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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043415
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】検査路
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20220309BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148671
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】592180225
【氏名又は名称】株式会社楢崎製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】特許業務法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 公利
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA16
2D059AA21
2D059EE01
2D059GG01
2D059GG21
2D059GG39
(57)【要約】
【課題】材質に高強度、高耐食性のステンレス鋼板を強度部材に利用することで、耐久性および厳しい環境下でもライフサイクルコストを大幅に削減でき、しかも強度を高め、また、爪先板を歩廊桁の強度補強材としても利用することで、歩廊の厚みを薄型にでき、検査時の作業空間を広く使用する。
【解決手段】検査するときに人が通路として用いる歩廊2と、歩廊2の両側それぞれを長手方向に支持する歩廊桁3と、歩廊桁3に、その長手方向に沿って一体的に配置された爪先板4と、歩廊桁3に、所定間隔を開けて取り付けられた手摺り支柱5と、手摺り支柱5に、その長手方向に沿って取り付けられた手摺り6と、を備えた検査路1である。道路や鉄道等の橋梁の保守点検の際に、橋梁の下面などの状態を検査するときに用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路や鉄道等の橋梁の保守点検の際に、橋梁の下面などの状態を検査するときに用いる検査路(1)であって、
検査するときに人が通路として用いる歩廊(2)と、
前記歩廊(2)の両側それぞれを長手方向に支持する歩廊桁(3)と、
前記歩廊桁(3)に、その長手方向に沿って一体的に配置された爪先板(4)と、
前記歩廊桁(3)に、所定間隔を開けて取り付けられた手摺り支柱(5)と、
前記手摺り支柱(5)に、その長手方向に沿って取り付けられた手摺り(6)と、を備えた、ことを特徴とする検査路。
【請求項2】
前記歩廊桁(3)の上面の長手方向に、前記爪先板(4)の下辺全体が密着するように配置した、ことを特徴とする請求項1に記載された検査路。
【請求項3】
前記歩廊桁(3)に用いた山形鋼を逆L字形状に配置し、該歩廊桁(3)の上面に前記爪先板(4)の下辺が密着するように配置し、それぞれの両端を連結板(9)で連結固定した、ことを特徴とする請求項1又は2に記載された検査路。
【請求項4】
前記歩廊(2)、歩廊桁(3)、手摺り支柱(5)、手摺り(6)、爪先板(4)及び連結板(9)は、ステンレス鋼で製造された、ことを特徴とする請求項1、2又は3の何れかに記載された検査路。
【請求項5】
前記歩廊桁(3)に密着配置された複数の爪先板(4)について、
該爪先板(4)による歩廊桁(3)の補強効果を高めるために、該歩廊桁(3)の曲げモーメントが掛かる位置の爪先板(4)の板厚(d1)は、その隣接する爪先板(4)の板厚(d2)より厚いものを配置した、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4の何れかに記載された検査路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や鉄道等の橋梁の保守点検の際に、橋梁の上からは検査ができない、橋梁の下面などの状態を検査する際に、通路として用いる検査路に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁の腐食、劣化、疲労損傷は橋梁の重大な事故につながるおそれがあり、日々の検査、調査は重要な事項である。橋梁の検査の基本は外観調査であり、目視のみでなく可能な範囲で近接して、必要があれば検査員が手で直接触れて検査を行う。しかしながら、多くの橋梁は、近接確認できる範囲は限られており、検査設備がない場合は、交通規制を行い、検査車両や特殊車両などを使用した検査を実施するため、検査設備からの検査に比較して時間や費用が多くかかった。
