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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043370
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】左右一対の車輪を備えた傾斜車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20220309BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20220309BHJP
   B62J 45/40 20200101ALI20220309BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/027
B62J99/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018244901
(22)【出願日】2018-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591261509
【氏名又は名称】株式会社エクォス・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】特許業務法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】寺田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】内山 俊文
(72)【発明者】
【氏名】荒木 敬造
(72)【発明者】
【氏名】久保 昇太
【テーマコード(参考)】
3D011
【Fターム(参考)】
3D011AA02
3D011AA04
3D011AA07
3D011AD01
3D011AD03
(57)【要約】
【課題】傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱、例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱を容易に検出することができる左右一対の車輪を備えた傾斜車両を提供する。
【解決手段】左右一対の車輪を備えた傾斜車両は、左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度が検出されるように傾斜車体または懸架装置に設けられて、車両上下方向または車体上下方向の加速度を検出する上下方向加速度検出装置を備える。操舵制御装置は、上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度であって、左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度に基づいて、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左旋回時には車両左方向に傾斜し、右旋回時には車両右方向に傾斜する傾斜車体と、
車両左右方向に並んで配置される左右一対の車輪を含む複数の車輪であって、車体上下方向に延びる操舵軸線回りに揺動可能な状態で前記傾斜車体に支持される1つまたは2つの前操舵輪と、前記傾斜車体に支持され、前記前操舵輪が1つの場合は2つであり、前記前操舵輪が2つの場合は1つまたは2つである後輪とによって構成され、前記左右一対の車輪が、車両左右方向に並んで配置される2つの前記前操舵輪、または、車両左右方向に並んで配置される2つの前記後輪である複数の車輪と、
前記左右一対の車輪を前記傾斜車体に対して車体上下方向に変位可能な状態で支持する懸架装置と、
前記前操舵輪に対して前記操舵軸線回りのトルクを付与する操舵機構と、
前記操舵機構を制御する操舵制御装置と、
を備える左右一対の車輪を備えた傾斜車両であって、
前記左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度が検出されるように前記傾斜車体または前記懸架装置に設けられて、車両上下方向または車体上下方向の加速度を検出する上下方向加速度検出装置をさらに備え、
前記操舵制御装置は、前記上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度であって、前記左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度に基づいて、前記前操舵輪を前記操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御する、左右一対の車輪を備えた傾斜車両。
【請求項2】
請求項1に記載の左右一対の車輪を備えた傾斜車両であって、
前記操舵制御装置は、前記左右一対の車輪を備えた傾斜車両が旋回しながら走行している状態で、前記上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度に基づいて、前記前操舵輪を前記操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御する、左右一対の車輪を備えた傾斜車両。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の左右一対の車輪を備えた傾斜車両であって、さらに、
前記左右一対の車輪を備えた傾斜車両の車速を検出し、検出した前記左右一対の車輪を備えた傾斜車両の車速を前記操舵制御装置に入力する車速検出装置を備え、
前記操舵制御装置は、前記上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度と、前記車速検出装置によって検出された前記左右一対の車輪を備えた傾斜車両の車速とに基づいて、前記前操舵輪を前記操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御する、左右一対の車輪を備えた傾斜車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の車輪を備えた傾斜車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜車両が知られている。傾斜車両は、複数の車輪と、傾斜車体とを備える。複数の車輪は、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを含む。操舵輪は、例えば、前輪である。操舵輪は、傾斜車体の上下方向に延びる操舵軸線回りに揺動可能な状態で傾斜車体に支持される。傾斜車体は、左旋回時には左方向に傾斜し、右旋回時には右方向に傾斜する。
【0003】
また、複数の車輪は、傾斜車両の左右方向に並んで配置される左右一対の車輪を含んでいてもよい。これら左右一対の車輪は、それぞれ、前輪であってもよいし、後輪であってもよい。
【0004】
このような左右一対の車輪を有する傾斜車両においては、外乱が入力されることにより、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くことがある。例えば、左右一対の車輪のうち左の車輪又は右の車輪だけが段差を通過する際に、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾く。
【0005】
特開2017-177905号公報に記載の傾斜車両は、このような車体を傾斜車両の左右方向に一時的に傾かせる外乱が検出された場合に、操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態にする。
【0006】
