(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043224
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】漏斗状ノズルの寸法ばらつきの低減
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
B41J2/16
B41J2/16 401
B41J2/16 507
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210868
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2019545754の分割
【原出願日】2018-02-22
(31)【優先権主張番号】15/440,435
(32)【優先日】2017-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502122794
【氏名又は名称】フジフィルム ディマティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー デブラバンダー
(72)【発明者】
【氏名】マーク ニポムニシ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板に漏斗状ノズルを形成する技術を提供する。
【解決手段】本方法は、基板の上層に、第1の幅を有する第1の開口を形成する工程、基板の上面に、第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2の開口を有するフォトレジストパターン層を形成する工程、基板の上面で終端する湾曲側面を形成するため、フォトレジストパターン層をリフローする工程、第1の幅と半導体基板の上面に対して実質的に垂直な側面とを有する直立壁凹所を形成するため、基板の上層の第1の開口を通して、基板の第2の層をエッチングする工程を含みうる。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを形成する方法であって、該方法は、
基板の上層に、第1の幅を有する第1の開口を形成する工程、
パターン層が前記基板の上面に配置されるように、前記上面の第1の開口にまたがる第2の開口を含み、前記基板の前記上面に、第1の幅より大きい第2の幅を有する前記第2の開口を有するパターン層を形成する工程、
前記基板の前記上面で終端する湾曲側面を形成するため、前記パターン層をリフローする工程、
前記基板の前記上面の前記第1の開口を通して前記基板の第2の層をエッチングして前記基板の前記第2の層に凹所を形成する工程であって、前記凹所の下面から前記基板の前記上面まで延び、実質的に一定の幅を有する工程、および
前記凹所が形成された後、前記凹所の前記下面がエッチングに曝露されている間に、前記パターン層の前記湾曲側面、前記基板の前記上面、および前記基板の前記第2の層をエッチングする工程を含み、エッチングにより、前記凹所が前記凹所の前記下面よりも前記基板の前記上面の方が広くなるようにする、方法。
【請求項2】
ステッパを使用して、前記基板の前記上面に前記パターン層を位置合わせする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の開口を形成する工程は、ノンリフローレジストを用いて前記第1の開口をエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法
【請求項4】
前記基板は、半導体基板であり、前記第2の層は、ボッシュエッチングプロセスに対して高選択性を有する酸化物層である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の前記上面をエッチングして前記凹所を形成する工程は、ボッシュプロセスを用いて、前記パターン層の前記開口を通して、前記基板の前記上面をエッチングする工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記パターン層をリフローする工程は、
前記第2の開口の上縁が丸みを帯びるようになるまで、加熱によって前記パターン層を軟化させる工程、および
加熱によって軟化させた後、前記第2の開口の前記上縁に丸みを帯びさせたまま、前記パターン層を再硬化させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記パターン層を軟化する工程は、前記第2の開口が形成された前記パターン層を真空環境において加熱される工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パターン層がリフローするまで、前記第2の開口を有する前記パターン層を加熱することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パターン層を160~250℃の温度に加熱することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記パターン層を再硬化させる工程は、前記第2の開口の前記上縁が丸みを帯びたまま、前記パターン層を冷却する工程を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記凹所を形成するための前記エッチングは、前記パターン層および前記基板に対して実質的に同じエッチング速度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
CF4/CHF3ガス混合物を使用して、前記基板の前記第2の層をエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の幅は、前記第1の幅よりも約1μm大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記パターン層は、少なくとも10μmの厚さである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ノズルを形成する方法であって、該方法は、
パターン層が前記基板の上面に配置されるように、前記上面の第1の開口にまたがる第2の開口を含み、前記基板の前記上面に、第1の幅より大きい第2の幅を有する前記第2の開口を有するパターン層を形成する工程、
前記基板の前記上面で終端する湾曲側面を形成するため、前記パターン層をリフローする工程、
前記基板の前記上面の前記第1の開口を通して前記基板の第2の層をエッチングして、前記基板の前記第2の層に凹所を形成し、前記上層の前記第1の開口の外縁が前記凹所の境界を画定する工程であって、前記凹所の下面から前記基板の上面まで延び、実質的に一定の幅を有する工程、および
前記凹所が形成された後、前記凹所の前記下面がエッチングに曝露されている間に、前記パターン層の前記湾曲側面、前記基板の前記上面、および前記基板の前記第2の層をエッチングする工程を含み、エッチングにより、前記凹所が前記凹所の前記下面よりも前記基板の前記上面の方が広くなるようにする、方法。
【請求項16】
前記パターン層をリフローする工程は、
前記第2の開口の上縁が丸みを帯びるようになるまで、加熱によって前記パターン層を軟化させる工程、および