【0003】
また、新たな検査設備を追加する場合、重機が使用できないなど施工上又は設計上においても橋梁の重量が増加した。そこで、橋梁の上からは検査ができない、下面などの状態を検査するときに、簡易な通路として用いる予め橋梁に取り付けられている検査路が提案されている。
【0004】
一般的な検査路51は、図6図7図8に示すように、検査する人が通路として用いる歩廊52と、この歩廊52の両側それぞれを長手方向に支持する歩廊桁53と、この歩廊桁53の上方に長手方向に沿って取り付けられた爪先板54と、歩廊桁53と爪先板54に取り付けられた連結板55、連結板55に取り付けられた手摺り支柱56とを備えている。従来の歩廊桁53は断面形状が溝形鋼(略コ字形状)の鋼材が主に用いられている。また、爪先板54は図8に示すように、歩廊52の上面からの高さを確保するために、歩廊桁53の上面から離して取り付けられている。
【0005】
検査路は、従来から種々の材質のもので製造されたものが提案されている。例えば、溶融亜鉛めっき処理を施した鋼鉄製の検査路が提案されている。またアルミニウム合金製の検査路が提案されている。アルミニウム合金製の検査路は、耐腐食性能に優れたアルミニウムを使うことで長期耐久性が大幅に改善されたものである。100年使用時にも取り換えが発生しないものがある。更に、FRP樹脂製(繊維強化プラスチック製)の検査路が提案されている。このFRP樹脂製の検査路は、軽量かつ耐食性に優れている。
【0006】
このように高速道路や鉄道等の橋梁の保守点検に用いられる樹脂製の検査路に関する技術が多数提案されている。例えば、特許文献1の特開2015-34394号「検査路」には、樹脂製の床版と、床版の両側辺に立設した樹脂製の高欄ユニットとを具備する検査路であって、前記高欄ユニットを構造部材となるようにトラス構造とし、構造部材である前記床版と構造部材である高欄ユニットとの間を、下弦材を介して接合した検査路が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-34394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の鋼鉄製の検査路51は、海岸などの厳しい環境下においては、めっきが剥がれやすく、早期に防食機能が劣化しやすいものであった。また、この検査路51は強度との関係から歩廊桁53が高く、検査時の作業空間が狭くなりやすかった。例えば一般的な歩廊厚は125~180mmあった。鉄鋼製の検査路は、取り換え期間が25年と短いものが多かった。その期間が経過して交換してスクラップとしたものをリサイクルする際に、リサイクル時の亜鉛蒸散や鋼中への亜鉛が残りやすかった。
【0009】
アルミニウム合金製の検査路は、アルミニウムの剛性は、鉄鋼やステンレスの1/3程度であり、撓みが大きくなりやすかった。そのため、歩廊桁が高く、検査時の作業空間が狭くなりやすかった。例えば一般的な歩廊厚は156~280mmあった。
FRP樹脂製の検査路は、紫外線により劣化しやすかった。しかもその劣化状態の把握が困難であった。このFRP樹脂はリサイクルが困難であるために、産業廃棄物として処理する必要があった。この検査路も強度との関係から歩廊桁が高く、検査時の作業空間が狭くなりやすかった。例えば一般的な歩廊厚は125mm以上あった。
このように、検査路の歩廊桁が高く(歩廊厚が厚く)なると、図6に示すように、橋梁の下面という限られた空間では相対的に歩廊の上面と橋梁の下面との間隔が短くなるという問題を有していた。
【0010】
高所に取り付ける検査路には、歩廊桁と手摺と共に爪先板(幅木)が重要な部材である。この爪先板がないと、その検査路を歩行中の検査員が、歩廊上においてつまづきや転倒により落下するおそれがあり大変危険である。また、検査路で検査している検査員が、検査に使用している検査機器、又はその部品が検査路に落下したときに、手摺の下部の隙間から落下するおそれがある、同様に作業中の工具なども落下しやすいという問題を有していた。
【0011】
爪先板は幅木と称され、所定の幅を有する板材である。これは、主に金属製のものが利用されている。15cmから20cm程度の幅を有する板材であるが、長尺の検査路に取り付けると相当な重量を有する、しかも、原則として検査路の両側に取り付ける必要があるので、更に重量が増すことになるという問題を有していた。
【0012】
本発明者は、爪先板は歩廊の両側縁にあって、上方へ立ち上げた形状になり、検査員が転倒した際の安全対策である。この爪先板は、何らかの引っ掛かりがあれば十分であること、また、部品、工具なども落下した際に飛び跳ねてもそれが飛び越えない程度の高さを有すれば十分であることに着目した。また、爪先板は金属素材を用いれば桁の強度を補強する機能があると考えた。即ち、従来の桁の重量を軽減して強度が低下してもこの爪先板はその強度を補強できることに着目した。
