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特開2022-43248金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法、金融商品取引管理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043248
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法、金融商品取引管理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20220308BHJP
【FI】
G06Q40/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212926
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2021180554の分割
【原出願日】2007-12-19
(71)【出願人】
【識別番号】317010521
【氏名又は名称】株式会社マネースクエアHD
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】相葉 斉
(72)【発明者】
【氏名】山本 久敏
(57)【要約】      (修正有)
【課題】煩雑な注文手続なしで複数の注文取引を効率的に行う金融商品取引管理装置、金融商品取引管理方法を提供する。
【解決手段】金融商品取引管理装置1は、変動する相場価格の一致を検知すると、それぞれの第一注文を約定させる命令を約定情報生成部14に出させる第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手順と、変動する相場価格の一致を検知するとそれぞれの第二注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる第二の価格を設定する第二の手順と、変動する相場価格の情報の第一の価格との一致を検知すると買いの第一注文を約定させる命令を出す第三の手順と、変動する相場価格の情報の第二の価格との一致を検知すると売りの第二注文を約定させる命令を出す第四の手順とを備える。第一の手順と第二の手順ののちに第三の手順と第四の手順とを行い、第四の手順が行われたことを検知すると、第三の手順と第四の手順とを繰り返す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法であって、
前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手順と、
前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手順と、
前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると買いの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手順と、
前記第三の手順ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると売りの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手順とを備え、
前記第一の手順と前記第二の手順とを行ったのちに前記第三の手順と前記第四の手順とを行い、
前記第四の手順に基づく前記売りの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手順と前記第四の手順とを繰り返す
ことを特徴とする金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法。
【請求項2】
変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法であって、
前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手順と、
前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手順と、
前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると売りの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手順と、
前記第三の手順ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると買いの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手順とを備え、
前記第一の手順と前記第二の手順とを行ったのちに前記第三の手順と前記第四の手順とを行い、
前記第四の手順に基づく前記買いの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手順と前記第四の手順とを繰り返す
ことを特徴とする金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法。
【請求項3】
変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって、
前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手段と、
前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手段と、
前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると買いの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手段と、
前記第三の手段ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると売りの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手段とを備え、
前記第一の手段による手順と前記第二の手段による手順とを行ったのちに前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを行い、
