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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043454
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】吊り治具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/10 20060101AFI20220309BHJP
   B66C 13/08 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B66C1/10 C
B66C13/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148733
(22)【出願日】2020-09-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-17
(71)【出願人】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小出 拓希
(72)【発明者】
【氏名】相田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】飛騨 隆道
(72)【発明者】
【氏名】牧戸 俊也
(72)【発明者】
【氏名】川竹 裕顯
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004KA05
3F004KA06
(57)【要約】
【課題】吊り代を確保でき、汎用性のある吊り治具を提供する。
【解決手段】実施形態に係る吊り治具は、ベースと第1調整送りネジと吊り上げ金具と第2調整送りネジと第3調整送りネジと第1固定金具と第2固定金具とを有する。第1調整送りネジは、ベースに回転自在に設けられている。吊り上げ金具は、第1調整送りネジに螺合して第1調整送りネジに沿って水平方向に移動し、吊り上げ装置が取り付けられる。第2調整送りネジは、ベースに回転自在に設けられ、第1調整送りネジの下方に配置され、第1調整送りネジと平行に配置される。第3調整送りネジは、ベースに回転自在に設けられ、第1調整送りネジの下方に配置され、第2調整送りネジと平行に配置される。第1固定金具と第2固定金具は、第2調整送りネジもしくは第3調整送りネジに沿って水平方向に移動し、吊り上げ対象物が取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに回転自在に設けられた第1調整送りネジと、
前記第1調整送りネジに螺合する螺合部と吊り上げ装置が取り付けられる取付部とを有し、前記第1調整送りネジの回転に伴って前記第1調整送りネジに沿って移動する吊り上げ金具と、
前記ベースに回転自在に設けられ、前記第1調整送りネジの下方に配置され、前記第1調整送りネジと平行に配置される第2調整送りネジと、
前記ベースに回転自在に設けられ、前記第1調整送りネジの下方に配置され、前記第2調整送りネジと平行に配置される第3調整送りネジと、
吊り上げ対象物が取り付けられる第2取付部を有し、前記第2調整送りネジの回転に伴って前記第2調整送りネジに沿って移動する第1固定金具と、
前記吊り上げ対象物が取り付けられる前記第2取付部を有し、前記第3調整送りネジの回転に伴って前記第3調整送りネジに沿って移動する第2固定金具と、
を有する吊り治具。
【請求項2】
前記ベースは、前記第1調整送りネジ、前記第2調整送りネジ、前記第3調整送りネジ、前記吊り上げ金具、前記第1固定金具、前記第2固定金具を収容するケーシングであり、
前記吊り上げ金具は、前記ケーシングの内面に当接し、前記吊り上げ金具の移動に伴って回転する車輪を有し、
前記吊り上げ金具は、前記第1調整送りネジの回転に伴って前記第1調整送りネジの軸方向に移動する、
請求項1に記載の吊り治具。
【請求項3】
前記第1固定金具および前記第2固定金具は、前記ケーシングの内面に当接し、前記第1固定金具および前記第2固定金具の移動に伴って回転する車輪を有し、
前記第1固定金具は、前記第2調整送りネジの回転に伴って前記第2調整送りネジの軸方向に移動し、
前記第2固定金具は、前記第3調整送りネジの回転に伴って前記第3調整送りネジの軸方向に移動する、
請求項2に記載の吊り治具。
【請求項4】
前記第1調整送りネジ、前記第2調整送りネジ、前記第3調整送りネジは、ボルトである、