【0013】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、材質に高強度、高耐食性のステンレス鋼板を強度部材に利用することで、耐久性および厳しい環境下でもライフサイクルコストを大幅に削減でき、しかも強度を高め、また、爪先板を歩廊桁の強度補強材としても利用することで、歩廊の厚みを薄型にでき、検査時の作業空間を広く使用することができる検査路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、道路や鉄道等の橋梁の保守点検の際に、橋梁の下面などの状態を検査するときに用いる検査路(1)であって、
検査するときに人が通路として用いる歩廊(2)と、
前記歩廊(2)の両側それぞれを長手方向に支持する歩廊桁(3)と、
前記歩廊桁(3)に、その長手方向に沿って配置に形成された爪先板(4)と、
前記歩廊桁(3)に、所定間隔を開けて取り付けられた手摺り支柱(5)と、
前記手摺り支柱(5)に、その長手方向に沿って取り付けられた手摺り(6)と、を備えた、ことを特徴とする。
【0015】
前記歩廊桁(3)の上面の長手方向に、前記爪先板(4)の下辺全体が密着するように配置することができる。
前記歩廊桁(3)に用いた山形鋼を逆L字形状に配置し、該歩廊桁(3)の上面に前記爪先板(4)の下辺が密着するように配置し、それぞれの両端を連結板(9)で連結固定することが好ましい。
【0016】
前記歩廊(2)、歩廊桁(3)、手摺り支柱(5)、手摺り(6)、爪先板(4)及び連結板(9)は、ステンレス鋼で製造されたものである。
【0017】
前記歩廊桁(3)に密着配置された複数の爪先板(4)について、
該爪先板(4)による歩廊桁(3)の補強効果を高めるために、該歩廊桁(3)の曲げモーメントが掛かる位置の爪先板(4)の板厚(d1)は、その隣接する爪先板(4)の板厚(d2)より厚いものを配置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の検査路(1)では、歩廊(2)、歩廊桁(3)、手摺り支柱(5)、手摺り(6)、爪先板(4)及び連結板(9)を耐食性に優れたステンレス鋼を用いているので寿命が大幅に向上する。このステンレス鋼は、不働態被膜の自己修復機能があるので、めっき製品と異なり、表面が摩耗しても、耐食性が維持できる。従来の溶融亜鉛メッキ製の検査路と比較して寿命(交換時期)が4倍以上に伸びている。即ち、検査路を頻繁に取り換える必要がなく、維持費の大きな低減となる。
ステンレス鋼を用いた検査路(1)では溶接性も良好で、ステンレス製のボルト接合も可能であるので、製作、組み立てが容易である。ステンレス鋼を用いた検査路(1)は、従来の溶融亜鉛メッキ製の検査路又はFRP(繊維強化プラスチック)製の検査路と比較して容易なためリサイクル率が非常に優れている。
【0019】
本発明の検査路(1)では、高強度材料を使用し、なおかつ歩廊桁(3)と爪先板(4)とが一体化しているので、歩廊(2)の厚みを従来の溶融亜鉛メッキ製の検査路と比較して薄型にすることができ、そのため軽量化を図ることができる。本発明の検査路(1)では、歩廊(2)を薄型とすることで、狭い橋梁の空間において検査時の作業空間を広く使用することができる。
また、本発明の検査路(1)は、強度部材に高強度材料を使用していることから、安全性にも優れている。
【0020】
また、長尺の検査路(1)の場合は、橋梁側に支持されている箇所と、支持されていない箇所では、検査路(1)の自重により、曲がりモーメント荷重がかかり歩廊(2)と共に撓みやすい。そこで、橋梁側に支持部材(11)で支持されていない箇所の爪先板(4)の板厚(d1)を普通の厚みにして、撓みづらくする。また支持部材(11)で支持されている箇所では爪先板(4)の板厚(d2)を薄くして、検査路(1)全体の軽量化に寄与することができる。このように、部分的に軽量化を図ることでも、全部同じ厚さ(強度の高いもの)の従来の検査路(51)と比較して、約12%の軽量化になった。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の検査路を示し、(a)は全体断面図、(b)は歩廊桁と爪先板部分の拡大断面図である。
図2】手摺り支柱と連結板を示す拡大正面図である。
図3】本発明の歩廊桁と爪先板との強度の補強状況を示す比較説明断面図であり、(a)は従来の溝形鋼と爪先板、(b)は本発明の歩廊桁とこれと一体化した爪先板である。
図4】本発明の検査路において検査員が歩行している状態を示す側面図である。
