IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッドの特許一覧

特開2022-43071望ましくない液性免疫応答を低減するための投薬の組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043071
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】望ましくない液性免疫応答を低減するための投薬の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20220308BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20220308BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P37/06
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/436
A61K9/51
A61K38/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021193530
(22)【出願日】2021-11-29
(62)【分割の表示】P 2019195263の分割
【原出願日】2014-05-02
(31)【優先権主張番号】61/948,384
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/881,851
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/881,913
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/907,177
(32)【優先日】2013-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/948,313
(32)【優先日】2014-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/881,921
(32)【優先日】2013-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/819,517
(32)【優先日】2013-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】511254321
【氏名又は名称】セレクタ バイオサイエンシーズ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SELECTA BIOSCIENCES,INC.
【住所又は居所原語表記】65 Grove Street,Watertown,MA 02472,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】マルドナド,ロバート,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】キシモト,タカシ,ケイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】望ましくない液性免疫応答の効率的な低減を可能にする組成物および方法を提供する。
【解決手段】免疫抑制剤と治療用高分子を組み合わせた投薬による。ある態様において、合成ナノ担体に付着されている免疫抑制剤と、合成ナノ担体に付着されていない治療用高分子を組み合わせた投薬による。
【選択図】図1A-B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)(a)いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子と、
(b)免疫抑制剤に付着されており、および、治療用高分子の治療用高分子抗原提示細胞(APC)を含まない、合成ナノ担体の集団と
を併用投与することを含む、第1の投薬;
(2)(c)いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子を投与することと、いかなる合成ナノ担体も投与しないこととを含む、第2の投薬;ならびに、
(3)治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールに従って、第1および第2の投薬を対象へ施すこと
を含む、方法。
【請求項2】
(4)第1および第2の投薬のための、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールを決定すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答が、第1の投薬なしの第2の投薬に起因する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の投薬が、(a)および(b)を対象へ1回または2回以上投与することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
(a)および(b)が、少なくとも1回、2回、3回、4回または5回投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第2の投薬が、第1の投薬から少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8週間後に対象へ施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法が、第1の投薬および第2の投薬の施行の前および/または後に、対象における望ましくない液性免疫応答を査定すること、をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の投薬および/または第2の投薬の施行が、静脈内、腹腔内または皮下投与による、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
方法が、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を有するか、またはそれを有するリスクがあるものとして対象を識別することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(1)(a)いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子と、
(b)免疫抑制剤に付着されており、および、治療用高分子の治療用高分子APC提示可能抗原を含まない、合成ナノ担体の集団と
を各々含む、1つまたは2つ以上の第1の用量;および
(2)治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する方法における使用のための、いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子を含む1つまたは2つ以上の第2の用量、ここで方法が、投与スケジュールに従って対象へ第1および第2の用量を投与することを含む、
を含む、組成物。
【請求項11】
第2の用量が、いかなる合成ナノ担体も含まない、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
方法が、第1および第2の投薬のための、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールを決定すること、をさらに含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
方法が、ここで提供されるいずれの方法でもある、請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物がキットであり、および、第1の用量および第2の用量の1つまたは2つ以上が各々、キット中の容器に収納されている、請求項10~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が、薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
免疫抑制剤が、スタチン、mTORインヒビター、TGF-βシグナル剤、コルチコステロイド、ミトコンドリア機能のインヒビター、P38インヒビター、NF-κβインヒビター、アデノシン受容体アゴニスト、プロスタグランジンE2アゴニスト、ホスホジエステラーゼ4インヒビター、HDACインヒビターまたはプロテアソームインヒビターを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項17】
mTORインヒビターが、ラパマイシンである、請求項16に記載の方法または組成物。
【請求項18】
治療用高分子が、治療用タンパク質である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項19】
治療用タンパク質が、タンパク質補充またはタンパク質補強治療用である、請求項18に記載の方法または組成物。
【請求項20】
治療用高分子が、点滴可能または注射可能な治療用のタンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液または血液凝固因子、サイトカイン、インターフェロン、成長因子、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または、ポンペ病に関連するタンパク質を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項21】
点滴可能または注射可能な治療用のタンパク質が、トシリズマブ、アルファ-1アンチトリプシン、ヘマタイド、アルブインターフェロンアルファ-2b、ルシン、テサモレリン、オクレリズマブ、ベリムマブ、ペグロチカーゼ、タリグルセラーゼアルファ、アガルシダーゼアルファまたはベラグルセラーゼアルファを含む、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項22】
酵素が、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼまたはリガーゼを含む、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項23】
酵素が、リソソーム蓄積障害のための酵素補充治療用の酵素を含む、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項24】
リソソーム蓄積障害のための酵素補充治療用の酵素が、イミグルセラーゼ、a-ガラクトシダーゼA(a-galA)、アガルシダーゼベータ、酸性αグルコシダーゼ(GAA)、アルグルコシダーゼアルファ、LUMIZYME、MYOZYME、アリールスルファターゼB、ラロニダーゼ、ALDURAZYME、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE、アリールスルファターゼBまたはNAGLAZYMEを含む、請求項23に記載の方法または組成物。
【請求項25】
酵素が、KRYSTEXXA(ペグロチカーゼ)またはペグシチカーゼを含む、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項26】
モノクローナル抗体が、HUMIRA(アダリムマブ)を含む、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項27】
サイトカインが、リンホカイン、インターロイキン、ケモカイン、タイプ1サイトカインまたはタイプ2サイトカインを含む、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項28】
血液または血液凝固因子が、第I因子、第II因子、組織因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第Xa因子、第XII因子、第XIII因子、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補助因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関係プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2(PAI2)、がんプロコアグラントまたはエポエチンアルファを含む、請求項20に記載の方法または組成物。
【請求項29】
血液または血液凝固因子が、第VIII因子を含む、請求項29に記載の方法または組成物。
【請求項30】
免疫抑制剤の積載量が、合成ナノ担体の集団にわたる平均で、0.1%と50%との間である、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項31】
免疫抑制剤の積載量が、合成ナノ担体の集団にわたる平均で、0.1%と20%との間である、請求項30に記載の方法または組成物。
【請求項32】
合成ナノ担体の集団が、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性物質系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子、または、ペプチドまたはタンパク質粒子を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項33】
合成ナノ担体の集団が、脂質ナノ粒子を含む、請求項32に記載の方法または組成物。
【請求項34】
合成ナノ担体の集団が、リポソームを含む、請求項32に記載の方法または組成物。
【請求項35】
合成ナノ担体の集団が、金属ナノ粒子を含む、請求項32に記載の方法または組成物。
【請求項36】
金属ナノ粒子が、金ナノ粒子を含む、請求項35に記載の方法または組成物。
【請求項37】
合成ナノ担体の集団が、ポリマーナノ粒子を含む、請求項32に記載の方法または組成物。
【請求項38】
ポリマーナノ粒子が、非メトキシ末端のプルロニックポリマーであるポリマーを含む、請求項37に記載の方法または組成物。
【請求項39】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、ポリエーテルに連結されたポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む、請求項37または38に記載の方法または組成物。
【請求項40】
ポリエステルが、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む、請求項39に記載の方法または組成物。
【請求項41】
ポリマーナノ粒子が、ポリエステル、および、ポリエーテルに連結されたポリエステルを含む、請求項39または40に記載の方法または組成物。
【請求項42】
ポリエーテルが、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項43】
合成ナノ担体の集団の動的光散乱を使用して得られる粒子サイズ分布の平均値が、100nmよりも大きな径である、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【請求項44】
径が、150nmよりも大きい、請求項43に記載の方法または組成物。
【請求項45】
径が、200nmよりも大きい、請求項44に記載の方法または組成物。
【請求項46】
径が、250nmよりも大きい、請求項45に記載の方法または組成物。
【請求項47】
径が、300nmよりも大きい、請求項46に記載の方法または組成物。
【請求項48】
合成ナノ担体の集団のアスペクト比が、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10よりも大きい、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法または組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条の下で、2013年5月3日出願の米国仮出願第61/819517号、2013年9月24日出願の同第61/881851号、2013年9月24日出願の同第61/881913号、2013年9月24日出願の同第61/881921号、2013年11月21日出願の同第61/907177号、2014年3月5日出願の同第61/948313号、および2014年3月5日出願の同第61/948384号の利益を主張するものであり、これらの各々の内容全体を参照によって本明細書に組み込む。
【0002】
本発明の分野
本発明は、治療用高分子単独の用量と組み合わせて、合成ナノ担体に付着されている免疫抑制剤などの免疫抑制剤と併用投与される治療用高分子の用量、および、関係する方法に関する。組成物および方法は、望ましくない液性免疫応答の効率的な低減を可能にする。かかる望ましくない液性免疫応答は、治療処置の有効性を中和し得るか、または、治療剤に対する過敏反応を引き起こし得る。ゆえに、提供される組成物および方法は、治療用高分子の投与が望ましくない液性免疫応答をもたらす対象のために使用され得る。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
タンパク質または酵素補充治療などの治療処置は多くの場合、具体的な治療剤に対して望ましくない免疫応答をもたらす。かかる場合において、免疫系の細胞は治療剤を異物として認識し、まさしく細菌およびウイルスなどの感染生物を破壊しようとする様に、それを中和または破壊しようとする。かかる望ましくない免疫応答は免疫抑制薬の使用を通じて低減され得る。しかし従来の免疫抑制薬は広域作用性であり、広域作用性の免疫抑制剤の使用は、腫瘍、感染、腎毒性および代謝障害などの重篤な副作用のリスクと関連する。したがって新しい治療が有益となる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の概要
一側面において、(1)(a)いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子と、(b)合成ナノ担体に付着されており、および、治療用高分子の治療用高分子抗原提示細胞(APC)を含まない、免疫抑制剤とを併用投与することを含む、第1の投薬;(2)(c)いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子を投与することと、いかなる合成ナノ担体も投与しないこととを含む、第2の投薬;ならびに、(3)治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールに従って、第1および第2の投薬を対象へ施すこと、を含む方法が提供される。
【0005】
本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法は、(4)第1および第2の投薬のための、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールを決定すること、をさらに含む。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答は、第1の投薬なしの第2の投薬に起因する。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、第1の投薬は、(a)および(b)を対象へ1回または2回以上投与することを含む。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、(a)および(b)は、少なくとも1回、2回、3回、4回または5回投与される。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、第2の投薬は、第1の投薬から少なくとも1、2、3、4、5、6、7または8週間後に対象へ施される。
【0006】
本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、方法は、第1の投薬および第2の投薬の施行の前および/または後に、対象における望ましくない液性免疫応答を査定すること、をさらに含む。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、第1の投薬および/または第2の投薬の施行は、静脈内、腹腔内または皮下投与による。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、方法は、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を有するか、またはそれを有するリスクがあるものとして対象を識別すること、をさらに含む。いくつかの態様において、対象は、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を有することが予期されるか、または疑われる。
【0007】
別の側面において、(1)(a)いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子と、(b)免疫抑制剤に付着されており、および、治療用高分子の治療用高分子APC提示可能抗原を含まない、合成ナノ担体の集団とを各々含む、1つまたは2つ以上の第1の用量;および(2)治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する方法における使用のための、いかなる合成ナノ担体にも付着されていない治療用高分子を含む1つまたは2つ以上の第2の用量、ここで方法が、投与スケジュールに従って対象へ第1および第2の用量を投与することを含む、を含む組成物が提供される。本明細書で提供される組成物のいずれか1つの一態様において、組成物は、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する方法における使用のためである。本明細書で提供される方法のいずれか1つの別の態様において、方法は、投与スケジュールに従って、第1および第2の投薬を対象へ施すことを含む。別の態様において、方法は、第1および第2の投薬のための、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールを決定すること、をさらに含む。別の態様において、方法は、本明細書で提供されるいずれの方法でもある。
【0008】
本明細書で提供される組成物のいずれか1つの別の態様において、第2の用量は、いかなる合成ナノ担体も含まない。本明細書で提供される組成物のいずれか1つの別の態様において、組成物はキットであり、および、第1の用量および第2の用量の1つまたは2つ以上は各々、キット中の容器に収納されている。本明細書で提供される組成物のいずれか1つの別の態様において、組成物は、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。
【0009】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの一態様において、免疫抑制剤は、スタチン、mTORインヒビター、TGF-βシグナル剤、コルチコステロイド、ミトコンドリア機能のインヒビター、P38インヒビター、NF-κβインヒビター、アデノシン受容体アゴニスト、プロスタグランジンE2アゴニスト、ホスホジエステラーゼ4インヒビター、HDACインヒビターまたはプロテアソームインヒビターを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、mTORインヒビターはラパマイシンである。
【0010】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、治療用タンパク質を含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、治療用ポリヌクレオチドを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、治療用タンパク質は、タンパク質補充またはタンパク質補強治療用である。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、治療用高分子は、点滴可能または注射可能な治療用のタンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液または血液凝固因子、サイトカイン、インターフェロン、成長因子、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、または、ポンペ病に関連するタンパク質を含む。
【0011】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、点滴可能または注射可能な治療用タンパク質は、トシリズマブ、アルファ-1アンチトリプシン、ヘマタイド、アルブインターフェロンアルファ-2b、ルシン(Rhucin)、テサモレリン、オクレリズマブ、ベリムマブ、ペグロチカーゼ、ペグシチカーゼ、タリグルセラーゼアルファ、アガルシダーゼアルファまたはベラグルセラーゼアルファを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、酵素は、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼまたはリガーゼを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、酵素は、リソソーム蓄積障害のための酵素補充治療用の酵素を含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、リソソーム蓄積障害のための酵素補充治療用の酵素は、イミグルセラーゼ、a-ガラクトシダーゼA(a-galA)、アガルシダーゼベータ、酸性α-グルコシダーゼ(GAA)、アルグルコシダーゼアルファ、LUMIZYME、MYOZYME、アリールスルファターゼB、ラロニダーゼ、ALDURAZYME、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE、アリールスルファターゼBまたはNAGLAZYMEを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、酵素は、KRYSTEXXA(ペグロチカーゼ)またはペグシチカーゼを含む。
