(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043360
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】マイコプラズマ・ニューモニエの免疫学的検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20220309BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20220309BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/531 B
G01N33/543 521
G01N33/543 525C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018207137
(22)【出願日】2018-11-02
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 泰史
(72)【発明者】
【氏名】中村 知史
(57)【要約】
【課題】本発明は、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いて免疫反応を行う免疫学的検出方法において、マイコプラズマ・ニューモニエを高感度に検出する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いてマイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出する方法であって、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤の存在下、免疫反応を行う前記検出方法を提供する。また、免疫学的に検出する方法がイムノクロマトグラフィーを利用する方法である検出方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いてマイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出する方法であって、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤の存在下、免疫反応を行う前記検出方法。
【請求項2】
免疫学的に検出する方法がイムノクロマトグラフィーを利用して検出する方法である請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
イムノクロマトグラフィーを利用して検出する方法が以下の(A)~(C)の工程を含む請求項1又は2に記載の方法。
(A)マイコプラズマ・ニューモニエを含むサンプルと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤を含むサンプル希釈液を混合する工程
(B)下記テストストリップのサンプル供給部に、前記(A)で得られた混合物を供給する工程
テストストリップ;
少なくともサンプル供給部、展開部および検出部とを備えた多孔質体からなるメンブレンを有し、展開部の一部には、標識物質で標識された第一のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を含むコンジュゲートが溶出可能に保持され、さらに展開部の一部であってコンジュゲート保持部分より下流側に第二のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体が固定化されている検出部を有する
(C)サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニエとコンジュゲートの複合体を検出部において検出する工程
【請求項4】
以下の構成(1)および(2)を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ検出キット。
(1)マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いた検出試薬
(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤を含むサンプル希釈液
【請求項5】
前記(1)のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いた検出試薬が以下の構成(1)’である請求項4に記載の検出キット。
(1)’少なくともサンプル供給部、展開部および検出部とを備えた多孔質体からなるメンブレンを有し、展開部の一部には、標識物質で標識された第一のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を含むコンジュゲートが溶出可能に保持され、さらに展開部の一部であって前記コンジュゲート保持部分より下流側に、第二のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体が固定化されている検出部を有するイムノクロマトグラフィー用テストストリップ
【請求項6】
マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いた免疫学的検出方法におけるサンプル希釈液であって、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤を含む前記希釈液。
【請求項7】
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤と、マイコプラズマ・ニューモニエを含むサンプルとを接触させる工程を含む、マイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出するためのサンプル前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出する方法に関する。特に、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いてマイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)を原因菌とする呼吸器系の感染症であり、小児の罹患率が高く、4歳未満が患者の30%を、9歳未満が60%以上を占める。
マイコプラズマ肺炎の多くの患者は気管支炎程度ですむが、一部は重症化して肺炎や他の合併症も併発するおそれがある。したがって、迅速な確定診断と適切な抗菌薬の選択が重要であることから、操作が簡便かつ迅速な検出が可能であるイムノクロマト分析が適している。
【0003】
例えば、特許文献1には、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を用いたイムノクロマト分析装置が開示されている。
また、特許文献2には、マイコプラズマ・ニューモニエのリボソームタンパク質Ribosomal ProteinL7/L12に特異的な抗体を用いたイムノクロマト分析装置が開示されている。
ところで抗体により検出をする場合、検出対象となる菌体やタンパク質を界面活性剤などで前処理をして抗体検出部位を露出させた上で検出する必要がある場合がある。
【0004】
特許文献1では、HLB値が13~17の非イオン界面活性剤を含有する検体希釈液を前記イムノクロマト分析装置と共に使用するキットが開示されている。しかし、13~17の非イオン界面活性剤の種類は膨大に存在するところ、実際に実施例に記載されているのは、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(tritonX-100)とポリオキシエチレンソルビタンモノオレート(tween20)の1:1混合物と、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(ノニデットp-40)とポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレン-アルキルエーテル(ノニオンMN-811)の1:1混合物のみのわずか2例であり、その他の膨大な数のHLB値が13~17の非イオン界面活性剤については使用できるかどうかは開示されていない。
【0005】
特許文献2では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやHLB値が12~15の非イオン界面活性剤を含有する検体希釈液を前記イムノクロマト分析装置と共に使用するキットが開示されている。しかし、抗体は、マイコプラズマ・ニューモニエのリボゾームタンパク質L7/L12に対する抗体のみについてしか確認されておらず、P30タンパクに対する抗体についてのこれらの非イオン界面活性剤の効果については開示も示唆もされていない。
このように、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いてマイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出する方法において、高感度で検出する方法についての技術は未だ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-9571号公報
【特許文献2】特開2014-167439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いて免疫反応を行う免疫学的検出方法において、マイコプラズマ・ニューモニエを高感度に検出する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定のノニオン性界面活性剤存在下で、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いて免疫反応を行うことにより、マイコプラズマ・ニューモニエを高感度に検出できることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>
マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いてマイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出する方法であって、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤の存在下、免疫反応を行う前記検出方法。
<2>
