(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022042977
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】案内及び芯出し装置
(51)【国際特許分類】
B29C 33/30 20060101AFI20220308BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20220308BHJP
B22D 17/22 20060101ALI20220308BHJP
F16C 29/04 20060101ALI20220308BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
B29C33/30
B29C45/26
B22D17/22 A
F16C29/04
F16J15/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021137038
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】01086/20
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(71)【出願人】
【識別番号】518144274
【氏名又は名称】アガトン・アクチエンゲゼルシャフト・マシーネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・マイアー
【テーマコード(参考)】
3J040
3J104
4F202
【Fターム(参考)】
3J040BA02
3J104AA12
3J104AA19
3J104AA23
3J104AA25
3J104AA37
3J104AA63
3J104AA69
3J104AA75
3J104AA76
3J104BA14
3J104DA06
3J104DA20
3J104EA03
4F202AJ08
4F202AJ14
4F202AM24
4F202AR13
4F202CA11
4F202CK90
4F202CR06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】追加の精密芯出しユニットを必要とせずに、所望の案内及び芯出し精度を保証する案内及び芯出し装置を提供する。
【解決手段】案内手段7によって、両方の型半体1、5が案内及び芯出しされる装置10であって、第1型の半分1に設けられた円形で円筒状のボルト12として形成されていて突出している案内体4と、ブシュ14として形成され、第2型半体5に円筒形の内面20が設けられた案内リセス6と、転動要素17が複数の行18に挿入されている転動要素ケージ16とを備える。転動要素ケージ16は、ブシュ14の円形で円筒状の内周面20によって支持され、成形工具を閉じるときに、円形で円筒状のボルト12が転動要素ケージ16の転動要素の第1行と転動要素の第2行に実質的に同時に入って行くように、位置決め手段30を介して配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1型半体(1)及び第2型半体(5)であって、案内手段(7)によって、両方の型半体(1、5)のそれぞれの分離面が互いに押し付けられている閉位置から開位置に案内され、かつ前記開位置から前記閉位置に案内される、第1型半体(1)及び第2型半体(5)を備える、成形工具(2)、特に射出成形又はダイカスト工具用の案内及び芯出し装置(10)であって、前記案内及び芯出し装置(10)は、
第1型の半分(1)に設けられた円形で円筒状のボルト(12)として形成されていて突出している案内体(4)と、
ブシュ(14)として形成され、第2型半体(5)に円筒形の内面(20)が設けられた案内リセス(6)と、
転動要素(17)が複数の行(18)に挿入されている転動要素ケージ(16)であって、転動要素ケージ(16)により、2つの型半体(1、5)が案内され、閉位置に正確に芯出しされる、転動要素ケージ(16)と
を備え、
転動要素ケージ(16)は、ブシュ(14)の円形で円筒状の内周面(20)によって支持され、成形工具を閉じるときに、円形で円筒状のボルト(12)が転動要素ケージ(16)の転動要素の第1行(18.1)と転動要素の第2行(18.2)に実質的に同時に入って行くように、位置決め手段(30)を介して配置されることを特徴とする、案内及び芯出し装置(10)。