加熱によって軟化させた後、前記第2の開口の前記上縁が丸みを帯びさせたまま、前記パターン層を再硬化させる工程を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記パターン層を軟化する工程は、前記第2の開口が形成された前記パターン層を真空環境において加熱する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記パターン層がリフローするまで、前記第2の開口を有する前記パターン層を加熱することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記パターン層を160~250℃の温度に加熱することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記パターン層を再硬化させる工程は、前記第2の開口の前記上縁が丸みを帯びたまま、前記パターン層を冷却する工程を含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、MEMSデバイス、例えばインクジェットプリントヘッドにおけるノズル形成に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタによる高品質かつ高解像度の画像の印刷では、一般に、印刷媒体上の特定位置に所望量のインクを正確に放出するプリンタが要求されている。典型的には、それぞれノズルおよび対応するインク流路を含む、密にパッケージングされた複数のインク放出装置が、プリントヘッド構造体内に形成されている。インク流路は、インク貯蔵ユニット、例えばインクリザーバまたはインクカートリッジをノズルに接続している。インク流路はポンピングチャンバを含む。ポンピングチャンバにおいて、インクは、ノズル内で終端する下降部の領域へ向かって流れるように加圧可能である。インクは、ノズル端の開口から放出され、印刷媒体に降着する。媒体は、液滴放出装置に対して相対的に移動可能である。特定のノズルからの液滴の放出は、液滴が媒体上の所望の位置に配置されるよう、媒体の運動とともに時間制御される。
【0003】
プリントヘッド構造体内のインク放出器を形成するために、種々の処理技術が使用可能である。当該処理技術は、層形成、例えばデポジションおよびボンディング、ならびに層修正、例えばエッチング、レーザーアブレーション、パンチングおよびカッティングを含むことができる。使用される各技術は、例えば、インクジェットプリンタにおいて使用されている材料とともに、所望のノズル形状、流路の幾何学寸法に依存して異なりうる。
【発明の概要】
【0004】
直立壁下部および湾曲上部を有する漏斗状ノズルを開示する。漏斗状ノズルの湾曲上部は、直立壁下部へ向かって徐々に収束し、これに滑らかに接合する。漏斗状ノズルは、対称軸線を中心とした1つもしくは複数の側面を有することができ、対称軸線に対して垂直な平面における湾曲上部および直立壁下部の断面は、幾何学的に相似である。さらに、漏斗状ノズルの湾曲上部は、直立壁下部より実質的に大きい体積を包摂し、一方、直立壁下部は、漏斗状ノズルを通して放出される液滴の噴射真直度が維持される充分な高さを有する。
【0005】
本明細書において説明する漏斗状ノズルの作製のためには、まず、均質なフォトレジスト層が、半導体基板の誘電体コーティング面に堆積される。誘電体は、熱成長された二酸化ケイ素であってよく、基板は、シリコンオンインシュレータウェハであってよい。当該フォトレジスト層は、UV露光およびこれに続くレジスト現像を用いてパターニングされる。ノズルの最小寸法の断面形状は、レジスト内の開口と相似であってよく、楕円形、円形および任意のノズル形状が可能である。レジスト内の開口はドライエッチングを用いて誘電体内へ転写され、レジストは剥離される。
【0006】
均質なフォトレジスト層は、半導体基板のプレーナ上面およびフォトレジスト層のプレーナ上面に対して実質的に垂直な1つもしくは複数の側壁を有する開口が設けられるように、相似にパターニングされる。レジスト開口は、誘電体内の開口よりも僅かに大きく、この開口と相似の形状を有し、この開口に対して正確にアライメントされるように設計されている。この場合、フォトレジストパターン層は、層内のフォトレジスト材料がその表面張力の作用のもとで軟化およびリフローするように、真空中で加熱される。リフローの結果、開口の(1つもしくは複数の)上縁上の頂角または上縁間の頂角は丸みを帯びるようになり、(1つもしくは複数の)上縁は単一の丸みを帯びた縁へと変形する。丸みを帯びた縁の曲率半径は、リフローベーキング条件によって制御可能である。例えば、丸みを帯びた縁の曲率半径は、半導体基板上に堆積された均質なフォトレジスト層の初期厚さ以上であってよい。所望の上縁の丸みを帯びた形状が得られた後、フォトレジストパターン層は、冷却および再硬化可能となり、一方、上縁の丸みを帯びた形状は維持される。リフロー後、誘電体界面の開口のレジスト層は、誘電体内の開口よりも僅かに大きい状態にとどまる。
【0007】
湾曲側面がフォトレジストパターン層の露出した上面へ向かって徐々に拡大し、かつこの上面に滑らかに接合する開口を有するフォトレジストパターン層が形成された後、半導体基板内の漏斗状凹所の形成が開始可能となる。
【0008】
直立壁凹所は、誘電体層によって規定される開口を通して半導体基板内へエッチングされるものであり、フォトレジストのリフロー層によって形成される開口ではない。直立壁凹所により、例えばボッシュプロセスを使用して形成可能である。直立壁凹所の高選択性のエッチングにより、フォトレジスト層は実質的にエッチングされずに残る。凹所の深さは、漏斗状ノズルの最終設計長さ未満の数マイクロメートルであってよい。直立壁凹所が半導体基板内に形成されると、等方性ドライエッチングプロセスを使用して、直立壁凹所が漏斗状凹所へと変形させられる。特に、ドライエッチングに使用されるエッチング剤は、フォトレジスト、誘電体および半導体基板材料(例えばSi<100>ウェハ)と同等の(例えば実質的に等しい)エッチングレートを有さなければならない。ドライエッチング中、エッチング剤により、徐々に直立壁凹所が深化し、漏斗状凹所の直立壁下部が形成される。同時に、ドライエッチングにより、誘電体層近傍のボア部分の側壁が拡大され、半導体基板の水平面へと平準化された湾曲側面となる。当該漏斗は、漏斗状凹所の直立壁下部へ向かって収束し、これへと滑らかに移行する。漏斗状凹所は、エッチングされなかった基板を下方から除去することにより、下部を開放可能である。
【0009】
一態様では、ノズルを形成する方法が、基板の上層に、第1の幅を有する第1の開口を形成する工程、基板の上面に、第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2の開口を有するフォトレジストパターン層を形成する工程を含む。当該方法は、基板の上層で終端する湾曲側面を形成するため、フォトレジストパターン層をリフローする工程、第1の幅と下面と半導体基板の上面に対して実質的に垂直な側面とを有する直立壁凹所を形成するため、基板の上層の第1の開口を通して、基板の第2の層をエッチングする工程を含む。
【0010】
直立壁凹所が形成された後、当該方法は、フォトレジストパターン層の湾曲側面、基板の上層および基板の第2の層をドライエッチングする工程を含み、ここで、ドライエッチングにより、i)直立壁凹所が、当該凹所の直立壁下部に徐々に滑らかに接合する湾曲側壁または下面で終端する湾曲側壁を有する漏斗状凹所へと変形させられ、ii)直立壁凹所の一部が、第1の幅より大きい第3の幅へ拡大され、さらに、iii)上層内の第1の開口が、第3の幅より大きい第4の幅へ拡大される。
【0011】
各構成は、次の特徴のうち1つもしくは複数を含むことができる。第2の開口は、第1の開口より約1μm大きくすることができる。ステッパを使用して、フォトレジストパターン層を、第1の開口を有する基板の上面に正確にアライメントすることができる。第1の開口は、薄膜ノンリフローレジストでのエッチングにより形成可能である。基板は、半導体基板であってよく、第1の層は、ボッシュエッチングプロセスに対して高選択性を有する酸化物層であってよい。第4の幅の一部は、第1の幅より40μm大きくすることができる。フォトレジストパターン層をリフローする工程は、第2の開口の上縁が表面張力の作用のもとで丸みを帯びるようになるまで、フォトレジストパターン層を加熱によって軟化させる工程を含んでよい。加熱による軟化の後、フォトレジストパターン層は、第2の開口の上縁に丸みを帯びさせたまま、再硬化可能である。
【0012】
