(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043110
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】インスリン感受性を判断するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20220308BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021196630
(22)【出願日】2021-12-03
(62)【分割の表示】P 2019500491の分割
【原出願日】2017-06-22
(31)【優先権主張番号】16178558.9
(32)【優先日】2016-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
3.ANDROID
4.iPhone
5.Linux
6.UNIX
7.WINDOWS
8.VXWORKS
9.iOS
10.OS X
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベントスン, ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】アーラドッティル, ティナ ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】ブロックマイヤー, ピート
(57)【要約】 (修正有)
【課題】インスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するための、方法、デバイス、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読キャリアを提供する。
【解決手段】対象者は、短時間作用型インスリン薬剤レジメン及び長期作用型インスリン薬剤レジメンを処方される。適格な空腹時イベントが生じる時、対象者の基礎インスリン感受性推定は、空腹時イベント中の長期作用型レジメンによって指定される長期作用型インスリン薬剤投薬に基づく予想される空腹時血糖値、空腹時イベントと同時に発生するグルコース測定値及び先のインスリン感受性因子を使用して更新される。基礎インスリン感受性因子曲線は、更新された基礎インスリン感受性推定から算出される。
【選択図】
図9C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短時間作用型インスリン薬剤レジメン(214)および長期作用型インスリン薬剤レジメン(208)両方を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメン(206)におけるパラメータを推定するためのデバイス(250)であって、
1つまたは複数のプロセッサおよびメモリを含み、
前記メモリは、前記1つまたは複数のプロセッサによって実行される時、
A)第1の時間帯にわたって取られる前記対象者の複数のグルコース測定値、および、前記複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値(222)に対して、対応する測定が行われた時を表すタイムスタンプ(224)を含む、第1のデータセット(220)を得ることと、
B.1)前記第1の時間帯内に前記対象者によって始められる第1の空腹時イベントが適格であるとみなされる時、前記第1の空腹時イベントの発生時に前記対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)(230)を行うことであって、当該推定は、(i)前記長期作用型インスリン薬剤レジメンにおける長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬に基づく前記第1の空腹時イベント中の予想される空腹時血糖値(FBG
expected)、(ii)前記第1の空腹時イベントと同時に発生する前記第1のデータセットからの前記複数のグルコース測定値の一部から得られる、前記第1の空腹時イベント中の前記対象者の空腹時グルコース値(
)、および、(iii)前記第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の前記対象者の基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i-p、t)を使用する、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)(230)を行うこと、または、
B.2)前記第1の時間帯内に短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際に前記対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)(232)を行うことであって、当該推定は、(i)前記短時間作用型インスリン薬剤による前記補正ボーラスに基づく予想される血糖値(BG
expected)、(ii)前記補正ボーラスを行った後の前記対象者のグルコース値(
)であって、
は、前記補正ボーラスを行った後の時間帯と同時に発生する前記第1のデータセットからの前記複数のグルコース測定値の一部から得られる、グルコース値、および、(iii)前記短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される前記対象者のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i-p、t)を使用する、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)(232)を行うことによって、B)推定を判断することと、を行う方法を行う命令を記憶する、デバイス(250)。
【請求項2】
前記方法は、C)前記第1の空腹時イベントの発生時の前記対象者に対する推定された前記基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)、およびB.1)において前記基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)を行うことに応答して、前記第1の空腹時イベント前に生じる前記適格な空腹時イベント中の前記対象者の基礎インスリン感受性因子(ISFbasal、i-p、t)に応じて前記ボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)を推定することをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記方法は、D)短時間作用型インスリン薬剤による前記補正ボーラスを行う際の前記対象者に対する推定された前記ボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)、およびB2)においてボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)を行うことに応答して、前記短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される前記対象者の前記ボーラスインスリン感受性因子(ISFbolus、i-p、t)に応じて前記基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)を推定することをさらに含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記方法は、(i)前記第1の空腹時イベントの発生時の前記対象者に対する前記推定された基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)、(ii)前記第1の空腹時イベント前に生じる前記適格な空腹時イベント中の前記対象者の前記基礎インスリン感受性因子(ISFbasal、i-p、t)、および(iii)B.1)および/またはD)において基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)を推定することに応答した先の前記基礎感受性因子曲線(ISFbasal、i-p)に応じて、E)基礎インスリン感受性因子曲線(ISFbasal、i)(234)を推定することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記方法は、(i)短時間作用型インスリン薬剤による前記補正ボーラスを行う際の前記対象者に対する前記推定されたボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)、(ii)前記短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される前記対象者の前記ボーラスインスリン感受性因子(ISFbolus、i-p、t)、および(iii)B2)および/またはC)においてボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)を行うことに応答した先の前記ボーラス感受性因子曲線(ISFbolus、i-p)に応じて、F)ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISFbolus、i)(236)を推定することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記方法は、(i)F)の前記推定されたボーラスインスリン感受性因子曲線(ISFbolus、i)、および前記対象者に対する先の推定されたボーラスインスリン感受性因子曲線に応じた前記ボーラスインスリン感受性曲線(ISFbolus)、または(ii)E)の前記推定された基礎インスリン感受性因子曲線(ISFbasal、i)、および前記対象者に対する先の推定された基礎インスリン感受性因子曲線に応じた前記基礎インスリン感受性曲線(ISFbasal)を更新することを、G)更新することと、H)前記複数のグルコース測定値の一部からのグルコース測定値、および更新された前記ボーラスインスリン感受性曲線(ISFbolus)または更新された前記基礎インスリン感受性曲線(ISFbasal)を使用することによって、前記対象者における目標の空腹時グルコース値を達成するために前記短時間作用型インスリン薬剤の推奨用量を提供することと、をさらに含む、請求項4または5に記載のデバイス。
【請求項7】
B.1)において前記対象者に対する前記基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)を行うことは、
のように計算される、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の空腹時イベントは、(i)前記対象者が、前記第1の空腹時イベントの12時間前に前記短時間作用型インスリン薬剤の補正ボーラスを取っていない時、および、(ii)前記対象者が、第1の空腹時イベントの14時間前にそれぞれの食事なし低血糖イベントによる前記短時間作用型インスリン薬剤の食事ボーラスを取っている時、適格であるとみなされる、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
B.2)において前記ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)を行うことは、
のように計算される、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
E)において前記基礎感受性因子曲線(ISF
basal、i)を推定することは、
を計算することを含み、ISF
basal、i-pは先の基礎感受性因子曲線推定を表す、請求項4から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
F)において前記ボーラス感受性因子曲線(ISF
bolus、i)を推定することは、
を計算することを含み、ISF
bolus、i-pは先のボーラス感受性因子曲線推定を表す、請求項5から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の空腹時イベントの発生時の前記対象者に対する前記推定された基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)、およびB.1)において前記基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)を行うことに応答して前記第1の空腹時イベント前に生じる前記適格な空腹時イベント中の前記対象者の前記基礎インスリン感受性因子(ISF
basal、i-p、t)に応じて前記ボーラスイン感受性曲線(ISF
bolus、i)を推定することは、
を計算することを含み、ISF
bolus、i-pは先のボーラス感受性因子曲線推定を表す、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
短時間作用型インスリン薬剤による前記補正ボーラスを行う際の前記対象者に対する前記推定されたボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)、およびB2)においてボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)を行うことに応答して、前記短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される前記対象者の前記ボーラスインスリン感受性因子(ISF
bolus、i-p、t)に応じて前記基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)を推定することは、
を計算することを含み、ISF
basal、i-pは先の基礎感受性因子曲線推定を表す、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン投薬レジメンにおけるパラメータを推定するための方法であって、
A)第1の時間帯にわたって取られる前記対象者の複数のグルコース測定値、および、前記複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値(222)に対して、対応する測定が行われた時を表すタイムスタンプ(224)を含む、第1のデータセット(220)を得ることと、
B.1)前記第1の時間帯内に前記対象者によって始められる第1の空腹時イベントが適格であるとみなされる時、前記第1の空腹時イベントの発生時に前記対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)(230)を行うことであって、当該推定は、(i)前記長期作用型インスリン薬剤レジメンにおける長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬に基づく前記第1の空腹時イベント中の予想される空腹時血糖値(FBG
expected)、(ii)前記第1の空腹時イベントと同時に発生する前記複数のグルコース測定値の一部から得られる、前記第1の空腹時イベント中の前記対象者の空腹時グルコース値(
)、および、(iii)前記第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の前記対象者の基礎インスリン感受性因子(ISF
basal、i-p、t)を使用する、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)(230)を行うこと、または、
B.2)前記第1の時間帯内に短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際に前記対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)(232)を行うことであって、当該推定は、(i)前記短時間作用型インスリン薬剤による前記補正ボーラスに基づく予想される血糖値(BG
expected)、(ii)前記補正ボーラスを行った後の前記対象者のグルコース値(
)であって、
は、前記補正ボーラスを行った後の時間帯と同時に発生する前記複数のグルコース測定値の一部から得られる、グルコース値、および、(iii)前記短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される前記対象者のボーラスインスリン感受性因子(ISF
bolus、i-p、t)を使用する、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)(232)を行うことによって、B)推定を判断することと、を含む、方法。
【請求項15】
1つまたは複数のプロセッサによって実行される時、請求項14に記載の方法を行う命令を含んで提供される、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、患者および医療関係者がインスリン感受性を推定する際に支援し、かつこのような情報を、対象者の目標の空腹時血糖値を達成するために短時間作用型インスリン薬剤の推奨用量を提供するなどの目的のために使用するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病は、正常な生理的インスリン分泌の進行性崩壊によって特徴付けられる。健常人では、膵臓β細胞による基礎インスリン分泌は、食間の長期間に定常のグルコース値を維持するために連続して生じる。また、健常人では、食事に反応して最初の第1段階のスパイクにインスリンが急速に放出されるといった食事分泌があり、その後、インスリン分泌は長引き、2~3時間後に基礎値に戻る。
【0003】
インスリンは、グルコース、アミノ酸、および脂肪酸の骨格筋および脂肪内への細胞取込を促進することによって、および、肝臓からのグルコースの生産を抑制することによって、血糖を低下させるためにインスリン受容体に結合するホルモンである。正常な健常人では、生理的基礎インスリン分泌および食事インスリン分泌は、正常血糖を維持し、これは、空腹時血漿グルコース濃度および食後血漿グルコース濃度に影響する。基礎インスリン分泌および食事インスリン分泌は、2型糖尿病では損なわれ、早期の食後反応がない。これらの有害事象に対処するために、2型糖尿病の患者にはインスリン治療レジメンが提供される。1型糖尿病の患者にもインスリン治療レジメンが提供される。
【0004】
一部の糖尿病患者は、膵臓β細胞インスリン分泌の欠陥を補うために基礎インスリン治療レジメンのみを必要とする。他の糖尿病患者は、基礎インスリン治療およびボーラスインスリン治療を両方とも必要とする。
【0005】
基礎インスリン治療およびボーラスインスリン治療を両方とも必要とする患者は、例えば、1日に1回または2回の周期的な基礎インスリン薬剤治療および、食事と共に1回または複数回の、ボーラスインスリン薬剤治療を受ける。このような頻回注射(MDI)インスリン療法は通常、各食事の前の即効性インスリン注射、および1日1~2回の長期作用型インスリン注射を伴う。自身の糖尿病を管理するためのインスリン療法を受けているほとんどの患者にとって、必要とするインスリンがどのくらいなのかを判断するのは困難である。用量の程度は、患者が特定の期間にわたってどのくらいの炭水化物を消費したのか、自身の現在の血糖値は目標の値とどれほど違うのか、および、インスリン感受性などの現在の生理的状態に左右される。在来、即効性インスリン用量を算出するために、2つのパラメータ、(i)グルコース値を所望の目標値にするのにどれくらいのインスリンが必要とされるのかを算出するために使用されるインスリン感受性因子(ISF)、および(ii)食事を考慮するためにどれくらいのインスリンが必要とされるのかを算出するために使用される炭水化物対インスリン比(CIR)が使用される。これらの因子は、用量に対するインスリン薬剤量を算出するために使用されるため、正確であり、かつ患者の現在の生理的状態に関連していることが重要である。その他の場合、投薬は不正確となり、次善の治療、ならびに高血糖イベントおよび低血糖イベントが出現することになる。
【0006】
患者の生理的状態は、自身のインスリン感受性に影響し、それによって、食事および高すぎるグルコース値を考慮するためにどのくらいのインスリンが必要とされるのかに影響する。インスリン感受性が変化する状況は、インスリン感受性が典型的には減少する病気の期間(例えば、発熱、インフルエンザなど)を含む。該状況はまた、高いレベルの身体活動の期間を含み、この時、インスリン感受性は典型的には増大する。該状況はさらに、インスリン感受性を減少させる可能性がある高いレベルのストレスの期間を含むが、典型的にはストレスがなくなると回復する。患者は、これらの期間中に自身の血糖値をコントロールする際に高いレベルの困難さを経験する。それらの既定のパラメータは、用量算出に適用せず、高血糖イベントおよび低血糖イベント、ならびに、コントロール不能感に遭遇する。
【0007】