【請求項2】
位置決め手段(30)は、ばね要素(31)と、軸線方向のリテーナ要素(32)とから形成されていて、それらの間に転動要素ケージ(16)がブシュ(14)内で軸線方向に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項3】
ブシュ(14)の円筒形内面(20)の端部の少なくとも1つに少なくとも1つの溝(33)が設けられていて、溝(33)には、位置決め手段(30)を軸線方向に配置するためサークリップ(34)を挿入可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項4】
少なくとも1つの肩が、位置決め手段(30)の支持を形成するブシュ(14)の円形で円筒状の内面(20)の少なくとも一端部分に形成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項5】
ブシュ(14)を第2型半分(5)に接続することは、ロック部材(40)を介していて、
ロック部材(40)は、
ブシュ(14)を取り囲み、ブシュ(14)の軸線方向の長さに沿って形成されている一連の円周方向の溝(41)の1つに挿入可能であり、
第2型半体(5)に形成されている溝(42)に突出している
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項6】
円形で円筒状のボルト(12)を第1型半体(1)に接続することは、ロック部材(40)を介していて、
ロック部材(40)は、
ボルト(12)を取り囲んで、ボルト(12)の軸線方向の長さに沿って形成されている一連の円周方向の溝(41)に挿入可能であり、
第1型半体(1)に形成されている溝(42)に突出している
ことを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項7】
ロック部材(40)は、サークリップ(34)から形成されていることを特徴とする、請求項5及び6に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項8】
ロック部材(40)は、周囲のスロット(45)を備えた2つのリング部品(44)から形成され、2つのリング部品(44)は、スロット(45)に挿入可能なシールリング(46)を介して互いに接続されていることを特徴とする、請求項5及び6に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項9】
ブシュ(14)と円筒ボルト(12)との少なくとも一方は、リードイン幾何形状で構成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項10】
円形で円筒状のボルト(12)は、縁部(51)の隣に円錐形の引き込み領域(50)を有し、引き込み領域(50)は、ボルト(12)の円形の円周面(52)をまとめていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項11】
ブシュ(14)の円形で円筒状の内面(20)は、縁部(21)によってまとめられていて、縁部(21)の隣に、円形で円筒状の内面(20)より大きな直径を持つ第2の円形で円筒状の内面(22)が形成されていることを特徴とする、請求項1から10の一項に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項12】
縁部(21)は、円形で円筒状の内面(20)から、転動要素(17)の曲率に適合された曲率を有する第2の円形で円筒状の内面(22)に移行していることを特徴とする、請求項11に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【請求項13】
転動要素(17)はローラ又はボールであることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の成形装置(2)用案内及び芯出し装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、第1及び第2型半体を案内して整列させる案内及び芯出し装置に関する。本発明の案内及び芯出し装置は、第1型半体と第2型半体を備える、射出成形工具やダイカスト工具などの成形工具で使用可能であり、第1型半体と第2型半体は、案内手段によって、2つの型半体のそれぞれの分割面が押し合わされる閉位置から開位置へと移動可能に案内され、またその逆も同様である。案内及び芯出し装置は、第1型半体に取り付けられた複数の突出している案内本体と、第2型半体に取り付けられた複数の案内溝部から形成されていて、これらの案内本体を介して、2つの型半体が正確に案内され、閉位置で芯出しされる。特に、本発明による案内及び芯出し装置は好ましくは、間隙、分離面、板部の個別の案内及び芯出しに使用される丸い精密芯出しと組み合わせて、芯出し開始から終了まで正確な案内と最大の負荷容量で案内する構成とされる。