前記第四の手段による手順に基づく前記売りの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを繰り返す
ことを特徴とする金融商品取引管理装置。
【請求項4】
変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって、
前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手段と、
前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手段と、
前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると売りの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手段と、
前記第三の手段ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると買いの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手段とを備え、
前記第一の手段による手順と前記第二の手段による手順とを行ったのちに前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを行い、
前記第四の手段による手順に基づく前記買いの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを繰り返す
ことを特徴とする金融商品取引管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外国為替等、金融商品の取引を管理、支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
外国為替等の金融商品の取引方法として、注文時の価格で取引を行う成行注文の他に、指値注文が知られている。この指値注文とは、予め顧客から売買値段の指定を受ける注文形態のことであり、金融商品の取扱業者は対象となる金融商品が指定された金額まで下がったときに当該金融商品の買い注文を行い、あるいは、指定された金額まで上がったときに当該金融商品の売り注文を行う。従来、この金融商品の指値注文をコンピュータシステムを用いて行う発明が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-99787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、金融商品の価格は常に不規則に変動し、正確に予測できない。そのため、当該金融商品の価格が予め指定した金額まで下降(又は上昇)する直前で上昇(又は下降)してしまう場合や、あるいは、予め指定した金額よりも下降(又は上昇)してしまい、顧客が実質的な不利益を被る恐れがある。そして、上記特許文献1に記載の発明によっては、このような不利益の恐れを回避できないという問題がある。
【0005】
さらに、注文件数の極端な増大や注文キャンセルの頻発が起こった場合、金融商品の取扱業者も業務の煩雑化や事実上の損害の発生を被る恐れがある。特に取扱対象の金融商品が外国為替の場合、顧客と銀行とを仲介する取扱業者が銀行に事実上の損害を与えてしまい、銀行からの信用を失う恐れがある。従って、取引を行う場合、金融商品の取扱業者の被るリスクを回避することにも留意する必要があるが、上記特許文献1に記載の発明においては、当該取扱業者のリスクも回避できないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、金融商品の注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避し、システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく取引を効率的かつ円滑に行うことができる、金融商品取引管理装置等を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法であって、前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手順と、前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手順と、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると買いの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手順と、前記第三の手順ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると売りの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手順とを備え、前記第一の手順と前記第二の手順とを行ったのちに前記第三の手順と前記第四の手順とを行い、前記第四の手順に基づく前記売りの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手順と前記第四の手順とを繰り返すことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置における金融商品取引管理方法であって、前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手順と、前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手順と、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると売りの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手順と、前記第三の手順ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると買いの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手順とを備え、前記第一の手順と前記第二の手順とを行ったのちに前記第三の手順と前記第四の手順