(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042944
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】車両用カーテンエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/232 20110101AFI20220308BHJP
B60R 21/2346 20110101ALI20220308BHJP
【FI】
B60R21/232
B60R21/2346
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021055550
(22)【出願日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】17/011,067
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】陳内 僚介
(72)【発明者】
【氏名】エリック ブッシュ
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054AA18
3D054BB21
3D054CC04
3D054CC10
3D054CC29
3D054DD14
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】インナチューブのバッグ本体内への挿入作業性の向上を図る。
【解決手段】車両用カーテンエアバッグ装置20は、インフレータ21及びエアバッグ25を備える。エアバッグ25は、バッグ本体26、インナチューブ35、及びポケット部55を備える。インナチューブ35は、チューブ本体36及び挿入部41を備える。ポケット部55は、インナチューブ35の挿入方向におけるチューブ本体36の前端部に設けられる。挿入方向におけるポケット部55の前端部は、挿入方向に対し交差する交差方向へ延びる第1結合部56においてチューブ本体36に結合されている。交差方向におけるポケット部55の両端部の少なくとも一方は、挿入方向へ延びる第2結合部57においてチューブ本体36に結合されている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス噴出部を有するインフレータと、
前記ガス噴出部から供給される膨張用ガスにより、車両の側壁部よりも上方から乗員と前記側壁部との間へ向けて展開及び膨張するように構成されたエアバッグとを備え、
前記エアバッグは、バッグ本体、インナチューブ、及びポケット部を備え、
前記バッグ本体は、前記車両の前後方向に延びるガス流路部と、前記ガス流路部に連通され、かつ前記インフレータが接続される接続部とを備え、
前記インナチューブは、前記接続部に設けられた接続口から挿入されることで前記バッグ本体内に配置されるものであり、
前記インナチューブは、前記ガス流路部内に配置され、かつ少なくとも一つのガス流出口を有するチューブ本体と、前記チューブ本体に連通した状態で前記接続部内に配置され、かつ前記インフレータの少なくとも前記ガス噴出部が挿入される挿入部とを備え、
前記ポケット部は、前記バッグ本体に挿入される前記インナチューブの挿入方向における前記チューブ本体の前端部に設けられ、前記バッグ本体内への前記インナチューブの挿入を補助するための挿入補助具が差し込まれるように構成され、
前記挿入方向における前記ポケット部の前端部は、前記挿入方向に対し交差する交差方向へ延びる第1結合部において前記チューブ本体に結合され、
前記交差方向における前記ポケット部の両端部の少なくとも一方は、前記挿入方向へ延びる第2結合部において前記チューブ本体に結合されている車両用カーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ポケット部は、前記チューブ本体に一体に形成され、
前記ポケット部は、前記チューブ本体の前記前端部に重ね合わされており、
前記ポケット部及び前記前端部は、前記挿入方向におけるそれぞれの前縁部を前記第1結合部として相互に結合されている請求項1に記載の車両用カーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記接続部は、前記挿入方向における後側ほど高くなるように傾斜し、前記挿入方向における自身の前端部において前記ガス流路部に連通しており、
前記接続部は、前記接続口を前記挿入方向における自身の後端部に有しており、
前記挿入方向における前記チューブ本体の前端部は、前記挿入方向における前記接続部の前端部よりも前方に位置している請求項1又は2に記載の車両用カーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記接続部は、前記前後方向における前記ガス流路部の前方又は後方に位置し、かつ前記前後方向へ延びて前記ガス流路部に連通しており、
前記接続部は、前記接続口を、前記ガス流路部から遠い側の端部に有しており、
前記少なくとも一つのガス流出口は、前記チューブ本体の前記前端部よりも前記前後方向における後方に位置し、かつ前記前後方向に互いに離間した複数のガス流出口を含む、請求項1又は2に記載の車両用カーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
AM50ダミーの拳を基準とし、握られた状態の前記拳の指の配列方向における人差し指の外側面から小指の外側面までの寸法を、寸法M1とした場合、前記チューブ本体の前記前端部は、前記接続口から、前記寸法M1の2倍以上離れた箇所に位置している請求項3又は4に記載の車両用カーテンエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ポケット部は、前記チューブ本体の外側に配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載の車両用カーテンエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の側壁部よりも上方に収納されたエアバッグを、乗員と側壁部との間へ向けて展開及び膨張させて、乗員を衝撃から保護するように構成された車両用カーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外部から側壁部に対し衝撃が加わった場合、又は加わることが予測される場合に、乗員を衝撃から保護する装置の1つとして、車両用カーテンエアバッグ装置が知られている。車両用カーテンエアバッグ装置は、典型的に、インフレータから供給される膨張用ガスにより、車両の側壁部よりも上方から乗員と側壁部との間へ向けて展開及び膨張するエアバッグを備える。
