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特開2022-42954感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法
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  • 特開-感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法 図1
  • 特開-感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042954
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220308BHJP
   G03F 7/40 20060101ALI20220308BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20220308BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
G03F7/004 504
G03F7/004 501
G03F7/40
H05K3/18 D
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107672
(22)【出願日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】P 2020148224
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】西口 直希
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 彩子
(72)【発明者】
【氏名】樋口 哲也
【テーマコード(参考)】
2H196
2H197
2H225
5E343
【Fターム(参考)】
2H196AA26
2H196AA27
2H196BA11
2H196HA23
2H196HA27
2H197CA02
2H197CA04
2H197CA05
2H197CA07
2H197CE10
2H197HA02
2H197HA03
2H225AF22P
2H225AF35P
2H225AF43P
2H225AF75P
2H225AF83P
2H225AH12
2H225AH19
2H225AJ48
2H225AJ52
2H225AJ53
2H225AJ54
2H225AJ60
2H225AM80P
2H225AN34P
2H225AN39P
2H225AN54P
2H225AN56P
2H225AN72P
2H225BA32P
2H225BA33P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC03
2H225CC15
5E343AA02
5E343AA22
5E343AA26
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB28
5E343BB44
5E343BB48
5E343BB52
5E343BB71
5E343CC61
5E343DD25
5E343DD33
5E343DD43
5E343DD63
5E343EE36
5E343ER12
5E343ER13
5E343ER18
5E343FF02
5E343FF16
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】感光性樹脂組成物が用いられる環境中に存在するアミンの影響により引き起こされるT-top形状を改善し、パターン上面から計測されても正確なパターン寸法を得ることができる感光性樹脂組成物、及びパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】酸解離性基を有する重合体(A)と、光酸発生剤(B)と、界面活性剤(C)とを含有し、前記界面活性剤(C)が、下記条件(i)を満たすフッ素系もしくはケイ素系界面活性剤であり、かつ、前記重合体(A)100質量部に対して0.5~6質量部の範囲で含まれることを特徴とする感光性樹脂組成物:条件(i):紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定された、界面活性剤の0.1質量%水溶液の光路長10mm、波長300nmにおける吸光度が0.30以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性基を有する重合体(A)と、光酸発生剤(B)と、界面活性剤(C)とを含有し、
前記界面活性剤(C)が、下記条件(i)を満たすフッ素系もしくはケイ素系界面活性剤であり、かつ、前記重合体(A)100質量部に対して0.5~6質量部の範囲で含まれることを特徴とする感光性樹脂組成物:
条件(i):紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定された、界面活性剤の0.1質量%水溶液の光路長10mm、波長300nmにおける吸光度が0.30以下である。
【請求項2】
前記界面活性剤(C)の重量平均分子量が8000以上である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、メルカプト基、スルフィド結合およびポリスルフィド結合から選ばれる少なくとも1種の構造を有する硫黄含有化合物(D)を含有する請求項1または2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、ノボラック樹脂(E)を含有する請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
金属膜を有する基板の前記金属膜上に、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の樹脂膜を形成する工程(1)と、
前記樹脂膜を露光する工程(2)と、
露光後の前記樹脂膜を現像する工程(3)と、
を含むことを特徴とするレジストパターン膜の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により製造されたレジストパターン膜を型としてメッキ処理を行う工程(5)を含むことを特徴とするメッキ造形物の製造方法。
【請求項7】
前記工程(5)の前に、さらに、酸素含有ガスのプラズマ処理を行う工程(4)を含む請求項6に記載のメッキ造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、レジストパターン膜の製造方法、およびメッキ造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンおよびタブレット端末等のモバイル機器の高性能化は、異なる機能を有する半導体チップを、FO-WLP(Fan-Out Wafer Level Package)、FO-PLP(Fan-Out Panel Level Package)、TSV(Through Silicon Via)、シリコンインターポーザー等の高密度パッケージング技術を用いてパッケージングすることにより行われている。
【0003】
このようなパッケージング技術では、半導体チップ間の電気的接続に用いられる配線およびバンプも高密度になってきている。したがって、配線およびバンプの形成に用いられるレジストパターン膜も、微細かつ高密度のものが求められている。
【0004】
通常、配線およびバンプはメッキ造形物であり、銅膜等の金属膜を有する基板の前記金属膜上に感光性樹脂組成物を塗布してレジスト塗膜を形成し、そのレジスト塗膜に対してマスクを用いて露光および現像を行ってレジストパターン膜を形成し、そのレジストパターン膜を型にして基板上にメッキ処理を行うことで製造される(特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-008972号公報
【特許文献2】特開2006-330368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
得られるメッキ造形物に対しては、以下のような特性が必要とされている。鋳型となるパターンの形状が忠実に転写されていること、およびマスク寸法に忠実であること。
【0007】
従来、バンプ加工用レジストとしては、酸により解離して酸性官能基を生じる酸解離性官能基を有する重合体、放射線の照射により酸を発生する成分、およびその他の添加剤からなる化学増幅型のポジ型感放射線性樹脂組成物が広く用いられている。これらの組成物からなるレジストは感度および解像性に優れている。
【0008】
しかしながら、上記のような化学増幅型のポジ型感放射線性樹脂組成物では、露光後に環境中に存在するアミンに曝された場合に、形成されたパターンの断面形状が図1に示すようなT-top形状となりやすい。このような場合、パターンの幅や間隔はパターン上面から計測されるため、計測されたパターンの幅や間隔は、実際のパターンの幅や間隔より大きく見積もられる傾向にあった。この点についても加工寸法の縮小により影響が大きくなってきたため、改良が求められるようになってきている。
【0009】
本発明の課題は、感光性樹脂組成物が用いられる環境中に存在するアミンの影響により引き起こされる上記T-top形状を改善し、パターン上面から計測されても正確なパターン寸法を得ることができる感光性樹脂組成物、及びパターン形成方法を提供することである。更には上記パターン形成方法により得られるパターンを鋳型としてパターン寸法の設計通りのメッキ造形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは前記課題を解決すべく検討を行った。その結果、以下の構成を有する感光性樹脂組成物により前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、例えば以下の[1]~[7]に関する。