とを行い、前記第四の手順に基づく前記買いの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手順と前記第四の手順とを繰り返すことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって、前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手段と、前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手段と、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると買いの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手段と、前記第三の手段ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると売りの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手段とを備え、前記第一の手段による手順と前記第二の手段による手順とを行ったのちに前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを行い、前記第四の手段による手順に基づく前記売りの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを繰り返すことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、変動する相場価格に基づく金融商品の売買取引を管理する金融商品取引管理装置であって、前記変動する相場価格が一致したことを検知するとそれぞれの第一注文を約定させる命令を約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第一の価格を所定の値幅で設定する第一の手段と、前記変動する相場価格が一致したことを検知すると前記第一注文を決済する注文としてのそれぞれの第二注文を約定させる命令を前記約定管理手段に出させる価格としてのそれぞれの第二の価格を設定する第二の手段と、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第一の価格と一致したことを検知すると売りの前記第一注文を約定させる命令を出す第三の手段と、前記第三の手段ののちに、前記金融商品の前記変動する相場価格の情報を取得し、該変動する相場価格の情報が、前記第二の価格と一致したことを検知すると買いの前記第二注文を約定させる命令を出す第四の手段とを備え、前記第一の手段による手順と前記第二の手段による手順とを行ったのちに前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを行い、前記第四の手段による手順に基づく前記買いの約定が行われたことを検知すると、前記第三の手段による手順と前記第四の手段による手順とを繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至請求項4に記載の発明によれば、金融商品の注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避し、システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の金融商品取引管理方法を実現する金融商品取引管理システムにおけるシステム構成図及び本実施形態の金融商品取引管理方法を実現する金融商品取引管理装置の機能ブロック図である。
図2A】同上金融商品取引管理装置の注文テーブルのフィールド定義の模式図である。
図2B】同上金融商品取引管理装置の顧客口座情報テーブルのフィールド定義の模式図である。
図2C】同上金融商品取引管理装置の通貨ペア注文条件テーブルのフィールド定義の模式図である。
図3】同上金融商品取引管理装置における、トラップリピートイフダンの注文時の処理手順を示すフローチャートである。
図4】クライアント端末の表示部に表示される入力画面のイメージ図である。
図5】クライアント端末に表示される(a)条件設定画面のイメージ図、(b)確認画面のイメージ図である。
図6】注文テーブルに記録される(a)買い注文情報のデータを模式として示した図、(b)売り注文情報のデータを模式として示した図である。
図7】同上金融商品取引管理装置における、指値注文に基づく約定処理を模式的に表したタイムチャートである。
図8】同上金融商品取引管理装置における、キャンセル要求の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の一の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の金融商品取引管理方法を実現する金融商品取引管理システムのシステム構成図及び機能ブロック図である。同図に示すとおり、金融商品取引管理システム1Aは、金融商品取引管理装置1と、N個(N≧1)のクライアント端末2~2とを備えており、金融商品取引管理装置1とクライアント端末2~2は、WAN(Wide Area Network)としてのインターネット3を介して相互に交信可能である。本実施形態の金融商品取引管理システム1Aは、金融商品として外国為替を取扱う。
【0015】
本実施形態の金融商品取引管理方法を実現する金融商品取引管理装置1は、金融商品の取扱業者が管理し運用するサーバコンピュータであり、Webサーバ機能、大容量のデータを保存するデータベース機能を備えている。クライアント端末2,・・・,2は、金融商品の売買を行う個人又は法人が所持し使用する、データ通信機能を有する通信端末であって、パーソナルコンピュータ、携帯電話端末等がこれに該当する。クライアント端末2,・・・,2は、マウスやキーボード等各種指示を入力するために用いられる操作部21,・・・,21、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり操作部21,・・・,21から入力された各種指示等や各種画像を表示する表示部22,・・・,22を有している。なお、クライアント端末2,・・・,2、操作部21,・・・,21、表示部22,・・・,22は同じ構成を持つので、以下、区別する必要がある場合を除き、クライアント端末2、操作部21、表示部22とする。
