(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043321
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】エンコーダの校正値生成方法、エンコーダの校正値生成システム及びエンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/244 20060101AFI20220308BHJP
【FI】
G01D5/244 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002167
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2017160082の分割
【原出願日】2017-08-23
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】福薗 誠一
(72)【発明者】
【氏名】平岡 祐典
(72)【発明者】
【氏名】木村 明
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廉価で低精度なエンコーダであっても、検出位置データを高精度に校正可能な校正値生成システムを提供する。
【解決手段】被検出パターンを有するスケール11,21と、被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサ13,23と、スケール11,21と検出センサ13,23との位置関係を算出する位置算出器14,24とを有する校正対象エンコーダ10及びマスターエンコーダ20を備え、マスターエンコーダ20の検出位置データを基に、校正対象エンコーダ10の検出位置データの校正値を生成する。マスターエンコーダ20は、校正対象エンコーダ10よりも高精度且つ高分解能を有し、位置算出器14は、所定の位置間隔毎にタイミング信号を出力し、校正値生成部25は位置算出器14からのタイミング信号に応じた位置データと、タイミング信号が出力されたときに位置算出器24から得られる位置データとを比較して校正値を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを用い、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する方法であって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとをリアルタイムに比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成するようにしたことを特徴とする、エンコーダの校正値生成方法。
【請求項2】
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを用い、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する方法であって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から所定位置間隔毎にタイミング信号を出力させ、このタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成するようにしたことを特徴とする、エンコーダの校正値生成方法。
【請求項3】
前記校正対象エンコーダとマスターエンコーダとは、その機械的な構造が異なるものである請求項1又は2記載のエンコーダの校正値生成方法。
【請求項4】
前記校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダは、それぞれロータリエンコーダである請求項1乃至3記載のいずれかのエンコーダの校正値生成方法。
【請求項5】
前記校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを同軸に配設した請求項4記載のエンコーダの校正値生成方法。
【請求項6】
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを備えて構成され、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する校正値生成システムであって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとをリアルタイムに比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成する校正値生成装置を更に備えていることを特徴とする、エンコーダの校正値生成システム。
【請求項7】
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを備えて構成され、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する校正値生成システムであって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダの位置算出器は、該校正対象エンコーダのスケールと検出センサとが相対的に移動しているときに、所定の位置間隔毎にタイミング信号を出力するように構成され、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとがそれぞれ同期して相対的に移動した状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から出力されるタイミング信号を受信し、受信したタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに該マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成する校正値生成部を更に備えていることを特徴とする、エンコーダの校正値生成システム。
【請求項8】
