(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043328
(43)【公開日】2022-03-15
(54)【発明の名称】アシルプロリンを含むベシクルを有する組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/14 20060101AFI20220308BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20220308BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220308BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220308BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220308BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220308BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220308BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220308BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220308BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20220308BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220308BHJP
【FI】
A61K8/14
A61K8/49
A61K9/127
A61Q19/00
A61Q17/04
A61K47/12
A61K47/28
A61K47/22
A61P17/00
A61Q7/00
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002523
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2017110148の分割
【原出願日】2017-06-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】原矢 奈々
(57)【要約】
【課題】有効成分などの封入物を漏出させず、ベシクル構造を保持させながら、有効成分の皮膚浸透性を向上させ、かつベシクルへの防腐剤の取り込みが抑制され、使用感に優れたベシクル組成物を提供する。
【解決手段】(A)特定のアシルプロリン又はその塩、及び(B)
(B)両親媒性物質
を含む構成膜を有するベシクルを含有するベシクル組成物。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I):
【化1】
(式中、R
1-CO-で表されるアシル基は、炭素原子数4~18の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基を示す)で表されるアシルプロリン又はその塩、及び
(B)両親媒性物質
を含む構成膜を有するベシクルを含有するベシクル組成物。
【請求項2】
R1-CO-で表されるアシル基が、炭素原子数6~14の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(B)が炭素数8以上24以下の疎水鎖を有する両親媒性分子である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(B)が炭素数8以上24以下の疎水鎖を2本有する両親媒性分子である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記構成膜が、さらに(C)ベシクル形成助剤を含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
(C)が、ステロール類及びそれらの脂肪酸エステル又はアルキルエーテル、ならびに飽和及び不飽和の直鎖及び分岐の長鎖脂肪酸からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
さらに(D)有効成分を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
(D)が、美白剤、抗酸化剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、収斂剤、清涼剤、皮脂抑制剤、角質剥離剤、抗老化剤、育毛剤、血流促進剤、細胞賦活剤、スリミング剤、抗アレルギー剤、活性酸素消去剤及び植物由来成分からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
(B)1重量部に対して、(A)を0.01~30重量部を含有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
さらに(E)防腐剤を含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
有効成分の皮膚浸透を促進するための、請求項7~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料。
【請求項13】
(A)一般式(I):
【化2】
(式中、R
1-CO-で表されるアシル基は、炭素原子数4~18の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基を示す)で表されるアシルプロリン又はその塩、及び(B)両親媒性物質を含む構成膜を有するベシクルに有効成分を含有するベシクル組成物を皮膚に適用する工程を含む、有効成分の皮膚浸透を促進する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアシルプロリン及び両親媒性物質を含む構成膜を有するベシクルを含有するベシクル組成物及び該組成物を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に対して親和性の低い有効成分は、皮膚浸透性が乏しく、その効果を得るためには、皮膚への浸透を促進する方法を用いなければならない。両親媒性分子が集合し形成する閉鎖型小胞構造を有するベシクルは、内部に水相を有し、上記の有効成分などを内包して皮膚浸透性を改善することが報告されている。(例えば、特許文献1、2、非特許文献1)。ベシクルを用いた皮膚への浸透促進技術には高い浸透量や皮膚貯留性(皮膚濃度)などが求められるが、ベシクル組成や内包物によっては効果が不十分であることも多く、またベシクル成分によっては浸透が抑制されることも報告されている。有効成分の浸透を促進させるために、ベシクルへ添加剤を利用することも検討されているが、添加剤によってはベシクル構造を壊す可能性があり、特に界面活性剤では吸脱着による膜の破壊が見られ、封入した薬剤がベシクル外へ漏出するなど安定性に大きく影響を与えることが知られている(非特許文献2)。さらに添加剤により化粧料に重要である使用感が損なわれることも多かった。
【0003】
また一般的に親油性物質をベシクル製剤と一緒に利用する場合、膜に分配されやすい(取り込まれやすい)ことが知られている。化粧料組成物には、上記の様な肌に効能効果を与える有効成分の他に、製剤の腐敗を防ぐ目的で防腐剤が必須であるが、防腐剤として代表的なパラベンやフェノキシエタノールなどはベシクルに分配されやすい。そのため、ベシクル製剤では、水層中の防腐剤濃度が低下する傾向があり(非特許文献3)、防腐効果が十分に得られないことがあった。一方、防腐剤の中には、皮膚刺激を起こすものや、安息香酸、サリチル酸等のように低いpHや低温などにおいて析出するために製剤の安定性が低いものがあるため、配合量を増やすには課題が多い。加えて近年の安全性志向の高まりにより、防腐剤のイメージが低下し、市場では従来使用されてきた各種防腐剤は消費者から敬遠される存在となっている。また上述のような防腐剤の増量やベシクルへの分配(取り込み)による浸透性に対する懸念もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2014/069631
【特許文献2】特表2007-522205号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】日本化粧品技術者会誌 Vol. 48 (2014) No. 2, p. 104-108
【非特許文献2】Biochimicaet Biophysica Acta 1241 (1995) 269-292