【背景技術】
【0002】
第1型半体と第2型半体を備える成形工具又は一般的な成形工具は周知である。このような成形工具では、型半体は、型の複雑さに応じて、複数の板部と共に提供され、これらの板部は、複数の柱案内部に案内されて、閉位置から開位置に移動、逆に開位置から閉位置に移動が可能である。二つの型半体の分離面の間に配置された型には、例えば型が閉じられたときに型内に押し込まれる鋳造材料が充填される。
【0003】
一般的に、案内装置は、第1軸受面を有する型の一方に設けられたブシュ又はスリーブと、第2軸受面を有する型の他方に設けられた案内柱と、ブシュと案内ピン又は柱との間で軸受係合して、部材同士の嵌合時に軸受面に沿った摺動摩擦を低減するように適合された軸受とを少なくとも備えている。したがって、ブシュ又はスリーブは、定義された摺動面を提供する摺動ブシュから形成される。しかし、摺動摩擦対部の一般的な問題が、それらのセット上の不均衡な摩擦に起因するジッタリング又はクローリングを含めて、知られていて、そのような問題は加工対象の品質及び案内装置の寿命に影響を与える可能性がある。
【0004】
さらに、適切な規格や仕様を満たす成形品の正確な成形を得るためには、型をなす2つの型半体が正確に整列していることが必要である。しかし、これは、案内装置、特に型半体が案内される柱案内部では、所望の範囲で確保できない。そのため、芯出し装置(センタリング装置)とも呼ばれる位置決め装置が使用される。この装置は、特に、閉位置の終点に到達するまでのストロークの終わりに、一方の型半体を他方の型半体に対して正確に整列させるものである。
【0005】
典型的な芯出し装置は、一方の型半体に取り付けられた、案内ピンとして構成された第1部材、又は一般的に雄型の部分として構成された第1部材と、他方の型半体に取り付けられていてブシュとして構成されているか、又は一般的に雌型の部分として構成されている第2部材から構成されている。第1部材と第2部材は、型が閉じられたときに一緒に嵌合する。雄型と雌型の間の嵌め合いが、型半体間の位置決め不良の大きさを決めている。
【0006】
雄部分の第1軸受面と雌部分の第2軸受面との間に、転動要素を備えた軸受として構成された交換可能な挿入部を設けることが、先行技術から知られている。特に、そのような挿入部は、複数のニードル軸受又は転動要素を回転可能に支持するケージとして構成され、部材同士を嵌合する際に軸受面に沿った摩擦を低減するものである。
【0007】
特許文献1(EP2363263A)からは、複数の突出体がそれぞれ円筒形のボルトとして形成され、その上に転動要素が列をなして挿入された転動要素ケージが配置された芯出し装置が知られている。この装置は、開状態において、位置決め手段を介して、第1型半部に向けられた第1列の転動要素がボルトの円形表面に載り、第2列の転動要素がボルトの円形円筒表面を終端とする周縁部に載るように位置決めされ、各案内溝部は、型が閉じられたときに転動要素ケージの転動要素に突き当たる円形円筒内面を有するスリーブから形成されている。
【0008】
特許文献2(US2004/043103A1)からは、軸受表面に沿った摩擦を低減するための位置決め装置の軸受機構が知られていて、この軸受機構は、嵌合時に、雄部分を有する第1部材、又は好ましくは雌雄部分を有する第2部材の少なくとも一方に対して、第1位置と第2位置との間で相対的に移動する。弾性部材が軸受機構を弾力的に支持し、リテーナが、軸受機構が第1位置と第2位置との間を移動するときに、ばねとして構成された弾性部材に対抗するために軸受機構に結合されている。ばねは、軸受機構に力をかける手段として機能する。リテーナは、転動要素ケージを支持する軸受面から転動要素の一部のみが自由になる位置を超えて軸受機構が移動することを防止する。
【0009】