【0012】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、モノクローナル抗体は、HUMIRA(アダリムマブ)を含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、サイトカインは、リンホカイン、インターロイキン、ケモカイン、タイプ1サイトカインまたはタイプ2サイトカインを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、血液または血液凝固因子は、第I因子、第II因子、組織因子、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第Xa因子、第XII因子、第XIII因子、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補助因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関係プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2(PAI2)、がんプロコアグラントまたはエポエチンアルファを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、血液または血液凝固因子は、第VIII因子を含む。
【0013】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたる平均で、0.1%と50%との間である。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたる平均で、0.1%と20%との間である。
【0014】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の集団は、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性物質系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子、または、ペプチドまたはタンパク質粒子を含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の集団は、脂質ナノ粒子を含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の集団は、リポソームを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の集団は、金属ナノ粒子を含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、金属ナノ粒子は、金ナノ粒子を含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の集団は、ポリマーナノ粒子を含む。
【0015】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーであるポリマーを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、ポリエーテルに連結されたポリエステル、ポリアミノ酸、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリケタール、多糖、ポリエチルオキサゾリンまたはポリエチレンイミンを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、ポリエステルは、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトンを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、ポリマーナノ粒子は、ポリエステル、および、ポリエーテルに連結されたポリエステルを含む。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、ポリエーテルは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールを含む。
【0016】
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の集団の動的光散乱を使用して得られる粒子サイズ分布の平均値は、100nmよりも大きな径である。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、径は、150nmよりも大きい。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、径は、200nmよりも大きい。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、径は、250nmよりも大きい。本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、径は、300nmよりも大きい。
本明細書で提供される方法または組成物のいずれか1つの別の態様において、合成ナノ担体の集団のアスペクト比は、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7または1:10よりも大きい。
【0017】
別の側面において、本明細書で提供される組成物またはキットのいずれか1つの製造方法が提供される。一態様において、製造方法は、1つまたは2つ以上の用量または剤形の治療用高分子を生成すること、および、1つまたは2つ以上の用量または剤形の免疫抑制剤を生成すること、を含む。提供される製造方法のいずれか1つの別の態様において、1つまたは2つ以上の用量または剤形の免疫抑制剤を生成するステップは、免疫抑制剤を合成ナノ担体に付着させることを含む。1つまたは2つ以上の用量または剤形の免疫抑制剤と1つまたは2つ以上の用量または剤形の治療用高分子とを、キットにおいて組み合わせることを含む。
【0018】
別の側面において、対象において抗治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減するための医薬の製造のための、本明細書で提供される組成物またはキットのいずれか1つの使用が提供される。一態様において、組成物またはキットは、免疫抑制剤を含む1つまたは2つ以上の用量または剤形と、治療用高分子を含む1つまたは2つ以上の用量または剤形を含み、ここで免疫抑制剤および治療用高分子は、本明細書で提供される方法のいずれか1つに従って投与される。本明細書で提供される使用のいずれか1つの別の態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体に付着されている。本明細書で提供される使用のいずれか1つのいくつかの態様において、免疫抑制剤は、治療用高分子の治療用高分子抗原提示細胞(APC)提示可能抗原を含まない。本明細書で提供される使用のいずれか1つのいくつかの態様において、組成物またはキットはさらに、1つまたは2つ以上の第2の投薬としての使用のための、治療用高分子を含む1つまたは2つ以上の用量または剤形を含む。
【0019】
別の側面において、本明細書で提供される組成物またはキットのいずれか1つは、免疫抑制剤を含むもののいずれか1つ、および、治療用高分子を含む1つまたは2つ以上の用量または剤形における使用のために提供される。別の態様において、組成物またはキットはさらに、1つまたは2つ以上の第2の投薬としての使用のための、治療用高分子を含む1つまたは2つ以上の用量または剤形を含む。別の態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ粒子に付着されている。別の態様において、免疫抑制剤は、治療用高分子の治療用高分子抗原提示細胞(APC)提示可能抗原を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図の簡単な説明
図1A-B】図1AおよびBは、血友病Aマウスにおけるナノ担体およびFVIII投薬の有効性を示す。
図2図2は、最終のナノ担体およびFVIII投薬後1か月のFVIIIに対する抗体想起応答(antibody recall response)を示す。
図3A-B】図3AおよびBは、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、HUMIRA/アダリムマブで処置されたマウスにおける、HUMIRAに対する免疫応答を示す。
図4図4は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、KLHで処置されたマウスにおける抗キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)抗体価を示す。
図5図5は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、OVAで処置されたマウスにおける抗オボアルブミン(OVA)抗体価を示す。
図6図6は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、KRYSTEXXAで処置されたマウスにおける抗KRYSTEXXA抗体価を示す。
【0021】
図7図7は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の存否のいずれかにおける、OVAおよびKLHで処置されたマウスにおける抗体価を示す。
図8A-B】図8AおよびBは、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、KLHで処置されたマウスにおけるKLHに対する免疫応答を示す。
図9A-B】図9AおよびBは、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無での、HUMIRA/アダリムマブで処置されたマウスにおけるHUMIRA/アダリムマブに対する免疫応答を示す。
図10図10は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無で処置されたマウスにおけるPEG-KLHに対する免疫応答を示す。
図11図11は、ラパマイシンに付着されたナノ担体の有無で処置されたマウスにおけるHUMIRAに対する免疫応答を示す。
図12図12は、投与スケジュールを示す。
図13図13は、カプセル化タンパク質と併用投与された、ラパマイシンに付着された合成ナノ担体またはGSK1059615に付着されたナノ担体の効果を実証する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、具体的に例示された材料またはプロセスパラメータが当然変化し得るので、かかるものに限定されないということを理解すべきである。本明細書で使用する用語法は本発明の具体的な態様を記載するためのものにすぎず、本発明を記載するための代替的用語法の使用を限定することを意図しないということもまた理解されるべきである。
上記または下記のいずれにおいても本明細書で引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、全ての目的において、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
本明細書および添付のクレームで使用する場合、その内容が別途明確に指定していない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は複数の言及物を包含する。例えば、「ポリマー(a polymer)」への言及は、2つまたは3つ以上のかかる分子の混合物または単一のポリマー種の異なる分子量の混合物を包含し、「合成ナノ担体」への言及は2つまたは3つ以上のかかる合成ナノ担体の混合物または複数のかかる合成ナノ担体を包含し、「RNA分子」への言及は、2つまたは3つ以上のかかるRNA分子の混合物または複数のかかるRNA分子を包含し、「免疫抑制剤」への言及は、2つまたは3つ以上のかかる材料または複数の免疫抑制剤分子を包含する、等。
【0024】
本明細書で使用するとき、用語「含む(comprise)」、または「comprises」もしくは「comprising」などの変形形態は、いずれか列挙された完全体(integer)(例えば特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)または完全体の群(例えば複数の特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)の包含を表示すると読むべきであって、いずれか他の完全体または完全体の群の排除を表示すると読むべきではない。ゆえに、本明細書で使用するとき、用語「含む(comprising)」は包括的であり、追加の、列挙されない完全体または方法/プロセスステップを排除しない。
【0025】
本明細書で提供される組成物および方法のいずれか1つのある態様において、「含む(comprising)」は「本質的にからなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」で置換されてもよい。語句「本質的にからなる」は、明記された完全体(単数または複数)またはステップを、クレームされる発明の性質または機能に重大な影響を及ぼさないものと共に要するために、本明細書で使用される。本明細書で使用するとき、用語「からなる(consisting)」は、列挙された完全体(例えば特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)または完全体の群(例えば複数の特長、要素、特徴、特性、方法/プロセスステップまたは限定)のみの存在を表示するために使用される。
【0026】
A.序文
合成ナノ担体なしで投与された治療用高分子の送達と組み合わせて、治療用高分子と併用して免疫抑制剤(合成ナノ担体に付着されている場合など)を送達することが、抗治療用高分子特異的抗体の産生を効果的に低減し得ることが、驚くべきことに見出された。かかる低減は、治療用高分子による治療処置の間、有益であり得るので、本発明は、望ましくない液性免疫応答が発生されるか、または発生されるのが予期される治療用高分子による処置を必要とする対象に有用である。本発明は、いくつかの態様において、特定の治療用高分子の処置の有益な効果を中和し得る望ましくない液性免疫応答を防止または抑制する。
【0027】
本発明者らは、予想外に、かつ驚くべきことに、上述された問題および制限が、本明細書に開示される本発明を実行することによって、克服され得ることを発見した。具体的に、本発明者らは、予想外に、免疫抑制剤および治療用高分子投薬を、治療用高分子に特異的な望ましくない液性免疫応答を低減するある組み合わせにて、具体的には、免疫抑制剤組成物および治療用高分子が併用投与され、続いて合成ナノ担体なしの治療用高分子の投与が行われる態様で提供することが可能であることを発見した。 ここで、以下に本発明をより詳細に説明する。
【0028】
B.定義
「投与すること」または「投与」または「投与する」は、薬理学的に有用なやり方で対象へ材料を提供することを意味する。該用語は、いくつかの態様において「投与させること(Causing to be administered)」を包含することが意図される。「投与させること」とは、他の当事者に材料を投与するよう直接的または間接的に、させること、促すこと、奨励すること、援助すること、誘導すること、または、指示することを意味する。
【0029】
「投与スケジュール」は、決定されたスケジュールに従う第1の投薬および第2の投薬の施行をいう。スケジュールは、第1および第2の投薬の回数、ならびに、かかる投薬の頻度または投薬の間隔をも包含し得る。かかる投与スケジュールは、具体的な課題、好ましくは治療用高分子の望ましくない液性免疫応答の低減を達成するために変更させられるパラメータ数を包含し得る。ある態様において、投与スケジュールは、以下、例において提供される投与スケジュールのいずれかである。いくつかの態様において、本発明に従う投与スケジュールは、1または2以上の試験対象へ第1および第2の投薬を施すために使用され得る。次いで、これらの試験対象における免疫応答は、スケジュールが望ましくない液性免疫応答を低減するのに有効であったか否かを決定するために査定され得る。スケジュールが望ましい効果を有したか否かは、本明細書で提供されるか、またはそうでなければ、当該分野において知られている方法のいずれかを使用して決定され得る。例えば、サンプルは、特異的な免疫細胞、サイトカイン、抗体等が低減、発生または活性化されるか否か等を決定するために、本明細書で提供される投薬が具体的な投与スケジュールに従って施された対象から得られてもよい。免疫細胞の存在/数を検出するための有用な方法としては、これらに限定されないが、フローサイトメトリー法(例えばFACS)、ELISpot、増殖応答、サイトカイン産生および免疫組織化学法が挙げられる。抗体産生のレベルを決定するための有用な方法は、当該分野において周知であり、本明細書で提供されるアッセイを包含する。かかるアッセイはELISAアッセイを包含する。
【0030】
「有効量」は、対象への投与のための組成物または剤形の文脈において、対象における1つまたは2つ以上の望ましい免疫応答、例えば望ましくない液性免疫応答の低減を生じさせる組成物の量または剤形をいう。それゆえ、いくつかの態様において、有効量は、望ましくない液性免疫応答を低減する、本明細書で提供されるいずれの量の組成物または剤形である。この量はin vitroまたはin vivoを目的とし得る。in vitroの目的において、量は、治療用高分子の投与および/またはそれに対する抗原特異的免疫寛容原性を必要とする対象などの、本明細書で提供される対象にとって臨床効果を有し得ると臨床医が考えるであろう量であり得る。
【0031】
有効量は、望ましくない免疫応答のレベルを低減させることに関与し得るが、いくつかの態様において、それは望ましくない免疫応答を完全に防止することに関与する。有効量はまた、望ましくない免疫応答が起こることを遅延させることにも関与し得る。有効である量はまた、望ましい治療エンドポイントまたは望ましい治療結果を生じさせる量でもあり得る。有効量は好ましくは、治療用高分子に特異的な対象における望ましくない液性免疫応答の低減をもたらす。他の態様において、有効量はまた、対象において、治療用高分子などの抗原に対する寛容原性免疫応答をもたらす。他の態様において、有効量は、治療エンドポイントまたは治療結果などの望ましい応答のレベルを向上させることに関与し得る。上述のもののいずれかの達成は、ルーチンな方法によってモニタリングされ得る。
【0032】
提供される組成物および方法のいずれか1つのいくつかの態様において、有効量は、望ましい免疫応答が少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、またはそれより長く、対象において存続する量である。提供される組成物および方法のいずれかの他の態様において、有効量は、測定可能な望ましい免疫応答、例えば(例えば特異的抗原に対する)液性免疫応答の測定可能な減少を少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1か月間、少なくとも2か月間、少なくとも3か月間、少なくとも4か月間、少なくとも5か月間、またはそれより長く、生じさせる量である。
【0033】
有効量は当然、医療従事者の知識と経験の範囲内で、処置されている具体的な対象;状態、疾患または障害の重篤性;年齢、体調、サイズおよび体重を包含する個々の患者パラメータ;処置の持続期間;(存在する場合)併用治療の特質;投与の具体的な経路および同種の因子に依存するであろう。これらの因子は当業者には周知であり、ルーチンな実験法程度のことで対処し得る。一般に好ましくは、最大用量、すなわち、健全な医療的判断に従う最も高い安全な用量を使用することである。しかしながら、患者はより少ない用量、または耐容用量を、医療的理由、心理学的理由、または事実上あらゆる他の理由で主張し得るということは、当業者には理解されよう。
【0034】
一般に、本発明の組成物における免疫抑制剤および/または治療用高分子の用量は、免疫抑制剤および/または治療用高分子の量をいう。代替的に、用量は、免疫抑制剤の望ましい量を提供する合成ナノ担体の数に基づいて投与され得る。
「抗原」は、B細胞抗原またはT細胞抗原を意味する。「抗原のタイプ(単数または複数)」は、同じかまたは実質的に同じ抗原的特徴を共有する分子を意味する。いくつかの態様において、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、リポタンパク質、糖脂質、ポリヌクレオチド、多糖であり得えるか、または、細胞中に含有されるかまたは発現される。抗原が十分に定義または特徴付けされていないときなどのいくつかの態様において、抗原は、細胞または組織調製物、細胞片、細胞エキソソーム、ならし培地等に含有され得る。
【0035】
「抗原特異的」は、抗原またはその一部分の存在によりもたらされるか、または、抗原を特異的に認識または結合する分子を発生させる、いずれかの免疫応答をいう。いくつかの態様において、抗原が治療用高分子を含むとき、抗原特異的は、治療用高分子特異的を意味し得る。例えば、免疫応答が治療用高分子特異的抗体産生などの抗原特異的抗体産生である場合、抗原(例えば治療用高分子)に特異的に結合する抗体が産生される。別の例として、免疫応答が、抗原特異的B細胞またはCD4+T細胞の増殖および/または活性である場合、増殖および/または活性は、抗原またはその一部分の、単独での、または、MHC分子、B細胞等と複合しての認識によりもたらされる。
【0036】
「免疫応答を査定すること」は、in vitroまたはin vivoでの免疫応答のレベル、存非、低減、増加等いずれかの測定または決定をいう。かかる測定または決定は、対象から得た1つまたは2つ以上のサンプルで行われ得る。かかる査定は、本明細書で提供されるか、またはそうでなければ、当該分野において知られている方法のいずれかにより行われ得る。
【0037】
「付着する」または「付着されている」または「連結する」または「連結されている」(等)は、1つの実体(例えば部位)をもう1つと化学的に関連させることを意味する。いくつかの態様において、付着は共有結合性であり、それは付着が2つの実体間の共有結合の存在の文脈下で起こることを意味する。非共有結合性の態様において、非共有結合性付着は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用および/またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない非共有結合性相互作用により媒介される。ある態様において、カプセル化が付着の形態である。ある態様において、治療用高分子および免疫抑制剤は互いに付着されず、それは治療用高分子と免疫抑制剤とが一方をもう一方と化学的に関連させるように具体的に意図されたプロセスに供されないことを意味する。ある態様において、治療用高分子および/または免疫抑制剤は合成ナノ担体に付着されず、それは治療用高分子(および/または免疫抑制剤)と合成ナノ担体とが一方をもう一方と化学的に関連させるように具体的に意図されたプロセスに供されないことを意味する。
【0038】
「リスクのある」対象は、疾患、障害または状態を有する機会があると医療従事者が考える対象、または、本明細書で提供される望ましくない液性免疫応答を経験する機会があり、提供される組成物および方法から効果が得られるであろうと医療従事者が考える対象である。いくつかの態様において、対象は、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を有することが予期される対象である。
「平均」は、本明細書で使用するとき、特に注記しない限り算術平均値をいう。
【0039】
「組み合わせ」は、2つまたは3つ以上の材料および/または剤(本明細書において構成成分とも言う)に適用するとき、その2つまたは3つ以上の材料/剤が関連されている材料を定義することが意図される。構成成分は、例えば第1構成成分、第2構成成分、第3構成成分等、別個に識別され得る。本文脈における用語「組み合わされた」および「組み合わせること」はこれに従い解釈されるものとする。
【0040】
組み合わせにおける2つまたは3つ以上の材料/剤の関連は、物理的であっても、非物理的であってもよい。物理的に関連された材料/剤の例としては、以下が挙げられる:
・2つまたは3つ以上の材料/剤を混和物中に(例えば同じ単位用量内に)含む組成物(例えば単位製剤);
・2つまたは3つ以上の材料/剤が化学的/物理化学的に結び付けられた(例えば架橋、分子凝集または共通のビヒクル部位への結合)、材料を含む組成物;
・2つまたは3つ以上の材料/剤が化学的/物理化学的に共パッケージ化された(co-packaged)(例えば、脂質ベシクル、粒子(例えばマイクロまたはナノ粒子)または乳化液滴の上または内に配置された)、材料を含む組成物;
・2つまたは3つ以上の材料/剤が共パッケージ化また一括提供(co-presented)された(例えば、一連の単位用量の一部として)、医薬キット、医薬パックまたは患者用パック。
【0041】
非物理的に関連され組み合わされた材料/剤の例としては、以下が挙げられる:
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤の物理的関連を形成するための、その少なくとも1つの化合物/剤の即席の関連のための使用説明書と一緒に含む、材料(例えば単位製剤);
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤による組み合わせ治療のための使用説明書と一緒に含む、材料(例えば単位製剤);
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤の他のもの(単数または複数)が投与された(または投与されている)患者集団に投与するための使用説明書と一緒に含む、材料;
・2つまたは3つ以上の材料/剤の少なくとも1つを、その2つまたは3つ以上の材料/剤の他のもの(単数または複数)と組み合わせて使用するように具体的に適合された量または形態で含む、材料。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「組み合わせ治療」は、2つまたは3つ以上の材料/剤の組み合わせ(上記で定義)の使用を含む治療を定義することが意図される。ゆえに、本出願における「組み合わせ治療」、「組み合わせ」および材料/剤の「組み合わせた」使用への言及は、同じ全体的な処置レジメンの一部として投与される材料/剤をいう場合がある。したがって、2つまたは3つ以上の材料/剤の各々の薬量学は異なる場合があり、各々は同時に投与されてもよいし、異なる時刻に投与されてもよい。それゆえ、組み合わせの材料/剤は、逐次に(例えば、前または後に)または同時に、同じ医薬製剤において(即ち一緒に)または異なる医薬製剤において(すなわち別個に)のいずれかで、投与されてよいことが分かるであろう。同じ製剤において同時にとは、統一化製剤としてということであり、一方、異なる医薬製剤において同時には非統一化ということである。組み合わせ治療における2つまたは3つ以上の材料/剤の各々の薬量学は、投与経路に関しても異なっていてよい。
【0043】
