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▶ 株式会社株式会社おさかな工房まるせんの特許一覧

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  • 特開-冷凍鱧の加工品及びその加工方法 図1
  • 特開-冷凍鱧の加工品及びその加工方法 図2
  • 特開-冷凍鱧の加工品及びその加工方法 図3
  • 特開-冷凍鱧の加工品及びその加工方法 図4
  • 特開-冷凍鱧の加工品及びその加工方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042912
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】冷凍鱧の加工品及びその加工方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20220308BHJP
【FI】
A23L17/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020160206
(22)【出願日】2020-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】520369618
【氏名又は名称】株式会社株式会社おさかな工房まるせん
(72)【発明者】
【氏名】石原 享祐
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮知
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC09
4B042AC10
4B042AD39
4B042AE03
4B042AG12
4B042AH01
4B042AH03
4B042AH04
4B042AP18
4B042AP21
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】骨切り加工を行った鱧を冷凍で市場に提供することで、一般家庭や大衆食堂等においても、手軽に調理でき、美味しく鱧料理を食することができる。
【解決手段】成型した鱧を冷凍し、皮面を上向きに置き、身の薄い方から骨切り加工を行う。骨切り加工を行う前に、冷凍鱧の温度制御を行い、皮面の温度を-1℃~5℃に調整して骨切りを行うことで、切断面が更にきれいに仕上がる。皮面から骨切りを行うことで、皮の厚い鱧も有効活用でき、調理が容易で、美味しく食することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形した鱧の身を下向きにして冷凍庫内に水平に載置し、冷凍後、骨切機の送り装置に皮面を上向きに置き、この冷凍鱧を所定の間隔で骨切り加工を行うことを特徴とする冷凍鱧の加工品。
【請求項2】
前記、冷凍鱧の皮面の温度を-1℃~5℃に上昇させた後、骨切り加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の冷凍鱧の加工品。
【請求項3】
前記、冷凍鱧の身の薄い方から骨切り加工を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷凍鱧の加工品。
【請求項4】
前記、骨切り加工の間隔を0.5~3.0mmに調節することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍鱧の加工品。
【請求項5】
成形した鱧の身を下向きにして冷凍庫内に水平に載置し、冷凍後、骨切機の送り装置に皮面を上向きに置き、この冷凍鱧を所定の間隔で骨切り加工を行うことを特徴とする冷凍鱧の加工方法。
【請求項6】
前記、冷凍鱧の皮面の温度を-1℃~5℃に上昇させた後、身の薄い方から骨切り加工を行うことを特徴とする請求書5に記載の冷凍鱧の加工方法。
【請求項7】
前記、骨切り加工の間隔を0.5~3.0mmに調節することを特徴とする請求項5又は6に記載の冷凍鱧の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍した鱧の新規な骨切り加工品及びその加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鱧の身は淡泊であるが、栄養価が高く、鍋物、照り焼き、寿司等の食材として人気がある。しかし、鱧は全身に骨がたくさん有るので、そのまま食すれば骨が邪魔になり、食べ難く、食感も悪い。
【0003】
そこで、成型した鱧の身を皮を下に向けて置き、一定間隔で、皮を切らずに身だけを切るように包丁で、切れ目を入れる骨切り作業を行っている。このような骨切り作業を行うことで、骨切りされた身は、切断された細かな骨によるコリコリとした食感が有り、鱧特有の味覚を味わえるものである。
【0004】