さらに、軸受機構が位置決め装置のブシュから滑り落ちるのを防止するために、異なる実施形態のリテーナが知られている。例えば、スナップリングなどで構成されたロック部材をブシュの入口に設けて、軸受機構をその中に保持可能である。代替的に、転動要素付きリテーナには、ブシュの内面にある当接面と係合可能である外側に突出する要素を設けてもよい。
【0010】
正確な成形品を得るためには、型を形成する2つの型半体が正確に整列していることが必要であるが、これは当技術分野で既知の案内装置や位置決め装置では達成できていないことが多い。芯出し開始時にはすでに最大の負荷容量を得て、一方の型半体を他方の型半体に正確に整列と精密な案内を確実にする案内及び芯出し装置は、依然必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2363263号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/043103号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、フラット芯出し装置のような追加の精密芯出しユニットを必要とせずに、所望の案内及び芯出し精度を保証する案内及び芯出し装置を作成することである。さらに、本発明の目的は、装置の摩耗を可能な限り低く抑制可能であり、芯出しの開始から終了まですでに遊びのない案内が提供される案内及び芯出し装置を提供することである。それにより、そのような案内及び芯出し装置は長い耐用年数を有し、交換サイクルを低減可能である。本発明のもう一つの目的は、遊びのない微細な芯出しシステムとして使用可能であり、無潤滑又は最小限の潤滑剤で適用可能であり、異なる成形工具に適応可能に構成された案内及び芯出し装置を作ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、本発明によれば、成形工具、特に射出成形工具又はダイカスト工具のための案内及び芯出し装置であって、第1型半体と第2型半体とを備え、これらの型半体は、案内手段によって、両型半体のそれぞれの分離面が互いに押し付けられている閉位置から開位置へと案内され、またその逆も同様となっているものである。成形工具には、案内及び芯出し装置(複数)を配置可能である。各案内及び芯出し装置は、第1型半体に設けられた円形で円筒状のボルトとしての案内柱から形成された突出した案内本体と、第2型半体に設けられた円形で円筒状の内面を有するブシュとして形成された案内溝部と、転動要素が列をなして挿入された転動要素ケージとを備え、これらによって型半体の両方が閉位置に案内され、正確に芯出しされる。
【0014】
有利なことに、本発明による案内及び芯出し装置は、ストローク経路全体に沿って高い再現性を持つ遊びのない案内を、精密かつ正確に提供する。これは特に、転動要素ケージによる予圧された転がり案内と、ブシュ、ボルト及び転動要素ケージの組み合わせによって達成される。さらに、型半体の位置決めの高精度は、閉位置に到達するよりもはるかに前に得られるため、高いトラバース速度でも型半体の接触面の摩耗が減少する。
【0015】
本発明によれば、転動要素ケージは、ブシュの円形で円筒状の内面によって支持され、位置決め手段を介して、成形工具を閉じる際に円形で円筒状のボルトが転動要素ケージの第1行の転動要素と第2行の転動要素の中を実質的に同時に走るように位置決めされる。
【0016】
転動要素リテーナが提供する転動軸受の有利点により、潤滑剤の必要性は最小限に抑えられる。
【0017】
本発明による案内及び芯出し装置のこのような配置により、成形工具が閉じられたときに、円形で円筒状のボルトが第1列の転動要素と第2列の転動要素の中を実質的に同時に走行することが達成され、その結果、芯出し開始時にすでに高い初期負荷容量が得られる。さらに、転動要素と支持面又は芯出し面にかかる負荷を分割可能であるので、案内及び芯出し装置の摩耗が減少し、耐用年数が長くなる。この問題は、特に案内ブロックシステムとして構成されている先行技術の芯出しシステムに比べて有利であり、初期係合時の非常に高い面圧によって芯出し面の摩耗が増加することになる。
【0018】
案内及び芯出し装置の幾何学的構成に応じて、転動要素を持つケージは、芯出しを改善するために転動要素のさらなる行(複数)を備え得る。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態では、案内と芯出しの間にほぼ2行の転動要素が同時に予圧係合するように転動要素のケージを正確に配置するように適合された位置決め手段は、ばね要素と軸線方向のリテーナ要素を備え、これらの間で、転動要素を持つケージは、ブシュの円形で円筒状の内面にて軸線方向に位置決めされる。