「併用(して)」は、2つまたは3つ以上の材料/剤を、時間的に相関された、好ましくは免疫または生理学的応答におけるモジュレーションを提供するように時間的に充分に相関された、さらにより好ましくはその2つまたは3つ以上の材料/剤が組み合わせて投与される、やり方で、対象に投与することを意味する。ある態様において、併用投与は、明記された期間内、好ましくは1か月以内、より好ましくは1週間以内、なおより好ましくは1日以内、さらにより好ましくは1時間以内の、2つまたは3つ以上の材料/薬剤の投与を網羅し得る。ある態様において、材料/剤は繰り返し併用投与されてよく、すなわち、例において提供され得るような、1回よりも多い機会における併用投与であってよい。
【0044】
「決定すること」または「決定する」は事実関係を確かめることを意味する。決定することは、実験を行うことまたは予測を立てることを包含するがそれらに限定されない、数々の方式で遂行され得る。例として、免疫抑制剤または治療用高分子の用量は、試験用量で開始し、投与のための用量を決定するための公知のスケーリング技術(アロメトリックまたはアイソメトリックスケーリングなど)を使用することにより決定され得る。かかるものを使用して本明細書に提供されるプロトコルまたは投与スケジュールを決定もまたし得る。別の態様において、用量は対象において種々の用量を試験することによって、すなわち経験およびガイドデータに基づく直接実験を通して、決定されてもよい。ある態様において、「決定すること」または「決定する」は、「決定させること」を含む。「決定させること」は、実体に事実関係を確かめるように、させること、促すこと、奨励すること、援助すること、誘導することまたは指示すること、または、その実体と協力して行動することを意味し、直接もしくは間接的に、または明示的にもしくは黙示的に、を包含する。
【0045】
「投薬」は、薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料、または、薬理学的におよび/または免疫学的に活性な材料の組み合わせ、の対象への投与を意味する。
「用量」は、所与の時間にわたり対象に投与するための薬理学的および/または免疫学的に活性な材料の具体的な分量(quantity)をいう。
【0046】
「カプセル化する」は、合成ナノ担体内の物質の少なくとも一部分を封入することを意味する。いくつかの態様において、物質は合成ナノ担体内に完全に封入される。他の態様において、カプセル化される物質の大部分または全てが、合成ナノ担体の外部の局所環境に曝露されない。他の形態において、局所環境に曝露されるのが50%、40%、30%、20%、10%または5%(重量/重量)を超えない。カプセル化は、吸収(吸収は、物質の大部分または全てを合成ナノ担体の表面上に置き、その物質を合成ナノ担体の外部の局所環境に曝した状態にする)とは区別される。
【0047】
「発生させること」は、免疫または生理学的応答などの作用(例えば寛容原性免疫応答)を、それ自体で直接的または間接的に起こさせることを意味する。
「対象を識別すること」は、対象を本明細書で提供される方法、組成物またはキットから効果が得られ得る対象として臨床医に認識せしめるいずれかの行動または行動のセットである。好ましくは、識別された対象は、治療用高分子からの治療効果を必要とする対象、および、望ましくない液性免疫応答が、本明細書で提供されるように起こることが予期される対象である。行動または行動のセットは、それ自体の直接的なものであっても、または間接的なものであってもよい。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに、本明細書で提供される方法、組成物またはキットを必要としている対象を識別することを含む。
【0048】
「免疫抑制剤」は、APCに免疫抑制効果(例えば寛容原性効果)を持たせるか、または、T細胞またはB細胞が抑制されるようにする化合物を意味する。免疫抑制効果は一般に、望ましくない免疫応答を低減、阻害または防止するか、または、制御性免疫応答などの望ましい免疫応答を促進する、サイトカインまたは他の因子のAPCによる産生または発現をいう。APCが、このAPCによって提示される抗原を認識する免疫細胞に対して(免疫抑制効果の下)免疫抑制機能を獲得するとき、免疫抑制効果は、提示された抗原に特異的であると言われる。いかなる具体的な理論にも拘泥しないが、免疫抑制効果は、好ましくは抗原の存在下、免疫抑制剤がAPCに送達されることの結果であると思われる。一態様において、免疫抑制剤は、1つまたは2つ以上の免疫エフェクター細胞においてAPCに制御性表現型を促進させるものである。
【0049】
例えば制御性表現型は、抗原特異的CD4+T細胞またはB細胞の産生、誘導、刺激または動員の阻害、抗原特異的抗体の産生の阻害、Treg細胞(例えばCD4+CD25highFoxP3+Treg細胞)の産生、誘導、刺激または動員、等により特徴付けられ得る。これはCD4+T細胞またはB細胞の制御性表現型への転換の結果であり得る。これはまた、CD8+T細胞、マクロファージおよびiNKT細胞などの他の免疫細胞におけるFoxP3の誘導の結果でもあり得る。一態様において、免疫抑制剤は、抗原を処理した後のAPCの応答に影響を与えるものである。別の態様において、免疫抑制剤は、抗原の処理に干渉するものではない。さらなる態様において、免疫抑制剤はアポトーシスシグナル分子ではない。別の態様において、免疫抑制剤はリン脂質ではない。
【0050】
免疫抑制剤としては、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体などのmTORインヒビター;TGF-βシグナル剤;TGF-β受容体アゴニスト;トリコスタチンAなどのヒストンデアセチラーゼインヒビター;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;6Bio、デキサメタゾン、TCPA-1、IKK VIIなどのNF-κβインヒビター;アデノシン受容体アゴニスト;ミソプロストールなどのプロスタグランジンE2アゴニスト(PGE2);ロリプラムなどのホスホジエステラーゼ4インヒビター(PDE4)などのホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビター;TGX-221などのPI3KBインヒビター;3-メチルアデニンなどのオートファジーインヒビター;アリールハイドロカーボン受容体インヒビター;プロテアソームインヒビターI(PSI);およびP2X受容体ブロッカーなどの酸化ATPが挙げられるが、これらに限定されない。免疫抑制剤としてはまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンAなどのシクロスポリン、アリールハイドロカーボン受容体インヒビター、レスベラトロール、アザチオプリン(Aza)、6-メルカプトプリン(6-MP)、6-チオグアニン(6-TG)、FK506、サングリフェリンA、サルメテロール、マイコフェノレートモフェチル(MMF)、アスピリンおよび他のCOXインヒビター、ニフルミン酸、エストリオール、メトトレキサート、および、トリプトリドも挙げられる。ある態様において、免疫抑制剤は本明細書で提供される薬剤のいずれかを含んでいてもよい。
【0051】
免疫抑制剤は、APCに免疫抑制効果を直接提供する化合物であっても、免疫抑制効果を間接的に(すなわち投与後に何らかの方式で処理された後に)提供する化合物であってもよい。したがって、免疫抑制剤は、本明細書で提供される化合物のいずれかのプロドラッグ形態を包含する。
【0052】
本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのある態様において、本明細書で提供される免疫抑制剤は、合成ナノ担体に付着されている。好ましい態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体の構造を構成する材料に追加された要素である。例えば、合成ナノ担体が1つまたは2つ以上のポリマーで構成されている一態様において、免疫抑制剤は、1つまたは2つ以上のポリマーに追加されて付着された化合物である。別の例として、合成ナノ担体が1つまたは2つ以上の脂質で構成されている一態様において、免疫抑制剤はやはり、1つまたは2つ以上の脂質に追加されて付着された化合物である。合成ナノ担体の材料がまた、免疫抑制効果をももたらす場合などのある態様において、免疫抑制剤は、免疫抑制効果をもたらす合成ナノ担体の材料に追加されて存在する要素である。
【0053】
他の例示的な免疫抑制剤としては、低分子薬物、天然製品、抗体(例えばCD20、CD3、CD4に対する抗体)、生物製剤系薬物、炭水化物系薬物、ナノ粒子、リポソーム、RNAi、アンチセンス核酸、アプタマー、メトトレキサート、NSAID;フィンゴリモド;ナタリズマブ;アレムツズマブ;抗CD3;タクロリムス(FK506);TGF-βおよびIL-10などのサイトカインおよび成長因子;等が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる免疫抑制剤は当業者に知られており、本発明はこの点において限定されない。
【0054】
本明細書で提供される方法、組成物またはキットのいずれか1つのある態様において、免疫抑制剤はナノ結晶性形態などの形態にあり、それにより免疫抑制剤自体の形態は粒子または粒子様である。ある態様において、こうした形態はウイルスまたは他の外来病原体を模擬している。多くの薬物はナノ化されており、こうした薬物の形態を生じさせるための適切な方法は当業者に知られているであろう。ナノ結晶性ラパマイシンなどの薬物ナノ結晶は当業者に知られている(Katteboinaa, et al. 2009, International Journal of PharmTech Resesarch; Vol. 1, No. 3; pp682-694)。
【0055】
本明細書で使用するとき、「薬物ナノ結晶」は、担体またはマトリックス材料を包含しない、薬物(例えば免疫抑制剤)の形態をいう。いくつかの態様において、薬物薬物ナノ結晶は、90%、95%、98%または99%、または、それ以上の薬物を含む。薬物ナノ結晶の生成方法としては、限定されないが、摩砕(milling)、高圧均質化、沈殿、噴霧乾燥、超臨界溶体急速膨張(RESS)、Nanoedge(登録商標)技術(Baxter Healthcare)およびNanocrystal Technology(商標)(Elan Corporation)が挙げられる。いくつかの態様において、薬物ナノ結晶の立体または静電安定性のために、界面活性物質または安定剤を使用してもよい。いくつかの態様において、免疫抑制剤のナノ結晶またはナノ結晶性形態は、免疫抑制剤、特に不溶性のまたは不安定な(labile)免疫抑制剤、の溶解性、安定性および/または生物学的利用能を増大させるために使用され得る。いくつかの態様において、ナノ結晶性形態の治療用高分子および免疫抑制剤を含む第1の投薬の施行の後の治療用高分子の第2の投薬は、望ましくない治療用高分子に特異的な液性免疫応答の低減をもたらす。
【0056】
合成ナノ担体に付着されるときの「積載量(load)」は、合成ナノ担体全体における材料の総乾燥処方重量に基づく、合成ナノ担体に付着される免疫抑制剤の量(重量/重量)である。一般に、かかる積載量は、合成ナノ担体の集団にわたる平均として算出される。一態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体にわたって平均して、0.1%と99%との間である。別の態様において、積載量は、0.1%と50%との間である。さらに別の態様において、免疫抑制剤の積載量は、0.1%と20%との間である。さらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は0.1%と10%との間である。なおさらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は1%と10%との間である。なおさらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は7%と20%との間である。
【0057】
さらに別の態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%または少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%である。またさらなる態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%または20%である。上記の態様のいくつかの態様において、免疫抑制剤の積載量は、合成ナノ担体の集団にわたって平均して、25%を超えない。ある態様において、積載量は例に記載され得るとおりであるか、またはそうでなければ、当該分野において知られているように、算出される。
【0058】
いくつかの態様において、免疫抑制剤の形態が、ナノ結晶性免疫抑制剤などの、それ自体粒子または粒子様であるとき、免疫抑制剤の積載量は粒子等における免疫抑制剤の量(重量/重量)である。かかる態様において、積載量は97%、98%、99%またはそれ以上に届き得る。
【0059】
「合成ナノ担体の最大寸法」は、合成ナノ担体のいずれかの軸に沿って測定されたナノ担体の最も長い寸法を意味する。「合成ナノ担体の最小寸法」は、合成ナノ担体のいずれかの軸に沿って測定された合成ナノ担体の最も小さい寸法を意味する。例えば、回転楕円状合成ナノ担体において、合成ナノ担体の最大および最小寸法は、実質的に同一であって、その径のサイズとなるであろう。同様に立方体様の合成ナノ担体において、合成ナノ担体の最小寸法は、その高さ、幅または長さのうち最小のものとなり、一方合成ナノ担体の最大寸法は、その高さ、幅または長さのうち最大のものとなろう。一態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上である。
【0060】
一態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、5μm以下である。好ましくは、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、110nmよりも大きく、より好ましくは120nmよりも大きく、より好ましくは130nmよりも大きく、より好ましくは150nmよりもなお大きい。合成ナノ担体の最大寸法と最小寸法とのアスペクト比は、態様によって変化し得る。例えば、合成ナノ担体の最大寸法の最小寸法に対するアスペクト比は、1:1~1,000,000:1、好ましくは1:1~100,000:1、より好ましくは1:1~10,000:1、より好ましくは1:1~1000:1、なおより好ましくは1:1~100:1、さらにより好ましくは1:1~10:1で変化し得る。
【0061】
好ましくは、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最大寸法は、3μm以下、より好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、より好ましくは800nm以下、より好ましくは600nm以下、なおより好ましくは500nm以下である。好ましい態様において、サンプル中の合成ナノ担体の総数に基づいてサンプル中の合成ナノ担体の少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%の最小寸法は、100nm以上、より好ましくは120nm以上、より好ましくは130nm以上、より好ましくは140nm以上、なおより好ましくは150nm以上である。合成ナノ担体寸法(例えば有効寸法)の測定は、いくつかの態様において、合成ナノ担体を液体(通常は水性)媒体中に懸濁し、動的光散乱(DLS)を使用する(例えばBrookhaven ZetaPALS機器を使用する)ことによって、得てもよい。例えば、合成ナノ担体の懸濁液は、水性緩衝剤から純水中に希釈されておよそ0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノ担体懸濁濃度を達成し得る。
【0062】
例えば、合成ナノ担体の懸濁液は、水性緩衝剤から純水中に希釈されておよそ0.01~0.1mg/mLの最終合成ナノ担体懸濁濃度を達成し得る。希釈懸濁液は、DLS分析のために好適なキュベットの内部で直接調製されても、またはそれに移してもよい。次いでキュベットをDLS中に置き、制御された温度に平衡化し、次いで充分な時間スキャンして、媒体の粘度およびサンプルの屈折率に関する適切な入力に基づき、安定で再現可能な分布を獲得し得る。次いで有効径または分布の平均値を報告する。高アスペクト比または非回転楕円状の合成ナノ担体の有効サイズの決定は、より正確な測定を得るために電子顕微鏡などの拡大技術(augmentative techniques)を要する場合がある。合成ナノ担体の「寸法」または「サイズ」または「径」は、例えば動的光散乱を使用して得られる、粒子サイズ分布の平均値を意味する。
【0063】
「非メトキシ末端のポリマー」は、メトキシ以外の部位で終端する少なくとも1つの末端部を有するポリマーを意味する。いくつかの態様において、ポリマーはメトキシ以外の部位で終端する少なくとも2つの末端部を有する。他の態様において、ポリマーはメトキシで終端する末端部を有さない。「非メトキシ末端のプルロニックポリマー」は、両末端部にメトキシを有する直鎖プルロニックポリマー以外のポリマーを意味する。本明細書で提供されるポリマーナノ粒子は、非メトキシ末端のポリマーまたは非メトキシ末端のプルロニックポリマーを含み得る。
【0064】
「薬学的に許容し得る賦形剤」または「薬学的に許容し得る担体」は、組成物を処方するために薬理学的に活性な材料と一緒に使用される薬理学的に不活性な材料を意味する。薬学的に許容し得る賦形剤は、糖(例えばグルコース、ラクトース等)、抗菌剤などの保存剤、再構成助剤、着色剤、食塩水(リン酸緩衝化食塩水等)および緩衝剤を包含するが、これらに限定されない、当該分野において知られている種々の材料を含む。
「提供すること」は、本発明を実行するために必要とされる物品もしくは物品のセットまたは方法を供給する、個人が行う行動または行動のセットを意味する。行動または行動のセットは、自身で直接的または間接的に取られ得る。
【0065】
「対象を提供する」とは、臨床医に対象と接触させて本明細書で提供される組成物をその対象に投与させるか、または、本明細書で提供される方法をその対象において行わせる、いずれかの行動または行動のセットである。好ましくは、対象は治療用高分子の投与およびそれへの抗原特異的免疫寛容原性を必要としている対象である。行動または行動のセットは、自身で直接的または間接的に取られ得る。本明細書で提供される方法のいずれか1つの一態様において、方法はさらに対象を提供することを含む。
「対象」は、ヒトおよび霊長類などの温血動物;トリ;ネコ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマおよびブタなどのペットまたは家畜;マウス、ラットおよびモルモットなどの実験動物;魚;爬虫類;動物園のおよび野生の動物;等を包含する動物を意味する。
【0066】
「合成ナノ担体(単数または複数)」は、自然界には見られずサイズにおいて5ミクロン以下の少なくとも1つの寸法を所有する離散性の物体を意味する。アルブミンナノ粒子は一般に、合成ナノ担体として包含されるが、特定の態様において、合成ナノ担体はアルブミンナノ粒子を含まない。ある態様において、合成ナノ担体はキトサンを含まない。他の態様において、合成ナノ担体は脂質系ナノ粒子ではない。さらなる態様において、合成ナノ担体はリン脂質を含まない。
【0067】
合成ナノ担体は、1つまたは複数の脂質系ナノ粒子(本明細書において脂質ナノ粒子ともいわれ、すなわちその構造を構成する材料の大部分が脂質であるナノ粒子)、ポリマーナノ粒子、金属ナノ粒子、界面活性物質系エマルション、デンドリマー、バッキーボール、ナノワイヤ、ウイルス様粒子(すなわち、主にウイルス構造タンパク質で構成されるが、感染性ではなくまたは感染性が低い粒子)、ペプチドまたはタンパク質系粒子(本明細書においてタンパク質粒子ともいわれ、すなわち、その構造を構成する材料の大部分がペプチドまたはタンパク質である粒子)(アルブミンナノ粒子など)および/または脂質ポリマーナノ粒子などのナノ材料の組み合わせを使用して開発されたナノ粒子であってよいが、これらに限定されない。
【0068】
合成ナノ担体は、回転楕円状、立方体様、ピラミッド状、楕円状、円筒状、ドーナツ状等を包含するが、これらに限定されない種々の異なる形状であり得る。本発明に従う合成ナノ担体は1つまたは2つ以上の表面を含む。本発明の実行に使用するように適合され得る例示的な合成ナノ担体は、(1)米国特許第5,543,158号(Gref et al.)に開示された生分解性ナノ粒子、(2)公開された米国特許出願第20060002852号(Saltzman et al.)のポリマーナノ粒子、(3)公開された米国特許出願第20090028910号(DeSimone et al.)のリソグラフィーにより構築したナノ粒子、(4)国際出願公開第2009/051837号(von Andrian et al.)の開示、(5)公開された米国特許出願第2008/0145441号(Penades et al.)に開示されたナノ粒子、(6)公開された米国特許出願第20090226525号(de los Rios et al.)に開示されたタンパク質ナノ粒子、
【0069】
(7)公開された米国特許出願第20060222652号(Sebbel et al.)に開示されたウイルス様粒子、(8)公開された米国特許出願第20060251677号(Bachmann et al.)に開示された核酸付着ウイルス様粒子、(9)国際公開第2010047839A1号または同第2009106999A2号に開示されたウイルス様粒子、(10)P. Paolicelli et al., "Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles", Nanomedicine. 5(6): 843-853(2010)に開示されたナノ沈殿ナノ粒子、(11)米国特許公開第2002/0086049号に開示されたアポトーシス細胞、アポトーシス体、または、合成または半合成模倣物、または(12)Look et al., "Nanogel-based delivery of mycophenolic acid ameliorates systemic lupus erythematosus in mice", J. Clinical Investigation 123(4): 1741-1749 (2013)に開示されたものを含む。ある態様において、合成ナノ担体は、1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7よりも大きな、または1:10よりも大きなアスペクト比を所有し得る。
【0070】
約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を活性化するヒドロキシル基を有する表面を含まないか、または代替的に補体を活性化するヒドロキシル基ではない部位から本質的になる表面を含む。好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を実質的に活性化する表面を含まないか、または代替的に補体を実質的に活性化しない部位から本質的になる表面を含む。より好ましい態様において、約100nm以下、好ましくは100nm以下の最小寸法を有する本発明に従う合成ナノ担体は、補体を活性化する表面を含まないか、または代替的に補体を活性化しない部位から本質的になる表面を含む。ある態様において、合成ナノ担体は、ウイルス様粒子を排除する。ある態様において、合成ナノ担体は1:1、1:1.2、1:1.5、1:2、1:3、1:5、1:7よりも大きな、または1:10よりも大きなアスペクト比を有し得る。
【0071】
「治療用高分子」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのタンパク質、炭水化物、脂質または核酸をいう。いくつかの態様において、対象への治療用高分子の投与は、抗治療用高分子特異的抗体の産生を包含する望ましくない液性免疫応答をもたらし得る。本明細書で記載する場合、本明細書で提供される免疫抑制剤と治療用高分子との投与は、望ましくない液性免疫応答を低減し得るか、および/または、治療用高分子の治療有効性を向上させ得る。いくつかの態様において、治療用高分子は治療用ポリヌクレオチドまたは治療用タンパク質であり得る。
【0072】
「治療用ポリヌクレオチド」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに基づく治療を意味する。かかる治療は遺伝子サイレンシングを包含する。かかる治療の例は当該分野において知られており、ネイキッドRNA(メッセンジャーRNA、修飾メッセンジャーRNAおよびRNAiの形態を包含する)が挙げられるが、これらに限定されない。他の治療用ポリヌクレオチドの例は本明細書中に別記する。治療用ポリヌクレオチドは、細胞中、細胞上または細胞によって、産生されてもよいし、また細胞フリーの方法、または完全に合成によるin vitro法を使用して得てもよい。対象はそれゆえ、前述のいずれかによる処置を必要としているいずれかの対象を包含する。かかる対象には、前述のいずれかを受けるであろう対象が包含される。
【0073】
「治療用タンパク質」は、対象に投与されて治療効果を有し得るいずれかのタンパク質またはタンパク質に基づく治療を意味する。かかる治療としては、タンパク質補充治療およびタンパク質補強治療が挙げられる。かかる療法にはまた、外因性または外来性のタンパク質の投与、抗体治療および細胞または細胞に基づく治療も包含される。治療用タンパク質としては、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、成長因子、モノクローナル抗体、抗体-薬物複合体およびポリクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない。他の治療用タンパク質の例は本明細書中で別記する。治療用タンパク質は、細胞中で、細胞上で、または細胞によって、産生されてもよく、かかる細胞から得られるか、または、かかる細胞の形態で投与されてもよい。ある態様において、治療用タンパク質は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、細菌細胞、植物細胞、トランスジェニック動物細胞、トランスジェニック植物細胞、等中で、これらの細胞上で、またはこれらの細胞によって産生される。治療用タンパク質は、かかる細胞中で遺伝子組換えにより産生されてもよい。治療用タンパク質は、ウイルスで形質転換した細胞中、該細胞上、または該細胞により産生されてもよい。対象はそれゆえ、前述のいずれかによる処置を必要とするいずれかの対象を包含する。かかる対象には前述のいずれかを受けるであろう対象が包含される。
【0074】
「治療用高分子APC提示可能抗原」は、治療用高分子(すなわち、治療用高分子、または、治療用高分子に対する免疫応答(例えば抗治療用高分子特異的抗体の産生)を発生し得るその断片)と関連する抗原を意味する。一般に、治療用高分子抗原提示細胞(APC)提示可能抗原は、免疫系(例えば、樹状細胞、B細胞またはマクロファージを包含するが、それらに限定されない抗原提示細胞により提示されるものなどの免疫系の細胞)による認識のために提示され得る。治療用高分子APC提示可能抗原は、例えば、T細胞による認識のために提示され得る。