【0011】
[1] 酸解離性基を有する重合体(A)と、光酸発生剤(B)と、界面活性剤(C)とを含有し、
前記界面活性剤(C)が、下記条件(i)を満たすフッ素系もしくはケイ素系界面活性剤であり、かつ、前記重合体(A)100質量部に対して0.5~6質量部の範囲で含まれることを特徴とする感光性樹脂組成物:
条件(i):紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定された、界面活性剤の0.1質量%水溶液の光路長10mm、波長300nmにおける吸光度が0.30以下である。
【0012】
[2] 前記界面活性剤(C)の重量平均分子量が8000以上である項[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3] さらに、メルカプト基、スルフィド結合およびポリスルフィド結合から選ばれる少なくとも1種の構造を有する硫黄含有化合物(D)を含有する項[1]または[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4] さらに、ノボラック樹脂(E)を含有する項[1]~[3]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【0013】
[5] 金属膜を有する基板の前記金属膜上に、項[1]~[4]のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の樹脂膜を形成する工程(1)と、
前記樹脂膜を露光する工程(2)と、
露光後の前記樹脂膜を現像する工程(3)と、
を含むことを特徴とするレジストパターン膜の製造方法。
【0014】
[6] 項[5]に記載の製造方法により製造されたレジストパターン膜を型としてメッキ処理を行う工程(5)を含むことを特徴とするメッキ造形物の製造方法。
[7] 前記工程(5)の前に、さらに、酸素含有ガスのプラズマ処理を行う工程(4)を含む項[6]に記載のメッキ造形物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記T-top形状が改善され、パターン上面から計測されても正確なパターン寸法を得ることができる感光性樹脂組成物、前記感光性樹脂組成物を用いたレジストパターン膜の製造方法、および前記レジストパターン膜を用いたメッキ造形物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、ポジ型感放射線性樹脂組成物により形成されたパターンの断面形状(T-top形状)の一例を示す模式図である。
図2図2は、ポジ型感放射線性樹脂組成物により形成されたパターンの断面形状(T-top形状)の一例を示す模式図である。
図3図3は、ポジ型感放射線性樹脂組成物により形成されたパターンの断面形状(T-top形状)の一例を示す模式図である。
図4図4は、ポジ型感放射線性樹脂組成物により形成されたパターンの断面形状(T-top形状)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書中で例示する各成分、例えば感光性樹脂組成物中の各成分や、重合体(A)中の各構造単位は、特に言及しない限り、それぞれ1種単独で含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。
【0018】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう)は、酸解離性基を有する重合体(A)(以下「重合体(A)」ともいう)と、光酸発生剤(B)と、後述する界面活性剤(C)とを含有する。本組成物は、さらに、メルカプト基、スルフィド結合およびポリスルフィド結合から選ばれる少なくとも1種の構造を有する硫黄含有化合物(D)(以下、単に「化合物(D)」ともいう。)や、ノボラック樹脂(E)を含有することが好ましい。
【0019】
<重合体(A)>
重合体(A)は、酸解離性基を有する。
酸解離性基とは、光酸発生剤(B)から生成する酸の作用により解離可能な基である。前記解離の結果として重合体(A)中にカルボキシ基およびフェノール性水酸基等の酸性官能基が生成する。その結果、重合体(A)のアルカリ性現像液に対する溶解性が変化し、本組成物は、レジストパターン膜を形成することができる。
【0020】
重合体(A)は、酸解離性基により保護された酸性官能基を有する。酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基が挙げられる。重合体(A)としては、例えば、カルボキシ基が酸解離性基により保護された(メタ)アクリル樹脂、フェノール性水酸基が酸解離性基により保護されたポリヒドロキシスチレン樹脂が挙げられる。
【0021】
重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000~500,000、好ましくは3,000~300,000、より好ましくは10,000~100,000、さらに好ましくは20,000~60,000である。
【0022】
重合体(A)のMwとゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、通常、1~5、好ましくは1~3である。
【0023】
本組成物は、1種又は2種以上の重合体(A)を含有することができる。
本組成物中の重合体(A)の含有割合は、前記組成物の固形分100質量%中、通常、70~99.5質量%、好ましくは80~99質量%、より好ましくは90~98質量%である。前記固形分とは、後述する有機溶剤以外の全成分をいう。
【0024】
≪構造単位(a1)≫
重合体(A)は、通常、酸解離性基を有する構造単位(a1)を有する。
構造単位(a1)としては、例えば、式(a1-10)に示す構造単位、式(a1-20)に示す構造単位が挙げられ、式(a1-10)に示す構造単位が好ましい。
【0025】
【化1】
【0026】
式(a1-10)および(a1-20)中の各記号の意味は以下のとおりである。
11は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、または前記アルキル基中の少なくとも1つの水素原子を、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、フェニル基等のアリール基、水酸基、およびアルコキシ基等の別の基に置換した基(以下「置換アルキル基」ともいう)である。
【0027】
12は、炭素数1~10の2価の有機基である。
Arは、炭素数6~10のアリーレン基である。
13は、酸解離性基である。
【0028】
mは、0~10の整数、好ましくは0~5、より好ましくは0~3の整数である。
前記炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、デシル基が挙げられる。
【0029】
前記炭素数1~10の2価の有機基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等の炭素数1~10のアルカンジイル基;前記アルカンジイル基中の少なくとも1つの水素原子を、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、フェニル基等のアリール基、水酸基、およびアルコキシ基等の別の基に置換した基が挙げられる。
【0030】
前記炭素数6~10のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。
【0031】
前記酸解離性基としては、酸の作用により解離し、前記解離の結果として重合体(A)中にカルボキシ基およびフェノール性水酸基等の酸性官能基が生成する基が挙げられる。具体的には、式(g1)に示す酸解離性基、ベンジル基が挙げられ、式(g1)に示す酸解離性基が好ましい。
【0032】
【化2】
【0033】
式(g1)中、Ra1~Ra3は、それぞれ独立にアルキル基、脂環式炭化水素基、または前記アルキル基もしくは前記脂環式炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子を、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、フェニル基等のアリール基、水酸基、およびアルコキシ基等の別の基に置換した基であり、Ra1およびRa2が相互に結合して、Ra1およびRa2が結合する炭素原子Cとともに脂環構造を形成していてもよい。
【0034】
a1~Ra3の前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、ペンチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
【0035】
a1~Ra3の前記脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式飽和環状炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の単環式不飽和環状炭化水素基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環式飽和環状炭化水素基が挙げられる。
【0036】
a1、Ra2および炭素原子Cにより形成される前記脂環構造としては、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の単環式飽和環状炭化水素構造;シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル等の単環式不飽和環状炭化水素構造;ノルボルニル、アダマンチル、トリシクロデシル、テトラシクロドデシル等の多環式飽和環状炭化水素構造が挙げられる。