【0020】
有利には、ばね要素としての圧縮ばねがブシュに挿入され、特に、ブシュの一端にある支持手段とその反対側の端にあるブシュ内に設けられた転動要素ケージとの間に配置され、ばね要素が転動要素付きケージのバイアス要素(一方向に引張力を及ぼす手段)として機能するようになっている。これにより、転動要素リテーナは、ばね要素によって位置決めされ、軸方向リテーナに突き当たり、成形工具が開いたときに転動要素リテーナが正しい位置になるようになっている。また、軸方向リテーナは、ばね要素とともに転動要素リテーナを位置決めし、係合から外れる工具にも使用可能である。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、位置決め手段が支持されるように、ブシュの円形で円筒状の内面から内側に突出する肩部、及び/又は、ブシュの円形で円筒状の内面に設けられ、サークリップが挿入可能な溝が、円形で円筒状の内面の端部部分に形成されている。例えば、円形で円筒状の内面の一方の端部には、ばね要素を支持する肩部が形成され、円形で円筒状の内周面の反対側の端部には、軸方向のリテーナ要素を形成するサークリップやスナップリング(止め輪)が挿入される溝が設けられている。したがって、ブシュの内部では、一方の側からばね要素が転動要素ケージにバイアス(一方向に引張力)をかけ、他方の側から軸方向リテーナ要素によって転動要素ケージを所定の位置に保持するという軸方向の配置により、正確な軸方向の位置決めが保証される。これにより、ブシュ内の転動要素付きケージの所望の正確な配置が達成され、簡単かつ安価な方法で製造可能である。
【0022】
ブシュ内部の配列を位置決めするためのブシュの代替的な実施形態はあり得る。例えば、円形で円筒状の内面の両端部に、肩部や溝部を形成可能である。
【0023】
ばね要素の構成は、転動要素ケージが芯出し開始位置にあるときに、ばね要素が十分なバイアス力を発生し、少なくとも1行目と2行目の転動要素が予圧に入るようになっていなければならない。型を閉じた状態では、ばねの力が大きすぎてはいけない。そうしないと、転動要素リテーナが予圧によって押されてしまう。ばね要素は、転動要素ケージが成形工具の開放位置で正確に位置決めされるように構成されていて、さらに、成形工具における案内及び芯出し装置の取り付け位置に依存しない。
【0024】
本発明の別の好ましい実施形態では、円形で円筒状のボルトから形成されたブシュ及び/又は案内柱は、それらの入口部分にリードイン幾何形状を有する。好ましい実施形態では、ブシュのリードイン幾何形状は、転動要素ケージに向けられ、円形で円筒状の内面の縁部を構成し、第2の円形で円筒状の内面に合流する端部を有するように構成されている。そのため、転動要素に完全な予圧力がかかる点部が正確に画定される。
【0025】
円形で円筒状のボルトには、その円周面をまとめる縁部が設けられていて、この端部は、ボルトの頭部のリードイン幾何形状を形成する円錐形の引き込み領域に移行する。
【0026】
ブシュは、第2型半体に設けられていて、特に第2型半体に接続可能である。ブシュと第2型半体との接続は、ロック部材を介して行われ、ロック部材は、ブシュを取り囲んでブシュの軸方向長さに沿って形成された一連の円周溝のいずれかに挿入可能であり、第2型半体に形成された溝部に突出している。
【0027】
さらに、円形で円筒状のボルトとして構成された案内柱は、ロック部材を介して第1型半体に連結可能である。ロック部材は、ボルトを取り囲み、ボルトの軸方向の長さに沿って形成された一連の円周溝の一つに挿入可能に構成されていて、挿入可能なロック部材は、第1型半部に形成された溝部に突出している。
【0028】
ロック部材は、サークリップ、スナップリング、又はリング部品として構成し得る。好ましくは、ロック部材は、2つのリング部品として構成され、これらのリング部品は、完全なリング構造を形成する円周方向の溝の1つに両方を挿入可能である。さらに、リング構造は、2つのリング部品がブシュの周方向の溝にしっかりと固定されるように、シールリングを組み込むのに適した周方向の溝で形成されている。
【0029】