【0016】
図1には図示しないが、金融商品取引管理装置1は少なくとも1のCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)、及び、CPUの作業領域として機能するRAM(Random Access Memory)、起動用ブートプログラム等が記録されたROM(Read Only Memory)、各種プログラムやデータ等が記録されるハードディスク等の補助記憶装置、データの送受信に用いる通信インターフェース等が設けられている。補助記憶装置には、OS(Operating System)用プログラム、各種アプリケーションプログラム、データベースに記録されたデータ等が記録されており、これらのプログラムやデータはCPUの演算処理により、ハードウェア資源と協働して各種機能を実現する。
【0017】
図1に示す通り、金融商品取引管理装置1は、上述した各種プログラムとハードウェア資源とに基づいて実現される機能手段としてのデータ処理部10、及び、データ処理部10にて処理される各種データが記録されるデータベース18を有する。データ処理部10は金融商品取引管理装置1において用いる各種データの生成、加工等の処理を行うものであり、更に、同じく機能手段としてのフロントページ配信部11、「注文入力受付手段」としての注文入力受付部12、入出金情報生成部13、「約定情報生成手段」としての約定情報生成部14、口座情報生成部15、「注文情報生成手段」及び「第二価格情報算出手段」としての注文情報生成部16、データベース(DB)接続基底部17、「価格情報受信手段」としての価格情報受信部19を有している。
【0018】
注文入力受付部12は、クライアント端末2から入力された各種の注文に関するデータを受け付け、金融商品の注文を成立させるために必要な各種処理を行う。
【0019】
入出金情報生成部13は、クライアント端末2から入出金のリクエストを受け付け、リクエストに基づいて入出金の一覧表を作成する。
【0020】
注文情報生成部16は、注文入力受付部12が処理した情報に基づいて、金融商品の注文に関する情報を生成する。ここでの注文には、いわゆる成行注文、指値注文に加え、イフダンオーダー(順位のある2つの注文を同時に出し、第一順位の注文が約定したら、自動的に第二順位の注文が有効になる注文形式のこと。本明細書において同じ。)も含まれる。
【0021】
約定情報生成部14は、注文情報生成部16が生成した注文に基づく約定処理、及び、完了した約定処理に関する情報を顧客のクライアント端末2に送るための処理を行う。なお、ここでの「約定」とは、顧客の注文に基づいて金融商品の売買を成立されるための各種の手続並びに処理のことをいう。
【0022】
口座情報生成部15は、顧客の預金残高情報を生成し、当該預金残高情報を証拠金情報(即ち、注文の約定を実現できることを裏付けるための情報)を管理する機能を有する。なお、口座情報生成部15において生成される預金残高に関する情報は、現実の預金残高と整合性を取るために、銀行等の金融機関が提供する、顧客の現実の預金残高に関する情報と定期的に照合される。
【0023】
データベース接続基底部17は、データ処理部10において生成、加工処理されたデータとデータベース18にて記録されるデータとの変換(例えば論理的データ構造と物理的データ構造との相互変換)を行うと共に、データ処理部10とデータベース18との間でデータを交信するために必要な処理を行う。
【0024】
データベース18は、金融商品取引管理装置1にて用いられるデータを記録する。本実施形態におけるデータベース18はリレーショナルデータベースによって形成するが、例えばオブジェクトデータベース等、大量のデータの記録や書換えに適したものであればどのような形式を用いてもよい。データベース18には、注文テーブル(注文情報記録手段)181、顧客口座情報テーブル(顧客口座情報記録手段)182、通貨ペア注文条件テーブル183、最低値幅テーブル(最低値幅情報記録手段)184、差額テーブル(差額情報記録手段)185、シーケンス番号テーブル186が記録されている。最低値幅テーブル184には、金融商品の種類毎に定められた、注文情報群(後述)を形成する個々の売り注文情報(後述)又は個々の買い注文情報(後述)同士が取りうる最も近接した値幅が最低値幅情報として記録される。差額テーブル185には、金融商品の種類毎に定められた、現在の相場価格と注文情報(後述)の注文額との差額情報を記録される。シーケンス番号テーブル186には注文情報(後述)ごとに一意に付されるシーケンス番号が記録される。注文テーブル181、顧客口座情報テーブル182、通貨ペア注文条件テーブル183の詳細については後述する。
【0025】
フロントページ配信部11は、クライアント端末2の表示部22にされる画像データを作成し、作成した画像データをクライアント端末2に送信する。
【0026】
価格情報受信部19は、金融商品取引管理装置1にて扱う金融商品の価格についての情報を取得し、取得した情報に対し、データ処理部10にて用いるために必要な処理を行う。本実施形態においては、価格情報受信部19は外為の相場価格の情報を取得する。
【0027】
図2Aは注文テーブル181のフィールド定義の模式図、図2Bは顧客口座情報テーブル182のフィールド定義の模式図、図2Cは通貨ペア注文条件テーブル183のフィールド定義の模式図である。これらの図に示す通り、各テーブル181,182,183は項目数分のフィールドを有し、フィールドの名称(フィールド名)、文字や数値や日時等のデータ型(型)、ビット長等のデータ長(長さ)、空欄不可指定(Not Null)、デフォルト値の有無(デフォルト値)、データの項目名(備考)等が規定される。
【0028】
上述の金融商品取引管理装置1においては、金融商品の指値取引が行われる際、一の予約注文によって、同一種類の複数の金融商品の売買を、所定の値幅で所定の商品数ごとにイフダンオーダーで行う注文形態を実現できる。本明細書においては、この注文形態を「トラップリピートイフダン注文」と称する。
【0029】
次に、本実施形態の金融商品取引管理システム1Aにおけるトラップリピートイフダン注文の取引手順について説明する。
【0030】
図3は、本実施形態の金融商品取引管理装置1における、トラップリピートイフダン注文による指値注文に関する情報を生成させる際の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図に基づいて注文時の処理手順を説明する。