前記マスターエンコーダは、更に、前記校正値生成部によって生成された校正値を記憶する校正値記憶部を備えていることを特徴とする請求項7記載のエンコーダの校正値生成システム。
【請求項9】
前記校正対象エンコーダとマスターエンコーダとは、その機械的な構造が異なるものである請求項6乃至8記載のいずれかのエンコーダの校正値生成システム。
【請求項10】
前記校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダは、それぞれロータリエンコーダである請求項6乃至9記載のいずれかのエンコーダの校正値生成システム。
【請求項11】
前記校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを同軸に配設した請求項10記載のエンコーダの校正値生成システム。
【請求項12】
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、
前記スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、
前記検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器と、
前記位置算出器から得られる位置データの校正値を記憶する校正値記憶部と、
前記位置算出器から得られた位置データを前記校正値記憶部に記憶された校正値により校正して出力するデータ校正部とを備えていることを特徴とするエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出するエンコーダ、並びに当該エンコーダの検出値を校正するための校正値生成方法及び校正値生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記エンコーダとして、従来から、モータの回転速度及び回転角度位置を検出するためのロータリエンコーダや、直線移動軸における物体の移動位置を検出するためのリニアエンコーダなどが知られている。
【0003】
これらのエンコーダは、一般的に、目盛りに相当する被検出パターンが形成されたスケールと、このスケールに形成された被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とを備えて構成され、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられている。
【0004】
そして、従来、例えば、前記ロータリエンコーダには、
図4に示すようなセパレートタイプのものと、
図5に示すようなユニットタイプのものが知られている。
【0005】
図4に例示したロータリエンコーダ100は、適宜回転体に取り付けられるリング状のスケール101と、このスケール101の外周面と対峙するように固定される検出ヘッド102とから構成される。スケール101は、被検出パターンとして、その外周面に、中心軸と平行且つ所定ピッチ間隔で形成された目盛りを有している。
【0006】
また、前記検出ヘッド102には、検出センサ及び位置算出器が内蔵されている。検出センサは、スケール102が回転することによって生じる磁界の変動(サイン曲線を描く変動)から、スケール102の相対的な回転角度位置を検出し、位置算出器は検出センサによって検出された相対的な回転角度位置を基に、所定の原点となる角度位置(回転原点)からのスケール102の現在の回転角度位置を算出し、算出した角度位置に係る信号を外部に出力する。
【0007】
このような構成のロータリエンコーダ100は、スケールと検出ヘッドとが分離し、一体にはなっていないので、ユーザが設計する多種多様な構成の回転装置に適用可能であり、従来、例えば、特開2011-38776号公報に開示されるように、テーブルの回転角度を検出するために使用されている。この特開平2011-38776号公報に開示されたロータリエンコーダは、スケールに相当するロータがテーブルに取り付けられ、検出ヘッドに相当するセンサがロータの外周面と対峙するように適宜固定されている。
【0008】
一方、
図5に示したユニットタイプのロータリエンコーダ110は、上述したセパレートタイプのロータリエンコーダ100と同様のリング状スケール及び検出ヘッドを、所定のケーシング111内に収納した構成を備える。リング状スケールはケーシング内で回転自在に支持され、また、検出ヘッドは、ケーシング111内でリング状スケールの外周面と対峙するように固定される。そして、このロータリエンコーダ110においても、スケールの回転によって生じる磁界の変動から、スケールの相対的な回転角度位置が検出センサによって検出され、検出センサによって検出された相対的な回転角度位置を基に、所定の原点となる角度位置(回転原点)からのスケールの現在の回転角度位置が位置算出器によって算出され、算出された回転角度位置に係る信号(データ)が外部に出力される。
【0009】
このように構成されるユニットタイプのロータリエンコーダ110は、例えば、モータのように、検出対象の回転体が適宜ケーシング内に収納され、回転体の回転軸がケーシングから延出された装置において、当該回転体の回転角度位置や回転速度を検出するために用いられ、前記回転軸にスケールが連結された状態で前記ケーシングに取り付けられて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、前記ユニットタイプのロータリエンコーダ110は、一般的に、高い検出精度を得るために、スケールと検出ヘッドの位置関係が極めて高精度に調整されている。したがって、ユニットタイプのロータリエンコーダ110は、一般的に高価なものとなっている。
【0012】
一方、セパレートタイプのロータリエンコーダ100は、事前調整が不要であるため比較的廉価ではあるが、ユーザサイドにおいて、スケール101を回転体に取り付ける取付精度や、スケール101と検出ヘッド102との位置合わせを高精度に調整する必要があり、このため調整作業に長時間を要するというデメリットがあった。
【0013】