また、上記公報に記載の傾斜車両では、以下の(1)、(2)及び(3)の何れかの方法で外乱が検出される。具体的には、(1)車両の実ロール角(ジャイロセンサによって実際に検出されたロール角)と目標ロール角(乗員の操作によって入力されているロール角)との差が閾値よりも大きい場合に、外乱が検出される。(2)ジャイロセンサによって実際に検出されたロールレイトが閾値よりも大きい場合に、外乱が検出される。(3)カメラによって撮影された画像に基づいて左右一対の車輪のうち左の車輪又は右の車輪だけが段差を通過することが推定される場合に、外乱が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-177905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記(1)や(2)の場合、ジャイロセンサによって検出された実ロール角やロールレイトを外乱の検出に用いる。これらは、何れも、乗員の操作に起因して発生する傾斜車体の傾斜をジャイロセンサによって検出することで得られるものである。そのため、ジャイロセンサによって検出された実ロール角やロールレイトが乗員の操作に起因するものであるのか、それとも、外乱に起因するものであるのかを明確に区別することが難しくなるおそれがある。その結果、上記(1)や(2)の場合には、外乱と乗員による操作とを明確に区別しようとすると、外乱を検出する際の制御が複雑になるおそれがある。
【0009】
また、上記(3)の場合だと、カメラによって撮影された画像に基づいて車両の走行軌跡を推定する。車両の走行軌跡は、例えば、車速センサで検出した車速とジャイロセンサで検出したヨーレイトとに基づいて推定される。そのため、左右一対の車輪のうち左の車輪又は右の車輪だけが段差を通過することを推定するための演算処理が複雑になるおそれがある。つまり、上記(3)の場合であっても、外乱を検出する際の制御が複雑になるおそれがある。
【0010】
本発明の目的は、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱、例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱を容易に検出することができる左右一対の車輪を備えた傾斜車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両は、左旋回時には車両左方向に傾斜し、右旋回時には車両右方向に傾斜する傾斜車体と、車両左右方向に並んで配置される左右一対の車輪を含む複数の車輪であって、車体上下方向に延びる操舵軸線回りに揺動可能な状態で傾斜車体に支持される1つまたは2つの前操舵輪と、傾斜車体に支持され、前操舵輪が1つの場合は2つであり、前操舵輪が2つの場合は1つまたは2つである後輪とによって構成され、左右一対の車輪が、車両左右方向に並んで配置される2つの前操舵輪、または、車両左右方向に並んで配置される2つの後輪である複数の車輪とを備える。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両は、左右一対の車輪を傾斜車体に対して車体上下方向に変位可能な状態で支持する懸架装置と、前操舵輪に対して操舵軸線回りのトルクを付与する操舵機構と、操舵機構を制御する操舵制御装置と、を備える。
【0013】
このような左右一対の車輪を備えた傾斜車両においては、乗員による旋回操作に起因して傾斜車体が傾斜車両の左右方向に傾く。また、このような左右一対の車輪を備えた傾斜車両においては、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くことがある。これは、例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する。傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱は、乗員による旋回操作に起因する傾斜車体の傾きと区別できることが好ましい。
【0014】
そこで、本願の発明者等は、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱(例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱)を乗員による旋回操作に起因して傾斜車体が傾斜車両の左右方向に傾く場合と区別するために、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱(例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱)について詳細に検討した。その結果、本願の発明者等は、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱が発生するとき、例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過するときには、乗員による旋回操作に起因して傾斜車体が傾斜車両の左右方向に傾くときよりも、車両上下方向または車体上下方向の加速度が大きく変化することに気付いた。つまり、本願の発明者等は、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱(例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱)を検出するには、車両上下方向または車体上下方向の加速度を参照すればよいことに気付いた。
【0015】
そこで、本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両は、前記左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度が検出されるように傾斜車体または懸架装置に設けられて、車両上下方向または車体上下方向の加速度を検出する上下方向加速度検出装置をさらに備える。操舵制御装置は、上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度であって、左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度に基づいて、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両においては、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度を検出することができるので、例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱(つまり、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱)を、傾斜車両の乗員による操作に起因して傾斜車体が傾斜車両の左右方向に傾く外乱と区別することができる。したがって、本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両においては、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱、例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱を容易に検出することができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両においては、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱(例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱)を検出したときに、当該外乱の検出に用いた加速度の大きさに応じて、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態にすることができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両において、傾斜車体は、傾斜車両の左旋回時には傾斜車両の左方向である車両左方向に傾斜し、傾斜車両の右旋回時には傾斜車両の右方向である車両右方向に傾斜するものであれば、特に限定されない。傾斜車体は、車体フレームを含む。車体フレームは、複数の部品を組み合わせたフレ-ムであってもよいし、複数の部品を一体的に成形したフレ-ムであってもよい。