有利なことに、ブシュの軸方向の長さの少なくとも一部に沿って、また、ボルトの長さに沿って個別に配置可能であるこれらのロック部材を介して、第2型半体のブシュと、円形で円筒状のボルトから形成された案内柱とを固定することにより、ブシュとボルトの個別の位置決めが可能となる。例えば、成形工具で使用される板部のサイズとは無関係に、特に板部の厚さに適応して、異なる状況での案内及び芯出し装置の使用が可能となる。
【0030】
本発明の別の好ましい実施形態では、ブシュと円形で円筒状のボルトの少なくとも一方が、リードイン形状で構成されている。転動要素ケージ内を走行するボルトは、有利には、円形の周面をまとめる縁部の隣の円錐形の後退領域から形成されたそのヘッド部に、リードイン形状を有し得る。
【0031】
別の実施形態では、ブシュは、ブシュの円形で円筒状の内面が縁部でまとめられていて、その縁部の隣に、円形で円筒状の内面よりも大きな直径を有する第2の円形で円筒状の内面が設けられているリードイン幾何形状を備えている。好ましくは、ブシュの円形で円筒状の内面は、縁部の領域で、転動要素の丸みに合わせた丸み又は曲率を有する第2の円形で円筒状の内面に移行する。その結果、転動要素ケージへのボルトの進入は、転動要素ケージに過度の応力がかからないようになっていて、ひいては耐用年数の点で有利となっている。
【0032】
好ましい一実施形態では、転動要素はローラ(複数)又はボール(複数)であり、その結果、転動要素ケージの構造が単純になり、低コストで製造可能である。さらに、転動要素は、滑るような芯出しではなく、転がるような芯出しを行い、線接触を行うように構成されているので、摩耗が大幅に低減される。
【0033】
本発明による案内及び芯出し装置は、簡単で柔軟な配置が可能であり、バックラッシュのない案内及び芯出しを行うために容易に設置と配置が可能である。さらに、本発明の案内及び芯出し装置では、クリーンルームでの適用に適していて、長ストーク及び短ストーク用途を含む広範囲の適用を可能にする、非常に低摩耗及び低摩損を達成可能である。本発明の案内及び芯出し装置は、コンパクトな配置になっていて、プラグアンドプレイ(つなぐだけですぐ使えること)の解決策として成形工具に取り付け可能である。
【0034】
本発明による案内及び芯出し装置のもう一つの有利点は、ブシュが、転動要素ケージを構成するブシュと共に特定の案内柱を使用する必要がないように、同じ公差に準拠する様々な案内柱と互換性があることである。したがって、案内及び芯出し装置は、互換性と交換性を提供し、さらに、案内装置と別個の微細な芯出し装置を必要としないような、いわゆるツーインワンの解決策を提供する。したがって、案内及び芯出し装置は案内と微細な芯出しの両方を兼ね備えているので、追加の微細な芯出し装置は不要である。
【0035】
本発明とその利点をより完全に理解するために、本発明の例示的な実施形態を添付の図を参照して以下の説明でより詳細に説明する。なお、図面では、同様な部分を同様な参照符号で示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、先行技術による案内及び芯出し装置を模式的に示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による模式的な案内及び芯出し装置である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による模式的に案内及び芯出し装置を部分的に示した図である。
【
図4a】
図4aは、本発明の一実施形態による概略的な案内及び芯出し装置の一部断面図であり、成形工具が閉じているときの案内溝部への案内体の移動を示す。
【
図4b】
図4bは、成形工具を閉じるときの別の位置にある、
図4aに図示の本発明の実施形態による、部分的に断面の模式的な案内及び芯出し装置である。
【
図5】
図5は、成形工具に対して案内及び芯出し装置を位置決めする本発明の一実施形態のロック要素を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれていて、本明細書に組み込まれ、その一部を構成している。図面は、本発明の特定の実施形態(複数)を示し、明細書の記載と合わせて本発明の原理の説明に役立つものである。
【0038】
図1を参照すると、芯出し装置及び案内手段を持つ既知の型構成が示されている。成形工具2の第1型半体1では、分離面3の領域に、立方体の形状を有し突出した案内体4が固定されている。突出した案内体の他の形態としては、円錐形や円筒形などが知られている。さらに、公知の案内柱から形成された案内手段7が、移動中の成形工具2を案内するように配置されている。