また、セパレートタイプのロータリエンコーダ100は、ユニットタイプのものに比べて高い検出精度を実現し難く、したがって、検出される回転角度位置データを校正する必要があるが、この校正値を得るために、従来は、オートコリメータやポリゴンミラーを用いた測定を行う必要があり、この測定作業に長時間を要するという問題があった。また、校正のために長時間を掛けたとしても、測定できるポイント(角度位置)は数点しかないため、これら測定点の間の角度については補間処理によって校正値を生成する他は無く、このため、極めて粗い校正しか実現できず、この意味においても、高い検出精度を実現することができないものであった。
【0014】
したがって、廉価なセパレートタイプのロータリエンコーダを用い、このロータリエンコーダを使用可能な程度の精度で取り付け、位置算出器によって算出される回転角度位置データを高精度に校正できれば、廉価なロータリエンコーダを用いながらも高精度な回転角度位置データを得ることができて有益である。
【0015】
また、ユニットタイプのロータリエンコーダについても、スケール及び検出ヘッドの取付精度を比較的緩やかなものとした廉価なものを製造し、その検出角度位置データを高精度に校正するようにすれば、廉価なユニットタイプのロータリエンコーダを提供することができる。
【0016】
このような問題は、何もロータリエンコーダに限られるものではなく、リニアエンコーダにおいても同様であり、位置算出器によって算出される位置データを高精度に校正できれば、廉価な構成のリニアエンコーダを用いて、高精度な位置データを検出することが可能となる。
【0017】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、廉価な構成のエンコーダでありながら、高精度な位置データを検出することができるエンコーダ、並びに廉価で比較的低精度のエンコーダであっても、その検出位置データを高精度に校正可能な校正値の生成方法及び生成システムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するための本発明は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを用い、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する方法であって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器にから得られる位置データとをリアルタイムに比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成するようにした校正値生成方法に係る。
【0019】
そして、この校正値生成方法は、目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを備えて構成され、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する校正値生成システムであって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとをリアルタイムに比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成する校正値生成装置を更に備えた校正値生成システムによって好適に実施される。
【0020】
この態様の校正値生成システムによれば、まず、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させる。即ち、例えば、校正対象エンコーダの検出センサ及びマスターエンコーダの検出センサ、又は校正対象エンコーダのスケール及びマスターエンコーダのスケールをそれぞれ移動体に取り付けて当該移動体を移動させる。
【0021】
そして、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データと、前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとが、前記校正値生成装置により、リアルタイムに比較されてその差分値が算出され、ついで算出された差分値を基に、前記校正対象エンコーダから出力される位置データに対する校正値が生成される。
【0022】
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を備えている。したがって、校正対象エンコーダから出力される位置データと、マスターエンコーダから出力される位置データとをリアルタイムに比較することにより、校正対象エンコーダによって検出される位置データの正確な誤差を算出することができ、正確な校正値を算出することができる。
【0023】
更に、校正対象エンコーダから出力される位置データと、マスターエンコーダから出力される位置データとをリアルタイムに比較するようにしているので、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及びマスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ相対的に移動させた状態で前記校正値を生成することができ、当該校正値を短時間の内に得ることができる。また、校正対象エンコーダの分解能に応じ、当該分解能に応じた点数の校正値を生成することができる。
【0024】
尚、本発明では、校正対象エンコーダから出力される位置データと、マスターエンコーダから出力される位置データとをリアルタイムに比較することが肝要であり、このようにリアルタイムに比較するためには、例えば、校正対象エンコーダから前記校正値生成装置に位置データを送信するタイミングと、マスターエンコーダから前記校正値生成装置に位置データを送信するタイミングとを一致させることで実現することができる。
【0025】