しかし、このような鱧の骨切り作業を包丁で行う場合、皮一枚残して、一定間隔で身だけを骨切りするには極めて高い技術が必要であり、かなり熟練した調理人でなければ難しい。骨切り作業が不十分であれば、切断されていない骨が残り、食べ難かったり、食感が悪くなる。また、切りすぎると、皮まで切ってしまい、身が切断され商品価値が低下する。
【0005】
このため、鱧の骨切り作業は熟練した技量を有する調理人でなければ難しく、家庭の主婦や一般の調理人等では、上手く骨切りが出来ず、高級料亭や専門店等でしか鱧料理を美味しく味わうことが出来ず、一般家庭や大衆食堂等では食するのが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-199537
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記課題を解決するために、特許文献1の発明では、成型した鱧を急速冷凍し、この冷凍フィレを皮を下にしてベルトコンベアーに載せ、平行移動させながら所定の時間間隔で上下動する骨切り用刃物で、骨切り作業を行うようにしている。刃物の切り込み深さは、皮一枚残す程度に調節することで、正確なピッチで手早く骨切り作業ができるものである。又、ベルトコンベアーの送り速度や刃物の上下動の時間間隔を調節することで、骨切りピッチを任意の間隔にすることができるものである。
【0008】
上述した骨切り作業を行うことで、一般家庭や大衆食堂でも鱧は身近な食材として食することができるものである。このような骨切り作業を行う対象の鱧の魚体は一般的に300~800g程度の大きさのものを用いている。これ以上の大きさの鱧(例えば1Kg以上の魚体)は、皮が厚く、食した場合、皮が固かったり、ゴムを食べているような感じで、食べ難く、食感が悪いこともあって、一般的には食材として利用されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点を解決するために、試行錯誤の結果、加工方法の改良を行い、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の冷凍鱧の加工品は、成形した鱧の身を下向きにして冷凍庫内に水平に載置し、冷凍後、骨切機の送り装置に皮面を上向きに置き、この冷凍鱧を所定の間隔で骨切り加工を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の冷凍鱧の加工品は、冷凍鱧の皮面の温度を-1℃~5℃に上昇させた後、骨切り加工を行うことを特徴とする。このように、皮面の温度を指定温度に制御した後、骨切り加工を行うことで、解凍調理時に熟練した調理人が骨切りをしたようなきれいな切断面が得られ、見た目も綺麗な鱧料理を作ることができる。
【0011】
また、本発明の冷凍鱧の加工品は、冷凍鱧の身の薄い方から骨切り加工を行うことを特徴とする。このような加工を行うことで、骨切り作業を行う際、身を引っ張って切ることが無いので、正確に所定間隔で骨切りを行うことができ、均等な食感を得ることができる。
【0012】
また、本発明の冷凍鱧の加工品は、骨切り加工の間隔を0.5~3.0mmに調節することを特徴とする。この範囲内で骨切り加工を行うと、調理がし易く、食感の良い鱧料理を食することができる。
【0013】
また、本発明の冷凍鱧の加工方法は、成形した鱧の身を下向きにして冷凍庫内に水平に載置し、冷凍後、骨切機の送り装置に皮面を上向きに置き、この冷凍鱧を所定の間隔で骨切り加工を行うことを特徴とする。このような加工を行うことで、正確に所定の間隔で骨切りを行い、皮から切断するので、皮の厚い鱧も有効活用ができ、美味しく食することができる。
【0014】
また、本発明の冷凍鱧の加工方法は、冷凍鱧の皮面の温度を-1℃~5℃に上昇させた後、身の薄い方から骨切り加工を行うことを特徴とする。このように、皮面の温度を指定温度に制御した後、骨切り加工を行うことで、解凍調理時に熟練した調理人が骨切りをしたようなきれいな切断面が得られ、見た目も綺麗な鱧料理を作ることができる。さらに、身の面が送り装置に密着するので、設定した身の厚みを残して骨切りを行うことができる。
【0015】
また、本発明の冷凍鱧の加工方法は、骨切り加工の間隔を0.5~3.0mmに調節することを特徴とする。この範囲内で骨切り加工を行うと、調理がし易く、食感の良い鱧料理を食することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通常、市場で流通しているサイズの鱧はもちろん、市場ではあまり流通していない、魚体が大きく、皮が厚い鱧も、一般家庭や大衆食堂等でも手軽に鱧を調理でき、美味しく食することができる。そして、本発明の加工方法を用いることで、皮が厚く、食感が悪くて食べ難かった鱧でも、皮まで美味しく食べられる食材として、市場に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の加工方法に係る工程図である。