請求項1から3の何れか一項に記載の吊り治具。
【請求項5】
前記吊り上げ対象物の大地に対する傾きを計測する傾斜センサを有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の吊り治具。
【請求項6】
前記傾斜センサの出力に基づいて、前記吊り上げ対象物が大地と平行になるように、前記第1調整送りネジを回転駆動するドライブユニットを有する、
請求項5に記載の吊り治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り治具に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所における設備工事等では、管体の機器の据え付けや改造を行う際に、機器同士をフランジ面で分解・結合する作業がある。特にフランジ面を結合する場合、フランジ面を損傷しないようにするためと適切な密着をさせるため、互いのフランジを平行になるように、機器を水平に吊り上げる必要がある。
【0003】
地下変電所や屋内変電所等の現場では、機器を吊り上げる際、天井に設置された複数のフックに各々のチェーンブロックの上フックを掛け、チェーンブロックを配置する。吊り上げる機器に複数のナイロンスリングを巻き付けて玉掛けを行い、ナイロンスリングの端部に有る蛇口をシャックルで束ねる。それらのシャックルをリングと接合する。チェーンブロックの下フックをリングに掛け、操作用鎖で荷物持ち上げ用鎖の長さを調整することで、機器の水平を確保する。それら複数のチェーンブロックを操作し、機器の水平を保ちながら機器を吊り上げ順次移動させ目的の場所まで移動し、機器を接続する。
【0004】
しかし、地下変電所や屋内変電所等での改造工事では、機器建設後に施工された空調ダクト等が邪魔をし、初期の組立時より施工場所の空間が非常に密集している。そのため、吊りポイントとなるリングから天井までの吊り代を確保することが困難である。機器から天井までの吊り代が短くなると機器を横持ちする際に荷物持ち上げ用鎖の角度が拡がり、通称ケンカ吊りの状態となり、荷物持ち上げ用鎖に加わる張力が大きくなる。その結果、荷物持ち上げ用鎖が切断することがある。
【0005】
吊り代を確保するために、吊り上げる機器に合わせて吊り治具を製作することがある。しかしながら、大きさや重心位置が異なる様々な機器を吊り上げる必要があるため、機器ごとに専用の吊り治具を製作する必要がある。複数種類の吊り治具を製作すると、吊り治具の製作コストが高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-246123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、吊り代を確保でき、汎用性のある吊り治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、実施形態に係る吊り治具は、ベースと第1調整送りネジと吊り上げ金具と第2調整送りネジと第3調整送りネジと第1固定金具と第2固定金具とを有する。第1調整送りネジは、ベースに回転自在に設けられている。吊り上げ金具は、第1調整送りネジに螺合して第1調整送りネジに沿って水平方向に移動する螺合部と、吊り上げ装置が取り付けられる取付部と、を有する。第2調整送りネジは、ベースに回転自在に設けられ、第1調整送りネジの下方に配置され、第1調整送りネジと平行に配置される。第3調整送りネジは、ベースに回転自在に設けられ、第1調整送りネジの下方に配置され、第2調整送りネジと平行に配置される。第1固定金具は、第2調整送りネジに螺合して第2調整送りネジに沿って水平方向に移動する第2螺合部と、吊り上げ対象物が取り付けられる第2取付部と、を有する。第2固定金具は、第3調整送りネジに螺合して第3調整送りネジに沿って水平方向に移動する第2螺合部と、吊り上げ対象物が取り付けられる第2取付部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る吊り治具の構成図である。
図2】実施形態に係る吊り治具の平面図である。
図3】実施形態に係る吊り治具の吊り上げ金具の斜視図である。
図4】実施形態に係る吊り治具の固定金具の斜視図である。
図5図1のAA断面図である。
図6図1のBB断面図である。
図7】実施形態に係る吊り治具を用いた機器の吊り上げ例について説明するための図である。
図8】従来の機器の吊り上げ例について説明するための図である。