基板の上面に堆積されたフォトレジストパターン層は、少なくとも10μmの厚さを有してよい。フォトレジストパターン層を加熱によって軟化させる工程は、さらに、フォトレジストパターン層のフォトレジスト材料が表面張力の作用のもとでリフローするまで、真空環境において、内部に形成された第2の開口を有するフォトレジストパターン層を加熱する工程を含んでよい。フォトレジストパターン層を加熱する工程は、フォトレジストパターン層を160℃から250℃までの温度へ加熱する工程を含んでよい。フォトレジストパターン層を再硬化させる工程は、第2の開口の上縁に丸みを帯びさせたまま、フォトレジストパターン層を冷却する工程を含んでよい。湾曲上部の上部開口は、湾曲上部の下部開口の少なくとも4倍の幅を有することができる。直立壁凹所を形成するため、基板の上面をエッチングする工程は、ボッシュプロセスを使用して、フォトレジストパターン層内の開口を通して、半導体基板の上面をエッチングする工程を含んでよい。
【0013】
漏斗状凹所を形成するためのドライエッチングは、フォトレジストパターン層と半導体基板とに対して実質的に等しいエッチングレートを有することができる。漏斗状凹所を形成するためのドライエッチングは、CF4/CHF3ガス混合物を使用したドライエッチングを含んでよい。フォトレジストパターン層の第1の開口は、フォトレジストパターン層の露出した上面に対して平行な平面において、円形の断面形状を有することができる。漏斗状凹所は、基板の上面に対して平行な平面において、円形の断面形状を有することができる。複数のノズルは、0.15μm未満のノズル幅の標準偏差を有することができる。凹所は、上層を貫通して延在可能である。
【0014】
特定の構成は、次の各利点のいずれも含まないかまたはその1つもしくは複数を含みうる。
【0015】
漏斗状ノズルは、複数の液滴(例えば3滴もしくは4滴)を保持するのに充分な大きさの体積を有する湾曲上部を有する。漏斗状ノズルの側面は流線形であり、液体放出方向の不連続部を有さない。同じ深さおよび滴寸法の直立壁ノズル(例えば円柱状ノズル)と比べて、当該漏斗状ノズルの側面は、液体放出中に、液体に、より少ない摩擦を生じさせ、滴がノズルから離脱する際にノズルが空気を吸入することを防止する。液体摩擦の低減により、滴形成の安定性および均質性が改善されるだけでなく、噴射頻度を増大させ、駆動電圧を低減させ、かつ/または電力効率を増大させることができる。ノズルに単一の狭隘部を設けることにより、メニスカスを安定位置に留めることができる。ノズルへの空気流入が防止されることにより、トラップされた気泡によるノズルまたは流路の他の部材の閉塞の防止も支援可能である。
【0016】
傾斜した平坦側壁(例えば逆角錐状ノズル)を有するノズルは、円柱状ノズルに比べた幾つかの利点(例えば摩擦の低減)を実現可能であるが、傾斜ノズルの下部開口の鋭い角縁は、漏斗状ノズルよりも多くの滴引きずりを起こす。さらに、傾斜ノズル開口の角縁および長方形状(または正方形状)は、滴方向の真直度に予測不能な影響を与え、印刷品質の劣化を生じさせる。本明細書で説明している漏斗状ノズルでは、直立壁下部は、全ノズル深さに全く相当しないかもしくは僅かな一部としてしか相当せず、このため、放出される液体に過大な摩擦を生じさせることなく、直立壁下部によって噴射真直度が保証される。ゆえに、漏斗状ノズルでの、より良好な噴射真直度、より高い噴射頻度、より高い電力効率、より低い駆動電圧および/または滴形状および滴位置の均質性の達成を支援することができる。
【0017】
湾曲側面を有する漏斗状ノズルは電鋳技術またはマイクロモールディング技術を使用して形成可能であるが、こうした技術は金属材料またはプラスチック材料に限定されており、半導体基板におけるノズル形成においては動作不能である。また、電鋳技術またはマイクロモールディング技術は、精密性が低下しやすく、高解像度印刷に必要な寸法、幾何学形状およびピッチの要求を達成できない。半導体処理技術は、高度にコンパクトかつ均質な大規模ノズルアレイの製造に使用可能であり、高解像度印刷に必要な寸法、幾何学形状およびピッチの要求を満たすことができる。例えば、ノズルは5μm程度に小さくでき、ノズル間ピッチ精度は約0.5μm以下(例えば0.25μm)とすることができ、第1ノズルから最終ノズルまでのピッチ精度は約1μmとすることができ、ノズル寸法精度は少なくとも0.6μmとすることができる。
【0018】
ここで開示している方法およびシステムは、漏斗のボアの直径のばらつきを低減する。ノズル寸法のばらつきが低減されることにより、印刷線幅のばらつきを低減する(例えば消去する)ことができ、過大なばらつきを有するノズルを含むノズルプレートの廃棄の必要性を低減できる。寸法のばらつきは、ノンリフローレジストを使用してシリコンウェハ内にエッチングされた直立ボア孔ではさほど重大でないので、ここで開示している方法は、リフローされたフォトレジスト内の開口に代え、酸化物層内の開口の縁を、漏斗状ノズルの前駆体であるボッシュエッチングされた直立壁凹所の寸法の規定に使用している。酸化物開口をフォトレジスト開口より僅かに小さく形成することにより、リフローレジストでなく、酸化物によって、薄膜ノンリフローレジストとともに開口を形成でき、このため、酸化物開口はリフローレジスト開口よりも高い精密性を有する。また、酸化物は、ボッシュエッチングに対して高選択性を有する。本発明の1つもしくは複数の実施形態の詳細を添付図および以下の説明において記載する。本発明の他の特徴、対象および利点は、明細書、図面および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2A】単一の直立側壁を有するノズル(すなわち円柱状ノズル)を備えたプリントヘッド流路の側断面図、ならびに当該ノズルの上面図である。
【
図2B】傾斜した平坦側壁を有するノズルを備えたプリントヘッド流路の側断面図、ならびに当該ノズルの上面図である。
【
図2C】直立壁下部に急峻に接合する傾斜上部を有するノズルを備えたプリントヘッド流路の側断面図、ならびに当該ノズルの上面図である。
【
図3A】直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルの側断面図である。
【
図3B】ノズルの水平断面形状が円形である、直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルの上面図である。
【
図3C】直立壁下部に滑らかに接合する傾斜上部を有するノズルを備えたプリントヘッド流路の側断面図である。
【
図4A】直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルを形成する方法を示す図である。
【
図4B】直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルを形成する方法を示す図である。
【
図4C】直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルを形成する方法を示す図である。
【
図4D】直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルを形成する方法を示す図である。
【
図4E】直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルを形成する方法を示す図である。
【
図4F】直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルを形成する方法を示す図である。
【
図6A】
図4Aから
図4Fに示した方法を使用して形成されたノズルと、他の方法を使用して形成されたノズルとの、最大ノズル寸法、最小ノズル寸法および平均ノズル寸法の比較を示す図である。
【
図6B】
図4Aから
図4Fに示した方法を使用して形成されたノズルと、他の方法を使用して形成されたノズルとの、最大ノズル寸法、最小ノズル寸法および平均ノズル寸法の比較を示す図である。
【
図7A】
図4Aから