車体フレームの材料は、アルミ、鉄などの金属であってもよいし、CFRPなどの合成樹脂であってもよいし、それらの組み合わせであってもよい。車体フレームは、傾斜車両の外観部品で構成したモノコック構造であってもよいし、その一部が傾斜車両の外観部品を兼ねるセミモノコック構造であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両において、1つまたは2つの前操舵輪は、傾斜車体の上下方向である車体上下方向に延びる操舵軸線回りに揺動可能な状態で傾斜車体に支持されるものであれば、特に限定されない。車体上下方向に延びる軸線は、傾斜車体が直立している状態で、鉛直方向に延びていなくてもよい。車体上下方向に延びる軸線は、例えば、傾斜車体が直立している状態で、鉛直方向に対して傾斜車体の後方向に傾斜していてもよい。前操舵輪が傾斜車体に支持される態様は、特に限定されない。前操舵輪は、例えば、傾斜車体に対して直接的に支持されていてもよいし、傾斜車体に対して間接的に支持されていてもよい。前操舵輪が傾斜車体に対して間接的に支持される態様には、例えば、前操舵輪と傾斜車体との間に配置され前操舵輪を傾斜車体に対して支持する懸架装置を用いる態様が含まれる。1つの前操舵輪を傾斜車体に対して支持する懸架装置は、例えば、テレスコピック式やボトムリンク式のフロントフォークである。2つの前操舵輪を傾斜車体に対して支持する懸架装置は、例えば、独立懸架方式のサスペンションである。
【0020】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両において、後輪が傾斜車体に支持される態様は、特に限定されない。後輪は、例えば、傾斜車体に対して直接的に支持されていてもよいし、傾斜車体に対して間接的に支持されていてもよい。後輪が傾斜車体に対して間接的に支持される態様には、例えば、後輪と傾斜車体との間に配置され後輪を傾斜車体に対して支持する懸架装置を用いる態様が含まれる。1つの後輪を傾斜車体に対して支持する懸架装置は、例えば、スイングアーム式のサスペンションである。2つの後輪を傾斜車体に対して支持する懸架装置は、例えば、独立懸架方式のサスペンションである。
【0021】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両において、懸架装置は、左右一対の車輪を傾斜車体に対して車体上下方向に変位可能な状態で支持するものであれば、特に限定されない。このような懸架装置は、例えば、独立懸架方式のサスペンションである。
【0022】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両において、操舵機構は、前操舵輪に対して操舵軸線回りのトルクを付与するものであれば、特に限定されない。操舵機構は、例えば、トルク伝達機構を含む。トルク伝達機構は、例えば、乗員による旋回操作に基づいて駆動される操舵アクチュエータを含む。トルク伝達機構は、例えば、操舵アクチュエータから前操舵輪へのトルクの伝達を許容/遮断するクラッチを含んでいてもよい。前操舵輪に対して付与されるトルクは、例えば、乗員による旋回操作に基づいて駆動される操舵アクチュエータによって出力される。
【0023】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両において、操舵制御装置は、操舵機構を制御するものであれば、特に限定されない。操舵制御装置は、上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度であって、左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度に基づいて、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御するものであれば、特に限定されない。操舵制御装置が前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御する態様には、例えば、操舵機構において前操舵輪にトルクを付与する操舵アクチュエータをゼロトルク制御する態様や、操舵機構において前操舵輪にトルクを付与する操舵アクチュエータに供給する電流をゼロにする態様、さらには、操舵機構において前操舵輪にトルクを付与する操舵アクチュエータから前操舵輪へのトルクの伝達を許容/遮断するクラッチを用いる態様がある。なお、ゼロトルク制御は、例えば、操舵アクチュエータの出力部材を外部から強制的に回転させる際の抵抗(回転抵抗)がゼロに近づくように、操舵アクチュエータに供給する電流を制御することを含む。
【0024】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両において、上下方向加速度検出装置は、左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過するときに発生する車両上下方向または車体上下方向の加速度が検出されるように傾斜車体または懸架装置に設けられて、車両上下方向または車体上下方向の加速度を検出するものであれば、特に限定されない。上下方向加速度検出装置は、車両上下方向または車体上下方向の加速度そのものを検出しなくてもよい。上下方向加速度検出装置は、車両上下方向または車体上下方向の加速度に関する物理量を検出することができればよい。車両上下方向または車体上下方向の加速度に関する物理量は、車両上下方向または車体上下方向の加速度の検出に寄与する物理量であれば、特に限定されない。上下方向加速度検出装置は、例えば、静電容量型であってもよいし、ピエゾ抵抗型であってもよいし、圧電型であってもよい。上下方向加速度検出装置が圧電型である場合、車両上下方向または車体上下方向の加速度に関する物理量は、圧電体に力を加えたときに発生する電圧である。なお、上下方向加速度検出装置は、例えば、慣性計測装置(IMU)によって実現してもよい。上下方向加速度検出装置は、例えば、傾斜車両が路面の凹凸を通過するときの車両上下方向または車体上下方向の変位と、当該変位に要した時間とを検出し、これらを用いて、車両上下方向または車体上下方向の加速度を検出するようにしてもよい。上下方向加速度検出装置が検出する加速度は、例えば、上下方向加速度検出装置が設けられる場所に応じて、適宜、変更される。上下方向加速度検出装置が傾斜車体に設けられる場合、上下方向加速度検出装置は、例えば、車体上下方向の加速度を検出すればよい。上下方向加速度検出装置が懸架装置のうち傾斜車体とともに傾斜しない部材に設けられる場合、上下方向加速度検出装置は、例えば、車両上下方向の加速度を検出すればよい。上下方向加速度検出装置が懸架装置のうち傾斜車体とともに傾斜する部材に設けられる場合、上下方向加速度検出装置は、例えば、車体上下方向の加速度を検出すればよい。上下方向加速度検出装置は、所謂ばね上で車両上下方向又は車体上下方向の加速度を検出してもよいし、所謂ばね下で車両上下方向又は車体上下方向の加速度を検出してもよい。なお、路面の凹凸は、路面に対して突出するように形成された凸状部であってもよいし、路面に対して凹むように形成された凹状部であってもよい。つまり、路面の凹凸は、車輪が通過したときに車両上下方向または車体上下方向の加速度を発生させるものであればよい。
【0025】
本発明の一実施形態に係る左右一対の車輪を備えた傾斜車両が備える操舵制御装置は、左右一対の車輪を備えた傾斜車両が旋回しながら走行している状態で、上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度に基づいて、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御してもよい。
【0026】