免疫学的に検出する方法がイムノクロマトグラフィーを利用して検出する方法である<1>に記載の検出方法。
<3>
イムノクロマトグラフィーを利用して検出する方法が以下の(A)~(C)の工程を含む<1>又は<2>に記載の方法。
(A)マイコプラズマ・ニューモニエを含むサンプルと、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤を含むサンプル希釈液を混合する工程
(B)下記テストストリップのサンプル供給部に、前記(A)で得られた混合物を供給する工程
テストストリップ;
少なくともサンプル供給部、展開部および検出部とを備えた多孔質体からなるメンブレンを有し、展開部の一部には、標識物質で標識された第一のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を含むコンジュゲートが溶出可能に保持され、さらに展開部の一部であってコンジュゲート保持部分より下流側に第二のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体が固定化されている検出部を有する
(C)サンプル中のマイコプラズマ・ニューモニエとコンジュゲートの複合体を検出部において検出する工程
<4>
以下の構成(1)および(2)を含む、マイコプラズマ・ニューモニエ検出キット。
(1)マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いた検出試薬
(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤を含むサンプル希釈液
<5>
前記(1)のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いた検出試薬が以下の構成(1)’である<4>に記載の検出キット。
(1)’少なくともサンプル供給部、展開部および検出部とを備えた多孔質体からなるメンブレンを有し、展開部の一部には、標識物質で標識された第一のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を含むコンジュゲートが溶出可能に保持され、さらに展開部の一部であって前記コンジュゲート保持部分より下流側に、第二のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体が固定化されている検出部を有するイムノクロマトグラフィー用テストストリップ
<6>
マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いた免疫学的検出方法におけるサンプル希釈液であって、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤を含む前記希釈液。
<7>
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤と、マイコプラズマ・ニューモニエを含むサンプルとを接触させる工程を含む、マイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出するためのサンプル前処理方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤存在下、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いて免疫反応を行うことにより、マイコプラズマ・ニューモニエを高感度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のテストストリップの模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(サンプル)
本発明において、サンプルとは患者から採取した被検出対象であるマイコプラズマ・ニューモニエを含む可能性がある検体をいう。
患者検体は、そのままサンプルとして用いてもよく、適宜サンプル希釈液によって希釈してサンプルとしてもよい。また、適宜希釈し濾過したものをサンプルとして用いてもよい。なお、サンプル希釈液は、他では検体希釈液、サンプル抽出液、サンプル展開液、サンプル浮遊液などと呼ばれることもあるが、いずれも同義で用いられる。
【0012】
(本発明の特定のノニオン性界面活性剤)
本発明の免疫学的検出方法は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物からなる群から選ばれる1以上のノニオン性界面活性剤(以下、本願明細書中、略して「特定のノニオン性界面活性剤」ということがある)の存在下で免疫反応を行うことを特徴とする。
これらの本発明の特定のノニオン性界面活性剤としては、水に対する溶けやすさを考慮し、HLBが5.0~18.0程度が好ましく、6.0~16.0がより好ましく、7.0~12.0がよりいっそう好ましく、9.0~11.0がもっとも好ましい。
具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテルは、エマルゲン(登録商標、以下同じ)108 、エマルゲン103、エマルゲン106、エマルゲン123P、Brij(登録商標、以下同じ)35などの商品名で販売されているものが挙げられる。