また、本発明は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを用い、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する方法であって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させた状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から所定位置間隔毎にタイミング信号を出力させ、このタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに前記マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成するようにした校正値生成方法に係る。
【0026】
そして、この態様の校正値生成方法は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、該スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、該検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器とをそれぞれ有し、前記スケールと検出センサとが相対的に移動可能に設けられた校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを備えて構成され、前記マスターエンコーダによって検出される位置データを基に、前記校正対象エンコーダによって検出される位置データの校正値を生成する校正値生成システムであって、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を有し、
前記校正対象エンコーダの位置算出器は、該校正対象エンコーダのスケールと検出センサとが相対的に移動しているときに、所定の位置間隔毎にタイミング信号を出力するように構成され、
前記マスターエンコーダは、前記校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとがそれぞれ同期して相対的に移動した状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から出力されるタイミング信号を受信し、受信したタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに該マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、得られた差分値を基に、前記校正対象エンコーダの位置算出器から得られる位置データの校正値を生成する校正値生成部を更に備えた校正値生成システムによって好適に実施される。
【0027】
この態様の校正値生成システムによれば、上述した態様の校正値生成システムと同様に、まず、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及び前記マスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ同期させて相対的に移動させる。
【0028】
そして、これらスケール及び検出センサが同期して相対的に移動している状態で、前記校正対象エンコーダの位置算出器から前記マスターエンコーダの校正値生成部に対して所定の位置間隔毎にタイミング信号が出力され、校正値生成部は受信したタイミング信号に応じた位置データと、該タイミング信号が出力されたときに該マスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較してその差分値を算出し、ついで算出した差分値を基に、前記校正対象エンコーダから出力される位置データに対する校正値を生成する。
【0029】
前記校正対象エンコーダから出力されるタイミング信号のデータ量は極めて小さく、したがってその送信時間は極めて短い時間(瞬時)であるので、このタイミング信号が出力された時点と、前記マスターエンコーダの位置算出器によって位置データが算出される時点とは、実質的に同じ時刻である、即ち、これら両時点はリアルタイムであると見做すことができる。
【0030】
斯くして、この態様の校正値生成システムにおいても、マスターエンコーダは校正対象エンコーダよりも高精度且つ高分解能を備えており、また、校正対象エンコーダから出力されたタイミング信号に応じた位置データと、このタイミング信号が出力されたときにマスターエンコーダの位置算出器から得られる位置データとを比較、言い換えれば、校正対象エンコーダから得られる位置データと、マスターエンコーダから得られる位置データとをリアルタイムに比較することによって、校正対象エンコーダから出力される位置データに対する校正値を生成するようにしているので、校正対象エンコーダによって検出される位置データの正確な誤差を算出することができ、正確な校正値を算出することができる。
【0031】
また、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及びマスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ相対的に移動させた状態で前記校正値を生成することができるので、当該校正値を短時間の内に得ることができ、また、校正対象エンコーダの分解能に応じ、当該分解能に応じた点数の校正値を生成することができる。
【0032】
尚、この態様の校正値生成システムでは、更に、前記校正値生成部によって生成された校正値を記憶する校正値記憶部を備えているのが好ましい。校正値が生成される度に、当該校正値を外部に出力するようにすると、校正値の生成に要する時間が校正値の出力に要する時間よりも短い場合には、適正に校正値を出力することができないという不都合を生じる。上記のように、順次生成される校正値を一旦校正値記憶部に格納し、全ての校正値が生成された後に、得られた校正値を一時に出力するようにすれば、全ての校正値を確実かつ適正に出力することができる。
【0033】
また、本発明における前記校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダには、光学式及び磁気式などの各種検出形式のものが含まれ、また、リニアエンコーダやロータリエンコーダなど検出用途に応じた各種構造のものが含まれ、更に、スケールと検出センサ及び位置算出器とが分離されたセパレートタイプのものや、スケールと検出センサ及び位置算出器とが予め組み付けられたユニットタイプのものが含まれる。