患者のISF値およびCIR値を判断することは、医療従事者および患者に対する課題であり、広範囲の研究を必要とする。医療従事者がISFを精確に推定するために、HCPは、グルコース測定データ、インスリン用量、および、患者の生理的状態に影響する場合がある他の情報を含む、広範囲の信頼できるデータにアクセスする必要がある。このデータは、患者によって提供される必要があり、これには時間がかかり不便である。多くの医療従事者にとっては、データの全てからISFを判断するのは困難であり、1つまたは2つのデータ点のみに基づいた値で推測する傾向がある。さらにまた、患者は、患者の糖尿病管理処方および/またはこのさまざまな因子に対する適切な調整を行うために医療従事者の所まで行く回数が不十分である恐れがある。また、医療従事者および患者は、ストレス、病気などの期間中の変化を捉えられるほど頻繁にインスリン感受性を算出することはできない。
【0008】
従来の自動用量計算器は典型的には、即効性インスリンに対するグルコース反応に基づくISF推定を更新後、食事関連用量または補正ボーラスのどちらかが行われる。このことは問題を引き起こす。例えば、ISFが食事関連用量に基づいて推定される場合、CHO計数の不確実性が高いことにより、高い不確実性が予想され得る。ISFが補正ボーラスのみに基づいて推定される場合、これには、補正ボーラスが頻繁に行われる必要がある。これが行われない場合、例えば、患者は比較的良好な血糖コントロール状態にあるため、ISFは頻繁に更新されず、増大したインスリン感受性の期間は検出されない場合がある。
【0009】
国際公開第2012/122520号パンフレットには、患者が使用する長期作用型インスリンはインスリンに対する異なる感受性を有する場合があることが開示されている。これにはさらに、空腹時血糖値の測定値が測定可能であり、かつ、所定の閾値と比較して、投与量推奨アルゴリズムを使用して、空腹時血糖値および閾値についてペースを調整した用量を推定することができることが開示されている。この文献にはまた、血糖値の測定値を使用して、閾値範囲を達成するまで、長期作用型インスリン用量を滴定可能であることが開示されている。国際公開第2012/122520号パンフレットはさらに、患者のインスリン感受性が、患者の空腹時血糖値および空腹時インスリン値に基づき得ることを示している。しかしながら、国際公開第2012/122520号パンフレットは、用量推定のためのパラメータが、特に補正ボーラスが行われない場合に、最新であることを保証するという問題を解決していない。
【0010】
上記の背景を想定して、当技術分野に必要とされるのは、ISF、CSF、および関連のパラメータなどのインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するための満足のいくやり方を提供するシステムおよび方法である。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、インスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するための、方法、デバイス、コンピュータプログラム、および、コンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読キャリアを提供することによって、当技術分野における上記に示される必要性に対処する。とりわけ、本開示の実施形態は、一般的に、糖尿病患者に対するインスリン治療を管理する際に患者および医療関係者を支援するための方法および装置に関する。1つの態様では、インスリン感受性は、少なくとも2つのタイプのインスリン薬剤、例えば、即効性インスリン薬剤および長期作用型インスリン薬剤が使用される場合の、連続的なグルコース監視データおよびインスリンペンデータのデータセットに基づいて推定される。本開示の第1の態様では、短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのデバイスが提供される。該デバイスは、1つまたは複数のプロセッサおよびメモリを含み、メモリは、1つまたは複数のプロセッサによって実行される時、
A)第1の時間帯にわたって取られる対象者の複数のグルコース測定値、および、複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値に対して、対応する測定が行われた時を表すタイムスタンプを含む、第1のデータセットを得ることと、
B.1)第1の時間帯内に対象者によって始められる第1の空腹時イベントが適格であるとみなされる時、第1の空腹時イベントの発生時に対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)を行うことであって、推定することは、(i)長期作用型インスリン薬剤レジメンにおける長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬に基づく第1の空腹時イベント中の予想される空腹時血糖値(FBG
expected)、(ii)第1の空腹時イベントと同時に発生する第1のデータセットからの複数のグルコース測定値の一部から得られる、第1の空腹時イベント中の対象者の空腹時グルコース値(
)、および、(iii)第1の空腹時イベント前にまたはより先に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性因子(ISF
basal、i-p、t)を使用する、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)を行うこと、および/または、
B.2)第1の時間帯内に短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際に対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)を行うことであって、推定することは、(i)短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスに基づく予想される血糖値(BG
expected)、(ii)補正ボーラスを行った後の対象者のグルコース値(
)であって、
は、補正ボーラスを行った後の時間帯と同時に発生する第1のデータセットからの複数のグルコース測定値の一部から得られる、グルコース値、および、(iii)短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性因子(ISF
bolus、i-p、t)を使用する、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)を行うことによって、B)パラメータの推定を判断することと、を行う方法を行う命令を記憶する。
【0012】
本明細書によって、薬剤レジメンにおけるパラメータの新規のパラメータ推定と、パラメータの先のパラメータ推定との間の関数の判断を可能にするISF推定器が提供され、この場合、関数は、B)における、インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t、ISFbolus、i、t)および先のインスリン感受性推定(ISFbasal、i-p、t、ISFbolus、i-p、t)に依存している。B.1)における第1の空腹時イベント、またはB.2)における短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスに関連して行われることは、現時点の発生とみなされ、B.1)における第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント、またはB.2)における短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスに関連して行われることは、先の発生とみなされる。新規のパラメータ推定およびインスリン感受性推定(ISFbasal、i、t、ISFbolus、i、t)は現時点の発生に応答して得られることが可能であり、先のパラメータ推定および先のインスリン感受性推定は先の発生に応答して得られることが可能である。
【0013】
本明細書によって、基礎インスリン感受性推定を行うことによって、B.1)における、基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)と、第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i-p、t)との間の基礎関係を推定することを可能にすることによって、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定を可能にするISF推定器が提供される。この場合、推定されたインスリン感受性の変化を使用して、ボーラスインスリン感受性推定を算出して、インスリンレジメンにおける、基礎インスリン感受性因子曲線または異なるパラメータを算出することができる。同様に、推定器は、ボーラスインスリン感受性推定を行うことが、B.2)における、ボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)と、短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスが行われることに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i-p、t)との間のボーラス関係を推定することを可能にするため、ボーラスインスリン感受性推定に基づくパラメータ更新を可能にすることによって、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定を可能にし、推定されたインスリン感受性の変化を使用して、基礎インスリン感受性推定を算出して、インスリンレジメン内の、ボーラスインスリン感受性因子曲線または異なるパラメータを算出することができる。ボーラスインスリン注射および基礎インスリン注射に基づくISF推定器が提供され、この場合、新規の基礎ISF推定またはボーラスISF推定は、空腹時イベント中の測定された血糖値と予想された血糖値との間の偏差、または補正ボーラスを行った後の測定された血糖値と予想された血糖値との間の偏差、および先の基礎ISF推定またはボーラスISF推定に基づき、効果的には、例えば、新規のボーラスISF推定がボーラスISFまたは基礎ISFの先の推定それぞれに基づくことができるような、より堅牢なISF推定器が可能になる。インスリン感受性推定はインスリン薬剤の用量を推定するための基準であるため、ISF推定器は、確実に、新規の用量が更新されたパラメータに基づくようにする。本開示では、インスリン感受性因子(ISF)は、補正ボーラスの後のグルコース値の低下、および/または基礎インスリン注射の後の空腹時グルコース値反応の変化に基づいて、推定される。
【0014】
B.1)における、基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)と、第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性因子(ISFbasal、i-p、t)との間の関係の推定によって、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定が可能になり、この場合、推定されたインスリン感受性の変化を使用して、ボーラスインスリン感受性推定を算出する、または基礎インスリン感受性因子曲線を算出することができる。基礎インスリン感受性因子曲線は、例えば24時間の定期的な期間中の対象者の基礎インスリン感受性因子のISFプロファイルである。さらにまた、または代替的には、B.2)における、ボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)と、短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性因子(ISFbolus、i-p、t)との間の関係の推定によって、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定が可能になり、この場合、推定された、インスリン感受性の変化を使用して、基礎インスリン感受性推定を算出する、またはボーラスインスリン感受性因子曲線を算出することができる。基礎インスリン感受性因子曲線は、例えば24時間の定期的な期間中の対象者の基礎インスリン感受性因子のISFプロファイルである。換言すれば、本明細書による第1の態様において、基礎ISF推定およびボーラスISF推定の系統的な更新、および/または基礎インスリンISF曲線およびボーラスインスリンISF曲線の系統的な更新を可能にするデバイスおよび方法が提供される。
【0015】
さらなる態様では、方法は、C)第1の空腹時イベントの発生時の対象者に対する推定された基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)、およびB.1)において基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)を行うことに応答して、第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性因子(ISFbasal、i-p、t)に応じてボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)を推定することをさらに含む。
【0016】
関数関係による基礎ISFの変化とボーラスISFの変化との間の関数関係を概算することによって、基礎ISFに対して特定される変化をボーラスISFに対する変化を推定するために使用できる。概算する関数関係は、例えば比例していることが可能である。処置中、基礎ISFの変化の特定および推定は新規のボーラスISF推定を推定するための基準をもたらす。高次、例えば、二次、三次、または四次の関数を概算することも、そのレベルの精度が必要とされる場合、可能である。いくつかの実施形態では、基礎インスリン感受性推定は、空腹期間後に得られ、かつ、何らかの理由で対象者がいくつかの補正ボーラスを有する状況においてとりわけ有用である、ボーラスインスリン感受性推定を推定または更新するために使用される。
【0017】
さらなる態様では、方法は、D)短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際の対象者に対する推定されたボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)、およびB2)においてボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)を行うことに応答して、短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性因子(ISFbolus、i-p、t)に応じて基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)を推定することをさらに含む。
【0018】
同様に、概算する関数関係による基礎ISFの変化とボーラスISFの変化との間の関数関係を概算することによって、ボーラスISFに対して特定される変化を基礎ISFに対する変化を推定するために使用できる。概算する関数関係は、例えば、一定のまたは比例する関数関係とすることができる。処置中、基礎ISFの変化の特定および推定は新規のボーラスISF推定を推定するための基準をもたらす。高次、例えば、二次、三次、または四次の関数を概算することも、そのレベルの精度が必要とされる場合、可能である。いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン感受性推定は、補正ボーラスの後に得られ、かつ、何らかの理由で対象者が適格とみなされるいくつかの空腹期間を有する状況においてとりわけ有用である、基礎インスリン感受性推定を推定または更新するために使用される。
【0019】
さらなる態様では、方法は、(i)第1の空腹時イベントの発生時の対象者に対する推定された基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)、(ii)第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性因子(ISFbasal、i-p、t)、および(iii)B.1)および/またはD)において基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)を推定することに応答した先の基礎感受性因子曲線(ISFbasal、i-p)に応じて、E)基礎インスリン感受性因子曲線(ISFbasal、i)を推定することをさらに含む。
【0020】
関数関係による、定期的な期間におけるある時間での基礎ISFの変化と、定期的な期間における他の時間での基礎ISFの変化との間の関数関係を概算することは、定期的な期間における別の時間に、現時点のISFに対して特定された変化をISFに対する対応する変化を推定するために使用できるようにし、これは基礎用量の今後の推定に使用可能である。関数関係は例えば、比例していることが可能である。
【0021】
さらなる態様では、方法は、(i)短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際の対象者に対する推定されたボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)、(ii)短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性因子(ISFbolus、i-p、t)、および(iii)B2)および/またはC)においてボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)を行うことに応答した先のボーラス感受性因子曲線(ISFbolus、i-p)に応じて、F)ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISFbolus、i)を推定することをさらに含む。
【0022】
概算する関数関係による、定期的な期間におけるある時間でのボーラスISFの変化と、定期的な期間における他の時間でのボーラスISFの変化との間の関数関係を概算することは、定期的な期間における別の時間に、現時点のISFに対して特定された変化をISFに対する対応する変化を推定するために使用できるようにし、これはボーラス用量の今後の推定に使用可能である。概算する関数関係は例えば、一定のまたは比例する関数関係とすることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、ISFは、現在の生理学的環境に対して同様であることが知られている、過去数日間のまたは具体的な過去の期間のどちらかである、過去の推定範囲にわたる加重平均である。いくつかの実施形態では、ISFは、新規のデータが利用可能になるとすぐに更新されるが、非アドヒアランス中は保留にされる。非アドヒアランスイベントの例には、例えば、忘れられた夕食ボーラスの後に、グルコース値が他の場合よりも高くなるため、このデータが精確なISF推定に有用でないことが挙げられる。ISFの大きな変化が検出される場合、システムは、ユーザに対して、説明の入力を求める、または温度計、血圧計、または活動量計などのウェアラブルからのデータを使用することができる。このようなデバイスによって大きな変化が確認される場合、推定範囲は既知の過去の同様の期間に短縮されるまたは移動する。ISFおよびCIRが比例的に相関すると仮定すると、CIRはISFの変化に従って比例的に更新される、すなわち、インスリン感受性における増大が観察される場合、典型的には、食事のCHOを考慮するために必要とされるインスリンは少なくなる。食事関連用量ではなく補正ボーラスのみに基づいてISFを推定することよって、計数するCHOの不確実性および食後のBG挙動は排除される。さらに、基礎注射後の空腹時グルコースにおける反応に基づいてISFを推定することによって、単にボーラスに基づいて行われる場合よりも頻繁なISF推定が利用可能である。さらに、2つの異なるインスリンに対する反応に基づいてISFの変化を測定することによって、ISF推定に堅牢性が加えられる。
【0024】
活動モニタおよび温度測定器などのウェアラブルデバイスを加えることは、追加の特徴を可能にする。例えば、温度測定器によって、(i)病気によるISFの変化が予想される時を知る見通しが立ち、インスリン薬剤滴定を、病気の間保留に設定可能にし、検出されるISFの変化が一定のより高い重みとされる時間に対しては警告される。活動モニタによって、活動が高められたことによるISFの変化が予想される時を知ることができ、検出されるISFの変化に関する警告は、一定のより高い重みとすることができる。
【0025】
ゆえに、開示されるシステムおよび方法の主な利点は、従って、病気、ストレス、および増大したレベルの活動などの、長期の生理学的変化および逸脱の期間中のより正確なインスリン投与量をもたらす、インスリン感受性のより堅牢な推定である。
【0026】
これらの技法の応用として、糖尿病患者または医療関係者には、糖尿病患者に対する目標の空腹時血糖値を達成するために短時間作用型インスリン薬剤の推奨用量を提供する改善された基準としての役割を果たす、精確な基礎インスリン感受性因子曲線および/またはボーラスインスリン感受性因子曲線が提供される。
【0027】
本開示の1つの態様では、短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのシステムおよび方法が提供される。第1のデータセットが得られる。第1のデータセットは、ある時間帯にわたって取られる対象者の複数のグルコース測定値、および、複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値に対して、対応する測定が行われた時を表すタイムスタンプを含む。