図9】変形例1に係る吊り治具の構成図である。
図10】変形例1に係るドライブユニットの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態を、図面を用いて説明する。説明には、適宜、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸からなるXYZ座標系を用いる。本実施形態では、フランジ面を有する管体の機器を吊り上げて、フランジ面を有する既設の機器に接続する場合について説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る吊り治具1の構成図である。図2は、吊り治具1の平面図である。吊り治具1は、第1調整ボルト10(第1調整送りネジ)、第2調整ボルト30(第2調整送りネジ)、第3調整ボルト31(第3調整送りネジ)、吊り上げ金具20、固定金具40(第1固定金具、第2固定金具)、ケーシング50を有する。吊り治具1は、固定金具40により、吊り上げ対象の機器120に固定される。
【0012】
第1調整ボルト10は、長手方向を第1方向(X軸方向)とし、ねじ山を有する部材である。第1調整ボルト10は、六角ボルトである。第1調整ボルト10は、ケーシング50に回転自在に設けられている。
【0013】
第2調整ボルト30は、ケーシング50に回転自在に設けられ、第1調整ボルト10の下方に配置され、第1調整ボルト10と平行に配置される。第3調整ボルト31は、ケーシング50に回転自在に設けられ、第1調整ボルト10の下方に配置され、第2調整ボルト30と平行に配置される。第2調整ボルト30および第3調整ボルト31は、長手方向を第1方向(X軸方向)とし、ねじ山を有する部材である。第2調整ボルト30および第3調整ボルト31は、六角ボルトである。第2調整ボルト30と第3調整ボルト31とは、同軸上に配置される。
【0014】
図3に示されるように、吊り上げ金具20は、螺合部21、取付部22、車輪23を有する。吊り上げ金具20は、第1調整ボルト10の回転に伴って第1調整ボルト10に沿って水平方向(X軸方向)に移動する。
【0015】
取付部22は、チェーンブロック等の吊り上げ装置を取り付けるための部材である。取付部22は、略三角形の鉄板で形成される。取付部22は、吊り上げ装置のチェーン等を接続するための開口221を有している。
【0016】
螺合部21は、直方体の鋼材で形成されており、X軸方向に貫通する貫通穴211を有している。貫通穴211の内周面には、第1調整ボルト10に螺合するねじ溝が形成されている。2個の螺合部21は、それぞれの貫通穴211が同軸上に位置するように、取付部22の-Z側の両端(+X側と-X側)に接続される。螺合部21は、第1調整ボルト10に螺合し、第1調整ボルト10の回転に伴って第1調整ボルト10に沿って水平方向(X軸方向)に移動する。
【0017】
車輪23は、ケーシング50の内面に当接し、吊り上げ金具20の移動に伴って回転する。車輪23は、吊り上げ金具20がX軸方向に移動する際の吊り上げ金具20とケーシング50との接触抵抗を低減させるための部材である。車輪23は、螺合部21が有する図示しない回転軸に取り付けられ、螺合部21の+Y側の面と-Y側の面に配置される。車輪23は、鉄および硬質の樹脂で形成される。
【0018】
図4に示されるように、固定金具40は、第2螺合部41、第2取付部42、脚部43、車輪45を有する。第2螺合部41は、螺合部21と同じ構成である。第2螺合部41は、直方体の鋼材で形成されており、X軸方向に貫通する貫通穴411を有している。貫通穴411の内周面には、第2調整ボルト30もしくは第3調整ボルト31に螺合するねじ溝が形成されている。2個の第2螺合部41は、同軸上に配置されている。第2螺合部41は、第2調整ボルト30もしくは第3調整ボルト31に螺合し、第2調整ボルト30もしくは第3調整ボルト31の回転に伴って第2調整ボルト30もしくは第3調整ボルト31に沿って水平方向(X軸方向)に移動する。これにより、固定金具40は、第2調整ボルト30もしくは第3調整ボルト31の回転に伴って第2調整ボルト30もしくは第3調整ボルト31に沿って水平方向(X軸方向)に移動する。
【0019】
第2取付部42は、鉄板で形成された部材である。第2取付部42は、ボルトを通す穴421を有している。脚部43は、第2螺合部41と第2取付部42とを接続するための鋼材である。脚部43は、2個の第2螺合部41それぞれの-Z側の端部から-Z方向に接続される。脚部43の-Z側には、第2取付部42が接続される。