【0034】
そして、本発明において、前記校正対象エンコーダとマスターエンコーダとは、その機械的な構造が異なるものであっても良い。例えば、校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダの内、一方が光学式で他方が磁気式であっても良い。或いは、校正対象エンコーダがセパレートタイプで、マスターエンコーダがユニットタイプであっても良い。
【0035】
また、校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダが、それぞれロータリエンコーダである場合には、これら校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダを同軸に配設するのが好ましい。
【0036】
また、本発明は、
目盛りに相当する被検出パターンを有するスケールと、
前記スケールの被検出パターンを検出し、検出した被検出パターンに応じた検出信号を出力する検出センサと、
前記検出センサから出力された検出信号を基に前記スケールと前記検出センサとの相対的な位置関係を算出する位置算出器と、
前記位置算出器から得られる位置データの校正値を記憶する校正値記憶部と、
前記位置算出器から得られた位置データを前記校正値記憶部に記憶された校正値により校正して出力するデータ校正部とを備えたエンコーダに係る。
【0037】
このエンコーダによれば、予め校正された位置データが出力されるので、エンコーダから出力される位置データを、事後的な処理を加えることなくそのまま使用することができ、後工程におけるデータ処理を軽減することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、校正対象エンコーダから出力される位置データと、マスターエンコーダから出力される位置データとをリアルタイムに比較するようにしているので、校正対象エンコーダによって検出される位置データの正確な誤差を算出することができ、正確な校正値を算出することができる。
【0039】
また、校正対象エンコーダのスケールと検出センサ、及びマスターエンコーダのスケールと検出センサとをそれぞれ相対的に移動させた状態で校正値を生成することができるので、当該校正値を短時間の内に得ることができる。また、校正対象エンコーダの分解能に応じた点数の校正値を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の一実施形態に係る校正値生成システムの概略構成を示した正面図である。
【
図2】本実施形態に係る校正対象ロータリエンコーダ及びマスターロータリエンコーダの概略構成を示したブロック図である。
【
図3】本発明の他の実施形態に係る校正対象ロータリエンコーダ及びマスターロータリエンコーダの概略構成を示したブロック図である。
【
図4】一般的なセパレートタイプのロータリエンコーダを示した斜視図である。
【
図5】一般的なユニットタイプのロータリエンコーダを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る校正値生成システムの概略構成を示した正面図であり、
図2は、本実施形態に係る校正対象ロータリエンコーダ及びマスターロータリエンコーダの概略構成を示したブロック図である。
【0042】
図1に示すように、本例の校正値生成システム1は、主軸ユニット30の後端部(図示右側端部)に設けられる。主軸ユニット30は、主軸32、この主軸32を回転自在に支持するハウジング31、ハウジング31内に設けられて主軸32を回転させる主軸モータ(図示せず)などから構成される。また、主軸32は、その前端部32aがハウジング31の前端部から前方に突出し、その後端部は大径部32b及びその先端側の小径部32cからなる段付き形状を有し、これら大径部32b及び小径部32cがハウジング31の後端部から後方に突出している。
【0043】
前記校正値生成システム1は、校正対象のロータリエンコーダ(以下、「校正エンコーダ」という。)10、マスターとなるロータリエンコーダ(以下、「マスターエンコーダ」という。)20、並びにこれらを主軸32の後端小径部32c及びハウジング31の後端部に取り付けるための取付部材2,3から構成される。取付部材2は円筒状をした部材で、前記大径部32b及び小径部32cを収納した状態で、ハウジング31の後端部に取り付けられている。また、取付部材3は中心穴を備えた円板状の部材で、中心穴から前記小径部32cが突出した状態で取付部材2取り付けられ、当該取付部材2の開口部を閉塞している。
【0044】
尚、主軸ユニット30は、その通常の使用態様において、前記取付部材2,3及び校正エンコーダ10が取り付けられており、校正エンコーダ10によって検出される主軸32の回転角度位置を基に、図示しない制御装置によってその作動が制御される。
【0045】
[校正エンコーダ]
前記校正エンコーダ10は、前記主軸ユニット30を構成する主軸32の回転角度位置及び回転速度を検出するために当該主軸ユニット30に設けられるもので、
図1及び
図2に示すように、スケール11及び検出ヘッド12から構成される。スケール11は、
図4に示した従来のリング状のスケール101と同様の構成を備えるものであり、被検出パターンとして、その外周面に、その中心軸と平行な筋状の歯が所定ピッチ間隔で形成されている。このスケール11は、
図1に示すように、主軸32の後部側の小径部32cに当該主軸32と同軸となるように外嵌され、大径部32bの端面に螺着されている。
【0046】
また、前記検出ヘッド12は、前記スケール11の外周面と対峙するように、前記取付部材2の内周面に固定される。この検出ヘッド12は、
図2に示すように、検出センサ13,図示しないバイアス磁石,位置算出器14,データ校正部15,校正値記憶部16,及びデータ入出力部17から構成される。尚、位置算出器14,データ校正部15,校正値記憶部16及びデータ入出力部17はそれぞれ適宜電子回路を備えた電子ディバイスによって実現される。