このような態様においては、傾斜車両が旋回しながら走行しているときに左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過すると、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在にすることができる。つまり、上記態様においては、傾斜車体が傾斜していても、左右一対の車輪の一方が路面の凹凸を通過する際に、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在にすることができる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る傾斜車両は、さらに、車速検出装置を備えていてもよい。車速検出装置は、左右一対の車輪を備えた傾斜車両の車速を検出し、検出した左右一対の車輪を備えた傾斜車両の車速を操舵制御装置に入力する。
【0028】
上記車速検出装置を備える態様において、操舵制御装置は、上下方向加速度検出装置によって検出された車両上下方向または車体上下方向の加速度と、車速検出装置によって検出された左右一対の車輪を備えた傾斜車両の車速とに基づいて、前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態となるように制御してもよい。
【0029】
このような態様においては、例えば、特定の車速域で走行しているときに前操舵輪を操舵軸線回りに揺動自在な状態にすることができる。
【0030】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0031】
本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0033】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0034】
一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。
【0035】
本発明の説明においては、技術及び工程の数が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0036】
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、傾斜車体が傾斜車両の左右方向に一時的に傾くような外乱、例えば、左右一対の車輪の何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱を容易に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施の形態による傾斜車両の左側面図と当該傾斜車両が備える制御装置のブロック図とを併せて示す図面である。
図2】本発明の実施の形態による傾斜車両が備える懸架装置及び操舵機構の概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施の形態による傾斜車両が備える制御装置によって実施される前操舵輪揺動自在制御を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施の形態の変形例1による傾斜車両の左側面図と当該傾斜車両が備える制御装置のブロック図とを併せて示す図面である。
図5】本発明の実施の形態の変形例1による傾斜車両が備える制御装置によって実施される前操舵輪揺動自在制御を示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態の変形例2による傾斜車両の左側面図と当該傾斜車両が備える制御装置のブロック図とを併せて示す図面である。
図7】本発明の実施の形態の変形例2による傾斜車両が備える制御装置によって実施される前操舵輪揺動自在制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態による傾斜車両の詳細について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施の形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0040】
図1を参照しながら、本発明の実施の形態による傾斜車両10について説明する。図1は、傾斜車両10の左側面図と傾斜車両10が備える制御装置30のブロック図とを併せて示す図面である。
【0041】
本明細書では、傾斜車両10における各種の方向を、以下のように定義する。
【0042】
傾斜車両10の前方向を車両前方向Fと定義する。傾斜車両10の後方向を車両後方向Bと定義する。傾斜車両10の左方向を車両左方向Lと定義する。傾斜車両10の右方向を車両右方向Rと定義する。傾斜車両10の上方向を車両上方向Uと定義する。傾斜車両10の下方向を車両下方向Dと定義する。傾斜車両10の前後方向を車両前後方向FBと定義する。傾斜車両10の左右方向を車両左右方向LRと定義する。傾斜車両10の上下方向を車両上下方向UDと定義する。なお、傾斜車両10の前後上下左右は、傾斜車両10のシート123に着座した乗員から見た前後上下左右である。
【0043】
傾斜車両10では、傾斜車体12が車両左方向L又は車両右方向Rに傾斜できる。傾斜車体12が車両左方向L又は車両右方向Rに傾斜している場合、傾斜車体12の上下方向及び左右方向は、傾斜車両10の上下方向UD及び左右方向LRと一致しない。一方、直立状態の傾斜車体12の上下方向及び左右方向は、傾斜車両10の上下方向UD及び左右方向LRと一致する。
【0044】
傾斜車両10では、傾斜車体12の前方向を車体前方向fと定義する。傾斜車体12の後方向を車体後方向bと定義する。傾斜車体12の左方向を車体左方向lと定義する。傾斜車体12の右方向を車体右方向rと定義する。傾斜車体12の上方向を車体上方向uと定義する。傾斜車体12の下方向を車体下方向dと定義する。傾斜車体12の前後方向を車体前後方向fbと定義する。傾斜車体12の左右方向を車体左右方向lrと定義する。傾斜車体12の上下方向を車体上下方向udと定義する。
【0045】
図1を参照して、傾斜車両10は、傾斜車体12と、複数の車輪14と、懸架装置16と、旋回操作入力装置18と、操舵機構22と、上下方向加速度検出装置26と、操舵制御装置としての制御装置30とを備える。
【0046】
傾斜車体12は、傾斜車両10が車両左方向Lに旋回するときに車両左方向Lに傾斜し、傾斜車両10が車両右方向Rに旋回するときに車両右方向Rに傾斜する。傾斜車体12は、複数の車輪14を支持する。
【0047】
傾斜車体12は、車体フレーム121、車体カバー122及びシート123を含む。以下、これらについて説明する。
【0048】
車体フレーム121は、ヘッドパイプ1211を含む。ヘッドパイプ1211は、車体フレーム121の前端部に設けられている。
【0049】
ここで、傾斜車両10は、パワーユニット40をさらに備える。パワーユニット40は、例えば、エンジン或いは電気モータ等の駆動源と、変速機等を含む。なお、駆動源は、例えば、エンジン及び電気モータを有するハイブリッドタイプの駆動源であってもよい。パワーユニット40は、車体フレーム121によって支持されている。
【0050】
車体カバー122は、車体フレーム121に取り付けられる。車体カバー122は、車体フレーム121を覆う。
【0051】
シート123は、車体フレーム121によって支持される。シート123は、傾斜車両10の乗員が着座するものである。
【0052】
複数の車輪14は、2つの前操舵輪14Fと、1つの後輪14Rとを含む。以下、これらについて説明する。
【0053】
2つの前操舵輪14Fは、車両左右方向LRに並んで配置される。つまり、2つの前操舵輪14Fは、車両左右方向LRに並んで配置される左右一対の車輪である。2つの前操舵輪14Fは、左前操舵輪14FLと、右前操舵輪14FRとを含む。2つの前操舵輪14Fは、車体上下方向udに延びる操舵軸線CL1回りに揺動可能な状態で、傾斜車体12が有するヘッドパイプ1211に支持される。なお、本実施の形態では、操舵軸線CL1は、ステアリングシャフト222の中心軸線と一致している。
【0054】
1つの後輪14Rは、傾斜車体12に支持される。具体的には、1つの後輪14Rは、スイングアーム式のサスペンションによって車体フレーム121に支持される。
【0055】