【非特許文献3】Chem Pharm Bull Vol.34 No.8 Page.3415-3422 (1986.08)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、有効成分などの封入物を漏出させず、ベシクル構造を保持させながら、有効成分の皮膚浸透性を向上させ、かつベシクルへの防腐剤の取り込みが抑制され、使用感に優れたベシクル組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の鎖長のアシルプロリンまたはその塩と両親媒性物質を膜成分として含むベシクルとすることにより、有効成分などの封入物を漏出させず、ベシクル構造を保持させながら、有効成分の皮膚浸透性を向上させ、かつベシクルへの防腐剤の取り込みを抑えることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1](A)一般式(I):
【0009】
【0010】
(式中、R1-CO-で表されるアシル基は、炭素原子数4~18の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基を示す)で表されるアシルプロリン又はその塩、及び
(B)両親媒性物質
を含む構成膜を有するベシクルを含有するベシクル組成物。
[2]R1-CO-で表されるアシル基が、炭素原子数6~14の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基である、[1]に記載の組成物。
[3](B)が炭素数8以上24以下の疎水鎖を有する両親媒性分子である、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4](B)が炭素数8以上24以下の疎水鎖を2本有する両親媒性分子である、[3]に記載の組成物。
[5]前記構成膜が、さらに(C)ベシクル形成助剤を含有する、[1]~[4]のいずれか1項に記載の組成物。
[6](C)が、ステロール類及びそれらの脂肪酸エステル又はアルキルエーテル、ならびに飽和及び不飽和の直鎖及び分岐の長鎖脂肪酸からなる群から選択される少なくとも一種である、[5]に記載の組成物。
[7]さらに(D)有効成分を含有する、[1]~[6]のいずれか1項に記載の組成物。
[8](D)が、美白剤、抗酸化剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、抗炎症剤、収斂剤、清涼剤、皮脂抑制剤、角質剥離剤、抗老化剤、育毛剤、血流促進剤、細胞賦活剤、スリミング剤、抗アレルギー剤、活性酸素消去剤及び植物由来成分からなる群から選ばれる少なくとも一種である、[7]に記載の組成物。
[9](B)1重量部に対して、(A)を0.01~30重量部を含有する、[1]~[8]のいずれか1項に記載の組成物。
[10]さらに(E)防腐剤を含有する、[1]~[9]のいずれか1項に記載の組成物。
[11]有効成分の皮膚浸透を促進するための、[7]~[10]のいずれか1項に記載の組成物。
[12][1]~[11]のいずれか1項に記載の組成物を含む化粧料。
[13](A)上記一般式(I)で表されるアシルプロリン又はその塩、及び(B)両親媒性物質を含む構成膜を有するベシクルに有効成分を含有するベシクル組成物を皮膚に適用する工程を含む、有効成分の皮膚浸透を促進する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベシクル内の有効成分などの封入物を漏出することがないので所望の量の有効成分を配合したベシクル組成物を提供することができる。
本発明によれば、有効成分の高い皮膚浸透作用を有する、使用感に優れたベシクル組成物を提供することができる。
本発明によれば、防腐剤量を最小限に抑えたベシクル組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例2の透過型電子顕微鏡像を示す。
【
図2】
図2は、比較例1の透過型電子顕微鏡像を示す。
【
図3】
図3は、マルチラメラベシクル構造の偏光顕微鏡写真を示す(実施例6)。
【
図4】
図4は、実施例5の透過型電子顕微鏡像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、(A)下記一般式(I)で表されるアシルプロリン又はその塩及び(B)両親媒性物質を含む構成膜を有するベシクルを含有するベシクル組成物(本発明の組成物と略することもある)に関する。
【0014】
本発明において「ベシクル」とは、(A)及び(B)を含む脂質二分子膜から成る小胞体を意味し、該小胞体は水性コアを有する。
【0015】
[成分(A)]
本発明における成分(A)は、一般式(I)で表されるアシルプロリン及び/又はその塩である。
【0016】
【0017】
(式中、R1-CO-で表されるアシル基は、炭素原子数4~18の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基を示す)
【0018】
一般式(I)中の
【0019】
【0020】
は、本明細書において、R1-CO-とも表される。
R1-CO-で表されるアシル基は、炭素原子数4~18の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基、すなわち当該脂肪酸のアシル残基であり、当該脂肪酸の炭素原子数は、好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは10以上である。また当該脂肪酸の炭素原子数は、好ましくは18以下であり、より好ましくは1
4以下であり、特に好ましくは11以下である。
【0021】
R1-CO-で表されるアシル基の例としては、ブタノイル基、イソブタノイル基、sec-ブタノイル基、tert-ブタノイル基、ペンタノイル基、sec-ペンタノイル基、tert-ペンタノイル基、イソペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、2-エチルヘキサノイル基、tert-オクタノイル基、ノナノイル基、イソノナノイル基、デカノイル基、イソデカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ウンデシレノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基及びオレオイル基が挙げられる。
【0022】
R1-CO-で表される長鎖アシル基は、単一組成の酸より誘導されるアシル基のほか、ヤシ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、パーム油脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸あるいは合成により得られる脂肪酸(分岐脂肪酸を含む)より誘導されるアシル基であってもよい。これらのうち1種類を使用しても良いし、上記群から選ばれる2種以上を混合して使用しても構わない。
【0023】
R1-CO-で表されるアシル基は、炭素原子数6~18の脂肪酸より誘導されるアシル基であることが好ましく、炭素原子数8~14の脂肪酸より誘導されるアシル基であることがより好ましく、炭素原子数10~11の脂肪酸より誘導されるアシル基であることがさらに好ましく、デカノイル基が最も好ましい。これらの脂肪酸は、飽和又は不飽和であってよく、すなわちR1-CO-で表されるアシル基は、飽和脂肪酸より誘導されるアシル基及び不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基のいずれであってもよいが、保存安定性の観点から、飽和脂肪酸より誘導されるアシル基が好ましい。
【0024】
一般式(I)で表されるアシルプロリンの塩としては、薬理学的に許容し得る塩等が挙げられ、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;及び塩基性有機物塩等が挙げられる。これらのうち、溶解性の観点から、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が更に好ましい。
【0025】
さらに一般式(I)で表されるアシルプロリンは、水和物、非水和物、無溶媒和物及び溶媒和物のいずれであってもよい。
【0026】
成分(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を組み合わせて容易に製造することができる。具体的には、プロリンに、酸クロライドと水酸化ナトリウム等の塩基を同時滴下することによるショッテン・バウマン法により製造することができる。成分(A)の製造に用いられるプロリンは、L-体、D-体及びそれらの混合物のいずれでもよいが、好ましくはL-体である。
【0027】
本発明の組成物は、成分(A)としては、一般式(I)で表されるアシルプロリン及びその塩から選ばれる少なくとも1種を含有すればよいが、2種以上を含有してもよい。