【0028】
対象者に対して、新規の基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)または新規のボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)が行われる。
【0029】
第1のデータセットによって包含される期間内に対象者によって始められる第1の空腹時イベントが適格であるとみなされる時、第1の空腹時イベントの発生時に対象者に対して基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)が行われる。いくつかの実施形態では、第1の空腹時イベントは、(i)対象者が、第1の空腹時イベントの12時間前に短時間作用型インスリン薬剤の補正ボーラスを取っていない時、および、(ii)対象者が、第1の空腹時イベントの14時間前にそれぞれの食事なし低血糖イベントによる短時間作用型インスリン薬剤の食事ボーラスを取っている、例えば、食事ボーラスが、このボーラスが低血糖イベントによって取られなかった場合を除いてそれぞれの食事と共に取られた時、適格であるとみなされる。基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)は、(i)第1の空腹時イベント中の長期作用型インスリン薬剤レジメンにおける長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬に基づく予想される空腹時血糖値(FBG
expected)、(ii)第1の空腹時イベントと同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる、第1の空腹時イベント中の対象者の空腹時血糖値(
)、および、(iii)第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者のインスリン感受性因子(ISF
basal、i-p、t)を利用する。いくつかの実施形態では、対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)は、
のように計算される。
【0030】
基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)は、新規の基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)が行われる時に推定される。新規の基礎インスリン感受性因子推定(ISF
basal、i、t)が第1の適格な空腹時イベントの発生時の対象者の基礎インスリン感受性を表すのに対し、基礎インスリン感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)は、1日の間といった、所定の定期的な時間帯にわたる対象者の基礎インスリン感受性因子を表す。しかしながら、新規の基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)を使用して、本開示の教示に従って基礎インスリン感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)を更新する。いくつかの実施形態では、基礎感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)は、次の式によって計算される。
式中、ISF
basal、i-pは先の基礎感受性因子曲線推定を表し、ここで、tは基礎感受性因子曲線全体を指し示す役割を果たす。
【0031】
ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)は、ある期間内の短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際に対象者に対して行われる。この推定は、(i)短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスに基づく予想される血糖値(BG
expected)、(ii)補正ボーラスを行った後の対象者のグルコース値(
)であって、
は、補正ボーラスを行った後の時間帯と同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる、グルコース値、および、(iii)短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて予想される対象者のインスリン感受性因子(ISF
bolus、i-p、t)を利用する。いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)は、
のように計算される。
【0032】
ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)は、新規のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)が行われる時に行われる。新規のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i)が補正ボーラス時に対象者のボーラスインスリン感受性を表すのに対し、ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)は、1日の間といった、所定の定期的な時間帯にわたる対象者のボーラスインスリン感受性因子を表す。しかしながら、新規のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)を使用して、本開示の教示に従ってボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)を更新する。いくつかの実施形態では、ボーラス感受性因子曲線を推定することは、
を計算することを含み、式中、ISF
bolus、i-pは先のボーラス感受性因子曲線推定を表す。
【0033】
いくつかの実施形態では、さらなる推定が行われる。例えば、いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)は、新しく推定された基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)に応じて推定される。すなわち、推定された基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)が上述のように推定される時、新しく推定された基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)を使用して、ボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)を推定する。いくつかの実施形態では、推定された基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)に応じてボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)を推定することは、
を計算することを含み、式中、ISF
bolus、i-pは先のボーラス感受性因子曲線推定を表す。
【0034】
それに応じて、いくつかの実施形態では、基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)は、新しく推定されたボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)に応じて推定される。すなわち、推定されたボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)が上述のように推定される時、新しく推定されたボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)を使用して、基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)を推定する。いくつかの実施形態では、推定されたボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)に応じて基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)を推定することは、
を計算することを含み、式中、ISF
basal、i-pは先の基礎感受性因子曲線推定を表す。
【0035】
上記の実施形態には、i日目といった、i番目の時間帯の、新規の推定されたボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)および/または新規の基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)の計算が表現されている。典型的には、このi番目の時間帯(例えば、このi日目)は今日である。いくつかの実施形態では、新規の推定されたボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)が推定されている時、その後、これまでの日(またはこれまでの定期的な時間帯)からの1つまたは複数のボーラスインスリン感受性曲線推定と組み合わせられることで、更新されたボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus)を形成する。いくつかの実施形態では、このボーラスインスリン感受性因子曲線は、
を計算することによって更新され、式中、qは、ボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus)に対する所定の数の履歴更新であり、wは、正規化重みの線形または非線形ベクトルであり、nは、ISF
bolusおよびベクトルwに対する履歴更新への整数インデックスであり、ISF
bolus、nは、n番目の過去のボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus)である。
【0036】
同様に、いくつかの実施形態では、新規の推定された基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)が行われた時、その後、これまでの日(またはこれまでの定期的な時間帯)からの1つまたは複数の基礎インスリン感受性曲線と組み合わせられることで、更新された基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal)を形成する。いくつかの実施形態では、基礎インスリン感受性因子曲線を更新することは、
を計算することを含み、式中、qは、基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal)に対する所定の数の履歴更新であり、wは、正規化重みの線形または非線形ベクトルであり、nは、基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal)およびベクトルwに対する履歴更新への整数インデックスであり、ISF
basal、nは、n番目の過去の基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal)の曲線である。
【0037】
いくつかのこのような実施形態では、複数のグルコース測定値の一部からのグルコース測定値、および更新されたボーラスインスリン感受性曲線(ISFbolus)または更新された基礎インスリン感受性曲線(ISFbasal)を使用することによって、対象者における目標の空腹時血糖値を達成するための短時間作用型インスリンの推奨用量が提供される。
【0038】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の時間帯にわたって取られる対象者の複数の生理学的測定値、および複数の生理学的測定値におけるそれぞれの対応する生理学的測定値に対して、対応する生理学的測定が行われた時を表す生理学的測定タイムスタンプを含む、第2のデータセットを得ることをさらに含む。このような実施形態では、pの値、換言すれば、基礎インスリン感受性因子曲線および/またはボーラスインスリン感受性因子曲線を更新するために使用される履歴データの量は、複数の生理学的測定値によって判断される。いくつかの実施形態では、それぞれの生理学的測定値は対象者の体温の測定値であり、値pは、対象者の体温が上昇している時の期間中に低減する。いくつかの実施形態では、それぞれの生理学的測定値は対象者の活動の測定値であり、値pは、対象者の活動が高められている時の期間中に低減する。
【0039】
いくつかの実施形態では、長期作用型インスリン薬剤は、12~24時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤、または、ひとまとめにすると、12~24時間の作用持続時間を有するインスリン薬剤の混合から成り、短時間作用型インスリン薬剤は、3~8時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤、または、ひとまとめにすると、3~8時間の作用持続時間を有するインスリン薬剤の混合から成る。さらなる態様では、方法は、薬剤レジメンにおけるパラメータの新規のパラメータ推定と、パラメータの先のパラメータ推定との間の関数を判断することであって、関数は、B)における、インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t、ISFbolus、i、t)および先のインスリン感受性推定(ISFbasal、i-p、t、ISFbolus、i-p、t)に依存している、判断することをさらに含む。
【0040】
さらなる態様では、B.1)における第1の空腹時イベントに関連する発生、またはB.2)における短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスは、現時点の発生であり、B.1)における第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベントに関連する発生、またはB.2)における短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスは、先の発生である。
【0041】
さらなる態様では、新規のパラメータ推定およびインスリン感受性推定(ISFbasal、i、t、ISFbolus、i、t)は現時点の発生に応答して得られ、先のパラメータ推定および先のインスリン感受性推定は、先の発生に応答して得られる。
【0042】
さらなる態様では、パラメータ推定は、基礎インスリン感受性曲線、ボーラスインスリン感受性推定、ボーラスインスリン感受性曲線、および炭水化物対インスリン比を含む群の1つまたは複数であり、B)におけるインスリン感受性推定は、B.1)における第1の空腹時イベントの発生時の対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)であり、B)における先のインスリン感受性推定は、B.1)における第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i-p、t)である。
【0043】
さらなる態様では、パラメータ推定は、ボーラスインスリン感受性曲線、基礎インスリン感受性推定、基礎インスリン感受性曲線、および炭水化物対インスリン比を含む群の1つであり、B)におけるインスリン感受性推定は、B.2)における、第1の時間帯内に短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際の対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)であり、先の推定は、B.2)における、短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i-p、t)である。
【0044】
さらなる態様では、関数は、B)における、インスリン感受性推定と先のインスリン感受性推定との比率の関数として定義される。
【0045】
さらなる態様では、関数は、B)における、インスリン感受性推定と先のインスリン感受性推定との比率として計算される。
【0046】
さらなる態様では、方法は、基礎インスリン感受性曲線、ボーラスインスリン感受性推定、ボーラスインスリン感受性曲線、または炭水化物対インスリン比を推定することをさらに含み、推定することは判断された関数を使用する。
【0047】
さらなる態様では、方法は、ボーラスインスリン感受性曲線、基礎インスリン感受性推定、基礎インスリン感受性曲線、または炭水化物対インスリン比を推定することをさらに含み、推定することは関数関係を使用する。
【0048】
さらなる態様では、基礎インスリン感受性推定を行うことは、B.1)における、基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)と、第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i-p、t)との間の基礎関係を推定することを含む。
【0049】
さらなる態様では、基礎関係は、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定を可能にし、推定されたインスリン感受性の変化を使用して、ボーラスインスリン感受性推定を算出する、または基礎インスリン感受性因子曲線を算出することができる。
【0050】
さらなる態様では、ボーラスインスリン感受性推定を行うことは、B.2)における、ボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)と、短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスが行われることに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i-p、t)との間のボーラス関係を推定することを含む。
【0051】
さらなる態様では、ボーラス関係は、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定を可能にし、推定されたインスリン感受性の変化を使用して、基礎インスリン感受性推定を算出すること、またはボーラスインスリン感受性因子曲線を算出することができる。
【0052】
さらなる態様では、方法は、C.1)C)において推定されたボーラスインスリン感受性推定に基づいて短時間作用型インスリン薬剤のボーラス用量を推定することをさらに含む。
【0053】
さらなる態様では、対象者に短時間作用型インスリン薬剤を送達するための薬品送達デバイスに対する用量を設定し、設定された用量は、C.1における推定された用量に基づく。
【0054】
さらなる態様では、方法は、D.1)D)において推定された基礎インスリン感受性推定に基づいて、長期作用型インスリン薬剤の用量を推定することをさらに含む。
【0055】
さらなる態様では、対象者に短時間作用型インスリン薬剤を送達するための薬品送達デバイスに対する用量を設定し、設定された用量は、D.1における推定された用量に基づく。
【0056】
さらなる態様では、短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン投薬レジメンにおけるパラメータを推定するための方法が提供される。該方法は、
A)第1の時間帯にわたって取られる対象者の複数のグルコース測定値、および、複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値(222)に対して、対応する測定が行われた時を表すタイムスタンプ(224)を含む、第1のデータセット(220)を得ることと、
B.1)第1の時間帯内に対象者によって始められる第1の空腹時イベントが適格であるとみなされる時、第1の空腹時イベントの発生時に対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)(230)を行うことであって、推定することは、(i)長期作用型インスリン薬剤レジメンにおける長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬に基づく第1の空腹時イベント中の予想される空腹時血糖値(FBG
expected)、(ii)第1の空腹時イベント内の時間帯と同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる、第1の空腹時イベント中の対象者の空腹時グルコース値(
)、および、(iii)第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性因子(ISF
basal、i-p、t)を使用する、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)(230)を行うこと、または、
B.2)第1の時間帯内に短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際に対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)(232)を行うことであって、推定することは、(i)短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスに基づく予想される血糖値(BG
