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  • 特開-燃焼システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043416
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20220309BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20220309BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F02M21/02 K
B63H21/38 C
B63B25/16 D
F02M21/02 L
F02M21/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148672
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】519375262
【氏名又は名称】株式会社HIT研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】原田 努
(57)【要約】
【課題】 LNG(液化天然ガス)タンクから漏れるBOG(Boil Off Gas)を効率よく処理する方法を提供する。
【解決手段】 改質器8ではBOGを構成するメタン(CH)及びエタン(C6)などの炭化水素が、水素(H)と一酸化炭素(CO)に変換される。これら水素(H)及び一酸化炭素(CO)は可燃物質であり、酸素供給装置9からの酸素とともに過給機10に供給されるので、圧縮機を用いてBOGを再液化することなく、BOGを構成する可燃成分をディーゼルエンジンの燃料として再利用できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGタンクからのLNGを気化させてディーゼルエンジンに供給するメインラインを備えた燃焼システムにおいて、この燃焼システムは前記メインラインの他にLNGタンクとディーゼルエンジンをつなぐサブラインを有し、このサブラインは改質器を備え、この改質器でLNGタンクから引き出したBOG(Boil Off Gas)を水素(H2)と一酸化炭素(CO)に変換し、これら水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を、ディーゼルエンジンの過給機に送り込むことを特徴とする燃焼システム。
【請求項2】
LNGタンクからのLNGを気化させてディーゼルエンジンに供給するメインラインを備えた燃焼システムにおいて、この燃焼システムは前記メインラインの他にLNGタンクとディーゼルエンジンをつなぐサブラインを有し、このサブラインは改質器を備え、この改質器でLNGタンクから引き出したBOG(Boil Off Gas)を水素(H2)と一酸化炭素(CO)に変換し、これら水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を前記メインラインに送り込むことを特徴とする燃焼システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG(液化天然ガス)タンクにおいて発生が避けることができないBOG(Boil Off Gas)の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶のディーゼルエンジンから排出される排ガス中のCOやSOx(イオウ酸化物)を削減する方法の1つとして、燃料をLNGにすることが、コンテナ船、自動車運搬船、ばら積船、客船、クルーズ船などに提案されつつある。
LNGを燃料とする船舶のLNGタンクでは、設計圧力が大気圧付近であり且つ沸点近くで貯蔵されているため、BOGが発生する。このようなタンクでは、内圧が設計圧力を超えないようにするためにBOGをタンクから抜く必要がある。
【0003】
ディーゼルエンジンが高圧噴射式の場合、LNGタンクからのLNGを液体のままポンプで200気圧程度まで昇圧し、気化昇温してディーゼルエンジンに供給する。
【0004】
一方BOGについてはコンプレッサで圧縮して再液化し、これをタンクに戻すことが行われている。再液化するには圧縮機を駆動するための動力(電力)が必要となるだけでなく装置自体が複雑で高価なものになる。
このため、BOGを燃料電池の燃料として利用する提案が特許文献1及び特許文献2になされている。
【0005】
特許文献1には、余剰のBOGを、BOG送出ラインの途中位置に設けた分岐ラインを通してガスコンプレッサへ送り、該ガスコンプレッサにて圧縮して圧縮ガスの状態で圧縮ガス貯蔵タンクに貯蔵しておき、船内の電力需要が高まるときに上記圧縮ガス貯蔵タンクに貯蔵してある圧縮ガスを膨張させて燃料電池へ燃料として供給することが提案されている。
【0006】
特許文献2には、主機関によるプロペラシャフトの回転駆動時には、シャフトジェネレータにより発電して船内の電力供給回路に電力を供給できるようにすると共に、燃料電池で発電した電力を電力供給回路を経てシャフトジェネレータへ供給できるようにし、BOG送出ラインの途中位置に分岐ラインを設けて、BOGを可逆的に圧縮して圧縮ガスとすることができるようにしたガスコンプレッサに、上記分岐ラインを接続すると共に、ガスコンプレッサの圧縮ガス出口を圧縮ガス貯蔵タンクに接続した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-51049号公報
【特許文献2】特開2004-51050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
BOGは、メタン(CH)及びエタン(C6)などの炭化水素を主成分とする。そこで特許文献1、2では、BOGを改質器において、炭化水素を水素(H)と一酸化炭素(CO)に変換し、これらを燃料電池に供給するようにしている。
【0009】
上記したように、特許文献1、2では、一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO)に変換するか除去しており、一酸化炭素(CO)を燃料として利用していない。