【0037】
式(g1)に示す酸解離性基としては、式(g11)~(g15)に示す基が好ましい。
【0038】
【化3】
【0039】
式(g11)~(g15)中、Ra4は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-ブチル基等の炭素数1~10のアルキル基であり、nは、1~4の整数である。式(g11)~(g14)中の各環構造は、炭素数1~10のアルキル基、フッ素原子および臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、およびアルコキシ基等の置換基を1つまたは2つ以上有していてもよい。*は結合手を示す。
【0040】
構造単位(a1)としては、式(a1-10)および(a1-20)に示す構造単位の他にも、特開2005-208366号公報、特開2000-194127号公報、US 6,444,394号公報、およびUS 2006/0210913号公報に記載のアセタール系酸解離性基を有する構造単位;US 2013/0095425号公報に記載のスルトン環を有する構造単位;特開2000-214587号公報、およびUS 6,156,481号公報等に記載の架橋型酸解離性基を有する構造単位が挙げられる。
【0041】
上記公報に記載の構造単位は、本明細書に記載されているものとする。
重合体(A)は、1種又は2種以上の構造単位(a1)を有することができる。
重合体(A)中の構造単位(a1)の含有割合は、通常、10~50モル%、好ましくは15~45モル%、より好ましくは20~40モル%である。
【0042】
なお、本明細書において、重合体(A)中の各構造単位の含有割合は、重合体(A)を構成する全ての構造単位の合計を100モル%とした場合の値である。前記各構造単位は、通常、重合体(A)合成時の単量体に由来する。各構造単位の含有割合は、1H-NMRにより測定することができる。
【0043】
重合体(A)は、一実施態様において、構造単位(a1)として、R11が水素原子である式(a1-10)に示す構造単位と、R11が炭素数1~10のアルキル基または置換アルキル基である式(a1-10)に示す構造単位とを有することが好ましい。このような態様であると、本組成物の解像性をより向上でき、また、メッキ液に対するレジストパターン膜の膨潤耐性およびクラック耐性をより向上できる傾向にある。
【0044】
≪構造単位(a2)≫
重合体(A)は、アルカリ性現像液への溶解性を促進する基(以下「溶解性促進基」ともいう)を有する構造単位(a2)をさらに有することができる。重合体(A)が構造単位(a2)を有することで、本組成物から形成される樹脂膜の解像性、感度および焦点深度等のリソ性を調節することができる。
【0045】
構造単位(a2)としては、例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造およびフッ素アルコール構造から選ばれる少なくとも1種の基または構造を有する構造単位(ただし、構造単位(a1)に該当するものを除く)が挙げられる。これらの中でも、メッキ造形物形成時のメッキからの押し込みに対して強いレジストパターン膜を形成できることから、フェノール性水酸基を有する構造単位が好ましい。
【0046】
カルボキシ基を有する構造単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、3-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート等の単量体由来の構造単位、および特開2002-341539号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0047】
フェノール性水酸基を有する構造単位としては、例えば、2-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、4-イソプロペニルフェノール、4-ヒドロキシ-1-ビニルナフタレン、4-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアリール基を有する単量体由来の構造単位が挙げられる。ヒドロキシアリール基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、メチルヒドロキシフェニル基、ジメチルヒドロキシフェニル基、ジクロロヒドロキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、テトラヒドロキシフェニル基等のヒドロキシフェニル基;ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基等のヒドロキシナフチル基が挙げられる。
【0048】
アルコール性水酸基を有する構造単位としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイロオキシ-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン等の単量体由来の構造単位、および特開2009-276607号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0049】
ラクトン構造を有する構造単位としては、例えば、特開2017-058421号公報、US 2010/0316954号、特開2010-138330号公報、US 2005/0287473号公報、特開2016-098350号公報、およびUS 2015/0323865号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0050】
環状カーボネート構造を有する構造単位としては、例えば、特開2017-058421号公報、特開2009-223294号公報、および特開2017-044875号公報に記載の構造単位に記載の構造単位が挙げられる。
【0051】
スルトン構造を有する構造単位としては、例えば、特開2017-058421号公報、特開2014-029518号公報、US 2016/0085149号公報、および特開2013-007846号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0052】
フッ素アルコール構造を有する構造単位としては、例えば、US 2004/0106755号公報、US 2003/0031952号公報、US 2004/0144752号公報、および特開2005-133066号公報に記載の構造単位が挙げられる。
【0053】
上記公報に記載の構造単位は、本明細書に記載されているものとする。
重合体(A)は、1種又は2種以上の構造単位(a2)を有することができる。
重合体(A)中の構造単位(a2)の含有割合は、通常、10~80モル%、好ましくは20~65モル%、より好ましくは25~60モル%である。構造単位(a2)の含有割合が前記範囲内であれば、アルカリ性現像液に対する溶解速度を上げることができ、その結果、本組成物の厚膜での解像性を向上させることができる。
【0054】
重合体(A)は、構造単位(a1)を有する重合体と同一のまたは異なる重合体中に構造単位(a2)を有することができるが、同一の重合体中に構造単位(a1)~(a2)を有することが好ましい。
【0055】
≪構造単位(a3)≫
重合体(A)は、構造単位(a1)~(a2)以外の他の構造単位(a3)をさらに有することができる。
【0056】
構造単位(a3)としては、例えば、
スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メトキシスチレン、3-メトキシスチレン、4-メトキシスチレン等のビニル化合物由来の構造単位;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、ラウロキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造単位;
シクロペンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造単位;
フェニル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造単位;
(メタ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル等の不飽和ニトリル化合物由来の構造単位;
(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド化合物由来の構造単位;
マレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等の不飽和イミド化合物由来の構造単位;
が挙げられる。
【0057】
重合体(A)は、1種又は2種以上の構造単位(a3)を有することができる。
重合体(A)中の構造単位(a3)の含有割合は、通常、40モル%以下である。
重合体(A)は、構造単位(a1)および/または構造単位(a2)を有する重合体と同一のまたは異なる重合体中に構造単位(a3)を有することができるが、同一の重合体中に構造単位(a1)~(a3)を有することが好ましい。
【0058】
≪重合体(A)の製造方法≫
重合体(A)は、各構造単位に対応する単量体を、適当な重合溶媒中で、イオン重合法またはラジカル重合法等の公知の重合方法により製造することができる。これらの中でも、ラジカル重合法が好ましい。
【0059】