図4Fに示した方法を使用して形成されたノズルと、他の方法を使用して形成されたノズルとの、ノズル寸法の標準偏差の比較を示す図である。
【
図7B】
図4Aから
図4Fに示した方法を使用して形成されたノズルと、他の方法を使用して形成されたノズルとの、ノズル寸法の標準偏差の比較を示す図である。
【0020】
各図中、同様の要素は同様の参照記号によって示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
液滴放出部は、基板、例えば、液流ボディ、メンブレンおよびノズル層を含むMEMS(microelectromechanical system)によって構成可能である。流路ボディは、内部に形成された液流路を有し、当該液流路は、液体充填通路、液体ポンピングチャンバ、下降部、および流出口を有するノズルを含むことができる。アクチュエータは、流路ボディと向かい合うように、液体ポンピングチャンバの近傍で、メンブレンの表面に配置可能である。アクチュエータが作動されると、当該アクチュエータは、液体ポンピングチャンバに圧力パルスを印加し、ノズルの流出口を通して液滴を放出させる。流路ボディは、複数の液流路およびノズル、例えば密にパッケージングされた、それぞれ関連する流路を有する同一のノズルのアレイを含むことが多い。液滴放出システムは、基板および基板に対する液源を含むことができる。液体リザーバは、放出用の液体を供給するため、基板に流体接続可能である。液体は、例えば、化合物、生体物質またはインクであってよい。
【0022】
図1には、MEMSデバイス、例えば一構成におけるプリントヘッドの一部分の断面概略図が示されている。プリントヘッドは、基板100を含む。基板100は、液路ボディ102、ノズル層104およびメンブレン106を含む。ノズル層104は、半導体材料、例えばケイ素から成っている。液体リザーバは、液体を液体充填通路108に供給する。液体充填通路108は、上昇部110に流体接続されている。上昇部110は、液体ポンピングチャンバ112に流体接続されている。液体ポンピングチャンバ112は、アクチュエータ114のごく近傍に配置されている。アクチュエータ114は、駆動電極とグラウンド電極との間に挟まれた圧電材料、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を含むことができる。電圧は、アクチュエータへの電圧の印加のために、アクチュエータ114の駆動電極とグラウンド電極との間に印加可能であり、これによりアクチュエータが作動される。メンブレン106は、アクチュエータ114と液体ポンピングチャンバ112との間にある。(図示されていない)接着層により、アクチュエータ114をメンブレン106に固定可能である。
【0023】
ノズル層104は、液路ボディ102の下面に固定されており、約15μmから約100μmの厚さを有することができる。流出口118を有するノズル117は、ノズル層104の外面120に形成されている。液体ポンピングチャンバ112は、下降部116に流体接続されており、当該下降部116はノズル117に流体接続されている。
【0024】
図1には、種々の通路、例えば液体充填通路、ポンピングチャンバおよび下降部が示されているが、当該要素は全てが共通の平面にないこともある。幾つかの構成では、液路ボディ、ノズル層およびメンブレンのうち2つ以上が一体ボディとして形成されていてよい。さらに、各要素の相対寸法は変化してよく、幾つかの要素の寸法は、
図1では説明のために誇張されている。
【0025】
流路、特にノズルの寸法および形状の設計は、印刷品質、印刷解像度ならびに印刷装置のエネルギ効率に作用する。
図2Aから
図2Cには、複数の従来のノズル形状が示されている。
【0026】
例えば、
図2Aには、直立ノズル204を備えたプリントヘッド流路202が示されている。直立ノズル204は、直立側壁206を有する。
図2Aの上部には、ノズル204の中心軸線208を通過する平面における、流路202およびノズル204の側断面図が示されている。中心軸線208は、ノズル204の全ての水平断面の幾何学的中心を通過する軸線である。本明細書では、ノズルの中心軸線208は、各水平断面の幾何学中心が水平断面の対称性の中心である場合、ノズルの対称軸線ともいう。
図2Aの上部に示されているように、中心軸線208を含む平面において、側壁206の輪郭は、中心軸線208に対して平行な直線である。当該例では、ノズル204は、単一の直立側壁を有する直円柱である。他の例では、ノズルは、4つの直立の平坦側面を有する直正方柱でもありうる。
【0027】
図2Aに示されているように、ノズル204は、ノズル層210に形成されている。ノズル204は、ノズル204の中心軸線208に対して垂直な平面において、同じ断面形状および同じ寸法を有する。
図2Aの下部には、ノズル層210の上面図が示されている。この例では、ノズル204は、その中心軸線208に対して垂直な平面において、円形の断面形状を有する。種々の構成において、ノズル204は、他の断面形状、例えば楕円形、正方形、長方形または他の正多角形の断面形状を有することができる。
【0028】
(1つもしくは複数の)直立側壁を有するノズルは、比較的、作製が容易である。ノズルの(1つもしくは複数の)直立側壁は、噴射真直度の維持を支援することができ、ノズルから放出されるインク滴の降着位置をより予測しやすくする。ただし、充分な滴寸法を保証するには、直立壁ノズルの高さをむしろ大きく(例えば数十マイクロメートル以上に)する必要がある。直立壁ノズルの大きな垂直方向寸法は、液体がノズルから滴として放出される際に、ノズル内部の液体に多量の摩擦を生じさせる。直立壁ノズル内に生じる流れ抵抗が大きくなると、噴射頻度が低下し、かつ/または駆動電圧が増大し、これによりさらに、印刷速度が低下し、解像度が低下し、電力効率が低下し、かつ/または装置寿命も短縮する可能性がある。
【0029】
直立壁ノズルの別の欠点は、滴がノズルの流出口(例えば流出口212)から離脱する際に、ノズルの流出開口から空気がノズル内へ吸入され、ノズル内部または流路の他の部材内部にトラップされうることである。ノズル内にトラップされた空気は、インク流を阻害したり、または放出される液滴をインクの所望の軌跡から偏向させたりすることがある。
【0030】
図2Bには、傾斜した平坦側壁218を有するノズル216を備えたプリントヘッド流路214が示されている。
図2Bの上部には、ノズル216の中心軸線220を含む平面におけるプリントヘッド流路214の側断面図が示されている。中心軸線220を含む平面において、ノズル216の輪郭は、ノズル216の上部開口からノズル216の下部開口(または流出口212)まで延在する中心軸線220へ向かって収束する直線となっている。ノズル216の輪郭は、中心軸線220へ向かって収束する複数の平面によって形成可能である。
【0031】
ノズル216は、ノズル層224内に形成されており、中心軸線220に対して垂直な平面におけるノズル216の断面形状は、寸法が連続的に減少する正方形である。ノズル216は、それぞれノズル216の上部開口の縁からノズル216の下部開口の対応する縁まで傾斜した、4つの平坦側壁を有している。
図2Bの下部には、ノズル層224の上面図が示されている。
図2Bの下部に示されているように、ノズル216の各側壁218は、縁226に沿って隣接する2つの平坦側壁218のそれぞれと交差する平坦面である。各縁226は、丸みを帯びた縁でなく、角縁である。
【0032】
図2Bの下部に示されているように、ノズル216の下部開口は小さい正方形の開口であり、一方、ノズル216の上部開口は大きな正方形の開口である。中心軸線220は、ノズル216の上部開口および下部開口双方の幾何学的中心を通過している。ノズル216の傾斜側壁218により、
図2Aに示した直立壁ノズル204に比べて、ノズルを通過する液体の摩擦が低減される。また、ノズル216の傾斜形状により、ノズル流出口212での滴の離脱中に発生する空気吸入の量も低減される。