1つの後輪14Rには、パワーユニット40の駆動力が伝達される。これにより、1つの後輪14Rが回転する。その結果、傾斜車両10が走行する。つまり、傾斜車両10の駆動輪は、1つの後輪14Rである。
【0056】
懸架装置16は、2つの前操舵輪14F(つまり、左右一対の車輪)を傾斜車体12に対して車体上下方向udに変位可能な状態で支持する。懸架装置16は、車体フレーム121が有するヘッドパイプ1211と、2つの前操舵輪14Fとの間に配置される。つまり、車体フレーム121が有するヘッドパイプ1211と、2つの前操舵輪14Fとは、懸架装置16を介して接続される。なお、懸架装置16の詳細については、後述する。
【0057】
旋回操作入力装置18は、乗員による旋回のための操作である旋回操作を受け付ける。旋回操作入力装置18は、乗員が操作可能な被操作部材としてのハンドルバー181を含む。ハンドルバー181は、乗員が傾斜車両10を旋回させる際に操作するものである。つまり、ハンドルバー181は、乗員による旋回操作を受け付けるものである。
【0058】
旋回操作入力装置18は、乗員による旋回操作が機械的に伝達されて2つの前輪14Fが操舵軸線CL1回りに揺動しないように構成されている。具体的には、ハンドルバー181は、2つの前輪14Fに対して機械的に接続されていない。
【0059】
旋回操作入力装置18は、旋回操作検出装置182をさらに含む。旋回操作検出装置182は、ハンドルバー181の操作量及び操作方向を検出する。旋回操作検出装置182は、検出したハンドルバー181の操作量及び操作方向を制御装置30に入力する。旋回操作検出装置182は、ハンドルバー181の操作量及び操作方向を検出することができるものであれば、特に限定されない。旋回操作検出装置182は、例えば、ハンドルバー181の操作量及び操作方向を非接触で検出する。旋回操作検出装置182は、例えば、エンコーダ等によって実現される。
【0060】
図2を参照しながら、懸架装置16について説明する。図2は、懸架装置16及び操舵機構22の概略構成を示す模式図である。
【0061】
懸架装置16は、リーン機構161と、傾斜アクチュエータ162と、左サスペンション163Lと、右サスペンション163Rとを含む。以下、これらについて説明する。
【0062】
リーン機構161は、パラレログラムリンク方式のリーン機構である。リーン機構161は、上アーム1611と、下アーム1612と、左部材1613と、右部材1614とを含む。
【0063】
上アーム1611及び下アーム1612は、それぞれ、車体前後方向fbに延びる回転中心軸線回りに回転可能な状態で、車体フレーム121に支持されている。上アーム1611及び下アーム1612は、それぞれ、車体フレーム121が有するヘッドパイプ1211に対して回転可能に接続されている。
【0064】
左部材1613は、車体前後方向fbに延びる回転中心軸線回りに回転可能な状態で、上アーム1611及び下アーム1612の各々の左端部に支持されている。つまり、左部材1613は、上アーム1611及び下アーム1612のうち各々の回転中心軸線(ヘッドパイプ1211に対する回転中心軸線)よりも左に位置する部分に対して回転可能に接続されている。左部材1613の下端部には、ブラケットを介して、左サスペンション163Lが接続されている。左サスペンション163Lは、車体上下方向udに伸縮可能である。左サスペンション163Lには、左前操舵輪14FLが回転可能に接続されている。
【0065】
右部材1614は、車体前後方向fbに延びる回転中心軸線回りに回転可能な状態で、上アーム1611及び下アーム1612の各々の右端部に支持されている。つまり、右部材1614は、上アーム1611及び下アーム1612のうち各々の回転中心軸線(ヘッドパイプ1211に対する回転中心軸線)よりも右に位置する部分に対して回転可能に接続されている。右部材1614の下端部には、ブラケットを介して、右サスペンション163Rが接続されている。右サスペンション163Lは、車体上下方向udに伸縮可能である。右サスペンション163Rには、右前操舵輪14FRが回転可能に接続されている。
【0066】
上記のように、上アーム1611及び下アーム1612のうち各々の回転中心軸線よりも左に位置する部分には、左部材1613及び左サスペンション163Lを介して、左前操舵輪14FLが回転可能に接続されている。また、上アーム1611及び下アーム1612のうち各々の回転中心軸線よりも右に位置する部分には、右部材1614及び右サスペンション163Rを介して、右前操舵輪14FRが回転可能に接続されている。これにより、上アーム1611及び下アーム1612が各々の回転中心軸線回りに回転すると、左前操舵輪14FL及び右前操舵輪14FRの車体フレーム121に対する車体上下方向udの相対位置が変化する。左前操舵輪14FL及び右前操舵輪14FRの車体フレーム121に対する車体上下方向udの相対位置が変化すると、車体フレーム121が車両左右方向LRに傾斜する。つまり、上アーム1611及び下アーム1612の車体フレーム121に対する回転を制御することにより、車体フレーム121の車両左方向L又は車両右方向Rへの傾斜(すなわち、傾斜角度)を制御することができる。
【0067】
傾斜アクチュエータ162は、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作に応じて、上アーム1611及び下アーム1612の何れかを車体フレーム12(より具体的には、ヘッドパイプ1211)に対して回転させる。傾斜アクチュエータ162は、例えば、上アーム1611及び下アーム1612の何れかに対して機械的に接続された出力部材を正方向及び逆方向に回転可能な電気モータである。出力部材は、例えば、電気モータのロータに設けられた出力軸である。傾斜アクチュエータ162の制御には、例えば、傾斜アクチュエータ162の出力部材の位置を制御する位置制御が用いられる。
【0068】
傾斜アクチュエータ162の出力が上アーム1611及び下アーム1612の何れかに伝達されることにより、上アーム1611及び下アーム1612の何れかが車体フレーム12(より具体的には、ヘッドパイプ1211)に対して回転する。これにより、左前操舵輪14FL及び右前操舵輪14FRの車体フレーム121に対する車体上下方向udの相対位置が変化する。その結果、車体フレーム121が車両左方向L又は車両右方向Rに傾斜する。つまり、傾斜車体12が車両左方向L又は車両右方向Rに傾斜する。
【0069】
具体的には、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作が傾斜車両10を車両左方向Lに旋回させるための旋回操作である場合、傾斜アクチュエータ162は上アーム1611及び下アーム1612の何れかを車体フレーム12(より具体的には、ヘッドパイプ1211)に対して第1回転方向に回転させる。これにより、左前操舵輪14FL及び右前操舵輪14FRの車体フレーム121に対する車体上下方向udの相対位置が変化し、左前輪14FLが車体上下方向udにおいて右前輪14FRよりも上方に位置する。その結果、車体フレーム121、つまり、傾斜車体12が車両左方向Lに傾斜する。
【0070】
また、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作が傾斜車両10を車両右方向Rに旋回させるための旋回操作である場合、傾斜アクチュエータ162は上アーム1611及び下アーム1612の何れかを車体フレーム12(より具体的には、ヘッドパイプ1211)に対して第2回転方向(第1回転方向とは逆方向)に回転させる。これにより、左前操舵輪14FL及び右前操舵輪14FRの車体フレーム121に対する車体上下方向udの相対位置が変化し、右前輪14FRが車体上下方向udにおいて左前輪14FLよりも上方に位置する。その結果、車体フレーム121、つまり、傾斜車体12が車両右方向Rに傾斜する。
【0071】