expected)、(ii)補正ボーラスを行った後の対象者のグルコース値(
)であって、
は、補正ボーラスを行った後の時間帯と同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる、グルコース値、および、(iii)短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i-p、t)を使用する、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)(232)を行うことによって、B)推定を判断することと、を含む。
【0057】
さらなる態様では、1つまたは複数のプロセッサによって実行される時、上記の方法を行う命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0058】
さらなる態様では、上述されるようなコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ可読データキャリアが提供される。
【0059】
別の態様では、短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのデバイスが提供される。該デバイスは、1つまたは複数のプロセッサおよびメモリを含み、メモリは、1つまたは複数のプロセッサによって実行される時、
A)第1の時間帯にわたって取られる対象者の複数のグルコース測定値、および、複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値に対して、対応する測定が行われた時を表すタイムスタンプを含む、第1のデータセットを得ることと、
B.1)第1の時間帯内に対象者によって始められる第1の空腹時イベントが適格であるとみなされる時、第1の空腹時イベントの発生時に対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)を行うことであって、推定することは、(i)第1の空腹時イベント中の長期作用型インスリン薬剤レジメンにおける長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬に基づく予想される空腹時血糖値(FBG
expected)、(ii)第1の空腹時イベントと同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる、第1の空腹時イベント中の対象者の空腹時グルコース値(
)、および、(iii)第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者のインスリン感受性因子(ISF
basal、i-p、t)を使用する、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)行うこと、または、
B.2)第1の時間帯内に短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際に対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)を行うことであって、推定することは、(i)短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスに基づく予想される血糖値(BG
expected)、(ii)補正ボーラスを行った後の対象者のグルコース値(
)であって、
は、補正ボーラスを行った後の時間帯と同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる、グルコース値、および、(iii)短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のインスリン感受性因子(ISF
bolus、i-p、t)を使用する、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)を行うことによって、B)推定を判断することと、
C)B.1)においてボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)が行われる時、基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)を推定することと、
D)B.2)においてボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)が行われる時、ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)を推定することと、を行う方法を行う命令を記憶する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本開示の一実施形態に従って、インスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのレジメン監視デバイス、レジメンアドヒアランスデータを解析しかつ準備するためのレジメンアドヒアランス評価デバイス、対象者からのグルコースデータを測定する1つまたは複数のグルコースセンサ、および処方されるインスリン薬剤レジメンに従ってインスリン薬剤を注射するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペンを含み、上記の構成要素は、オプションとして、通信ネットワークを通して相互接続される、例示のシステムトポロジを示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのデバイスを示す図である。
【
図3】本開示の別の実施形態による、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのデバイスを示す図である。
【
図4A】本開示のさまざまな実施形態に従って、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのデバイスのプロセスおよび特徴のフローチャートである。
【
図4B】本開示のさまざまな実施形態に従って、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのデバイスのプロセスおよび特徴のフローチャートである。
【
図4C】本開示のさまざまな実施形態に従って、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのデバイスのプロセスおよび特徴のフローチャートである。
【
図5】本開示の一実施形態による、自律的グルコースデータのアルゴリズム分類を行うための、連結式インスリンペン、連続グルコースモニタ、メモリ、およびプロセッサの統合システムの例を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)およびボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)データ構造を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)データ構造およびボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)データ構造を示す図である。
【
図8】1日といった、ある時間帯の間にわたる基礎(長期作用型)インスリン感受性因子曲線(ISF
basal)およびボーラス(短時間作用型)インスリン感受性因子曲線(ISF
bolus)を示すことで、対象者のインスリン感受性因子がこのような時間帯の間にわたってどのように変動するかを示す図である。
【
図9A】本開示の一実施形態に従って、一定の時間(t)における適格な空腹時イベントの発生時の基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)を判断すること、および、ある時間帯の間にわたって、この基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)の値を対応する既存の基礎インスリン感受性因子曲線ISF
basalおよびボーラスインスリン感受性因子曲線ISF
bolusとどのように比較するかを示す図である。
【
図9B】本開示の一実施形態に従って、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)が行われる際に基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)を推定することを示す図である。
【
図9C】本開示の一実施形態による、新しく推定された基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)に応じたボーラスインスリン感受性曲線推定(ISF
bolus、i)の計算を示す図である。
【
図10A】対象者に対するインスリン感受性因子更新が補正ボーラスのみに基づいて行われる例を示す図である。
【
図10B】本開示の一実施形態に従って、インスリン感受性因子更新が、
図4に示される方法による補正ボーラスおよび空腹時グルコースに基づく例を示す図である。
【
図10C】インスリン感受性因子更新が、
図4に示される方法による補正ボーラスおよび空腹時グルコースに基づき、とりわけ、ウェアラブルデバイスからの情報を使用して、本開示の一実施形態による過去のインスリン感受性曲線推定に基づいてインスリン感受性因子曲線を更新する時に過去のISF曲線推定よりも、新規のISF曲線推定に重みを大きくする例を示す図である。
【
図10D】インスリン感受性因子更新が、本開示の一実施形態に従って、炭水化物対インスリン比(CIR)がISFの変化に比例して更新されることを除いて
図10Cと同様である例を示す図である。
【
図11】インスリン薬剤レジメンに対する対象者のアドヒアランス全体がどのように監視されるのか、および、ボーラスインスリン感受性曲線推定および更新が、インスリン薬剤レジメンに対する対象者のアドヒアランス全体が閾値を下回る時の時間帯中どのように保留になるのかを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図全体を通して対応する部分を指す。
【0062】
本開示は、ある時間帯にわたって対象者が従事した、空腹時イベントまたは食事などの複数の代謝イベントに関するデータの取得に依存している。それぞれのこのような代謝イベントに対して、データはタイムスタンプを含む。
図1は、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのシステム48、およびこのようなデータの取得のための統合システム502の例を示し、
図5は、このようなシステム502のさらなる細部を示す。統合システム502は、1つまたは複数の連結式インスリンペン104、1つまたは複数の連続グルコースモニタ102、およびメモリ506を含む。
【0063】
統合システム502によって、対象者の自律的タイムスタンプ付与グルコース測定値が得られる520。また、処方されるインスリンレジメンを対象者に適用するために使用される1つまたは複数のインスリンペンからのデータは、複数の記録として得られる540。それぞれの記録は、処方されたインスリン投薬レジメンの一部分として対象者が受信した、注射されるインスリン薬剤の量を指定するタイムスタンプ付与イベントを含む。いくつかの実施形態では、空腹時イベントは、対象者の自律的タイムスタンプ付与グルコース測定値を使用して特定される。オプションとして、食事イベントはまた、自律的タイムスタンプ付与グルコース測定値520を使用して特定される。このように、グルコース測定値は、分類され501かつフィルタ処理され504、非一時的なメモリ506に記憶される。このフィルタ処理済みグルコースデータは、本開示の方法に従って通信される508。例えば、空腹時イベントの形式で、タイムスタンプ付与グルコース測定値およびボーラス補正イベントは、自律的に判断された食事イベントに対するこれらの時間的近接性により自律的に特定される。
【0064】
ここで、添付の図面に示される例を、実施形態に対しての詳細に参照する。以下の詳細な説明では、本開示を十分に理解してもらうために、多数の具体的な詳細が示されている。しかしながら、本開示がこれらの具体的な詳細なしで実践可能であることは、当業者には明らかとなるであろう。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、回路、およびネットワークは、実施形態の態様を不必要に不明瞭にしないように詳細に説明されていない。
【0065】
第1、第2などの用語がさまざまな要素を説明するために本明細書において使用される場合があるが、これらの要素がこれらの用語に限定されるものではないことも、理解されるであろう。これらの用語は、1つの要素を別の要素と区別するためだけに使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の対象者は第2の対象者と呼ぶことが可能であり、同様に、第2の対象者は第1の対象者と呼ぶことが可能である。第1の対象者および第2の対象者は両方とも対象者であるが、同じ対象者ではない。また、「対象者」および「ユーザ」という用語は、本明細書において同義で使用される。用語として、インスリンペンはインスリンの個別の用量を適用するのに適した注射器具を意味し、注射器具は、用量関連データをログ記録しかつ通信するように適応される。
【0066】
本開示において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段文脈で明確に指示されない限り、複数形も同様に含むことが意図されている。本明細書で使用される用語「および/または」が、関連する列挙された項目の1つまたは複数のあらゆる可能な任意の組み合わせを指しかつ包含することも理解されるであろう。用語「comprises(含む、備える)」および/または「comprising(含む、備える)」は、本明細書で使用される時、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/もしくはそれらの群の存在または追加を除外しないことは、さらに理解されるであろう。
【0067】
本明細書で使用される用語「if(~場合)」は、文脈に応じて、「when(~時)」もしくは「upon(~すると)」、または「~と判断することに応答して」もしくは「~を検出することに応答して」を意味すると解釈されてよい。同様に、文脈に応じて、語句「~と判定される場合」または「[述べられる条件またはイベント]が検出される場合」は、文脈に応じて、「~と判断すると」、または「~と判断することに応答して」、または「[述べられる条件またはイベント]を検出すると」、または「[述べられる条件またはイベント]を検出することに応答して」を意味すると解釈されてよい。
【0068】
本開示による、短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するためのシステム48の詳細な説明について、
図1~
図3と併せて説明する。そのように、
図1~
図3は、ひとまとめにして、本開示によるシステムのトポロジを示す。このトポロジでは、インスリン投薬レジメン監視デバイス(「監視デバイス250」)(
図1、
図2、および
図3)、データ処理デバイス(「処理デバイス200」)、対象者と関連付けられた1つまたは複数のグルコースセンサ102(
図1)、および、対象者にインスリン薬剤を注射するための1つまたは複数のインスリンペン104(
図1)がある。本開示全体を通して、処理デバイス200および監視デバイス250は、単に明確にするために別個のデバイスとして参照される。すなわち、処理デバイス200の開示される機能性、および監視デバイス250の開示される機能性は、
図1に示されるように別個のデバイスに含有される。しかしながら、実際、いくつかの実施形態では、処理デバイス200の開示される機能性、および監視デバイス250の開示される機能性は、単一のデバイスに含有されることは理解されるであろう。いくつかの実施形態では、処理デバイス200の開示される機能性、および/または監視デバイス250の開示される機能性は、単一のデバイスに含有され、この単一のデバイスは、グルコースモニタ102またはインスリンペン104である。
【0069】
図1を参照すると、監視デバイス250は、短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定する。これを行うために、監視デバイス250と電気通信している処理デバイス200は、継続的に、対象者に取り付けられる1つまたは複数のグルコースセンサ102から生じる自律的グルコース測定値を受信する。さらに、処理デバイス200は、インスリン薬剤を得るために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペン104からインスリン薬剤注射データを受信する。いくつかの実施形態では、処理デバイス200は、対象者によって使用されるグルコースセンサ102およびインスリンペン104から直接このようなデータを受信する。例えば、いくつかの実施形態では、処理デバイス200は、無線周波数信号を通してワイヤレスにこのデータを受信する。いくつかの実施形態では、このような信号は、802.11(WiFi)、Bluetooth、またはZigBee標準に準拠している。いくつかの実施形態では、監視デバイス200は、このようなデータを直接受信し、データ内の、空腹時イベントおよび食事などの代謝イベントを特定し、このようなデータを監視デバイス250に渡す。いくつかの実施形態では、グルコースセンサ102および/またはインスリンペンは、RFIDタグを含み、RFID通信を使用して処理デバイス200および/または監視デバイス250に通信する。
【0070】
いくつかの実施形態では、処理デバイス200および/または監視デバイス250は、対象者に近接していない、および/またはワイヤレス性能を有していない、または、このようなワイヤレス性能は、グルコースデータおよびインスリン薬剤注射データを取得する目的で使用されない。このような実施形態では、通信ネットワーク106は、グルコース測定値を、1つまたは複数のグルコースセンサ102から処理デバイス200に、および、1つまたは複数のインスリンペン104から処理デバイス200に通信するために使用されてよい。
【0071】
ネットワーク106の例として、ワールドワイドウェブ(WWW)、携帯電話ネットワークなどのイントラネットおよび/またはワイヤレスネットワーク、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(LAN)および/またはメトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、ならびにワイヤレス通信による他のデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。ワイヤレス通信は、オプションとして、汎欧州デジタル移動電話通信方式(GSM)、拡張データGSM環境(EDGE)、高速ダウンリンクパケットアクセス(HSDPA)、高速アップリンクパケットアクセス(HSUPA)、Evolution、Data-Only(EV-DO)、HSPA、HSPA+、Dual-Cell HSPA(DC-HSPDA)、Long Term Evolution(LTE)、近距離通信(NFC)、広帯域符号分割多元接続(W-CDMA)、符号分割多元接続(CDMA)、時分割多元接続(TDMA)、Bluetooth、Wireless Fidelity(Wi-Fi)(例えば、IEEE802.11a、IEEE802.11ac、IEEE802.11ax、IEEE802.11b、IEEE802.11g、および/またはIEEE802.11n)、ボイスオーバーインターネットプロトコル(VoIP)、Wi-MAX、電子メールに対するプロトコル(例えば、インターネットメッセージアクセスプロトコル(IMAP)および/または郵便局プロトコル(POP))、インスタントメッセージング(例えば、拡張可能メッセージングおよびプレゼンスプロトコル(XMPP)、Session Initiation Protocol for Instant Messaging and Presence Leveraging Extensions(SIMPLE)、インスタントメッセージングおよびプレゼンスサービス(IMPS))、および/もしくはショートメッセージサービス(SMS)、または本開示の出願日時点ではまだ開発されていない通信プロトコルを含む任意の他の適した通信プロトコルを含むがこれらに限定されない複数の通信標準、プロトコル、および技術のいずれかを使用する。
【0072】
いくつかの実施形態では、対象者に取り付けられる単一のグルコースセンサ102があり、処理デバイス200および/または監視デバイス250はグルコースセンサ102の一部分である。すなわち、いくつかの実施形態では、処理デバイス200および/または監視デバイス250、ならびにグルコースセンサ102は、単一のデバイスである。
【0073】
いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200および/または監視デバイス250は、インスリンペンまたはポンプ104の一部分である。すなわち、いくつかの実施形態では、アドヒアランスデバイス200および/または監視デバイス250、ならびにインスリンペン104は、単一のデバイスである。