【0047】
前記バイアス磁石(図示せず)はバイアス磁界を生じさせ、検出センサ13は、筋状の歯を備えたスケール11が回転することによって生じるバイアス磁界の変動(サイン曲線を描く変動)から、スケール11の相対的な回転角度位置を自身の分解能に応じた回転角度間隔毎に検出し、位置算出器14は、検出センサ13によって検出された相対的な回転角度位置を基に、予め定められた原点となる角度位置(回転原点)からのスケール11の現在の回転角度位置を算出し、算出した回転角度位置データをデータ校正部15に出力するとともに、前記検出センサ13の分解能に応じた回転角度間隔毎にタイミング信号(例えば、クロック信号)を、詳しくは後述するマスターエンコーダ22の校正値生成部25に送信する処理を行う。尚、本例において、校正エンコーダ10の回転原点は測定の基点となるもので、位置算出器14は、スケール11に対して設定されたこの回転原点を基点として、校正値生成部25へのタイミング信号の出力を開始する。
【0048】
前記データ校正部15は、前記位置算出器14から出力された回転角度位置に、前記校正値記憶部16に格納された当該回転角度位置に対応した校正値を加算することによって当該回転角度位置を校正し、校正した回転角度位置データを前記データ入出力部17から外部に出力する。尚、校正値記憶部16には、回転角度位置に対応した校正値が前記データ入出力部17を介して外部から予め格納される。
【0049】
[マスターエンコーダ]
前記マスターエンコーダ20は、前記校正エンコーダ10の位置算出器14により算出される回転角度位置の校正値を生成するために設けられるものであって、スケール21及び検出ヘッド22を有し、これらが所定のケーシング20a内に収納された構成を備える。
【0050】
スケール21は、前述のスケール11と同様に、リング形状を有し、その外周面には、被検出パターンとして、所定ピッチ間隔で規則的に磁化された磁性塗料が塗布されており、前記ケーシング20a内で回転自在に支持されている。このマスターエンコーダ20は、前記スケール21の中心穴が前記主軸32の小径部32cに外嵌した状態で当該小径部32cに連結され、この状態でケーシング20aが前記取付部材3に固着されている。斯くして、マスターエンコーダ20のスケール21は校正エンコーダ10のスケール11及び主軸32と同軸となるように当該主軸32に取り付けられ、これらスケール11,21は同期して主軸32と共に回転する。
【0051】
また、前記検出ヘッド22は、ケーシング20a内でスケール21の外周面と対峙するように固設されており、
図2に示すように、検出センサ23,位置算出器24,校正値生成部25,校正値記憶部26及びデータ出力部27から構成される。尚、これら位置算出器24,校正値生成部25,校正値記憶部26及びデータ出力部27はそれぞれ適宜電子回路を備えた電子ディバイスによって実現される。
【0052】
前記検出センサ23は、磁界の変化を検出する磁気抵抗素子であり、スケール21が回転することによって生じる磁界の変動(サイン曲線を描く変動)から、スケール21の相対的な回転角度位置を自身の分解能に応じて検出し、位置算出器24は検出センサ23によって検出された相対的な回転角度位置を基に、予め定められた原点となる角度位置(回転原点)からのスケール21の現在の回転角度位置を算出し、算出した回転角度位置を校正値生成部25に出力するとともに、データ出力部27から外部に出力する。
【0053】
また、この検出センサ23は、校正エンコーダ10の検出センサ13よりも高い分解能を有しており、当該検出センサ13よりも細かい単位の回転角度位置を検出可能になっている。
【0054】
前記校正値生成部25は、前記校正エンコーダ10の位置算出器14から出力されるタイミング信号を受信し、受信したタイミング信号に応じた回転角度位置(即ち、このタイミング信号が出力されたときに位置算出器14によって算出される回転角度位置)と、該タイミング信号が出力されたとき、言い換えれば、該タイミング信号を受信したときに前記位置算出器24によって算出される回転角度位置を基に、測定開始時(即ち、最初のタイミング信号を受信した時)を基点として算出したスケール21の相対的な回転角度位置とを比較してその差分値を算出し、得られた差分値の正負を反転させて、当該タイミング信号が出力されたときに前記位置算出器14によって算出される回転角度位置に対応した校正値とするとともに、当該回転角度位置と校正値とを相互に関連付けて前記校正値記憶部26に格納する処理を行う。
【0055】
尚、校正値生成部25は、スケール11の回転原点を測定開始点(基点)として出力されたタイミング信号を基準に、以後、タイミング信号を受信したその数をカウントし、タイミング信号の受信数に、タイミング信号が出力される回転角度間隔を乗じることにより、当該タイミング信号が出力されたときに前記位置算出器14によって算出される回転角度位置を認識する。また、前記位置算出器24によって算出される角度位置データは前記データ出力部27を介して外部に出力され、前記校正値記憶部26に格納された校正値データもこのデータ出力部27を介して外部に出力することができる。そして、このようにして出力された校正値データは、前記データ入出力部17を介して前記校正値記憶部16に格納される。
【0056】
以上の構成を備えた本例の校正値生成システム1によれば、まず、前記主軸ユニット30を駆動して主軸32を回転させ、これにより校正エンコーダ10のスケール11と、マスターエンコーダ20のスケール21とを同期して回転させる。尚、この時点では、校正エンコーダ10の校正値記憶部16及びマスターエンコーダ20の校正値記憶部26には、いずれも校正値データが格納されていないものとする。
【0057】
そして、このようにスケール11,21が同期して回転している状態で、前記校正エンコーダ10では、その位置算出器14によって、スケール11(即ち、主軸32)の回転原点からの現在の回転角度位置が算出され、算出された回転角度位置がデータ校正部15に出力されるとともに、回転原点を基点として所定の回転角度間隔毎にタイミング信号がマスターエンコーダ22の校正値生成部25に送信される。