【0003】
特許文献1に記載された車両用カーテンエアバッグ装置は、バッグ本体及びインナチューブを有するエアバッグを備えている。バッグ本体は、車両前後方向に延びるガス流路部を有する。また、バッグ本体は、ガス流路部に連通した状態の膨張部を有する。さらに、バッグ本体は、ガス流路部に連通され、かつインフレータが接続される接続部を備える。
【0004】
インナチューブは、チューブ本体及び挿入部を備える。チューブ本体はガス流出口を有しており、上記ガス流路部に配置される。挿入部は、チューブ本体に対し連通した状態で接続されており、上記接続部に配置される。挿入部には、インフレータの少なくともガス噴出部が挿入される。ガス流出口は、チューブ本体に供給された膨張用ガスをガス流路部に流出する。
【0005】
さらに、特許文献1に記載された車両用カーテンエアバッグ装置では、車両前後方向におけるバッグ本体の端部を早期に展開及び膨張させるために、インナチューブとして、チューブ本体が同方向に長いものが用いられている。
【0006】
バッグ本体が袋織りされ、インナチューブがバッグ本体とは別に形成されたエアバッグでは、インナチューブをバッグ本体の内部に配置するために、インナチューブが、接続部に設けられた接続口から、同接続部内及びガス流路部内に挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0265266号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載されたインナチューブのように、チューブ本体が長いと、チューブ本体を真っ直ぐ延びた状態に保ちながら、インナチューブを接続部内及びガス流路部内に挿入する作業が難しい。挿入途中で、チューブ本体が折れ曲がる等の変形を起こしやすいからである。そのため、インナチューブを、接続部内及びガス流路部内の目的とする箇所まで挿入する作業が大変である。
【0009】
本開示の目的は、インナチューブのバッグ本体内への挿入作業性の向上を図ることのできる車両用カーテンエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する車両用カーテンエアバッグ装置は、ガス噴出部を有するインフレータと、前記ガス噴出部から供給される膨張用ガスにより、車両の側壁部よりも上方から乗員と前記側壁部との間へ向けて展開及び膨張するように構成されたエアバッグとを備え、前記エアバッグは、バッグ本体、インナチューブ、及びポケット部を備え、前記バッグ本体は、前記車両の前後方向に延びるガス流路部と、前記ガス流路部に連通され、かつ前記インフレータが接続される接続部とを備え、前記インナチューブは、前記接続部に設けられた接続口から挿入されることで前記バッグ本体内に配置されるものであり、前記インナチューブは、前記ガス流路部内に配置され、かつ少なくとも一つのガス流出口を有するチューブ本体と、前記チューブ本体に連通した状態で前記接続部内に配置され、かつ前記インフレータの少なくとも前記ガス噴出部が挿入される挿入部とを備え、前記ポケット部は、前記バッグ本体に挿入される前記インナチューブの挿入方向における前記チューブ本体の前端部に設けられ、前記バッグ本体内への前記インナチューブの挿入を補助するための挿入補助具が差し込まれるように構成され、前記挿入方向における前記ポケット部の前端部は、前記挿入方向に対し交差する交差方向へ延びる第1結合部において前記チューブ本体に結合され、前記交差方向における前記ポケット部の両端部の少なくとも一方は、前記挿入方向へ延びる第2結合部において前記チューブ本体に結合されている。
【発明の効果】
【0011】
上記車両用カーテンエアバッグ装置によれば、インナチューブのバッグ本体内への挿入作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態における車両用カーテンエアバッグ装置の側面図。
【
図2】第1実施形態におけるインナチューブの側面図。
【
図6】第1実施形態におけるインナチューブの製造途中の形態を示す展開図。
【
図8】
図7におけるY部を拡大して示す部分断面図。
【
図9】
図7におけるZ部を拡大して示す部分断面図。
【
図10】第1実施形態におけるインナチューブの製造途中の別の形態を示す部分展開図。
【
図12】
図1におけるX部を拡大して示す部分側面図。
【
図13】第1実施形態において、ポケット部とチューブ本体との間に挿入補助具が差し込まれる前の状態を示す部分側面図。
【
図14】第1実施形態において、ポケット部とチューブ本体との間に挿入補助具が差し込まれた状態を示す部分側面図。
【
図15】第1実施形態において、挿入補助具が用いられてインナチューブがバッグ本体内に挿入される前の状態を示す部分側面図。
【
図16】第1実施形態において、挿入補助具が用いられてインナチューブの一部が接続部内に挿入された状態を示す部分側面図。
【
図17】第1実施形態において、インナチューブの全体がバッグ本体内に挿入されて、挿入補助具がバッグ本体から抜き出された状態を示す部分側面図。
【
図18】第1実施形態において、AM50ダミーの拳と寸法M1との関係を示す斜視図。
【
図19】第2実施形態におけるエアバッグモジュールの部分側面図。
【
図20】第2実施形態におけるインナチューブの一部を省略して示す部分側面図。
【
図21】第2実施形態において、挿入補助具が用いられてインナチューブがバッグ本体内に挿入される前の状態を示す部分側面図。
【
図22】インナチューブとは別部材により形成されたポケット部の変形例を、挿入補助具の一部とともに示す部分側面図。
【
図24】インナチューブとは別部材により形成されたポケット部の別の変形例を、挿入補助具の一部とともに示す部分側面図。
【
図25】インナチューブとは別部材により形成されたポケット部の別の変形例を、挿入補助具の一部とともに示す部分側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、車両用カーテンエアバッグ装置の第1実施形態について、
図1~
図18を参照して説明する。
【0014】
なお、以下の記載においては、車両の前後方向を基準として、前後を規定する。また、車両の幅方向(車幅方向)における中央部を基準とし、その中央部に近づく側を車内側とし、中央部から遠ざかる側を車外側とする。これらの点は、後述する第2実施形態や、種々の変形例についても同様である。