【0075】
かかる抗原は、クラスIまたはクラスII主要組織適合遺伝子複合体分子(MHC)に結合された抗原のエピトープの提示を介して、T細胞により認識されてT細胞中で免疫応答をトリガーし得る。治療用高分子のAPC提示可能抗原は一般に、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、リポタンパク質を包含するか、またはは、細胞中に、細胞上に、または細胞により含有または発現される。治療用高分子抗原は、いくつかの態様において、MHCクラスI拘束性エピトープおよび/またはMHCクラスII拘束性エピトープおよび/またはB細胞エピトープを含む。好ましくは、治療用高分子に特異的な1つまたは2つ以上の寛容原性免疫応答が、本明細書で提供される方法、組成物またはキットによりもたらされる。ある態様において、合成ナノ担体の集団は、加えられた治療用高分子のAPC提示可能抗原を含まず、このことは、合成ナノ担体の製造の間に、実質的な量の治療用高分子のAPC提示可能抗原が意図的に合成ナノ担体に加えられることはないということを意味する。
【0076】
「望ましくない液性免疫応答」は、抗原への曝露によりもたらされ、本明細書で提供される疾患、障害または状態(またはそれらの徴候)を促進または悪化させるか、または、本明細書で提供される疾患、障害または状態の徴候であるいずれかの望ましくない液性免疫応答をいう。かかる免疫応答は一般に、対象の健康に悪影響を有するか、または、対象の健康に対する悪影響の徴候となる。望ましくない液性免疫応答としては、抗原特異的抗体の産生、抗原特異的B細胞の増殖および/または活性、または、抗原特異的CD4+T細胞の増殖および/または活性が挙げられる。一般に、これらの望ましくない免疫応答は治療用高分子に特異的であって治療用高分子の投与の望ましい有益効果に対抗する。
【0077】
C.方法の実行において有用な組成物
第1および第2の投薬が本明細書で提供され、それらは組み合わせて、望ましくない液性免疫応答を低減し得る。一般に、かかる第1および第2の投薬はまた、治療用高分子の改善された有効性ももたらし得る。したがって、本明細書で提供される方法および関係する組成物は、治療用高分子による処置を必要とする対象のために使用され得る。具体的に、第1の投薬は、合成ナノ担体に付着されていない治療用高分子と組み合わせられて、免疫抑制剤、いくつかの態様において合成ナノ担体に付着されている、を含み、第2の投薬は、同様に合成ナノ担体と付着されていない治療用高分子を含む。
【0078】
種々多様な合成ナノ担体を、第1の投薬の免疫抑制剤に付着するために使用し得る。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、球状または回転楕円状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は平坦または平板形状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は立方体または立方体状である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は卵形または長円である。いくつかの態様において、合成ナノ担体は円筒、円錐またはピラミッドである。
【0079】
いくつかの態様において、各合成ナノ担体が同様の性質を有するようにサイズまたは形状の点で比較的均一である合成ナノ担体の集団を使用することが望ましい。例えば、合成ナノ担体の総数に基づいて少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の合成ナノ担体は、合成ナノ担体の平均径または平均寸法の5%、10%または20%以内に入る最小寸法または最大寸法を有し得る。
【0080】
合成ナノ担体は、中実または中空であってよく、1つまたは2つ以上の層を含み得る。いくつかの態様において、各層が、他の層(単数または複数)に対して、独自の組成物および独自の性質を有する。例を挙げると、合成ナノ担体は、コアが1つの層(例えばポリマーコア)でありシェルが第2の層(例えば脂質二分子層または脂質単分子層)であるコア/シェル構造を有していてもよい。合成ナノ担体は複数の異なる層を含んでいてもよい。
【0081】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の脂質を含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体はリポソームを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質二分子層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質単分子層を含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体はミセルを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は脂質層(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)に囲まれたポリマーマトリックスを含むコアを含んでいてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、脂質層(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)に囲まれた非ポリマーコア(例えば、金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、骨粒子、ウイルス粒子、タンパク質、核酸、炭水化物、等)を含んでいてもよい。
【0082】
他の態様において、合成ナノ担体は金属粒子、量子ドット、セラミック粒子、等を含んでいてもよい。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノ担体は、金属原子(例えば金原子)の凝集体などの非ポリマー構成成分の凝集体である。
【0083】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の両親媒性の実体を含んでいてもよい。いくつかの態様において、両親媒性の実体は安定性が増大されているか、均一性が改善されているか、または、粘度が増大されている合成ナノ担体の生成を促進し得る。いくつかの態様において、両親媒性の実体は、脂質膜(例えば、脂質二分子層、脂質単分子層、等)の内部表面に関連され得る。当該分野において知られている多くの両親媒性の実体は、本発明に従う合成ナノ担体を作ることにおける使用に好適である。かかる両親媒性の実体としては、ホスホグリセリド;ホスファチジルコリン;ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC);ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE);ジオレイルオキシプロピルトリエチルアンモニウム(DOTMA);
【0084】
ジオレオイルホスファチジルコリン;コレステロール;コレステロールエステル;ジアシルグリセロール;ジアシルグリセロールスクシネート;ジホスファチジルグリセロール(DPPG);ヘキサンデカノール;ポリエチレングリコール(PEG)などの脂肪族アルコール;ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル;パルミチン酸またはオレイン酸などの表面活性脂肪酸;脂肪酸;脂肪酸モノグリセリド;脂肪酸ジグリセリド;脂肪酸アミド;ソルビタントリオレエート(Span(登録商標)85)グリココレート;ソルビタンモノラウレート(Span(登録商標)20);ポリソルベート20(Tween(登録商標)20);ポリソルベート60(Tween(登録商標)60);ポリソルベート65(Tween(登録商標)65);ポリソルベート80(Tween(登録商標)80);ポリソルベート85(Tween(登録商標)85);ポリオキシエチレンモノステアレート;サーファクチン;ポロキソマー(poloxomer);ソルビタントリオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル;レシチン;リゾレシチン;ホスファチジルセリン;ホスファチジルイノシトール;スフィンゴミエリン;ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン);カルジオリピン;
【0085】
ホスファチジン酸;セレブロシド;ジセチルホスフェート;ジパルミトイルホスファチジルグリセロール;ステアリルアミン;ドデシルアミン;ヘキサデシルアミン;アセチルパルミテート;グリセロールリシノレエート;ヘキサデシルステアレート;イソプロピルミリステート;チロキサポール;ポリ(エチレングリコール)5000-ホスファチジルエタノールアミン;ポリ(エチレングリコール)400-モノステアレート;リン脂質;高い界面活性物質活性を有する合成および/または天然洗剤;デオキシコレート;シクロデキストリン;カオトロピック塩;イオンペア剤;および、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。両親媒性実体構成成分は、異なる両親媒性実体の混合物であってもよい。これが界面活性物質活性を有する物質の包括的ではない例示的なリストであるということを当業者は認識するであろう。いずれかの両親媒性実体を、本発明に従って使用される合成ナノ担体の生成に使用してよい。
【0086】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は任意で、1つまたは2つ以上の炭水化物を含んでいてもよい。炭水化物は天然または合成であってもよい。炭水化物は誘導天然炭水化物であってもよい。特定の態様において、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、セルビオース、マンノース、キシロース、アラビノース、グルコン酸、ガラクトン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラトサミンおよびノイラミン酸が挙げられるが、これらに限定されない単糖または二糖を含む。特定の態様において、炭水化物は、プルラン、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシセルロース(HC)、メチルセルロース(MC)、デキストラン、シクロデキストラン、グリコーゲン、ヒドロキシエチルスターチ、カラギーナン、グリコン、アミロース、キトサン、Ν,Ο-カルボキシメチルキトサン、アルギンおよびアルギン酸、デンプン、キチン、イヌリン、こんにゃく、グルコマンナン、プスツラン、ヘパリン、ヒアルロン酸、カードランおよびキサンタンが挙げられるが、これらに限定されない多糖である。ある態様において、合成ナノ担体は多糖などの炭水化物を含まない(または具体的に排除される)。特定の態様において、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールおよびラクチトールが挙げられるが、これらに限定されない糖アルコールなどの炭水化物誘導体を含んでいてもよい。
【0087】
いくつかの態様において、合成ナノ担体は1つまたは2つ以上のポリマーを含み得る。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、非メトキシ末端のプルロニックポリマーである1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てが非メトキシ末端のプルロニックポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体は非メトキシ末端のポリマーである1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)が非メトキシ末端のポリマーである。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てが非メトキシ末端のポリマーである。
【0088】
いくつかの態様において、合成ナノ担体はプルロニックポリマーを含まない1つまたは2つ以上のポリマーを含む。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%または99%(重量/重量)がプルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、合成ナノ担体を構成するポリマーの全てがプルロニックポリマーを含まない。いくつかの態様において、かかるポリマーは、コーティング層(例えば、リポソーム、脂質単分子層、ミセル、等)で囲まれていてもよい。いくつかの態様において、合成ナノ担体の種々の要素はポリマーに付着されていてもよい。
【0089】
免疫抑制剤は、多くの方法のいずれかによって合成ナノ担体に付着され得る。一般に付着は、免疫抑制剤と合成ナノ担体との間の結合の結果であり得る。この結合は、免疫抑制剤が合成ナノ担体の表面に付着されおよび/または合成ナノ担体内に含有され(カプセル化され)ることをもたらし得る。しかしながら、いくつかの態様において、免疫抑制剤は、合成ナノ担体への結合ではなくむしろ合成ナノ担体の構造の結果として、合成ナノ担体によってカプセル化される。好ましい態様において、合成ナノ担体は、本明細書で提供されるポリマーを含み、免疫抑制剤はポリマーに付着される。
【0090】
付着が免疫抑制剤と合成ナノ担体との間の結合の結果として起こるとき、付着は連結部位を介して起こり得る。連結部位は免疫抑制剤がその部位を通して合成ナノ担体に結合されるいずれかの部位であり得る。かかる部位には、アミド結合またはエステル結合などの共有結合ならびに免疫抑制剤を合成ナノ担体に(共有結合的にまたは非共有結合的に)結合する別個の分子が包含される。かかる分子は、リンカー、または、ポリマーまたはそれらの単位を包含する。例えば、連結部位は、免疫抑制剤が静電的に結合する荷電ポリマーを含み得る。別の例として、連結部位は、それが共有結合的に結合するポリマーまたはその単位を含み得る。
【0091】
好ましい態様において、合成ナノ担体は本明細書で提供されるポリマーを含む。これらの合成ナノ担体は完全にポリマー性であってもよく、ポリマーと他の材料との混合であってもよい。
いくつかの態様において、合成ナノ担体のポリマー同士が関連してポリマーマトリックスを形成する。これらの態様のうちのいくつかにおいて、免疫抑制剤などの構成成分はポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと共有結合的に関連され得る。いくつかの態様において、共有結合的関連はリンカーによって媒介される。いくつかの態様において、構成成分は、ポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと非共有結合的に関連され得る。例えば、いくつかの態様において、構成成分は、高分子マトリックス内にカプセル化され、それによって囲まれ、および/または、それの全体にわたって分散され得る。代替的または追加的に、構成成分は、ポリマーマトリックスの1つまたは2つ以上のポリマーと、疎水性の相互作用、電荷相互作用、ファンデルワールス力、等によって関連され得る。ポリマーマトリックスを形成するための多種多様なポリマーおよび方法は従来、知られている。
【0092】
ポリマーは、天然または非天然(合成)ポリマーであり得る。ポリマーはホモポリマーまたは2つまたは3つ以上のモノマーを含むコポリマーであり得る。並びの点で、コポリマーはランダム、ブロックであっても、ランダムとブロックとの並びの組み合わせを含んでもよい。典型的には、本発明に従うポリマーは、有機ポリマーである。
【0093】
いくつかの態様において、ポリマーは、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドまたはポリエーテル、または、これらの単位を含む。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)またはポリカプロラクトン、または、これらの単位を含む。いくつかの態様において、ポリマーは生分解性であることが好ましい。それゆえ、これらの態様において、ポリマーがポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などのポリエーテルを含む場合、ポリマーは、生分解性となるように、ポリエーテルのブロックコポリマーおよび生分解性ポリマーを含むことが好ましい。他の態様において、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)またはポリプロピレングリコールまたはこれらの単位などの、ポリエーテルまたはこれらの単位を、それだけでは含まない。
【0094】
本発明で使用するのに好適なポリマーの他の例としては、ポリエチレン、ポリカーボネート(例えばポリ(1,3-ジオキサン-2オン))、ポリ酸無水物(例えばポリ(セバシン酸無水物))、ポリプロピルフマラート、ポリアミド(例えばポリカプロラクタム)、ポリアセタール、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド-co-グリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酸(例えばポリ(β-ヒドロキシアルカノアート)))、ポリ(オルトエステル)、ポリシアノアクリラート、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリホスファゼン、ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリ尿素、ポリスチレンおよびポリアミン、ポリリジン、ポリリジン-PEG共重合体およびポリ(エチレンイミン)、ポリ(エチレンイミン)-PEG共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
いくつかの態様において、本発明に従うポリマーは、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(1,3-ジオキサン-2オン));ポリ酸無水物(例えば、ポリ(セバシン酸無水物));ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール);ポリウレタン;ポリメタクリラート;ポリアクリラート;およびポリシアノアクリラートを包含するが、これらに限定されない、米国医薬品局(FDA)により21C.F.R.§177.2600の下でヒトにおける使用が認証されたポリマーを包含する。
【0096】
いくつかの態様において、ポリマーは親水性であり得る。例えば、ポリマーは、アニオン性基(例えばホスファート基、スルファート基、カルボキシラート基);カチオン性基(例えば四級アミン基);または極性基(例えばヒドロキシル基、チオール基、アミン基)を含み得る。いくつかの態様において、親水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体内に親水性環境を発生させる。いくつかの態様において、ポリマーは疎水性であり得る。いくつかの態様において、疎水性ポリマーマトリックスを含む合成ナノ担体は、合成ナノ担体内に疎水性環境を発生させる。ポリマーの親水性または疎水性の選択は、合成ナノ担体内に組み込まれた(例えば、付着された)材料の特質に影響を有し得る。
【0097】
いくつかの態様において、ポリマーは1つまたは2つ以上の部位および/または官能基で修飾され得る。種々の部位または官能基を本発明に従い使用し得る。いくつかの態様において、ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)で、炭水化物で、および/または、多糖から誘導された非環式ポリアセタールで、修飾され得る(Papisov, 2001、ACS Symposium Series, 786:301)。特定の態様は、米国特許第5543158号(Gref et al.)または国際公開第2009/051837号(Von Andrian et al.)の一般的教示を使用してなされ得る。
【0098】
いくつかの態様において、ポリマーは脂質または脂肪酸基で修飾され得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸またはリグノセリン酸の1つまたは2つ以上であり得る。いくつかの態様において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ-リノール酸、ガンマ-リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはエルシン酸の1つまたは2つ以上であり得る。
【0099】
いくつかの態様において、ポリマーは、本明細書において集合的に「PLGA」と呼ばれる、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;および本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位を含むホモポリマー;および本明細書において集合的に「PLA」と呼ばれるポリ-L-乳酸、ポリ-D-乳酸、ポリ-D,L-乳酸、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチドおよびポリ-D,L-ラクチドなどの乳酸単位を含むホモポリマー、を包含するポリエステルであってもよい。いくつかの態様において、例示的なポリエステルとしては、例えば、ポリヒドロキシ酸;PEGコポリマーおよびラクチドとグリコリドとのコポリマー(例えば、PLA-PEGコポリマー、PGA-PEGコポリマー、PLGA-PEGコポリマーおよびこれらの誘導体)が挙げられる。いくつかの態様において、ポリエステルは、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)-PEGコポリマー、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)、ポリ(セリンエステル)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)、ポリ[α-(4-アミノブチル)-L-グリコール酸]およびこれらの誘導体を包含する。
【0100】
いくつかの態様において、ポリマーはPLGAである。PLGAは、乳酸とグリコール酸との生体適合性かつ生分解性のコポリマーであり、乳酸:グリコール酸の比によってPLGAの種々の形態が特徴付けられる。乳酸は、L-乳酸、D-乳酸またはD,L-乳酸であり得る。PLGAの分解速度は乳酸:グリコール酸比を変えることによって調節され得る。いくつかの態様において、本発明に従い使用されるPLGAは、およそ85:15、およそ75:25、およそ60:40、およそ50:50、およそ40:60、およそ25:75、または、およそ15:85の乳酸:グリコール酸比によって特徴付けられる。
【0101】
いくつかの態様において、ポリマーは1つまたは2つ以上のアクリルポリマーであってもよい。特定の態様において、アクリルポリマーは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のコポリマー、メチルメタクリラートコポリマー、エトキシエチルメタクリラート、シアノエチルメタクリラート、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(無水メタクリル酸)、メチルメタクリラート、ポリメタクリラート、ポリ(メチルメタクリラート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリラートコポリマー、グリシジルメタクリラートコポリマー、ポリシアノアクリラートおよび上記のポリマーの1つまたは2つ以上を含む組み合わせを包含する。アクリルポリマーは、四級アンモニウム基の含有量の低いアクリルおよびメタクリル酸エステルの十分にポリマー化されたコポリマーを含み得る。
【0102】
いくつかの態様において、ポリマーはカチオン性ポリマーであり得る。一般にカチオン性ポリマーは、核酸の負に荷電されたストランドを濃縮および/または保護する能力がある。ポリ(リジン)(Zauner et al., 1998、Adv. Drug Del. Rev., 30:97; Kabanov et al., 1995, Bioconjugate Chem., 6:7)、ポリ(エチレンイミン)(PEI;Boussif et al., 1995, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 1995, 92:7297)およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(Kukowska-Latallo et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 93:4897; Tang et al., 1996, Bioconjugate Chem., 7:703; Haensler et al., 1993, Bioconjugate Chem., 4:372)などのアミン含有ポリマーは、生理学的なpHで正に荷電されて核酸とイオン対を形成する。ある態様において、合成ナノ担体はカチオン性ポリマーを含まなくてもよい(または排除してもよい)。
【0103】
いくつかの態様において、ポリマーはカチオン性の側鎖を持つ生分解性ポリエステル(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Barrera et al., 1993, J, Am. Chem. Soc., 115: 11010; Kwon et al., 1989, Macromolecules, 22:3250; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633; Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)であり得る。これらのポリエステルの例としては、ポリ(L-ラクチド-co-L-リジン)(Barrera et al., 1993, J. Am. Chem. Soc., 115: 11010)、ポリ(セリンエステル)(Zhou et al., 1990, Macromolecules, 23:3399)、ポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)およびポリ(4-ヒドロキシ-L-プロリンエステル)(Putnam et al., 1999, Macromolecules, 32:3658; Lim et al., 1999, J. Am. Chem. Soc., 121:5633)が挙げられる。
