに加えてPP等の非塩素系プラスチックを含めた各種プラスチック製品の廃棄物であっても、さらにそれが木片等の付着物を含んでいる場合であっても、問題なく脱塩素化しながら減容化できることが見出された。
【0058】
前記プラスチック廃棄物は、投入口6から、減容化ユニット2の処理槽4内に投入される。この際、前記廃棄物は、上記のような金属製カゴに入れられた(好ましくは収納された)状態で、当該カゴごと処理槽4内に入れることもできる。また、前記廃棄物は、必要に応じて、ロータリーキルンのような装置を用いて破砕処理を行った後に、減容化ユニット2内に投入してもよい。
【0059】
前記方法はまた、
(ii)前記処理槽4内の温度を、230~270℃に加熱して、前記含塩素プラスチック廃棄物から塩素ガスを発生させるステップ;
を含む。
【0060】
前記廃棄物を減容化ユニット2内に投入した後に、処理槽4内の温度を230~270℃、好ましくは240~260℃に加熱する。このような温度に加熱することにより、塩素含有プラスチック、典型的にはポリ塩化ビニル(PVC)のガス化により、塩素ガスが発生する。塩素ガス発生が終了するまで、前記温度を保持する。処理する廃棄物の量等にも依存するが、前記温度は、例えば、0.5~5時間、好ましくは1~3時間、例えば2時間、保持される。
【0061】
1つの好ましい実施態様において、前記廃棄物が前記温度に加熱される間、前記廃棄物は、撹拌手段14によって撹拌される。当該撹拌により、廃棄物全体にわたる効率的な加熱が促進される。
【0062】
前記方法はまた、
(iii)生じた塩素ガスを塩素ガス排出口12および導管25を介して前記塩素処理ユニット3内に送り、そこで水と接触させて塩酸を生成するステップ;
を含む。
【0063】
減容化ユニット2から排出されたガスは、塩素ガス排出口12および導管25を介して、塩素処理ユニット3内に導入される。
【0064】
また、本発明の1つの好ましい実施態様では、導管25に配置された送風手段19によって塩素ガスの流れを作ることにより、処理槽4内で生じた塩素ガスを塩素処理ユニット3の水収容容器17内まで、より一層円滑にかつ効率よく導くことができる。
【0065】
水収容容器17内に導かれた塩素ガスを、そこに予め収容された水と接触させる。塩素ガスが水に溶解することにより塩酸が生じる。好ましくは、塩酸ガスは、導管25の冷却手段21によって冷却して、水と接触させる。このように塩素ガスを冷却して水と接触させることにより、塩素ガスから塩酸をより効率的に得ることが可能である。当該冷却は、塩素ガスが液化する温度に冷却することが好ましく、例えば50~60℃に冷却することができる。
【0066】
前記塩酸は、例えば水収容容器17の下部(例えば底面部)に設けたバルブ18のような塩酸排出手段を用いることにより、例えば塩素処理ユニット3の下流に配置した回収用の別途容器に、回収することができる(ステップ(vii))。このような回収は、ステップ(iii)と同時に、および/またはステップ(iii)の後に行うことができる。塩酸の回収は、当該方法の(i)~(v)のステップを全て完了した後に行ってもよい。
【0067】
前記方法はまた、
(iv)前記処理槽4内の温度を、330~370℃に加熱して、前記含塩素プラスチック廃棄物を軟化または半溶融させるステップ;
を含む。
【0068】
塩素ガスの発生が終了した後、処理槽4内の温度を、熱源7を用いて、330~370℃、好ましくは340~360℃に昇温させる。この加熱により、前記廃棄物、特にそこに含まれる非塩素系プラスチック、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)等が軟化または半溶融化する。前記温度は、前記廃棄物が十分に軟化または半溶融化するまで保持され、処理する廃棄物の量等にも依存するが、前記温度は、例えば、0.5~5時間、好ましくは1~3時間、例えば2時間、保持される。
【0069】
ここで、本明細書において使用される場合に、「軟化」または「半溶融化」とは、プラスチック廃棄物を加熱によって軟らかく、変形しやすい状態にすることを意味し、完全に溶融した液体状態には至っていない状態を意味する。
【0070】
1つの好ましい実施態様において、前記廃棄物が前記温度に加熱される間、前記廃棄物は、撹拌手段14によって撹拌される。当該撹拌により、当該撹拌により、廃棄物全体にわたる効率的な加熱が促進され、効率的かつ均一な軟化または半溶融化を短時間で達成することができる。