【0015】
さらに、車両用シートには、衝突試験用のダミーと同様の体格を有する乗員が、予め定められた正規の姿勢で着座しているものとする。このダミーは、国際統一側面衝突ダミー(WorldSID)のAM50(米国成人男性の50%をカバーするモデル)であり、AM50ダミーと呼ばれる。
【0016】
図1に示すように、車両用カーテンエアバッグ装置(以下、単に「エアバッグ装置」という)20の主要部は、エアバッグモジュールABMによって構成されている。エアバッグモジュールABMは、インフレータ21及びエアバッグ25を備えている。車体11の側壁部よりも上方には収納部が設けられており、ここにエアバッグモジュールABMが収納及び配置されている。側壁部は、車体11の車幅方向における両側部を構成する部分であり、前後のサイドウインドウ17、センターピラーガーニッシュ18等を含む。収納部は、以下の部分によって構成されている。
【0017】
・図示しないルーフサイドレールと、成形天井であるルーフヘッドライニング13の車外側の端部13aとの間のスペース。
・図示しないフロントピラーと、その車内側に配置されたフロントピラーガーニッシュ14との間のスペース。
【0018】
・図示しないリヤピラーと、その車内側に配置されたリヤピラーガーニッシュ15との間のスペース。
なお、ルーフサイドレールは、車体11の骨格部材の一部を構成する部材であり、図示しない車体ルーフの車外側の両端部において、前後方向に延びるように配置される。フロントピラーガーニッシュ14は、上記骨格部材の一部を構成するフロントピラーに対し、車内側から内張りされる内装部材である。リヤピラーガーニッシュ15は、上記骨格部材の一部を構成するリヤピラーに対し、車内側から内張りされる内装部材である。
【0019】
インフレータ21は略円柱状をなしている。インフレータ21には、膨張用ガスを発生するガス発生剤が内蔵されている。インフレータ21は、後側ほど高くなるように傾斜した姿勢で配置されている。インフレータ21は、前下端部にガス噴出部21aを有している。また、インフレータ21の後上端部には、同インフレータ21への作動信号の入力配線となる図示しないハーネスが接続されている。インフレータ21は上記収納部において車体11に取付けられている。
【0020】
エアバッグ25は、インフレータ21から供給される膨張用ガスにより、収納部から、乗員P1と上記側壁部との間へ向けて展開及び膨張する。
図1には、エアバッグ25が膨張用ガスを充填させることなく平面状に展開させられた状態で図示されている。
【0021】
エアバッグ25は、バッグ本体26、インナチューブ35、ポケット部55、取付片61及びテンションベルト62を備えている。次に、エアバッグ25を構成する各部材について説明する。
【0022】
<バッグ本体26>
バッグ本体26は、展開及び膨張したときに、乗員P1の上半身、主として頭部PHを衝撃から保護することのできる形状及び大きさに形成されている。バッグ本体26の全体は、前後方向に延びる横長の長方形状に形成されている。バッグ本体26は、ポリアミド、ポリエステル等からなる繊維を用いて袋織りすることによって形成されていて、強度が高く可撓性を有している。
【0023】
図1及び
図12に示すように、バッグ本体26は、ガス流路部27、複数の膨張部28、接続部29及び非膨張部32を備えている。
ガス流路部27は、バッグ本体26内の上端部において、前後方向に延びている。複数の膨張部28は、前後方向に並べられた状態でガス流路部27の下方等に位置している。各膨張部28は、ガス流路部27に直接又は間接的に連通している。
【0024】
接続部29は、上記インフレータ21が接続される箇所であり、前後方向におけるガス流路部27の略中央部であって、同ガス流路部27よりも上方に位置している。接続部29は、後側ほど高くなるように傾斜している。接続部29は、自身の前下端部において、ガス流路部27に対し、連通した状態で接続されている。接続部29は、接続口31を後上端部に有している。
【0025】
非膨張部32は、膨張用ガスが供給されず、膨張しない箇所である。非膨張部32は、バッグ本体26のうち、上述したガス流路部27、膨張部28及び接続部29とは異なる部分によって構成されている。
【0026】
<インナチューブ35>
インナチューブ35は、下記事項を主な目的として設けられたものであり、バッグ本体26とは別に形成されている。
【0027】
・インフレータ21から供給された膨張用ガスをバッグ本体26の各部に導く。
・バッグ本体26のうち、ガス噴出部21aの周辺部分の耐熱性を向上させて、同部分が膨張用ガスの熱の影響を受けるのを抑制する。
【0028】
図2及び
図12に示すように、インナチューブ35は、上記接続口31から挿入されることで、バッグ本体26内に配置されている。インナチューブ35は、上記バッグ本体26と同様の素材によって形成されている。インナチューブ35は、チューブ本体36及び挿入部41を備えている。
【0029】
チューブ本体36は、上記ガス流路部27に対応して、前後方向に細長い形状をなしていて、ガス流路部27内に配置されている。
挿入部41は、インフレータ21の少なくともガス噴出部21aが挿入される箇所である。挿入部41は、上記接続部29に対応して、後側ほど高くなるように傾斜している。挿入部41の両端部は開口されている。挿入部41の後上端部の開口は挿入口42を構成している。挿入部41は、チューブ本体36に対し連通した状態で接続されており、上記接続部29内に配置されている。
【0030】
チューブ本体36は、前端部にガス流出口37を有し、後端部にガス流出口38を有している。チューブ本体36に供給された膨張用ガスは、これらのガス流出口37,38からガス流路部27へ流出される。
【0031】
上記の構成を有するインナチューブ35は、
図6~
図9に示すように、折り線43を介して互いに繋がった状態の一対の布部44,45を備えている。両布部44,45は上記折り線43を基準として、互いに略線対称の関係を有する形状を有している。
【0032】
両布部44,45は、上記折り線43に沿って折り曲げられることによって、
図6では、紙面に直交する方向に、また、
図7では上下方向に重ね合わされている。布部44,45は、形状が若干異なっている。布部44,45は、共通する構成として、チューブ本体36を構成する構成布部46と、挿入部41を構成する構成布部47とを備えている。布部44は、布部45とは異なり、構成布部46の前端部に、後述するポケット部55を構成する構成布部48を備えている。従って、布部44の前後長さは、構成布部48の長さL1の分、布部45よりも前方へ長くなっている。