【0104】
これらのおよび他のポリマーの特性およびそれらの調製方法は当該分野において周知である(例えば、米国特許第6,123,727号;5,804,178号;5,770,417号;5,736,372号;5,716,404号;6,095,148号;5,837,752号;5,902,599号;5,696,175号;5,514,378号;5,512,600号;5,399,665号;5,019,379号;5,010,167号;4,806,621号;4,638,045号;および4,946,929号;Wang et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:9480; Lim et al., 2001, J. Am. Chem. Soc., 123:2460; Langer, 2000, Acc. Chem. Res., 33:94; Langer, 1999, J. Control. Release, 62:7; Uhrich et al., 1999, Chem. Rev., 99:3181参照)。より一般には、特定の好適なポリマーを合成するための種々の方法が、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts, Ed. by Goethals, Pergamon Press, 1980; Principles of Polymerization by Odian, John Wiley & Sons, Fourth Edition, 2004; Contemporary Polymer Chemistry by Allcock et al., Prentice-Hall, 1981; Deming et al., 1997, Nature, 390:386;および米国特許第6,506,577号、同第6,632,922号、同第6,686,446号および同第6,818,732号に記載されている。
【0105】
いくつかの態様において、ポリマーは直鎖状または分枝状ポリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーはデンドリマーであり得る。いくつかの態様において、ポリマーは実質的に、互いに架橋されていてよい。いくつかの態様において、ポリマーは実質的に架橋を含まなくてよい。いくつかの態様において、ポリマーは架橋ステップを経験せずに本発明に従い使用され得る。合成ナノ担体は、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、前述のおよび他のポリマーのいずれかのブレンド、混合物および/または付加物を含み得ることをさらに理解すべきである。本明細書中に列挙されるポリマーは、本発明に従い使用され得る包括的でない例示的なポリマーのリストを表すものであることを当業者は認識するであろう。
【0106】
いくつかの態様において、合成ナノ担体はポリマー構成成分を含まない。いくつかの態様において、合成ナノ担体は金属粒子、量子ドット、セラミック粒子等を含み得る。いくつかの態様において、非ポリマー合成ナノ担体は、金属原子(例えば金原子)の凝集体などの非ポリマー構成成分の凝集体である。
【0107】
本発明に従う第1および/または第2の投薬は、要素を、保存剤、緩衝剤、食塩水またはリン酸緩衝化食塩水などの薬学的に許容し得る賦形剤と組み合わせて含み得る。組成物は、有用な剤形に到達するように従来の医薬製造および配合技術を使用して作られ得る。いくつかの態様において、投薬の組成物は、保存剤と一緒に注射用の滅菌食塩水溶液に懸濁される。いくつかの態様において、合成ナノ担体は、保存剤と一緒に注射用の滅菌食塩水溶液に懸濁される。
【0108】
ある態様において、免疫抑制剤とともに使用するための合成ナノ担体を調製するとき、合成ナノ担体に構成成分を付着する方法が有用であり得る。構成成分が小さな分子である場合、合成ナノ担体の組み立ての前にその構成成分をポリマーに付着することが有利である場合がある。ある態様において、構成成分をポリマーに付着し、次いでこのポリマー複合体を合成ナノ担体の構築に使用するというよりはむしろ、それらの表面基の使用を通して構成成分を合成ナノ担体に付着させるために使用される表面基を有する合成ナノ担体を調製することも有利である場合がある。
【0109】
特定の態様において、付着は共有結合性リンカーによりなされ得る。ある態様において、本発明に従う構成成分は、ナノ担体の表面のアジド基とアルキン基を含有する構成成分との1,3-双極子環状付加反応により、または、ナノ担体の表面のアルキンとアジド基を含有する構成成分との1,3-双極子環状付加反応により、形成される、1,2,3-トリアゾールリンカーを介して外部表面に共有結合的に付着され得る。かかる環状付加反応は好ましくは、好適なCu(I)リガンドと、Cu(II)化合物を触媒活性なCu(I)化合物に還元するための還元剤と共に、Cu(I)触媒の存在下で行われる。このCu(I)触媒アジド-アルキン環状付加(CuAAC)はまた、クリック反応といわれることもある。
【0110】
加えて、共有結合的付着は、アミドリンカー、ジスルフィドリンカー、チオエーテルリンカー、ヒドラゾンリンカー、ヒドラジドリンカー、イミンまたはオキシムリンカー、尿素またはチオ尿素リンカー、アミジンリンカー、アミンリンカーおよびスルホンアミドリンカーを含む共有結合性リンカーを含み得る。
アミドリンカーは、一方の構成成分(免疫抑制剤など)上のアミンとナノ担体などの第2の構成成分のカルボン酸基との間のアミド結合を介して形成される。リンカー中のアミド結合は、好適に保護されたアミノ酸および活性化されたカルボン酸(N-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルなど)との従来のアミド結合形成反応のいずれかを使用して作られ得る。
【0111】
ジスルフィドリンカーは、例としてR1-S-S-R2の形態の2つの硫黄原子間のジスルフィド(S-S)結合の形成を介して作られ得る。ジスルフィド結合は、チオール/メルカプタン基(-SH)を含有する構成成分とポリマーまたはナノ担体上の別の活性化チオール基との、または、チオール/メルカプタン基を含有するナノ担体と活性化チオール基を含有する構成成分との、チオール交換によって形成され得る。
【0112】
トリアゾールリンカー、具体的には、下記の形態
【化1】
(式中RおよびRが、いずれかの化学的実体であり得る)の1,2,3-トリアゾールは、ナノ担体などの第1構成成分に付着されたアジドの、免疫抑制剤などの第2構成成分に付着された末端アルキンとの1,3-双極子環状付加反応により作られる。1,3-双極子環状付加反応は、触媒の有無で、好ましくはCu(I)触媒を使用して、行われ、これにより2つの構成成分が1,2,3-トリアゾール官能性を通してつながれる。この化学は、Sharpless et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(14), 2596, (2002) および Meldal, et al, Chem. Rev., 2008, 108(8), 2952-3015により詳細に記載され、「クリック」反応またはCuAACと呼ばれることも多い。
【0113】
ある態様において、ポリマー鎖の末端にアジドまたはアルキン基を含有するポリマーが調製される。このポリマーは次いで、複数のアルキンまたはアジド基がナノ担体の表面上に位置するような様式で合成ナノ担体を調製するのに使用される。代替的に、合成ナノ担体は、別の経路により調製され、その後にアルキンまたはアジド基で官能化されてもよい。構成成分は、アルキン(ポリマーがアジドを含有する場合)またはアジド(ポリマーがアルキンを含有する場合)基のどちらかの存在により調製される。構成成分は次に、触媒の有無で1,3-双極子環状付加反応を介してナノ担体と反応され、これにより1,4-二置換1,2,3-トリアゾールリンカーを通して構成成分が粒子に共有結合的に付着される。
【0114】
チオエーテルリンカーは、例としてR1-S-R2の形態の硫黄-炭素(チオエーテル)結合の形成によって作られる。チオエーテルは、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン(-SH)基の、第2構成成分上のハロゲン化物またはエポキシドなどのアルキル化基によるアルキル化によって作られる。チオエーテルリンカーはまた、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン基の、マイケル受容体としてマレイミド基またはビニルスルホン基を含有する第2の構成成分上の電子不足アルケン基へのマイケル付加によっても形成され得る。別の方式において、チオエーテルリンカーは、1つの構成成分上のチオール/メルカプタン基と、第2構成成分上のアルケン基とのラジカルチオール-エン反応により調製され得る。
【0115】
ヒドラゾンリンカーは、1つの構成成分上のヒドラジド基と、第2構成成分上のアルデヒド/ケトン基との反応によって作られる。
ヒドラジドリンカーは、1つの構成成分上のヒドラジン基と第2構成成分上のカルボン酸基との反応により形成される。かかる反応は一般に、カルボン酸が活性化試薬で活性化される場合のアミド結合の形成と同様の化学を使用して行われる。
イミンまたはオキシムリンカーは、1つの構成成分上のアミンまたはN-アルコキシアミン(またはアミノオキシ)基と、第2構成成分上のアルデヒドまたはケトン基との反応により形成される。
【0116】
尿素またはチオ尿素リンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のイソシアネートまたはチオイソシアネート基との反応により調製される。
アミジンリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のイミドエステル基との反応により調製される。
アミンリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のハロゲン化物、エポキシドまたはスルホナートエステル基などのアルキル化基とのアルキル化反応により作られる。代替的に、アミンリンカーはまた、1つの構成成分上のアミン基と第2の構成成分上のアルデヒドまたはケトン基との、シアノ水素化ホウ素ナトリウムまたはトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムなどの好適な還元試薬を使用した還元アミノ化により作られてもよい。
【0117】
スルホアミドリンカーは、1つの構成成分上のアミン基と、第2構成成分上のスルホニルハライド(スルホニルクロリド等)基との反応によって作られてもよい。
スルホンリンカーは、求核基のビニルスルホンへのマイケル付加により作られる。ビニルスルホンまたは求核基のいずれかは、ナノ担体の表面上にあってもよいし、構成成分に付着されていてもよい。
構成成分、好ましくは免疫抑制剤、はまた、非共有結合性複合化法を介してナノ担体に複合化されていてもよい。例えば、負に荷電された免疫抑制剤は、静電吸着を通して正に荷電されたナノ担体に複合化されてもよい。金属リガンドを含有する構成成分はまた、金属-リガンド錯体を介して金属錯体を含有するナノ担体に複合化されてもよい。
【0118】
ある態様において、構成成分は、合成ナノ担体の組み立ての前に、ポリマー、例えばポリ乳酸-ブロック-ポリエチレングリコールに付着されてもよいし、合成ナノ担体がその表面上に反応性のまたは活性化可能な基を有するように形成されてもよい。後者の場合、構成成分は、合成ナノ担体の表面によって提示される付着化学と適合可能な基を有するように調製されてもよい。他の態様において、ぺプチド構成成分は、好適なリンカーを使用してVLPまたはリポソームに付着されてもよい。リンカーは、2つの分子同士を付着し得る化合物または試薬である。一態様において、リンカーは、Hermanson 2008に記載のホモ二官能性またはヘテロ二官能性試薬であってもよい。例えば、表面上にカルボキシル基を含有するVLPまたはリポソーム合成ナノ担体を、EDCの存在下でホモ二官能性リンカー、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)で処置してADHリンカーを有する対応する合成ナノ担体を形成し得る。結果としてもたらされるADHにつながれた合成ナノ担体は次いで、ナノ担体上のADHリンカーの他の端部を介して酸基を含有するペプチド構成成分と複合化されて対応するVLPまたはリポソームペプチド複合体を生成する。
【0119】
利用可能な複合化方法の詳細な記載に関しては、Hermanson G T "Bioconjugate Techniques", 2nd Edition Published by Academic Press, Inc., 2008を参照のこと。共有結合性の付着に加えて、構成成分は、予め形成された合成ナノ担体への吸着によって付着されてもよいし、合成ナノ担体形成中のカプセル化によって付着されてもよい。
【0120】
本明細書で提供されるいずれかの免疫抑制剤が使用され得、いくつかの態様においては、合成ナノ担体に付着されてもよい。免疫抑制剤としては、スタチン;ラパマイシンまたはラパマイシン類縁体などのmTORインヒビター;TGF-βシグナル剤;TGF-β受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)インヒビター;コルチコステロイド;ロテノンなどのミトコンドリア機能のインヒビター;P38インヒビター;NF-κβインヒビター;アデノシン受容体アゴニスト;プロスタグランジンE2アゴニスト;ホスホジエステラーゼ4インヒビターなどのホスホジエステラーゼインヒビター;プロテアソームインヒビター;キナーゼインヒビター;Gタンパク質共役受容体アゴニスト;Gタンパク質共役受容体アンタゴニスト;グルココルチコイド;レチノイド;サイトカインインヒビター;サイトカイン受容体インヒビター;サイトカイン受容体アクチベーター;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニスト;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニスト;ヒストンデアセチラーゼインヒビター;カルシニューリンインヒビター;ホスファターゼインヒビターおよび酸化ATPが挙げられるがこれらに限定されない。免疫抑制剤としてはまた、IDO、ビタミンD3、シクロスポリンA、アリールハイドロカーボン受容体インヒビター、レスベラトロール、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アスピリン、ニフルミン酸、エストリオール、トリポリド、インターロイキン(例えばIL-1、IL-10)、シクロスポリンA、サイトカインまたはサイトカイン受容体を標的とするsiRNA、等が挙げられる。
【0121】
スタチンの例としては、アトルバスタチン(LIPITOR(登録商標)、TORVAST(登録商標))、セリバスタチン、フルバスタチン(LESCOL(登録商標)、LESCOL(登録商標)XL)、ロバスタチン(MEVACOR(登録商標)、ALTOCOR(登録商標)、ALTOPREV(登録商標))、メバスタチン(COMPACTIN(登録商標))、ピタバスタチン(LIVALO(登録商標)、PIAVA(登録商標))、ロスバスタチン(PRAVACHOL(登録商標)、SELEKTINE(登録商標)、LIPOSTAT(登録商標))、ロスバスタチン(CRESTOR(登録商標))およびシンバスタチン(ZOCOR(登録商標)、LIPEX(登録商標))が挙げられる。
mTORインヒビターの例としては、ラパマイシンおよびその類縁体(例えば、CCL-779、RAD001、AP23573、C20-メタリルラパマイシン(C20-Marap)、C16-(S)-ブチルスルホンアミドラパマイシン(C16-BSrap)、C16-(S)-3-メチルインドールラパマイシン(C16-iRap)(Bayle et al., Chemistry & Biology 2006, 13:99-107))、AZD8055、BEZ235(NVP-BEZ235)、クリソファン酸(クリソファノール)、デフォロリムス(MK-8669)、エベロリムス(RAD0001)、KU-0063794、PI-103、PP242、テムシロリムスおよびWYE-354(Selleck、Houston、TX、USAから入手可能)が挙げられる。
【0122】
TGF-βシグナル剤の例としては、TGF-βリガンド(例えば、アクチビンA、GDF1、GDF11、骨形態形成タンパク質、ノーダル、TGF-β)およびそれらの受容体(例えば、ACVR1B、ACVR1C、ACVR2A、ACVR2B、BMPR2、BMPR1A、BMPR1B、TGFβRI、TGFβRII)、R-SMADS/co-SMADS(例えば、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8)およびリガンドインヒビター(例えば、フォリスタチン、ノギン、コルジン、DAN、レフティ、LTBP1、THBS1、デコリン)が挙げられる。
ミトコンドリア機能のインヒビターの例としては、アトラクチロシド(ジカリウム塩)、ボングクレキック酸(トリアンモニウム塩)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン、カロボキシアトラクチロシド(例えばアトラクチリス属から)、CGP-37157、(-)-デグエリン(例えばMundulea sericeaから)、F16、ヘキソキナーゼIIVDAC結合ドメインペプチド、オリゴマイシン、ロテノン、Ru360、SFK1およびバリノマイシン(例えばStreptomuces fulvissimusから)(EMD4Biosciences, USA)が挙げられる。
【0123】
P38インヒビターの例としては、SB-203580(4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-メチルスルフィニルフェニル)-5-(4-ピリジル)1H-イミダゾール)、SB-239063(トランス-1-(4ヒドロキシシクロヘキシル)-4-(フルオロフェニル)-5-(2-メトキシ-ピリミジン-4-イル)イミダゾール)、SB-220025(5-(2アミノ-4-ピリミジニル)-4-(4-フルオロフェニル)-1-(4-ピペリジニル)イミダゾール))およびARRY-797が挙げられる。
【0124】
NF(例えば、ΝΚ-κβ)インヒビターの例としては、IFRD1、2-(1,8-ナフチリジン-2-イル)-フェノール、5-アミノサリチル酸、BAY11-7082、BAY11-7085、CAPE(カフェイン酸フェネチルエステル)、ジエチルマレエート、IKK-2インヒビターIV、IMD0354、ラクタシスチン、MG-132[Z-Leu-Leu-Leu-CHO]、NFκB活性化インヒビターIII、NF-κB活性化インヒビターII、JSH-23、パルテノリド、フェニルアルシンオキシド(PAO)、PPM-18、ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩、QNZ、RO106-9920、ロカグラミド、ロカグラミドAL、ロカグラミドC、ロカグラミドI、ロカグラミドJ、ロカグラオール、(R)-MG-132、サリチル酸ナトリウム、トリプトリド(PG490)およびウェデロラクトンが挙げられる。
アデノシン受容体アゴニストの例としては、CGS-21680およびATL-146eが挙げられる。
プロスタグランジンE2アゴニストの例としては、E-プロスタノイド2およびE-プロスタノイド4が挙げられる。
【0125】
ホスホジエステラーゼインヒビター(非選択的および選択的インヒビター)の例としては、カフェイン、アミノフィリン、IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン)、パラキサンチン、ペントキシフィリン、テオブロミン、テオフィリン、メチル化キサンチン、ビンポセチン、EHNA(エリスロ-9-(2-ヒドロキシ-3-ノニル)アデニン)、アナグレリド、エノキシモン(PERFAN(商標))、ミルリノン、レボシメンダン(levosimendon)、メセンブリン、イブジラスト、ピクラミラスト、ルテオリン、ドロタベリン、ロフルミラスト(DAXAS(商標)、DALIRESP(商標))、シルデナフィル(REVATION(登録商標)、VIAGRA(登録商標))、タダラフィル(ADCIRCA(登録商標)、CIALIS(登録商標))、バルデナフィル(LEVITRA(登録商標)、STAXYN(登録商標))、ウデナフィル、アバナフィル、イカリイン、4-メチルピペラジンおよびピラゾロピリミジン-7-1が挙げられる。
プロテアソームインヒビターの例としては、ボルテゾミブ、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラートおよびサリノスポラミドAが挙げられる。
【0126】
キナーゼインヒビターの例としては、ベバシズマブ、BIBW2992、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、イマチニブ(GLEEVEC(登録商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、ペガプタニブ、ソラフェニブ、ダサチニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ニロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、バンデタニブ、E7080、パゾパニブおよびムブリチニブが挙げられる。
グルココルチコイドの例としては、ヒドロコルチゾン(コルチゾール)、コルチゾンアセタート、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾンアセテート、デオキシコルチコステロンアセテート(DOCA)およびアルドステロンが挙げられる。
【0127】
レチノイドの例としては、レチノール、レチナール、トレチノイン(レチノイン酸、RETIN-A(登録商標))、イソトレチノイン(ACCUTANE(登録商標)、AMNESTEEM(登録商標)、CLARAVIS(登録商標)、SOTRET(登録商標))、アリトレチノイン(PANRETIN(登録商標))、エトレチナート(TEGISON(商標))およびその代謝産物アシトレチン(SORIATANE(登録商標))、タザロテン(TAZORAC(登録商標)、AVAGE(登録商標)、ZORAC(登録商標))、ベキサロテン(TARGRETIN(登録商標))およびアダパレン(DIFFERIN(登録商標))が挙げられる。
サイトカインインヒビターの例としては、IL1ra、IL1受容体アンタゴニスト、IGFBP、TNF-BF、ウロモジュリン、アルファ-2-マクログロブリン、シクロスポリンA、ペンタミジンおよびペントキシフィリン(PENTOPAK(登録商標)、PENTOXIL(登録商標)、TRENTAL(登録商標))が挙げられる。
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アンタゴニストの例としては、GW9662、PPARγアンタゴニストIII、G335およびT0070907(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
【0128】
ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体アゴニストの例としては、ピオグリタゾン、シグリタゾン、クロフィブレート、GW1929、GW7647、L-165,041、LY171883、PPARγアクチベーター、Fmoc-Leu、トログリタゾンおよびWY-14643(EMD4Biosciences、USA)が挙げられる。
ヒストンデアセチラーゼインヒビターの例としては、トリコスタチンA、環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)およびデプシペプチドなどのヒドロキサム酸(またはヒドロキサメート)、ベンズアミド、求電子性ケトン、酪酸フェニルおよびバルプロ酸などの脂肪族酸化合物、ボリノスタット(SAHA)、ベリノスタット(PXD101)、LAQ824およびパノビノスタット(LBH589)などのヒドロキサム酸、エンチノスタット(MS-275)、CI994およびモセチノスタット(MGCD0103)などのベンズアミド、ニコチンアミド、NADの誘導体、ジヒドロクマリン、ナフトピラノンおよび2-ヒドロキシナフアルデヒド(hydroxynaphaldehyde)が挙げられる。
【0129】
カルシニューリンインヒビターの例としては、シクロスポリン、ピメクロリムス、ボクロスポリンおよびタクロリムスが挙げられる。
ホスファターゼインヒビターの例としては、BN82002ヒドロクロリド、CP-91149、カリクリンA、カンタリジン酸、カンタリジン、サイパーメスリン、エチル-3,4-デホスタチン、フォストリエシンナトリウム塩、MAZ51、メチル-3,4-デホスタチン、NSC95397、ノルカンタリジン、prorocentrum concavumからのオカダ酸アンモニウム塩、オカダ酸、オカダ酸カリウム塩、オカダ酸ナトリウム塩、フェニルアルシンオキシド、種々のホスファートインヒビター混液、タンパク質ホスファターゼ1C、タンパク質ホスファターゼ2Aインヒビタータンパク質、タンパク質ホスファターゼ2A1、タンパク質ホスファターゼ2A2およびオルトバナジン酸ナトリウムが挙げられる。
【0130】
いくつかの態様において、治療用高分子は、治療用高分子そのものまたはそれらの断片または誘導体の形態で送達され得る。治療用高分子は、治療用タンパク質または治療用ポリヌクレオチドを包含し得る。治療用タンパク質としては、点滴可能な治療用のタンパク質、酵素、酵素補助因子、ホルモン、血液凝固因子、サイトカインおよびインターフェロン、成長因子、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体(例えば補充治療として対象に投与されるもの)およびポンペ病に関連するタンパク質(例えば酸性グルコシダーゼアルファ、rhGAA(例えばミオザイムおよびルミザイム(Genzyme))が挙げられるが、これらに限定されない。治療用タンパク質はまた、血液凝固カスケードに関与するタンパク質も包含する。治療用タンパク質としては、第VIII因子、第VII因子、第IX因子、第V因子、フォン・ヴィレブランド因子、フォン・ヘルデブラント因子、組織プラスミノーゲンアクチベーター、インスリン、成長ホルモン、エリスロポエチンアルファ、VEGF、トロンボポエチン、リゾチーム、アンチトロンビン等が挙げられるが、これらに限定されない。治療用タンパク質はまた、レプチンおよびアディポネクチンなどのアディポカインも包含する。治療用タンパク質の他の例は以下に記載し、および本明細書中に別記するとおりである。
【0131】