上述の説明から明らかなように、傾斜アクチュエータ162は、2つの前操舵輪14Fを傾斜車体12とともに車両左方向L又は車両右方向Rに傾斜させる。また、1つの後輪14Rは車体フレーム121に支持されているので、傾斜アクチュエータ162が2つの前操舵輪14Fを傾斜車体12とともに車両左方向L又は車両右方向Rに傾斜させる際に、1つの後輪14Rは2つの前操舵輪14及び傾斜車体12とともに車両左方向L又は車両右方向Rに傾斜する。つまり、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作が傾斜車両10を車両左方向Lに旋回させるための旋回操作である場合、傾斜アクチュエータ162は、傾斜車体12、2つの前輪14及び1つの後輪14Rを車両左方向Lに傾斜させる。旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作が傾斜車両10を車両右方向Rに旋回させるための旋回操作である場合、傾斜アクチュエータ162は、傾斜車体12、2つの前輪14及び1つの後輪14Rを車両右方向Rに傾斜させる。
【0072】
図1を参照して、操舵機構22について説明する。操舵機構22は、2つの前操舵輪14Fに対して操舵軸線CL1回りのトルクを付与する。これにより、2つの前操舵輪14Fが操舵軸線CL1回りに揺動する。操舵機構22による2つの前操舵輪14Fへのトルク付与は、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作に基づいて行われる。
【0073】
図2を参照しながら、操舵機構22について説明する。操舵機構22は、操舵アクチュエータ221と、ステアリングシャフト222と、タイロッド223とを含む。
【0074】
操舵アクチュエータ221は、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作に応じて、ステアリングシャフト222を回転させる。操舵アクチュエータ221は、例えば、ステアリングシャフト222に対して機械的に接続された出力部材を回転させる。操舵アクチュエータ221は、例えば、ステアリングシャフト222に対して機械的に接続された出力部材を正方向及び逆方向に回転可能な電気モータである。出力部材は、例えば、電気モータのロータに設けられた出力軸である。操舵アクチュエータ221の制御には、例えば、操舵アクチュエータ221の出力トルクを制御するトルク制御が用いられる。
【0075】
ステアリングシャフト222は、車体フレーム121が有するヘッドパイプ1211に挿入された状態で配置されている。ステアリングシャフト222は、ヘッドパイプ1211に対して相対回転可能である。ステアリングシャフト222は、ハンドルバー181に対して機械的に接続されていない。つまり、ハンドルバー181に対する乗員の旋回操作がステアリングシャフト222に対して機械的に伝達されることはない。
【0076】
タイロッド223は、ステアリングシャフト222の回転を2つの前操舵輪14Fに伝達する。タイロッド223の中央部は、ステアリングシャフト222の下端部に対して機械的に接続されている。タイロッド223の左端部は、左サスペンション163Lに対して機械的に接続されている。タイロッド223の右端部は、右サスペンション163Rに対して機械的に接続されている。
【0077】
タイロッド223は、ステアリングシャフト222が回転するときに、その姿勢を維持しながら、ステアリングシャフト222が回転する方向に向かって移動する。このとき、タイロッド222の左端部の動きは、左サスペンション163Lを介して、左前操舵輪14FLに伝達される。これにより、左前操舵輪14FLが操舵軸線CL1回りに揺動する。同様に、タイロッド222の右端部の動きは、右サスペンション163Rを介して、右前操舵輪14FRに伝達される。これにより、右前操舵輪14FRが操舵軸線CL1回りに揺動する。
【0078】
操舵機構22は、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作に基づいて、2つの前操舵輪14Fに対して操舵軸線CL1回りのトルクを付与し、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動させる。
【0079】
具体的には、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作が傾斜車両10を車両左方向Lに旋回させるための旋回操作である場合、操舵アクチュエータ221は、ステアリングシャフト222を第3回転方向に回転させる。このとき、タイロッド223がステアリングシャフト222の回転を2つの前操舵輪14Fに伝達する。その結果、2つの前操舵輪14Fが操舵軸線CL1回りに回転する。2つの前操舵輪14Fが回転する方向は、傾斜車両10を車両左方向Lに旋回させる方向である。
【0080】
また、旋回操作入力装置18に入力されている旋回操作が傾斜車両10を車両右方向Rに旋回させるための旋回操作である場合、操舵アクチュエータ221は、ステアリングシャフト222を第4回転方向(第3回転方向とは逆方向)に回転させる。このとき、タイロッド223がステアリングシャフト222の回転を2つの前操舵輪14Fに伝達する。その結果、2つの前操舵輪14Fが操舵軸線CL1回りに回転する。2つの前操舵輪14Fが回転する方向は、傾斜車両10を車両右方向Rに旋回させる方向である。
【0081】
図1を参照して、上下方向加速度検出装置26は、車両上下方向UDまたは車体上下方向udの加速度(以下、単に上下方向加速度と称する)を検出する。具体的には、上下方向加速度検出装置26は、上下方向加速度検出装置26が取り付けられた部材の上下方向加速度を検出する。上下方向加速度検出装置26は、2つの前操舵輪14Fの一方(つまり、左前操舵輪14FLまたは右前操舵輪14FR)が路面の凹凸を通過するときに発生する上下方向加速度が検出されるように、傾斜車体12または懸架装置16に設けられている。上下方向加速度検出装置26は、例えば、一般的な加速度センサによって実現してもよいし、慣性計測装置(IMU)によって実現してもよい。上下方向加速度検出装置26は、検出した上下方向加速度を制御装置30に入力する。
【0082】
操舵制御装置としての制御装置30は、操舵機構22を制御する。制御装置30は、上下方向加速度検出装置26によって検出された上下方向加速度に基づいて、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態となるように制御する。
【0083】
制御装置30は、例えば、ECU(Electric Control Unit)である。ECUは、例えば、IC(Integrated Circuit)、電子部品、回路基板等の組み合わせによって実現される。
【0084】
制御装置30は、旋回操作指示値取得部31と、操舵機構制御部32と、上下方向加速度判定部33と、傾斜アクチュエータ制御部34とを含む。旋回操作指示値取得部31、操舵機構制御部32、上下方向加速度判定部33、及び、傾斜アクチュエータ制御部34は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が不揮発性のメモリに記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムに従って所定の処理を実行すること等によって実現される。
【0085】
旋回操作指示値取得部31は、旋回操作入力装置18が有する旋回操作検出装置182から入力されたハンドルバー181の操作量及び操作方向に基づいて、旋回操作指示値を取得する。旋回操作指示値は、乗員による旋回操作の内容を示している。旋回操作指示値は、傾斜車両10の旋回に際して傾斜アクチュエータ201及び操舵アクチュエータ221を制御するための指示値である。旋回操作指示値は、複数種類の指示値を含んでいてもよい。旋回操作指示値は、傾斜車両10が旋回しているときの傾斜車体12の傾斜状態を示す傾斜指示値と、傾斜車両10が旋回しているときの旋回方向及び旋回量を示す操舵指示値とを含む。旋回操作指示値取得部31は、傾斜指示値取得部311と、操舵指示値取得部312とを含む。
【0086】