【0028】
本発明の組成物における成分(A)の含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常0.03重量%以上であり、使用感や有効成分の浸透性向上、防腐剤のベシクルへの取り込みを抑える観点から、好ましくは0.05重量%以上であり、より好ましくは0.07重量%以上であり、さらに好ましくは0.1重量%以上である。
また当該含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常4重量%以下であり、特異な匂いの発生や、肌への作用がより温和であり、有効成分などの封入物の漏出を抑える観点から、好ましくは2重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下であり、特に好ましくは0.7重量%以下である。
【0029】
[成分(B)]
本発明における成分(B)は、両親媒性物質であり、ベシクルの構成膜、すなわち脂質二分子膜の構造成分である。
両親媒性物質は、ベシクルを形成しうる両親媒性物質であれば特に制限はないが、炭素数が、8以上24以下の疎水鎖を有する両親媒性物質が好ましく、14以上22以下の疎水鎖を有する両親媒性物質がより好ましく、14以上18以下の疎水鎖を有する両親媒性物質が特に好ましい。
なかでも前記疎水鎖を2本有する二疎水鎖両親媒性分子がさらに好ましい。2本の疎水鎖の炭素数は同じでも異なっていてもよい。
具体的な成分(B)としては、リン脂質、セラミド類、糖脂肪酸エステル、アシルアミノ酸金属塩、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、アルキルポリグリセリンエーテルやアルキルグルコシド類、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジェミニ型界面活性剤、バイオサーファクタント等が挙げられる。
【0030】
リン脂質としては、卵黄リン脂質、大豆リン脂質、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。具体的には、ホスファチジルコリン(例えばジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン等)、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルエタノールアミン(例えばジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン等)、ホスファチジルセリン(例えばジパルミトイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリンナトリウム等)、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)等が挙げられる。
【0031】
セラミド類としては、天然セラミド、合成セラミド及びプソイドセラミド(合成擬似セラミド)等が挙げられる。具体的にはN-アシルスフィンゴシン、N-ヒドロキシアシルフィトスフィンゴシン、N-アシルフィトスフィンゴシンやタイプ1~7のセラミド等が挙げられる。なかでも、N-ステアロイルスフィンゴシン(セラミド2)、セラミドNP(セラミド3)、セラミドAP(セラミド6)、セラミドEOP(セラミド1)、セラミドNGが好ましい。
【0032】
糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、トレハロース脂肪酸エステル等が挙げられ、C12~C22の炭素鎖をもつショ糖脂肪酸エステルが好ましく、具体的にはショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖モノイソステアリン酸エステル、ショ糖ジイソステアリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖ジオレイン酸エステル等が挙げられる。
【0033】
アシルアミノ酸金属塩としては、炭素原子数8~22の飽和又は不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基を有し、アミノ酸がグルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、スレオニン、メチルアラニン、サルコシン、リジン、アルギニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、フェニルアラニン等であり、好ましくはグルタミン酸、リジン、サルコシン、プロリン、ヒドロキシプロリンである、ナトリウム塩、カリウム塩などの金属塩のアシルアミノ酸金属塩が挙げられる(本発明における成分(A)を除く)。具体的にはN-ラウロイル-Lグルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-Lグルタミン酸ナトリウム、
N-ステアロイルメチルタウリンナトリウム、オレオイルグルタミン酸ナトリウム、ジオ
レオイルグルタミン酸リシンナトリウム、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ビス(Nε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミドジナトリウム、ビス(Nε-オク
タノイル-L-リジン)セバコイルアミドジナトリウム、ジパルミトイルヒドロキシプロリン等が挙げられる。
【0034】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体としては、エチレンオキシド(EO)の平均付加モル数(E)が10~30である誘導体が好ましく、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、リオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0035】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、モノオレイン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノヒドロキシステアリン酸グリセリル、モノリノール酸グリセリル等が挙げられる。
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノイソステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタオレイン酸エステル、デカグリセリンペンタステアリン酸エステル、デカグリセリンペンタイソステアリン酸エステル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、ジオレイン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
グリセリルエーテルとしては、バチルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル、ヘキサデシルグリセリルエーテル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンステアリルエールなどが挙げられる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタンステアレートなどが挙げられる。
バイオサーファクタントとしては、マンノシルマンニトールリピッド(MML)、マンノシルソルビトールリピッド(MSL)、MEL-A、MEL-B、MEL-CおよびME
L-Dなどのマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)などが挙げられる。
【0036】
両親媒性物質は1種又は2種以上用いることができる。
なかでも使用感、汎用性、ベシクル形成の観点から、リン脂質、セラミド類、アシルアミノ酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリルエーテルが好ましく、N-ステアロイルスフィンゴシン、セラミドNP、セラミドAP、ジラウロイルグルタミン酸リシンナトリウム、ビス(Nε-ラウロイル-L-リジン)セバコイルアミドジナトリウム、ビス
(Nε-オクタノイル-L-リジン)セバコイルアミドジナトリウム、ジパルミトイルヒドロキシプロリン、モノオレイン酸グリセリル、バチルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテルがより好ましい。
【0037】