リソソーム蓄積障害を有する対象の酵素補充治療に使用される治療用タンパク質の例としては、ゴーシェ病の処置のためのイミグルセラーゼ(例えばCEREZYME(商標))、ファブリー病の処置のためのa-ガラクトシダーゼA(a-galA)(例えば、アガルシダーゼベータ、FABRYZYME(商標))、ポンペ病の処置のための酸性αグルコシダーゼ(GAA)(例えば、酸性グルコシダーゼアルファ、LUMIZYME(商標)、MYOZYME(商標))、ムコ多糖症の処置のためのアリールスルファターゼB(例えば、ラロニダーゼ、ALDURAZYME(商標)、イデュルスルファーゼ、ELAPRASE(商標)、アリールスルファターゼB、NAGLAZYME(商標))、ペグロチカーゼ(KRYSTEXXA)およびペグシチカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
酵素の例としては、オキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、グリコシダーゼ、アスパラギナーゼ、ウリカーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、ヘパリナーゼ、ヘパラナーゼ、リジンおよびリガーゼが挙げられる。
治療用タンパク質はまた、いずれかの細菌性の、真菌性の、またはウイルス性の供給源から単離されるか、または誘導された酵素、毒素、または、他のタンパク質またはペプチドを包含してもよい。
【0133】
ホルモンの例としては、メラトニン(N-アセチル-5-メトキシトリプトアミン)、セロトニン、チロキシン(またはテトラヨードチロニン)(甲状腺ホルモン)、トリヨードチロニン(甲状腺ホルモン)、エピネフリン(またはアドレナリン)、ノルエピネフリン(またはノルアドレナリン)、ドーパミン(またはプロラクチン阻害ホルモン)、抗ミュラー管ホルモン(またはミュラー管阻害因子またはホルモン)、アディポネクチン、副腎皮質刺激ホルモン(またはコルチコトロピン)、アンジオテンシノーゲンおよびアンジオテンシン、抗利尿性ホルモン(またはバソプレシン、アルギニンバソプレシン)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(またはアトリオペプチン)、カルシトニン、コレシストキニン、コルチコトロピン放出ホルモン、エリスロポエチン、卵胞刺激ホルモン、ガストリン、グレリン、グルカゴン、
【0134】
グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GIP、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、ヒト胎盤性ラクトゲン、成長ホルモン、インヒビン、インスリン、インスリン様成長因子(またはソマトメジン)、レプチン、黄体形成ホルモン、メラニン細胞刺激ホルモン、オレキシン、オキシトシン、副甲状腺ホルモン、プロラクチン、レラキシン、セクレチン、ソマトスタチン、トロンボポエチン、甲状腺刺激ホルモン(またはチロトロピン)、チロトロピン放出ホルモン、コルチゾール、アルドステロン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、アンドロステンジオン、ジヒドロテストステロン、エストラジオール、エストロン、エストリオール、プロゲステロン、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)、カルシジオール(25-ヒドロキシビタミンD3)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、プロラクチン放出ホルモン、リポトロピン、脳性ナトリウム利尿ペプチド、神経ペプチドY、ヒスタミン、エンドセリン、膵ポリペプチド、レニンおよびエンケファリンが挙げられる。
【0135】
血液または血液凝固因子の例としては、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、組織因子、第V因子(プロアクセレリン、不安定因子)、第VII因子(安定因子またはプロコンベルチン)、第VIII因子(抗血友病性グロブリン)、第IX因子(クリスマス因子または血漿トロンボプラスチン構成成分)、第X因子(スチュアート・プローワー因子)、第Xa因子、第XI因子、第XII因子(ハーゲマン因子)、第XIII因子(フィブリン安定化因子)、フォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン(フレッチャー因子)、高分子量キニノゲン(HMWK)(フィッツジェラルド因子)、フィブロネクチン、フィブリン、トロンビン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補助因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関係プロテアーゼインヒビター(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-アンチプラスミン、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI1)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-2(PAI2)、がんプロコアグラントまたはエポエチンアルファ(Epogen、Procrit)が挙げられる。
【0136】
サイトカインの例としては、リンホカイン、インターロイキンおよびケモカイン、IFN-γなどのタイプ1サイトカイン、TGF-βおよびIL-4、IL-10およびIL-13などのタイプ2サイトカインが挙げられる。
成長因子の例としては、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮増殖因子(EGF)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝がん由来増殖因子(HDGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、マイグレーション刺激因子、ミオスタチン(GDF-8)、神経成長因子(NGF)および他のニューロトロフィン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、血管内皮増殖因子(VEGF)、Wntシグナル経路、胎盤増殖因子(P1GF)、(ウシ胎児ソマトトロピン)(FBS)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6およびIL-7が挙げられる。
【0137】
モノクローナル抗体の例としては、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴル(Alacizumab pegol)、ALD、アレムツズマブ、アルツモマブペンテテート(Altumomab pentetate)、アナツモマブマフェナトックス(Anatumomab mafenatox)、アンルキンズマブ、抗胸腺細胞グロブリン、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ(Aselizumab)、アトリズマブ(トシリズマブ)、アトロリムマブ(Atorolimumab)、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ(Bectumomab)、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、ビバツズマブメルタンシン(Bivatuzumab mertansine)、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプロマブペンデチド、カツマキソマブ、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス(Citatuzumab bogatox)、シクスツムマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、
【0138】
コナツムマブ、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス(Dorlimomab aritox)、ドルリキシズマブ(Dorlixizumab)、エクロメキシマブ(Ecromeximab)、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ(Efungumab)、エロツズマブ、エルシリモマブ(Elsilimomab)、エンリモマブペゴル、エピツモマブシツキセタン(Epitumomab cituxetan)、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、エタラシズマブ、エクスビビルマブ(Exbivirumab)、ファノレソマブ、ファラリモマブ(Faralimomab)、ファルレツズマブ、フェルビズマブ(Felvizumab)、フェザキヌマブ、フィジツムマブ(Figitumumab)、フォントリズマブ、フォラビルマブ(Foravirumab)、フレソリムマブ(Fresolimumab)、ガリキシマブ、ガンテネルマブ、ガンビリモマブ、ゲムツマブオゾガマイシン、GC1008、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン(Glembatumumab vedotin)、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ(Gomiliximab)、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イゴボマブ(Igovomab)、イムシロマブ、インフリキシマブ、インテツムマブ(Intetumumab)、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、ケリキシマブ、
【0139】
ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ(Lemalesomab)、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ(Libivirumab)、リンツズマブ、ロボツズマブメルタンシン(Lorvotuzumab mertansine)、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ(Maslimomab)、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ(Minretumomab)、ミツモマブ、モロリムマブ(Morolimumab)、モタビズマブ、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス(Nacolomab tafenatox)、ナプツモマブエスタフェナトクス(Naptumomab estafenatox)、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ(Nerelimomab)、ニモツズマブ、ノフェツモマブメルペンタン(Nofetumomab merpentan)、オクレリズマブ、オデュリモマブ(Odulimomab)、オファツムマブ、オララツマブ(Olaratumab)、オマリズマブ、オポルツズマブモナトクス(Oportuzumab monatox)、オレゴボマブ、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パスコリズマブ(Pascolizumab)、ペムツモマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ペンツモマブ(Pintumomab)、プリリキシマブ、プリツムマブ(Pritumumab)、ラフィビルマブ(Rafivirumab)、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、
【0140】
リツキシマブ、ロバツムマブ(Robatumumab)、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サツモマブペンデチド(Satumomab pendetide)、セビルマブ(Sevirumab)、シブロツズマブ(Sibrotuzumab)、シファリムマブ、シルツキシマブ、シプリズマブ、ソラネズマブ、ソネプシズマブ(Sonepcizumab)、ソンツズマブ(Sontuzumab)、スタムルマブ、スレソマブ、タカツズマブテトラキセタン(Tacatuzumab tetraxetan)、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブペプトクス(Taplitumomab paptox)、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス(Telimomab aritox)、テナツモマブ(Tenatumomab)、テネリキシマブ、テプリズマブ、チシリムマブ(トレメリムマブ)、チガツズマブ、トシリズマブ(アトリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ(Tuvirumab)、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ(Vapaliximab)、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ビシリズマブ、ボロシキシマブ、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ジラリムマブ(Ziralimumab)およびズリモマブアリタオクス(Zolimomab aritox)が挙げられる。モノクローナル抗体はさらに、抗TNF-α抗体を包含する。
【0141】
点滴治療または注射可能治療用タンパク質の例としては、例えば、トシリツマブ(Roche/Actemra(登録商標))、アルファ-1アンチトリプシン(Kamada/AAT)、ヘマタイド(登録商標)(AffymaxおよびTakeda、合成ペプチド)、アルブインターフェロンアルファ-2b(Novartis/Zalbin(商標))、ルシン(登録商標)(Pharming Group、C1インヒビター補充治療)、テサモレリン(Theratechnologies/Egrifta、合成成長ホルモン放出因子)、オクレリズマブ(Genentech、RocheおよびBiogen)、ベリムバブ(GlaxoSmithKline/Benlysta(登録商標))、ペグロチカーゼ(Savient Pharmaceuticals/Krystexxa(商標))、ペグシチカーゼ、タリグルセラーゼアルファ(Protalix/Uplyso)、アガルシダーゼアルファ(Shire/Replagal(登録商標))、ベラグルセラーゼアルファ(Shire)およびキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)が挙げられる。
【0142】
追加の治療用タンパク質としては、例えば、Fc融合タンパク質などの遺伝子操作タンパク質、二重特異性抗体、多重特異性抗体、ナノボディ、抗原結合タンパク質、抗体フラグメントおよび抗体薬物複合体などのタンパク質複合体が挙げられる。
治療用ポリヌクレオチドとしては、ペガプタニブ(マクゲン、ペグ化された抗VEGFアプタマー)などの核酸アプタマー、アンチセンスポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド(例えば、抗ウイルス薬物フォミビルセン(Fomivirsen)またはミポメルセン、コレステロール値を低減させるためにアポリポタンパク質BのためのメッセンジャーRNAを標的にするアンチセンス治療剤)などのアンチセンス治療剤;低分子干渉RNA(siRNA)(例えば、RNAiを極めて高い効力で媒介する25~30塩基対の非対称二重鎖RNAである、ダイサー基質siRNA分子(DsiRNA));または米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)および公開された米国特許出願第2012/0251618号(Schrum et al.)に開示されたもののような修飾型メッセンジャーRNA(mmRNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
本発明の側面に従って有用な追加の治療用高分子は、当業者には明らかであり、本発明はこの点において限定されない。
いくつかの態様において、治療用高分子または免疫抑制剤などの構成成分は、単離されていてもよい。「単離されている」は、その本来の環境から分離されて、その同定または使用を許すのに充分な分量で存在する要素である。これは例えば、その要素が、(i)発現クローニングによって選択的に産生され得るか、または(ii)クロマトグラフィーまたは電気泳動によって精製され得るということを意味する。単離された要素は、実質的に純粋であってもよいが、純粋である必要はない。単離された要素は医薬調製物中で薬学的に許容し得る賦形剤と混和されてもよいので、要素は、調製物にごくわずかな重量パーセンテージで含まれてもよい。要素はそれでもなお、生体系において関連され得る物質から分離された、すなわち、他の脂質またはタンパク質から単離されたという点で単離されている。本明細書で提供される要素のいずれも、単離されて組成物に包含されても、単離された形態で方法において使用されてもよい。
【0144】
D.組成物を作りおよび使用する方法ならびに関係する方法
投与スケジュールは、第1の投薬(単数または複数)および第2の投薬(単数または複数)の回数および/または第1の投薬(単数または複数)と第2の投薬(単数または複数)との時間間隔の長さを変更すること、ならびに、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を査定することによって、決定され得る。例えば、第1の投薬(単数または複数)および第2の投薬(単数または複数)を施した後、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答が測定され得る。この望ましくない液性免疫応答は、治療用高分子の1回のみまたは2回以上の投薬が免疫抑制剤(合成ナノ担体に付着されている場合など)との併用投与なしで起こった場合など、第1および第2の投薬(単数または複数)なしで起こる同じタイプの免疫応答と比較され得る。
【0145】
一般に、望ましくない免疫応答のレベルが第1および第2の投薬(単数または複数)後に低減されることが見出される場合、投与スケジュールは、治療用高分子による処置を必要とする対象にとって有益であり得、本明細書で提供される本明細書の方法および組成物とともに使用され得る。投与スケジュールは、第1の投薬(単数または複数)および第2の投薬(単数または複数)の試験スケジュールから開始すること、ならびに、適切なものとして知られているスケーリング技術(アロメトリックまたはアイソメトリックスケーリングなど)を使用することによって、決定されてもよい。別の態様において、投与スケジュールは、例えば経験およびガイドデータ(experience and guiding data)に基づく直接的な実験を通じて、対象における様々なスケジュールを試験することによって決定されてもよい。
【0146】
合成ナノ担体は当該分野において知られている種々多様な方法を使用して調製され得る。例えば、合成ナノ担体は、ナノ沈殿、流体チャンネルを使用するフローフォーカシング、噴霧乾燥、シングルおよびダブルエマルション溶媒蒸留、溶媒抽出、相分離、ミリング、マイクロエマルション手順、ミクロ加工、ナノ加工、犠牲層、単純および複合コアセルベーションなどの方法、および、当業者に周知の他の方法によって形成され得る。代替的または追加的に、単分散半伝導体または伝導性、磁性、有機および他のナノ材料のための水性および有機溶媒合成が記載されている(Pellegrino et al., 2005, Small, 1 :48; Murray et al., 2000, Ann. Rev. Mat. Sci., 30:545; Trindade et al., 2001, Chem. Mat., 13:3843)。追加の方法が文献に記載されている(例えば、Doubrow, Ed., "Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy," CRC Press, Boca Raton, 1992; Mathiowitz et al., 1987, J. Control. Release, 5: 13; Mathiowitz et al., 1987, Reactive Polymers, 6:275; Mathiowitz et al., 1988, J. Appl. Polymer Sci., 35:755;米国特許第5578325号および6007845号;P. Paolicelli et al., "Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles" Nanomedicine. 5(6): 843-853 (2010)を参照)。
【0147】
必要に応じて、C. Astete et al., "Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles" J. Biomater. Sci. Polymer Edn, Vol. 17, No. 3, pp. 247-289 (2006); K. Avgoustakis "Pegylated Poly(Lactide) and Poly(Lactide-Co-Glycolide) Nanoparticles: Preparation, Properties and Possible Applications in Drug Delivery" Current Drug Delivery 1: 321-333 (2004); C. Reis et al., "Nanoencapsulation I. Methods for preparation of drug-loaded polymeric nanoparticles" Nanomedicine 2:8-21 (2006); P. Paolicelli et al., "Surface-modified PLGA-based Nanoparticles that can Efficiently Associate and Deliver Virus-like Particles" Nanomedicine. 5(6):843-853 (2010)が挙げられるが、これらに限定されない種々の方法を使用して、種々の材料を合成ナノ担体中にカプセル化してもよい。材料を合成ナノ担体中にカプセル化するのに好適な、米国特許第6,632,671号(Unger、2003年10月14日発行)に開示された方法を包含するが、これらに限定されない他の方法を使用してもよい。
【0148】
特定の態様において、合成ナノ担体は、ナノ沈殿プロセスまたは噴霧乾燥によって調製される。合成ナノ担体の調製に使用される条件は、望ましいサイズまたは特性(例えば、疎水性、親水性、外部形態学、「粘着性」、形状、等)の粒子を産出するために変え得る。合成ナノ担体の調製方法および使用される条件(例えば、溶媒、温度、濃度、空気流量、等)は、合成ナノ担体に付着すべき材料および/またはポリマーマトリックスの組成に依存し得る。
上記の方法のいずれかによって調製される合成ナノ担体が望ましい範囲を外れるサイズ範囲を有する場合、かかる合成ナノ担体は、例えば、篩いを使用して分粒されてもよい。
【0149】
合成ナノ担体の要素(すなわち構成成分)は、例えば、1つまたは2つ以上の共有結合によって合成ナノ担体全面的に付着されてもよいし、1つまたは2つ以上のリンカーを使用して付着されてもよい。合成ナノ担体を官能化する追加の方法は、公開された米国特許出願第2006/0002852号(Saltzman et al.)、公開された米国特許出願第2009/0028910号(DeSimone et al)または公開された国際特許出願WO/2008/127532Al(Murthy et al.)から適合されてもよい。
【0150】
代替的または追加的に、合成ナノ担体は、直接的に、または非共有結合的相互作用を介して間接的に、構成成分に付着されてよい。非共有結合的な態様において、非共有結合的連結は、電荷相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト-ゲスト相互作用、疎水性相互作用、TTスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、静電相互作用、双極子-双極子相互作用および/またはそれらの組み合わせを包含するが、それらに限定されない、非共有結合的相互作用により媒介される。かかる連結は、合成ナノ担体の外部表面または内部表面上に配列されてもよい。ある態様において、カプセル化および/または吸収が連結の形態である。ある態様において、合成ナノ担体は、同じビヒクルまたは送達系中で混和することによって治療用高分子または他の組成物と組み合わされてもよい。
【0151】
本明細書で提供される組成物は、無機または有機緩衝剤(例えば、リン酸、カルボン酸、酢酸またはクエン酸のナトリウムまたはカリウム塩)およびpH調節剤(例えば、塩酸、水酸化ナトリウムまたはカリウム、クエン酸または酢酸の塩、アミノ酸およびそれらの塩)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロール)、界面活性物質(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン9-10ノニルフェノール、デオキシコール酸ナトリウム)、溶解および/または冷凍/凍結乾燥安定剤(cryo/lyo stabilizer)(例えば、スクロース、ラクトース、マンニトール、トレハロース)、浸透圧調節剤(例えば、塩または糖)、抗菌剤(例えば、安息香酸、フェノール、ゲンタマイシン)、消泡剤(例えば、ポリジメチルシロゾン(polydimethylsilozone)、保存剤(例えば、チメロサール、2-フェノキシエタノール、EDTA)、高分子安定剤および粘度調節剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー488、カルボキシメチルセルロース)ならびに共溶媒(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール、エタノール)を含んでいてもよい。
【0152】
本発明に従う組成物は、薬学的に許容し得る賦形剤を含んでもよい。組成物は、有用な剤形に到達するように従来の医薬製造および配合技術を使用して作られ得る。本発明の実行における使用に好適な技術は、Handbook of Industrial Mixing: Science and Practice, Edited by Edward L. Paul, Victor A. Atiemo-Obeng, and Suzanne M. Kresta, 2004 John Wiley & Sons, Inc.; and Pharmaceutics: The Science of Dosage Form Design, 2nd Ed. Edited by M. E. Auten, 2001, Churchill Livingstoneに見出され得る。ある態様において、組成物は保存剤と一緒に注射用滅菌食塩水溶液中にある。