【0033】
図2Bに示されている傾斜ノズル216は、KOHエッチングを用いて、半導体ノズル層224(例えばケイ素ノズル層)内に形成可能である。ただし、傾斜ノズル216の形状は、半導体ノズル層224内に存在する結晶面によって規定される。ノズル216がKOHエッチングによって作製される場合、ノズル216の側面は、半導体ノズル層224の<111>結晶面に沿って形成される。したがって、各傾斜側面218と中心軸線220との成す角度は、約35°の固定値を有する。
【0034】
図2Bに示した傾斜ノズル216は、流れ抵抗の低減および空気取込みの低減の点で、
図2Aに示した直立壁ノズル204に比べた幾つかの改善点を提供するが、ノズル開口の形状の変更または傾斜側壁の角度の変更の点ではきわめて小さい自由度しか有さない。ノズル流出口の正方形の頂角は、サテライト(滴放出中、主滴に加えて生じる小2次滴)を生じさせることがある。さらに、平坦側壁218とノズル流出口212の縁のノズル層224の水平下面との間の鋭い不連続部によっても、付加的な滴引きずりが生じ、噴射速度の低下および噴射頻度の低下が発生する。
【0035】
図2Cには、
図2Bに示した傾斜部分と
図2Aに示した直立部分とを組み合わせた別のノズル構成が示されている。KOHエッチング技術が課す制限に起因して、直立下部と傾斜上部とは、基板の2つの側からのエッチングによって形成される。しかし、2つの側からのエッチングは、アライメントの達成を困難にすることがある。それ以外の場合には、例えば、ここに引用される米国特許出願公開第2011/0181664号明細書に記載されているように、傾斜部分と同じ側から直立下部を形成するために特別に設計したステップを行わなければならない。
【0036】
図2Cの上部には、直立下部238に急峻に接合する傾斜上部236を有するノズル234を備えたプリントヘッド流路232の側断面図が示されている。
図2Cに示されている側断面図は、ノズル234の中心軸線240を含む平面にある。中心軸線240を含む平面において、傾斜上部236の輪郭は、ノズル234の上部開口から傾斜上部236と直立壁下部238との交差へ向かって収束する直線から成る。中心軸線240を含む平面において、直立壁下部238の輪郭は、中心軸線240に対して平行な直線から成る。当該輪郭は、中心軸線240と共軸である円柱によって設けることができる。傾斜上部236と直立壁下部238との交差は、滑らかでなく、垂直方向(すなわちこの例では液体放出方向)での1つもしくは複数の不連続部または角縁を有する。
【0037】
この例では、ノズル234の中心軸線に対して垂直な平面における傾斜上部236の断面形状は正方形であり、一方、ノズル234の中心軸線に対して垂直な平面における下部238の断面形状は円形である。したがって、傾斜上部236は、それぞれ傾斜上部236の上部開口の縁から上部236と下部238との交差の対応する縁まで傾斜した、4つの平坦側面244を有する。
図2Cに示した直立下部238は円形の断面を有するが、当該直立下部が正方形の断面形状または他の断面形状を有することもある。
【0038】
ノズル234はノズル層242に形成される。
図2Cの下部には、ノズル234の上面図が示されている。当該上面図では、直立壁下部238の下部開口は円形であり、傾斜上部236の上部開口は正方形であり、直立下部238と傾斜上部236との交差は円柱状孔と逆角錐状孔との交差である。上部と下部との各断面形状間の不整合に起因して、交差の各縁は、湾曲部と鋭い不連続部とを含む。当該不連続部も、滴形成における液体摩擦および不安定性を生じさせる。上部236および下部238の断面形状が双方とも正方形であったとしても、液体放出方向における2つの部分間の交差での不連続部は存在する。正方形状のノズル開口も、例えば
図2Bに関して記載した他の理由につき、円形のノズル流出口ほど理想的ではない。
【0039】
本明細書では、半導体ノズル層(例えばケイ素ノズル層)内に形成された直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルを開示する。漏斗状ノズルの湾曲上部は、ノズルの中心軸線を含む平面における湾曲上部の側面の輪郭が直線ではなく湾曲線から成る点において、
図2Cに示した傾斜上部とは異なっている。さらに、湾曲上部の輪郭は、直立下部へ向かって収束し、湾曲上部と直立壁下部との交差において急峻な角度で屈曲するのではなく、直立壁下部に滑らかに接合する。
【0040】
さらに、幾つかの構成では、ノズル層の水平上面から漏斗状ノズルの湾曲側面への移行部も、急峻でなく滑らかである。さらに、ノズルの中心軸線に対して垂直な平面における漏斗状ノズルの水平断面形状は、幾何学的に相似であり、ノズルの全深さに対して同心状である。したがって、漏斗状ノズルの湾曲上部と直立壁下部との尖った交差は存在しない。本明細書で説明している漏斗状ノズルは、例えば、
図2Aから
図2Cに関して説明した従来のノズル形状に比べて多くの利点を提供する。
【0041】
図3Aは、直立壁下部306に滑らかに接合する湾曲上部304を有する漏斗状ノズル302の側断面図である。直立壁下部306では、ノズルの側部は平行であり、ノズル層の外面322に対して垂直である。直立壁下部306は円柱状通路(すなわち各壁がラテラル方向にではなくアップダウン方向に直立)であってよい。プロセスパラメータに依存して、直立壁部分306は回避可能であり、漏斗部分316が面322に続いていてもよい。漏斗状ノズル302は、プレーナ半導体ノズル層308に形成された孔を通る漏斗状である。湾曲上部304と直立壁下部306との交差の位置が
図3Aに破線320で示されているが、当該交差は、滑らかであって、ノズル302の中心軸線310に対して垂直ないかなる不連続部もいかなる面も実質的に有さない。
【0042】
図3Aに示されているように、湾曲上部304の高さは、直立壁下部306の高さより実質的に大きい。ただし、直立壁下部306は、少なくとも幾分かの高さ、例えば湾曲上部304の高さの10%から30%を有することができる。例えば、湾曲上部304の高さは、40μmから75μm(例えば40μm、45μmまたは50μm)であってよく、一方、下部306の高さは5μmから10μm(例えば5μm、7μmまたは10μm)のみであってよい。湾曲上部304は、直立壁下部306より格段に大きい体積を包摂する。大きな湾曲上部は、放出すべき液体の大部分を保持する。幾つかの構成では、湾曲上部304に包摂される体積は、数滴(例えば3滴または4滴)の寸法である。各滴は3plから100plであってよい。直立下部306はより小さい体積、例えば1滴の寸法未満の体積を有する。
【0043】
直立壁部分306の高さは、当該直立壁部分が多量の液体摩擦を生じさせず、滴の離脱中に空気取込みを生じさせない程度に充分に小さい。同時に、直立壁部分の高さは、噴射真直度が維持される程度に充分に大きい。幾つかの構成では、直立壁部分306の高さは、ノズル流出口の直径の約10%から約30%である。例えば、
図3Aでは、ノズル流出口は35μmの直径を有し、直立壁部分の高さは5μmから10μm(例えば7μm)である。幾つかの構成では、ノズル流出口の直径は15μmから45μmであってよい。
【0044】
ノズル302の湾曲上部304および直立壁下部306の双方は、滴の形成および放出において重要な機能を果たしている。湾曲上部304は、滴がノズル流出口から放出される際に、ノズルに生じてノズル内に気泡を形成するボイドが少なくなるかまたは全く無くなるよう、液体の充分な体積を保持すべく設計されている。漏斗の下部はより小さい体積の液体を保持することができる。
【0045】
漏斗状ノズル302は、さらに、ノズル302の全深さにつき、漏斗状ノズル302の中心軸線310に対して垂直な平面におけるノズル302の断面形状が長方形でなく円形である点で、
図2Bおよび
図2Cに示したノズルと異なっている。よって、液体放出方向における湾曲上部304と直立下部306との間に不連続部は存在しない。漏斗状ノズル302の流線形の輪郭は、