図1には非図示であるが、成形工具2の第2半部モード5(第2型半体5)には、スロットの形状を有し、第1型半部1の案内体4に対応する案内溝部6が設けられている。成形工具2の閉状態では、案内体4は案内溝部6内に位置し、第1型半体1と第2型半体5の最適な位置合わせを可能にする。案内体4と案内溝部6の設計上、全方向に芯出し可能にするためには、これらを少なくとも一対で二回使用する必要がある。そのため、案内体4と案内溝部6は、基本的には互いに対向して配置されなければならず、その結果、空間の問題が生じることがある。また、この公知の芯出し装置では、案内本体と案内溝部に作用する面圧が非常に高くなることがある。さらに、対応する案内面を互いに摺動させなければならず、その結果、摩耗が激しくなり、その結果、これらの芯出し装置を一定期間後に交換しなければならなくなる。
【0039】
図2及び
図3を参照すると、成形工具2内の可能な一配置にある、本発明による案内及び芯出し装置10が示されている。この実施形態によれば、突出している各案内体4は、円形で円筒状のボルト12、特に案内手段7の案内柱からなる。各案内溝部6は、行18に挿入された転動要素17を持つ転動要素ケージ16を支持している円形で円筒状の内面20を有するブシュ14からなる。円形で円筒状のボルト12は、成形工具2を閉じているときに転動要素ケージ16の転動要素17の中を走行する。
図2は、成形工具2の第1型半体1を示す。この成形工具2は、特に、先行技術で知られている案内柱として設計され、本発明による円形で円筒状のボルト12からなる案内手段7を備えるものである。したがって、図示の実施形態では、一般には、成形工具2が4つの案内セットを備えていて、4つのそのようなボルト12が第1型半体1に挿入される。原則として、最適な芯出しを得るためには、2つのボルト12が必要であるが、成形工具2のサイズと構成に応じて、任意の数のボルト12を成形工具2に使用可能である。
【0040】
図3は、成形工具2の一視点を示す。成形工具2は、案内体4としての円形で円筒状のボルト12を持つ第1型半体1を備え、ボルト12は、特には、案内手段7の案内柱としているとともに、開状態にあるとき転動要素ケージ16が挿入されるブシュ14を持つ第2型半体5の案内柱としている。
【0041】
案内溝部6が、円形で円筒状の内面20を持つブシュ14として構成されていて、後述するように、成形工具2の第2型半体5に固定されている。円形で円筒状の内面20に支持されるブシュ14には、転動要素ケージ16が挿入されている。転動要素ケージ16は、行18に配置された転動要素17を備えていて、転動要素17は、ローラやボールとして構成し得る。
【0042】
転動要素ケージ16を位置決めする、位置決め手段30が設けられている。
図3に示す一実施形態によれば、位置決め手段30は、リテーナ要素32を備え、リテーナ要素32は、サークリップ34又はスナップリングから作られていて、ブシュ14の開口部付近に、円形で円筒状のボルト12に向かって配置されている。ここで、サークリップ34は、円形で円筒状の内面20に設けられた溝に挿入されている。さらに、位置決め手段30は、転動要素ケージ16をその反対側の端部からリテーナ要素32に向けて付勢するように構成されたばね要素31を備える。ばね要素31の、転動要素ケージ16に対向して離れている端部は、停止要素によって支持されていて、この停止要素は、ボルト12を挿入する開口部とは反対側の端部において、円形で円筒状の内面20に設けられた溝に挿入された別のサークリップ34、あるいは、円形で円筒状の内面20から内側に突出している肩部によって形成し得る。圧縮ばねから作られているばね要素31は、転動要素ケージ16をリテーナ要素32に押し付けていて、これは、成形工具2が開いているときに転動要素ケージ16が正しい位置にあることを意味している。転動要素ケージ16の正しい位置は、成形工具2を閉じるときに、円形で円筒状のボルト12が転動要素17の第1行と転動要素17の第2行とを同時に実質的に同時に走行するようになっていて、それによって、転動要素17及びそれらの支持面にかかる負荷を分割可能で、その結果、
図4a、
図4bに詳細に示すように、耐用年数が長くなる。
【0043】
有利には、ブシュ14は、リードイン形状の入り口部分を備え、この部分は、円形で円筒状の内面20をまとめ、第2の円形で円筒状の内面22への移行部を提供する、縁部21を備える。その結果、転動要素17に完全な予圧力がかかる点部が正確に画定されていて、転動要素17は円錐形の引き込み領域22を通って緩やかに駆動されることになる。円形で円筒状のボルト12は、後述するように、ボルト12が転動要素ケージ16に容易に挿入可能に、ボルト12の頭部にリードイン形状が形成されている。