【0153】
本発明の組成物はいずれかの好適な様式で作り得、本発明は本明細書に記載される方法を使用して生成され得る組成物になんら限定されないということを理解すべきである。適切な製造方法の選択は、関連している具体的な部位の性質に対する注意を要する場合がある。
いくつかの態様において、組成物は、滅菌条件下で製造されるか、または最終的に滅菌される。このことは、結果としてもたらされる組成物が滅菌され、および非感染性であることを確実にし得、こうして非滅菌の組成物と比較したとき安全性を改善する。このことは、とりわけ組成物を受ける対象が免疫欠如を有する、感染症を患う、および/または、感染されやすいときには、価値のある安全対策を提供する。いくつかの態様において、組成物は凍結乾燥されて、製剤戦略に依存して懸濁液中で、または凍結乾燥粉末として、活性を失うことなく長期間保管されてもよい。
【0154】
本発明に従う投与は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、経粘膜、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)または皮内経路を包含するが、これらに限定されない種々の経路によってよい。好ましい態様において、投与は皮下経路の投与を介する。本明細書で参照される組成物は、従来の方法を使用して、投与、好ましくは併用投与のために製造され、および調製され得る。
【0155】
本発明の組成物は、本明細書中に別記した有効量などの有効量で投与され得る。剤形の用量は、本発明に従い、変化する量の免疫抑制剤を含有してよい。剤形の用量は、本発明に従い、変化する量の治療用高分子を含有してよい。剤形中に存在する各構成成分の量は、構成成分の特質、遂行されるべき治療効果ならびに他のかかるパラメータに従い変更させ得る。ある態様において、剤形中に存在すべき構成成分の最適な治療量を確立するために、用量範囲の研究を行い得る。ある態様において、構成成分は、対象への投与の際、治療用高分子に対する望ましくない液性免疫応答を低減するのに有効な量で剤形中に存在する。
【0156】
対象における従来の用量範囲の研究および技術を使用して、望ましくない液性免疫応答を低減するのに有効な構成成分の量を決定することが可能であり得る。剤形は、種々の頻度で(すなわち投与スケジュールに従って)投与され得る。好ましい態様において、薬理学的に妥当な応答を発生するのに、剤形の少なくとも1回の投与で充分である。より好ましい態様において、薬理学的に妥当な応答を確実にするように、少なくとも2回の投与または少なくとも3回の投与が利用される。
【0157】
本開示の別の側面はキットに関する。いくつかの態様において、キットは、本明細書で提供される1回または2回以上の第1の投薬および/または1回または2回以上の第2投薬を含む。キットの各々の用量は、キット中で、別個の容器内または同じ容器内に含有され得る。いくつかの態様において、容器はバイアルまたはアンプルである。いくつかの態様において、各々の用量は、容器とは別の溶液内に含有されて、用量がその後の時点で容器に加えられるようになされていてもよい。いくつかの態様において、用量は、それぞれ別の容器中または同じ容器中に凍結乾燥された形態であって、それらがその後の時点で再構成されるようになされていてもよい。いくつかの態様において、キットはさらに、再構成、混合、投与、等のための使用説明書を含む。いくつかの態様において、使用説明書は本明細書に記載された方法の記載を包含する。使用説明書は、例えば印刷されたインサートまたはラベルのような、いずれか好適な形態であってよい。いくつかの態様において、キットはさらに、1つまたは2つ以上のシリンジを含む。
【0158】

例1:ラパマイシンに付着されたナノ担体の調製方法
材料
ラパマイシンをTSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA 01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAをSurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)を、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0159】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
【0160】
水中油(O/W)エマルションを使用してナノ担体を調製した。溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによってO/Wエマルションを調製した。O/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液を含有するビーカーに加えて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させてナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して75,600×gおよび4℃で50min遠心分離し、上清を除去してリン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
【0161】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表1】
【0162】
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street、Framingham, MA01702)から購入した(製品コードR1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0163】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
溶液3:70mMリン酸緩衝剤、pH8。
【0164】
溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小ガラス圧力管中で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによって水中油エマルションを作製した。エマルションを、溶液3(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、ジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成させた。次いでナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで40分間回転させ、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁し、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0165】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表2】
【0166】
材料
ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAは、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0167】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMe。この溶液は、PLGAおよびPLA-PEG-OMeを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。
溶液2:ポリビニルアルコール、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mL。
溶液3:70mMリン酸緩衝剤、pH8。
【0168】
溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小ガラス圧力管中で混合し、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによって水中油エマルションを作製した。エマルションを、溶液3(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加え、室温で2時間撹拌して、ジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中にナノ担体を形成した。次にナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで40分間回転し、上清を除去し、ペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【0169】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表3】
【0170】
例2:FVIIIに対する望ましくない液性免疫応答の評価
血友病Aマウス(El6マウス)(第0日においてn=8)に、血液凝固タンパク質第VIII因子(FVIII)およびラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID4)または空のナノ粒子(NP)(ナノ担体ID8)およびFVIIIまたはIVIG(静脈内免疫グロブリン)およびFVIIIの、併用静脈内(i.v.)注射の第1の投薬を、図1Aに図式的に提示されるとおり、連続した5週の間、毎週受けさせた。第57、81、125、143および187日のそれぞれで、マウスに、さらなる処置をせずに、FVIIIの第2の投薬(i.v.または腹腔内で(i.p.))によりチャレンジを行った。抗FVIII抗体レベルをELISAにより決定した。各時点でのデータを平均値±SEMとして表す(図1B)。統計的分析において、ラパマイシンに付着されている合成ナノ担体群を、両側分布(two tailed distribution)とともにスチューデントt試験を使用して、空のナノ担体(NP)対照群と比較した。*p<0.05および**p<0.01。FVIIIの全ての注射は注射1回当たり1μgとした。ナノ担体ID4の全ての注射は注射1回当たり100μgとした。
【0171】
FVIIIおよびラパマイシンに付着された合成ナノ担体の第1の投薬から1か月後に、FVIIIに対する抗体想起応答を評価するため、インヒビターの力価を、図2に提示されるとおり、発色FVIII活性アッセイキット(Coatest SP4 FVIII)を使用するベセスダアッセイにより決定した。
【0172】
データは、合成ナノ担体に付着された免疫抑制剤とFVIIIとの第1の投薬が、抗第VIII因子抗体応答を低減したことを示している。データはまた、かかる投与が第VIII因子の改善された活性をもたらし得ることも示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬による、タンパク質に対する、望ましくない液性免疫応答の低減とともに有効性の改善も実証している。データはまた、第VIII因子に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールを実証している。
【0173】
例3:HUMIRA/アダリムマブに対する望ましくない液性免疫応答の評価
対照C57BL/6同齢(5~6週)雌に、60μgのHUMIRAを週1回第29日まで(全ての群および条件にわたりd0、7、14、22、29)前肢において皮下(s.c.)注射した。別の群は同様の注射を受けたが、0.9mgのラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)を、抗原刺激第0日にHUMIRAの溶液に混和した(第1の投薬)。図3Aに提示された結果は、第21日の全ての動物の血液中の抗体価を示している。対照動物はHUMIRAに対する強力な抗体応答を現すが、処置された動物は20日間および2回の処置なしのHUMIRAの注射後でさえ完全に陰性のままである(第2の投薬)。動物は、局所的抗体媒介タイプI過敏性応答を試験するために、第29日に、一方の後肢に別のチャレンジを受け、もう一方の後肢に塩水を受けた。このために、注射の1時間後にキャリパーの助けを借りて後肢の太さを測定した。2本の肢の太さの違いを図3Bに提示する。抗体結果と同様に、合成ナノ担体による処置はHUMIRAの局所投与により誘導される炎症応答を消滅させた。
【0174】
これらの結果は、第1および第2の投薬の施行により、望ましくない抗HUMIRA抗体応答を低減させ得るとともに、HUMIRAの投与によりもたらされ得る望ましくない炎症反応を除外し得ることを示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。データはまた、Humira(商標)に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールをも実証している。
【0175】
例4:キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に対する望ましくない液性免疫応答の評価
対照C57BL/6同齢(5~6週)雌に、200μgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を、第0日または第21日に開始し週1回第34(d0、7、14、21、28、34)まで、尾静脈において静脈内(i.v.)注射した。別の群は、第0日から第34日まで同様の注射を受けたが、第0、14および21日には0.47mgのラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)をKLHの溶液に混和し(第1の投薬)、その後はKLH単独の注射を第21~34日の間毎週(d21、28、34)受けた(第2の投薬)。図4に提示された結果は、表示された時点での動物の血液中のKLH抗体価を示している。第0日または第21日に免疫化を開始した対照動物は、同量のKLHを使用した3回の注射(それぞれ第26および40日)後に、非常に類似した応答(EC50=3~5×10)を現す。それに対して、ラパマイシンに付着された合成ナノ担体の3回の注射を受けた動物は、KLH単独の3回の注射後に、完全に陰性のままである。
【0176】
これらの結果は、第1および第2の投薬の施行が、KLHの投与に起因し得る望ましくない抗KLH抗体応答を低減し得ることを示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。データはまた、KLHに対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールをも実証している。
【0177】
例5:オボアルブミンに対する望ましくない液性免疫応答の評価
C57BL/6同齢(5~6週)雌に、-21日および-13日に、1.2mg非連結ナノ粒子(NP[空])(ナノ担体ID5)、フリーのラパマイシン(fラパ)(100μg)、22μgのフリーのニワトリオボアルブミン(fOVA)、fラパとfOVAとの組み合わせ、単独または22μgのfOVAと組み合わせた1.2mgのラパマイシンに付着された合成ナノ担体(NP[ラパ]、100μgのラパマイシン含有量)(ナノ担体ID1、2または3)を、尾静脈においてi.v.注射した。第0日に、全ての動物に、2μgのCpGと混和された2.5μgの粒子状OVA(pOVA)を後肢においてs.c.注射し、続いて2.5μgのpOVAを第7および14日に注射した。いずれかの処置の非存在下(NP[空])において、動物はOVAに対して、抗OVAIgG抗体価により測定し得る強力な免疫応答を現す。図5に示された第22日の抗体価は、同じ溶液中でOVAと併用投与されたラパマイシンに付着された合成ナノ担体(fOVA+NP[ラパ])の2回の用量が(第1の投薬)、OVA+CpGの1回の注射およびOVA単独の2回の注射後であっても(第2の投薬)、OVAに対する抗体形成を防止することにおいて有効であったことを実証している。
【0178】
これらのデータは、第1および第2の投薬の施行が、望ましくない抗OVA抗体応答を低減し得ること、および、かかる低減が、OVAを強いアジュバントと組み合わせて投与した後でもそのまま続き得るということを示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。データはまた、OVAに対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールをも実証している。
【0179】
例6:KRYSTEXXAに対する望ましくない液性免疫応答の評価
-21日および-14日に、C57BL/6同齢(5~6週)雌の対照群に、尾静脈においてPBSをi.v.注射し、一方、処置群には、0.9mgのラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)を40μgのKRYSTEXXAと組み合わせて注射した。全ての動物は、第0日から第28まで毎週、20μgのCpGと組み合わされた100μgのKRYSTEXXAのs.c.注射を後肢に受けた(d0、7、12、28)。対照動物は、抗KRYSTEXXAIgM抗体価により測定し得るKRYSTEXXAに対する免疫応答を現す。図6における結果は、動物を、同じ溶液中でKRYSTEXXAと併用投与されたラパマイシンに付着された合成ナノ担体で処置することが(第1の投薬)、長期にわたりKRYSTEXXAへの抗体形成を防止することにおいて有効であったことを示している。処置動物は、合成ナノ担体なしでKRYSTEXXA+CpGを5回注射した後でも抗KRYSTEXXA応答を現さなかった(第2の投薬)。
【0180】
これらのデータは、第1および第2の投薬の施行が、望ましくない抗KRYSTEXXA抗体応答を低減し得ること、および、かかる低減が、強いアジュバントと共にKRYSTEXXAを投与した後でも、そのまま続き得るということを示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。データはまた、Krystexxa(商標)に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールをも実証している。
【0181】
例7:オボアルブミンおよびKLHに対する望ましくない液性免疫応答の評価
C57BL/6同齢(5~6週)雌の対照群に、週1回49日間(d0、7、14、20、28、35、42、49)、2.5μgの免疫原性形態の粒子状オボアルブミン(pOVA)を尾静脈においてi.v.注射し、2μgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を後肢においてs.c.注射した。動物の他の群は、第0、7および14日に、pOVAおよびKLHを、同じ経路および量であるが、0.2mgのラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)と混和して受け、続いてpOVAを第20~42日の間(前と同量)注射した。対照動物は、抗OVAまたは抗KLHIgG抗体価により測定し得るOVAおよびKLHに対する強力な免疫応答を現す。図7に示された第54日の抗体価は、同じ溶液中でpOVAと併用投与されたラパマイシンに付着されている合成ナノ担体の3回の用量が(第1の投薬)、OVAへの抗体形成を長期にわたり低減および防止することにおいて有効であったが、KLH(別の場所にs.c.注射された)には有効ではなかったということを実証している。処置動物は、pOVA単独の5回の注射の後でも抗OVA応答を現さなかった(第2の投薬)。
【0182】
これらのデータは、第1および第2の投薬の施行が、望ましくない抗OVA抗体応答を低減し得るが、かかる応答は同じ経路で投与されたOVAに特異的であるということを示している。しかしながら、応答は、同じ場所で投与されたタンパク質に特異的である。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。データはまた、望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールをも実証している。
【0183】
例8:KLHに対する望ましくない液性免疫応答の評価
対照C57BL/6同齢(5~6週)雌に、200μgのキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を、週1回63日間(d0、7、14、21、28、35、42、49、56、63)、尾静脈においてi.v.注射した。他の群は同様の注射を受けたが、第0、7、14および21日においては0.9mgのラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)をKLHの溶液と混和し、続いて第28日と第63日の間KLHを6回注射した(同量)。対照動物は、抗KLHIgG抗体価によって測定し得るKLHに対する強力な応答と共に、注射により誘導されるアナフィラキシー反応を現した。アナフィラキシースコアは、以下のように、3名の独立した観察者により決定された:0=徴候なし、l=嗜眠、2=嗜眠および直立不能(inability to right)、3=瀕死。図8Aにおける結果は、表示された時点における全ての動物の血液中の抗体価を示しており、抗原の注射によって誘導されたアナフィラキシースコアを図8Bに提示する。KLHと併用投与されたラパマイシンに付着されている合成ナノ担体の4回の用量が(第1の投薬)、抗体形成およびアナフィラキシーの長期にわたる低減および防止において有効であった。事実、処置動物は、対照動物では応答を作製するのに大体充分であったKLH単独の4回の注射の後(第26日)でも(第2の投薬)、抗KLH応答を現さなかった。
【0184】
これらの結果は、第1および第2の投薬の施行が、望ましくない抗KLH抗体応答を低減し得ると共に、望ましくないアナフィラキシー反応を除外し得るということを示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。データはまた、KLHに対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールをも実証している。
【0185】
例9:関節炎の動物における抗HUMIRA免疫応答の評価
ヒト腫瘍壊死因子アルファ(huTNFαTg)を過剰発現するトランスジェニック動物は、出生から20週の間に進行性の関節リウマチを発症する。このプロセスは、完全ヒト抗ヒトTNFα抗体HUMIRA/アダリムマブを使用することによって防止し得る。しかしながら、HUMIRAの初期の治療用量(60μg)の反復投与は、治療効果を中和する抗薬物抗体形成(ADA)につながる。そして非常に高い用量のみが、治療効果を維持し免疫応答の中和に打ち克ち得る。例えば、かかるマウスモデルの例において炎症の最大阻害を果たすためには約200μgが必要であると考えられている(Binder et al., Arthritis & Rheumatism, Vol. 65(No. 3), March 2013, pp. 608-617)。
【0186】
同齢huTNFαTg5週齢雌性動物に、食塩水(PBS)または60μgのHUMIRAを毎週、または、HUMIRAと0.87mgのラパマイシンに付着された合成ナノ担体(ナノ担体ID1、2または3)との混合物を最初の7回の注射(第0、7、14、21、28、35、42日、5~12週齢)(第1の投薬)およびそれに続くHUMIRA単独(同量)の3回の注射(第49~63日、13~15週齢)のいずれかを、肩甲下領域においてs.c.注射した(第2の投薬)。図9Aにおける結果は、第21日における全ての動物の血液中の抗体価を示している。HUMIRAを受けなかった対照動物は、予期どおり抗HUMIRA力価を有さないが、一方HUMIRAのみを受けた対照動物では強力な抗体応答が観察され得る。それに対し、合成ナノ担体で処置された動物は、処置なしのHUMIRAの3回の注射後も完全に陰性のままである。これらの動物の肢のモニタリングにより、対照動物において10週齢で既に明白であった進行性疾患が明らかになった。HUMIRA単独で処置された動物は、疾患進行の有意な遮断を有したが、このレジメンに合成ナノ担体を加えることで関節炎の徴候の出現が劇的に遮断された。図9Bに示されるスコアは、1)滑膜炎、関節浸出液および軟組織腫脹を表すもの、2)関節腔に成長して軟骨を破壊する炎症滑膜組織の増殖を包含するもの、3)広範囲におよぶ軟骨の喪失、関節の周縁部の周りの浸食および変形を示すもの、4)その機能的寿命を終わらせる関節の繊維または骨硬直を伴う疾患のほとんど最終段階であるもの、とした場合の、独立した4名の採点者の合計を表す。
【0187】
これらの結果は、第1および第2の投薬の施行が、望ましくない抗HUMIRA抗体応答を低減し得ること、ならびに、治療用タンパク質の治療有効性を改善し得ることも、示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。データはまた、Humira(商標)に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールをも実証している。
【0188】
例10:イブプロフェンを付着されたメソポーラスシリカナノ粒子(予言的)
メソポーラスSiOナノ粒子コアをゾル-ゲルプロセスを通して作製する。ヘキサデシルトリメチル-アンモニウムブロミド(CTAB)(0.5g)を脱イオン水(500mL)に溶解し、次いで2MのNaOH水溶液(3.5mL)をCTAB溶液に加える。この溶液を30min撹拌し、次いでテトラエトキシシラン(TEOS)(2.5mL)を溶液に加える。結果としてもたらされるゲルを80℃の温度で3h撹拌する。形成する白色の沈殿をろ過により捕捉し、次いで脱イオン水で洗浄して室温で乾燥する。次いでHClのエタノール性溶液中に終夜懸濁することによって残存する界面活性物質を粒子から抽出する。粒子をエタノールで洗浄し、遠心分離し、超音波下で再分散させる。この洗浄手順を追加で2回繰り返す。
【0189】
次いでSiOナノ粒子を(3-アミノプロピル)-トリエトキシシラン(APTMS)を使用してアミノ基で官能化する。これを行うために、粒子をエタノール(30mL)中に懸濁し、APTMS(50μl)を懸濁液に加える。懸濁液を室温で2h放置した後、エタノールを定期的に加えることによって体積を一定に保ちつつ4h沸騰させる。遠心分離および純粋なエタノールへの再分散による洗浄5サイクルにより、残存する反応物を除去する。
【0190】
別個の反応として、1~4nm径の金シードを作製する。まずこの反応に使用される全ての水を脱イオン化し、次いでガラスから蒸留する。水(45.5mL)を100mL丸底フラスコに加える。撹拌しながら、0.2Mの水性NaOH(1.5mL)、続いて1%のテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロリド(THPC)水溶液(1.0mL)を加える。THPC溶液を加えた2分後に、少なくとも15min熟成された10mg/mL塩化金酸水溶液(2mL)を加える。水に対する透析を通して、金シードを精製する。