本発明の組成物における成分(B)の含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常0.01重量%以上であり、使用感、安定性の観点から、好ましくは0.02重量%以上であり、より好ましくは0.04重量%以上である。また当該含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常30重量%以下であり、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0038】
本発明の組成物においては、成分(B)が1重量部に対して、成分(A)は、通常0.01~30重量部であり、0.05~20重量部が好ましく、0.1~18重量部がより好ましく、0.5~15重量部が特に好ましい。
【0039】
また効率的な浸透効果発揮の観点から、成分(A)及び(B)の総重量は、組成物の総重量に対して、通常0.02重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。また、上限は肌への親和性や処方への影響の観点から、通常15重量%以下であり、10重量%以下が好ましく、8重量%以下が更に好ましく、5重量%以下が特に好ましい。
【0040】
本発明の組成物には、ベシクル構造を形成するのを助け、得られるベシクル構造の安定性を良好にする観点から成分(C)ベシクル形成助剤を添加してもよい。
【0041】
[成分(C)]
ベシクル形成助剤とは、ベシクルの形成や経時安定性をより良好にするための成分であり、ステロール類及びそれらの脂肪酸エステル又はアルキルエーテル、ならびに飽和および不飽和の直鎖および分岐の長鎖脂肪酸、アルギニンなどの一部のアミノ酸が挙げられる。
ステロール類としては、コレステロール、スチグマステロール、ラノステロール、エルゴステロール、フィトステロール(β-シトステロール、カンペステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール等)、ジヒドロコレステロール、コレステロール硫酸エステル及びその塩、コレステロールリン酸エステル及びその塩等が挙げられる。
【0042】
ステロール類の脂肪酸エステルとしては、オレイン酸コレステリル、イソステアリン酸コレステロールエステル、N-アシルアミノ酸ステロールエステル(例えば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)またはN-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2-オクチルドデシル/イソステアリル)、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル)、マカデミアンナッツ油脂肪酸コレステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等が挙げられる。
ステロール類の脂肪酸エステル及びステロール類のアルキルエーテル中のアルキル基は、ベシクル形成を助けるために炭素数10~26のものが好ましく、特に炭素数12~22の直鎖又は分岐鎖のものがより好ましく、炭素数14~22の直鎖又は分岐鎖のものが特に好ましい。
飽和および不飽和の直鎖および分岐の長鎖脂肪酸としては、炭素数10~26のものが好ましく、特に炭素数12~22の直鎖又は分岐鎖のものが好ましい。具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などが挙げられる。
これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
なかでも使用感、汎用性、安定性の観点から、コレステロール、フィトステロール、コレステロール硫酸エステル及びその塩、イソステアリン酸コレステロールエステル、N-アシルアミノ酸ステロールエステル、炭素数12~22の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸が好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、コレステロール、コレステロール硫酸エステル、イソステアリン酸コレステロールエステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2-オクチルドデシル)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/2-オクチルドデシル)またはN-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/2-オクチルドデシル/イソステアリル)、N-ミリストイル-N-メチル-β-アラニンフィトステリル)がより好ましい。
【0044】
本発明の組成物における成分(C)の含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常0
.001重量%以上であり、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.04重量%以上であり、特に好ましくは0.1重量%以上である。また当該含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常30重量%以下であり、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは4重量%以下である。
【0045】
本発明の組成物においては、成分(B)が1重量部に対して、成分(C)は、通常0.01~20重量部であり、0.05~18重量部が好ましく0.07~14重量部がより好ましく0.1~14重量部が特に好ましい。
【0046】
また使用感、安定性の観点から、成分(A)~(C)の総重量は、組成物の総重量に対して、通常0.05重量%以上、好ましくは0.08重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは0.2重量%以上である。また、上限は肌への親和性や処方への影響の観点から、通常30重量%以下であり、15重量%以下が好ましく、10重量%以下が更に好ましく、5重量%以下が特に好ましい。
【0047】
本発明の組成物は、さらに(D)有効成分(生理活性物質)を含有してもよい。
【0048】
[成分(D)]
本明細書における「有効成分」は、従来のリポソームやマルチラメラベシクルに適用できる有効成分であれば限定されない。
有効成分は、水溶性、油溶性、両親媒性の物質のいずれでも良いが、効率的に浸透を促進できる点で、水溶性または両親媒性の物質が好ましく、水溶性の有効成分がより好ましい。
【0049】
本発明において「水溶性」の有効成分とは、オクタノール/水分配係数(LogP)が低い有効成分を意味し、効率的に浸透を促進できる点で、オクタノール/水分配係数(LogP)は3以下の有効成分が好ましく、1以下がより好ましく、0以下が特に好ましい。
オクタノール/水分配係数(LogP)は、1-オクタノール(octanol)と水(water)の2つの溶媒相中に化学物質を加えて平衡状態となった時の、その2相における化学物質の濃度比である。オクタノール/水分配係数(LogP)は低値であるほど水に分配されやすいことを示す。
1-オクタノールと水との分配係数の測定方法については、原則としてOECD Test Guideline(OECD理事会決定「C(81)30最終別添1」)107又は日本工業規格Z7260-107(2000)「分配係数(1-オクタノール/水)の測定-フラスコ振とう法」にしたがって測定する。
【0050】
有効成分としては、美白剤、抗酸化剤、抗菌剤、抗炎症剤、収斂剤、清涼剤、温感剤、皮脂抑制剤、角質剥離剤、抗老化剤、育毛剤、血流促進剤、細胞賦活剤、スリミング剤、抗アレルギー剤及び植物由来成分からなる群より選択される少なくとも一つの作用を有するものが挙げられる。
本発明の組成物は、上記の成分(D)を1種単独で含有してよく、又は2種以上含有してよい。
【0051】
美白剤としては、アルブチン、コウジ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(例えばテトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、アスコルビン酸ホスフェート、アスコルビルエチル、リン酸アスコルビルマグネシウム、リン酸アスコルビル酸3Na、テトライソパルミチン酸アスコビル(VC-IP)、L-アスコルビン酸2-グルコシド等)、トラネキサム酸、ヒノキチール、N-アセチル-2-メチルチアゾリン-2,4-ジカルボン酸-2-エチルエステル(以下、アセチルエチルカルボキシルメチルチアゾリジンカル
ボン酸)、ノナペプチド-1、ヘキサペプチド-2、ウンデシレノイルフェニルアラニン、プラセンタなどが挙げられる。