【0033】
布部44において、両構成布部46,48の境界部分には、上記折り線43に対し平行に折り線49が設定されている。
図10及び
図11に示すように、構成布部48が、上記折り線49に沿って布部45側へ折り曲げられ、同布部45における構成布部46の前端部に重ね合わされている。
【0034】
さらに、上記のように、折り線43に沿って折り曲げられ、かつ構成布部48が折り線49に沿って折り返された両布部44,45には、
図10に示すように、上記両折り線43,49に対し直交する方向である前後方向へ延びる折り線51が設定されている。両布部44,45において、上記折り線51を間に挟んで同折り線51の両側に位置する部分52は、折り線51を基準として、互いに線対称の関係を有している。そして、
図10及び
図11に示すように、上記折り線51に沿って両部分52が折り曲げられ、車幅方向に重ね合わされている。折り返された構成布部48は、重ね合わされた両部分52において、車幅方向における最も外側(
図4及び
図5参照)に位置している。
【0035】
上記のように車幅方向に重ね合わされた両部分52は、
図2に示すように、それらの周縁部のうち、下記箇所を除く部分に設けられた周縁結合部53,54によって相互に結合されている。下記箇所とは、折り線51の周辺部分、構成布部46の前後両端部、及び構成布部47の後上端部である。
【0036】
第1実施形態では、周縁結合部53,54は、両部分52の周縁部のうち上記箇所を除く部分を縫製することによって形成されている。この点は、後述する変形例における第1結合部56及び第2結合部57についても同様である。
【0037】
上記縫製に関し、
図1、
図2、
図12~
図15、
図17、
図19~
図22、
図24及び
図25では、第1及び第2の線種によって縫製部分が表現されている。第1の線種は、一定長さの太線を断続的に並べて表現した線であり、これは、縫合部分を側方から見た状態を示している。例えば、
図2における周縁結合部53,54等が上記第1の線種に該当する。第2の線種は、一般的な破線よりも長い一定長さの細線を断続的に並べて表現した線であり、これは、両部分52間等に位置していて直接は見えない縫糸の状態を示している。例えば、
図12における周縁結合部53,54等が上記第2の線種に該当する。
【0038】
なお、周縁結合部53,54は、上記縫糸を用いた縫合とは異なる手段、例えば接着剤を用いた接着によって形成されてもよい。この点は、第1結合部56及び第2結合部57についても同様である。
【0039】
図2~
図5に示すように、車幅方向に重ね合わされた両部分52が、周縁結合部53,54によって結合されることで、上記ガス流出口37,38を前後両端部に有するチューブ本体36と、後上端部に挿入口42を有する挿入部41とを備えるインナチューブ35が形成されている。これに加え、一対のポケット部55が形成されている。
【0040】
<ポケット部55>
一対のポケット部55は、
図13に示す挿入補助具70の先端部70aが差し込まれる箇所であり、上記構成布部48によって構成されている。挿入補助具70は、インナチューブ35のバッグ本体26への挿入を補助するためのものである。挿入補助具70の詳細については後述する。
図4及び
図5に示すように、両ポケット部55は、チューブ本体36の外側であって、同チューブ本体36の前端部に設けられている。第1実施形態では、両ポケット部55は、チューブ本体36を車幅方向における両方の外側から挟み込む位置に形成されている。
【0041】
ここで、
図12に示すように、インナチューブ35を接続部29に挿入する方向は、接続口31から、接続部29の前端部A1に向かう方向であって、概ね前後方向に沿う方向である。また、チューブ本体36をガス流路部27に挿入する方向は、同ガス流路部27の後端部から前端部に向かう方向である。そのため、インナチューブ35の挿入方向を基準として、各部の位置関係を説明する際には、前後関係で説明することとする。例えば、挿入方向における前方を単に「前方」といい、同挿入方向における後方を単に「後方」というものとする。
【0042】
チューブ本体36の前端部は、接続部29の前端部A1よりも前方となる箇所に位置している。この箇所は、インナチューブ35を接続口31からバッグ本体26内に挿入した場合に、何らかの対策を講じなければ、チューブ本体36の前端部の挿入が困難となる箇所である。
【0043】
ここで、インナチューブとして、挿入部がチューブ本体の前方又は後方で前後方向に延びるものを用い、このインナチューブを、バッグ本体内に対し、方向を変えることなく単一方向へ挿入するタイプのエアバッグ装置を比較対象とする。このタイプのエアバッグ装置でも、インナチューブを接続口からバッグ本体内に挿入した場合に、何らかの対策を講じなければ、チューブ本体の前端部の挿入が困難となる箇所が存在する。
【0044】
接続口から、上記挿入が困難となる箇所までの長さは、第1実施形態の方が上記比較対象よりも短くなる。これは、比較対象では、インナチューブを単一方向へ挿入するのに対し、第1実施形態では、前端部A1を通過した後に、僅かではあるが、通過前とは異なる方向へ挿入方向を変える必要があり、この方向変更の分、チューブ本体36の前端部が挿入しづらくなるためである。
【0045】
チューブ本体36の前端部の上記位置は、次の条件も満たしている。
図18に示すように、AM50ダミーの拳PFを基準とする。拳PFが握られたときの、各指の配列方向における人差し指FFの外側面から小指LFの外側面までの寸法を、寸法M1とする。
図12に示すように、チューブ本体36の前端部は、上記接続口31から前方へ、寸法M1の2倍以上離れた箇所に位置している。この箇所もまた、インナチューブ35を接続口31からバッグ本体26内に挿入した場合に、何らかの対策を講じなければ、チューブ本体36の前端部を到達させることが困難な箇所である。
【0046】
上述したように、ポケット部55は、チューブ本体36に一体に形成されていて、チューブ本体36の前端部に対し、車幅方向に重ね合わされている。
図2~
図5に示すように、ポケット部55の前端部は、前後方向に対し交差する交差方向へ延びる第1結合部56においてチューブ本体36に結合されている。同一素材によって一体に形成された構成布部48,46は、それらの前縁部において相互に繋がっており、これらの前縁部によって第1結合部56が構成されている。この場合の交差方向は、前後方向に対し直交する方向である上下方向である。
【0047】