【0058】
そして、データ校正部15では、前記位置算出器14から出力された回転角度位置に、前記校正値記憶部16に格納された当該回転角度位置に対応した校正値を加算することによって当該回転角度位置を校正する処理を行い、校正した回転角度位置データを前記データ入出力部17を介して外部に出力する。但し、この時点では、校正値記憶部16には校正値データが格納されていないので、位置算出器14から出力された回転角度位置データがデータ校正部15を経由して、データ入出力部17からそのまま外部に出力される。
【0059】
一方、マスターエンコーダ20では、位置算出器24によって、スケール21(即ち、主軸32)の回転原点からの現在の回転角度位置が算出され、算出された回転角度位置が校正値生成部25に出力されるとともに、データ出力部27から外部に出力される。
【0060】
そして、校正値生成部25は、前記位置算出器14から出力されるタイミング信号を受信して、このタイミング信号を受信したときに位置算出器24によって算出される回転角度位置を基に、測定開始時点を基点として算出したスケール21の相対的な回転角度位置と、受信したタイミング信号に応じたスケール11の回転角度位置、即ち、測定開始時点を基点としたスケール11の回転角度位置との差分値を算出し、得られた差分値の正負を反転させて、当該タイミング信号を出力したときに位置算出器14によって算出される回転角度位置に対応した校正値とするとともに、当該回転角度位置と校正値とを相互に関連付けて校正値記憶部26に格納する。
【0061】
このようにして、スケール11をその回転原点から1回転させたときに、前記位置算出器14によって算出される回転角度位置であって、検出センサ13の分解能によって決定される回転角度間隔毎の回転角度位置に対する校正値が前記校正値生成部25によって生成され、対応する回転角度位置と校正値とが相互に関連付けられて校正値記憶部26に格納される。
【0062】
尚、位置算出器14から出力されるタイミング信号のデータ量は極めて小さく、したがってその送信時間は極めて短い時間(瞬時)であるので、このタイミング信号が出力された時点と、前記位置算出器24によって回転角度位置が算出される時点とは、実質的に同じ時刻である、即ち、これら両時点はリアルタイムであると見做すことができる。
【0063】
斯くして、この校正値生成システム1によれば、前記マスターエンコーダ20の検出センサ23は、校正エンコーダ10の検出センサ13よりも高い分解能、即ち、高い検出精度を備えており、また、校正エンコーダ10の位置算出器14により算出される測定開始時点からのスケール11の回転角度位置と、マスターエンコーダ20の位置算出器24から得られる測定開始時点からのスケール21の回転角度位置とをリアルタイムに比較することによって、当該位置算出器14により算出される回転角度位置の校正値を生成するようにしているので、当該回転角度位置に対する正確な校正値を算出することができる。
【0064】
また、校正エンコーダ10のスケール11と、マスターエンコーダ20のスケール21とを主軸32に連結させ、これらスケール11,21及び主軸32を同期した状態で回転させながら校正エンコーダ10に対する校正値を生成することができるので、当該校正値を短時間の内に得ることができる。また、校正エンコーダ10(検出センサ13)の分解能に対応した点数の校正値を生成することができるので、当該校正エンコーダ10によって検出される回転角度位置データをより高精度に校正することができる。
【0065】
以上のようにして、位置算出器14によって算出される回転角度位置に対する校正値が、マスターエンコーダ20の校正値記憶部26に格納されると、このデータがデータ出力部27から外部の適宜記録媒体に出力され、ついで、この記録媒体から、前記校正エンコーダ10のデータ入出力部17を介してその校正値記憶部16に格納される。
【0066】
校正値生成部25によって校正値が生成される度に、当該校正値を外部に出力するようにすると、校正値の生成に要する時間が校正値の出力に要する時間よりも短い場合には、適正に校正値を出力することができないという不都合を生じる。校正値生成部25によって順次生成される校正値を一旦校正値記憶部26に格納し、全ての校正値が生成された後に、得られた校正値を一時に出力するようにすれば、全ての校正値を確実かつ適正に出力することができる。
【0067】
そして、上記のようにして、校正値記憶部16に校正値が格納されると、前記マスターエンコーダ20が主軸32及び取付部材3から取り外され、以後、主軸ユニット30は、校正エンコーダ10によってその主軸32の回転角度位置が検出され、これに応じて、適宜制御装置によってその作動が制御される。
【0068】
即ち、校正エンコーダ10では、主軸32が回転して、これと共にスケール11が回転すると、位置算出器14によりスケール11(即ち、主軸32)の回転原点を基準とした回転角度位置が、検出センサ13の分解能に応じた回転角度間隔毎に順次算出される。そして、算出された各回転角度位置は、データ校正部15において、校正値記憶部16に格納された校正値に基づいて校正され、校正後の回転角度位置データがデータ入出力部17から外部に出力される。
【0069】
斯くして、この校正エンコーダ10によれば、予め校正された回転角度位置が出力されるので、校正エンコーダ10から出力される回転角度位置を、事後的な処理を加えることなくそのまま使用することができ、後工程におけるデータ処理を軽減することができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何らこれに限定されるものではない。
【0071】