【0191】
コア-シェルナノ担体を形成するために、まず上記で形成されたアミノ官能化SiOナノ粒子を金シードと室温で2h混合する。金装飾SiO粒子を、遠心分離を通して収集し、塩化金酸および重炭酸カリウムの水溶液と混合して金シェルを形成する。次いで粒子を遠心分離および水への再分散により洗浄する。粒子をイブプロフェンナトリウムの溶液(1mg/L)中に72h懸濁させることによってイブプロフェンを積載する。次いでフリーのイブプロフェンを遠心分離および水への再分散によって粒子から洗浄する。
【0192】
例11:シクロスポリンAを含有するリポソーム(予言的)
リポソームは薄膜水和を使用して形成される。1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)(32μmol)、コレステロール(32μmol)およびシクロスポリンA(6.4μmol)を純粋なクロロホルム(3mL)中に溶解する。この脂質溶液を50mLの丸底フラスコに加え、ロータリーエバポレータ上で60℃の温度で溶媒を蒸発させる。次いでフラスコを窒素ガスでフラッシュし残存する溶媒を除去する。リン酸緩衝化食塩水(2mL)および5個のガラスビーズをフラスコに加え、60℃で1h振盪して懸濁液を形成することによって脂質膜を水和させる。懸濁液を小圧力管に移し60℃で30sパルスを4サイクル、各パルス間30秒の遅れで超音波処理する。次いで懸濁液を室温で2h静置し、完全に水和させる。リポソームを遠心分離とそれの続くフレッシュなリン酸緩衝化食塩水中への再懸濁により洗浄する。
【0193】
例12:ラパマイシンを含有する金ナノ担体(AuNC)の調製(予言的)
HS-PEG-ラパマイシンの調製:
PEG酸ジスルフィド(1.0eq)、ラパマイシン(2.0~2.5eq)、DCC(2.5eq)およびDMAP(3.0eq)の乾燥DMF溶液をrtで終夜撹拌する。不溶性ジシクロヘキシル尿素をろ過により除去し、ろ液をイソプロピルアルコール(IPA)に加えてPEG-ジスルイフィド-ジ-ラパマイシンエステルを沈殿させIPAで洗浄し乾燥させる。次いでポリマーをDMF中トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリドで処置しPEGジスルフィドをチオールPEGラパマイシンエステル(HS-PEG-ラパマイシン)へと還元する。結果としてもたらされるポリマーを先に記載したようにしてIPAから沈殿させることによって回収して乾燥させて、H-NMRおよびGPCにより分析する。
【0194】
金NC(AuNC)の形成:
1mMのHAuClの水溶液500mLをコンデンサー付きの1L丸底フラスコ中で激しく撹拌しながら10min加熱還流する。次いで40mMのクエン酸三ナトリウムの溶液50mLを撹拌溶液に急速に加える。結果としてもたらされる濃ワインレッドの溶液を25~30min還流状態に保ち加熱を取り除いて溶液を室温まで冷却する。次いで溶液を、0.8μmメンブランフィルターを通してろ過しAuNC溶液を得る。AuNCは可視分光法および透過電子顕微鏡法を使用して特徴付けされる。AuNCは、約20nm径でシトラートによりキャッピングされ520nmにピーク吸収を有する。
【0195】
HS-PEG-ラパマイシンとのAuNC複合体:
HS-PEG-ラパマイシンの溶液(10mMのpH9.0炭酸緩衝剤中10μΜ)150μlを20nm径のシトラートキャッピングされた金ナノ担体(1.16nM)1mLに加え、2500:1のチオール:金モル比を生成する。混合物をアルゴン下、室温で1時間撹拌し、チオールを金ナノ担体上のシトラートと完全に交換させる。次いで表面にPEG-ラパマイシンを有するAuNCを12,000gで30分の遠心分離により精製する。上清を傾瀉した後、AuNC-S-PEG-ラパマイシンを含有するペレットを1×PBS緩衝剤でペレット洗浄する。次いで精製された金-PEG-ラパマイシンナノ担体をさらなる分析およびバイオアッセイのために好適な緩衝剤に再懸濁する。
【0196】
例13:抗PEG免疫応答の評価
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品コード# R1017)。ラクチド:グリコリド比3:1および固有粘度0.75dL/gのPLGAを、SurModics Pharmaceuticals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード7525 DLG 7A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.5DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biochemicals(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)はEMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown、NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。
【0197】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:塩化メチレン中、75mg/mLのPLGA、25mg/mLのPLA-PEG-OMeおよび12.5mg/mLのラパマイシン。この溶液は、PLGA、PLA-PEG-OMeおよびラパマイシンを純粋な塩化メチレン中に溶解することによって調製した。溶液2:100mMのpH8リン酸緩衝剤中、50mg/mLのポリビニルアルコール。
【0198】
水中油エマルションを使用してナノ担体を調製した。溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小圧力管中で組み合わせて、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することによってO/Wエマルションを調製した。O/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液を含有するビーカーに加えて室温で2時間撹拌し、塩化メチレンを蒸発させてナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移して75,600×gおよび4℃で50min遠心分離し、上清を除去してリン酸緩衝化食塩水中にペレットを再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、約10mg/mLの最終ナノ担体分散液となるようにペレットをリン酸緩衝化食塩水中に再懸濁した。
【0199】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表4】
【0200】
C57BL/6同齢(5~6週)雌に、初めの5回の注射において(第0、7、14、21、28日)0.47mgのラパマイシン含有ナノ担体(NP[ラパ]、50μgのラパマイシン含有量)と共に(第1の投薬)またはそれなしで、250μgのキーホールリンペットヘモシアニンとポリエチレングリコールとの複合体(KLH-PEG)を毎週(第0、7、14、21、28、35、42、49日)、尾静脈においてi.v.注射した。続く3回の注射は、同量中、ただのKLH-PEG(第2の投薬)からなった。PEGに対するIgM抗体応答を、これらの動物の血中において、毎週(第12、20、34、40、47、54日)モニターした。
【0201】
図10に示されるとおり、同量中のKLH-PEGとi.v.併用投与された合成ナノ担体の5つの用量は、PEGに対する抗体形成を防止するのに有効であった。これらの結果は、PEG化タンパク質と併用投与されたラパマイシン含有ナノ担体が、PEGに対する抗体形成を低減または防止し得ることを示している。ゆえに、第1および第2の投薬の施行は、ペグ化された治療用タンパク質に対する望ましくない免疫応答を低減するために使用し得る。データはまた、かかる効果を達成するための投与スケジュールをも実証している。
【0202】
例14:抗HUMIRA免疫応答の評価
ラパマイシン含有ナノ担体を、例13に上記した材料および方法を使用して発生させた。
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表5】
【0203】
関節炎動物における抗HUMIRA免疫および中和応答を評価した。ヒト腫瘍壊死因子アルファ(huTNFαTg)を過剰発現するトランスジェニック動物は、出生から20週の間に進行性の関節リウマチを発症する。このプロセスは、完全ヒト抗ヒトTNFα抗体アダリムマブまたはHUMIRAを使用することによって防止し得る。しかしながら、HUMIRAの初期の治療用量(60μg)の反復投与は、治療効果を中和する抗薬物抗体形成(ADA)につながる。より多い分量のHumira(200μg)を注射して、この拮抗性免疫応答を克服しHumiraの治療効果を可能にし得る。
【0204】
同齢HuTNFαTg5週齢雌性動物に、塩水(PBS)、または、60μgまたは200μgのHUMIRAを毎週(第5~10週)、あるいは、60μgのHumiraと0.87mgの寛容原性ナノ粒子との混合物の最初の3回の注射(5~7週齢)(第1の投薬)とそれに続くHUMIRA単独の3回の毎週の注射(同量)(第2の投薬)(8~10週齢)、のいずれかを、肩甲下領域にs.c.注射した。図11(左パネル)における結果は、異なる時点における全ての動物の血液中の抗体価を示している。対照の偽処置動物は、予期どおり力価を有さないが、一方、HUMIRAだけを受けた動物においては強力な抗HUMIRA抗体応答を観察し得る。5~7週齢のナノ担体による処置は、処置なしのHUMIRAの3回の注射(第8~10週)後であっても、抗HUMIRA力価を現すことへの完全な抵抗につながった。注目すべきことに、HUMIRAの3回の注射は、対照動物においては非常に高い力価につながった(第7週力価)が、ナノ担体で処置された動物における3回の同様の注射(合計で6回)は、力価を現すことに全く抵抗性であった(第10週)。図12は投与レジメンを例示している。
【0205】
これらの動物の肢のモニタリングにより、6週齢で既に明白であった進行性疾患が明らかになった。HUMIRA単独は、疾患進行の有意な遮断を有したが、このレジメンにナノ担体を加えることで関節炎の徴候の出現が劇的に遮断された。スコア(図11(右パネル))は、1)滑膜炎、関節浸出液および軟組織腫脹を表すもの、2)関節腔に成長し軟骨を破壊する炎症滑膜組織の増殖を包含するもの、3)広範囲におよぶ軟骨の喪失、関節の周縁部の周りの浸食および変形を示すもの、4)その機能的寿命を終わらせる関節の繊維または骨硬直を伴う疾患のほとんど最終段階であるもの、とした場合の独立した4名の採点者の平均合計を表す。
【0206】
これらの結果は、本明細書で提供される方法および組成物が、治療用タンパク質に対する抗体形成を低減または防止し得、その有効性および治療ウィンドウを改善し得ることを示している。具体的には、これらの結果は、第1および第2の投薬の施行が、望ましくない抗HUMIRA抗体応答を低減し得ること、ならびに、治療用タンパク質の治療有効性を改善し得ることも、示している。このことは、本明細書で提供される第1および第2の投薬によるタンパク質に対する望ましくない液性免疫応答の低減を実証している。Humira(商標)に対する望ましくない液性免疫応答を低減する投与スケジュールもまた提供される。
【0207】
例15:カプセル化ラパマイシンによるニワトリオボアルブミンに対する抗原特異的寛容原性応答
NP[ラパ]材料および方法
材料
ラパマイシンは、TSZ CHEM(185 Wilson Street, Framingham, MA 01702)から購入した(製品コード# R1017)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.50DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100DL mPEG 5000 5CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP(85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa・s)はEMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown、NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0208】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:1mL当たり75mgのPLGA、1mL当たり25mgのPLA-PEG-Omeおよび1mL当たり12.5mgのラパマイシンをジクロロメタンに溶解することにより、ポリマーおよびラパマイシン混合物を調製した。溶液2:ポリビニルアルコールは、100mMのpH8リン酸緩衝剤中50mg/mLに調製した。
【0209】
溶液1(1.0mL)および溶液2(3.0mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して30%振幅で60秒間超音波処理することにより、O/Wエマルションを調製した。このO/Wエマルションを70mMのpH8リン酸緩衝溶液(60mL)を含有する開放ビーカーに加えた。3つの追加の同一のO/Wエマルションを調製し最初のものと同じビーカーに加えた。次いでこれらを室温で2時間撹拌し、ジクロロメタンを蒸発させ、ナノ担体を形成させた。次にナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600×gおよび4℃で35分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをPBS1×中に再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×中に再懸濁し、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。同一の製剤を別個のビーカー中で上記のとおり調製し、洗浄ステップ後に最初のものと組み合わせた。次いで混合されたナノ担体溶液をPallの1.2μmPESメンブランシリンジフィルター(部品番号4656))を使用してろ過し、-20℃で保管した。
【0210】
ナノ担体のサイズは動的光散乱によって決定した。ナノ担体中のラパマイシンの量はHPLC分析によって決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表6】
【0211】
NP[OVA]材料および方法
材料
オボアルブミンタンパク質は、Worthington Biochemical Corporation(730 Vassar Avenue、Lakewood、NJ 08701)から購入した(製品コードLS003054)。54%ラクチドおよび46%グリコリド含有量ならびに固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび28,000DaのMw、0.38dL/gの固有粘度を有するPLA-PEGブロックコポリマーをLakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 4CE)。EMPROVE(登録商標)ポリビニルアルコール4-88、USP、85~89%加水分解、粘度3.4~4.6mPa.s、は、EMD Chemicals Inc.(480 South Democrat Road Gibbstown, NJ 08027)から購入した(製品コード1.41350.1001)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0212】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:50mg/mLのオボアルブミンタンパク質は、10重量%のスクロースを有する10mMリン酸緩衝剤pH8中で調製した。溶液2:PLGAはジクロロメタン1mL当たり100mgのPLGAをドラフトチャンバー中で溶解することにより調製した。溶液3:PLA-PEG-OMeは、ジクロロメタン1mL当たり100mgのPLA-PEG-OMeをドラフトチャンバー中で溶解することにより調製した。溶液4:100mMのリン酸緩衝剤pH8中、65mg/mLのポリビニルアルコール。
【0213】
まず溶液1~3を混合することにより一次(W1/O)エマルションを作製した。溶液1(0.2mL)、溶液2(0.75mL)および溶液3(0.25mL)を氷水浴中で>4分予冷した小ガラス圧力管中で組み合わせ、Branson Digital Sonifier 250を使用して、氷浴上で、50%振幅で40秒間超音波処理した。次いで溶液4(3mL)を一次エマルションに加え、ボルテックス混合して乳状分散液を作製し、次いでBranson Digital Sonifier 250を使用して、氷浴上で、30%振幅で60秒間超音波処理することによって二次(W1/O/W2)エマルションを形成した。この二次エマルションを、PBS1×(30mL)を含有する開放50mLビーカーに加えた。第2の同一のダブルエマルション製剤を上記のとおり調製し、最初のものと同じ50mLビーカーに加えた。2つの調製剤を室温で2時間撹拌してジクロロメタンを蒸発させ、懸濁液中のナノ担体を形成させた。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfで50分間回転し、上清を除去し、ペレットをPBS1×に再懸濁することによって、懸濁ナノ担体の一部分を洗浄した。この洗浄手順を繰り返し、次いでペレットをPBS1×に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。懸濁液は、使用まで、-20℃で凍結して保管した。
【表7】
【0214】
NP[GSK1059615]材料および方法
材料
GSK1059615は、MedChem Express(11 Deer Park Drive, Suite 102D Monmouth Junction, NJ 08852)から購入した(製品コードHY- 12036)。ラクチド:グリコリド比1:1および固有粘度0.24dL/gのPLGAを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード5050 DLG 2.5A)。およそ5,000Daのメチルエーテル末端PEGブロックおよび0.26DL/gの全体的な固有粘度を有するPLA-PEG-OMeブロックコポリマーを、Lakeshore Biomaterials(756 Tom Martin Drive, Birmingham, AL 35211)から購入した(製品コード100 DL mPEG 5000 5K-E)。Cellgro Phosphate-buffered saline 1X pH 7.4(PBS1×)は、Corning(9345 Discovery Blvd. Manassas, VA 20109)から購入した(製品コード21-040-CV)。
【0215】
方法
以下のとおりに溶液を調製した:
溶液1:PLGA(125mg)およびPLA-PEG-OMe(125mg)を10mLのアセトンに溶解した。溶液2:GSK1059615を、1mLのN-メチル-2-ピロリジノン(NMP)中10mgで調製した。
【0216】
溶液1(4mL)および溶液2(0.25mL)を小ガラス圧力管中で組み合わせ、この混合物を、20mLの超純水を含有する250mLの丸底フラスコに撹拌下、滴下して加えることにより、ナノ担体を調製した。このフラスコをロータリーエバポリーション装置に取り付け、減圧下アセトンを除去した。ナノ担体懸濁液を遠心分離管に移し、75,600rcfおよび4℃で50分間遠心分離し、上清を除去し、ペレットをPBS1×中に再懸濁することによって、ナノ担体の一部分を洗浄した。洗浄手順を繰り返し、ペレットをPBS1×に再懸濁して、ポリマー基準で10mg/mLの公称濃度を有するナノ担体懸濁液を達成した。洗浄したナノ担体溶液を、次いでPallの1.2μmPESメンブランシリンジフィルター(部品番号4656)を使用してろ過した。同一のナノ担体溶液を上記のとおりに調製し、ろ過ステップ後に最初のものと共に貯蔵した。この均質な懸濁液は、-20℃で凍結して保管した。
【0217】
ナノ担体のサイズは動的光散乱により決定した。ナノ担体中のGSK1059615の量は351nmにおけるUV吸収により決定した。懸濁液1mL当たりの総乾燥ナノ担体質量は比重測定法により決定した。
【表8】
【0218】
C57BL/6同齢(5~6週)雌性マウスに、-21日および-14日に、塩水(非処置)、1.2mgのラパマイシン含有ナノ担体(NP[ラパ])(第1の投薬)または8mgのGSK1059615積載ナノ担体(NP[GSK1059615])のいずれかと組み合わせた1.1mgの全オボアルブミン積載ナノ担体(NP[OVA])を、尾静脈においてi.v.注射した。
【0219】
第0日に、全ての動物に、2μgのCpGと混和された25μgの粒子状OVA(pOVA)を後肢においてs.c.注射し、続いて第7および14日に、25μgのpOVAだけを注射した(第2の投薬)。第21日に抗体価を測定した。いずれかの処置の非存在下では、動物は、抗OVAIgG抗体価によって測定され得るOVAに対する強力な免疫応答を現した。図13に示された第21日の抗体価は、同じ溶液中でカプセル化OVAと併用投与された合成寛容原性ナノ担体の2回の用量(NP[OVA]+NP[ラパ]またはNP[GSK1059615])が、OVA+CpGの1回の注射およびOVA単独の2回の注射後であっても、OVAへの抗体形成を低減するのに有効であったことを実証している。
【0220】
これらの結果は、カプセル化免疫抑制剤(ラパマイシンおよびGSK1059615など)が、タンパク質と併用送達されたときに、多重のチャレンジに対しかつ長期にわたり、そのタンパク質への抗体形成を防止し得るということを示している。さらに、この例は、望ましくない液性免疫応答を低減するのに有効な、第1および第2の投薬のレジメンを提供する。
【0221】
例16:合成ナノ担体およびHUMIRA/アダリムマブを使用する本発明の投薬(予言的)
例11の合成ナノ担体およびHUMIRAを、HUMIRAに対する抗薬物抗体を現すリスクのあるヒト対象における第1の投薬における使用のために調製する。第1の投薬は、HUMIRA(40mg)および例11の合成ナノ担体(50mg)のq2週併用投与3回を含む。第2の投薬は、HUMIRA単独(合成ナノ担体なし)のq2週投与3回を含む。第1の投薬の後に第2の投薬が続く投与スケジュールを作る。ヒト対象を、第1の投薬の前および第2の投薬の後に(標準的なELISA技術を使用して)抗HUMIRA抗体について評価する。2つの抗HUMIRA抗体の読み出しのいかなる違いにも注目する。
【0222】
例17:合成ナノ担体およびHUMIRA/アダリムマブを使用する本発明の投薬(予言的)
例1の合成ナノ担体、ナノ担体ID1を調製する。それらをHUMIRAと組み合わせて、表1に示される以下のスケジュールに従って併用投与される第1の投薬および第2の投薬において投与する:
【0223】
【表9】
【0224】
例18:合成ナノ担体およびmmRNAを使用する本発明の投薬(予言的)
例11の合成ナノ担体および修飾mRNAをコードするアスパラギナーゼ(一般に、米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)に従う調製に従ってなされる(「mmRNA」))を、mmRNAに対して抗薬物抗体応答を表すリスクのあるヒト対象における第1の投薬における使用のために調製する。第1の投薬は、mmRNA(100ng)および例11の合成ナノ担体(50mg)のq2週併用投与3回を含む。第2の投薬は、mmRNA単独(合成ナノ担体なし)のq2週投与3回を含む。第1の投薬の後に第2の投薬が続く投与スケジュールを作る。ヒト対象を、第1の投薬の前および第2の投薬の後に(標準的なELISA技術を使用して)抗mmRNA抗体について評価する。2つの抗mmRNA抗体の読み出しのいかなる違いにも注目する。
【0225】
例19:ナノ結晶性ラパマイシンによるニワトリオボアルブミンに対する抗原特異的寛容原性応答(予言的)
C57BL/6同齢(5~6週)雌性マウスに、-21日および-14日に、塩水(非処置)、1.1mgの全オボアルブミンおよび1.2mgのナノ結晶性ラパマイシンを、尾静脈においてi.v.注射する(第1の投薬)。
第0日に、全ての動物に、2μgのCpGと混和された25μgの粒子状OVA(pOVA)を後肢においてs.c.注射し、続いて25μgのpOVAを第7および14日に注射する(第2の投薬)。第21日に抗体価を測定する。いずれかの処置の非存在下において、動物は、OVAに対して、抗OVAIgG抗体価により測定し得る強力な免疫応答を現す。
【0226】
ナノ結晶性ラパマイシンと組み合わせてOVAを受けた動物におけるOVA特異的IgG抗体の低減は、免疫抑制剤のナノ結晶性形態が、タンパク質と併用送達される場合、多重のチャレンジに対しかつ長期にわたり、そのタンパク質に対する抗体形成を防止し得ることを示す。
【0227】
例20:ナノ結晶性免疫抑制剤およびHUMIRA/アダリムマブを使用する本発明の投薬(予言的)
ナノ結晶性ラパマイシンを購入する。ナノ結晶性ラパマイシンをHUMIRAと組み合わせて、表1に示される以下のスケジュールに従って併用投与される第1の投薬および第2の投薬において投与する。
【0228】
例21:ナノ結晶性免疫抑制剤およびmmRNAを使用する本発明の投薬(予言的)
ナノ結晶性ラパマイシンを購入し、修飾mRNAをコードするアスパラギナーゼ(一般に、米国特許出願第2013/0115272号(Fougerolles et al.)に従う調製に従ってなされる(「mmRNA」))を、mmRNAに対して抗薬物抗体応答を表すリスクのあるヒト対象における第1の投薬における使用のために調製する。第1の投薬は、mmRNA(100ng)およびナノ結晶性ラパマイシン(50mg)のq2週併用投与3回を含む。第2の投薬は、mmRNA単独(ナノ結晶性ラパマイシンなし)のq2週投与3回を含む。第1の投薬の後に第2の投薬が続く投与スケジュールを作る。ヒト対象を、第1の投薬の前および第2の投薬の後に(標準的なELISA技術を使用して)抗mmRNA抗体について評価する。2つの抗mmRNA抗体の読み出しのいかなる違いにも注目する。
図1A-B】
図2
図3A-B】
図4
図5
図6
図7
図8A-B】
図9A-B】
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-12-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【外国語明細書】