【0074】
当然ながら、システム48の他のトポロジが可能である。例えば、通信ネットワーク106に依存するのではなく、1つまたは複数のグルコースセンサ102および1つまたは複数のインスリンペン104は、処理デバイス200および/または監視デバイス250に直接情報をワイヤレスに送信することができる。さらに、いくつかの実施形態では、処理デバイス200および/または監視デバイス250は、ポータブル電子デバイス、サーバコンピュータを構成する、または、実際には、ネットワークにおいて共にリンクされる、またはクラウドコンピューティングコンテキストにおける仮想マシンであるいくつかのコンピュータを構成する。そのように、
図1に示される例示のトポロジは、単に、当業者が容易に理解するようなやり方で本開示の一実施形態の特徴を説明する役割を果たす。
【0075】
図2を参照すると、典型的な実施形態では、監視デバイス250は1つまたは複数のコンピュータを含む。
図2における例証の目的で、監視デバイス250は、対象者に対して処方されたインスリン投薬レジメンに対する履歴アドヒアランスを評価するための機能性の全てを含む単一のコンピュータとして表される。しかしながら、本開示はそのように限定されない。いくつかの実施形態では、短時間作用型インスリン薬剤レジメンおよび長期作用型インスリン薬剤レジメン両方を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するための機能性は、任意の数のネットワークコンピュータに広がる、および/またはいくつかのネットワークコンピュータのそれぞれに常駐する、および/または通信ネットワーク106にわたってアクセス可能な遠隔位置における1つまたは複数の仮想マシン上でホストされる。幅広い種々のコンピュータトポロジのいずれかが、本願に使用され、かつ全てのこのようなトポロジが本開示の範囲内にあることを、当業者は理解するであろう。
【0076】
前述を念頭に置いて
図2に移ると、対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するための例示の監視デバイス250は、1つまたは複数の処理ユニット(CPU)274、ネットワークまたは他の通信インターフェース284、メモリ192(例えば、ランダムアクセスメモリ)、オプションとして、1つまたは複数のコントローラ288によってアクセスされる1つまたは複数の磁気ディスクストレージおよび/または永続記憶デバイス290、先述の構成要素を相互接続するための1つまたは複数通信バス212、ならびに、先述の構成要素に電力供給するための電源276を備える。いくつかの実施形態では、メモリ192におけるデータは、キャッシュなどの既知のコンピューティング技法を使用して、不揮発性メモリ290とシームレスに共有される。いくつかの実施形態では、メモリ192および/またはメモリ290は、中央処理ユニット274に対して遠隔に位置する大容量ストレージを含む。換言すれば、メモリ192および/またはメモリ290に記憶されるいくつかのデータは、実際、監視デバイス250に外付けされるが、ネットワークインターフェース284を使用して、インターネット、イントラネット、または、他の形式のネットワークまたは電子ケーブル(
図2における要素106として示される)上で監視デバイス250によって電子的にアクセス可能であるコンピュータ上でホストされてよい。
【0077】
対象者に対するインスリン薬剤レジメンにおけるパラメータを推定するための監視デバイス250のメモリ192は、
・さまざまな基本システムサービスをハンドリングするための手順を含むオペレーティングシステム202、
・インスリンレジメン監視モジュール204、
・長期作用型インスリン薬剤レジメン208および短時間作用型インスリン薬剤レジメン214を含む、対象者に対するインスリン薬剤レジメン、
・対象者に対する複数のグルコース測定値、および、複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値222に対して、対応するグルコース測定が行われた時を表すタイムスタンプ224を含む、第1のデータセット220、
・対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)230、
・対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)232、
・対象者に対する基礎インスリン感受性因子曲線推定(ISFbasal、i)234、
・対象者に対するボーラスインスリン感受性因子曲線推定(ISFbolus、i)236、および
・対象者に対する複数の生理学的測定値、および複数の生理学的測定値におけるそれぞれの対応する生理学的測定値240に対して、対応する生理学的測定が行われた時を表すタイムスタンプ242を含む、オプションの第2のデータセット220を記憶する。
【0078】
図6は、対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230についてのさらなる詳細を提供する。それぞれの基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230は、特定の時間t 604-x-yにおける特定の日602-xに取られる基礎インスリン感受性推定230-x-yを表し、ここで、xは特定の日を表し、yは特定の時間tを表す。
図6はまた、対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232についてのさらなる詳細を示す。それぞれのボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232は、特定の時間t 608-x-yにおける特定の日606-xに取られるボーラスインスリン感受性推定232-x-yを表し、ここで、xは特定の日を表し、yは特定の時間tを表す。
【0079】
図7は、対象者に対する基礎インスリン感受性曲線推定(ISF
basal、i)234についてのさらなる詳細を示す。基礎インスリン感受性曲線推定(ISF
basal、i)234は、1日、1週間、または1か月といった特定の定期的な時間帯にわたるそれぞれの時間t 610-yに対する基礎インスリン感受性推定612-yを含む。いくつかの実施形態では、2以上、3以上、または5以上の基礎インスリン感受性曲線推定(ISF
basal、i)234を組み合わせて、本開示による更新された基礎インスリン感受性曲線を形成する。
図7はまたは、対象者に対するボーラスインスリン感受性曲線推定(ISF
bolus、i)236についてのさらなる詳細を示す。ボーラスインスリン感受性曲線推定(ISF
bolus、i)236は、1日、1週間、または1か月といった特定の定期的な時間帯にわたるそれぞれの時間t 614-yに対するボーラスインスリン感受性推定616-yを含む。いくつかの実施形態では、2以上、3以上、または5以上のボーラスインスリン感受性曲線推定(ISF
bolus、i)236を組み合わせて、本開示による更新されたボーラスインスリン感受性曲線を形成する。
【0080】
いくつかの実施形態では、インスリンレジメン監視モジュール204は、任意のブラウザ(電話、タブレット、ラップトップ/デスクトップ)内でアクセス可能である。いくつかの実施形態では、インスリンレジメン監視モジュール204は、ネイティブデバイスフレームワークにおいて作動し、かつAndroidまたはiOSといったオペレーティングシステム202を作動させる監視デバイス250に対するダウンロードに利用可能である。
【0081】
いくつかの実装形態では、インスリン投薬レジメンにおけるパラメータを推定するための監視デバイス250の上で特定されるデータ要素またはモジュールの1つまたは複数は、前述したメモリデバイスの1つまたは複数に記憶され、上述した機能を実行するための命令のセットに対応する。上で特定されたデータ、モジュール、またはプログラム(例えば、命令のセット)は、別個のソフトウェアプログラム、手順、またはモジュールとして実装される必要はないため、これらのモジュールのさまざまなサブセットは、さまざまな実装形態で組み合わせられてよい、あるいは再配置されてよい。いくつかの実装形態では、メモリ192および/または290はオプションとして、上で特定される、モジュールおよびデータ構造のサブセットを記憶する。さらに、いくつかの実施形態では、メモリ192および/または290は、上述されない追加のモジュールおよびデータ構造を記憶する。
【0082】
いくつかの実施形態では、インスリン投薬レジメンにおけるパラメータを推定するための監視デバイス250は、スマートフォン(例えば、iPHONE)、ラップトップ、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、または他の形式の電子デバイス(例えば、ゲーム機)である。いくつかの実施形態では、監視デバイス250はモバイルではない。いくつかの実施形態では、監視デバイス250はモバイルである。
【0083】
図3は、本開示による監視デバイス250の具体的な実施形態のさらなる説明を示す。
図3に示される監視デバイス250は、1つまたは複数の処理ユニット(CPU)274、周辺インターフェース370、メモリコントローラ368、ネットワークまたは他の通信インターフェース284、メモリ192(例えば、ランダムアクセスメモリ)、ユーザインターフェース278、ディスプレイ282および入力280を含むユーザインターフェース278(例えば、キーボード、キーパッド、タッチスクリーン)、オプションの加速度計317、オプションのGPS319、オプションのオーディオ回路構成372、オプションのスピーカ360、オプションのマイク362、監視デバイス250上の接触強度を検出するための1つまたは複数のオプションの強度センサ364(例えば、監視デバイス250のタッチ感知表示システム282などのタッチ感知面)、オプションの入力/出力(I/O)サブシステム366、1つまたは複数のオプションの光センサ373、先述の構成要素を相互接続するための1つまたは複数の通信バス212、および先述の構成要素に電力供給するための電源276を有する。
【0084】
いくつかの実施形態では、入力280は、タッチ感知面などのタッチ感知ディスプレイである。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース278は、1つまたは複数のソフトキーボード実施形態を含む。ソフトキーボード実施形態は、表示されるアイコン上のシンボルの標準(QWERTY)および/または非標準構成を含んでよい。
【0085】
図3に示される監視デバイス250は、オプションとして、加速度計317に加えて、監視デバイス250の位置および向き(例えば、縦方向または横方向)に関する情報を得る、および/または対象者による身体運動量または他の生理学的測定値240を判断するための磁力計(図示せず)およびGPS319(または、GLONASSもしくは他のグローバルナビゲーションシステム)受信機を含む。
【0086】
図3に示される監視デバイス250が、対象者に対するインスリン投薬レジメンにおけるパラメータを推定するために使用されてよい多機能デバイスの単なる1つの例であること、および、監視デバイス250が、オプションとして示されるより多いまたは少ない構成要素を有する、オプションとして2つ以上の構成要素を組み合わせる、またはオプションとして構成要素の異なる構成または配置を有することは、理解されるべきである。
図3に示されるさまざまな構成要素は、1つまたは複数の信号処理回路および/または特定用途向け集積回路を含む、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで実装される。
【0087】
図3に示される監視デバイス250のメモリ192は、オプションとして高速ランダムアクセスメモリを含み、オプションとしてまた、1つまたは複数の磁気ディスク記憶デバイス、フラッシュメモリデバイス、または他の不揮発性ソリッドステートメモリデバイスなどの不揮発性メモリを含む。CPU274などの監視デバイス250の他の構成要素によるメモリ192へのアクセスは、オプションとして、メモリコントローラ368によってコントロールされる。
【0088】
周辺インターフェース370を使用して、デバイスの入力および出力周辺機器を、CPU274およびメモリ192に結合することができる。1つまたは複数のプロセッサ274は、インスリンレジメン監視モジュール204といった、メモリ192に記憶されるさまざまなソフトウェアプログラムおよび/または命令のセットを作動させてまたは実行して、監視デバイス250に対するさまざまな機能を実行し、かつデータを処理する。
【0089】
いくつかの実施形態では、周辺インターフェース370、CPU274、およびメモリコントローラ368は、オプションとして、単一チップ上に実装される。いくつかの他の実施形態では、これらは、オプションとして、別個のチップ上に実装される。
【0090】
ネットワークインターフェース284のRF(無線周波数)回路構成は、電磁信号とも呼ばれるRF信号を受信および送信する。いくつかの実施形態では、インスリン薬剤レジメン206、第1のデータセット220、および/または第2のデータセット238は、対象者と関連付けられたグルコースセンサ102、対象者と関連付けられたインスリンペン104、および/または処理デバイス200などの、1つまたは複数のデバイスからこのRF回路構成を使用して受信される。いくつかの実施形態では、RF回路構成108は、電気信号と電磁信号との変換を行い、かつ電磁信号によって、通信ネットワークおよび他の通信デバイス、グルコースセンサ102、インスリンペン104、ならびに/またはデータ処理デバイス200と通信する。RF回路構成284は、オプションとして、アンテナシステム、RFトランシーバ、1つまたは複数の増幅器、同調器、1つまたは複数の発振器、デジタル信号プロセッサ、CODECチップセット、加入者識別モジュール(SIM)カード、およびメモリなどを含むがこれらに限定されない、これらの機能を実行するための周知の回路構成を含む。RF回路構成284は、オプションとして、通信ネットワーク106と通信する。いくつかの実施形態では、回路構成284は、RF回路構成を含まず、実際には、1つまたは複数のハードワイヤ(例えば、光ケーブルまたは同軸ケーブルなど)を通してネットワーク106に接続される。
【0091】
いくつかの実施形態では、オーディオ回路構成372、オプションのスピーカ360、およびオプションのマイク362は、対象者と監視デバイス250との間のオーディオインターフェースを提供する。オーディオ回路構成372は、周辺インターフェース370からオーディオデータを受信し、該オーディオデータを電気信号に変換し、この電気信号をスピーカ360に送信する。スピーカ360は、電気信号を、人間の可聴音波に変換する。オーディオ回路構成372はまた、音波からマイク362によって変換された電気信号を受信する。オーディオ回路構成372は、電気信号をオーディオデータに変換し、かつこのオーディオデータを処理のために周辺インターフェース370に送信する。オーディオデータは、オプションとして、周辺インターフェース370によって、メモリ192および/またはRF回路構成284との間の抽出および/または送信が行われる。
【0092】
いくつかの実施形態では、電源276は、オプションとして、電力管理システム、1つまたは複数の電源(例えば、バッテリ、交流(AC))、充電システム、停電検出回路、電力変換装置または変換器、電源状態表示器(例えば、発光ダイオード(LED))、およびポータブルデバイスにおける電力の生成、管理、および分散と関連付けられた任意の他の構成要素を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、監視デバイス250は、オプションとして、1つまたは複数の光センサ373も含む。光センサ373は、オプションとして、電荷結合デバイス(CCD)または相補的金属酸化物半導体(CMOS)フォトトランジスタを含む。光センサ373は、1つまたは複数のレンズを通して投射される、環境からの光を受け、この光を画像を表すデータに変換する。光センサ373は、オプションとして、静止画像および/またはビデオをキャプチャする。いくつかの実施形態では、光センサは、監視デバイス250の正面のディスプレイ282の反対側のデバイス250の後ろに位置することで、入力280は、静止画像および/またはビデオ画像取得のためのビューファインダとして使用することが可能になる。いくつかの実施形態では、別の光センサ373は、監視デバイス250の正面に位置することで、(例えば、対象者の健康または状態を検証する、対象者の身体活動レベルを判断する、対象者の状態を遠隔に診断するのを助ける、生理学的測定値240を取得するなどのために)対象者の画像が得られる。
【0094】
図3に示されるように、監視デバイス250は好ましくは、さまざまな基本システムサービスをハンドリングするための手順を含むオペレーティングシステム202を備える。オペレーティングシステム202(例えば、iOS、DARWIN、RTXC、LINUX、UNIX、OS X、WINDOWS、またはVxWorksといった埋込式オペレーティングシステム)は、汎用システムタスク(例えば、メモリ管理、記憶デバイスコントロール、電源管理など)をコントロールしかつ管理するためのさまざまなソフトウェア構成要素および/またはドライバを含み、さまざまなハードウェア構成要素とさまざまなソフトウェア構成要素との間の通信を容易にする。
【0095】
いくつかの実施形態では、監視デバイス250はスマートフォンである。他の実施形態では、監視デバイス250は、スマートフォンではなく、タブレットコンピュータ、デスクトップコンピュータ、救急車コンピュータ、あるいは他の形式またはワイヤードもしくはワイヤレスネットワークデバイスである。いくつかの実施形態では、監視デバイス250は、
図2および
図3に図示される監視デバイス250に見られる、回路構成、ハードウェア構成要素、およびソフトウェア構成要素のいずれかまたは全てを有する。簡略および明確にするために、監視デバイス250の可能な構成要素の数個のみが示されることで、監視デバイス250上に設置される追加のソフトウェアモジュールをより良く強調する。
【0096】
図1に開示されるシステム48はスタンドアロンで稼働することができるが、いくつかの実施形態では、また、何らかの形で情報を交換するために電子カルテとリンクされ得る。
【0097】
ここで、インスリン投薬レジメン206におけるパラメータを推定するためのシステム48の詳細は開示されており、本開示の一実施形態による、システムのプロセスおよび特徴のフローチャートに関する詳細は、
図4A~
図4Cを参照して開示される。いくつかの実施形態では、これらにプロセスは、上述される監視デバイス250によって実施され、この監視デバイス250は、1つまたは複数のプロセッサ274およびメモリ192/290を含む。メモリは、1つまたは複数のプロセッサによって実行される時、
図4A~
図4Cを参照して開示されるプロセスを実行し、かつ後述される命令を記憶する。いくつかの実施形態では、システムのこのようなプロセスおよび特徴は、
図2および
図3に示されるインスリンレジメン監視モジュール204によって実施される。
【0098】
ブロック402。
図4Aのブロック402を参照して、多くのインスリン療法の目的は、空腹時血漿グルコースおよび食後血漿グルコースをコントロールするために正常な生理的インスリン分泌にできるだけ綿密に適合させることである。これは、対象者に対するインスリン薬剤レジメン206によって行われる。本開示では、インスリン薬剤レジメン206は、長期作用型インスリン薬剤レジメン208および短時間作用型インスリン薬剤レジメン214を含む。本開示では、インスリン感受性因子(ISF)および炭水化物対インスリン比(CIR)は、即効性および長期作用型インスリン薬剤注射イベントに対する対象者の反応に基づいて更新される。長期作用型および即効性インスリン薬剤の投与量算出において使用可能であるインスリン薬剤レジメン206の2つのパラメータは、基礎インスリン感受性因子曲線ISF
basalおよびボーラスインスリン感受性因子曲線ISF
bolusとして本明細書において定義されている。これらの2つのパラメータは、それぞれの対象者に対して異なっており、長期作用型および即効性インスリン薬剤に対する各対象者の感受性を表現し、互いに比例している。ISF感受性は、
図8に示されるように、1日の種々の時間で異なっている可能性があり、これが、ISF感受性がISF曲線として表される理由である。また、
図8に見られるように、ISF
basal804およびISF
bolus806は、それぞれ、1日を通して変動するが、1日を通して互いに比例する。本開示は有利には、改善されたより精確なISF曲線を提供するためにISF
basal804とISF
bolus806との間のこの比例を活用する。
【0099】
