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  • 特開-車両の前部構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043371
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/34 20060101AFI20220309BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B60R19/34
B60R19/24 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018245743
(22)【出願日】2018-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】久保山 翼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 瞬
(72)【発明者】
【氏名】青木 美香
(57)【要約】
【課題】前突時にサイドメンバに発生するモーメントを抑えつつクラッシュボックスを安定して圧縮変形させ荷重吸収性能を向上させる車両の前部構造を提供する。
【解決手段】車両のサイドメンバ3の前端部と、サイドメンバ3に対して下方にオフセットして配置されたフロントバンパビーム2とを車両前後方向に延びて接続するクラッシュボックス1を有する車両の前部構造であって、クラッシュボックス1の上壁5は車両前方に向かって下方に傾斜し、クラッシュボックス1の下壁6はサイドメンバ3の下壁より下方に位置して水平方向に延び、クラッシュボックス1の下壁6に車幅方向に延び車両後方側の部位よりも車両前方側の部位が上方に位置する段差10を設けた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向の両側で車両前後方向に延びるサイドメンバと、前記サイドメンバの車両前方で車幅方向に延び、前記サイドメンバに対して車両上下方向一方側にオフセットして配置されるフロントバンパビームと、車両前後方向に延びて前記サイドメンバと前記フロントバンパビームとを接続するクラッシュボックスと、を有する車両の前部構造であって、
前記クラッシュボックスの前記一方側の壁部が、前記サイドメンバの前記一方側の壁部より前記一方側に位置し、
前記クラッシュボックスの前記一方側の壁部に、車幅方向に延びる段差を備えたことを特徴とする車両の前部構造。
【請求項2】
前記フロントバンパビームの端部は、車幅方向外側へ向かうにつれて車両後方に傾斜した傾斜部を有し、
前記クラッシュボックスは、前記傾斜部に接続されており、
前記クラッシュボックスの車幅方向内側の側壁に、前記段差より車両前方側の位置で上下方向に延びる第1のビードを備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部に、車幅方向に延びる第2のビードを備え、
前記第2のビードは、前記第1のビードと車両前後方向で同一の位置に設けられることを特徴とする請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記第2のビードは、前記第1のビードと連続して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
前記クラッシュボックスの前記一方側の壁部に、当該一方側の壁部の後端から前記段差よりも車両後方の位置まで車両前方に延びる第3のビードを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【請求項6】
前記フロントバンパビームの後方には、前端が前記サイドメンバの前端より前方に位置する車載機器が設けられ、
前記第3のビードの前端は、前記車載機器の前端よりも前方に位置することを特徴とする請求項5に記載の車両の前部構造。
【請求項7】
前記クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部には、前記第3のビードの前端と車両前後方向で同一の位置に、車幅方向に延びる第4のビードが備えられたことを特徴とする請求項6に記載の車両の前部構造。
【請求項8】
前記第4のビードは、前記クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部に設けられた、前記段差より車両前方側の位置で車幅方向に延びる第2のビードと逆方向に突出していることを特徴とする請求項7に記載の車両の前部構造。
【請求項9】
前記クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部は、車両前方側へ向かうにつれて前記一方側に傾斜しており、前記一方側の壁部は水平に延びている、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関し、衝突時における衝撃吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の衝突時に発生する衝撃荷重を吸収するために、フロントバンパビームをサイドメンバの前端にクラッシュボックスを介して設ける構成が知られている。このような構成では、車両の衝突により衝撃を受けた場合にはクラッシュボックスが圧縮するように変形して衝撃を吸収する構造となっている。