傾斜指示値取得部311は、入力されたハンドルバー181の操作量及び操作方向に基づいて、傾斜車両10が旋回しているときの傾斜車体12の傾斜状態を示す傾斜指示値を取得する。傾斜指示値は、傾斜車両10の旋回に際して傾斜アクチュエータ201を制御するための指示値である。傾斜指示値は、例えば、傾斜車両10が旋回しているときの傾斜車体12の傾斜角度を示す。傾斜指示値取得部311による傾斜指示値の取得は、例えば、図示しないメモリに格納されている参照テーブルを用いて、入力されたハンドルバー181の操作量及び操作方向に対応する傾斜指示値を選択して取得することで実現される。
【0087】
操舵指示値取得部312は、入力されたハンドルバー181の操作量及び操作方向に基づいて、傾斜車両10が旋回しているときの旋回方向及び旋回量を示す操舵指示値を取得する。操舵指示値は、傾斜車両10の旋回に際して操舵アクチュエータ221を制御するための指示値である。操舵指示値は、例えば、操舵アクチュエータ221の出力トルクを示すトルク指示値を含む。操舵指示値取得部312による操舵指示値の取得は、例えば、図示しないメモリに格納されている参照テーブルを用いて、入力されたハンドルバー181の操作量及び操作方向に対応する操舵指示値を選択して取得することで実現される。
【0088】
操舵機構制御部32は、操舵機構22を制御する。操舵機構制御部32は、操舵アクチュエータ制御部321を含む。操舵アクチュエータ制御部321は、操舵指示値に基づいて、操舵アクチュエータ221を制御する。操舵アクチュエータ制御部321は、前操舵輪揺動自在制御部3211を含む。前操舵輪揺動自在制御部3211は、上下方向加速度検出装置26によって検出された上下方向加速度の絶対値が所定の基準絶対値以上であると上下方向加速度判定部33が判定した場合に、操舵アクチュエータ221をゼロトルク制御して、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態にする。
【0089】
上下方向加速度判定部33は、上下方向加速度検出装置26が上下方向加速度を検出したか否かを判定する。当該判定は、例えば、上下方向加速度検出装置26によって検出された上下方向加速度が上下方向加速度判定部33に入力されたか否かに基づいて行われる。
【0090】
上下方向加速度判定部33は、上下方向加速度検出装置26によって検出された上下方向加速度の絶対値が、所定の基準絶対値と比べて、大きいか否かを判定する。ここで、所定の基準絶対値は、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態にするか否かを判断するための基準を示す。所定の基準絶対値は、例えば、図示しないメモリに格納されている。
【0091】
傾斜アクチュエータ制御部34は、傾斜指示値取得部311が取得した傾斜指示値に基づいて、傾斜アクチュエータ162を制御する。
【0092】
続いて、図3を参照しながら、制御装置30が実行する前操舵輪揺動自在制御について説明する。図3は、制御装置30が実行する前操舵輪揺動自在制御を示すフローチャートである。
【0093】
先ず、制御装置30は、ステップS11において、上下方向加速度検出装置26によって上下方向加速度が検出されたか否かを判定する。具体的には、上下方向加速度判定部33は、上下方向加速度検出装置26によって検出された上下方向加速度が制御装置30に入力されたか否かを判定する。
【0094】
上下方向加速度が入力されていない場合(S11:NO)、制御装置30は、前操舵輪揺動自在制御を終了する。
【0095】
上下方向加速度が入力された場合(S11:YES)、制御装置30は、ステップS12において、入力された上下方向加速度の絶対値が所定の基準絶対値以上であるか否かを判定する。具体的には、上下方向加速度判定部33は、入力された上下方向加速度の絶対値が所定の基準絶対値以上であるか否かを判定する。
【0096】
入力された上下方向加速度の絶対値が所定の基準絶対値よりも小さい場合(ステップS12:NO)、制御装置30は、前操舵輪揺動自在制御を終了する。
【0097】
入力された上下方向加速度の絶対値が所定の基準絶対値以上である場合(ステップS12:YES)、制御装置30は、ステップS13において、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在にする。具体的には、前操舵輪揺動自在制御部3211は、操舵アクチュエータ221をゼロトルク制御して、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態にする。その後、制御装置30は、前操舵輪揺動自在制御を終了する。
【0098】
傾斜車両10は、2つの前操舵輪14Fの何れかが路面の凹凸を通過するときに発生する上下方向加速度を検出することができる。そのため、例えば、2つの前操舵輪14Fの何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱(つまり、傾斜車体12が傾斜車両10の左右方向に一時的に傾くような外乱)を、傾斜車両10の乗員による操作に起因して傾斜車体12が傾斜車両10の左右方向に傾く外乱と区別することができる。したがって、傾斜車両10は、傾斜車体12が傾斜車両10の左右方向に一時的に傾くような外乱、例えば、2つの前操舵輪14Fの何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱を容易に検出することができる。
【0099】
また、傾斜車両10においては、傾斜車体12が傾斜車両10の左右方向に一時的に傾くような外乱(例えば、2つの前操舵輪14Fの何れかが路面の凹凸を通過することに起因して発生する外乱)を検出したときに、当該外乱の検出に用いた上下方向加速度の大きさに応じて、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態にすることができる。
【0100】
(変形例1)
図4を参照しながら、本発明の実施の形態の変形例1による傾斜車両10Aについて説明する。図4は、傾斜車両10Aの左側面図と傾斜車両10Aが備える制御装置30Aのブロック図とを併せて示す図面である。
【0101】
傾斜車両10Aは、傾斜車両10と比べて、車速検出装置27をさらに備える点で異なる。傾斜車両10Aは、傾斜車両10と比べて、制御装置30の代わりに、制御装置30Aを備える点で異なる。
【0102】
車速検出装置27は、傾斜車両10Aの走行速度である車速を検出する。車速検出装置27は、検出した傾斜車両10Aの車速を示す信号である車速信号を、制御装置30Aに入力する。
【0103】
制御装置30Aは、制御装置30と比べて、車速判定部35をさらに含む点で異なる。車速判定部35は、車速検出装置27によって検出された傾斜車両10Aの車速が、所定の基準車速と比べて、大きいか否かを判定する。ここで、所定の基準車速は、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態にするか否かを判断するための基準を示す。所定の基準車速は、例えば、図示しないメモリに格納されている。
【0104】
続いて、図5を参照しながら、制御装置30Aが実行する前操舵輪揺動自在制御について説明する。図5は、制御装置30Aが実行する前操舵輪揺動自在制御を示すフローチャートである。
【0105】
制御装置30Aが実行する前操舵輪揺動自在制御は、制御装置30が実行する前操舵輪揺動自在制御と比べて、ステップS12の処理とステップS13の処理との間で、ステップS121の処理を実行する点で異なる。ステップS121では、制御装置30Aは、傾斜車両10Aの車速が所定の基準車速以上であるか否かを判定する。具体的には、車速判定部35が、車速検出装置27によって検出された傾斜車両10Aの車速が所定の基準車速以上であるか否かを判定する。
【0106】
傾斜車両10Aの車速が所定の基準車速以上である場合(ステップS121:YES)、制御装置30Aは、ステップS13以降の処理を実行する。傾斜車両10Aの車速が所定の基準車速よりも小さい場合(ステップS121:NO)、制御装置30Aは、前操舵輪揺動自在制御を終了する。
【0107】