図2Bおよび
図2Cに示したノズルよりも小さい液体摩擦を提供する。さらに、漏斗状ノズル304の側面は完全に滑らかであり、アジマス方向においていかなる不連続部またはいかなる急峻な変化部も存在しない。したがって、漏斗状ノズル304は、引きずりまたは不安定性を生じさせず、
図2Bおよび
図2Cに示したノズルに存在した他の欠点(例えばサテライトの形成)も生じない。
【0046】
従来のエッチングプロセスを用いてケイ素に漏斗状ノズルを形成することは困難でありうる。従来のエッチングプロセス、例えばボッシュプロセスは直立垂直壁を形成し、これに対して、KOHエッチングは傾斜した直立壁を形成する。等方性エッチングは湾曲特徴、例えばボウル形特徴を形成可能であるが、漏斗状特徴を形成するための反対の形状の湾曲壁を形成することはできない。
【0047】
さらに、本明細書で提供される処理技術の場合、漏斗状ノズルの湾曲上部がその上部開口から直立壁下部へ向かって収束するピッチは、所定の結晶面の配向によって固定とするのでなく、設計によって可変とすることができる。特に、点Aを湾曲上部304の上部開口の縁と中心軸線310を含む平面との交差とし、点Bを湾曲上部304の下部開口の縁と中心軸線310を含む同じ平面との交差とする。
図2Cに示したノズル234とは異なり、点Aと点Bとをつなぐ直線と中心軸線310との成す角度αは、半導体ノズル層308の結晶面によって規定される固定の角度(例えば
図2Cの35°)ではない。そうではなく、漏斗状ノズル304の角度αは、漏斗状ノズル304を形成する際の処理パラメータを変化させることにより設計可能である。幾つかの構成では、漏斗状ノズル304の角度αは、30°から40°とすることができる。幾つかの構成では、漏斗状ノズル304の角度αは、40°超とすることができる。
【0048】
図3Aに示されているように、漏斗状ノズル302の湾曲上部304は、基板内に円柱状凹所を作製するプロセスにおいて生じる凹所壁の自然な丸みまたは傾斜に起因する丸みを帯びたリップとは異なる。
【0049】
第一に、漏斗状凹所302の湾曲上部304によって提示されている傾斜量は、製造の非精密性(例えば直立壁フォトレジストマスクを通した基板のオーバーエッチング)に起因して内在的に存在しうるいかなる傾斜よりも格段に大きい。例えば、漏斗状ノズルの側壁の傾斜角度は、約30°から約40°である。湾曲上部304の垂直方向の広がりは、数十マイクロメートル(例えば50μmから75μm)であってよい。湾曲上部304の上部開口の幅は100μm以上であってよく、湾曲上部304の下部開口の幅の3倍または4倍であってよい。これに対して、製造の不完全性および/または製造の非精密性に起因する円柱状凹所の上部開口近傍に存在する傾斜または丸みは、典型的には1°未満である。なお、自然な傾斜または丸みは、本明細書で説明している漏斗状ノズルに存在する高さおよび幅の(例えばナノメートル領域のまたは1μmから2μm未満の領域の)可変性より格段に小さい高さおよび幅の可変性しか有さない。
【0050】
図3Bは、漏斗状ノズル(例えば
図3Aに示したノズル302)の上面図である。
図3Bに示されているように、漏斗状ノズル302の上部開口312および下部開口314は双方とも円形であり、同心状である。ノズル302全体の側面316のいかなる部分にも不連続部は存在しない。上部開口312の幅は、ノズル302の下部開口214の幅の少なくとも3倍である。幾つかの構成では、ノズル302の上部開口312は漏斗状ノズル302の上方でポンピングチャンバに流体接続されており、ポンピングチャンバの境界が漏斗状ノズル302の上部開口312の境界を画定している。
図3Cには、漏斗状ノズル302を備えたプリントヘッド流路318が示されている。
【0051】
図3Bには、全深さにつき円形の断面形状を有する漏斗状ノズルが示されているが、他の断面形状も可能である。漏斗状ノズルの直立壁下部の断面形状は、楕円形、正方形、長方形または他の多角形であってよい。漏斗状ノズルの湾曲上部は、直立壁下部と相似の断面形状を有することになる。ただし、湾曲上部の断面形状の頂角は(存在する場合)、湾曲上部の側面が直立壁下部から離れて湾曲上部の上部開口へ向かうにつれ、徐々に消去され、または平滑化される。湾曲上部の正確な断面形状は、漏斗状ノズルの形成に使用される製造ステップおよび材料によって決定される。
【0052】
例えば幾つかの構成では、直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズルは、正方形の水平断面形状を有することができる。こうした構成では、ノズルの中央から側部の輪郭は、
図3Aに示したものと同じである。しかし、漏斗状ノズルは、収束する4つの湾曲側面を有し、隣接する湾曲側面の交差は、ノズルの下部流出口へ向かって収束する滑らかな4つの湾曲線であり、ノズルの直立下部の4つの平行な直線へと滑らかに移行する。さらに、隣接する湾曲側面の交差は滑らかに丸みを帯び、これにより4つの湾曲側面が漏斗状ノズルの上部の単一の滑らかな側面の一部を形成する。
【0053】
プリントヘッドボディは、個々の半導体材料層に特徴を形成し、各層を被着してボディを形成することによって製造可能である。ノズルへ通じる流路特徴、例えばポンピングチャンバおよびインク流入口は、2002年7月3日付提出の米国特許出願第10/189947号明細書に記載されているように、従来の半導体処理技術を用いて基板内にエッチング可能である。ノズル層および流路モジュールは共に、インクを通流させ放出するプリントヘッドボディを形成する。インクが通流するノズルの形状は、インク流に対する抵抗に影響しうる。本願で説明している漏斗状ノズルを形成することにより、より低い流れ抵抗、より高い噴射頻度、より低い駆動電圧、および/またはより良好な噴射真直度を達成することができる。本明細書で説明している処理技術により、所望の寸法およびピッチを有するノズルのアレイが良好な均質性および効率で形成可能となる。
【0054】
図4Aから
図4Fには、直立壁下部に滑らかに接合する湾曲上部を有する漏斗状ノズル、例えば
図3Aから
図3Cに示した漏斗状ノズルを形成する方法が示されている。
【0055】
漏斗状ノズルを形成するには、まず、フォトレジストパターン層が半導体基板の上面に形成され、ここで、フォトレジストパターン層は、その露出した上面に滑らかに接合する湾曲側面を有する開口を有する。例えば、z軸線を中心とした開口は、z方向およびアジマス方向の双方で湾曲する側面を有する。開口の形状により、漏斗状ノズルの中心軸線に対して垂直な平面における当該漏斗状ノズルの断面形状が決定される。開口の寸法はおおよそ漏斗状ノズルの下部開口と等しい(例えば35μm)。
図4Aから
図4Fに示されている例では、ノズルの全深さを通じて円形の水平断面形状を有する漏斗状ノズルを形成すべく、開口は円形である。
【0056】
フォトレジストパターン層を形成するため、レジストリフロープロセスが使用可能である。
図4Aに示されているように、均質なフォトレジスト層402が基板のプレーナ上面404に適用される。基板は半導体基板406(例えばシリコンウェハ)であってよい。半導体基板406は、複数の結晶方向のうち1つ、例えばシリコン<100>ウェハ、シリコン<110>ウェハまたはシリコン<111>ウェハを有する基板であってよい。フォトレジスト層402の厚さは、フォトレジスト層内の開口の湾曲側面の最終曲率、ひいては漏斗状ノズルの湾曲側面の最終曲率に影響する。厚膜のフォトレジスト層は、一般に、漏斗状ノズルの湾曲側面の大きな曲率半径を得るために適用される。
【0057】
この例では、均質なフォトレジスト層402の初期厚さは、約10μmから約11μm(例えば11μm)である。幾つかの構成では、11μm超のフォトレジストを半導体基板406のプレーナ上面404に適用することができる。フォトレジストの厚さのうち幾分かは、所望の深さの漏斗状凹所を形成する処理ステップの後にも基板上に残留しうる。使用可能なフォトレジストの例には、例えば、MicroChemicals(登録商標)GmbH製のAZ9260、AZ9245、AZ4620および他のポジフォトレジストが含まれる。半導体基板406の厚さは、形成すべき漏斗状ノズルに所望される深さ以上である。例えば、