抗酸化剤としては、アセチルトリペプチド-1、プロリンアミドエチルイミダゾール、ビタミンE、酢酸トコフェロールなどのビタミンE誘導体、レチノール、パルミチン酸レチノールなどのレチノール誘導体、γ-オリザノールなどが挙げられる。
抗菌剤としては、オウバク抽出液、ビス(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、レゾルシン、アズレン、サリチル酸、ジンクピリチオンなどが挙げられる。
抗炎症剤としては、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、アラントイン、アズレン、グアイアズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾン、クラリノン、グラブリジン、ヒノキチオール、アセチルヘキサペプチド-1、グルタミルアミドエチルイミダゾール、グルタミルアミドエチルインドール、ジペプチド-2、パルミトイルトリペプチド-8などが挙げられる。
収斂剤としては、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、PCA亜鉛、塩化亜鉛などの亜鉛化合物、アラントインヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛及びタンニン酸、グリシルグリシンなどが挙げられる。
清涼剤としては、メントール、カンフルなどが挙げられる。
皮脂抑制剤としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、ビタミンB6などが挙げられる。
角質剥離剤としては、イオウ、サリチル酸、レゾルシン、硫化セレンなどが挙げられる。
抗老化剤としては、抗炎症剤と抗酸化剤が用いられることがあるが、他には、抗老化効果を示すアミノ酸(エクトイン)やペプチド類(例えば(アルギニン/リシン)ポリペプチド、アセチルグルタミルへプタペプチド-1、アセチルシトルルアミドアルギニン、アセチルジペプチド-1 セチル、アセチルデカペプチド-3、アセチルテトラペプチド-2、アセチルテトラペプチド-5、アセチルテトラペプチド-9、アセチルテトラペプチド-11、アセチルペンタペプチド-1、エルゴチオネイン、オクタペプチド-2、オリゴペプチド-20、オリゴペプチド-24、オリゴペプチド-6、カプロイルテトラペプチド-3、カルノシン、グリシルチロシン、酢酸ヘキサノイルジペプチド-3 ノルロイシン、テトラペプチド-1、テトラペプチド-5、トリフルオロアセチルトリペプチド-2、トリペプチド-1、トリペプチド-1銅、トリペプチド-3、トリペプチド-10 シトルリン、ビオチノイルトリペプチド-1、ヒトオリゴペプチド―1、ヒトオリゴペプチド―2、ヒトオリゴペプチド―3、ヒトオリゴペプチド―4、ヒトオリゴペプチド―13、ヒドロキシプロリン、ヘキサペプチド-3、ヘキサペプチド-9、ヘキサペプチド-10、ヘキサペプチド-11、アセチルヘキサペプチド-8、ジ酢酸ジペプチドアミノブチルベンジルアミド、ジペプチド-4、デカルボキシカルノシンHCl、ペンタペプチド-3、ジペプチド-9(グルタミルリジン)等)、ビタミン、ルチン等のフラボノイド、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールなどのレチノール誘導体、α-ヒドロキシ酸などが挙げられる。
育毛剤としては、パントテニルエチルエーテル、ビオチノイルトリペプチド-1、ミノ
キシジルなどが挙げられる。
血流促進剤としてはセンブリエキス、セファランチン、ビタミンE及びその誘導体、ガンマ-オリザノール、トウガラシチンキ、ショオウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルエステル、l-メントール、メントール誘導体、dl-カンフル、ノニル酸ワニリルアミド、カプサイシン、バニリルブチルエーテル、アルニカエキス、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム、セイヨウトチノミエキスなどが挙げられる。
細胞賦活剤としては、アルギニン、アセチルシトルルアミドアルギニン、ジペプチド-9(グルタミルリジン)などが挙げられる。
スリミング剤としては、デカペプチド-2、アルギン酸シロキサントリオール、カフェイン、カルニチン、パルミチン酸ヒドロキシクエン酸、パルミチン酸カルニチン、カカオエキス、ツボクサ葉エキス(アシアチコシド、アシアチン酸、マデカシン酸)、ウンカリ
アトメントサエキス、クリサンテルムインジクムエキス、ツノゲシ葉エキス、ユーグレナエキス、ミシマサイコ根エキス、デレセリアサングイネアエキス、ダルスエキス、加水分解紅藻エキス、アルゲエキス、エチルアルギノエートアセタミドメチオンアミドHCl、クリスマムマリチマムエキス、ピログルタミルアミドエチルインドール、スファセラリアスコパリアエキス、パパイア果実エキス、サンショウモドキ種子エキス、ラミナリアディギタータエキス、フィラカンタフィブロサエキスなどが挙げられる。
抗アレルギー剤としては、シクロヘプタジンハイドロクロライド、クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェンなどが挙げられる。
【0052】
また、上記の有効成分は2以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において有効成分としては、アルギニンやヒドロキシプロリン、エクトイン、ペプチドなどのアミノ酸及びその誘導体(但し、前記成分(A)及び(B)を除く)、ナイアシンアミドやパンテノール等のビタミン及びその誘導体、イノシトール、コリン、αリポ酸、ユビキノン、パンガミン酸、カルニチン等のビタミン様物質、糖セラミド等の水溶性スフィンゴ脂質などのスフィンゴ脂質、アルブチンなどのヒドロキノン配糖体及びそのエステル類が挙げられ、アルブチン、パントテニルエチルエーテル、アルギニン、リシン、ヒスチジン、プロリン、ヒドロキシプロリン、エクトイン、グリシルグリシン、グルタミルリジン、アラニルグルタミン、グリシルチロシン、バリルトリプトファン、ピリドキシルセリン、イノシトール、カルノシン、ナイアシンアミドが好ましく、アルブチン、パントテニルエチルエーテル、アルギニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、グルタミルリジン、ナイアシンアミドがより好ましい。
【0053】
本発明の組成物における成分(D)の含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常0.001重量%以上であり、有効成分の有する作用の観点から、好ましくは0.01重量%以上であり、より好ましくは0.05重量%以上である。また当該含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常10重量%以下であり、安定性の観点から、好ましくは7重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、特に好ましくは4重量%以下である。
本明細書において「成分(D)の含有量」とは、本発明の組成物に含有される成分(D)が1種のみである場合は、その1種の成分(D)の含有量を意味し、本発明の組成物に含有される成分(D)が2種以上である場合は、含有される全ての成分(D)の総含有量を意味する。
【0054】
成分(D)は、天然に存在する動植物等から抽出し精製したもの、或いは、化学合成法、発酵法、酵素法又は遺伝子組換え法によって得られるもののいずれを使用してもよい。また市販品を用いてもよい。
【0055】
本発明の組成物における成分(A)及び(B)の含有量と成分(D)の含有量との重量比(A+B:D)は、成分(D)の種類によって適宜変更しうるが、安定性及び本発明の効果が効率的に発揮される点から、好ましくは0.01~500:1であり、より好ましくは0.01~200:1であり、さらに好ましくは0.05~100:1であり、特に好ましくは0.1~80:1である。
【0056】
本発明の組成物における成分(A)~(C)の含有量と成分(D)の含有量との重量比(A+B+C:D)は、成分(D)の種類によって適宜変更しうるが、安定性及び本発明の効果が効率的に発揮される点から、好ましくは0.01~800:1であり、より好ましくは0.01~500:1であり、さらに好ましくは0.05~200:1であり、特に好ましくは0.1~150:1である。
【0057】
本発明の組成物は、必要に応じて(E)防腐剤を含有してもよい。
【0058】
[成分(E)]
本発明の組成物には、防腐剤としては、パラベン類、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、フェネチルアルコールなどの芳香族アルコール類、安息香酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩等の有機酸類等が挙げられる。本発明の効果がより発揮される点で、オクタノール/水分配係数(LogP)が、1以上のものが好ましい。