いくつかの実施形態では、短時間作用型インスリン薬剤レジメン214において使用される短時間作用型インスリン薬剤は、3~8時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤、または、ひとまとめにすると、3~8時間の作用持続時間を有するインスリン薬剤の混合から成る。このような短時間作用型インスリン薬剤の例として、Lispro(HUMALOG、2001年5月18日、インスリンリスプロ[rDNA由来]注射、[処方情報]、インディアナポリス、インディアナ州:Eli Lilly and Company)、Aspart(NOVOLOG、2011年7月、インスリンアスパルト[rDNA由来]注射、[処方情報]、プリンストン、ニュージャージー州、NOVO NORDISK社、2011年7月)、Glulisine(Helms Kelley、2009年、「Insulin glulisine:an evaluation of its pharmacodynamic properties and clinical application」、Ann Pharmacother 43:658~668)、および、Regular(Gerich、2002年、「Novel insulins:expanding options in diabetes management」、Am J Med.113:308~316)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態では、長期作用型インスリン薬剤レジメン208において使用される長期作用型インスリン薬剤は、12~24時間の作用持続時間を有する単一のインスリン薬剤、または、ひとまとめにすると、12~24時間の作用持続時間を有するインスリン薬剤の混合から成る。いくつかの実施形態では、長期作用型インスリン薬剤レジメン208において使用するのに適した長期作用型インスリン薬剤は、12~24時間の作用持続時間を有するそういったインスリン薬剤、または、ひとまとめにすると、12~24時間の作用持続時間を有するインスリン薬剤の混合である。このような長期作用型インスリン薬剤の例として、Insulin Degludec(Tresibaという商標でNOVO NORDISKが開発)、NPH(Schmid、2007年、「New options in insulin therapy、J Pediatria(Rio J)、83(補足5):S145~S155」、Glargine(LANTUS、2007年3月2日、インスリングラルギン[rDNA由来]注射、[処方情報]、ブリッジウォーター、ニュージャージー州:Sanofi-Aventis)、および、Determir(Plankら、2005年、「A double-blind、randomized、dose-response study investigating the pharmacodynamic and pharmacokinetic properties of the long-acting insulin analog detemir」、Diabetes Care 28:1107~1112)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
方法において、第1のデータセット220が得られる。第1のデータセットは、第1の時間帯にわたって取られる対象者の複数のグルコース測定値、および、複数のグルコース測定値におけるそれぞれの対応するグルコース測定値に対して、対応する測定が行われた時を表すタイムスタンプを含む。いくつかの実施形態では、それぞれのグルコース測定値222は自律的グルコース測定値である。ABBOTTによるFREESTYLE LIBRE CGM(「LIBRE」)は、自律的グルコース測定を行うグルコースセンサ102として使用されてよいグルコースセンサの例である。LIBREによって、肌装着型の硬貨サイズのセンサによる較正不要グルコース測定が可能になり、これは、共に近くなった時に、近距離無線通信によってリーダーデバイス(例えば、処理デバイス200および/または監視デバイス250)に8時間分のデータを送ることができる。LIBREは、日常生活のあらゆる活動において14日間装着可能である。
【0102】
いくつかの実施形態では、第1のデータセットは、5分以下、3分以下、または1分以下の間隔レートで対象者から取られる自律的グルコース測定値を含む。しかしながら、本開示は、自律的グルコース測定値を含む第1のデータセット220の使用に限定されない。いくつかの実施形態では、第1のデータセット220は、非自律的グルコース測定値、または、自律的グルコース測定値および非自律的グルコース測定値の複合を含む。
【0103】
ブロック406および408。本開示では、空腹時イベントが生じた時(406-はい)、プロセスコントロールは
図4Bのステップ410および416に移る。他方では、補正ボーラス注射イベントが生じた時(408-はい)、プロセスコントロールは
図4Cのステップ428および432に移る。他の例では、空腹時イベントが生じなかった場合(406-いいえ)、または補正ボーラスが生じなかった場合(408-いいえ)、プロセスコントロールは、空腹時イベントまたはボーラス補正が検出されるまで待機する。対象者によるインスリン薬剤レジメンに対するアドヒアランスが劣っているいくつかの例では、プロセスコントロールは、インスリン薬剤レジメンに対するアドヒアランスが改善するまで、全体的に保留になる。
【0104】
いくつかの実施形態では、空腹時イベントは、空腹検出アルゴリズム、および第1のデータセット220におけるグルコース測定値を使用して自律的に検出される。グルコースモニタ102からのグルコース測定値222を使用して空腹時イベントを検出するためのいくつかの方法がある。例えば、いくつかの実施形態では、第1の空腹時イベントは、最初にグルコース測定値にわたる変動
の移動期間を計算することによって、第1のデータセット220における複数のグルコース測定値によって包含される第1の時間帯(例えば、24時間)において特定される。ここで、
であり、式中、G
iは、考えられる複数のグルコース測定値の一部kにおけるi番目のグルコース測定値であり、Mは複数のグルコース測定値におけるグルコース測定値の数であり、一続きの所定のタイムスパンを表し、
は、第1のデータセット220の複数のグルコース測定値から選択されたMのグルコース測定値の平均であり、kは第1の時間帯内にある。例として、グルコース測定は、数日間または数週間にわたって、グルコース測定値が5分ごとに取られるようにしてよい。このタイムスパン全体の範囲内の第1の時間帯k(例えば、1日)が選択されることで、複数の測定値の一部kは、最小変動期間で検査される。第1の空腹期間は、第1の時間帯内の最小変動期間
であるとみなされる。次に、プロセスでは、別の最小変動期間で複数のグルコース測定値の次の一部kを検査することで別の空腹期間を割り当てることによって、複数のグルコース測定値の一部kが繰り返される。
【0105】
図4Aのブロック408に移ると、いくつかの実施形態では、補正ボーラス注射イベントは、1つまたは複数のインスリンペン104から受信したペン注射データによって判断される。いくつかの実施形態では、ボーラス注射イベントは、1つまたは複数のインスリンペン104から受信したペン注射データを、第1のデータセット220におけるグルコース測定値222の解析によって自律的に導出される食事イベントにマッピングすることによって判断される。このような実施形態では、ペン注射イベントが食事直前にまたは直後に生じる時、ボーラス注射イベントであるとみなされる。いくつかの実施形態では、この目的のために、食事イベントは、第1のデータセット220におけるグルコース測定値222から、(i)グルコース測定値222を使用するグルコース変化率の後退差分推定を含む第1のモデル、(ii)グルコース測定値222を使用するグルコースのカルマンフィルタ処理された推定に基づくグルコース変化率の後退差分推定を含む第2のモデル、(iii)複数のグルコース測定値222に基づく、グルコースのカルマンフィルタ処理された推定、および変化率(ROC)のカルマンフィルタ処理された推定を含む第3のモデル、および/または(iv)グルコース測定値222に基づくグルコースのROCの変化率のカルマンフィルタ処理された推定を含む第4のモデルを計算することによって検出される。いくつかのこのような実施形態では、第1のモデル、第2のモデル、第3のモデル、および第4のモデルはそれぞれ、グルコース測定値222にわたって計算され、食事イベントは、4つのモデルのうちの少なくとも3つが食事イベントを指示する場合に特定される。このような食事イベント検出に対するさらなる開示については、参照により本明細書に組み込まれる、Dassauら、2008年、「Detection of a Meal Using Continuous Glucose Monitoring」、Diabetes Care 31、295~300頁を参照されたい。また、参照により本明細書に組み込まれる、Cameronら、2009年、「Probabilistic Evolving Meal Detection and Estimation of Meal Total Glucose Appearance」、Journal of Diabetes Science and Technology 3(5)、1022~1030頁を参照されたい。
【0106】
いくつかの実施形態では、インスリン薬剤レジメン206のアドヒアランスであるとみなされる、そういったボーラス注射イベントおよびそういった空腹時イベントのみが、基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)230およびボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)232に対して使用される。換言すれば、いくつかの実施形態では、インスリン薬剤レジメン206のアドヒアランスとみなされるそういったボーラス注射イベントのみが条件408-はいをトリガすることになる。また、インスリン薬剤レジメン206のアドヒアランスとみなされるそういった空腹時イベントのみが条件406-はいをトリガすることになる。以下の実施例1は、ボーラス注射イベントまたは空腹時イベントがインスリンレジメンのアドヒアランスであるかどうかに関する判断がなされるやり方を示す。さらに、参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月30日出願の「Regimen Adherence Measure for Insulin Treatment Base on Glucose Measurement and Insulin Pen Data」という名称の欧州特許出願第16177080.5号は、アドヒアランスまたは非アドヒアランスとして空腹時イベントを特定かつ類別するための技法を開示している。いくつかの実施形態では、欧州特許出願第EP16177080.5号による「基礎レジメンのアドヒアランス」として類別されるそういった空腹時イベントのみが、本開示における条件406-はいをトリガすることになる。さらに、欧州特許出願第16177080.5号は、「ボーラスレジメンのアドヒアランス」または「ボーラスレジメンの非アドヒアランス」として食事イベントを特定かつ類別するための技法を開示している。いくつかの実施形態では、欧州特許出願第16177080.5号による「ボーラスレジメンのアドヒアランス」として類別される食事と関連付けられるそういったボーラス注射イベントのみが、本開示における条件408-はいをトリガすることになる。
【0107】
ブロック410。
図4Bのブロック410に移ると、第1の適格な空腹時イベントが生じた場合(406-はい)、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230は、(i)第1の空腹時イベント中の長期作用型インスリン薬剤レジメンにおける長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬に基づく予想される空腹時血糖値(FBG
expected)、(ii)第1の空腹時イベントと同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる第1の空腹時イベント中の対象者の空腹時グルコース値(
)、および、(iii)第1の空腹時イベントの前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性因子(ISF
basal、i-p、t)を使用して行われる。
【0108】
図4Bのブロック412を参照すると、いくつかのこのような実施形態では、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230は、
のように計算される。
【0109】
図9Aは、
図4Bのブロック412において計算される新規の基礎更新によるISF
basal、i、t230の値の変化を示す。
【0110】
FBG
expectedの計算。いくつかの実施形態では、FBG
expected(予想される空腹時血糖値)は、信頼できる情報に基づいて得られる空腹時血糖値であり、すなわち、ここでは時間帯pとする、長期作用型インスリン薬剤レジメン208に、対象者がアドヒアランスした時間帯の間の対象者について得られた情報である。いくつかの実施形態では、FBG
expectedは、長期作用型インスリン薬剤レジメン208(
図2および
図3)において示されるように、空腹時イベントが生じた一定の時間帯(t)での長期作用型インスリン薬剤の現在の投薬、および、
図9の既存の基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i-1)904から得られる時間(t)における対象者に対する基礎インスリン感受性因子に基づいて、得られる。この情報は、現時点の空腹時イベントが対象者がインスリンレジメンにアドヒアランスした時の間に生じると既に判断されているため、信頼できる。他の実施形態では、FBG
expectedは、対象者の前回のインスリンレジメンにアドヒアランスした空腹期間(例えば、
図4Aの条件406-はいの前回のインスタンスをトリガした空腹期間の直前の空腹期間)に対応する日にちおよび時間帯の第1のデータセット220における対象者のグルコース測定値222を検索することによって算出される。以下の例は、空腹時イベントがインスリンレジメンのアドヒアランスとして適格とされる1つのやり方を示す。また、参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月30日出願の「Regimen Adherence Measure for Insulin Treatment Based on Glucose Measurement and Insulin Pen Data」という名称の欧州特許出願第16177080.5号は、アドヒアランスまたは非アドヒアランスとして空腹時イベントを特定かつ類別するための技法を開示している。いくつかの実施形態では、
は、本開示における
図4Aでの条件406-はいの前回のインスタンスをトリガした空腹時イベントより時間的に前の欧州特許出願第16177080.5号による、「基礎レジメンのアドヒアランス」として類別される空腹時イベントからのグルコース測定値である。よって、いくつかの実施形態では、FBG
expectedは、
のように計算される。式中、
iは当日を指示し、
tは時刻であり、
は、
とも示され得る)対象者の前回の適格な(例えば、インスリンレジメンにアドヒアランスする)空腹時イベントと同時に発生する対象者のグルコース測定値222、または、対象者の前回の適格な空腹時イベントと同時に発生する対象者の複数のグルコース測定値222の中心傾向のその他の測定であり、
ISF
basal、i-p、tは、pが、典型的には、1の値を有するが、前回の空腹期間(p=1)が、対象者がインスリンレジメンにアドヒアランスしなかった期間に対応する時、いくらかより大きい値を有する場合がある、時間tにおける、基礎インスリン感受性推定曲線(ISF
basal、i-p)(例えば、pが1である時の
図9Aの基礎インスリン感受性推定曲線ISF
basal、i-1908)から時間tにおいて取られた基礎インスリン感受性因子値であり、
ΔU
basal=U
basal、i-U
basal、ad、
U
basal、iは、いくつかの実施形態では、長期作用型インスリン薬剤レジメン208によって指定される現時間帯(例えば、現時点のエポック212)の長期作用型インスリン薬剤210の投与量であり、他の実施形態では、インスリンペン104からの注射イベント記録から判断される、現時間帯iで対象者が実際に取った、長期作用型インスリン薬剤210の量であり、この場合、理解されるであろうが、U
basal、iは、条件406-Aをトリガしたまさにその時の空腹期間が長期作用型インスリンレジメンにアドヒアランスしている時にいずれかのソースから同等に引き出されてよく、
U
basal、adは、いくつかの実施形態では、対象者の前回の適格な(例えばインスリンレジメンにアドヒアランスした)空腹時イベントと同時に発生する時間の長期作用型インスリン薬剤210の投与量であり、他の実施形態では、インスリンペン104からの注射イベント記録から判断される、対象者の前回の適格な(例えば、インスリンレジメンにアドヒアランスした)空腹時イベントと同時に発生する時間帯pで対象者が実際に取った、長期作用型インスリン薬剤210の量であり、この場合、理解されるであろうが、U
basal、adは、対象者が長期作用型インスリンレジメンにアドヒアランスした時間帯からのものであるため、いずれかのソースから同等に引き出されてよい。U
basal、adはU
basal、i-pとも示され得る。
【0111】
の算出。いくつかの実施形態では、
は、空腹時イベントの時間(t)の間の空腹時血糖測定値であり、これは、条件406-はいをトリガした空腹時イベント(第1の空腹時イベント)と時間(t)で同時に起こる第1のデータセット220における複数のグルコース測定値の一部から得られる。いくつかの実施形態では、空腹時イベントは、3分以上、5分以上、5分~30分、またはその他の時間帯にわたって測定される。そのように、いくつかの実施形態では、第1のデータセット220において空腹時イベントに対する2つ以上のグルコース測定値222がある。このケースの時、
はその時間帯内の複数のグルコース測定値222の、平均値、またはその他の中心傾向の測定である。
【0112】
ISF
basal、i-p、tの算出。値ISF
basal、i-p、tは、現在の空腹時イベントの前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の先の基礎インスリン感受性因子である。値ISF
basal、i-p、tは、例えば、
図9Aの既存の基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i、t)230に対する時間(t)での値をサンプリングすることから得られ得る。pが1に設定されると、ISF
basal、i-p、tを前日といった先の定期的な時間帯から取ることを意味し、ISF
basal、i-1、t908の値はISF
basal、i-p、tに対して得られる。このように、ブロック412の等式の計算によって、
図9Aに示される値ISF
basal、i、t230がもたらされる。
【0113】
ブロック414。
図4Bのブロック414を参照すると、いくつかの実施形態では、第1の空腹時イベントは、(i)対象者が第1の空腹時イベントより前の第1の所定の時間帯(例えば、12時間)で短時間作用型インスリン薬剤の補正ボーラスを取っていない時、および、(ii)対象者が第1の空腹時イベントより前の第2の所定の時間(例えば、14時間)でそれぞれの食事なし低血糖イベントによる短時間作用型インスリン薬剤の食事ボーラスを取っている時、適格であるとみなされる。いくつかの実施形態では、第1の所定の時間帯は、6時間以上、7時間以上、8時間以上、9時間以上、10時間以上、11時間以上、または12時間以上である。いくつかの実施形態では、第2の所定の時間帯は、10時間以上、11時間以上、12時間以上、13時間以上、14時間以上、または15時間以上である。
【0114】
図4Bのブロック416を参照すると、
図9Aおよび
図9Bに示されるように、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230が行われると、基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i)234が推定される。新規の基礎インスリン感受性因子推定(ISF
basal、i、t)230が第1の適格な空腹時イベントの発生時間(t)における対象者の基礎インスリン感受性を表すのに対し、基礎インスリン感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)234は、1日の間といった所定の定期的な時間帯にわたる対象者の基礎インスリン感受性因子を表す。しかしながら、新規の基礎インスリン感受性因子推定(ISF
basal、i、t)230を使用して、本開示の教示に従って、基礎インスリン感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)234を更新する。ブロック418を参照すると、いくつかの実施形態では、基礎インスリン感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)234は、以下の式によって計算される。
式中、ISF
basal、i-pは先の基礎感受性因子曲線推定を表す。例えば、pが新規の空腹時イベントの前日によるもの、ひいては値1を有する場合、また、基礎感受性因子曲線推定が1日といった定期的な24時間の時間帯の間にわたるものである場合、基礎感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)234は、
図9Aおよび
図9Bの先の基礎感受性因子曲線推定(ISF
basal、i-p)904を、