上記ポケット部55のうち、上記上下方向における一方の端部である上端部は、前後方向へ延びる一方の第2結合部においてチューブ本体36に結合されている。この第2結合部は、第1実施形態では、上記周縁結合部53の前端部によって構成されている(
図4参照)。
【0048】
各ポケット部55のうち、上記上下方向における他方の端部である下端部は、前後方向へ延びる他方の第2結合部において隣のポケット部55に結合されている。構成布部48同士は、下端部において相互に繋がっており、この下端部によって第2結合部57が構成されている。この第2結合部57は、上下方向に対し直交する方向である前後方向へ延びている。
【0049】
図1及び
図12に示すように、インナチューブ35及びバッグ本体26は、接続部29における接続口31の周りに装着されたクランプ59によってインフレータ21に締結されている。
【0050】
<取付片61及びテンションベルト62>
図1に示すように、取付片61は、バッグ本体26の上縁部において、前後方向に互いに離間した複数箇所に配置されている。各取付片61は、縫製等の結合手段によってバッグ本体26の上端部に結合されている。テンションベルト62の後端部もまた、上記と同様の結合手段によってバッグ本体26の前端部に結合されている。
【0051】
上記エアバッグモジュールABMは、車両10に搭載される前には、図示はしないが、エアバッグ25が上下方向に折り畳まれることにより、上下方向の寸法が小さく、前後方向に細長いコンパクトな形態にされている。エアバッグ25は、テープ材等の締結材によって折り畳まれた形態に保持されている。締結材としては、エアバッグ25が展開及び膨張するときに破断されるものが用いられている。
【0052】
上記エアバッグモジュールABMは、車両10に搭載された状態では、上記収納部に収納されている。エアバッグモジュールABMは、取付片61において収納部に取付けられ、テンションベルト62の前端部においてフロントピラーに取付けられている。
【0053】
エアバッグ装置20は、さらに
図1に示す衝撃センサ75及び制御装置76を備えている。衝撃センサ75は加速度センサ等からなり、側壁部を通じて車両10に加わる衝撃を検出する。制御装置76は、衝撃センサ75からの検出信号に基づきインフレータ21の作動を制御する。
【0054】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
上述したように、バッグ本体26は袋織りによって形成されている。これに対し、インナチューブ35は、バッグ本体26とは別に形成されている。インナチューブ35をバッグ本体26の内部に配置するには、バッグ本体26内にインナチューブ35を挿入する必要がある。
【0055】
一方で、バッグ本体26において、内部と外部とを連通させる箇所は、接続部29の接続口31のみである。そのため、接続口31を通じて、インナチューブ35を接続部29内及びガス流路部27内に挿入することになる。より詳しくは、チューブ本体36の前端部を先頭にして、インナチューブ35を接続口31からバッグ本体26に挿入することになる。
【0056】
ただし、チューブ本体36の前端部を、上記前端部A1よりも前方まで挿入させる必要がある。しかも、前端部A1を通過させた後には、僅かではあるが挿入方向を変える必要がある。しかし、インナチューブ35は布によって形成されていて柔らかく剛性が低い。チューブ本体36の前端部を、前端部A1よりも前方の目的とする箇所まで挿入させることが難しい。
【0057】
そこで、第1実施形態では、インナチューブ35のバッグ本体26への挿入作業に際し、
図13に示す挿入補助具70が用いられる。この挿入補助具70としては、インナチューブ35よりも剛性が高い材料、例えば、金属、樹脂等によって形成されたものが用いられる。また、挿入補助具70としては、上記接続口31を通過することができ、かつポケット部55とチューブ本体36との間に差し込むことのできるものが用いられる。第1実施形態では、挿入補助具70として、周縁結合部53と第2結合部57との間隔D1よりも若干狭い幅W1を有するものが用いられる。また、挿入補助具70として、接続口31から、ガス流路部27内であって、チューブ本体36の前端部が配置される予定の箇所までの距離よりも長いものが用いられる。第1実施形態では、一方向に真っ直ぐ延びる長尺状の金属板が挿入補助具70として用いられる。
【0058】
上記挿入作業に際しては、まず、
図13に示すように、ポケット部55の後方で、挿入補助具70が前後方向に延びる姿勢にされる。挿入補助具70が前方へ移動されて、先端部70aがポケット部55とチューブ本体36との間であって、周縁結合部53と第2結合部57とによって挟まれた空間に差し込まれる。チューブ本体36の前端部の剛性がポケット部55によって高められているため、同ポケット部55とチューブ本体36との間に上記先端部70aを差し込む作業がしやすい。
【0059】
この際、ポケット部55は、
図4及び
図5に示すように、車幅方向におけるチューブ本体36の両方の外側に位置している。そのため、挿入補助具70を、チューブ本体36の車幅方向におけるいずれの外側からもポケット部55とチューブ本体36との間に差し込むことができる。表現を変えると、チューブ本体36の外側となる箇所は、同チューブ本体36を車幅方向における両側から挟み込む2箇所あるが、それらのいずれの側から挿入補助具70を差し込んだ場合にも、先端部70aをチューブ本体36とポケット部55との間に差し込むことができる。ポケット部55がチューブ本体36に対し一方の外側にのみ設けられている場合に比べ、先端部70aをポケット部55に対しより的確に差し込むことができる。先端部70aをポケット部55に差し込む作業の作業性が向上する。
【0060】
そして、
図14に示すように、上記先端部70aが、ポケット部55とチューブ本体36との境界部分である第1結合部56に接触するまで挿入されると、チューブ本体36の前端部及びポケット部55が挿入補助具70に対し、位置決めされて係止された状態となる。
【0061】
次に、
図15に示すように、チューブ本体36が接続部29の後方で、その接続部29と同程度の角度で傾斜するように、インナチューブ35及び挿入補助具70の姿勢が調整される。
図16に示すように、挿入補助具70に係止されたチューブ本体36の前端部が接続口31から接続部29内に挿入される。また、このときには、インナチューブ35の後下部が折り線58に沿って折り曲げられて、挿入部41に対し車幅方向に重ね合わされる。
【0062】