傾斜車両10Aにおいては、所定の基準車速以上で走行しているときに、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態にすることができる。
【0108】
(変形例2)
図6を参照しながら、本発明の実施の形態の変形例2による傾斜車両10Bについて説明する。図6は、傾斜車両10Bの左側面図と傾斜車両10Bが備える制御装置30Bのブロック図とを併せて示す図面である。
【0109】
傾斜車両10Bは、傾斜車両10と比べて、車速検出装置27をさらに備える点で異なる。なお、車速検出装置27は、傾斜車両10Aが備えるものと同じであるから、その詳細な説明は省略する。
【0110】
傾斜車両10Bは、傾斜車両10と比べて、制御装置30の代わりに、制御装置30Bを備える点で異なる。制御装置30Bは、制御装置30と比べて、旋回走行判定部36をさらに含む点で異なる。
【0111】
旋回走行判定部36は、傾斜車両10Aが旋回しながら走行している状態であるか否かを判定する。具体的には、旋回走行判定部36は、傾斜アクチュエータ制御部34が傾斜アクチュエータ162を制御していることを示す制御信号が旋回走行判定部36に入力されている状態で、且つ、車速検出装置27によって検出された傾斜車両10Bの車速を示す信号である車速信号が旋回走行判定部36に入力されている状態であるか否かを判定する。
【0112】
制御装置30Bは、傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態で、上下方向加速度検出装置26によって検出された上下方向加速度に基づいて、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在な状態となるように制御する。
【0113】
続いて、図7を参照しながら、制御装置30Bが実行する前操舵輪揺動自在制御について説明する。図7は、制御装置30Bが実行する前操舵輪揺動自在制御を示すフローチャートである。
【0114】
制御装置30Bが実行する前操舵輪揺動自在制御は、制御装置30が実行する前操舵輪揺動自在制御と比べて、ステップS12の処理とステップS13の処理との間で、ステップS122の処理を実行する点で異なる。ステップS122では、制御装置30Bは、傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態であるか否かを判定する。
【0115】
具体的には、旋回走行判定部36は、傾斜アクチュエータ制御部34が傾斜アクチュエータ162を制御していることを示す制御信号が旋回走行判定部36に入力されている状態で、且つ、車速検出装置27によって検出された傾斜車両10Bの車速を示す信号である車速信号が旋回走行判定部36に入力されている状態である場合に、傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態であると判定する。一方、旋回走行判定部36は、以下の(1)、(2)及び(3)の場合には、傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態ではないと判定する。
【0116】
(1)旋回走行判定部36は、傾斜アクチュエータ制御部34が傾斜アクチュエータ162を制御していることを示す制御信号が旋回走行判定部36に入力されていない状態で、且つ、車速検出装置27によって検出された傾斜車両10Bの車速を示す信号である車速信号が旋回走行判定部36に入力されている状態である場合に、傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態ではないと判定する。
(2)旋回走行判定部36は、傾斜アクチュエータ制御部34が傾斜アクチュエータ162を制御していることを示す制御信号が旋回走行判定部36に入力されている状態で、且つ、車速検出装置27によって検出された傾斜車両10Bの車速を示す信号である車速信号が旋回走行判定部36に入力されていない状態である場合に、傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態ではないと判定する。
(3)旋回走行判定部36は、傾斜アクチュエータ制御部34が傾斜アクチュエータ162を制御していることを示す制御信号が旋回走行判定部36に入力されていない状態で、且つ、車速検出装置27によって検出された傾斜車両10Bの車速を示す信号である車速信号が旋回走行判定部36に入力されていない状態である場合に、傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態ではないと判定する。
【0117】
傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態である場合(ステップS122:YES)、制御装置30Bは、ステップS13以降の処理を実行する。傾斜車両10Bが旋回しながら走行している状態ではない場合(ステップS122:NO)、制御装置30Bは、前操舵輪揺動自在制御を終了する。
【0118】
傾斜車両10Bにおいては、傾斜車両10Bが旋回しながら走行しているときに、2つの前操舵輪14Fの何れかが路面の凹凸を通過すると、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在にすることができる。つまり、傾斜車両10Bにおいては、傾斜車体12が傾斜していても、2つの前操舵輪14Fの何れかが路面の凹凸を通過する際に、2つの前操舵輪14Fを操舵軸線CL1回りに揺動自在にすることができる。
【0119】
(その他の実施形態)
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。
【0120】
当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【0121】
上記実施の形態において、傾斜車両10は、2つの前操舵輪14Fと1つの後輪14Rとを備える三輪車であるが、傾斜車両10は、例えば、1つの前操舵輪14Fと2つの後輪14Rとを備える三輪車であってもよいし、2つの前操舵輪14Fと2つの後輪14Rとを備える四輪車であってもよい。
【0122】
上記実施の形態において、乗員が操作可能な被操作部材はハンドルバー181によって実現されているが、被操作部材は、例えば、ステアリングホイールや、ジョグダイヤル、タッチパネル、押ボタン等であってもよい。
【0123】
上記実施の形態において、傾斜アクチュエータ162は、例えば、ラックアンドピニオンであってもよい。
【0124】
上記実施の形態において、操舵アクチュエータ221は、例えば、ラックアンドピニオンであってもよい。
【0125】
上記実施の形態では、リーン機構161がパラレログラムリンク方式であるが、例えば、ダブルウィッシュボーン方式であってもよい。
【0126】
上記実施の形態の変形例2において、旋回走行判定部36は、例えば、傾斜車両10Bが傾斜車体12の車両左方向Lまたは車両右方向Rへの傾きを検出する傾斜角度検出装置をさらに備える場合、当該傾斜角度検出装置によって検出された傾斜角度を用いて傾斜車両10Bが旋回中であるか否かを判定してもよい。
【符号の説明】
【0127】
10 傾斜車両
12 傾斜車体
121 車体フレーム
1211 ヘッドパイプ
122 車体カバー
123 シート
14 車輪
14F 前操舵輪
14FL 前左操舵輪
14FR 前右操舵輪
14R 後輪
16 懸架装置
161 リーン機構
1611 上アーム
1612 下アーム
1613 左部材
1614 右部材
162 傾斜アクチュエータ
163L 左サスペンション
163R 右サスペンション
22 操舵機構
221 操舵アクチュエータ
222 ステアリングシャフト
223 タイロッド
26 上下方向加速度検出装置
27 車速検出装置
30 制御装置
32 操舵機構制御部
321 操舵アクチュエータ制御部
3211 前操舵輪揺動自在制御部
33 上下方向加速度判定部
35 車速判定部
36 旋回走行判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7