前記ラジカル重合法に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(イソ酪酸メチル)、2,2'-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウリルペルオキシド、t-ブチルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0060】
また、重合に際しては、必要に応じて、メルカプタン化合物、ハロゲン炭化水素等の分子量調節剤を使用することができる。
【0061】
<光酸発生剤(B)>
光酸発生剤(B)は、露光により酸を発生する化合物である。この酸の作用により、重合体(A)中の酸解離性基が解離して、カルボキシ基およびフェノール性水酸基等の酸性官能基が生成する。その結果、本組成物から形成された樹脂膜の露光部がアルカリ性現像液に易溶性となり、ポジ型のレジストパターン膜を形成することができる。このように、本組成物は化学増幅型ポジ型感光性樹脂組成物として機能する。
【0062】
光酸発生剤(B)としては、例えば、特開2004-317907号公報、特開2014-157252号公報、US 2003/0008241号公報、特開2017-102260号公報、特開2016-018075号公報、およびUS 2016/0320698号公報に記載の化合物が挙げられる。これらは本明細書に記載されているものとする。
【0063】
光酸発生剤(B)としては、具体的には、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-t-ブチルフェニル・ジフェニルスルホニウムベンゼンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム・ビス(ノナフルオロブチルスルホニル)イミドアニオン、4,7-ジ-n-ブトキシナフチルテトラヒドロチオフェニウム・トリス(ノナフルオロブチルスルホニル)メチド等のオニウム塩化合物;
1,10-ジブロモ-n-デカン、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタンや、フェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、4-メトキシフェニル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、スチリル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ナフチル-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロゲン含有化合物;
4-トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェニルスルホニル)メタン等のスルホン化合物;
ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート等のスルホン酸化合物;
N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-ブチル-ナフチルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-プロピルチオ-ナフチルイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N-(4-メチルフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.1.1]ヘプタン-5,6-オキシ-2,3-ジカルボキシイミド、N-(4-フルオロフェニルスルホニルオキシ)ナフチルイミド、N-(10-カンファ-スルホニルオキシ)ナフチルイミド等のスルホンイミド化合物;
ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル-p-トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-1,1-ジメチルエチルスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン等のジアゾメタン化合物;
が挙げられる。
【0064】
これらの中でも、オニウム塩化合物および/またはスルホンイミド化合物が、解像性およびメッキ液耐性に優れたレジストパターン膜を形成できることから好ましい。
本組成物は、1種又は2種以上の光酸発生剤(B)を含有することができる。
【0065】
本組成物中の光酸発生剤(B)の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常、0.1~20質量部、好ましくは0.3~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。光酸発生剤(B)の含有量が前記範囲内であると、解像性により優れたレジストパターン膜が得られる傾向にある。
【0066】
<界面活性剤(C)>
界面活性剤(C)は、下記条件(i)を満たすフッ素系もしくはケイ素系界面活性剤である。
【0067】
条件(i):紫外可視近赤外分光光度計を用いて測定された、界面活性剤の0.1質量%水溶液の光路長10mm、波長300nmにおける吸光度が0.30以下である。
【0068】
前記条件(i)における吸光度の上限値は、好ましくは0.26以下、より好ましくは0.22以下、さらに好ましくは0.18以下であり、下限値は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、さらに好ましくは0.01以上である。
【0069】
条件(i)を満たすような親水性の界面活性剤(C)を含有する本組成物を用いて樹脂膜を形成すると、界面活性剤(C)が樹脂膜表面に偏析することにより、樹脂膜の最表面の現像溶解性が向上し、その結果、上記T-top形状が改善されると考えられる。
【0070】
本組成物中の界面活性剤(C)の含有量は、前記重合体(A)100質量部に対して0.5~6質量部、好ましくは0.8~5.5、より好ましくは1~5の範囲である。界面活性剤(C)を前記範囲で含有させることにより、上記T-top形状の改善に効果を有する。なお、従来の感光性樹脂組成物では、界面活性剤は塗膜の均一性(塗布性)を改善する目的で用いられるのが一般的であり、その場合の含有量としては0.1質量%以下程度が一般的であった。しかし本願発明では、従来の技術常識である上記範囲から大きく外れる範囲でT-top形状の改善効果を見出したというべきである。
【0071】
界面活性剤(C)としては、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、およびフッ素原子と珪素原子の両方を含有する界面活性剤のいずれであってもよいが、フッ素系界面活性剤が入手の容易性等から好ましい。また、界面活性剤(C)は1種単独で用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
界面活性剤(C)の市販品の例としては、「メガファック F553」、「メガファック F559」、「メガファック F477」、「メガファック F570」、「メガファック F557」、「メガファック F556」(以上、DIC(株)製)、「フタージェント212M」、「フタージェント602A 」(以上、(株)ネオス製)、「ポリフロー LE-607」 (共栄社化学 (株) 製) などが挙げられる。
【0073】
界面活性剤(C)の重量平均分子量は、好ましくは8,000以上、より好ましくは9,000~100,000、さらに好ましくは10,000~80,000である。界面活性剤(C)の重量平均分子量が前記範囲内であることにより、樹脂膜表面に偏析しやすい傾向にある。
【0074】
<化合物(D)>
化合物(D)は、メルカプト基、スルフィド結合およびポリスルフィド結合から選ばれる少なくとも1種を有する。一実施態様において、これらの基または結合を有する光酸発生剤(B)を用いる場合は、当該光酸発生剤以外の化合物(D)を選択して使用することができる。
【0075】
化合物(D)中のメルカプト基数、スルフィド結合数およびポリスルフィド結合数の合計は、特に限定されないが、通常1~10、好ましくは1~6、より好ましくは2~4である。
【0076】
化合物(D)としては、以下に説明する、式(D1)に示す化合物(D1)、式(D2)に示す化合物(D2)、前記化合物(D2)の多量体、式(D3)に示す化合物(D3)が挙げられる。メッキ処理中のレジストパターン膜の基板からの剥がれを抑制できることから、前記化合物(D1)および前記化合物(D2)が好ましく、前記化合物(D2)がより好ましい。
【0077】
化合物(D)は、一実施態様において、疎水性が高い傾向にある。化合物(D)の疎水性については、分配係数が指標となる。化合物(D)の分配係数は、好ましくは2~10、より好ましくは3~7である。分配係数は、ClogP法により算出したオクタノール/水分配係数(logP)の値であり、数値が大きいほど疎水性(脂溶性)が高いことを意味する。
【0078】
本組成物は、1種又は2種以上の化合物(D)を含有することができる。
本組成物中の化合物(D)の含有量は、重合体(A)を含む重合体成分100質量部に対して、その含有量の下限としては、通常、0.01質量部、好ましくは0.05質量部、より好ましくは0.1質量部、特に好ましくは0.2質量部であり、その含有量の上限としては、通常、10質量部、好ましくは3.0質量部、より好ましくは2.0質量部、特に好ましくは1.0質量部である。このような態様であると、前記ポジ型組成物は前述した効果をより発揮することができる。例えば化合物(D)の含有量が0.2質量部以上であれば、矩形性がより高いレジストパターン膜を形成できる傾向にある。また、例えば化合物(D)の含有量が2.0質量部以下であれば、金属膜を有する基板に対するメッキ造形物の密着性がより高くなる傾向にある。