【0020】
車輪45は、ケーシング50の内面に当接し、固定金具40の移動に伴って回転する。車輪45は、固定金具40がX軸方向に移動する際の固定金具40とケーシング50との接触抵抗を低減させるための部材である。車輪45は、第2螺合部41が有する図示しない回転軸に取り付けられ、第2螺合部41の+Y側の面と-Y側の面に配置される。車輪45は、鉄および硬質の樹脂で形成される。
【0021】
図1に戻り、ケーシング50は、第1調整ボルト10、第2調整ボルト30、第3調整ボルト31、吊り上げ金具20、固定金具40を収容する部材である。ケーシング50は、+X側の面と-X側の面に、第1調整ボルト10を貫通させる開口(図示略)を有している。
【0022】
また、ケーシング50は、-X側の面に、第2調整ボルト30を貫通させる開口(図示略)を有している。ケーシング50は、第2調整ボルト30の+X側の端部を支える軸受部材55を有している。第2調整ボルト30は、ケーシング50に設けられた開口と軸受部材55により、回転自在にケーシング50に組み込まれる。また、ケーシング50は、+X側の面に、第3調整ボルト31を貫通させる開口(図示略)を有している。ケーシング50は、第3調整ボルト31の-X側の端部を支える軸受部材55を有している。第3調整ボルト31は、ケーシング50に設けられた開口と軸受部材55により、回転自在にケーシング50に組み込まれる。
【0023】
図5は、図1のAA断面図である。図6は、図1のBB断面図である。図5および図6に示されるように、ケーシング50は、+Z側の面に吊り上げ金具20の取付部22がX軸方向に移動可能な開口51を有している。また、ケーシング50は、-Z側の面に固定金具40の脚部43がX軸方向に移動可能な開口52を有している。
【0024】
次に、吊り治具1の使用例について図7を参照して説明する。ここでは、既設の機器110のフランジ面111に、増設する機器120のフランジ面121を接続する場合について説明する。フランジ面111およびフランジ面121には、ボルトを貫通させる穴が複数設けられており、フランジ面111とフランジ面121とをボルトで締結する。フランジ面111とフランジ面121とをボルトで締結するためには、フランジ面111とフランジ面121とが水平になるように、増設する機器120を吊り上げる必要がある。
【0025】
最初に、吊り治具1の2個の固定金具40を機器120のフランジ面122に固定する。このとき、2個の固定金具40の穴421がフランジ面122のボルト穴に合うように、吊り治具1の第2調整ボルト30と第3調整ボルト31を調整する。具体的には、第2調整ボルト30および第3調整ボルト31の端部にクランクハンドルを取り付け、第2調整ボルト30および第3調整ボルト31を回転させることにより、2個の固定金具40のX軸方向の位置を調整する。第2調整ボルト30に取付られた固定金具40は、第2調整ボルト30の回転に伴って、第2調整ボルト30の軸方向(X軸方向)にスライドする。クランクハンドルで第2調整ボルト30を逆回転すると、固定金具40は、逆方向にスライドする。第3調整ボルト31に取付られた固定金具40は、第3調整ボルト31の回転に伴って、第3調整ボルト31の軸方向(X軸方向)にスライドする。そして、2個の固定金具40をフランジ面122にボルトで固定する。第2調整ボルト30に螺合する固定金具40と第3調整ボルト31に螺合する固定金具40とは、独立してスライドする。したがって、吊り治具1を大きさの異なる機器に固定することができる。
【0026】
増設する機器120の重心位置は、フランジ面122の中心からずれていることがある。機器120の重心位置を予め計算で求め、吊り上げ金具20を計算した機器120の重心位置に移動させる。具体的には、第1調整ボルト10の端部にクランクハンドルを取り付け、第1調整ボルト10を回転させることにより、吊り上げ金具20のX軸方向の位置を計算した機器120の重心位置に合わせる。
【0027】
図7に示されるように、天井Cの所定の場所に天井フック135が設けられている。天井フック135それぞれには、チェーンブロック140が取り付けられている。チェーンブロック140の荷物持ち上げ用鎖141の先端には、下フック142が取り付けられている。次に、吊り上げ金具20にシャックル131を介してリング130を取り付ける。そして、チェーンブロック140の下フック142をリング130に接続し、機器120を吊り上げる。計算で求めた重心位置と実際の重心位置とは、多少のずれがある。そこで、機器120のフランジ面122が大地に対して垂直になっているかを確認する。機器120のフランジ面122が大地に対して垂直になっていない場合、機器120を吊り上げた状態で、第1調整ボルト10を回転させることにより、微調整を行う。