【0031】
金融商品取引管理システム1Aを利用する顧客は、クライアント端末2を用いて金融商品取引管理装置1にアクセスする。金融商品取引管理装置1のフロントページ配信部11は、アクセスのあったクライアント端末2の表示部22に、図4に示す入力画面40を表示させる。顧客は、操作部21を用いて入力画面40に注文内容のデータを入力する(ステップS1)。具体的には、入力画面40に対して下記(1)~(5)の処理が行われることになる。
【0032】
(1)顧客は、入力画面40の上側から取引可能な通貨ペア(この入力画面40では5種類の通貨ペア)ごとに設けられた売買希望入力ボタン41~41の中から売買を希望する通貨ペアを選択しクリックする。例えば日本円で米国ドルを購入することを希望する顧客は、入力画面40の米国ドル購入ボタン41aをクリックする。
【0033】
(2)次に顧客は、売買希望入力ボタン41~41の下側に設けられた売買形態選択ボタン群42から自らが希望する売買形態が表示されたボタンを選択しクリックする。図4の入力画面40は、売買形態選択ボタン群42の中から新規注文(即ち、新しくポジション(外貨の持高)を持つための注文)を選択する新規選択ボタン42aがクリックされた状態を示している。なお、本実施形態の金融商品取引管理装置1は新規注文にのみトラップリピートイフダン注文を適用するものとし、システム構成の簡素化、並びに顧客にとって利用し易いシステムの形成を図っている。
【0034】
(3)次に顧客は、売買形態選択ボタン群42の下側に設けられた注文条件・数量指定ボタン群43の中からトラップトレード(登録商標)を指定するトラップトレード指定ボタン43aをクリックする。ここで、「トラップトレード」とは、金融商品の指値取引が行われる際、一の予約注文によって、同一種類の複数の金融商品を所定の値幅で所定の商品数ごとに予約する注文形態のことをいう。そして、トラップリピートイフダン注文はトラップトレードを手順中に含むものである。なお、本実施形態の金融商品取引管理装置1においてはトラップトレード指定ボタン43a以外の選択ボタンがクリックされてもトラップトレードは行えないものとしている。
【0035】
(4)トラップトレード指定ボタン43aがクリックされると、表示部22には図5の(a)に示す条件設定画面44がポップアップ表示される。条件設定画面44には、トラップリピートイフダンの注文基準価格を入力するスタート価格入力欄44a、一注文における一ポジションごとの金額を入力する金額入力欄44b、注文するポジションの値幅(即ち個々の買い注文情報(後述)同士の値幅)を入力する値幅入力欄44c、注文するポジションの数を選択するトラップ本数選択欄44d、「利幅」としての一ポジションごとの利益金額を入力する利益金額指定欄44e、リピートイフダン注文の実行の如何を指定するリピートイフダン注文選択欄44fが設けられており、顧客は、各入力欄44a,44b,44c,44eに希望する数値を入力し、各選択欄44d,44fから希望する数値や注文形式を選択する。図5の(a)の条件設定画面44においては、各入力欄44a,44b,44c,44e及び各選択欄44d,44fに、スタート価格が109.90ドル、値幅が0.10円、一ポジションが1万通貨、注文するポジションの数が5個、有効期限が無期限、注文形式が基本的なリピートイフダン注文である注文が記入、選択された状態を示している。なお、トラップトレードの条件設定画面44においてリピートイフダン注文選択欄44fによってリピートイフダン注文が選択されることにより、トラップリピートイフダン注文の形態が選択されたことになる。
【0036】
(5)各入力欄44a,44b,44c,44e及び各選択欄44d,44fに対する入力及び選択が完了したのち、顧客が条件設定画面44の最下に設けられた注文確認ボタン44gをクリックすると、条件設定画面44に入力されたデータは注文内容表示欄44hに表示されると共にクライアント端末2から金融商品取引管理装置1に送信され、後述するステップS2の手順が行われる。なお、顧客が注文確認ボタン44gに代えてリセットボタン44iをクリックすると、上記(1)~(4)の処理は取り消され、入力画面40は上記(1)が行われる前の状態に戻る。
【0037】
上記(5)において注文確認ボタン44gをクリックされ、送信されたデータ(売買注文申込情報)が金融商品取引管理装置1に供給されると、金融商品取引管理装置1の注文入力受付部12は、入力された注文の内容を確認する(注文入力受付手順)。具体的には、リピートイフダン注文選択欄44fにおいて選択された注文形式を確認し、さらに、供給されたデータの注文価格について検査を行う(ステップS2)。具体的には、売買希望入力ボタン41~41において選択された通貨ペアのスタート価格入力欄44aに入力されたスタート価格の金額と、価格情報受信部19が受信した現在の為替相場価格との対比が行われる。注文入力受付部12は、顧客が利益を得られる場合のみ、即ち、外国通貨を買う場合はスタート価格が現在の為替相場価格よりも低い場合のみを、外国通貨を売る場合はスタート価格が現在の為替相場価格よりも高い場合のみを、それぞれ適正価格と判断する。
【0038】
スタート価格が適正価格と判断された場合(ステップS3の“No”)、口座情報生成部15が顧客口座情報テーブル182の当該顧客の証拠金情報を取得する。具体的には、図2Bに示す“amnt”フィールド182aに記録された数値データが証拠金情報として取得される。
【0039】
注文入力受付部12は、取得された証拠金情報と顧客の注文総額(即ち、金額入力欄44b、値幅入力欄44cに入力された数値及びトラップ本数選択欄44dから選択された数値に基づいて算出される注文総額)とを対比し、証拠金の額が注文総額以上であるか否かを確認する。注文情報生成部16は、証拠金の額が注文総額以上である場合(ステップS5の“No”)の場合にのみ、後述する「注文情報群」を生成する(注文情報生成手順)。これにより、顧客が確実に支払いができる場合にのみイフダンオーダーによる指値注文を受け付けることができる。
【0040】