図4Aに示されている基板406は、薄膜酸化物層405を介してハンドル層407に被着された約50μmのケイ素層403を有するSOIウェハであってよい。別の薄膜酸化物層401により、ケイ素層403をカバー可能である。例えば、薄膜酸化物層401は約1μmであってよい。
図4Aに示されているように、第1のリソグラフィおよびエッチングステップでは、薄膜酸化物層401内に第1の幅411を有する開口409を形成可能である。開口409の画定に使用されるフォトレジストは、より精細な薄膜ノンリフローレジストであってよい。また、薄膜酸化物層401内の酸化物は、開口409の形成に使用されるボッシュエッチングに対して高選択性を有することができる。ノンリフローレジストと基板との間の選択性は、リフローレジストと基板との間の選択性に類似すると予測され、例えば100:1を下回る。幾つかの実施形態では、第1の幅411は、第2の幅413よりも小さい約1μmである。均質なフォトレジスト層402は、開口409を充填する。代替的に、基板406は、接着層によってまたはファンデルワールス力によってハンドル層に被着された薄膜ケイ素層であってもよい。
【0058】
図4Bに示されているように、均質なフォトレジスト層402が半導体基板406のプレーナ上面404に適用された後、均質なフォトレジスト層402は、第2の幅413を有する初期開口408および1つもしくは複数の垂直側壁410が生じるようにパターニングされる。第2の幅413は第1の幅411より大きい。幾つかの実施形態では、第2の幅413は、第1の幅411よりも大きい約1μmであってよい。ステッパにより、開口409に対して開口408を正確にアライメントすることができる。例えば、ステッパは、薄膜酸化物層401内に画定される開口409の中心に関する情報を記憶して、初期開口408を形成するリソグラフィプロセス中、初期開口408の中心をこれに適合化することができる。この例では、均質なフォトレジスト層402に円形開口が生じ、円形開口の側壁は、均質なフォトレジスト層402のプレーナ上面412および半導体基板406のプレーナ上面404に対して垂直な単一の湾曲面である。開口の直径411により、形成すべき漏斗状ノズルの下部開口の直径が決定される。この例では、初期円形開口の直径411は、約85μmから約95μm(例えば90.5μm)であってよい。均質なフォトレジスト層402のパターニングは、フォトマスクを用いた標準のUVまたは可視光での露光プロセス、およびフォトレジスト層の露光した部分を除去するためのフォトレジスト現像プロセスを含むことができる。
【0059】
初期開口408が均質なフォトレジスト層402に形成された後、フォトレジスト層402は、層402内のフォトレジスト材料が軟化するまで、約160℃から約250℃に加熱される。フォトレジストパターン層402内のフォトレジスト材料が熱処理によって軟化すると、フォトレジスト材料はリフローし始め、フォトレジスト材料の表面張力の作用のもと、特に開口408の上縁414近傍の領域で自身を新しい形態とする。フォトレジスト材料の表面張力により、開口408の表面輪郭が引き戻され、丸みを帯びるようになる。
図4Cに示されているように、開口408の上縁414は、表面張力の作用のもとで丸みを帯びるようになる。レジスト413内の開口は、リフローによっては実質的に変化しない。
【0060】
幾つかの構成では、フォトレジスト層402は、そのリフローを達成するため、真空環境において加熱される。フォトレジスト層402を真空環境で加熱することにより、フォトレジスト層402の表面はより滑らかとなり、フォトレジスト材料内にトラップされる小気泡がなくなる。これにより、製造される最終ノズルでの表面のより良好な平滑性が得られる。
【0061】
開口408の所望の形状が得られた後、フォトレジスト層402は冷却される。熱源を除去し、または能動的冷却を行うことにより、冷却を達成することができる。なお、冷却は、形成すべき漏斗状ノズルの良好な表面特性を保証するため、真空環境において実行可能である。フォトレジスト層402を冷却することにより当該フォトレジスト層402は再硬化するが、開口408の表面輪郭は硬化プロセス中その形状を維持し、開口408の上縁414は再硬化プロセスの終了時に丸みを帯びたままである。
【0062】
フォトレジストパターン層402が硬化させられると、基板406のエッチングが開始可能となる。漏斗状凹所が2ステップのエッチングプロセスにおいて形成される。まず、直立壁凹所が第1のエッチングプロセスで形成される。次いで、直立壁凹所が第2のエッチングプロセス中に修正される。第2のエッチングプロセスでは、初期的に形成された直立壁凹所が深化され、漏斗状凹所の直立壁下部が形成される。同時に、第2のエッチングプロセスにより、初期的に形成された直立壁凹所が上部から徐々に拡大され、漏斗状凹所の湾曲上部が形成される。
【0063】
図4Cに示されているように、初期の直立壁凹所416は、第1のエッチングプロセスで開口409を通して形成される。言い換えれば、リフローレジスト402ではなく、薄膜酸化物層401内の酸化物の縁によって凹所416の境界が画定される。第1のエッチングプロセスは、例えばボッシュプロセスであってよい。第1のエッチングプロセスでは直立壁凹所416が生じ、当該直立壁凹所416は、形成すべき漏斗状凹所の所望の最終深さよりも僅かに小さい(例えば1μmから15μm小さい)深さを有する。例えば、50μmから80μmの全深さを有する漏斗状凹所に対して、第1のエッチングプロセスで形成される直立壁凹所416は、49μmから79μmの深さを有しうる。直立壁凹所416の側部輪郭418には小帆立貝状パターンが存在してもよいが、こうした小さい(例えば1°または2°の)ばらつきは、直立壁凹所416の全体寸法(例えば幅35μm、深さ45μmから75μm)に比べて小さい。
【0064】
第1のエッチングプロセスでは、直立壁凹所416は、半導体基板406の上面404に対して平行な平面において、開口409によって包摂される領域と実質的に同じ断面形状および同じ寸法を有する。
図4Dに示されているように、第1のエッチングプロセスで使用されるエッチング剤は、薄膜酸化物層401内の開口409を通して露出された半導体基板406のデバイス層403に比べ、きわめて僅かなフォトレジスト層402しか除去しない。したがって、フォトレジストパターン層402の表面輪郭は、第1のエッチングプロセスの終了時に実質的に変化なく残留する。例えば、第1のエッチングプロセス中、デバイス層403とフォトレジスト層402との間の選択性は、100:1であってよい。
【0065】
初期の直立壁凹所416が第1のエッチングプロセスによって半導体基板406内に形成された後、第2のエッチングプロセスにより、
図4Cに示した初期の直立壁凹所416が
図4Dに示されている所望の漏斗状凹所420への変形を開始しうる。
【0066】
図4Dに示されているように、半導体基板406およびフォトレジストパターン層402は、垂直方向(例えば
図4Dの基板406のプレーナ上面404に対して垂直な方向)からドライエッチングに曝露される。ドライエッチングプロセスで使用されるエッチング剤は、フォトレジストおよび半導体基板406の双方に対するエッチングレートと同等のエッチングレートを有することができる。例えば、ドライエッチングの、フォトレジストと半導体基板との間の選択性は、1:1であってよい。幾つかの構成では、ドライエッチングは、CF
4/CHF
3およびO
2ガス混合物を用いて、例えば400W超の高いプラテンパワーで行われる。
【0067】