ところで、SUV車のように車高の高い車両では、サイドメンバに対してフロントバンパビームを下方に配置することがある。このように、サイドメンバとフロントバンパビームの高さが異なる場合、特許文献1のようにクラッシュボックスを上下方向に傾斜させる構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-30624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような技術の他、サイドメンバに対してクラッシュボックスを上下方向にオフセットさせることで、フロントバンパビームとサイドメンバの高さを異ならせる方法が考えられるが、この場合、サイドメンバとクラッシュボックスの位置がずれているため、フロントバンパビームに衝突荷重が作用した際に、サイドメンバに対してサイドメンバの前端部が持ち上がるようなモーメントが発生し、サイドメンバがクラッシュボックスより先に変形し、サイドメンバによるエネルギー吸収効率が悪化する虞がある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、サイドメンバに対して上下方向にオフセットして配置されたクラッシュボックスを有する車両において、前突時にサイドメンバに発生するモーメントを抑えつつクラッシュボックスを安定して圧縮変形させ荷重吸収性能を向上させる車両の前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、車幅方向の両側で車両前後方向に延びるサイドメンバと、前記サイドメンバの車両前方で車幅方向に延び、前記サイドメンバに対して車両上下方向一方側にオフセットして配置されるフロントバンパビームと、車両前後方向に延びて前記サイドメンバと前記フロントバンパビームとを接続するクラッシュボックスと、を有する車両の前部構造であって、前記クラッシュボックスの前記一方側の壁部が、前記サイドメンバの前記一方側の壁部より前記一方側に位置し、前記クラッシュボックスの前記一方側の壁部に、車幅方向に延びる段差を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、車両前突時のように、フロントバンパビームが後方に荷重を受けてクラッシュボックスが変形して荷重を吸収する際に、クラッシュボックスの一方側の壁部が他方側の壁部に向かって大きく上下方向に屈曲するような変形を抑制して、クラッシュボックスを安定して後方に圧縮変形させることができる。
好ましくは、フロントバンパビームの端部は、車幅方向外側へ向かうにつれて車両後方に傾斜した傾斜部を有し、クラッシュボックスは、前記傾斜部に接続されており、クラッシュボックスの車幅方向内側の側壁に、段差より車両前方側の位置で上下方向に延びる第1のビードを備えるとよい。
【0008】
これにより、車両前突時のように、フロントバンパビームが後方に荷重を受けた際に、段差より前に位置する第1のビードの位置でクラッシュボックスの車幅方向内側の側壁を変形させる。これにより、クラッシュボックスの左右の側壁の長さが異なっていても、クラッシュボックスが左右に傾かないように圧縮変形させることができる。
好ましくは、クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部に、車幅方向に延びる第2のビードを備え、前記第2のビードは、第1のビードと車両前後方向で同一の位置に設けられるとよい。
【0009】
これにより、側壁に形成された第1のビードと、車両上下方向他方側の壁部に形成された第2のビードによって、クラッシュボックスの変形位置を安定させることができる。
好ましくは、第2のビードは、第1のビードと連続して形成されているとよい
これにより、フロントバンパビームが後方に荷重を受けた際に、互いに同一の前後位置にある第1のビードと第2のビードによって、クラッシュボックスの変形位置を安定させることができる。また、第1のビードと第2のビードが、側壁と車両上下方向他方側の壁部との間の稜線部を横切るように形成されるので、稜線部において変形し易くし、クラッシュボックスの変形位置を第1のビードの前後位置でより安定させることができる。
【0010】
好ましくは、クラッシュボックスの一方側の壁部に、当該一方側の壁部の後端から段差よりも車両後方の位置まで車両前方に延びる第3のビードを備えるとよい。
これにより、第3のビードが設けられるクラッシュボックスの後部が、第3のビードが設けられない前部よりも潰れにくくなる。したがって、軽衝突時において、第3のビードの前端より後方を保護することができる。
【0011】