そして、挿入補助具70が接続口31から前端部A1に向けて挿入される。第1結合部56が挿入補助具70によって前下方へ押され、インナチューブ35が挿入補助具70と一緒に、接続口31から前端部A1に向けて挿入される。
【0063】
挿入補助具70は、インナチューブ35よりも高い剛性を有しているため、折れ曲がることなく、接続部29内への挿入が可能である。上述したようにインナチューブ35自体は布によって形成されていて柔らかい(剛性が低い)。しかし、挿入補助具70の上記挿入に伴い、ポケット部55において挿入補助具70に係止されたインナチューブ35は、挿入補助具70と一緒に上記前端部A1に向けて挿入される。この挿入の途中で、挿入部41もまた接続部29内に挿入される。この際、上述したように、チューブ本体36の後下部が折り曲げられて挿入部41に重ね合わされているため、この部分と挿入部41とを接続部29内にスムーズに挿入することができる。
【0064】
また、ポケット部55がチューブ本体36の前端部に取付けられているため、インナチューブ35のうちポケット部55より後方部分が追従してバッグ本体26の内部に挿入される。
【0065】
上記前端部A1を通過した後も挿入補助具70の挿入が続けられる。この挿入により、挿入補助具70の先端部70aが、インナチューブ35と一緒に接続部29からガス流路部27に移る。チューブ本体36の前端部を、上記前端部A1よりも前方であって、ガス流路部27の目的とする箇所まで挿入することができる。特に、第1結合部56及び2つの第2結合部(周縁結合部53、第2結合部57)により、先端部70aを三方から囲んでいるため、挿入補助具70に対しポケット部55が動こうとした場合、いずれかの結合部が挿入補助具70に当たる。挿入補助具70に対するチューブ本体36及びポケット部55の動きが規制される。挿入補助具70のバッグ本体26への挿入時に、ポケット部55及びチューブ本体36の前端部がぐらついたり、先端部70aから脱落したりするのを抑制することができる。
【0066】
その後、上記挿入補助具70及びインナチューブ35の挿入が停止される。挿入補助具70が上記挿入方向とは逆方向へ移動させられる。ポケット部55及びチューブ本体36には、挿入補助具70による押圧力が作用しなくなる。インナチューブ35は、ガス流路部27及び接続部29との間に発生する摩擦力により、配置された箇所にとどまろうとする。そのため、上記移動により、
図17に示すように、挿入補助具70がバッグ本体26から抜き出される。この状態では、チューブ本体36の後下部が挿入部41に重ね合わされたままである。チューブ本体36の上記後下部は、接続部29及びガス流路部27の両方の内部に位置している。そこで、接続口31から指等を接続部29内に入れ、上記のように重ね合わされた部分を下方に押す。すると、
図17において二点鎖線で示すように、折りを解消させて、チューブ本体36の上記後下部の全体をガス流路部27に移すことができる。
【0067】
このように、第1実施形態によると、布によって形成されていて剛性の低いインナチューブ35を、ガス流路部27内及び接続部29内の目的とする箇所まで挿入することができ、インナチューブ35のバッグ本体26に対する挿入作業性を向上させることができる。
【0068】
上述したように、インナチューブ35のうちポケット部55が設けられた箇所の剛性が高められているため、ガス流路部27におけるインナチューブ35の前端部の位置の精度を高めることができる。しかも、インナチューブ35の前端部を上記位置に安定した状態で配置させることができる。エアバッグ25毎に、インナチューブ35の前端部の位置がばらつくのを抑制することができる。
【0069】
ところで、
図1及び
図12に示す車両10では、走行中等に、側面衝突、斜め衝突等により側壁部に対し、衝撃が加わる場合があり得る。側壁部に対し、所定値以上の衝撃が加わると、その衝撃が衝撃センサ75によって検出される。すると、衝撃センサ75の検出信号に基づき制御装置76からインフレータ21に対し、同インフレータ21を作動させるための作動信号が出力される。
【0070】
この作動信号に応じて、インフレータ21は、膨張用ガスをガス噴出部21aから噴出する。膨張用ガスは、挿入部41内を通過した後、前方へ流れるものと後方へ流れるものとに分けられる。チューブ本体36は、膨張用ガスにより略円筒状に膨張し、ガス流路部27を内側から押して、略円筒状に拡げる。
【0071】
上記のように2方向に分けられた膨張用ガスは、ガス流出口37,38から流出される。膨張用ガスは、ガス流路部27を経由して各膨張部28に供給される。上記膨張用ガスにより、各膨張部28が膨張を開始する。
【0072】
ここで、ポケット部55はチューブ本体36の外側に配置されている。そのため、ポケット部55が、チューブ本体36の内側に配置された場合とは異なり、膨張用ガスのガス流出口37,38からの流出がポケット部55によって阻害されない。従って、ポケット部55の追加に起因して、膨張用ガスのガス流出口37,38からの流出量が減る等、流出特性が低下するのを抑制することができる。インナチューブ35に上述した本来の機能を発揮させることができる。
【0073】
また、チューブ本体36が、前端部A1よりも前方へ延びていて、前側のガス流出口37が、一般的なチューブ本体におけるガス流出口よりも前方に位置している。そのため、インフレータ21からの膨張用ガスを、チューブ本体36によってより前方の箇所まで導き、より前方の箇所に位置するガス流出口37から流出させることができる。その結果、バッグ本体26の前端部を早期に展開及び膨張させることができる。
【0074】
上記のように膨張用ガスが供給されて展開及び膨張するバッグ本体26は、
図1に示すように、収納部から下方へ飛び出す。バッグ本体26は、乗員P1と側壁部との間へ向けて展開及び膨張される。このバッグ本体26により、乗員P1の上半身、主として頭部PHが衝撃から保護される。
【0075】
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・ポケット部55がチューブ本体36に一体に形成されていて、第1結合部56においてチューブ本体36に繋がっている。そのため、ポケット部55がインナチューブ35とは別部材によって構成される場合に比べ、エアバッグ25の部品点数を削減することができる。
【0076】
また、ポケット部55のインナチューブ35に対する結合箇所が少なくてすみ、その分、エアバッグ25の製造コストを低減することができる。
(第2実施形態)
次に、車両用カーテンエアバッグ装置の第2実施形態について、
図19~
図21を参照して説明する。
【0077】