ドライエッチング中、エッチングプロセスが続行すると、フォトレジスト層402の表面輪郭は、エッチング剤の衝撃のもとで垂直方向に後退する。フォトレジスト層402の開口408の上縁の湾曲輪郭414に起因して、フォトレジスト層402の最も薄い部分の下方の薄膜酸化物層401の表面が、フォトレジスト層402の下方の基板表面の他の部分に比べ、最も早くエッチング剤に曝露される。言い換えれば、薄膜酸化物層401がエッチングされる。半導体表面のエッチング剤に曝露された部分も徐々にエッチング除去される。
図4Dに示されているように、破線はフォトレジスト層402の表面輪郭414を表しており、半導体基板406はエッチング剤の衝撃のもとで徐々に後退する。
【0068】
図4Dに示されているように、薄膜酸化物層401内の開口409の縁の下方の領域422がエッチングされ、デバイス層403の表面がラテラル方向に拡大される。凹所416の側面418の拡大部は、半導体基板406内に形成される漏斗状凹所420の湾曲上部の湾曲側面424となる。
【0069】
ドライエッチングが続行して凹所416の側面418がラテラル方向に拡大すると、ドライエッチングによって凹所416が垂直方向でも深化する。凹所416の深化によって、漏斗状凹所420の直立壁下部が生じる。付加的な深化量によって、数マイクロメートル深さの直立壁部分が生じる。直立壁下部の側面426は、半導体基板406のプレーナ上面404に対して垂直である。凹所420の側面424のラテラル方向の拡大量は上部から下部へ向かって徐々に低下するので、湾曲上部の湾曲側面424は、直立壁下部の垂直側面426内へ滑らかに移行する。漏斗状凹所420の上部開口の境界は、フォトレジストが薄膜酸化物層401の表面に当接する箇所から出発する縁によって画定される。
【0070】
ドライエッチングは、時間制御可能であり、漏斗状凹所420の所望の深さが達成されるとただちに停止可能である。代替的に、ドライエッチングを時間制御して、漏斗状凹所420の湾曲部分の所望の表面輪郭が得られたらただちに停止してもよい。
【0071】
幾つかの構成では、半導体基板が所望の厚さのノズル層から成る場合、ドライエッチングは、当該エッチングが半導体基板の全厚さを通して進行して漏斗状ノズルが完全に形成されるまで、続行可能である。幾つかの構成では、半導体基板は、漏斗状凹所が裏側から開放されて漏斗状ノズルが形成されるまで、裏側からエッチング可能、研削可能かつ/または研磨可能である。
【0072】
フォトレジスト402が除去され、
図4Eには、下部が開放された、完成した漏斗状凹所428が示されている。漏斗状ノズル428が形成された後、ノズル層429は、液体放出ユニット、例えば
図4Fに示されている液体放出ユニット430の他の層に被着可能である。幾つかの構成では、漏斗状ノズル428は、同一の漏斗状ノズルのアレイの1つであり、同一の漏斗状ノズルのアレイのそれぞれは、独立に制御可能な液体放出ユニット430に属する。幾つかの構成では、液体放出ユニットは、半導体基板406の上面に支持された圧電アクチュエータアセンブリを含み、漏斗状ノズル428に流体接続されたポンピングチャンバを封止する可撓性のメンブレンを含む。可撓性のメンブレンの作動のたびに、漏斗状ノズル428の直立壁下部を通して液滴を放出する動作が可能となり、湾曲上部によって包摂される体積は、液滴の寸法の3倍または4倍である。
【0073】
図5Aおよび
図5Bには、
図4Aから
図4Fに示したプロセスを用いて形成される2つの漏斗状凹所(例えば凹所502および凹所504)の画像が示されている。
【0074】
漏斗状凹所の寸法は、種々異なる構成で種々に異なっていてよい。
図5Aに示されているように、漏斗状凹所502の下部506は約2μmから約5μmの深さを有し、一方、漏斗状凹所502の湾曲上部508は約25μmから約28μmの深さを有する。当該漏斗状凹所502から漏斗状ノズルを形成する際には、基板は、直立壁部分506が所望の深さを有するように、下部側から研削可能かつ研磨可能である。
図5Aに示されているように、直立壁下部506の直径は、凹所502の中心軸線に対して垂直な平面において、おおよそ均質である(20μmの直径に対して~.5μm未満までのばらつきを有する)。湾曲上部508の下部開口は、直立壁下部506の上部開口に滑らかに接合している。凹所502の上部開口の直径は96μmの範囲にあり、直立壁下部506の直径の約5倍である。湾曲上部508が下部から上部へ拡大するピッチは、湾曲上部508の高さの1/2の箇所での湾曲上部508の幅によって規定可能である。この例では、湾曲上部の高さの1/2の箇所での幅は、約27μmである。下降部510は、凹所502の上方に配置される。
【0075】
漏斗状凹所502の破線の長方形囲み領域内の部分が、
図5Bに示されている。
図5Bの画像は180°回転されており、より大きな倍率では、凹所502は実際には直立壁部分を有していない。
【0076】
図6Aには、
図4Aから
図4Fに即して説明したプロセスを用いた、2枚のウェハ上に作製された漏斗状ノズルの最大寸法、最小寸法および平均寸法のプロットが示されている。比較として、
図6Bには、リフローフォトレジストが薄膜酸化物層内に画定される開口よりも小さい初期開口を有する別のプロセスを用いて、15枚のウェハ上に作製された漏斗状ノズルの最大寸法、最小寸法および平均寸法のプロットが示されている。他のプロセスを用いると、リフローレジストの縁が、
図4Cに示した第1のエッチングプロセス中に形成される直立壁凹所のノズル境界を画定する。
図6Aのプロット602には、大部分が22μmから23μmに該当する、漏斗状ノズルの最大寸法が示されている。これに対して、
図6Bのプロット608には、漏斗状ノズルの最大寸法の、約19μmから22.5μmの大きなばらつきが示されている。
図6Aのプロット604には、大部分が21.5μmから22.4μmに該当する、漏斗状ノズルの最小寸法が示されている。これに対して、
図6Bのプロット610には、漏斗状ノズルの最小寸法の、約17μmから21.5μmの格段に大きなばらつきが示されている。
図6Aのプロット606には、
図6Bのプロット612よりも格段に小さいばらつきを有する、漏斗状ノズルの平均寸法が示されている。
【0077】
例えば
図6A,
図6Bに示したような実験データに基づいて、漏斗のボアの直径は、例えばノズルが直線傾斜輪郭を有する
図2Aに示したようなKOHノズルの幅よりも大きく変化する。僅かな一部の漏斗のボアは、占有率より実質的に(1μmから3μm)小さいこともある。ノズル寸法のばらつきによって印刷線幅のばらつきが生じうるが、過大なばらつきを有するノズルプレートは廃棄しなければならないことがある。±1.5μmのノズル直径のばらつきの特性に対して、大きな(例えば25%の)ダイ歩留まり損失が発生しうる。ノンリフローレジストを用いてシリコンウェハにエッチングされた直立のボア孔には寸法のばらつきが観察されないので、
図4Aから
図4Fに即して説明したプロセスは、リフロープロセスによって誘起されうるばらつきに対処できる。漏斗状ノズルプロセスに対する修正形態により、
図6Aに示されているように、低減されたボア寸法のばらつきを有する漏斗状ノズルが提供される。
【0078】
図7Aには、
図4Aから
図4Fに示したプロセスを用いて作製されたノズルの幅の標準偏差のプロット702が示されている。大部分のノズルは、約0.1μmの標準偏差を有する。これに対して、
図7Bには、リフローレジストの縁によって
図4Cに示した第1のエッチングプロセス中に形成される直立壁凹所のノズル境界が画定される別のプロセスを用いて作製された、ノズル幅の標準偏差のプロット704が示されている。プロット704の標準偏差は、一般に0.2μm超である。
【0079】
本発明の複数の構成を説明した。しかし、本発明の思想および観点から離れることなく、種々の修正形態を形成可能であることを理解されたい。上述した構造を形成する方法の例を説明した。ただし、説明した方法を、同一のもしくは類似の結果を達成する他のプロセスによって置換可能である。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の観点内に該当する。