好ましくは、フロントバンパビームの後方には、前端がサイドメンバの前端より前方に位置する車載機器が設けられ、第3のビードの前端は、前記車載機器の前端よりも前方に位置するとよい。
これにより、軽衝突時において、クラッシュボックスの前部が潰れても第3のビードが設けられる部位は潰れにくく、車載機器を保護することができる。
【0012】
好ましくは、クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部には、第3のビードの前端と車両前後方向で同一の位置に、車幅方向に延びる第4のビードが備えられるとよい。
これにより、軽衝突時において、クラッシュボックスの上壁と下壁を第3のビードの前端部及び第4のビードの前後位置まで安定した形状で圧縮変形させることができ、第4のビードより後方の部位の変形を抑制することができる。
【0013】
好ましくは、第4のビードは、クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部に設けられた、段差より車両前方側の位置で車幅方向に延びる第2のビードと逆方向に突出しているとよい。
これにより、前突時にクラッシュボックスが第4のビードまで潰れた際に、第2のビード及び第4のビードが設けられている車両上下方向他方側の壁部が、上下方向に互い違いに変形して潰れるので、当該壁部が上下方向の一方に大きく曲がることを抑制し、モーメントの発生を抑制することができる。
【0014】
好ましくは、クラッシュボックスの車両上下方向他方側の壁部は、車両前方側へ向かうにつれて一方側に傾斜しており、一方側の壁部は水平に延びているとよい。
これにより、車両前突時のように、フロントバンパビームが後方に荷重を受けてクラッシュボックスが変形して荷重を吸収する際に、クラッシュボックスが大きく上下方向に屈曲するような変形を抑制して、クラッシュボックスを安定して後方に圧縮変形させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両の前部構造によれば、サイドメンバに対して車両上下方向一方側にオフセットして配置されたフロントバンパビームが後方に向けて荷重を受けても、クラッシュボックスを安定して後方に圧縮変形させることができるので、クラッシュボックスによる荷重吸収性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の車両の前部構造を示す斜視図である。
図2】本実施形態の車両の前部構造を示す側面図である。
図3】本実施形態における段差による効果の説明図であり、車両の前部構造の側面図である。
図4】本実施形態における第1のビード及び第2のビードによる効果の説明図であり、車両の前部構造の上面図である。
図5】本実施形態における第3のビードによる効果の説明図であり、車両の前部構造の斜視図である。
図6】本実施形態における第4のビードによる効果の説明図であり、車両の前部構造の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態の車両の前部構造を示す斜視図である。図2は、本実施形態の車両の前部構造を示す側面図である。なお、図1及び図2は、車両の前左部におけるクラッシュボックス1及びフロントバンパビーム2を図示している。また、図2は、クラッシュボックス1の右方のわずかに下方の位置からクラッシュボックス1付近を視た図である。
【0018】
図1、2に示すように、車両の車幅方向両側において車両前後方向に延在するサイドメンバ3の前端部には、クラッシュボックス1がボルト等によって締結されている。クラッシュボックス1は、内部に空間を有する筒状の部材であり、車幅方向両側のクラッシュボックス1の先端を繋ぐように車幅方向に延びるフロントバンパビーム2が設けられている。フロントバンパビーム2の車幅方向両端部は、車幅方向端部外側に向うにつれて後方に傾斜した傾斜部2aを有している。
【0019】
なお、図面においては、車両左方のサイドメンバ3及びクラッシュボックス1を示しているが、図示しない車両右方のサイドメンバ及びクラッシュボックス1も左右対称の形状(すなわち「左」と「右」を置き換えた形状)となっているため、以下、車両左方の構造のみを説明する。)
本実施形態では、クラッシュボックス1は、車両前方に向かって下方に傾斜した上壁5(車両上下方向他方側の壁部)と、略水平方向に延びる下壁6(車両上下方向一方側の壁部)と、上下方向に延びる左右の側壁7、8を備えており、縦断面が矩形、側面視が台形状になっている。
【0020】
クラッシュボックス1の後端は、サイドメンバ3の前端で車両上下方向に延びるランプサポート9に接続されており、上壁5の後端がランプサポート9のサイドメンバ3の上端部に対向する箇所に、下壁6がランプサポート9のサイドメンバ3の下壁よりも下方に位置する箇所に接続されている。なお、ランプサポート9の下端は、図示しないサブフレームに接続されている。
【0021】
また、クラッシュボックス1の前端は、フロントバンパビーム2の端部の傾斜部2aに接続されており、クラッシュボックス1の車幅方向内側に位置する側壁7は、車幅方向外側に位置する側壁8に対し、車両前方まで延在している。