図19に示すように、第2実施形態では、接続部29が、ガス流路部27の後方に位置している。接続部29は前後方向に延びていて、ガス流路部27の後端部に連通している。接続部29は、接続口31を、ガス流路部27から遠い側の端部である後端部に有している。
【0078】
図19及び
図20に示すように、チューブ本体36は、前後方向に延びていて、ガス流路部27内に配置されている。第2実施形態のチューブ本体36は、第1実施形態におけるチューブ本体36よりも前後方向に長い。挿入部41は、チューブ本体36よりも後方で前後方向に延びていて、チューブ本体36の後端部に連通している。挿入部41は接続部29内に配置されている。
【0079】
インナチューブ35は、第1実施形態と同様のガス流出口37を前端部に有している。さらに、チューブ本体36の下部において前後方向に互いに離間した複数箇所には、ガス流出口39が開口されている。各ガス流出口39は、インナチューブ35に供給された膨張用ガスを下方へ向けて流出する。
【0080】
チューブ本体36の前端部には、第1実施形態と同様の構成を有するポケット部55が設けられている。ポケット部55は、第1実施形態と同様の態様で、チューブ本体36に結合されている。チューブ本体36の前端部及びポケット部55は、最前部のガス流出口39よりも、前方に位置している。すなわち、複数のガス流出口39は、チューブ本体36の前端部よりも後方に位置し、かつ前後方向に互いに離間している。
【0081】
インフレータ21は、第1実施形態とは異なり、前後方向に延びる姿勢で配置されている。インフレータ21の少なくともガス噴出部21aは、挿入部41内に配置されている。
【0082】
上記以外の構成は第1実施形態と同様である。そのため、第2実施形態において、第1実施形態で説明したものと同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
従って、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用及び効果が得られる。すなわち、第2実施形態では、第1実施形態とは異なる形状を有するインナチューブ35が用いられているものの、そのインナチューブ35が布によって形成されていて柔らかく剛性が低い。チューブ本体36の前端部を、ガス流路部27の目的とする箇所まで挿入することが難しい。ここで、目的とする箇所とは、第2実施形態では接続口31から前方へ、上記寸法M1の2倍以上離れた箇所であり、ガス流路部27の前端部に近い箇所である。
【0083】
特に、第2実施形態では、チューブ本体36の下部にガス流出口39が開口されているため、開口されていないインナチューブ35に比べ、チューブ本体36の剛性が低い。この傾向は、ガス流出口39の数が多くなるに従い顕著となる。しかも、チューブ本体36として、第1実施形態におけるチューブ本体36よりも長いものが用いられている。そのため、このような長いチューブ本体36の前端部を、ガス流路部27の目的とする箇所まで挿入することが難しい。
【0084】
そこで、第2実施形態でも、インナチューブ35の挿入作業に際し、第1実施形態と同様の挿入補助具70が用いられる。挿入補助具70としては、接続口31から、ガス流路部27であって、チューブ本体36の前端部が配置される予定の箇所までの距離よりも長いものが用いられる。
【0085】
挿入作業に際しては、ポケット部55の後方で、挿入補助具70が前後方向に延びる姿勢にされる。挿入補助具70が前方へ移動されて、
図21に示すように、先端部70aがポケット部55とチューブ本体36との間であって、周縁結合部53と、第2結合部57とによって挟まれた空間に挿入される。そして、上記先端部70aが、ポケット部55とチューブ本体36との境界部分における第1結合部56まで挿入されると、チューブ本体36の前端部及びポケット部55が上記先端部70aに対し、位置決めされて係止された状態となる。
【0086】
挿入補助具70と、その挿入補助具70に係止されたチューブ本体36の前端部及びポケット部55とが、接続口31から接続部29内に挿入される。この挿入の過程で、先端部70aが、インナチューブ35と一緒に接続部29からガス流路部27に移る。チューブ本体36の前端部及びポケット部55が、ガス流路部27の目的の箇所まで挿入されたところで、挿入が停止される。
【0087】
その後、挿入補助具70が後方へ移動させられ、バッグ本体26から抜き出される。
このように、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、布によって形成されていて剛性の低いインナチューブ35を、バッグ本体26内の目的とする箇所まで挿入することができ、インナチューブ35のバッグ本体26に対する挿入作業性を向上させることができる。
【0088】
特に、上記のように、チューブ本体36にガス流出口39が開口されていて、剛性が低くなっているインナチューブ35であっても、上記の効果が有効に得られる。
また、チューブ本体36の前端部にポケット部55が形成される分、インナチューブ35の前端部の剛性が高くなる。インナチューブ35の前端部の形状を保持しやすくなる。このため、バッグ本体26内への挿入作業性が、ポケット部55が形成されない場合に比べて、さらに向上する。
【0089】
また、上記と同様の理由により、ガス流路部27におけるインナチューブ35の前端部の位置の精度を高めることができ、しかもその位置に安定した状態で配置することができる。エアバッグ25毎に、インナチューブ35の前端部の位置がばらつくのを抑制することができる。
【0090】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組合わせて実施することができる。
【0091】
<第1及び第2実施形態に共通する事項>
・第1及び第2の各実施形態は、バッグ本体26が袋織りされた場合に限らず、同バッグ本体26が複数の基布を縫合等の結合手段で相互に結合させることによって形成された場合にも適用可能である。バッグ本体26の形成後に、インナチューブ35をバッグ本体26内に配置する場合には、上記各実施形態と同様、バッグ本体26内にインナチューブ35を挿入する必要がある。しかし、この場合にも、インナチューブ35にポケット部55を設けることで、上記各実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0092】
・ポケット部55が、インナチューブ35に対し車内側となる箇所にのみ設けられてもよいし、車外側となる箇所にのみ設けられてもよい。