1-オクタノールと水との分配係数は、原則としてOECD Test Guideline(OECD理事会決定「C(81)30最終別添1」)107又は日本工業規格Z7260-107(2000)「分配係数(1-オクタノール/水)の測定-フラスコ振とう法」にしたがって測定された実測値であるが、In-Silicoにより算出される予測値であってもよい。各個別の分配係数は、例えば、米国環境庁のホームページ(URL; https://www.epa.gov/)から、その実測値及び/又は予測値を検索できる。
オクタノール/水分配係数(LogP)が1以上の防腐剤としては、メチルパラベン(LogP=1.96)、ブチルパラベン(LogP=3.57)、フェノキシエタノール(LogP=1.16)、ベンジルアルコール(LogP=1.10)、安息香酸(LogP=1.87)、ソルビン酸(LogP=1.33)、サリチル酸(LogP=2.26)、アニス酸(LogP=1.96)、オクタノヒドロキサム酸(LogP予測値=1.66)などが挙げられる。なかでもメチルパラベン、安息香酸、フェノキシエタノールが好ましい。
【0059】
本発明の組成物における成分(E)の含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常0.001重量%以上であり、組成物の防腐の観点から、好ましくは0.01重量%以上で
ある。また当該含有量は、本発明の組成物全量に対して、通常2重量%以下であり、好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下である。
【0060】
また、本発明の組成物は、上記成分(A)~(E)以外に分散溶剤を含有してもよい。
本発明における分散溶媒は、食品や化粧料などに使用できるものであれば特に限定されない。例えば、精製水、滅菌水、水道水、硬水、軟水、天然水、海水、海洋深層水、電解アルカリイオン水、電解酸性イオン水、イオン水、クラスター水などの水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの水溶性溶媒が挙げられる。なかでも、水、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールなどが好ましい。これらの中から1種又は2種以上を使用してもよい。
【0061】
本発明の組成物における水の含有量は、成分(A)~(D)の含有量により適宜決められるが、本発明の組成物全量に対して、通常8~99.6重量%であり、20~99.6重量%が好ましく、35~80重量%がより好ましい。
【0062】
本発明の組成物における水以外の水溶性溶媒の含有量は、成分(A)~(D)の含有量により適宜決められるが、本発明の組成物全量に対して、通常0.1~40重量%であり、0.1~30重量%が好ましく、0.5~25重量%がより好ましい。
【0063】
本発明の組成物のpH(25℃)は、通常pH3.5以上pH9以下であり、刺激感及び成分(A)の組成物中における安定性の観点から、好ましくはpH4.0~8.5、よ
り好ましくはpH4.0~7.5、特に好ましくはpH4.5~6.5である。
【0064】
本発明においてベシクルの平均粒子径としては、通常25~5000μmであり、50~3000μmが好ましく、80~2500μmがより好ましい。
平均粒子径は慣用の方法で、レーザー回折法、動的光散乱(DLS)法、電子顕微鏡を用いた画像イメージング法により、粒度分布を計測することにより行うことができる。
【0065】
ベシクルの構造は、ユニ・ラメラ・ベシクル(ULV)又は二重層膜が積み重なったマルチ・ラメラ・ベシクル(MLV)が挙げられるが、MLVが好ましい。
【0066】
本発明の組成物の製造方法は、以下が挙げられるがこれに限定されない。
例えば、成分(B)と必要に応じ成分(C)や親油性の有効成分(D)などを加熱し完全に均一に溶解し混合した後に、予め混合しておいた溶媒(水やポリオールなど)や必要に応じ親水性の有効成分(D)を油溶性成分と同温まで加温し、油相へゆっくり滴下する。その後温度を保ちながら均一になるように撹拌した後に、ゆっくり攪拌を行ないながら系内温度を徐々に冷却し、次いで成分(A)や必要に応じ成分(E)を添加する。成分(A)の添加は、加温中でも冷却後でよい。撹拌装置としては、パドルミキサー、ホモディスパー、ホモジナイザーなどが挙げられる。
上述の方法で製造したマルチラメラベシクル製剤は、必要に応じてエクストルーダー、高圧乳化機、超音波等などにより、微小なベシクルを調製することができる。
その他の方法として、Tc温度(ゲル-液晶転移温度)以上で、ベシクルを構成する成分(B)や成分(C)を十分水に膨潤させた後、撹拌・混合する方法や、有機溶媒を用いて、成分(B)や成分(C)による薄膜を形成させた後、水などの溶媒(必要に応じ有効成分(D)含む)を添加して、超音波照射やエクストルーダーを用いることにより微小なベシクルを得る方法など、従来から汎用されている方法を用いて基本となるベシクルを得た後に、成分(A)を添加して膜に取り込ませることでベシクル組成物を得ることもできる。成分(A)は、膜形成前や後の、どちらに添加しても良いが、防腐剤の膜への取り込みを抑制し、有効成分の浸透性を高める点で膜形成後に添加する方法が好ましい。
【0067】
また、ベシクル形成の確認方法は、偏光顕微鏡を用いて直交ニコル下でのマルテーゼクロス像の有無の確認や、高輝度小角X線散乱装置SAXSを用いて小角X線散乱スペクトル測定によるピーク確認、透過電子顕微鏡(TEM)、凍結割断法、低温透過型電子顕微鏡(cryo-TEM)、動的光散乱(DLS)等によって行うことができる。
【0068】
本発明の組成物の形態は特に制限されないが、例えば、液状、乳化状、ペースト状、ゲル状、固体状、粉末状等が挙げられる。
【0069】
本発明の組成物は、化粧料又は医薬(医薬部外品を含む)に配合することができ、あるいは本発明の組成物は、それ自体を化粧料又は医薬(医薬部外品を含む)としてもよい。
【0070】
本発明の組成物を化粧料に配合する場合、又は本発明の組成物自体を化粧料とする場合、当該化粧料の例としては、基礎化粧品(例、化粧水、乳液、化粧下地、美容液、ナイトクリーム、パック、メイク落とし製品(クレンジングジェル等)、BBクリーム、CCクリーム、爪用クリーム等)、サンケア製品(例、サンスクリーン、日焼け肌用化粧水等)、ヘアトリートメント剤(例、ヘアトリートメント、アウトバストリートメント、毛髪用美容液、枝毛コート剤等)、ヘアスタイリング剤(例、ブラッシングローション、カーラーローション、ポマード、チック、セット用ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアリキッド、スタイリングフォーム、ヘアジェル、ウォーターグリース等)、髭剃り用製品(例、シェービングクリーム、アフターシェーブローション等)、メイクアップ化粧品(例、ファウンデーション(固形、クリーム状、液状等)、コンシーラー、口紅、リップグロス、アイシャドウ、アイライナー、チーク、マスカラ、ブロンザー等)、香水類、リップクリーム、制汗剤、口腔化粧品、歯磨き粉、浴用化粧品(例、入浴剤、バスソルト等)等が挙げられる。
【0071】
本発明の組成物を、化粧料に配合する場合、又は本発明の組成物自体を化粧料とする場合、当該化粧料には、通常化粧料に添加してもよい成分を本発明の効果を阻害しない範囲で配合してよい。当該成分の具体例としては、油剤、キレート剤、界面活性剤、粉体、糖
アルコール及びそのアルキレンオキシド付加物、低級アルコール、動植物抽出物、核酸、酵素、抗炎症剤、殺菌剤、等張化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、制汗剤、顔料、色素、酸化染料、有機及び無機粉体、pH調整剤、パール化剤、湿潤剤等が挙げられる。
【0072】
本発明の組成物を化粧料に添加する場合には、本発明の組成物の含有量は、化粧料組成物全量に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0073】
本発明における化粧料組成物のpH(25℃)は、通常pH3.5以上pH9以下であり、刺激感及び成分(A)の組成物中における安定性の観点から、好ましくはpH4.0
~8.5、より好ましくはpH4.0~7.5、特に好ましくはpH4.5~6.5である。
【0074】