図5】爪先板の板厚を部分的に薄くした検査路の変形例を示し、(a)は検査路の側面図、(b)は薄い板厚の爪先板部分の拡大断面図、(c)は普通の板厚の爪先板部分の拡大断面図、(d)は薄い板厚の爪先板部分の拡大断面図である。
図6】従来の検査路において検査員が歩行している状態を示す側面図である。
図7】従来の検査路を示し、(a)は全体断面図、(b)は歩廊桁と爪先板部分の拡大断面図である。
図8】従来の検査路の手摺り支柱と連結板を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、道路や鉄道等の橋梁の保守点検の際に、橋梁の下面などの状態を検査するときに用いるステンレス鋼材製の検査路である。
【実施例0023】
<検査路の全体構成>
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の検査路を示し、(a)は全体断面図、(b)は歩廊桁と爪先板部分の拡大断面図である。図2は手摺り支柱と連結板を示す拡大正面図である。
本発明の検査路1は、道路や鉄道等の橋梁の保守点検の際に、橋梁の下面などの状態を検査する際に、検査する人が通路として用いる歩廊2と、この歩廊2の両側それぞれを長手方向に支持する歩廊桁3と、この歩廊桁3に長手方向に沿って一体的に配置された爪先板4とを備えている。
更に、手摺り支柱5が取り付けられている。この手摺り支柱5には、検査路1の長手方向に沿って手摺り6と、この手摺り6の下部に2本の落下防止用のガードパイプ7が取り付けられている。このガードパイプ7は2本に限定されないことは勿論である。
【0024】
歩廊2は、ステンレス鋼材を板状に形成した部材であり、検査するときに人が通路として用いる部分である。歩廊2は検査する人の重量による撓みを防止する加工と、その作業中の滑りを防止する加工を施したものである。例えば、歩廊2はステンレス鋼板材にエキスパンドメタル処理されたものを用いる。これは滑り防止と共に軽量化も図れる効果がある。このエキスパンドメタル以外にも、水抜き穴を付けたノンスリップ鋼板や縞鋼板も適可能で選択範囲が広い。
【0025】
<歩廊桁と爪先板の構成>
この歩廊2は、両側それぞれを長手方向に歩廊桁3で支持されている。本発明の歩廊桁3は、図1(b)の拡大断面図に示すように、山形鋼(略L字形状)の形状のステンレス鋼材を用いている。図7(b)に示した従来例では、歩廊桁3に溝形鋼(略コ字形状)の形状の鋼材を用いているので、これと比較して山形鋼(略L字形状)は全体として軽くすることができる。
【0026】
本発明の歩廊桁3は山形鋼(略L字形状)のステンレス鋼材を用いているので、従来例の溝形鋼(略コ字形状)と比較して、板厚が同じであれば、若干強度的に弱くなる。そこで、本発明では、爪先板4を山形鋼(略L字形状)とその長手方向に密着させ一体化するように組み合わせることで、強度的に補強している。
【0027】
爪先板4は所定の幅を有する板材である。15cmから20cm程度の幅を有する板材であるが、長尺の検査路1に取り付けると相当な重量を有する。しかも、原則として検査路1の歩廊2の両側に取り付ける必要があり、更に重量が増すことになる。
【0028】
この爪先板4は、検査路1で検査している人が、検査に使用している検査機器、又はその部品が落下したときに、歩廊2から落下することを防止する機能を有する。この爪先板4は、検査路1を歩行中の検査員が、歩廊2上においてつまづきや転倒により手摺り6又はガードパイプ7の間から落下することを防止する機能を有する。
【0029】
図3は本発明の歩廊桁と爪先板との強度の補強状況を示す比較説明断面図であり、(a)は従来の溝形鋼と爪先板、(b)は本発明の歩廊桁とこれと一体化した爪先板である。
図3(a)の比較図に示すように、従来の歩廊桁53には溝形鋼を用いていた。この溝形鋼で長尺の歩廊桁53を支えていた。これに対して、本発明の歩廊桁3は山形鋼を用いて、重量的には従来の溝形鋼より、1/3は軽量化を図ることができるが、その分強度的に劣ることになる。本発明の爪先板4は、上述したように歩廊桁3に用いた山形鋼を逆L字形状に配置し、この歩廊桁3の上面に爪先板4の下辺が密着するように配置して取り付けている。
【0030】
本発明では、検査路1の安全面として機能する爪先板4に、歩廊桁3の強度を補強する機能を併せ持たせた。図3(b)の比較図に示すように、歩廊桁3に山形鋼(略L字形状)を用いている。この山形鋼の一部に爪先板4の一辺が密着するように、連結板9でボルト・ナット10により固定している。即ち、歩廊桁3と爪先板4を一体化している。図2の正面図に示すように、山形鋼の歩廊桁3と爪先板4とが一体化したようになっている。この連結板9はステンレス鋼製の板材である。
【0031】