ポリオキシエチレンオレイルエーテルは、エマルゲン420、エマルゲン430などの商品名で販売されているものが挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテは、エマルゲン705、エマルゲン1108などの商品名で販売されているものが挙げられる。
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテルは、ノイゲン(登録商標、以下同じ)XL-90、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、エマルゲンLS-114などの商品名で販売されているものが挙げられる。
ポリエチレングリコールモノラウレートは、エマノーン(登録商標、以下同じ)1112などの商品名で販売されているものが挙げられる。
合成アルコールEO付加物としては、レオコール(登録商標、以下同じ)TD-50、レオコールTD-70、レオコールTD-90が挙げられ、合成2級アルコールEO付加物としては、レオコールSC-120、レオコールSC-400、合成アルコールEO/PO付加物としてはライオノール L-950、ライオノール TD730が挙げられる。
免疫反応系における特定のノニオン性界面活性剤の濃度は、0.01%~10.0%が好ましく、0.1%~5%がさらに好ましく、0.2%~3%がよりいっそう好ましく、0.3~1.5%がもっとも好ましい。
本発明の特定のノニオン性界面活性剤を反応系に存在させる態様としては、免疫反応系に直接添加してもよいが、典型的には、後述するようにサンプル希釈液に含有させておき、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体と接触させることにより免疫反応系に存在させる態様が挙げられる。
【0013】
(サンプル希釈液)
本発明のサンプル希釈液は、特定のノニオン性界面活性剤含み、さらに緩衝液を含むものが好ましい。
本発明のサンプル希釈液中の特定のノニオン性界面活性剤の濃度範囲は、0.01%~10.0%が好ましく、0.1%~5%がさらに好ましく、0.2%~3%がよりいっそう好ましく、0.3~1.5%がもっとも好ましい。
【0014】
本発明のサンプル希釈液に含まれる緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など通常使用される緩衝液をあげることができる。本発明のサンプル希釈液は、上記化合物と緩衝液を含むものであればよく、上記化合物を含む緩衝液でもよく、さらに塩化ナトリウムなどの塩類、スクロースなどの安定剤や保存剤、プロクリン(登録商標)などの防腐剤等を含んでもよい。塩類は塩化ナトリウムなどのようにイオン強度の調整のために含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する目的で添加するものも含まれる。本発明のサンプル希釈液のpHは、6.0~10.0の範囲が好ましく、7.0~9.0がより好ましく、7.5~8.5がよりいっそう好ましい。
本発明のサンプル希釈液は、サンプルを希釈するための液であるから、マイコプラズマ・ニューモニエを含むサンプル(検体)をサンプル希釈液に添加して、サンプルを溶解、抽出、あるいは分散して希釈する役割を担っている。したがって、典型的には、テストストリップのサンプルパッドにサンプルを供給する時点でサンプルとサンプル希釈液は混合されている。しかし、このほかに、サンプルを直接あるいは他の本発明のサンプル希釈液以外の希釈液で希釈したものをサンプルパッドに供給し、同時にあるいは遅れて本発明のサンプル希釈液を前記サンプルパッドに供給する場合も本発明の検出方法に含まれる。
【0015】
本発明の免疫学的検出方法としては、免疫反応を利用する検出方法であればいずれでもよく、例えば、粒子凝集イムノアッセイ法であるラテックス免疫凝集法(以下、LTIA法という)、代表的なサンドイッチ免疫測定法であり標識イムノアッセイ法でもあるELISA法、イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法等が挙げられるが、このうちでも特に、イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法が望ましい。イムノクロマトグラフィーを利用した検出方法としては、フルースロー式とラテラルフロー式が挙げられるが、ラテラルフロー式のイムノクロマトグラフィーを利用した検出方法が簡便かつ迅速であり望ましい。
前記LTIA法において本発明のサンプル希釈液を使う場合は、サンプルを本発明のサンプル希釈液で希釈した後、ラテックス試薬と混合することで免疫凝集反応を検出することができる。ラテックス試薬が、緩衝液を含む第一試薬とラテックス試薬を含む第二試薬からなる場合は、第一試薬として本発明の検体希釈液を使用することができる。
【0016】
また、本発明は、特定のノニオン性界面活性剤と、マイコプラズマ・ニューモニエを含むサンプルとを接触させる工程からなるマイコプラズマ・ニューモニエを免疫学的に検出するためのサンプル前処理方法も提供する。
典型的には、特定のノニオン性界面活性剤を検体希釈液に含有させ、当該検体希釈液とサンプルを混合することにより前処理を行うことができる。
【0017】
(被検出物質)