証拠金の額が注文総額以上である場合(ステップS5の“No”)、注文入力受付部12は注文条件がトラップリピートイフダンの条件を満たしているか否かを確認する(ステップS6)。具体的には、図2Cに示す“trap_range”フィールド183aに記録された数値データを最低値幅条件の値として取得し、値幅入力欄44cに入力された値幅の数値データと最低値幅テーブル184に記録された当該通貨ペアの最低値幅情報の数値とを対比し、値幅入力欄44cに入力された値幅の値が最低値幅以上であるか否かを確認する。
【0041】
値幅入力欄44cに入力された値幅の値が最低値幅情報の数値未満であった場合(ステップS7の“Yes”)、注文入力受付部12は入力された注文をエラーとして扱い、注文の受付を拒絶する(ステップS10)。これにより、注文同士の値幅がリスクを回避できなくなるほど近接して顧客が事実上の不利益を被る事態、及び特定の価格帯に取引が集中して業務が過大になって金融商品の取扱業者が事実上の不利益を被る事態を防止できる。
【0042】
値幅入力欄44cに入力された値幅の値が最低値幅の値以上であって(ステップS7の“No”)、注文条件が上述のトラップリピートイフダンの注文に必要な条件を全て満たしているものと判定された場合、フロントページ配信部11は、クライアント端末2の表示部22に、図5の(b)に示す確認画面45を表示させる。確認画面45には入力画面40及び条件設定画面44にて顧客によって入力、選択された注文条件が列記されており、列記された内容で間違いない場合にクリックする注文ボタン45aが設けられている。なお、確認画面45の注文情報群表示欄45bにおいては、同一種類の金融商品を一の価格で指値注文する買い注文情報(上行)及び当該買い注文情報の対象となっている金融商品を他の価格で指値注文する売り注文情報(下行)からなる注文情報群45c,45c,・・・45c(k>1)が表示されている。
【0043】
顧客が操作部21の操作により注文ボタン45aをクリックすると、金融商品取引管理装置1の注文情報生成部16はステップS1にて入力されたデータに基づいて注文情報を生成する(ステップS8、注文情報生成手順、第二注文価格算出手順)。具体的には、上記手順において入力された複数のデータを、注文価格を単位としてまとめ、各情報の単位に、シーケンス番号テーブル186に記録された注文にシーケンス番号を付与することで各注文情報を形成する。なおこのとき、シーケンス番号テーブル186には、注文情報に使用されたシーケンス番号を未使用の番号と識別するための情報が付与される。
【0044】
注文情報生成部16は、生成された注文情報群を注文テーブル181に記録する(ステップS9、注文情報記録手順)。具体的には、図2Aに示す各フィールドに、該当する注文情報(即ち“備考”カラム181aの項目に対応するデータ)が記録される。例えば、ステップS8にて付与されたシーケンス番号は“ord_seq”フィールド181bに記録される。“cust_seq”フィールド181cには顧客ごとに一意に定められた顧客番号が、“style_id”フィールド181dには商品名が記録される。“ccy_pair_id”フィールド181eには通貨ペア毎に一意に定められたID番号が記録される。このID番号と通貨ペアとの組合わせはデータベース中に別途設けられたIDテーブル(図示せず)中に記録されている。“buy_sell_id”フィールド181fには売り注文、買い注文のいずれであるかを示すデータ、“ord_rate”フィールド181gには注文価格、“limit_time”フィールド181hには注文期限、“ord_cond”フィールド181iには注文種別がイフダンオーダーであるか否かを示すデータ(デフォルトは0、イフダンオーダーの場合は1が記録される。)、“new_close”フィールド181kには新規注文、決済注文のいずれであるかを示すデータが記録される。以上の手順より、トラップリピートイフダン注文の注文処理は完了し、指値注文に関する情報を生成する。
【0045】
図6の(a)は、ステップS9において記録された、買い注文情報の集合を模式として示した図、図6の(b)は、ステップS9において記録された、売り注文情報の集合を模式として示した図である。同図に示す通り、買い注文情報の集合50は、上記ステップS1~S9にて情報が生成された買い注文テーブル50aを形成し、売り注文情報の集合60は、同じく売り注文テーブル60aを形成している。
【0046】
買い注文テーブル50aは、「第一注文情報」としての第一の買い注文情報51a~第五の買い注文情報51eまでの5個の買い注文情報(即ちトラップ本数選択欄44dにて選択された個数)を有し、第一の買い注文情報51aに示された買い注文価格(第一注文価格)が1ドル109.90円(即ちスタート価格入力欄44aに入力された価格)で、各注文情報の買い注文価格の値幅は0.10円(即ち値幅入力欄44cに入力された価格)である。また、第一の買い注文情報51a~第五の買い注文情報51eはそれぞれ注文金額が1万通貨(即ち金額入力欄44bに入力された金額)である。
【0047】
売り注文テーブル60aは、「第二注文情報」としての第一の売り注文情報61a~第五の売り注文情報61eまでの5個の売り注文情報(即ちトラップ本数選択欄44dにて選択された個数)を有し、第一の売り注文情報61aに示された買い注文価格(第二注文価格)が1ドル115.04円で、各注文情報の注文価格の値幅は0.10円(即ち値幅入力欄44cに入力された価格)である。
【0048】
買い注文テーブル50aと売り注文テーブル60aとにおいて、注文番号51h,61hが同一の注文情報、例えば第一の買い注文情報51aと第一の売り注文情報61aと、第二の買い注文情報51bと第二の売り注文情報61bと、・・・は、同一種類の金融商品を一の価格で指値注文する買い注文情報及び該買い注文情報の対象となっている金融商品を他の価格で指値注文する売り注文情報からなる、一の価格帯の注文情報群を形成している。一の注文情報群を形成する注文情報のうち、買い注文テーブル50aに記録された注文情報(例えば第一の買い注文情報51a)は約定の優先順位の高い「第一注文」を形成し、売り注文テーブル60aに記録された注文情報(例えば第一の売り注文情報61a)は約定の優先順位の低い「第二注文」を形成している。買い注文テーブル50aに記録された注文情報は、当初の状態において、成立(発注)した注文としての地位を有する「有効な注文情報」として記録され、また、売り注文テーブル60aに記録された注文情報は、当初の状態において、成立(発注)した注文としての地位を有しない「無効な注文情報」として記録されている。注文情報の「有効」や「無効」は、各注文情報に含まれるフラグ等に基づいて記録されている。