他方、従来の爪先板54は、鋼鉄製以外にプラスチック製の細木から成るものがあり、文字通り安全面のみの機能を期待したものである。また、従来の爪先板54は、図3(a)の比較図と図8の従来例の正面図に示すように、溝形鋼による歩廊桁53と爪先板54とが分離している。爪先板54には強度的な補強の要素はない。
【0032】
手摺り支柱5はステンレス鋼製の部材であり、歩廊桁3に、所定間隔を開けて取り付けられている。本発明で連結板9を介在して手摺り支柱5の下部が例えば溶接などで取り付けられている。この手摺り支柱5に、その長手方向に沿って上部に手摺り6が取り付けられている。この手摺り6の下部に2本の落下防止用のガードパイプ7が取り付けられている。手摺り6と2本のガードパイプ7は、検査路1から作業員が落下することを防止する機能と共に、作業員が作業する際、歩行する際の行動の補助に使用されるものである。手摺り6は、2本のガードパイプ7と比較して太いパイプ材が用いられている。これは、作業員が作業する際、歩行する際に握りやすくするためである。他のガードパイプ7は、検査路1全体の重量を軽量化するために、細いパイプ材を用いている。
【0033】
<ステンレス鋼材を用いた検査路>
図4は本発明の検査路において検査員が歩行している状態を示す側面図である。
本発明の検査路1は、上述したように、主要な部材例えば、歩廊2、歩廊桁3、手摺り支柱5、手摺り6とガードパイプ7及び爪先板4は、ステンレス鋼材で製造されている。本発明の検査路1をステンレス鋼で製造することにより、従来の鉄製の亜鉛メッキ鋼板製の検査路と比較して寿命が大幅に向上する。従来の亜鉛メッキ鋼板製の検査路は、およそ25年程度で錆や劣化で取り換えるが、本発明のステンレス鋼製の検査路1はその4倍の100年程度は取り換える必要がない。
【0034】
ステンレス鋼材としては、多数の種類があるが、応力腐食割れを起こしにくく、耐食性が良いフェライト系ステンレス鋼を用いることができる。また、耐食性、加工性、溶接性が良好なオーステナイト系ステンレス鋼を用いることができる。更に、引張強度が高く、耐食性、溶接性が良好な二相系フェライト+オーステナイト系ステンレス鋼を用いることができる。
【0035】
本発明のステンレス鋼製の検査路1は、ステンレス鋼には不働態被膜の自己修復機能があるので、従来の亜鉛メッキ鋼板製の検査路と異なり、表面が摩耗しても、耐食性が維持できる。本発明のステンレス鋼製の検査路1のように、高強度材料を使用すると共に、歩廊桁3と爪先板4を兼用した設計を行うことで薄型軽量化が可能となる。また、この歩廊桁3と爪先板4に強度部材に高強度材料を使用していることから、安全性にも優れている。その結果、図4に示すように高強度材料を使用し、なおかつ薄型とすることで検査時の作業空間を広く使用することができる。このステンレス鋼材は溶接性も良好で、ステンレス製のボルト接合も可能であるので、製作、組み立てが容易になる。
【0036】
<変形例>
図5は爪先板の板厚を部分的に薄くした検査路の変形例を示し、(a)は検査路の側面図、(b)は薄い板厚の爪先板部分の拡大断面図、(c)は普通の板厚の爪先板部分の拡大断面図、(d)は薄い板厚の爪先板部分の拡大断面図である。
本発明の検査路1において、重要な機能を有する爪先板4は、ある程度の歩廊桁3の強度補強の機能を有すればよい。なお、長尺の検査路1の場合は、橋梁側に支持部材11で支持されている箇所と、支持されていない箇所では、検査路1の自重により、曲げモーメント荷重がかかり歩廊2と共に撓みやすい。そこで、図5(c)に示すように、支持部材11で支持されていない箇所の爪先板4の板厚(d1)を普通の厚みにして、撓みづらくする。また、図5(b)、(d)に示すように、支持部材11で支持されている箇所では爪先板4の板厚(d2)を薄くして、検査路1全体の軽量化に寄与することができる。このように、部分的に軽量化を図ることでも、全部同じ厚さ(強度の高いもの)の従来の検査路1と比較して、約12%の軽量化になった。
【0037】
なお、本発明は、材質に高強度、高耐食性のステンレス鋼板を強度部材に利用することで、耐久性および厳しい環境下でもライフサイクルコストを大幅に削減でき、しかも強度を高め、また、爪先板4を歩廊桁3の強度補強材としても利用することで、歩廊の厚みを薄型にでき、検査時の作業空間を広く使用することができる構成であれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の検査路は、道路や鉄道等の橋梁の保守点検の際に利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 検査路
2 歩廊
3 歩廊桁
4 爪先板
5 手摺り支柱
6 手摺り
7 ガードパイプ
9 連結板
10 ボルト・ナット
d1 普通の板厚の爪先板
d2 薄い板厚の爪先板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8