図4Bのブロック410または412において得られる新規の基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230と、時間(t)での
図9Aまたは
図9Bの先の基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i-1)904をサンプリングすることによって得られる基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i-1、t)908との間のデルタ分シフトすることによって、計算され、ここでこのデルタは、それぞれのサンプリングされた時間tに対して以下のように表される。
【0115】
図9Aおよび
図9Bからの遷移によって示されるように、新規の基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230は、該時間帯における1つの時点でのものであっても、新規の基礎感受性因子曲線推定(ISF
basal、i)234を算出するために基礎感受性因子曲線推定(ISF
basal、i-1)904全体を比例的にシフトさせるために使用される。
【0116】
ブロック420および
図9Cを参照すると、いくつかの実施形態では、さらなる推定が行われる。例えば、いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)236は、新しく推定された基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230に応じて推定される。すなわち、基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230は、上述されるように推定される時、ボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)236を推定するために使用される。
図4Bのブロック422を参照すると、いくつかの実施形態では、推定された基礎インスリン感受性因子推定(ISF
basal、i、t)230に応じてボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)236を推定することは、
を計算することを含む。式中、ISF
bolus、i-pは、先のボーラス感受性因子曲線推定であり、ここで、値tは、その時、ボーラス全体の感受性因子曲線推定を(例えば、1日といった、所定の期間の曲線全体を)ステップ実行するために使用される。例えば、pが新規の空腹時イベントの前日によるもの、ひいては値1を有する場合、また、基礎インスリン感受性因子曲線推定およびボーラスインスリン感受性因子曲線推定が両方とも1日といった定期的な24時間の時間帯の間にわたるものである場合、ボーラス感受性因子曲線推定(ISF
bolus、i)236は、
図9Bおよび
図9Cの先のボーラス感受性因子曲線推定(ISF
bolus、i-p)906を、(ここで、
図9Cが多くのサンプリングされた値(ISF
basal、i、t)230のうちの1つを示す場合)(ISF
basal、i、t)230とする、新規の基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i、t)230と、時間(t)での
図9Bまたは
図9Cの先の基礎インスリン感受性因子曲線(ISF
basal、i-1)904をサンプリングすることによって得られる対応する基礎インスリン感受性推定(ISF
basal、i-1、t)908との間のデルタ分シフトすることによって、計算され、ここでこのデルタは、それぞれのサンプリングされた時間tに対して以下のように表される。
【0117】
図4Bのブロック424を参照すると、上記の実施形態は、i日目といったi番目の時間帯での新規の推定された基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)234の計算を表現している。典型的には、このi番目の時間帯(例えば、このi日目)は今日である。いくつかの実施形態では、新規の推定された基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)234がなされた時、その後、これまでの日(または、曲線によって表される他のこれまでの定期的な時間帯)からの1つまたは複数の基礎インスリン感受性曲線推定と組み合わせられることで、更新された基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal)を形成する。
図4Bのブロック426を参照すると、いくつかのこのような実施形態では、この基礎インスリン感受性因子曲線は、
を計算することによって更新され、式中、qは、ISF
basalに対する所定の数の履歴更新であり、wは、正規化重みの線形または非線形ベクトルであり、nは、ISF
basalおよびベクトルwに対する履歴更新への整数インデックスであり、ISF
basal、nは、n番目の過去のISF
basal算出である。例えば、いくつかの実施形態では、以前の時間帯(例えば、従前の日)を表す基礎インスリン感受性曲線推定ISF
basal、nは、より後の日を表す基礎インスリン感受性曲線推定ISF
basal、nに対して重み低減される。これは、対象者の真の基礎インスリン感受性曲線を判断する有意性を有する可能性がより大きい、もっと最近の基礎インスリン感受性曲線推定を強調するために行われる。これは、1つの実施形態において、例えば、第1の重みが第2の重みより少ない場合、以前の基礎インスリン感受性曲線推定ISF
basal、nに対する第1の重みと、後の基礎インスリン感受性曲線推定ISF
basal、nに対する第2の重みとを適用することによって、ブロック426の等式を使用して基礎インスリン感受性因子曲線を更新することによって、達せられる。このように、以前の基礎インスリン感受性因子曲線推定ISF
basal、nは、後の基礎インスリン感受性曲線推定ISF
basal、nより少ない更新のインスリン感受性曲線の一因となっている。いくつかの実施形態では、過去7つのインスリン感受性曲線推定ISF
basal、nは、ブロック426の等式に従って組み合わせられ、ここで、最も古い基礎インスリン感受性曲線推定曲線(ISF
basal、n-7)は、最も少ない重みを有し、直近の基礎インスリン感受性曲線推定ISF
basal、nは、最も大きい重みを有し、最も古い曲線推定と直近の曲線推定との間の曲線推定は、線形にスケーリングされる。
【0118】
ブロック426の式が他の実施形態においてどのように重み付けされるかについての別の例では、それぞれのwnは対応するISFbasal、nに対する独立した重みであり、それぞれのwnは、(i)wnが閾値の日にちの前であるISFbasal、nを重み付けする時の第1の値に等しい、および、(ii)wnが閾値の日にちの後であるISFbasal、nを重み付けする時の第2の値に等しく、第1の値は第2の値より小さい。このような実施形態では、それぞれの基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nは、{w1a1、w2a2、…、wRaR}のセットを形成するために対応する重みで乗算され、ここで、セットにおけるそれぞれのanはISFbasal、nを表し、このセットは基礎インスリン感受性因子曲線ISFbasalを形成するために合計される。閾値の日にちの前に生じるこれらの基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nの重みwiはそれぞれ、第1の値に等しく、閾値の日にちの後に生じるこれらの基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nはそれぞれ、第2の値に等しい。いくつかの実施形態では、閾値の日にちは、ステップ406-はいの前回のインスタンスの現在の適格である空腹時イベントの日にちの3日前、ステップ406-はいの前回のインスタンスの現在の適格である空腹時イベントの日にちの5日前、または、ステップ406-はいの前回のインスタンスの現在の適格である空腹時イベントの日にちの7日前である。換言すれば、いくつかの実施形態では、3日以上前、5日以上前、または7日以上前に行われる基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nを使用して形成される更新された基礎インスリン感受性因子曲線ISFbasalはそれぞれ、第1の重みに対して重み付けされるのに対し、もっと最近形成された基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nはそれぞれ、第2の重みに対して重み付けされる。いくつかのこのような実施形態では、第1の値はゼロであり、第2の値は1である。
【0119】
いくつかの実施形態では、基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nは、曲線推定にわたって時間tごとに、基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nの加重平均を取るまたは中心傾向の測定を行うことによって、組み合わせられる。すなわち、曲線における時間tごとに、過去の基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nのそれぞれは、時間tでの基礎インスリン感受性因子に対してその時間tでサンプリングされ、これらの値の加重平均または中心傾向の測定を使用して、更新された基礎インスリン感受性因子曲線に対する時点tを形成する。いくつかの実施形態では、中心傾向の測定は、例えば、算術平均、重み付き平均、中点値、ミッドヒンジ(midhinge)、トリム平均、ウィンザー化平均、中央値、またはこのような値の最頻値とすることができる。いくつかの実施形態では、複数の基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nは、Nの直近の基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nの加重平均を取ることによって、または、Nの直近の基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbasal、nの中心傾向の測定を行うことによって、基礎インスリン感受性因子曲線ISFbasalに組み合わせられ、ここで、Nは正の整数(例えば、1、2、3、4、5、6など)である。この中心傾向の測定は、例えば、算術平均、重み付き平均、中点値、ミッドヒンジ、トリム平均、ウィンザー化平均、中央値、またはこのような値の最頻値とすることができる。
【0120】
ブロック428。
図4Cのブロック428に移ると、短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスが行われる場合(408-はい)、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232が対象者に対して行われる。この推定は、(i)短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスに基づく予想される血糖値(BG
expected)、(ii)補正ボーラスが行われた後の対象者のグルコース値(
)であって、補正ボーラスが行われた後の時間帯と同時に発生する複数のグルコース測定値の一部から得られる、
、および、(iii)短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のインスリン感受性因子(ISF
bolus、i-p、t)を利用する。
【0121】
図4Cのブロック430を参照すると、いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232は、
のように計算される。
【0122】
BG
expectedの計算。いくつかの実施形態では、BG
expectedは、
のように計算される。ここで、
は、食事イベント後の低血糖イベントと同時に発生する対象者のグルコース測定値222、または、低血糖イベントと同時に発生する対象者の複数のグルコース測定値222のその他の中心傾向の測定である。
は、補正ボーラスが取られる前に測定される。ISF
bolus、i-1、tは、時間t(例えば、対象者が実際にまさにその時の条件408-はいをトリガしたボーラスを取った時間)での先のボーラスインスリン感受性推定曲線ISF
bolus、i-1から時間tで取られた基礎インスリン感受性因子値である。U
corr、iは、いくつかの実施形態では、短時間作用型インスリン薬剤レジメン214によって指定される現時間帯i(例えば、当日/現時間218)の短時間作用型インスリン薬剤214の投与量であり、他の実施形態では、まさにその時の条件408-はいをトリガしたボーラスに対して対象者が実際に取った短時間作用型インスリン薬剤214の量である。U
corr、iは、上限を下回る低血糖値をもたらし、正常な範囲のグルコース値にするのに必要な補正ボーラスである。
【0123】
の算出。いくつかの実施形態では、
は、ボーラス注射イベント408-はいの時間(t)の間の血糖測定値であり、これは条件408-はいをトリガしたボーラス注射イベント(補正ボーラス)による時間(t)において同時に起こる第1のデータセット220における複数のグルコース測定値の一部から得られる。いくつかの実施形態では、ボーラスイベントは、3分以上、5分以上、5分~30分、またはその他の時間帯にわたって測定される。そのように、いくつかの実施形態では、第1のデータセット220においてボーラスイベントに対する2つ以上のグルコース測定値222がある。いくつかの実施形態では、このような時、
は、その時間帯内の複数のグルコース測定値222の、平均値、またはその他の中心傾向の測定である。BG
corr、iは補正ボーラスが取られた後に測定される。
【0124】
ISFbolus、i-p、tの算出。値ISFbolus、i-p、tは、現在のボーラスイベントの前に生じる適格なボーラスイベント中の対象者の先のボーラスインスリン感受性因子である。値ISFbolus、i-p、tは、例えば、既存のボーラスインスリン感受性曲線ISFbolus、i-p上で時間(t)で値をサンプリングすることによって得られ得る。pが1に設定されると、ISFbolus、i-p、tを前日といった先の定期的な時間帯から取ることを意味し、ISFbolus、i-1、tの値はISFbolus、i-p、tに対して得られる。
【0125】
ブロック432。
図4Cのブロック432を参照すると、新規のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232が行われると、ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)236が推定される。新規のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232が補正ボーラスの時間における対象者のボーラスインスリン感受性を表すの対し、ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)236は、1日の間といった、所定の定期的な時間帯にわたる対象者のボーラスインスリン感受性因子を表す。しかしながら、新規のボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232を使用して、本開示の教示に従って、ボーラスインスリン感受性因子曲線(ISF
bolus、i)236を更新する。
図4Cのブロック434を参照すると、いくつかの実施形態では、ボーラス感受性因子曲線236を推定することは、
を計算することを含み、式中、ISF
bolus、i-pは先のボーラス感受性因子曲線推定を表す。
【0126】
ブロック436を参照すると、いくつかの実施形態では、さらなる推定が行われる。例えば、いくつかの実施形態では、基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)234は、新しく推定されたボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232に応じて推定される。すなわち、推定されたボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232は、上述されるように行われる時、基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)234を推定するために使用される。
図4Cのブロック438を参照すると、いくつかの実施形態では、推定されたボーラスインスリン感受性推定(ISF
bolus、i、t)232に応じて基礎インスリン感受性曲線(ISF
basal、i)234を推定することは、
を計算することを含む。式中、ISF
basal、i-pは、先の基礎感受性因子曲線推定を表す。
【0127】
図4Cのブロック440を参照すると、上記の実施形態は、i日目といったi番目の時間帯での新規の推定されたボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)236の計算を表現している。典型的には、このi番目の時間帯(例えば、このi日目)は今日である。いくつかの実施形態では、新規の推定されたボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus、i)236が推定された時、その後、これまでの日(または、これまでの定期的な時間帯)からの1つまたは複数のボーラスインスリン感受性曲線推定と組み合わせられることで、更新されたボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus)を形成する。
図4Cのブロック442を参照すると、いくつかの実施形態では、このボーラスインスリン感受性因子曲線は、
を計算することによって更新され、式中、qは、ボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus)に対する所定の数の履歴更新であり、wは、正規化重みの線形または非線形ベクトルであり、nは、ISF
bolusおよびベクトルwに対する履歴更新への整数インデックスであり、ISF
bolus、nは、n番目の過去のボーラスインスリン感受性曲線(ISF
bolus)である。
【0128】
例えば、いくつかの実施形態では、以前の時間帯(例えば、従前の日)を表すボーラスインスリン感受性曲線推定ISFbolus、nは、より後の日を表すボーラスインスリン感受性曲線推定ISFbolus、n曲線に対して重み低減される。これは、対象者の真のボーラスインスリン感受性曲線を判断する有意性を有する可能性がより大きい、もっと最近のボーラスインスリン感受性曲線推定を強調するために行われる。これは、例えば、1つの実施形態において、第1の重みが第2の重みより少ない場合、以前のボーラスインスリン感受性曲線推定ISFbolus、nに対する第1の重みと後の基礎インスリン感受性曲線推定ISFbolus、nに対する第2の重みとを適用することによって、ブロック442の等式を使用してボーラスインスリン感受性因子曲線を更新することによって、達せられる。このように、以前の基礎インスリン感受性曲線推定ISFbolus、nは、後の基礎インスリン感受性曲線推定ISFbolus、nより少ない更新のインスリン感受性曲線の一因となっている。いくつかの実施形態では、過去7つのボーラスインスリン感受性曲線推定ISFbolus、nは、ブロック442の等式に従って組み合わせられ、ここで、最も古いボーラスインスリン感受性曲線推定(ISFbolus、n-7)は、最も少ない重みを有し、直近のボーラスインスリン感受性曲線推定ISFbolus、nは、最も大きい重みを有し、最も古い曲線推定と直近の曲線推定との間の曲線推定は、線形にスケーリングされる。
【0129】
ブロック442の式がどのように重み付けされるかについての別の例では、それぞれのwnは対応するISFbolus、nに対する独立した重みであり、それぞれのwnは、(i)wnが閾値の日にちの前であるISFbolus、nを重み付けする時の第1の値に等しい、および、(ii)wnが閾値の日にちの後であるISFbolus、nを重み付けする時の第2の値に等しく、第1の値は第2の値より小さい。このような実施形態では、それぞれのボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nは、{w1a1、w2a2、…、wRaR}のセットを形成するために対応する重みで乗算され、ここで、セットにおけるそれぞれのanはISFbolus、nを表し、このセットは更新されたボーラスインスリン感受性因子曲線ISFbasalを形成するために合計される。閾値の日にちの前に生じるこれらのボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nの重みwiはそれぞれ、第1の値に等しく、閾値の日にちの後に生じるこれらのボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nはそれぞれ、第2の値に等しい。いくつかの実施形態では、閾値の日にちは、ステップ408-はいの前回のインスタンスの現在の適格であるボーラスイベントの日にちの3日前、ステップ408-はいの前回のインスタンスの現在の適格であるボーラスイベントの日にちの5日前、または、ステップ408-はいの前回のインスタンスの現在の適格であるボーラスイベントの日にちの7日前である。換言すれば、いくつかの実施形態では、3日以上前、5日以上前、または7日以上前に行われるボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nを使用して形成される更新されたボーラスインスリン感受性因子曲線ISFbolusはそれぞれ、第1の重みに対して重み付けされるのに対し、もっと最近形成されたボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nはそれぞれ、第2の重みに対して重み付けされる。いくつかのこのような実施形態では、第1の値はゼロであり、第2の値は1である。