上記のように、クラッシュボックス1はフロントバンパビーム2とサイドメンバ3とを、本実施形態ではランプサポート9を介して、接続している。
【0022】
図5に示すように、フロントバンパビーム2の後方には車載機器、例えばラジエータ20がフロントバンパビーム2の後方(後面と対向する位置)に前後方向に間隔をおいて配置されている。ラジエータ20は、その前端がサイドメンバ3の前端より前方に位置している。
なお、本実施形態では、SUV車のように車高が高い車両を想定しており、サイドメンバ3が比較的高い位置に配置されている。一方、フロントバンパビーム2の上下位置は、例えば車高の低い車両と衝突した際に、衝突荷重をフロントバンパビーム2で受けることができるよう、サイドメンバ3の上下位置よりも下方にオフセットした位置、すなわちフロントバンパビーム2の下端がサイドメンバ3の下壁よりも下方に位置するように配置されている。したがって、サイドメンバ3とフロントバンパビーム2とを接続するクラッシュボックス1は、上記のようにサイドメンバ3に対して下方にオフセット(下壁6がサイドメンバ3より下方に位置)している。なお、ここで言うクラッシュボックス1がサイドメンバ3に対してオフセットしているとは、クラッシュボックス1の後端がサイドメンバ3の前端に対してオフセットしていることを言う。
【0023】
本実施形態のクラッシュボックス1は、下壁6に段差10を備えるとともに、上壁5に第1のビード11、車幅方向内側の右側壁7に第2のビード14、下壁6に第3のビード12、上壁5に第4のビード13を備えている。
段差10は、下壁6の前後方向中間部に設けられ、下壁6を車幅方向全域に亘って延びるように形成されている。本実施形態では、段差10は、車幅方向外側の側壁8の前端より若干後方に位置している。下壁6は、段差10の車両後方側の部位よりも車両前方側の部位が例えば数mm~数cm程度上方に位置するように形成されている。
【0024】
第1のビード11及び第2のビード14は、段差10よりも車両前方に形成されており、上壁5及び車幅方向内側の側壁7を例えば数mm~数cm程度外方に突出させた凸型のビードである。第1のビード11は、クラッシュボックス1の側壁7において上下方向全域に延び、第2のビード14は上壁5において車幅方向全域に延びている。第1のビード11は、クラッシュボックス1の車幅方向内側に位置する側壁7の、車幅方向外側に位置する側壁8の前端よりも車両前方の箇所に位置している。第2のビード14は、上壁5の車両前後方向において第1のビード11と同一の箇所に位置している。また、第1のビード11と第2のビード14は、互いに連続するように形成されており、上壁5と側壁7の間の稜線部15においても外方に突出している。
【0025】
第3のビード12は、下壁6においてクラッシュボックス1の後端部、即ちサイドメンバ3との接続位置から車両前方に延び例えば数mm~数cm程度下方に突出した凸型のビードである。第3のビード12は、下壁6に車幅方向に間隔をおいて2つ設けられ、段差10よりも車両後方の位置まで延びている。また、第3のビード12の前端は、ラジエータ20よりも前方に位置している。
【0026】
第4のビード13は、上壁5に設けられ、第3のビード12の先端と略同一の車両前後方向の位置で車幅方向全域に延び、例えば数mm~数cm程度内方(下方)に凹む凹型のビードである。また、第4のビード13は、上壁5と右側壁7の間の稜線部15、及び上壁5と左側壁8の間の稜線部16においても内方に凹むように形成されている。
次に、図3~6を用いて、クラッシュボックス1に設けた段差10、第1のビード11、第2のビード14、第3のビード12、第4のビード13の効果について説明する。なお、図3~5において、左側の図が衝突荷重を受けていない状態、右側の図が前方より衝突荷重を受けた状態を示している。また、図6も、前方より衝突荷重を受けた状態を示している。
【0027】
本実施形態のように上下位置が異なるサイドメンバ3とフロントバンパビーム2とを接続するクラッシュボックス1が、サイドメンバ3に対して下方にオフセットしている場合には、前突時のようにフロントバンパビーム2に車両後方に向けて衝突荷重が作用した際に、クラッシュボックス1がサイドメンバ3の下方に潜りこむように押圧されることによって、サイドメンバ3の前端部を上方に持ち上げるようなモーメントを与えてしまう虞がある。このように、サイドメンバ3にモーメントが作用するとサイドメンバ3の荷重吸収性能が低下してしまう。
【0028】
しかしながら図3に示すように、本実施形態ではクラッシュボックス1の下壁6に段差10を設けることで、フロントバンパビーム2に後方に衝突荷重が作用した場合に、当該段差10によってクラッシュボックス1の下壁6が潰れ、クラッシュボックス1の下部からサイドメンバ3に伝達する衝突荷重が吸収されるため、サイドメンバ3の前端部を上方に持ち上げるようなモーメントの発生を抑えることができる。
【0029】