【0071】
上記のように、二段階で前記廃棄物の加熱を行うことにより、前記廃棄物から効率的に塩素ガスを発生させた後に、プラスチックの軟化もしくは半溶融化を行うことができ、その結果、短時間で安全かつ容易に前記廃棄物の減容化および脱塩素化を達成することができる。
【0072】
前記方法はまた、
(v)前記処理槽4内の冷却により、軟化または半溶融させたプラスチック廃棄物を固化して、脱塩素化かつ減容化されたプラスチック廃棄物処理物を得るステップ;
を含む。
【0073】
前記プラスチック廃棄物の軟化または半溶融化後に、前記減容化ユニット2内(処理槽4内)を冷却することにより、軟化または半溶融させたプラスチック廃棄物が固化し、固体のプラスチック廃棄物処理物を得ることができる。なお、本技術分野では、このようなこのような減容化された固体のプラスチック廃棄物処理物は「インゴット」とも呼ばれる。
【0074】
前記冷却は、何等かの冷却装置・手段を用いて行っても、または投入口を開けて外気を減容化ユニット2内(処理槽4内)に入れることによって行ってもよい。後者でも、例えば室温付近まで冷却することにより、軟化または半溶融させたプラスチック廃棄物の固化を十分に達成することができる。
【0075】
前記冷却後、プラスチック廃棄物処理物を、投入口6から回収する。上記のように前記廃棄物を金属製カゴに入れて(好ましくは収納して)当該カゴごと処理槽4内に入れた場合には、当該カゴごと投入口から取り出すことで容易にプラスチック廃棄物処理物を回収することができる。
【0076】
本発明の1つの実施態様では、処理槽4内を昇温して前記プラスチック廃棄物を加熱している間、および/または当該加熱後に、処理槽4内に窒素ガスが導入される。前記廃棄物の加熱の間にガスが発生し、可燃性ガスが処理槽内に残存すると、それによって処理槽4内が爆発性雰囲気になってしまうおそれがあるため、このような窒素ガスの導入により残存する可燃性ガスを排除して爆発を防止することができる。この場合、窒素を導入しながら、および/または窒素導入の完了後に、プラスチック廃棄物処理物を回収することができる(ステップ(vi))。窒素ガスの導入は、処理槽4内が不活性雰囲気になるまで行われる。あるいは、窒素の導入は、前記含塩素プラスチック廃棄物を加熱している間中ずっと行ってもよい。
【0077】
上記のような装置・方法を用いることにより、含塩素プラスチック廃棄物から、塩素を効率的に分離除去し、かつ、該プラスチック廃棄物を効率的に減容化することができる。また、本発明の装置は、小型で移動可能であるため、例えばプラスチック廃棄物が回収された場所に当該装置を容易に移動させることができ、従ってその回収現場で、プラスチック廃棄物を、そこに含まれる塩素を安全に除去して塩酸として回収しながら、減容化することが可能である。そして、本発明ではバッチ式を採用しているため、安全に運転を行うことができ、また電気的熱源を使用した場合には、装置の取り扱い・運転が簡単かつ短時間に可能であることに加えて、廃棄物の投入・廃棄物処理物の取り出しの作業も容易に、安全にそして短時間で行うことができる。また、上記の装置・方法では、塩素に対して耐腐食性のある材料を使用しているため、塩素ガスの発生下においても、問題なく処理を継続することができる。また、装置をトラックの荷台等に載せて運搬が可能なために運搬コストを大きく抑制することができ、さらに、簡単で効率的に含塩素プラスチック廃棄物を処理できるため、コスト採算に乗せながら、含塩素プラスチック廃棄物を安全に処理することができる。このようなコスト採算性は従来技術では実現できなかった利点である。また上記のような装置・方法を用いることにより、PP等の非塩素系プラスチック廃棄物と含塩素プラスチック廃棄物の混合物の形態にある廃棄物であっても、さらにそれが木片等の付着物を含んでいる場合であっても、上述の利点を享受しながら問題なく脱塩素減容化することが可能である。
【0078】
上記のようにして得られたプラスチック廃棄物処理物(インゴット)は、塩素を含まないか、塩素を実質的な量では含まないため、例えば再生資源としてリサイクル等に使用することができ、例えば再生ペレットに加工し、他のプラスチック製品として再利用するか、あるいは加熱分解・油化等に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】