【0130】
いくつかの実施形態では、ボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nは、曲線推定にわたって時間tごとに、ボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nの加重平均を取るまたは中心傾向の測定を行うことによって、組み合わせられる。すなわち、曲線における時間tごとに、過去のボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nのそれぞれは、時間tでのボーラスインスリン感受性因子に対してその時間tでサンプリングされ、これらの値の加重平均または中心傾向の測定を使用して、更新されたボーラスインスリン感受性因子曲線に対する時点tを形成する。いくつかの実施形態では、中心傾向の測定は、例えば、算術平均、重み付き平均、中点値、ミッドヒンジ、トリム平均、ウィンザー化平均、中央値、またはこのような値の最頻値とすることができる。いくつかの実施形態では、複数のボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nは、Nの直近のボーラスインスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nの加重平均を取ることによって、または、Nの直近の基礎インスリン感受性因子曲線推定ISFbolus、nの中心傾向の測定を行うことによって、ボーラスインスリン感受性因子曲線ISFbolusに組み合わせられ、ここで、Nは正の整数(例えば、1、2、3、4、5、6など)である。この中心傾向の測定は、例えば、算術平均、重み付き平均、中点値、ミッドヒンジ、トリム平均、ウィンザー化平均、中央値、またはこのような値の最頻値とすることができる。
【0131】
ブロック444。有利には、開示された技法によって、改善された基礎インスリン感受性因子(ISF
basal)曲線およびボーラスインスリン感受性因子(ISF
bolus)曲線がもたらされる。
図4Aのブロック444を参照すると、いくつかの実施形態では、対象者における目標の空腹時グルコース値を達成するための短時間作用型インスリン薬剤の第1の推奨用量は、複数のグルコース測定値の一部からのグルコース測定値、および、更新されたボーラスインスリン感受性因子曲線ISF
bolusまたは更新された基礎インスリン感受性因子曲線ISF
basalを使用することによって提供される。
【0132】
ブロック446を参照すると、いくつかの実施形態では、第1の時間帯にわたって取られる、対象者の複数のタイムスタンプ付与生理学的測定値を含む第2のデータセット238が得られる。いくつかのこのような実施形態では、ISF
basal、i-p、tの量412またはISF
bolus、i-p、tの量430に対するpの値は、複数の生理学的測定値によって判断される。例えば、
図4Aのブロック448を参照すると、いくつかの実施形態では、それぞれの生理学的測定値240は、対象者の体温の測定値であり、pは、対象者の体温が上昇している時の期間中に低減する。別の例として、
図4Aのブロック450を参照すると、いくつかの実施形態では、それぞれの生理学的測定値は対象者の活動の測定値であり、pは、対象者の活動が高められている時の期間中に低減する。
【0133】
いくつかのこのような実施形態では、ブロック426の合計またはブロック442の合計に対するqの値は、複数の生理学的測定値によって判断される。例えば、いくつかの実施形態では、それぞれの生理学的測定値240は対象者の体温の測定値であり、qは、対象者の体温が上昇している時の期間中に低減する。別の例として、いくつかの実施形態では、それぞれの生理学的測定値は対象者の活動の測定値であり、qは、対象者の活動が高められている時の期間中に低減する。
【0134】
図11を参照すると、いくつかの実施形態では、インスリン薬剤レジメンに対する対象者のアドヒアランス全体は、それぞれが、参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月30日出願の、「System and Methods for Analysis of Insulin Regimen Adherence Data」という名称の、欧州特許出願第16177082.1号、16177083.9号、および16177090.4号において開示される技法を使用して、および/または実施例1に開示されるインスリンレジメンアドヒアランス技法によって、監視される。いくつかのこのような実施形態では、インスリン薬剤レジメン206アドヒアランスが閾値を下回る(例えば、インスリン薬剤レジメン206アドヒアランスがインスリン薬剤レジメン206によって指定される注射イベントの90パーセントよりも下がる、インスリン薬剤レジメン206アドヒアランスがインスリン薬剤レジメン206によって指定される注射イベントの80パーセントよりも下がる、インスリン薬剤レジメンアドヒアランスがインスリン薬剤レジメン206によって指定される注射イベントの70パーセントよりも下がる、またはアドヒアランスする注射イベント、空腹時イベント、および/または食事イベントのパーセンテージに基づくその他の閾値)時、
図4A~
図4Cに示されるように、インスリン感受性因子曲線ISF
basalおよびISF
bolusを更新するための空腹時イベントまたはボーラスインスリン注射イベントの使用は、
図11に示されるように、このようなインスリン薬剤レジメン206アドヒアランスの時間がこの閾値より高くなるまで、保留にされる。
【実施例0135】
ボーラス注射イベントまたは空腹時イベントがインスリンレジメンにアドヒアランスしているかどうかを判断するためのグルコース測定値の使用。いくつかの実施形態では、複数のグルコース測定値を含む第1のデータセット220が得られる。いくつかの実施形態では、グルコース測定値は、例えば、連続グルコースモニタによって自律的に得られる。この例では、自律的グルコース測定値に加えて、インスリン投与イベントは、インスリン薬剤レジメン206を適用するために対象者によって使用される1つまたは複数のインスリンペン104からのインスリン薬剤記録の形式で得られる。これらのインスリン薬剤記録は、任意のフォーマットであってよく、実際には、複数のファイルまたはデータ構造にわたって散在してよい。そのように、いくつかの実施形態では、本開示は、近年進歩したインスリン投与ペンを活用する。このインスリン投与ペンは、過去に投与したインスリン薬剤のタイミングおよび量を覚えることができるという意味で「スマート」になっている。このようなインスリンペン104の1つの例は、NovoPen5である。このようなペンは、患者が用量をログ記録する際に支援し、かつ2倍の投薬を防止する。インスリンペンによって、インスリン薬剤用量およびタイミングを送りかつ受信することができるようになり、ひいては、本開示の、連続グルコースモニタ102、インスリンペン104、およびアルゴリズムの統合が可能になることが考えられる。そのように、1つまたは複数のインスリンペン104からのインスリン薬剤記録は、1つまたは複数のインスリンペン104からのこのようなデータのワイヤレスな取得を含むと考えられる。
【0136】
いくつかの実施形態では、それぞれのインスリン薬剤記録は、(i)1つまたは複数のインスリンペンにおける対応するインスリンペンを使用して対象者に注射されるインスリン薬剤の量を含む対応するインスリン薬剤注射イベント、および、(ii)対応するインスリン薬剤注射イベントの発生時に対応するインスリンペン104によって自動的に生成される対応する電子タイムスタンプを含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、空腹時イベントは、第1のデータセット220における、対象者のグルコース測定値222、およびこれらに関連したグルコース測定タイムスタンプ224を使用して特定される。空腹時イベントが特定されると、上記のブロック406および408について説明される方法、または任意の他の方法によって、空腹時イベントに対する類別が適用される。この類別は、「インスリンレジメンのアドヒアランス」および「インスリンレジメンの非アドヒアランス」のうちの1つである。
【0138】
空腹時イベントは、取得された1つまたは複数の薬剤記録が、時間および数量ベースで、空腹時イベント中の長期作用型インスリン薬剤レジメン208でのアドヒアランスを確立する時、インスリンレジメンのアドヒアランスとみなされる。空腹時イベントは、取得された1つまたは複数の薬剤記録が時間および数量ベースで、空腹時イベント中の長期作用型インスリン薬剤レジメンでのアドヒアランスを確立する1つまたは複数の薬剤記録を含まない時、インスリンレジメンの非アドヒアランスとみなされる。いくつかの実施形態では、長期作用型インスリン薬剤レジメン208は、長期作用型インスリン薬剤210の用量が複数のエポックでのそれぞれの対応するエポック212中に取られるべきものである、および、空腹時イベントは、空腹時イベントと関連付けられるエポック212での薬剤記録がない時、インスリンレジメンの非アドヒアランスとみなされることを指定する。さまざまな実施形態では、複数のエポックにおけるそれぞれのエポックは、2日以下、1日以下、または12時間以下である。よって、第1のデータセット220は空腹期間を特定するために使用され、長期作用型インスリン薬剤レジメン208は24時間ごとの長期作用型インスリン薬剤210の投与量Aを取ることを指定する場合を考慮されたい。この例では、従って、エポックは1日(24時間)である。空腹時イベントは、タイムスタンプ付与グルコース測定値の最小変動期間から、または、タイムスタンプ付与グルコース測定値222の他の形式の解析によって導出されるため、本質的にタイムスタンプ付与される。よって、対応する空腹時イベントによって表される、タイムスタンプまたは空腹期間は、空腹時イベントがインスリンレジメンのアドヒアランスであるかどうかを検査するための開始点として使用される。例えば、対応するタイムスタンプと関連付けられた空腹期間が5月17日火曜日午前6時である場合、薬剤注射記録において求められることは、対象者が5月17日火曜日午前6時までの24時間の期間(エポック)における長期作用型インスリン薬剤の投与量Aを取った(および、処方された投与量以上または以下ではない)ことの根拠である。対象者がこのエポック中に長期作用型インスリン薬剤の投与量を取った場合、空腹時イベント(および/または基礎注射イベントおよび/またはこの時間中のグルコース測定値)は、インスリンレジメンのアドヒアランスとみなされる。対象者がこのエポック212中に長期作用型インスリン薬剤210の用量を取らなかった(または、長期作用型インスリンレジメン208によって指定されるこの期間中に長期作用型インスリン薬剤の用量以上を取った)場合、空腹時イベント(および/または基礎注射イベントおよび/またはこの時間中のグルコース測定値)は、インスリンレジメンの非アドヒアランスとみなされる。
【0139】
いくつかの実施形態では、エポックは、長期作用型インスリン薬剤レジメン208によって定義され、対象者がエポック中にインスリン薬剤レジメン208によって必要とされる基礎インスリンの量(およびそれ以下)を取る限り、空腹時イベント後であっても、空腹時イベントはインスリンレジメンのアドヒアランスとみなされることになる。例えば、エポックが夜中ちょっと過ぎに毎日を始める1日である(換言すれば、長期作用型インスリン薬剤レジメン208が毎日取るべき1つまたは複数の長期作用型インスリン薬剤投与量を指定し、さらに、夜中の始まりおよび終わりを1日と定義する)、および、空腹時イベントが正午に生じる場合、空腹時イベントは、対象者が日中のある時点で1日に対して処方された長期作用型インスリン薬剤注射を行うことを提供するインスリンレジメンのアドヒアランスとみなされることになる。
【0140】
この例を続けると、いくつかの実施形態では、食事イベントは、食事検出アルゴリズムを使用して、第1のデータ220における、グルコース測定値222および対応するタイムスタンプ224から特定される。このような食事検出の例は、ブロック406および408を参照して上述されている。いくつかの実施形態では、ボーラス注射イベントは、ボーラス注射イベントについての注射イベント記録が、時間ベース、数量ベース、およびインスリン薬剤タイプベースで、検出される食事に対する短時間作用型インスリン薬剤レジメン214でのアドヒアランスを指示する時、インスリンレジメンのアドヒアランスとみなされる。いくつかの実施形態では、ボーラス注射イベントは、ボーラス注射イベントについての薬剤記録が、時間ベース、数量ベース、およびインスリン薬剤タイプベースで、検出される食事に対する短時間作用型インスリン薬剤レジメン214でのアドヒアランスを指示しない時、インスリンレジメンの非アドヒアランスとみなされる。例えば、短時間作用型インスリン薬剤レジメン214が、インスリン薬剤Bの投与量Aが、検出される食事の30分前までに取られるべきであること、および、5月17日火曜日午前7時に食事が行われることを指定することを考慮されたい。投与量Aは予期される食事のサイズまたはタイプによるものであってよいことは、理解されるであろう。薬剤記録において求められることは、対象者が5月17日火曜日午前7時までの30分におけるインスリン薬剤Bの投与量Aを取った(および、処方された投与量以上または以下ではない)ことの根拠である。対象者がボーラス注射としての対応する食事までの30分の間にインスリン薬剤Bの処方された投与量Aを取った場合、このボーラス注射イベントは、インスリンレジメンのアドヒアランスとみなされることになる。対象者が対応する食事までの30分を超えてインスリン薬剤Bの投与量Aを取った(または、インスリン薬剤Bの処方された投与量A以上が含有された)場合、ボーラス投与はインスリンレジメンの非アドヒアランスとみなされることになる。ここでの30分という時間帯は例示であり、他の実施形態では、時間はより短いかより長いものである(例えば、食事の15分~2時間前である、および/または処方されるインスリン薬剤のタイプに依存している)。いくつかの実施形態では、短時間作用型インスリン薬剤レジメン214は、ボーラス注射が食後少したってから取ることを可能にする。
【0141】
いくつかの実施形態では、短時間作用型インスリン薬剤レジメン214は、短時間作用型インスリン薬剤が食後の所定の時間までに取られるべきであることを指定する。いくつかのこのような実施形態では、対応するボーラス注射イベントは、対応するボーラス注射イベントがこの許容時間で生じる時、インスリンレジメンの非アドヒアランスとみなされる。いくつかのこのような実施形態では、所定の時間は、30分以下、20分以下、または15分以下である。
8.第1の空腹時イベントは、(i)対象者が、第1の空腹時イベントの12時間前に短時間作用型インスリン薬剤の補正ボーラスを取っていない時、および、(ii)対象者が、第1の空腹時イベントの14時間前にそれぞれの食事なし低血糖イベントによる短時間作用型インスリン薬剤の食事ボーラスを取っている時、適格であるとみなされる、実施形態1~7のいずれか1つのデバイス。
15.方法は、第2のデータセット(238)を得ることであって、第2のデータセットは、第1の時間帯にわたって取られる対象者の複数の生理学的測定値、および複数の生理学的測定値におけるそれぞれの対応する生理学的測定値(240)に対して、対応する生理学的測定が行われた時を表す生理学的測定タイムスタンプ(242)を含む、得ることをさらに含み、pの値は、複数の生理学的測定値によって判断される、実施形態1~14のいずれか1つのデバイス。
18.方法は、薬剤レジメンにおけるパラメータの新規のパラメータ推定と、パラメータの先のパラメータ推定との間の関数を判断することであって、関数は、B)における、インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t、ISFbolus、i、t)および先のインスリン感受性推定(ISFbasal、i-p、t、ISFbolus、i-p、t)に依存している、判断することをさらに含む、先の実施形態のいずれかによるデバイス。
19.B.1)における第1の空腹時イベントに関連する発生、またはB.2)における短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスは、現時点の発生であり、B.1)における第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベントに関連する発生、またはB.2)における短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスは、先の発生である、先の実施形態のいずれかによるデバイス。
21.パラメータ推定は、基礎インスリン感受性曲線、ボーラスインスリン感受性推定、ボーラスインスリン感受性曲線、および炭水化物対インスリン比を含む群の1つまたは複数であり、B)におけるインスリン感受性推定は、B.1)における第1の空腹時イベントの発生時の対象者に対する基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i、t)であり、B)における先のインスリン感受性推定は、B.1)における第1の空腹時イベント前に生じる適格な空腹時イベント中の対象者の基礎インスリン感受性推定(ISFbasal、i-p、t)である、実施形態18~20のいずれかによるデバイス。
22.パラメータ推定は、ボーラスインスリン感受性曲線、基礎インスリン感受性推定、基礎インスリン感受性曲線、および炭水化物対インスリン比を含む群の1つであり、B)におけるインスリン感受性推定は、B.2)における、第1の時間帯内の短時間作用型インスリン薬剤による補正ボーラスを行う際の対象者に対するボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i、t)であり、先の推定は、B.2)における、短時間作用型インスリン薬剤による先の補正ボーラスを行うことに基づいて推定される対象者のボーラスインスリン感受性推定(ISFbolus、i-p、t)である、実施形態18~20のいずれかによるデバイス。
25.方法は、基礎インスリン感受性曲線、ボーラスインスリン感受性推定、ボーラスインスリン感受性曲線、または炭水化物対インスリン比を推定することをさらに含み、推定することは判断された関数を使用する、実施形態21、23~24のいずれかによるデバイス。
26.方法は、ボーラスインスリン感受性曲線、基礎インスリン感受性推定、基礎インスリン感受性曲線、または炭水化物対インスリン比を推定することをさらに含み、推定することは関数関係を使用する、実施形態22~24のいずれかによるデバイス。
28.基礎関係は、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定を可能にし、推定されたインスリン感受性の変化を使用して、ボーラスインスリン感受性推定を算出する、または基礎インスリン感受性因子曲線を算出することができる、実施形態27によるデバイス。
30.ボーラス関係は、対象者のインスリン感受性の変化の特定および推定を可能にし、推定されたインスリン感受性の変化を使用して、基礎インスリン感受性推定を算出すること、またはボーラスインスリン感受性因子曲線を算出することができる、実施形態29によるデバイス。
31.方法は、C.1)C)において推定されたボーラスインスリン感受性推定に基づいて短時間作用型インスリン薬剤のボーラス用量を推定することをさらに含む、実施形態2~3のいずれかのデバイス。
33.対象者に短時間作用型インスリン薬剤を送達するための薬品送達デバイスに対する用量を設定し、設定された用量は、C.1における推定された用量に基づく、実施形態31によるデバイス。
34.方法は、D.1)D)において推定された基礎インスリン感受性推定に基づいて、長期作用型インスリン薬剤の用量を推定することをさらに含む、実施形態2~3のいずれかのデバイス。
35.対象者に短時間作用型インスリン薬剤を送達するための薬品送達デバイスに対する用量を設定し、設定された用量は、D.1における推定された用量に基づく、実施形態34によるデバイス。
本発明の多くの修正および変形は、当業者に理解されるように、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書に説明される具体的な実施形態は、例としてのみ提案されている。実施形態は、本発明の原理、およびこの実際的応用を最も良く説明することによって、当業者が本発明、および考えられる特定の使用に適するようなさまざまな修正によるさまざまな実施形態を最も良く利用できるようにするために、選定されかつ説明されたものである。本発明は、添付の特許請求項の文言に加えて、このような特許請求項に権利が与えられる全範囲の等価物によってのみ、限定されるものとする。