【0044】
本発明のさらに有利な実施形態は、成形工具2の厚さ、特には、成形工具2の板部の寸法、の個別の位置と可変性を提供するロック部材40によって、ブシュ14を第2型半体5に対して位置決め可能であり、ボルト12を第1型半体1に対して位置決め可能なことである。ロック部材40は、周方向の溝41に挿入可能なリング又はリング部品44として形成されている。これにより、ブシュ14とボルト12との少なくとも一方を取り囲み、ブシュ14とボルト12の少なくとも一方の軸方向の長さに沿って形成された一連の周方向の溝41が、形成されている。周方向の溝41の一つに挿入されたリング又はリング部品44は、成形工具2の板部の溝部42に突出している。溝部42は、板部間の肩部から形成可能である。
【0045】
図3から分かるように、案内体4は、同様にロック部材40を介して、第1型半体1に固定可能である。ロック部材40は、案内体4の外面に形成された周方向の溝41に挿入されていて、第1型半体1に形成された溝部42又は第1型半体1を形成する板部間に突出している。
【0046】
図4a及び
図4bは、成形工具2が閉じているときの案内及び芯出し装置10の断面及び拡大した詳細を示している。これにより、円形で円筒状のボルト12は、ばね要素31(図示せず)及びリテーナ要素32として形成された位置決め手段30を介して、ブシュ14内に配置された転動要素ケージ16に入り込む。ブシュ14は、縁部21でまとめられている円形で円筒状の内面20を有する。縁部21の隣に、移行領域が、縁部21から、円形で円筒状の内面20よりも大きな直径を有する第2円形で円筒状の内面22に移行するように構成されている。内面20、22間の移行領域は、好ましくは転動要素17の丸みに合わせた丸み又は曲率で形成され得る。さらに、円形で円筒状のボルト12は、縁部51によって締結される円形の周面52を有する。縁部51の隣に、ボルト12の頭部が円錐形の引き込み領域50から形成されていて、これがリードイン形状を提供している。
【0047】
成形型2を閉じるとき、円形で円筒状のボルト12は、円錐形の引き込み領域50から形成されたリードイン形状で転動要素ケージ16に入り込む。
図4aから分かるように、ボルト12は、転動要素ケージ16に配置された転動要素17の第1行18.1の上を通過する。なぜなら、第1行18.1の転動要素17は、第2の円形で円筒状の内面22の領域、特に縁部21の領域に位置していて、したがって、引っ込んだ位置にあるブシュ14と関係しているからである。円形で円筒状のボルト12がさらに進むと、ボルト12の縁部51は、転動要素ケージ16内に配置された転動要素17の第2行18.2と接触する。ボルト12の縁部51が第1行18.1の転動要素17の上を通過するとすぐに、これらの転動要素17が回転し始めて、転動要素ケージ16がブシュ14の中に押し込まれ、
図4bから分かるように、第2行18.2の転動要素17を運動させる。この配置により、第1行18.1の転動要素17と第2行18.2の転動要素17は実質的に同時に予緊張力を受け、それにより負荷を分割可能である。
【0048】
成形工具2の更なる閉じる工程では、円形で円筒状のボルト12は、転動要素ケージ16内に配置された更なる行18の転動要素17の上を通過する。成形型2の完全な閉鎖位置では、円形で円筒状のボルト12は転動要素ケージ16内に押し込まれ、その結果、転動要素ケージ16の転動要素17から芯出し力が伝達される。成形型2を開くことにより、ボルト12はブシュ14から引き出され、転動要素ケージ16は、次の芯出し工程を最適な方法で行えるように、したがって配置される。
【0049】
図5では、ロック部材40が透視図で示されている。ロック部材40は、リング44の2つの半部から形成されている。リング44は、リングの半分を一緒に保持するためにシールリング46が挿入可能に構成された周方向のスロット45を提供する。この配置により、ブシュ14を第2型半体5の所定の位置に、ボルト12を第1型半体1の所定の位置に、それぞれ容易に配置可能である。したがって、案内及び芯出し装置10は、成形型2の板部の異なる寸法に適合可能であり、最適な芯出し及び案内特性を有する普遍的に適用可能な案内兼芯出し装置を提供可能である。
【外国語明細書】