【0049】
なお、ステップS3において第一希望価格が不適正な価格と判断された場合(ステップS3の“Yes”)、及び、ステップS5において証拠金の額が注文総額未満であった場合(ステップS5の“Yes”)、注文入力受付部12は入力された注文をエラーとして扱い、注文を拒絶する(ステップS10)。
【0050】
注文処理の完了後、金融商品取引管理装置1の価格情報受信部19は為替相場の情報取得を継続する(価格情報受信手順)。そして、相場価格と特定ポジションの注文価格とが一致すると、約定情報生成部14が当該ポジションの注文を約定させることになる(約定情報生成手順)。
【0051】
図7に、本実施形態の金融商品取引管理システム1Aにおける、指値注文に基づく約定を模式的に表したタイムチャートを示す。例えば、同図に示す通り、トラップリピートイフダンによる指値注文が完了した時点t1での米国ドルの相場購入価格72が1ドル110.00円であり、指値注文完了後に米国ドルの相場購入価格72が1ドル109.90円になった時点t2において、第一の買い注文情報51aが約定する。この約定と同時に第一の売り注文情報61aが有効化する。この「有効化」により、この時点において第一の売り注文情報61aは、「無効な注文情報」から「有効な注文情報」に変換される。
【0052】
同様に、米国ドルの相場購入価格72が1ドル109.80円になった時点t3において、第二の買い注文情報51bが約定すると同時に第二の売り注文情報61bが有効化し、相場購入価格72が1ドル109.70円になった時点t4において第三の買い注文情報51cが約定すると同時に第三の売り注文情報61cが有効化する。
【0053】
その後、時点t5において相場購入価格72が1ドル114.84円まで上昇した場合、約定情報生成部14は第三の売り注文情報61cに基づいて売り情報を約定させて米国ドルを売却する。これにより、顧客は第三の買い注文情報51cの価格と第三の売り注文情報61cとの差額分の利益を得られることになる。第三の売り注文情報61cが約定した後、時点t6において、第三の買い注文情報51cと第三の売り注文情報61cとが再度生成されることになる。この時点t6において、第三の売り注文情報61cは再び当初の状態である「無効な注文情報」として生成されている。
【0054】
指値注文が有効化され、あるいは、指値注文が約定すると、約定情報生成部14はデータベース18中の対応するデータを書き換える。具体的には、注文テーブル181の当該指値注文に関する注文情報のデータが削除され、顧客口座情報テーブル182の“amnt”フィールド182aのデータが約定した価格分だけ増減される。
【0055】
同様に、時点t7において相場購入価格72が1ドル114.94円まで上昇した場合、約定情報生成部14は第二の売り注文情報61bに基づいて売り情報を約定させて米国ドルを売却する。その後、時点t8において、第二の買い注文情報51bと第二の売り注文情報61bとが再度生成され(このとき第二の売り注文情報61は再び「無効な注文情報」として生成される。)、更にデータベース18中の対応するデータを書き換えられる。
【0056】
その後、時点t9において相場購入価格72が1ドル109.70円になると、第二の買い注文情報51bが約定すると同時に第二の売り注文情報61bが有効化する。以後、同様の処理が繰り返されることになる。
【0057】
なお、時点t1~t9において、図6に示す第四の買い注文情報51d、第五の買い注文情報51e、第四の売り注文情報61d、第五の売り注文情報61eは約定せず、これらの指値注文は時点t9以降に米国ドルの相場購入価格71がそれぞれの注文価格51f,61fまで下落又は上昇する時点まで約定が保留される。また、約定せずに注文期限51g,61gが経過した指値注文は全て取り消され、注文テーブル181から削除される。
【0058】
このように、本実施形態の金融商品取引管理装置1は、同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文することにより、指値注文における顧客のリスクを軽減させることができる。即ち、例えば米国ドルを1ドル109.60円で購入する指値注文のみを行っていた場合、図7に示すように1ドル109.70円を境に相場購入価格71が上昇した場合には(例え顧客に1ドル109.70円なら購入したい潜在的欲求があったとしても)顧客は米国ドルを購入できなくなる。これに対し、本実施形態におけるトラップリピートイフダン注文を用いれば、最も購入を欲する価格を基準とし、当該基準とする価格の上下に分散して複数の指値注文を行うことができるため、上述した顧客のリスクを軽減させることができる。
【0059】
また、本実施形態の金融商品取引管理装置1は、注文情報として、同一種類の金融商品を一の価格で指値注文する買い注文情報(例えば第一の買い注文情報51a)及び当該買い注文情報の対象となっている金融商品を他の価格で指値注文する売り注文情報(例えば第一の売り注文情報61a)からなる、一の価格帯の注文情報群を、複数の価格帯について生成すると共に、それぞれの注文情報群において、買い注文情報(例えば第一の買い注文情報51a)を「第一注文」とすると共に、売り注文情報(例えば第一の売り注文情報61a)を「第二注文」とし、「第一注文」を有効な注文情報、「第二注文」を無効な注文情報とし、約定情報生成部14は、一の注文情報群を形成する「第一注文」が約定された場合には「第二注文」を無効な注文情報から有効な注文情報とすることにより、一の売買注文申込情報に基づいて、同一種類の金融商品を複数の価格について指値注文のイフダンオーダーにて注文することができる。また、約定情報生成部14は、有効な注文情報とされた「第二注文」としての注文情報が約定した場合には一の注文情報群を再度生成することにより、「第一注文」と「第二注文」とが約定した後も、当該約定した注文情報群(例えば第一の買い注文情報51a及び第一の売り注文情報61a)による指値注文のイフダンオーダーを繰り返し行うことが可能になる。
【0060】