本発明の被検出物質はマイコプラズマ・ニューモニエである。本発明は、直接的には、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いて、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質を検出することにより、マイコプラズマ・ニューモニエの存在を検出し、または定量する。
【0018】
(イムノクロマトグラフィー用を利用した検出)
本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップは、サンプルを不溶性メンブレン中を展開させることにより、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートとの複合体を検出するテストストリップである。当該テストストリップは、(1)サンプル供給部(2)展開部(3)検出部、とを備えた多孔質体からなるメンブレンを有し、展開部の一部には、標識物質で標識された第一の抗体を含むコンジュゲートが溶出可能に保持され、さらに展開部の一部であってコンジュゲート保持部分より下流側に第二の抗体が固定化されている検出部を有する。
本発明の特定のノニオン性界面活性剤は、前記サンプル希釈液に含まれている態様のほか、テストストリップを構成するパッドの一部に含浸させる態様もあり得る。例えば、サンプルパッド、サードパッド、コンジュゲートパッド、不溶性メンブレンなどである。また、本発明の特定のノニオン性界面活性剤は、フィルターチップに含浸される態様もあり得る。
【0019】
コンジュゲートは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体が標識体に固定化されたものであり、コンジュゲートの存在様式としては、コンジュゲートパッドとして、サンプルパッド、サードパッド、不溶性メンブレン以外の別のパッドに含浸された状態で存在してもよいし(タイプA)、サンプルパッドの一部にコンジュゲート部として存在してもよいし(タイプB)、さらには、テストストリップとは別に、検体と混合されるように個別のコンジュゲート試薬として存在してもよい(タイプC)。
【0020】
以下、コンジュゲートの存在様式が上記タイプAのテストストリップについて説明する。
サンプルの流れ方向の上流より下流に向かって、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、サードパッド、不溶性メンブレンの順で配置され、それぞれ上下の層と少なくとも一部が重複するように配置される。このような配置例のテストストリップを
図1に示す。
このようなテストストリップのサンプルパッドに、被検出物質を含有するサンプルが供給されると、被検出物質はサンプルパッドを通過して下流側のコンジュゲートパッドへと流れる。コンジュゲートパッドでは、被検出物質とコンジュゲートが接触して複合体(凝集体)を形成しながら当該パッドを通過する。その後、複合体はコンジュゲートパッドの下面に接触して配置された多孔質サードパッドを通過し、不溶性メンブレンへと展開される。
不溶性メンブレンには、その一部に被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体が固定化されているため、該複合体がここで免疫反応により結合して固定化されることになる。固定化された複合体は、コンジュゲートに由来する吸光度、反射光、蛍光、磁気等を検出する手段により検出される。
【0021】
次に、コンジュゲートの存在様式がタイプBのテストストリップについて説明する。
上記タイプAのテストストリップとの違いは、サンプルパッドとコンジュゲートパッドが一体になった点であり、つまり、サンプルパッドの一部にサンプル供給部およびコンジュゲート部が構成されている点である。
上記サンプル供給部は、被検出物質を含有するサンプルを供給する部位であり、上記コンジュゲート部は、コンジュゲートを含有する部位であり、サンプル供給部がコンジュゲート部の上流側となる。
【0022】
次に、コンジュゲートの存在様式がタイプCのテストストリップについて説明する。
上記タイプAのテストストリップとの違いは、コンジュゲートパッドが存在せず、コンジュゲートは個別のコンジュゲート試薬として存在する点である。例えば、フィルター中にコンジュゲートが内蔵されたフィルターチップが挙げられる。このようなフィルターチップを使って、サンプル希釈液及び被検出物質を通過させることでコンジュゲートと被検出物質が結合し、複合体(凝集体)を形成する。これをコンジュゲートパッドを有さないこと以外はタイプAと同一の前記テストストリップに供給することで、被検出物質を検出することができる。
コンジュゲートパッドやフィルターチップには、このほかに、本発明の特定のノニオン性界面活性剤を含ませることもできる。
【0023】
(サンプルパッド)
本発明に用いられるサンプルパッドとは、サンプルを受け入れる部位であり、パッドに成型された状態で液体のサンプルを吸収し、液体と検出対象物とが通り抜けることができるどんな物質及び形態をも含む。サンプルパッドに適した材料の具体例として、ガラス繊維(グラスファイバー)、アクリル繊維、親水性ポリエチレン材、乾燥紙、紙パルプ、織物等が含まれるが、これらに限定されない。好適には、グラスファイバー製パッドが用いられる。該サンプルパッドには、後述するコンジュゲートパッドの機能を併せ持たせることも出来る。また、サンプルパッドには、抗体固定化メンブレンにおける非特異的反応(