なお、クラッシュボックス1の下壁に段差10ではなく、車幅方向に延びるビードを設けることが考えられる。このように下壁6に車幅方向に延びるビードを備えることで、前突時にこのビードの位置でクラッシュボックス1の下壁6が潰れて、クラッシュボックス1の下部からサイドメンバ3に伝達する衝突荷重を吸収するものの、ビードの位置でクラッシュボックス1の下壁6が凸変形を起こし、サイドメンバ3の前端部を上方に持ち上げるようなモーメントが発生してしまうため、ビードではなく段差としている。
【0030】
また、段差10を、下壁6の段差10より車両前方側の部位が車両後方側の部位よりも上方に位置するように形成することにより、クラッシュボックス1の段差10より車両前方側の断面積が車両後方側の断面積より小さくなるので、クラッシュボックス1をより確実に前方から潰すことができ、クラッシュボックス1の変形を安定させることができる。
図4に示すように、フロントバンパビーム2の端部は、車幅方向外側に向かって後方に傾斜した形状になっており、クラッシュボックス1の側壁7、8は、車幅方向外側が短く、車幅方向内側が長く形成されている。したがって、フロントバンパビーム2に対し車両後方に衝突荷重が作用した場合、クラッシュボックス1の段差10に車幅方向に傾いた衝突荷重が入力されてしまい、クラッシュボックス1が前後方向に安定して圧縮変形せずに荷重を十分に吸収することが困難になる虞がある。
【0031】
本実施形態では、クラッシュボックス1の車幅方向内側の側壁7の段差10よりも前方の箇所に第1のビード11を設けることで、前突時に段差10より前で側壁7を変形させて、段差10に入力される衝突荷重が車幅方向に傾くことを抑制することができる。また、上壁5に第2のビード14を設けたので、前突時に第1のビード11及び第2のビード14により上壁5及び側壁7、8が左右の長さが略同一になるまで潰れるようになる。このとき、第2のビード14を段差10と平行に延ばすことにより、段差10に入力される衝突荷重が車幅方向に傾くことをより抑制することができる。特に、第1のビード11と第2のビード14を連結させ、上壁5と側壁7との間の稜線部15にもビードが亘って設けられるので、この稜線部15を安定して変形させることができる。
【0032】
図5に示すように、クラッシュボックス1の下壁6に車両前後方向に延びる第3のビード12が設けられることで大きな衝突荷重が入力された際に、クラッシュボックス1の下壁6の後部が折れるように変形することを抑制し、サイドメンバ3の前端部を上方に持ち上げるようなモーメントの発生を抑えることができる。
なお、図5に示すように、第3のビード12がラジエータ20より前方まで延びているので、軽衝突時において第3のビード12が設けられた部位が後方に潰れにくくなり、ラジエータ20等の車載機器を破損させてしまうことを回避することができる。
【0033】
また、図6に示すように、クラッシュボックス1の上壁5に左右方向に延びる第4のビード13を、第3のビード12の前端部と略同一の前後位置に設けたので、軽衝突時にクラッシュボックス1の下壁6が第3のビード12の前端部まで潰れた際に、上壁5を第4のビード13の位置で積極的に変形させ、第4のビード13よりも後方の箇所が潰れることを抑制することができる。これにより、軽衝突時に第4のビード13より後方の部位の変形を更に抑制し、ラジエータ20等の車載機器を破損させてしまうことを回避することができる。
【0034】
また、クラッシュボックス1の上壁5に設けられた第2のビード14は凸型のビードであり、第4のビード13は凹型のビードであって、互いに逆方向に突出している。これにより、前突時にクラッシュボックス1の上壁5が上下方向に互い違いに変形して潰れるので、クラッシュボックス1の変形をより安定させることができる。
本願発明は、上記実施形態に限定するものではない。例えば、上記の段差10、第1のビード11、第2のビード14、第3のビード12、第4のビード13については、少なくとも段差10が設けられていればビード11、12、13、14については、適宜採用してよい。また、上記実施形態では、サイドメンバ3に対しフロントバンパビーム2が下方に位置し、クラッシュボックス1がサイドメンバ3に対し下方にオフセットしているが、サイドメンバ3に対しフロントバンパビーム2が上方に位置し、クラッシュボックス1をサイドメンバ3に対し上方にオフセットさせる(上壁5をサイドメンバ3の上端より上方に位置させる)場合には、上記実施形態に対して上下を逆転させてクラッシュボックス1に段差10や各ビード11、12、13、14を形成すればよい。
【0035】
本発明は、側面視で台形状になっているクラッシュボックスとしているが、側面視で矩形のクラッシュボックスに適用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 クラッシュボックス
2 フロントバンパビーム
2a 傾斜部
3 サイドメンバ
5 上壁
7 側壁
6 下壁
10 段差
10 段差
11 第1のビード
12 第3のビード
13 第4のビード
14 第2のビード
20 ラジエータ(車載機器)
図1
図2
図3
図4
図5
図6