【0079】
≪化合物(D1)≫
化合物(D1)は、式(D1)に示す化合物である。
【0080】
【化4】
【0081】
式(D1)中、R31は、それぞれ独立に1価の炭化水素基、または前記1価の炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子をメルカプト基に置換した基(以下「メルカプト置換基」ともいう)である。pは、1以上の整数、好ましくは1~4の整数、より好ましくは2~3の整数である。例えばpが3の場合、化合物(D1)はトリスルフィド結合を有する。pが1である場合は、少なくとも1つのR31は前記1価の炭化水素基中の少なくとも1つの水素原子をメルカプト基に置換した基であることが好ましい。
【0082】
31の1価の炭化水素基は、通常、炭素数1~12の1価の炭化水素基である。前記1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基が挙げられる。
【0083】
31のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、デシル基等の炭素数1~10のアルキル基が挙げられる。
31のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基が挙げられる。
【0084】
31のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7~12のアリールアルキル基が挙げられる。
メルカプト置換基としては、例えば、4-メルカプトフェニル基が挙げられる。
【0085】
化合物(D1)において、スルフィド結合(p=1の場合)、ポリスルフィド結合(p=2以上の整数の場合)またはメルカプト基(R31がメルカプト置換基の場合)は、炭化水素構造に結合している。このため、化合物(D1)は疎水性が高くなっていると推測される。
【0086】
化合物(D1)としては、例えば、下記式(D1-1)~(D1-3)に示す化合物が挙げられる。
【0087】
【化5】
【0088】
≪化合物(D2)およびその多量体≫
化合物(D2)は、式(D2)に示す化合物である。
【0089】
【化6】
【0090】
式(D2)中の各記号の意味は以下のとおりである。
32は、2価の炭化水素基であり、好ましくはアルカンジイル基、アリーレン基またはアリーレンアルカンジイル基であり、これらの中では、メッキ造形物を良好に製造することができることから、アルカンジイル基がより好ましい。
【0091】
33は、2価の炭化水素基、または前記2価の炭化水素基中の少なくとも1つの-CH2-基(両末端を除く)を-S-もしくは-O-に置換した基であり、好ましくはアルカンジイル基、前記アルカンジイル基中の少なくとも1つの-CH2-基(両末端を除く)を-S-もしくは-O-に置換した基(以下「置換アルカンジイル基」ともいう)、アリーレン基またはアリーレンアルカンジイル基であり、これらの中では、メッキ造形物を良好に製造することができることから、アルカンジイル基がより好ましい。
【0092】
前記アルカンジイル基の炭素数は、通常、1~12、好ましくは2~12である。前記アルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ドデカン-1,12-ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;1-メチルプロパン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、1-メチルブタン-1,4-ジイル基、2-メチルブタン-1,4-ジイル基等の分岐状アルカンジイル基が挙げられる。これらの中でも、直鎖状アルカンジイル基が好ましい。
【0093】
置換アルカンジイル基としては、例えば、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-で表される基、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-で表される基が挙げられる。
【0094】
前記アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、メチルフェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~10のアリーレン基が挙げられる。
【0095】
前記アリーレンアルカンジイル基は、1つ以上のアリーレン基と1つ以上のアルカンジイル基とが任意の順序で結合した2価の基である。各々のアリーレン基およびアルカンジイル基としては、上記した具体例が挙げられる。
【0096】
34は、グリコールウリル環構造またはイソシアヌル環構造を示す。なお、グリコールウリル環構造およびイソシアヌル環構造は、疎水性を低下させうる結合を有しているが、その構造対称性が高いため、化合物(D2)の疎水性を悪化させるほどではないと推測される。
【0097】
mは、1または0である。
qは、1~4の整数である。R34がグリコールウリル環構造である場合、qは1~4の整数である。R34がイソシアヌル環構造である場合、qは1~3の整数である。qが2以上の整数の場合、式(D2)中の-(R32-S)m-R33-SHで表される基は同一でも異なってもよい。
【0098】
化合物(D2)において、メルカプト基またはスルフィド結合(mが1の場合)は、炭化水素構造、または炭化水素構造において一部に-S-もしくは-O-を有する構造に結合している。このため、化合物(D2)は疎水性が高くなっていると推測される。
【0099】
化合物(D2)としては、式(D2-1)に示す化合物(D2-1)、および式(D2-2)に示す化合物(D2-2)が好ましく、前記化合物(D2-1)がより好ましい。
【0100】
【化7】
【0101】
式(D2-1)および(D2-2)中、Xは、それぞれ独立に水素原子または式(g2)に示す1価の基である。ただし、式(D2-1)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基であり、好ましくは、全てのXが式(g2)に示す1価の基である。また、式(D2-2)において少なくとも1つのXは式(g2)に示す1価の基であり、好ましくは、全てのXが式(g2)に示す1価の基である。
【0102】
【化8】
【0103】
式(g2)中、R32、R33およびmは、それぞれ式(D2)中のR32、R33およびmと同義であり、*は、式(D2-1)または(D2-2)中の窒素原子との結合手である。
【0104】
化合物(D2-1)としては、例えば、1,3,4,6-テトラキス[2-メルカプトエチル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(2-メルカプトエチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(3-メルカプトプロピルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(4-メルカプトブチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(5-メルカプトペンチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(6-メルカプトヘキシルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(8-メルカプトオクチルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(10-メルカプトデシルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス[3-(12-メルカプトドデシルスルファニル)プロピル]グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス{3-[2-(2-メルカプトエチルスルファニル)エチルスルファニル]プロピル}グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-{2-[2-(2-メルカプトエトキシ)エトキシ]エチルスルファニル}プロピル)グリコールウリルが挙げられる。
【0105】
化合物(D2-2)としては、例えば、1,3,5-トリス[2-メルカプトエチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(2-メルカプトエチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(3-メルカプトプロピルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(4-メルカプトブチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(5-メルカプトペンチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(6-メルカプトヘキシルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(8-メルカプトオクチルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(10-メルカプトデシルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス[3-(12-メルカプトドデシルスルファニル)プロピル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス{3-[2-(2-メルカプトエチルスルファニル)エチルスルファニル]プロピル}イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-{2-[2-(2-メルカプトエトキシ)エトキシ]エチルスルファニル}プロピル)イソシアヌレートが挙げられる。