・ポケット部55がインナチューブ35とは別部材によって構成されてもよい。この場合、ポケット部55とチューブ本体36との間に挿入補助具70の先端部70aを差し込んで係止させることのできる態様で、ポケット部55がチューブ本体36に結合されることが重要である。この要求を満たすために、例えば、
図22及び
図23に示すように、チューブ本体36が上記第1及び第2実施形態のように折り曲げられている場合には、各ポケット部55の前端部は、上記挿入方向に対し交差する交差方向である上下方向へ延びる第1結合部56においてチューブ本体36に結合されてもよい。
【0093】
また、上記上下方向におけるポケット部55の両端部の少なくとも一方は、上記挿入方向へ延びる第2結合部においてチューブ本体36に結合されてもよい。
図22及び
図23では、折り曲げられた状態のチューブ本体36の上端部に設けられた周縁結合部53が、上記一方の第2結合部として利用されている。すなわち、第1及び第2実施形態における周縁結合部53によって、各ポケット部55の上端部がチューブ本体36の上端部に対し共縫いされてもよい。
【0094】
なお、
図22及び
図23では、ポケット部55の下端部はチューブ本体36に結合されていない。しかし、この変形例においても、挿入補助具70の先端部70aをポケット部55とチューブ本体36との間に差し込むことができる。この場合には、先端部70aに対するポケット部55及びインナチューブ35の動きが、周縁結合部53及び第1結合部56によって2方向から規制される。従って、インナチューブ35の前端部を、ガス流路部27の目的とする箇所まで挿入することができ、上記第1及び第2実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0095】
もちろん、上記
図22及び
図23の構成に加え、
図24に示すように、上記ポケット部55の下端部が、前後方向へ延びる第2結合部57によってチューブ本体36に結合されてもよい。
【0096】
・上記のようにポケット部55がインナチューブ35とは別部材によって構成される場合には、ポケット部55の直下となる箇所にガス流出口39が開口されてもよい。
・上記
図24の変形例として、
図25に示すように、上記ポケット部55の上端部が、チューブ本体36に結合されなくてもよい。この変形例においても、挿入補助具70の先端部70aをポケット部55とチューブ本体36との間に差し込むことができる。チューブ本体36の前端部を、ガス流路部27の目的とする箇所まで挿入することができ、上記第1及び第2実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0097】
・第1結合部56は、上記挿入方向に対し必ずしも直交しなくてよく、傾斜してもよい。
・ガス流出口37,38からの膨張用ガスの流出に対しポケット部55の及ぼす影響が無視できるほど小さい場合には、同ポケット部55はチューブ本体36の内側に配置されてもよい。この場合にも、上記第1及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0098】
<第1実施形態に関する事項>
・
図1において、接続部29は、前後方向におけるガス流路部27の略中央部に対し、前方又は後方へ離れた箇所において、同ガス流路部27に接続されてもよい。
【0099】
・接続部29が第1実施形態とは反対側へ傾斜、すなわち、後側ほど低くなるように傾斜してもよい。この場合には、挿入部41もまた、後側ほど低くなるように傾斜した状態で、チューブ本体36に接続される。インナチューブ35のバッグ本体26に対する挿入方向は、後方となる。そして、ガス噴出部21aを後端部に有するインフレータ21が、後側ほど低くなるように傾斜した姿勢で配置される。インフレータ21における少なくともガス噴出部21aが挿入部41内に挿入される。
【0100】
・ガス流出口として、第2実施形態におけるガス流出口39と同様に、チューブ本体36の下部において開口するものが設けられてもよい。この場合、ガス流出口37が省略されて、チューブ本体36の前端部が閉塞されてもよい。また、ガス流出口38が省略されて、チューブ本体36の後端部が閉塞されてもよい。さらに、ガス流出口37,38の両方が省略されて、チューブ本体36の前端部及び後端部がともに閉塞されてもよい。
【0101】
<第2実施形態に関する事項>
・接続部29が、ガス流路部27の後方に代えて前方に設けられてもよい。接続部29は前後方向へ延び、ガス流路部27の前端部に連通される。接続部29は、接続口31を、ガス流路部27から遠い側の端部である前端部に有する。
【0102】
挿入部41は前後方向に延び、チューブ本体36の前端部に連通される。チューブ本体36は、ガス流出口37を後端部に有する。チューブ本体36の後端部には、第2実施形態と同様の構成を有するポケット部55が設けられる。チューブ本体36の上記後端部及びポケット部55は、最後部のガス流出口39よりも後方に設けられる。
【0103】
この変形例であっても、上記第2実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
・第2実施形態において、チューブ本体36はガス流路部27の略全長にわたって配置されてもよいし、ガス流路部27の一部にのみ配置されてもよい。
【0104】
・接続部29がガス流路部27の後方に配置される上記第2実施形態、及び接続部29がガス流路部27の前方に配置される上記変形例において、ガス流出口37が省略されて、チューブ本体36の前後方向における両端部のうち、上記挿入方向における前端部が閉塞されてもよい。この場合、ガス流出口はガス流出口39のみによって構成されることになる。
【0105】
<その他>
・挿入補助具70として、板状をなすものに代えて棒状をなすものが用いられてもよい。
【0106】
・制御装置76は、車両10の外部から側壁部に対し衝撃が加わることを予測した場合に、インフレータ21に作動信号を出力する仕様に変更されてもよい。
・上記エアバッグ装置が適用される車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。
【符号の説明】
【0107】
10…車両、20…車両用カーテンエアバッグ装置、21…インフレータ、21a…ガス噴出部、25…エアバッグ、26…バッグ本体、27…ガス流路部、29…接続部、31…接続口、35…インナチューブ、36…チューブ本体、37,38,39…ガス流出口、41…挿入部、55…ポケット部、56…第1結合部、57…第2結合部、70…挿入補助具。