図2】従来の方法で骨切り加工を行った鱧の図面である。
図3】同じく、従来の方法で骨切り加工を行った鱧の図面である。
図4】本発明の方法で骨切り加工を行った鱧の図面である。
図5】同じく、本発明の方法で骨切り加工を行った鱧の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る冷凍鱧の加工品及びその加工方法について、図面に基づき、詳述する。図1は本発明に係る加工方法の工程図である。
鱧の魚体を腹開きし、内臓を取り出し、中骨を除去する。そして、頭部と尻尾を切り落とし、残りの身を成形する。
図1の工程Aは上述の成形した鱧の身を冷凍する工程であり、鱧の旨味成分が浸出しないように速やかに冷凍を行うことが望ましい。この時、身を下向きに水平に冷凍庫内に載置することが重要である。冷凍温度は本願出願人が保有している冷凍装置が-15~-40℃の仕様のため、当該温度としたが、特にこの温度範囲に限定するものではない。
【0019】
図1の工程Bは鱧の骨切り加工を行う前に、皮面の温度制御を行う工程である。本願出願人が実際に試作した際には、皮の表面温度が-1℃~5℃になるまで温度制御(解凍)を行った。この時、身の表面温度も-1℃~5℃程度になる。また、身の中心部の温度は-1~-5℃程度になっていた。尚、この工程Bの皮面の温度制御を行わずに、冷凍状態で次の骨切り加工を行うこともできることはもちろんである。
【0020】
図1の工程Cは制御した温度に解凍した冷凍鱧を骨切り加工を行う工程である。骨切り加工は市販の骨切機を使用することで、大量に、早く、正確に骨切りを行うことができる。この時、送り装置に皮面が上向きに、且つ、身の薄い方から先にカットするように置いて、骨切り加工を行うことが重要である。この際、身の表面温度も皮と略同じ温度であるので、身は送り装置に水平状態で密着するので、設定した厚みの身は切断しないで残しておくことができる。
【0021】
図1の工程Dは骨切り加工を行った鱧を真空パック詰めを行う工程である。真空パック詰の際、吸水紙の上に鱧を置くことで、鱧の余分な水分を吸収するので、一層美味しく鱧を調理することができる。
【0022】
図1の工程Eは真空パック詰めをした鱧を再び冷凍する工程である。再冷凍することによって、長期の保存が可能となり、流通範囲が広がり、日本全国に配送が行える。
【実施例0023】
以下に、本発明者が試作した実施例を示し、図2図5に基づき、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の内容はこの実施例に限定されるものではない。
【0024】
成形した鱧を冷凍庫で-20~-25℃に冷凍を行った。次に、この冷凍した鱧を表面の温度が-1℃~5℃になるまで解凍した。なお、より好適な解凍温度は-1℃~1℃であった。この時の身の中心部の温度は-1~-5℃程度であった。次に、解凍した鱧を骨切機により、骨切り加工を行った。図2及び図3は、皮を残して身の部分を骨切りする従来の方法で骨切り加工を行った図面である。図4及び図5は、皮の部分から骨切りする本発明の方法で骨切り加工を行った図面である。
使用した骨切機の仕様は次の通りである。
・メーカー 理工エンジニアリング(株)
・加工方式 包丁による押切加工
・切断幅 200mm
・切断速度 90cm/分
・切断ピッチ 0.5mm~100mm(0.1mmピッチまで設定可能)
上記の骨切機の送り装置(本機はベルトコンベアー方式を使用している。)に、本発明の加工方法では、解凍した鱧を皮面を上に、そして、身の薄い方を先頭に水平に置いた。骨切機の切断ピッチは2.5mmに設定し、その後、切断ピッチを変更して試作した。切断ピッチは0.5~3mm程度が好適であり、1.5~2.5mm程度がより好適であることが判明した。また、切断しない身の厚みを2mmに設定した。また、上記と同一の条件で、皮面を下にして骨切りを行う従来の方法で骨切り加工も行った。
【0025】
試作に用いた鱧は1.0Kg以上の重さがあり、身が厚く、皮も厚いものを使用した。骨切り加工を行った鱧を様々に調理し、試食した。皮が厚くても、皮を切断しているので、全く違和感が無く、骨の食感も良く、美味しく味わうことができた。なお、従来の方法で骨切り加工を行った鱧も試食したが、皮が厚いため、この部分の食感が悪く、違和感を感じた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明を利用することにより、本来、鱧は高級食材であるが、市場にはあまり流通していない、魚体が大きく皮が厚い鱧でも、皮面から骨切り加工を行うことで調理が容易で、美味しく食することができる。また、骨切り加工を施しているので、従来、高級料亭や鱧専門店等でしか食べられなかった鱧料理が、一般家庭や大衆食堂等でも、手軽に美味しく食することができるものである。
図1
図2
図3
図4
図5