例えば、上例では、校正エンコーダ10の位置算出器14によって算出される回転角度位置と、マスターエンコーダ20の位置算出器24によって算出される回転角度位置とをリアルタイムに比較するために、前記位置算出器14から校正値生成部25にタイミング信号を出力するように構成し、校正値生成部25では、受信したタイミング信号に応じたスケール11の回転角度位置と、このタイミング信号を受信したときに位置算出器24によって算出される回転角度位置との差分値から校正値を生成するように構成したが、位置算出器14によって算出される回転角度位置と、位置算出器24によって算出される回転角度位置とをリアルタイムに比較することができれば、このような構成に限られるものではない。
【0072】
例えば、本発明に係る校正値生成システムは、
図3に示すような校正値生成システム50であっても良い。この校正値生成システム50は、校正エンコーダ60及びマスターエンコーダ70に加えて校正値生成装置80を備え、この校正値生成装置80は、校正値生成部81、校正値記憶部82及びデータ出力部83から構成される。
【0073】
尚、前記校正エンコーダ60は、検出ヘッド61の構成、具体的には、位置算出器62及びデータ入出力部63の処理が、上例の検出ヘッド12における位置算出器14及びデータ入出力部63の処理と異なる。したがって、この校正エンコーダ60において、上例の校正エンコーダ10と同じ構成については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0074】
また、前記マスターエンコーダ20は、検出ヘッド71の構成、具体的には、校正値生成部25及び校正値記憶部26を備えていない点、また、データ出力部72の処理が、上例の検出ヘッド22とその構成が異なる。したがって、マスターエンコーダ70において、上例のマスターエンコーダ20と同じ構成については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。尚、この例において、スケール11とスケール21とは、それぞれの回転原点が同じ角度位置となるように予め調整されているものとする。
【0075】
前記校正エンコーダ60は、主軸32及びスケール11が回転すると、検出センサ13によりスケール11の相対的な回転角度位置をその分解能に応じた回転角度間隔毎に検出する。そして、位置算出器62によって、前記検出センサ13により検出された相対的な回転角度位置を基に、所定の回転原点からのスケール11の回転角度位置を算出し、算出した回転角度位置をデータ入出力部63に送信する。
【0076】
一方、前記マスターエンコーダ70は、主軸32及びスケール11と共にスケール21が回転すると、検出センサ23によりスケール21の相対的な回転角度位置をその分解能に応じた回転角度間隔毎に検出する。そして、位置算出器24によって、前記検出センサ23により検出された相対的な回転角度位置を基に、所定の回転原点からのスケール21の回転角度位置を算出し、算出した回転角度位置をデータ出力部72に送信する。
【0077】
そして、前記データ入出力部63とデータ出力部72とは、スケール11及び21が前記回転原点にある時点を基準としたクロック信号を用いて、予め定めた時間間隔で同期して、位置算出器62によって算出された回転角度位置と、位置算出器24によって算出された回転角度位置をそれぞれ前記校正値生成装置80の校正値生成部81に送信する処理を行う。
【0078】
校正値生成装置80の校正値生成部81では、同期して入力される、即ち、リアルタイムに入力される校正エンコーダ60からの回転角度位置と、マスターエンコーダ70からの回転角度位置との差分値を算出し、得られた差分値の正負を反転させて、位置算出器62によって算出される回転角度位置に対応した校正値を生成するとともに、当該回転角度位置と校正値とを相互に関連付けて校正値記憶部82に格納する処理を行う。そして、校正値記憶部82に格納されたデータはデータ出力部83から外部に出力される。
【0079】
斯くして、この校正値生成システム50によっても、校正エンコーダ60の位置算出器62により算出される回転角度位置と、マスターエンコーダ70の位置算出器24により算出される回転角度位置とをリアルタイムに比較することによって校正値を生成するようにしているので、当該回転角度位置の正確な校正値を算出することができ、上述した校正値生成システム1と同様の効果が奏される。
【0080】
また、上例では、主軸32を一方向に回転させて前記校正値を生成するようにしたが、主軸32を正逆に回転させて、正逆両回転における校正値を生成し、主軸32の回転方向に応じた校正値を用いて、位置算出器14,62によって算出される回転角度位置を校正するようにしても良い。
【0081】
また、上例では、校正エンコーダ10,60にそれぞれデータ校正部15及び校正値記憶部16を設けて、位置算出器14,62によって算出される回転角度位置を校正するようにしたが、これに限られるものではなく、データ校正部15及び校正値記憶部16を外部に設けて、校正エンコーダ10,60から出力される回転角度位置データを、データ校正部15及び校正値記憶部16が設けられる外部装置(例えば、数値制御装置)によって校正するようにしても良い。
【0082】
また、本発明を適用可能な前記校正対象エンコーダ及びマスターエンコーダには、光学式及び磁気式などの各種検出形式のものが含まれ、また、リニアエンコーダやロータリエンコーダなど検出用途に応じた各種構造のものが含まれ、更に、スケールと検出センサ及び位置算出器とが分離されたセパレートタイプのものや、スケールと検出センサ及び位置算出器とが予め組み付けられたユニットタイプのものが含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1 校正値生成システム
10 校正エンコーダ
11 スケール
12 検出ヘッド
13 検出センサ
14 位置算出器
15 データ校正部
16 校正値記憶部
17 データ入出力部
20 マスターエンコーダ
21 スケール
22 検出ヘッド
23 検出センサ
24 位置算出器
25 校正値生成部
26 校正値記憶部
27 データ出力部
50 校正値生成システム
60 校正エンコーダ
61 検出ヘッド
62 位置算出器
63 データ入出力部
70 マスターエンコーダ
71 検出ヘッド
72 データ出力部
80 校正値生成装置
81 校正値生成部
82 校正値記憶部
83 データ出力部