吸着)を防止・抑制する目的で、通常使用されるブロッキング試薬を含ませることができる。
サプルパッドには、このほかに、本発明の特定のノニオン性界面活性剤を含ませることもできる。
【0024】
(サードパッド)
サードパッドは、試料の性状等により必要に応じて配置されることが望ましく、サンプル中の被検出物質とコンジュゲートの複合体を透過させることができるものであればいずれでもよい。
また、本発明のサードパッドの平均孔径は、1~100μmが例示され、5~80μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、15~55μmがさらに好ましく、20~50μmが特に好ましく、25~45μmが最も好ましい。
サードパッドには、このほかに、本発明の特定のノニオン性界面活性剤を含ませることもできる。
【0025】
(不溶性メンブレン)
本発明に用いられる不溶性メンブレンは、被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体が固定化された少なくとも1つの検出部を有する。被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体の不溶性メンブレン担体への固定化は、従来公知の方法で実施することができる。ラテラルフロー式のイムノクロマト試薬の場合には、上記の抗体を所定の濃度で含有する液を調製し、ノズルから液を一定の速度で吐出しながら水平方向に移動させることのできる機構を有する装置などを用いて、上記液をライン状に不溶性メンブレン担体に塗布し、乾燥させることにより固定化させることができる。上記液の抗体の濃度は0.1~5mg/mLが好ましく、0.5~2mg/mLがさらに好適である。また、抗体の不溶性メンブレン担体への固定化量は、ラテラルフロー式の場合には上記の装置のノズルからの吐出速度を調節することによって最適化でき、0.5~2μL/cmが好適である。
なお、上記ラテラルフロー式のイムノクロマト試薬を用いた測定方法は、サンプルが毛細管現象により不溶性メンブレン担体に対して並行方向に移動するように展開する方式の測定方法である。
また、上記の抗体を所定の濃度で含有する液は、緩衝液に抗体を添加することにより調製することができる。該緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液など通常使用される緩衝液をあげることができる。緩衝液のpHは6.0~9.5の範囲が好ましく、6.5~8.5がより好ましく、7.0~8.0がさらに好ましい。緩衝液には、さらに塩化ナトリウムなどの塩類、スクロースなどの安定剤や保存剤、プロクリン(登録商標)などの防腐剤等を含んでもよい。塩類は塩化ナトリウムなどのようにイオン強度の調整のために含ませるもののほか、水酸化ナトリウムなど緩衝液のpHを調整する目的で添加するものも含まれる。
不溶性メンブレンに抗体を固定化した後、さらに、通常使用されるブロッキング剤を溶液あるいは蒸気状にして抗体を固定化した部位以外を被覆し、ブロッキングを行うこともできる。
なお、不溶性メンブレンには、従来からイムノクロマト試薬で用いられているコントロール捕捉試薬を固定化してもよい。該コントロール捕捉試薬は、アッセイの信頼性を担保するための試薬であって、コンジュゲートパッドに含ませたコントロール試薬を捕捉するものである。例えば、コンジュゲートパッドに標識されたスカシ貝由来ヘモシアニン(以下、KLHという)をコントロール試薬として含む場合には、抗KLH抗体などがコントロール捕捉試薬に該当する。コントロール捕捉試薬を固定化する位置は、アッセイ系の設計に適合するよう適宜選択することができる。
不溶性メンブレンには、このほかに、本発明の特定のノニオン性界面活性剤を含ませることもできる。
【0026】
本発明で用いられる不溶性メンブレンを構成するメンブレンとしては、従来からイムノクロマト試薬の不溶性メンブレン担体として用いられている公知のメンブレンが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン類、ガラス、セルロースやセルロース誘導体などの多糖類、セラミックス等からなる繊維から構成されるメンブレンがあげられる。具体的には、ザルトリウス社、ミリポア社、東洋濾紙社、ワットマン社などから市販されているガラス繊維ろ紙やセルロースろ紙などが挙げられる。中でも、ザルトリウス社、UniSart CN140が好ましい。また、この不溶性メンブレン担体の孔径と構造を適宜選択することにより、コンジュゲートとサンプル中の被検出物質との複合体が不溶性メンブレン担体中を流れる速度を制御することが可能である。
【0027】
上記イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、プラスチック製粘着シートのような固相支持体上に配置させることが好ましい。該固相支持体は、サンプル及びコンジュゲートの毛管流を妨げない物質で構成する。また、イムノクロマトグラフィー用テストストリップを固相支持体上に接着剤等で固定化してもよい。この場合、接着剤の成分等においてもサンプル及びコンジュゲートの毛管流を妨げない物質で構成する。該イムノクロマトグラフィー用テストストリップは、イムノクロマトグラフィー用テストストリップの大きさ、サンプルの添加方法や添加位置、不溶性メンブレンの検出部の形成位置、シグナルの検出方法などを考慮した適当な容器(ハウジング)に格納・搭載して使用することができ、このように格納・搭載された状態を「デバイス」という。