【0106】
化合物(D2)は、例えば、特開2016-169174号公報、特開2016-164135号公報、および特開2016-164134号公報に記載された方法により合成することができる。
【0107】
化合物(D2)は、多量体を形成していてもよい。前記多量体は、複数の化合物(D2)がメルカプト基のカップリングによりジスルフィド結合を形成することで得られる多量体である。前記多量体は、例えば、化合物(D2)の2~5量体である。
【0108】
≪化合物(D3)≫
化合物(D3)は、式(D3)に示す化合物である。
【0109】
【化9】
【0110】
式(D3)中、R35およびR36は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基である。R37は、単結合またはアルカンジイル基である。R38は、炭素原子以外の原子を含んでいてもよいr価の脂肪族基である。rは2~10の整数である。
【0111】
35およびR36のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ペンチル基、デシル基等の炭素数1~10、好ましくは1~4のアルキル基が挙げられる。R35およびR36としては、一方が水素原子であり他方がアルキル基である組合せが好ましい。
【0112】
37のアルカンジイル基の炭素数は、通常、1~10、好ましくは1~5である。前記アルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基等の直鎖状アルカンジイル基;1-メチルプロパン-1,3-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、1-メチルブタン-1,4-ジイル基、2-メチルブタン-1,4-ジイル基等の分岐状アルカンジイル基が挙げられる。これらの中でも、直鎖状アルカンジイル基が好ましい。
【0113】
38は、炭素原子以外の原子を含んでいてもよいr価(2~10価)の脂肪族基である。炭素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。前記脂肪族基の構造は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよく、これらの構造を組み合わせた構造であってもよい。
【0114】
前記脂肪族基としては、例えば、炭素数2~10のr価の炭化水素基、炭素数2~10のr価の酸素含有脂肪族基、イソシアヌル環構造を有する炭素数6~10の3価の基が挙げられる。
【0115】
化合物(D3)としては、下記式(D3-1)~(D3-4)に示す化合物が挙げられる。
【0116】
【化10】
【0117】
<ノボラック樹脂(E)>
ノボラック樹脂(E)は、アルカリ可溶性を有するものであればよく、通常の方法により得られるもので良い。本組成物の重合体(A)は疎水性を有する一方で界面活性剤(C)は親水性を有する。本組成物にノボラック樹脂(E)を用いることにより、理由は定かではないが、前記重合体(A)と界面活性剤(C)のように親水性成分と疎水性成分が混在する場合に組成物の相溶性が向上する。また、アルカリ可溶性を適宜コントロールすることができるため、重合体(A)との混合割合や、後述するノボラック樹脂(E)の組成を調節することで矩形のパターン形状を得ることができる。
【0118】
ノボラック樹脂(E)は、例えば、酸触媒を用いて、フェノール化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたは置換された若しくは置換されていないベンズアルデヒド類などのアルデヒドとの縮合重合、またはフェノール化合物と置換された若しくは置換されていないメチロール化合物との縮合重合によって製造することができる。
【0119】
適当なノボラック樹脂(E)としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール及び類似物などのフェノール化合物と、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物との、酸または多価金属イオン触媒の存在下での縮合反応によって得られるものなどが挙げられる。
【0120】
ノボラック樹脂(E)の重量平均分子量は、通常1,000~30,000、好ましくは1,000~15,000、更に好ましくは1,000~10,000である。
ノボラック樹脂(E)は2種以上のブレンドとすることもできる。
【0121】
本発明に用いられるノボラック樹脂(E)としてはクレゾール系ノボラック樹脂が好ましい。フェノール化合物としてm-クレゾール、p-クレゾールを、アルデヒド類としてホルムアルデヒドを用いたクレゾールノボラック樹脂が、種類が豊富な上に入手が容易でアルカリ可溶性を調整する上で特に好ましい。
【0122】
<クエンチャー>
本組成物は、クエンチャーをさらに含有することができる。
クエンチャーは、例えば、光酸発生剤(B)から露光により生成した酸が樹脂膜中で拡散することを制御するために用いられる成分であり、その結果、本組成物の解像性を向上させることができる。
【0123】
クエンチャーとしては、例えば、塩基性化合物、塩基を発生する化合物が挙げられ、例えば、特開2011-029636号公報、特開2014-013381号公報、特表2015-526752号公報、特開2016-099483号公報、および特開2017-037320号公報に記載の化合物が挙げられる。これらは本明細書に記載されているものとする。
【0124】
クエンチャーとしては、例えば、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン;アニリン、1-ナフチルアミン等の芳香族アミン;トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;エチレンジアミン、1,3-ビス[1-(4-アミノフェニル)-1-メチルエチル]ベンゼン、ポリエチレンイミン等のポリアミノ化合物;ホルムアミド等のアミド化合物;尿素、メチルウレア等のウレア化合物;イミダゾール、ベンズイミダゾール等の含窒素複素環化合物;N-(t-ブトキシカルボニル)ピペリジン、N-(t-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、N-(t-ブトキシカルボニル)イミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)ベンズイミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)-2-フェニルベンズイミダゾール等の酸解離性基を有する含窒素化合物が挙げられる。
【0125】
本組成物は、1種又は2種以上のクエンチャーを含有することができる。
本組成物中のクエンチャーの含有量は、重合体(A)100質量部に対して、通常、0.001~10質量部、好ましくは0.01~5質量部である。
【0126】
<その他成分>
本組成物は、その他成分をさらに含有することができる。
前記その他成分としては、例えば、前記感光性樹脂組成物の塗布性、消泡性等を改良する作用を示す、前記界面活性剤(C)以外の界面活性剤、露光光を吸収して光酸発生剤の酸発生効率を向上させる増感剤、前記感光性樹脂組成物から形成した樹脂膜のアルカリ性現像液への溶解速度を制御するアルカリ可溶性樹脂や低分子フェノール化合物、露光時の散乱光の未露光部への回り込みによる光反応を阻止する紫外線吸収剤、前記感光性樹脂組成物の保存安定性を高める熱重合禁止剤、その他、酸化防止剤、接着助剤、無機フィラーが挙げられる。
【0127】
<有機溶剤>
本組成物は、有機溶剤をさらに含有することができる。有機溶剤は、例えば、本組成物中に含まれる各成分を均一に混合するために用いられる成分である。
【0128】
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル溶剤;メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン溶剤;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
【0129】
本組成物は、1種又は2種以上の有機溶剤を含有することができる。
本組成物中の有機溶剤の含有割合は、通常、40~90質量%である。
【0130】
<感光性樹脂組成物の製造>
本組成物は、前述した各成分を均一に混合することにより製造することができる。また、異物を取り除くために、前述した各成分を均一に混合した後、得られた混合物をフィルターで濾過することができる。
【0131】
[感光性樹脂組成物キット]
本発明の一実施態様として、化合物(D)と有機溶剤とを含有する第1剤と、酸解離性基を有する重合体(A)と光酸発生剤(B)と界面活性剤(C)とを含有する第2剤とを有する感光性樹脂組成物キットが挙げられる。各成分の詳細は前述したとおりである。
【0132】
前記第1剤中の化合物(D)の含有割合は、通常、0.0001~10質量%、好ましくは0.001~1質量%である。前記第2剤は、その他、前述したクエンチャー、その他成分、有機溶剤などを含有することができる。前記第2剤中の各成分の含有量(含有割合)は、前述した感光性樹脂組成物またはその固形分中の各成分の含有量(含有割合)と同様である。
【0133】