図1は、本発明の減容脱塩素装置の一態様の概要を示す全体構成図(正面)である。
【
図2】
図2は、熱源を含めた加熱機構の断面に焦点を当てて本発明の減容脱塩素装置を簡略化して示す全体構成図(右側面)である。
【符号の説明】
1 減容脱塩素装置
2 減容化ユニット
3 塩素処理ユニット
4 処理槽
5 外側容器
6 投入口
7 熱源
8 吸い込み式送風器
9 ベルト
10 モーター
11 補助熱源
12 塩素ガス排出口
13 窒素ガス導入口
14 撹拌手段
15 換気抗
16 温度計測器
17 水収容容器
18 バルブ
19 送風手段
20 塩素ガス検知器
21 冷却手段
22 電動バルブ
23 ガス還液パイプ
24 逆弁
25 導管
26 キャスター
27 支持体
【実施例0080】
以下、本発明を例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は当該例に限定されるものではない。
【0081】
図1に記載の減容脱塩素装置を用いて、含塩素プラスチック廃棄物の脱塩素化および減容化を行った。
【0082】
減容化ユニット2としては、下記のような仕様を有し、最高700℃まで加熱できる熱風攪拌式の電気炉(以下、単に「機器」とも呼ぶ)を使用した:
1)昇温速度: 室温から500℃/3時間
2)炉内寸法: 700x700x700
3)負荷回路: 4回路(上下、両側)
4)電気容量: 22KW/H
5)内部構成: Alloy C276鋼鈑張り
6)外部構成: 冷間圧延鋼板(アイボリー焼き付け塗装)
カバーステンレス
7)発熱体: シーズヒーター 1KWx4面x4本(材質インコロイ)
8)炉扉: 手動片開式(ハンドル=コンテナーハンドル)
パッキング2重式(テフロンブレード+シリコンパッキング)
9)熱電対: JIS-Kシーズ ψ4.8x600L(W素線2線式)1対
10)機器外形寸法: 1540w x 2215D x 1840H
【0083】
I.事前準備
プラスチック廃棄物から、手選別でマテリアルリサイクル可能な素材を選別し、可能な限り、塩素を含むためにマテリアルリサイクルが困難なプラスチック廃棄物を処理対象とした。塩ビ透明タンク(水収容容器17)下部に、塩酸回収ガラス容器を設置した。前記タンク内にタンク容積の3分の1程度の水を注入した。
【0084】
II.廃棄物投入
機器内部が清掃されていることを確認後、選別した塩素含有プラスチック廃棄物を、金網カゴ内に投入した。廃棄物入りのカゴを機器本体内に格納した。
【0085】
II.脱塩素化・減容化
機器本体の加熱温度を250℃に設定し、スイッチをONにして運転を開始した。本体内部の温度が100℃に達した時に、換気抗15を「開」にした。塩素ガス検知器20の指示に注意し、検知器が作動した時に、ガス誘導パイプ(導管25)が「開」の状態になっていること、塩ビ透明タンク内部に水が3分の1程度(30L)注入されていること、およびバルブ18が「閉」となっていることを確認し、送風器(送風手段19)を起動した。
ガス検知器が作動し、「塩素ガス」の発生を感知した時点の温度を記録し、ガス検知器でガスの発生が止まったことが確認されるまで、ガス発生時の温度を維持した。発生した塩素ガスが、塩ビ透明タンクに誘導され、同タンク内の水に溶解され回収されていることを確認した。
塩酸ガスを水に溶解した塩酸を、バルブ18を通して前記の塩酸回収用ガラス容器に回収した。
ガス検知器で塩素ガスの発生が終了したことを確認した後、機器本体の加熱温度を350℃に設定して、加熱を継続した。温度が250℃以上になると、PP、PE、PS等の素材は約350℃までの温度領域で溶融減容されてインゴットとなる。
【0086】
III.インゴットの回収
機器本体内部のカゴに入れてあるプラスチック廃棄物が軟化もしくは半溶融し、インゴットに加工されたことを確認し、スイッチをOFFにして運転を終了した。運転終了時には、窒素ガスを機器本体内部に約1分間注入する。窒素ガス注入後に扉を開き、材料入りの金網カゴを取り出す。取り出しは機器本体内がある程度冷却された後に行うが、金網の温度に注意しながら耐熱手袋を使用して行う。
【0087】
これらの処理により、含塩素プラスチック廃棄物から、安全かつ効率的に塩素が分離除去され、実質的に塩素を含まないインゴットと塩酸を得ることができる。