【0028】
(マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体)
本発明のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体とは、該タンパク質を特異的に検出できる抗体であればポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよく、このうちでもモノクローナル抗体が好ましい。
マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体は、例えば、マイコプラズマ・ニューモニエ菌体から抽出したP30タンパク質またはクローニングされたP30タンパク質の遺伝子を大腸菌などの宿主で遺伝子工学的に発現させて抽出精製した組み換えP30タンパク質、又はP30タンパク質の一部を構成するポリペプチドを免疫用抗原として、常法に従って得ることができる。ポリクローナル抗体の場合は、前記免疫用抗原でマウスなどの動物を免疫した抗血清から得ることができ、モノクローナル抗体は、マウスなどの動物に免疫した後、この免疫された動物の脾臓細胞とミエローマ細胞とを細胞融合して得られた融合細胞をHAT含有培地で選択した後に増殖させて、P30タンパク質を利用して、例えば、抗P30タンパク質抗体産生株をスクリーニングすることにより得ることができる。
【0029】
本発明のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体は、当該抗体と実質的に同等のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体フラグメントおよび改変抗体も含む。抗体フラグメントとしてはFabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、scFvフラグメントなどが挙げられる。
本発明のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する第一の抗体である標識抗体と第二の抗体である固定化抗体は、それぞれ、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、少なくともいずれか一方がモノクローナル抗体である方が好ましく、両方がモノクローナル抗体である方がより好ましい。
また、第一の抗体と第二の抗体は、P30タンパク質に存在する異なるエピトープを認識する抗体であることが好ましい。
【0030】
P30タンパク質は分子量30KDaの接着タンパク質の1つである。マイコプラズマ・ニューモニエの菌体においては、接着器官の先端部の細胞表面に局在しており、細胞膜内に埋没しているN末端と細胞膜外に存在するC末端を持つ膜貫通型タンパク質である。
また、C末端側にはプロリンを多く含むアミノ酸配列の繰り返し構造が存在する。一般的にプロリンを含むアミノ酸配列からなる領域は、立体的な高次構造をとることが知られており、抗体の反応するエピトープとなり得ることが知られている。
本発明のP30タンパク質に対する抗体は、P30タンパク質を特異的に認識できる抗体であればよく、モノクローナル抗体としては、P30タンパク質の細胞外領域における、プロリンを多く含むアミノ酸配列の繰り返し構造からなる部分を認識するモノクローナル抗体が好ましい。
また、本発明のマイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体は、市販の抗P30モノクローナル抗体を用いてもよい。市販の抗P30モノクローナル抗体の例としては、Meridian社のC01939M、C01940M、C01941M、C01942M、C01943Mなどが挙げられる。
【0031】
(抗P30モノクローナル抗体の調製例)
以下の試験に用いた抗P30モノクローナル抗体は、当業者がモノクローナル抗体を製造するために通常行う方法(KohlerとMilsteinの方法(Nature、第256巻495頁(1975年)等)により得られた。
【0032】
(標識体)
本発明で用いられる標識体は、従来からイムノクロマトグラフィー用テストストリップに用いられている公知の標識体を用いることができる。例えば、金コロイド粒子や白金コロイド粒子などのコロイド状金属粒子、カラーラテックス粒子、磁性粒子、蛍光粒子などが好ましく、特に金コロイド粒子、カラーラテックス粒子が好ましい。
【0033】
(コンジュゲート)
本発明で用いられるコンジュゲートは、上記のような標識体に被検出物質であるマイコプラズマ・ニューモニエに対して免疫学的に反応する抗体が固定化されたものである。コンジュゲートは、金コロイド粒子に抗マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体が固定化されたものが好ましい。
被検出物質に対して免疫学的に反応する抗体を標識体へ固定化させる方法としては、物理吸着、化学結合等が挙げられ、物理吸着により固定化させるのが一般的である。