本発明の組成物を、医薬(医薬部外品を含む)に配合する場合、又は本発明の組成物自体を医薬(医薬部外品を含む)とする場合、当該医薬の剤形としては、例えば、軟膏剤(水性軟膏剤、油脂性軟膏剤等)、クリーム剤、液剤、乳剤、ゲル剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤等の塗布剤;パップ剤、プラスター剤、テープ剤、パッチ剤等の貼付剤;エアゾール剤、スプレー剤等の噴霧剤;坐剤等が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物を、医薬(医薬部外品を含む)に配合する場合、又は本発明の組成物自体を医薬(医薬部外品を含む)とする場合、当該医薬には、薬理学的に許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、無痛化剤、抗酸化剤等を本発明の効果を阻害しない範囲で配合してよい。
【0076】
本発明の組成物は、好ましくは皮膚用であり、皮膚用化粧料又は皮膚用医薬(皮膚用医薬部外品を含む)に配合することが好ましく、あるいは本発明の組成物自体を皮膚用化粧料又は皮膚用医薬(皮膚用医薬部外品を含む)とすることが好ましい。ここで「皮膚」とは、体(例えば、顔、頭、首、胸、腹、腰、背中、尻、腕、脚、手等)の表皮だけでなく、粘膜も包含する概念である。
【0077】
本発明の組成物の適用対象としては、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ブタ、サル等)等が挙げられるが、これらに限定されるものでない。
【0078】
本発明の組成物の投与量及び対象への適用回数は、成分(D)の種類、組成物の形態、適用する対象等に応じて適宜調節し得る。
【0079】
本発明の組成物は、有効成分の皮膚浸透を促進するために使用される。各成分や含有量等は既述に準じる。
【0080】
また上記(A)上記一般式(I)で表されるアシルプロリン又はその塩、及び(B)両親媒性物質を含む構成膜を有するベシクルに有効成分を含有するベシクル組成物を皮膚に適用する工程を含む、有効成分の皮膚浸透を促進する方法も本発明に含まれる。皮膚に適用する工程は、組成物の剤形等によって異なるが、有効量の有効成分を対象の皮膚に塗布、貼付、噴霧する工程等が挙げられる。各成分や含有量等は既述に準じる。
【実施例0081】
以下に、合成例及び実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの合成例及び実施例により限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。また、本発明において使用する試薬や装置、材料は特に言及されない限
り、商業的に入手可能である。なお特に断りの無い限り、%は重量%を示す。
【0082】
<合成例1>デカノイルプロリンナトリウム塩の合成
プロリン(味の素社製)34.54gを100gの水に溶解後、デカノイルクロライド(東京化成社製)52.01gと25%水酸化ナトリウム水溶液をpH12に調整しながら加えた。75%硫酸を加えて中和し、水層を除去後、さらに水と酢酸エチルを加え、水相を除去した。酢酸エチルを減圧留去し、デカノイルプロリンを68.12g得た。得られたデカノイルプロリンを、適当な量の水と懸濁後、水酸化ナトリウムでpHを7まで中和することにより、デカノイルプロリンナトリウム塩を得た。
【0083】
<試験例1>
(ベシクル製剤1の調製)
ベシクル製剤1は、セラミドII0.4g、コレステロール0.25g、パルミチン酸0.25g、およびコレステロール硫酸0.1gを用いて薄膜を得、次いでPhosphate Buffered Saline(PBS)緩衝液(タカラバイオ社製)99.0gを、薄膜と混合し、ボルテックスミキサーにより剥離した後、超音波照射を行い、ベシクル製剤1を調製した。
【0084】
(実施例1~3及び比較例1~5の組成物の調製)
上記調製したベシクル製剤1を、ベシクル製剤1以外の表1に記載の成分を予め混合したものに添加し、各組成物を得た。表1に示される組成の単位は、重量%である。また、表中はその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示した。
【0085】
【0086】
(防腐剤のベシクルへの分配量の評価)
調製した組成物(実施例3、比較例2)に含まれる防腐剤濃度をHPLCで定量し、各組成物中の防腐剤濃度が同等であることを確認した。また、別途、組成物を超遠心分離機(日立工機社製Himac CS100GXII、ローター:S55A2アングルローター
)を用いてベシクルを分離し、上澄みと固形分(ベシクル)に含まれる防腐剤濃度をそれぞれHPLCで定量した。
成分(A)が含有されない比較例2のベシクル膜に分配された防腐剤量と比較し、実施例3の防腐剤のベシクル膜への分配量は19%減少しており、水相中の防腐剤濃度が増加
していることが確認された。よって、成分(A)により防腐剤のベシクル膜への分配が抑制されることが分かった。
なお、比較例3、4、5については、上記と同じ条件で超遠心分離したが、僅かにしか固形分量が分離されなかった。
【0087】
(ベシクルの確認試験-1)
実施例2及び比較例1を3週間保存した後に、凍結割断レプリカ法により試料を作製し、透過電子顕微鏡(JEM-1010)による形状観察を行ったところ、
図1(実施例2)、
図2(比較例1)のように、成分(A)添加後も同等のベシクル構造を確認した。
【0088】
<試験例2>
(カルセイン封入ベシクル製剤1の調製)
成分(A)や比較としての成分(A´)がベシクル膜へ与える影響を検討するため、ベシクル製剤1と同組成のベシクルに、蛍光物質であるカルセインを封入した製剤を用いて評価した。
すなわち、上記のベシクル膜と同様の組成(セラミドII0.4g、コレステロール0.25g、パルミチン酸0.25g、およびコレステリル硫酸0.1g)で調製した薄膜に75mMのカルセインを含むPBS緩衝液を加え、ボルテックスミキサーにより剥離した
後、超音波照射及び凍結融解を行い、最後にベシクルに内包されていないカルセインを超遠心分離機(日立工機社製Himac CS100GXII、ローター:S55A2アング
ルローター、15万×g)により除去し、カルセインを封入したベシクル製剤1を得た。
【0089】
(ベシクル膜への影響(封入物の漏出))
表1に記載のベシクル製剤1に代えて上記に記載のカルセイン封入ベシクル製剤1を用い、予め混合したカルセイン封入ベシクル製剤1以外のそれぞれの成分に添加後、60分経過後のカルセインの蛍光(F[sample])を蛍光分光光度計(ジャスコサポート FP-6500DS)を用いて測定した。但し、その際の比較例1の蛍光は、F[con
trol]とした。続いてそれぞれの組成物に1%のTriton-X100を混合した場合に漏出されたカルセインの蛍光を完全漏出量(F[triton])とした。また、得られた蛍光強度から各組成物におけるカルセインの漏出率を以下の式より算出した。
漏出率(%)=(F[sample]-F[control])/(F[triton]-F[control])×100
表1に示すように、成分(A)を含む組成物は比較成分(A´)を含む組成物に比べ、ベシクル封入物の漏出率が明らかに低く、ベシクル膜に与える影響が小さいことが確認された。
【0090】
<試験例3>
(アルブチン添加ベシクル製剤1の調製)
上記のベシクル膜と同様の組成(セラミドII0.4g、コレステロール0.25g、パルミチン酸0.25g、およびコレステロール硫酸0.1g)で調製した薄膜に、有効成分としてアルブチン(成分(D))を1.0g含有するPBS緩衝液を98.0g添加し、試験例1と同様の方法で、アルブチン添加ベシクル製剤1を調製した。このベシクル製剤に、更にPBS緩衝液及び成分(A)0.7gを加え、合計量を200gとして組成物を実施例4として調製した。
なお、比較のために、成分(A)を配合しない組成物(比較例8)や、成分(A)に含まれない鎖長であるアシルプロリン0.7gを、成分(A)に代えて配合した組成物(比較
例6)や、PEG-60水添ヒマシ油0.7gを配合した組成物(比較例7)も同様に調
製した。また、参考例1として成分(A)と成分(D)及びPBS緩衝液のみで構成される組成物(ベシクル膜未配合組成物)、および参考例2として成分(D)のみの組成物を調製し、それぞれ以下の皮膚透過性の評価に用いた。
【0091】
【0092】
(皮膚透過性の評価)
上記のように調製した組成物の有効成分(D)の皮膚透過性は、横型拡散セル(平均拡散面積:0.64cm2)及び皮膚モデルとしてStrat-Mメンブレン(25mm、メルク社製)を用いたin vitro透過試験により評価した。
具体的には、Strat-Mメンブレンを横型拡散セルに装着して固定した後に、ドナー側のセルに試料組成物を、レシーバー側のセルに水又はPBS緩衝液を加え、それぞれ37℃(±0.2℃)で撹拌し、経時でレシーバー側のセルから一定量サンプリングを行い、分析する検体を得た。得られた検体は、常法に従い液体クロマトグラフにより成分(D)について定量測定を行い、成分(D)の累積透過量(μg/cm2)を求めた。