また、本実施形態の金融商品取引管理装置1は、注文情報群45c,45c,・・・,45cを、一の価格における商品数が一定であり、複数の価格帯の注文情報群45c,45c,・・・,45cにおける第一~第五の買い注文情報51a,51b,51c,51d,51e同士の値幅及び第一~第五の売り注文情報61a,61b,61c,61d,61e同士の値幅がそれぞれ一定であるように形成することにより、金融商品を注文する際のクライアント端末2側からの命令内容を簡素化できる。また、クライアント端末2から注文を行う顧客に、一定の商品数の注文を一定の値幅ごとに形成した、リスク分散の効果が高い注文を行わせることができる。
【0061】
なお、本実施形態の金融商品取引管理装置1は、クライアント端末2から一度発注した指値注文の価格及び金額の変更の要求があった場合、当該要求が不正要求であるものとして入力エラー扱いで処理する。これにより、価格や金額の頻繁な要求で金融商品の売買元である銀行側の業務が過大になることを防止できる。
【0062】
一方、一度発注した指値注文のキャンセル要求があった場合、金融商品取引管理装置1は所定の手順により当該要求の処理を行う。図8は、本実施形態の金融商品取引管理装置1における、キャンセル要求の処理手順を示すフローチャートである。以下、同図に基づいてキャンセル要求の処理手順を説明する。
【0063】
まず、金融商品取引管理装置1が、クライアント端末2から、一度発注した指値注文のキャンセルの要求を受けると(ステップS11)、約定情報生成部14は、キャンセル要求のあった指値注文の注文情報が含まれる注文情報群を抽出し、この注文情報群に含まれる注文情報のうち、注文価格が最も当該金融商品の相場価格に近いものを選び出す。そして、約定情報生成部14は、当該選び出した注文価格から相場価格を引いた値の絶対値と、差額テーブル185に記録された当該通貨ペアのキャンセル不可値幅のデータとを照合する。絶対値がキャンセル不可値幅よりも大きい場合(ステップS12の“Yes”)、約定情報生成部14は、ステップS12で抽出された注文情報群に含まれる注文情報のうち、約定未成立の注文情報及び注文情報群を全てキャンセルされたものとして処理する(ステップS13)。
【0064】
例えば図5において、第一の買い注文情報51aのみが約定している場合に第三の買い注文情報51cにキャンセル要求があり、要求があった時点の米国ドルの相場購入価格71が1ドル109.90円であった場合、上記相場購入価格71から相場価格に最も近い第二の買い注文情報51bの注文価格(1ドル109.80円)を引いた値は0.10円となる。そして、キャンセル不可値幅が0.10円未満(例えば0.09円)であった場合、図5に示す、第二の買い注文情報51bから第五の買い注文情報51eまでが全てキャンセルされることになる。更に、第二~第五の買い注文情報51b~51eと注文情報群を形成している売り注文情報、即ち第二の売り注文情報61bから第五の売り注文情報61eまでも全てキャンセルされる。キャンセルされた注文情報のデータは、注文テーブル181から削除される。
【0065】
このように、一のキャンセル要求で、キャンセル要求のあった注文情報群を全てキャンセル処理し、また、キャンセル要求のあった注文情報が含まれる注文情報群を生成した売買注文申込情報に基づいて生成された全ての注文情報群をキャンセル処理することにより、トラップリピートイフダン注文による指値注文の取扱が煩雑化することを防止できる。
【0066】
一方、上記絶対値がキャンセル不可値幅以下である場合(ステップS12の“No”)、約定情報生成部14は当該キャンセル要求を不正な要求として拒絶し、当該要求をエラー扱いで処理する(ステップS14)。
【0067】
このように、キャンセル不可値幅が設定されていることにより、銀行等の金融機関に事実上の損害を与える事態を回避できる。即ち、相場購入価格(又は相場販売価格)が注文価格に一致する直前でクライアント端末2に指値注文のキャンセル要求が入力された場合、キャンセル要求が金融機関に連絡される際に生ずるタイムラグにより、顧客が注文をキャンセルした金融商品を金融機関が購入する事態が生じうるが、相場価格と注文価格とが所定の値よりも接近した際の注文のキャンセルを禁止することにより、注文がキャンセルされた金融商品を金融機関が購入してしまう事態を防止できる。
【0068】
なお、クライアント端末2から受けた注文が通常の成行注文(注文した時点の相場価格で金融商品の売買を行う取引方法)である場合には、ステップS8にて注文情報が生成されると即座に約定情報生成部14が当該注文を約定させ、ステップS9の処理は行われない。
【0069】
以上、本実施形態の金融商品取引管理方法を行う金融商品取引管理装置1によれば、金融商品の指値注文における金融商品の取扱業者及び顧客の不利益を回避し、システムを利用する顧客が煩雑な注文手続を行うことなく指値注文による取引を効率的かつ円滑に行うことができる。
【0070】
なお、上記実施形態の金融商品取引管理方法を行う金融商品取引管理システム1Aは、金融商品として外国為替を取扱うものとしたが、これに限定されず、他の金融商品、例えば株式、債券を取扱う金融商品取引管理システムにおいても本発明を適用できる。
【0071】
また、上記実施形態の金融商品取引管理方法を行う金融商品取引管理システム1Aにおいては、注文情報群を形成する買い注文情報を「第一注文」とし、売り注文情報を「第二注文」としたが、逆に、売り注文情報を「第一注文」とし、買い注文情報を「第二注文」としてもよい。
【0072】
上記実施形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態に限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。
【符号の説明】
【0073】
1A・・・金融商品取引管理システム
1・・・金融商品取引管理装置
2、2~2・・・クライアント端末
12・・・注文入力受付部(注文入力受付手段)
14・・・約定情報生成部(約定情報生成手段)
16・・・注文情報生成部(注文情報生成手段、第二注文価格情報算出手段)
19・・・価格情報受信部(価格情報受信手段)
45c,45c,・・・,45c・・・注文情報群
51a、51b,51c,51d,51e・・・買い注文情報(注文情報)
61a,61b,61c,61d,61e・・・売り注文情報(注文情報)
181・・・注文テーブル(注文情報記録手段)
184・・・最低値幅テーブル(最低値幅情報記録手段)
185・・・差額テーブル(差額情報記録手段)
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8