【0034】
(キット)
本発明のマイコプラズマ・ニューモニエの検出キットは、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いた検出試薬及び特定のノニオン性界面活性剤を含むサンプル希釈液を含むものであればよい。
また、本発明のイムノクロマトグラフィーを利用したマイコプラズマ・ニューモニエ検出キットは、マイコプラズマ・ニューモニエのP30タンパク質に対する抗体を用いたイムノクロマトグラフィー用テストストリップおよび特定のノニオン性界面活性剤を含むサンプル希釈液を含むものであればよい。
本検出キットは、他に検出に必要な試薬、試験用チューブ、サンプル採取用の器具、取扱い説明書、テストストリップ格納用のハウジングなどを含んでもよい。
【0035】
(その他)
本明細書中、上流または下流という意味は、サンプルの流れる方向の上流側、下流側という意味で用いる。すなわち、本発明のテストストリップで上からサンプルパッド、コンジュゲートパッド、サードパッド、不溶性メンブレンが一部で重なるように積層されている場合、サンプルパッドがもっとも上流であり、不溶性メンブレンが下流ということになる。また、不溶性メンブレンの下流側端部が重なるように上にエンドパッドが積層されることがあるが、この場合、エンドパッドがもっとも下流である。
【実施例0036】
〔実施例1〕サンプル希釈液への界面活性剤の添加検討
上記実施例に先駆け、検出感度を上げる化合物探索のためノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤について感度評価試験を行った。
1.試験材料
(1)テストデバイス
マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対するモノクローナル抗体を使用したイムノクロマトグラフィー用テストストリップを含むテストデバイスを製造した。
図1に、本発明のイムノクロマトグラフィー用テストストリップの模式構成図を示した。
プラスチック製粘着シート(a)に不溶性メンブレン(b)を貼り、次いで、サードパッド(g)、コンジュゲートパッド(d)、サンプルパッド(e)を順に配置装着し、反対側の端には吸収パッド(f)を配置装着した。コンジュゲートパッドには、金コロイドに抗P30タンパク質モノクローナル抗体を感作したコンジュゲートが含浸されており、不溶性メンブレンには、抗P30タンパク質モノクローナル抗体(固定化抗体、塗布濃度0.75mg/mL、塗布量1.0μL/cm)、およびコントロール試薬(ヤギ抗マウスIgG、塗布濃度0.75mg/mL、塗布量1.0μL/cm)が流れ方向に対して垂直にライン上に固定化されている。各パッドは、上下のパッドとその一部が接するように積層して配置される。抗P30タンパク質モノクローナル抗体からなるラインをテストライン(c1)、コントロール試薬からなるラインをコントロールライン(c2)という。
このように各構成要素を重ね合わせた構造物を一定幅に切断してイムノクロマトグラフィー用テストストリップを作製した。テストストリップを専用のプラスチック製ハウジングに格納・搭載し、イムノクロマトテストデバイス(図示せず)の形態にした。
【0037】
(2)サンプル
NBRCより受領し、凍結したマイコプラズマを遠心にて濃縮し、生理食塩水により希釈したものを検体として用いた。各サンプル希釈液300μLに各検体15μLを懸濁し、サンプルとした。
【0038】
2.試験方法
テストデバイスにサンプル120μLを滴下し、15分後にテストラインの発色強度を目視で評価した。サンプル希釈液は表1、2に示す組成の界面活性剤0.1%及び1.0%の2種の濃度で、NaClを50mMとなるように20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に添加して調整した。添加剤としてBSA0.25%を添加した。
発色強度は、濃度依存的な感度の変動の少なかったエマルゲン108を添加した場合を基準に評価した。すなわち、サンプル希釈液に0.1%及び1.0%の各界面活性剤を添加し、同濃度のエマルゲン108を添加した場合の発色強度と比較して以下の4段階で評価した。
◎:発色強度の顕著な増強を認めた
〇:同等の発色強度若しくは発色強度の増強を認めた
△:発色が見られるが弱いあるいは非常に弱い
×:発色が見られない
【0039】
3.試験結果
結果を表1、2に示す。本結果によれば、アニオン性界面活性剤はいずれも感度が悪く、検出が不能であり(表2)、ノニオン性界面活性剤では本発明の特定のノニオン性界面活性剤である、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、合成アルコールEO付加物、合成2級アルコールEO付加物、及び合成アルコールEO/PO付加物を用いた場合は、感度が高く、それ以外のノニオン性界面活性剤を用いた場合は感度が低いことがわかった(表1)。
【0040】
【0041】
【表2】
(表中、エマール、ペレックス、エナジコール、デモール、ポイズは登録商標)
本発明によれば、マイコプラズマ・ニューモニエP30タンパク質に対する抗体を用いて行う免疫反応を特定のノニオン性界面活性剤の存在下で行うことにより、マイコプラズマ・ニューモニエを高感度に検出できる。