前記感光性樹脂組成物キットは、例えば、金属膜を有する基板の前記金属膜上に前記第1剤を塗布した後、前記第1剤により表面処理済みの前記金属膜上に前記第2剤の樹脂膜を形成する、という方法で使用することができる。以降の工程は、以下に説明する工程(2)および(3)と同様である。この方法によっても、前記金属膜上に化合物(D)を含む膜が形成されるという前述した推測理由により、本発明の効果が発現すると考えられる。
【0134】
[レジストパターン膜の製造方法]
本発明のレジストパターン膜の製造方法は、金属膜を有する基板の前記金属膜上に、本発明の感光性樹脂組成物の樹脂膜を形成する工程(1)、前記樹脂膜を露光する工程(2)、および露光後の前記樹脂膜を現像する工程(3)を含む。
【0135】
<工程(1)>
前記基板としては、例えば、半導体基板、ガラス基板が挙げられる。基板の形状には特に制限はなく、表面形状は平板状および凸凹状が挙げられ、基板の形状としては円形および正方形が挙げられる。また、基板の大きさに制限はない。
【0136】
前記金属膜としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金およびパラジウム等の金属、ならびに前記金属を含む2種以上の合金を含む膜が挙げられ、銅膜、すなわち銅および/または銅合金を含む膜が好ましい。金属膜の厚さは、通常、100~10,000Å、好ましくは500~2,000Åである。金属膜は、通常、前記基板の表面に設けられている。金属膜は、スパッタ法等の方法により形成することができる。
【0137】
前記樹脂膜は、通常、金属膜を有する基板の前記金属膜上に本組成物を塗布して形成される。本組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、アプリケーター法が挙げられ、これらの中でもスピンコート法、スクリーン印刷法が好ましい。
【0138】
本組成物を塗布した後、有機溶剤を揮発させる等の目的のため、塗布された当該本組成物に対して加熱処理を行うことができる。前記加熱処理の条件は、通常、50~200℃で0.5~20分間である。
前記樹脂膜の厚さは、通常、1~100μm、好ましくは5~80μmである。
【0139】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で形成した樹脂膜を露光する。
【0140】
前記露光は、通常、所定のマスクパターンを有するフォトマスクを介して、等倍投影露光または縮小投影露光で、樹脂膜に選択的に行う。露光光としては、例えば、波長150~600nm、好ましくは波長200~500nmの紫外線または可視光線が挙げられる。露光光の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、レーザーが挙げられる。露光量は、露光光の種類、感光性樹脂組成物の種類、および樹脂膜の厚さによって適宜選択でき、通常、100~20,000mJ/cm2である。
【0141】
前記樹脂膜に対する露光後、現像前に、前記樹脂膜に対して加熱処理を行うことができる。前記加熱処理の条件は、通常、70~180℃で0.5~10分間である。前記加熱処理により、重合体(A)において酸解離性基の酸による解離反応を促進することができる。
【0142】
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で露光した樹脂膜を現像して、レジストパターン膜を形成する。現像は、通常、アルカリ性現像液を用いて行う。現像方法としては、例えば、シャワー法、スプレー法、浸漬法、液盛り法、パドル法が挙げられる。現像条件は、通常、10~30℃で1~30分間である。
【0143】
アルカリ性現像液としては、例えば、アルカリ性物質を1種又は2種以上含有する水溶液が挙げられる。アルカリ性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、ピロール、ピペリジンが挙げられる。アルカリ性現像液におけるアルカリ性物質の濃度は、通常、0.1~10質量%である。アルカリ性現像液は、例えば、メタノール、エタノール等の有機溶剤および/または界面活性剤をさらに含有することができる。
【0144】
現像により形成されたレジストパターン膜を水等により洗浄することができる。その後、前記レジストパターン膜をエアーガンまたはホットプレートを用いて乾燥することができる。
【0145】
以上のようにして、基板の金属膜上に、T-top形状の形成を抑制しつつ、メッキ造形物を形成するための型となるレジストパターン膜を形成することができ、したがってレジストパターン膜(型)を金属膜上に有するメッキ用基板が得られる。レジストパターン膜の厚さは、通常、1~100μm、好ましくは5~80μmである。レジストパターン膜の開口部の形状としては、メッキ造形物の種類に即した形状を選択することができる。メッキ造形物が配線の場合、パターンの形状は例えばラインアンドスペースパターンであり、メッキ造形物がバンプの場合、前記開口部の形状は例えば立方体形状のホールパターンである。
【0146】
T-top形状の形成が抑制された型を有するメッキ用基板を用いることによって、パターン寸法の設計通りのメッキ造形物を製造することができる。
【0147】
[メッキ造形物の製造方法]
本発明のメッキ造形物の製造方法は、本発明のレジストパターン膜の製造方法により製造されたレジストパターン膜を金属膜上に有するメッキ用基板に対して、前記レジストパターン膜を型としてメッキ処理を行う工程(5)を含む。また、本発明のメッキ造形物の製造方法は、前記工程(3)の後であって、前記工程(5)の前に、酸素含有ガスのプラズマ処理を行う工程(4)をさらに含んでもよい。
【0148】
<工程(4)>
工程(4)において酸素含有ガスのプラズマ処理(前記メッキ用基板の表面処理)を行うことにより、金属膜表面とメッキ液との親和性を高めることができる。
【0149】
工程(4)では、例えば、レジストパターン膜を金属膜上に有するメッキ用基板を真空状態にした装置内に入れ、酸素のプラズマを放出させて、前記メッキ用基板の表面処理を行う。プラズマ処理条件は、電源出力が通常、50~300Wであり、酸素含有ガスの流量が通常、20~150mLであり、装置内圧力が通常、10~30Paであり、処理時間が通常、0.5~30分である。酸素含有ガスは、酸素の他、例えば水素、アルゴンおよび四フッ化メタンから選ばれる1種又は2種以上を含有することができる。前記プラズマ処理により表面処理されたメッキ用基板を水等により洗浄することができる。
【0150】
<工程(5)>
工程(5)では、前記レジストパターン膜を型として、前記レジストパターン膜によって画定される開口部(現像で除去された部分)に、メッキ処理によりメッキ造形物を形成する。
【0151】
メッキ造形物としては、例えば、バンプ、配線が挙げられる。メッキ造形物は、例えば、銅、金、ニッケル等の導体からなる。メッキ造形物の厚さは、その用途によって異なるが、例えば、バンプの場合、通常、5~100μm、好ましくは10~80μm、更に好ましくは20~60μmであり、配線の場合、通常、1~30μm、好ましくは3~20μm、更に好ましくは5~15μmである。
【0152】
メッキ処理は、例えば、メッキ液を用いたメッキ液処理が挙げられる。メッキ液としては、例えば、銅メッキ液、金メッキ液、ニッケルメッキ液、はんだメッキ液が挙げられ、具体的には、硫酸銅またはピロリン酸銅等を含む銅メッキ液、シアン化金カリウムを含む金メッキ液、硫酸ニッケルまたは炭酸ニッケルを含むニッケルメッキ液が挙げられる。これらの中でも、銅メッキ液が好ましい。メッキ液は、通常、水およびアルコール等の親水性溶剤を含有する。
【0153】
メッキ処理としては、具体的には、電解メッキ処理、無電解メッキ処理、溶融メッキ処理等の湿式メッキ処理が挙げられる。ウエハーレベルでの加工におけるバンプや配線を形成する場合、通常、電解メッキ処理により行われる。
【0154】
電解メッキ処理の場合、スパッタ法または無電解メッキ処理によりレジストパターン膜の内壁に形成したメッキ膜をシード層として用いることができ、また、基板上の前記金属膜をシード層として用いることもできる。また、シード層を形成する前にバリア層を形成してもよく、シード層をバリア層として用いることもできる。
【0155】
電解メッキ処理の条件は、メッキ液の種類等により適宜選択できる。銅メッキ液の場合、温度が、通常、10~90℃、好ましくは20~70℃であり、電流密度が、通常、0.3~30A/dm2、好ましくは0.5~20A/dm2である。ニッケルメッキ液の場合、温度が、通常、20~90℃、好ましくは40~70℃であり、電流密度が、通常、0.3~30A/dm2、好ましくは0.5~20A/dm2である。
【0156】
メッキ処理は、異なるメッキ処理を順次行うことができる。例えば、はじめに銅メッキ処理を行った後、ニッケルメッキ処理を行い、次に溶融はんだメッキ処理を行うことで、はんだ銅ピラーバンプを形成することができる。
【0157】
<他の工程>
本発明のメッキ造形物の製造方法は、工程(5)の後に、前記レジストパターン膜を除去する工程をさらに含むことができる。この工程は、具体的には、残存するレジストパターン膜を剥離して除去する工程であり、例えば、レジストパターン膜およびメッキ造形物を有する基板を剥離液に浸漬する方法が挙げられる。剥離液の温度および浸漬時間は、通常、20~80℃で1~10分間である。
【0158】
剥離液としては、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルスルホキシドおよびN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる少なくとも1種を含有する剥離液が挙げられる。
【0159】
本発明のメッキ造形物の製造方法は、メッキ造形物を形成した領域以外の前記金属膜を、例えば、ウェットエッチング法等の方法により除去する工程をさらに含むことができる。