【0093】
成分(A)を含有しない組成物(比較例8)と比較し、成分(A)を含有する組成物(実施例4)は、試験開始6時間後の成分(D)の累積透過量が、2.1倍向上し、成分(D)の浸透性が向上することが確認された。一方、成分(A)に含まれない鎖長であるアシルプロリンを用いた比較例6や、その他比較成分を配合した比較例7では、比較例8の透過量とほぼ差がないか、減少した。また、成分(A)を含みベシクル膜を含まない組成物(参考例1)では、成分(D)のみの組成物(参考例2)と比較し、成分(D)の透過量の増大は確認されなかった。これらより、成分(A)はベシクル製剤との組み合わせにより、成分(D)の浸透性を向上させることが確認された。
【0094】
<試験例4>
(ベシクル製剤2、実施例5及び比較例9の組成物の調製)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)0.5%、イソステアリン酸コレステロールエステル4.0%を80℃で溶解し、均一に混合し、次いで、予めアルギニン(Arg):パルミチン酸:ジパルミトイルヒドロキシプロリン:水=1:1:3:45の比率で混合した水溶液10%に、ジプロピレングリコール(DPG)10%、有効成分(D)としてパントテニルエチルエーテル1.0%を添加し、80℃へ加温後、油溶性成分へ滴下した。ホモディスパー(PRIMIX株式会社製)を使用して、80℃で5分間の撹拌終了後、撹拌を行ないながら、40℃前後まで冷却しこれをベシクル製剤2とした。ここに、成分(A)及び防腐剤を溶解させた水溶液を加え、均一に撹拌し組成物を調製した(実施例5)。また比較例9として、上記と同じ方法で成分(A)を含有しない組成物を調製した。
【0095】
(ベシクル製剤3、実施例6及び比較例10の組成物の調製)
ベシクル製剤3は、上記のベシクル製剤2のArg:パルミチン酸:ジパルミトイルヒドロキシプロリン:水=1:1:3:45の比率で混合した水溶液の代わりに、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa(1%)と水(9%)を用い、同様の方法で調製した。ここに、成分(A)、及び防腐剤を溶解させた水溶液を加え、均一に撹拌し組成物を調製した(実施例6)。また比較例10として、上記と同じ方法で成分(A)を含有しない組成物を調製した。
【0096】
(ベシクルの確認試験-2:マルチラメラベシクル)
製造後に室温で1日静置した各試料について偏光顕微鏡(Nikon社製、倍率400倍)を用いて、マルテーゼクロス像の有無を観察した。
図3に示すようにマルテーゼクロス像が確認出来たものは、マルチラメラベシクル構造を形成していると判断し、下記の評価基準で評価した。
◎:全体にマルテーゼクロス像が確認できた。
○:部分的にマルテーゼクロス像が確認できた。
×:マルテーゼクロス像が確認できなかった。
【0097】
(防腐剤のベシクルへの分配の減少量)
上記に記載の試験例1と同様の方法で上澄みと固形分(ベシクル)に含まれる防腐剤濃度を定量し、実施例5の場合は比較例9を、実施例6の場合は10を基準とし、ベシクルへの防腐剤の分配量の増減、及び水相中の防腐剤濃度を下記の基準で評価した。
◎:15 %以上の防腐剤のベシクルへの分配が抑えられ、水相中濃度が増加した。
○:5%以上15%未満の防腐剤のベシクルへの分配が抑えられ、水相中濃度が増加した。
△:同等以上5%未満の防腐剤のベシクルへの分配が抑えられ、水相中濃度が増加した。×:同等未満、すなわち防腐剤のベシクル膜への分配が増加し、水相中濃度が減少した。
【0098】
(皮膚透過性の評価)
上記に記載の試験例1の皮膚透過性の評価と同様の手順で、成分(D)の累積透過量(μg/cm2)を求め、皮膚透過性を評価した。実施例5の場合は比較例9を、実施例6の場合は比較例10と比べ、試験開始4時間後及び24時間後の成分(D)の累積透過量を下記の基準で評価した。
成分(A)を含有しない対応する組成物(比較例9、10)として比較して;
◎:2倍以上
○:1.5倍以上2倍未満
△:同等以上1.5倍未満
×:同等未満
【0099】
【0100】
実施例5、6では、比較例9、10と同等のマルテーゼクロス像が観察された。また、試験例1のベシクルの確認試験-1と同様の方法により、透過型電子顕微鏡により実施例5の形状観察を行ったところ、
図4のようにマルチラメラベシクルが確認された。
防腐剤のベシクル膜への分配は、実施例5では比較例9に比べ21%抑制され、実施例6では比較例10に比べ19%抑制されたことから、成分(A)により防腐剤のベシクルへの分配が減少することが確認された。
【0101】
有効成分(D)の浸透性について、実施例5、実施例6では、それぞれ比較例9、比較例10と比べ、4時間後及び24時間後の成分(D)の透過性が2倍以上に向上することが確認された。なお、参考として実施した参考例3における成分(D)の累積透過量に対する、比較例9及び10の累積透過量を試験したところ、4時間後及び24時間後の何れにおいても同等以下又はほとんど差がないことが確認された。よって、成分(A)とベシクル製剤の組合せにより、有効成分の浸透性を向上させられることが確認された。
【0102】
<試験例5>
(使用感の評価)
5名のパネラーが、実施例5及び比較例9の組成物40μLをそれぞれ、前腕内側の皮膚8cm×2cm以内の範囲にそれぞれ塗布し、塗布中の肌馴染み感、塗布直後のさらさら感について下記のように評点付けした後、5名の平均点を求め、下記の基準に基づいて評価を行った。
【0103】
(塗布中における伸び広がり、塗布後の肌の滑らかさの評点)
5:非常に良い
4:良い
3:ふつう
2:やや悪い
1:悪い
【0104】
(塗布中における肌馴染み感の評点)
5:肌なじみを非常に良い
4:肌なじみを感じる
3:ふつう
2:肌なじみをあまり感じない
1:肌なじみを感じない
【0105】
(塗布直後の肌のさらさら感、べたつきの無さの評点)
5:べたつきが全くなく、肌が非常にさらさらする
4:べたつきをほとんど感じず、肌がさらさらする
3:ふつう
2:ややべたつきを感じる
1:べたつきを感じる
【0106】
(評価基準)
◎:平均点が4.0以上
○:平均点が3.0以上4.0未満
△:平均点が2.0以上3.0未満
×:平均点が2.0未満
【0107】
【0108】
<試験例6>
(評価検体(化粧料)の調製)
上記の実施例5及び比較例9に記載のベシクル組成物に関して、化粧料に配合し防腐試験を行った。化粧料処方は既知の方法に基づき調製した。すなわち、ヒアルロン酸Na(FCH-120)0.1%及びソルビトール5.0%、ピロリドンカルボン酸Na1.5
%、グリセリン5.0%、エタノール1%及びメチルパラベン0.14%と水を70℃で加熱しながら均一になるまで撹拌し、室温付近まで冷却した後に、実施例5又は比較例9のベシクル製剤60%を添加し、次いでpH調整剤にてpH6.5とし、最後に水の量を調整して100%とした検体を実施例6及び比較例10として下記の方法で評価した。また、参考としてメチルパラベンを0.2%配合し、ベシクルを含まない化粧料(参考例4)や、実施例5の成分(A)に代えてアセチルプロリンをベシクル製剤2に同量配合した組成物(アセチルプロリン含有組成物)を用いて同様に調製した化粧料(参考例5)も評価した。
【0109】
(防腐試験)
(1)前記のように調製した化粧料1mLに、初期菌数が1mL当たり105個となるようにクロコウジカビ(Aspergillus brasiliensis(A.b))菌液を添加した。
(2)(1)の処方を25℃で7日間保管した。
(3)7日後、処方10μLと、下記の培地190μLを96ウェルプレート上でよく混合し、25℃で1日間保管後、カビの生育の度合いを以下の基準に従って目視にて評価した。
培地組成:GPLP培地「ダイゴ」(和光純薬社製)3.65g、レシチン:和光一級1.15g、ポリソルベート80:和光生化学用8.05g、イオン交換水250g
【0110】
カビの生育度合評価基準:
0:カビの生育なし
1:わずかに生育あり
2:生育あり、ウェルの1/3未満
3:生育あり、ウェルの1/3以上
4:繁殖中、ウェルが概ね菌で覆われている
【0111】
(4)この実験を3回繰り返し、3回の評価値の平均をA.bの生育状況スコアとして求めた。
【0112】
ベシクルを含まず、メチルパラベンを0.2%配合した化粧料(参考例4)では、生育スコア0であったが、組成中にベシクルとメチルパラベン0.2%を含有する、比較例10を用いた化粧料では生育スコア3であり顕著なカビ生育が確認された。一方、組成中にベシクルとメチルパラベン0.2%に加えて成分(A)を含有する、実施例6を用いた化粧料では、生育スコア0でありカビの生育が確認されなかった。なお、実施例5の成分(A)に代えて、アセチルプロリンを同量配合した組成物(参考例5)を用いた化粧料でも、カビ生育が確認されることが分かった。結果を表5に示した。
【0113】