また、特に4サイクルディーゼルエンジンの場合には、1~2%といわれるメタンスリップ(未燃焼メタンの排出。メタンは温暖化係数 CO2対比25倍)の問題を解決していない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願はBOGを効率よく燃料として利用することを目的として成したものであり、第1発明の要旨は、LNGタンクからのLNGを気化させてディーゼルエンジンに供給するメインラインを備えた燃焼システムにおいて、前記メインラインの他にLNGタンクとディーゼルエンジンをつなぐサブラインを有し、このサブラインは改質器を備え、この改質器でLNGタンクから引き出したBOG(Boil Off Gas)を水素(H)と一酸化炭素(CO)に変換し、これら水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を燃焼に必要な酸素を加えて、ディーゼルエンジンの過給機に送り込む構成とした。
【0011】
第2発明の要旨は、LNGタンクからのLNGを気化させてディーゼルエンジンに供給するメインラインを備えた燃焼システムにおいて、この燃焼システムは前記メインラインの他にLNGタンクとディーゼルエンジンをつなぐサブラインを有し、このサブラインは改質器を備え、この改質器でLNGタンクから引き出したBOG(Boil Off Gas)を水素(H2)と一酸化炭素(CO)に変換し、これら水素(H2)及び一酸化炭素(CO)を前記メインラインに送り込む構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、圧縮機を用いてBOGを再液化することなく、BOGを構成する可燃成分をディーゼルエンジンの燃料として再利用できる。特に環境問題からLNGの使用増大が予想されるため、BOGの再利用は極めて効果的である。
また、メタンスリップの問題も解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る燃焼システムの全体構成を示す図。
図2】別実施例に係る燃焼システムの全体構成を示す図。
図3】別実施例に係る燃焼システムの全体構成を示す図。
図4】別実施例に係る燃焼システムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
ディーゼルエンジン1とLNGタンク2との間には、燃料を供給するメインライン3とサブライン4が形成されている。ディーゼルエンジン1は船舶主機に限らず、発電機など他の用途に使用されるものを含む。
【0015】
メインライン3の途中には昇圧ポンプ5と気化器6が設けられ、LNGタンク2から引き出したLNGの圧力を高め、気化器6にて高圧ガスとされディーゼルエンジン1に供給される。
【0016】
昇圧ポンプ5と気化器6との中間からはスプレーライン7が分岐され、このスプレーライン7を介してLNGタンク2内にLNGを噴霧することでタンク2内の温度を下げ、気相圧力を降下させ、これによりBOG発生を抑制する。その結果、後述する燃料電池に過剰な能力を持たせることを回避できる。
【0017】
サブライン4には熱交換器8、改質器9が設けられる。LNGタンク2からのBOGは熱交換器8で改質されやすい温度まで加熱され、改質器9に供給される。尚、熱交換器8の上流側にイオウ酸化物除去装置を設けてもよい。
【0018】
改質器9ではBOGを構成するメタン(CH)及びエタン(C6)などの炭化水素が、水素(H)と一酸化炭素(CO)に変換される。これら水素(H)及び一酸化炭素(CO)は可燃物質であり、一部は水素(H)のみでなく一酸化炭素(CO)も燃料として利用できる燃料電池10に供給され、残りは酸素供給装置11からの酸素とともにディーゼルエンジン1の過給機12に供給される。酸素供給装置11は、PSA方式やメンブレン方式による空気中の酸素・窒素分離方式により構成することができる。水素(H)のみならず一酸化炭素(CO)も燃料とする燃料電池としては、個体酸化物形燃料電池または溶融炭酸塩形燃料電池を使用することができる。
【0019】
尚、酸素供給装置11を設けた位置よりも下流側においてサブライン4を分岐し、水素、一酸化炭素及び酸素からなる混合気の一部または全部をエジェクタ13を介してメインライン3供給するようにしてもよい。さらに、水素、一酸化炭素をメインライン3に供給するとともに、酸素供給装置11からの酸素は過給機12から供給することもできる。
【0020】
図2図4は別実施例に係る燃焼システムの全体構成を示す図であり、このうち図2に示す燃焼システムは、主機としてガスエンジン20を配置し、発電をディーゼル発電機21と燃料電池22で行う構成としている。
【0021】
ガスエンジン20は天然ガス噴射式とし、発電システムではディーゼル発電機21で例えば船内最大負荷を賄うことができ、また燃料電池22は最大BOG量を吸収できるものとする。
【0022】
また、BOGの改質で得られた水素(H)と一酸化炭素(CO)の一部はガスエンジン20及びディーゼル発電機21の効率化に使用する。また、BOG量に応じて使用する燃料電池22のセル数を加減することができる。
【0023】
図3に示す燃焼システムは、主機及び発電機エンジンはガスエンジン20とし、例えば船内電力にガスエンジン発電機23及び燃料電池22で対応する構成である。
【0024】
ガスエンジン発電機23は最大電力使用量を賄い、燃料電池22は最大BOG量を吸収可能で、BOG量に応じて使用する燃料電池22のセル数を加減することができる。また、燃料電池22の発電量は成り行きとし、残りの電力需要への対応は、ガスエンジン発電機23により行う。また、BOGの改質により得られた水素(H)と一酸化炭素(CO)の一部はガスエンジン20及びガスエンジン発電機23の効率化に使用する。
【0025】
図3に示す燃焼システムは、客船、フェリー内航船などに適用される燃焼システムであり、推進用電力と船内電力はガスエンジン発電機23と燃料電池22で対応する。燃料電池22は最大BOG量を吸収可能とし、BOG量に応じて使用する燃料電池22を加減する。ガスエンジン発電機23は最大電力使用量を賄うことができる。また、電力需要への対応として、燃料電池22の発電量は成り行きとし、ガスエンジン発電機23の発電量を加減する。
【符号の説明】
【0026】
1…ディーゼルエンジン、2…LNGタンク、3…メインライン、4…サブライン、5…昇圧ポンプ、6…気化器、7…スプレーライン、8…熱交換、9…改質器、10…燃料電池、11…酸素供給装置、12…過給機、13…エジェクタ、20…ガスエンジン、21…ディーゼル発電機、22…燃料電池、23…ガスエンジン発電機。



図1
図2
図3
図4