【実施例0160】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0161】
<重合体の重量平均分子量(Mw)>
下記条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフィー法にて重合体および界面活性剤の重量平均分子量(Mw)を測定した。
・GPC装置:東ソー株式会社製、装置名「HLC-8220-GPC」
・カラム:東ソー株式会社製カラムのTSK-MおよびTSK2500を直列に接続
・溶媒:テトラヒドロフラン
・温度:40℃
・検出方法:屈折率法
・標準物質:ポリスチレン
【0162】
<吸光度>
界面活性剤の0.1質量%水溶液を調製して光路長10mmの石英セルに入れ、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光 (株) 製「紫外可視近赤外分光光度計 V-7300」)を用いて、光路長10mm、波長300nmにおける吸光度を測定した。
【0163】
[合成例1および2]
2,2'-アゾビス(イソ酪酸メチル)をラジカル重合開始剤として用いたラジカル重合により、表1に示す構造単位およびその含有割合を有する重合体(A-1)~(A-3)を製造した。表1中に示す構造単位の詳細を下記式(a1-1)、(a1-4)、(a2-1)~(a2-4)、(a3-1)、(a4-1)に示す。なお、表1中のa1-1~a4-1欄の数値の単位はモル%である。各構造単位の含有割合は、1H-NMRにより測定した。
【0164】
【化11】
【0165】
【表1】
【0166】
<感光性樹脂組成物の製造>
[実施例1A~11A、比較例1A~3A]感光性樹脂組成物の製造
下記表3に示す種類および量の各成分を均一に混合することにより、実施例1A~11A、比較例1A~3Aの感光性樹脂組成物を製造した。重合体成分以外の各成分の詳細は以下のとおりである。なお、表3中の数値の単位は質量部である。
B1:下記式(B1)に示す化合物
B2:下記式(B2)に示す化合物
B3:下記式(B3)に示す化合物
【0167】
【化12】
【0168】
C1:フッ素系界面活性剤「メガファック F553」(DIC(株)製)
C2:フッ素系界面活性剤「フタージェント602A」((株)ネオス製)
C3:フッ素系界面活性剤「メガファック F559」(DIC(株)製)
C4:フッ素系界面活性剤「メガファック F477」(DIC(株)製)
C5:フッ素系界面活性剤「フタージェント212M」((株)ネオス製)
C6:フッ素系界面活性剤「メガファック F-570」(DIC(株)製)
C7:フッ素系界面活性剤「メガファック F-563」(DIC(株)製)
なお、上記界面活性剤(C1)~(C7)の上記条件(i)における吸光度、および重量平均分子量を下記表2に示す。
【0169】
【表2】
【0170】
D1:昭和電工(株)製「カレンズMT(登録商標)PE1」
D2:昭和電工(株)製「カレンズMT(登録商標)NR1」
【0171】
E1:クレゾールノボラック樹脂(m-クレゾール:p-クレゾール=6:4(モル比)、ポリスチレン換算重量平均分子量=12,000)
E2:クレゾールノボラック樹脂(m-クレゾール:p-クレゾール=4:6(モル比)、ポリスチレン換算重量平均分子量=5,000)
【0172】
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S2:3-メトキシブチルアセテート
S3:γ-ブチロラクトン
【0173】
【表3】
【0174】
<レジストパターン膜の製造>
[実施例1B~11B、比較例1B~3B]
上記実施例1A~11A、比較例1A~3Aの感光性樹脂組成物を用いて、下記の条件1および条件2に記載の方法で2つのパターニング基板を作製し、後述する評価方法および基準でレジストパターン膜のT-top形状を評価した。
【0175】
≪条件1≫(引き置き時間無しでの基板作製)
銅スパッタ膜を備えてなるシリコンウエハ基板の銅スパッタ膜上にスピンコーターを用いて、実施例1A~11A、比較例1A~3Aの感光性樹脂組成物を塗布し、ホットプレートにて120℃で60秒間加熱し、膜厚6μmの塗膜を形成した。前記塗膜を、ステッパー(ニコン社製、型式「NSR-i10D」)を用い、パターンマスクを介して、露光した。露光後の塗膜を、大気アミン濃度が5ppbに管理された環境下で、90℃で60秒間加熱し、次いで、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に180秒間浸漬して現像した。その後、流水洗浄し、窒素ブローして、基板の銅スパッタ膜上に実施例1B~11B、比較例1B~3Bのレジストパターン膜(ライン幅:2μm、ライン幅/スペース幅=1/1)を形成した。このようにして得られたレジストパターン膜を形成した基板を、「パターニング基板-1」という。なお、この条件における露光から露光後の加熱までに要する時間は30分以内である。
【0176】
≪条件2≫ (露光後引き置き24hでの基板作製)
銅スパッタ膜を備えてなるシリコンウエハ基板の銅スパッタ膜上にスピンコーターを用いて、実施例1A~11A、比較例1A~3Aの感光性樹脂組成物を塗布し、ホットプレートにて120℃で60秒間加熱し、膜厚6μmの塗膜を形成した。前記塗膜を、ステッパー(ニコン社製、型式「NSR-i10D」)を用い、パターンマスクを介して、露光した。露光後の塗膜を、5ppbの大気アミンで汚染された環境下で24時間晒した後、90℃で60秒間加熱し、次いで、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に180秒間浸漬して現像した。その後、流水洗浄し、窒素ブローして、基板の銅スパッタ膜上に実施例1B~11B、比較例1B~3Bのレジストパターン膜(ライン幅:2μm、ライン幅/スペース幅=1/1)を形成した。このようにして得られたレジストパターン膜を形成した基板を、「パターニング基板-2」という。
【0177】
≪評価方法および基準≫
各感光性樹脂組成物を用いて作成した上記パターニング基板-1及びパターニング基板-2について、得られたレジストパターン膜のT-top形状を電子顕微鏡で観察した。そして、図1等に示す様に、レジストパターンを電子顕微鏡で真上から観察した場合のパターン幅をW1とし、レジストパターンの断面を電子顕微鏡で観察した際のT-top形状端部(張り出し部)と、基板に対して垂直方向に延びるパターン側壁との交わる点3aおよび3bを結んだパターンの幅をW2として、T-top幅の合計(W1-W2)を求め、パターン幅W2に対する割合((W1-W2)/W2×100=Wt(%))を算出した。パターニング基板-1のWtをWt1、パターニング基板-2のWtをWt2とする。なお、前記パターン側壁の形態としては、図1に示すようパターニング基板から垂直方向に真直ぐ伸びている形態に限定されず、例えば、図2に示すようなパターニング基板から樽型のように膨出した状態で垂直方向に伸びている形態、図3に示すようなパターニング基板からテーパー状に垂直方向に伸びている形態、図4に示すようなパターニング基板から逆テーパー状に垂直方向に伸びている形態なども挙げられる。各感光性樹脂組成物に関し、Wt2-Wt1を算出して以下の基準で評価した。評価結果を表4に示す。
【0178】
◎:(Wt2-Wt1)が0%以上10%未満である。
〇:(Wt2-Wt1)が10%以上20%未満である。
△:(Wt2-Wt1)が20%以上30%未満である。
×:(Wt2-Wt1)が30%以上である。
【0179】
各感光性樹脂組成物において、Wt1は環境アミンの影響に由来するT-top形状は殆ど発生しなかったが、(Wt2-Wt1)が大きいほど環境アミンの影響に由来してT-top形状が発生したと考えられる。
【0180】
また、得られたパターニング基板-1について、レジストパターン膜と銅スパッタ膜との界面の状態を電子顕微鏡で観察し、レジストパターン膜の密着性を下記基準で評価した。評価結果を表4に示す。
【0181】
◎:2μmLSパターンにおいて孤立配線部含めパターン剥がれ無し。
〇:2μmLSパターンにおいて孤立配線部以外パターン剥がれ無し。
×:2μmLSパターンにおいてパターン剥がれが散見された。
【0182】
<メッキ造形物の製造>
[実施例1C~11C、比較例1C~3C]
前記レジストパターン膜-1を型として、電解メッキ処理を行い、メッキ造形物を製造した。実施例11C以外では、電解メッキ処理の前処理として、酸素プラズマによる処理(出力100W、酸素流量100ミリリットル、処理時間60秒間)を行い、次いで水洗を行った。
【0183】
前処理後のパターニング基板-1(実施例11Cでは未処理のパターニング基板)を銅メッキ液(製品名「MICROFAB SC-40」、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン株式会社製)1L中に浸漬し、メッキ浴温度25℃、電流密度8.5A/dm2に設定して、2分10秒間電界メッキ処理を行い、メッキ造形物を製造した。
【0184】
製造したメッキ造形物の状態を電子顕微鏡で観察し下記評価基準にて評価した。評価結果を下記表4に示す。
【0185】
〇:めっき剥がれなく、矩形な形状が得られた。
×:めっき剥がれあった、または、パターン剥がれ等により矩形な形状が得られなかった。
【0186】
【表4】
【符号の説明】
【0187】
1・・・基板
2・・・パターン
3a、3b・・・レジストパターンの断面を電子顕微鏡で観察した際の、T-top形状と、基板に対して垂直方向に延びるパターン側壁との交わる点
W1・・・レジストパターンを電子顕微鏡で真上から観察した場合のパターン幅
W2・・・レジストパターンの断面を電子顕微鏡で観察した際の前記3aおよび3bを結んだパターンの幅
図1
図2
図3
図4