【0028】
機器120を吊り上げているので、吊り上げ金具20とケーシング50との間には大きな負荷がかかっている。しかし、吊り上げ金具20は車輪23を有しているので、吊り上げ金具20とケーシング50との接触抵抗は小さい。したがって、機器120を吊り上げた状態で第1調整ボルト10を回転させることができ、吊り上げ金具20をX軸方向に沿って移動させることができる。
【0029】
機器120のフランジ面121が大地に対して垂直な状態を保ち、機器120のフランジ面が機器110のフランジ面111に重なるように、操作鎖143を操作して機器120を移動する。そして、機器120のフランジ面121を機器110のフランジ面111にボルトで固定する。
【0030】
図7に示されるように、機器120の各所をナイロンスリングで玉掛けすることなく、シャックル131を介してリング130と吊り治具1とを接続する。そのため、機器120のフランジ面122から玉掛け位置(リング130の位置)までの距離L2は短い。したがって、吊り治具1を使用することにより、玉掛け位置から天井までの吊り代L1を長くすることができる。これにより、2本のチェーンブロック140の荷物持ち上げ用鎖141のなす角度θを小さくでき、荷物持ち上げ用鎖141に加わる張力を低減できる。
【0031】
従来の機器の吊り上げ方法では、図8に示されるように、増設する機器120の各所にナイロンスリング132を玉掛けし、ナイロンスリング132をシャックル131を介してリング130で束ねる。そして、ナイロンスリング132の長さをあまり返し等で調整することにより機器120を水平にする。
【0032】
また、従来の機器の吊り上げ方法では、機器120の各所をナイロンスリング132で玉掛けしてリング130で束ねるので、機器120とリング130との鉛直方向の距離L2が長くなる。そのため、玉掛け位置(リング130の位置)から天井までの吊り代L1が短くなる。吊り代L1が短くなると、2本のチェーンブロック140の荷物持ち上げ用鎖141のなす角度θが大きくなり、荷物持ち上げ用鎖141に加わる張力が大きくなる。その結果、荷物持ち上げ用鎖141が切れやすくなる。
【0033】
以上に説明したように、吊り治具1は、2個の固定金具40それぞれを独立してX軸方向に移動することができるので、吊り治具1は、大きさの異なる機器の吊り上げに適用できる。そのため、機器ごとに専用の吊り治具を製作する必要がなく、吊り治具の製作コストを低減することができる。
【0034】
また、吊り治具1は、吊り上げ金具20をX軸方向に移動することができる。これにより、重心位置が異なる機器の吊り上げに適用できる。また、機器を吊り上げたまま水平調整を行うことができるので、機器の据付時間を短縮することができる。
【0035】
また、吊り上げ金具20および固定金具40は車輪45を有しているので、吊り上げ金具20および固定金具40とケーシング50との接触抵抗を小さくできる。これにより、重い機器を吊り下げた状態で吊り上げ金具20を容易に移動させることができ、重心調整の時間を短縮することができる。
【0036】
また、図7に示されるように、吊り治具1を利用することにより、吊り上げ対象物を水平に吊るためのナイロンスリングが不要になるので、長い吊り代L1を確保することができる。これにより、チェーンブロック140の荷物持ち上げ用鎖141が切れることを抑制できる。
【0037】
なお、上記の説明では、吊り上げ金具20が2個の螺合部21を有する場合につて説明した。しかし、螺合部21の数は、制限されない。例えば、螺合部21の数は、1個でも3個でもよい。螺合部21のX軸方向の長さの合計は、吊り上げ金具20の強度、機器120を吊り上げた際の揺れ等を考慮して決める。また、上記の説明では、固定金具40が2個の第2螺合部41を有する場合につて説明した。しかし、第2螺合部41の数は、制限されない。第2螺合部41の数は、1個でも3個でもよい。第2螺合部41のX軸方向の長さの合計は、固定金具40の強度等を考慮して決める。
【0038】
また、上記の説明では、吊り治具1が第1調整ボルト10、第2調整ボルト30、第3調整ボルト31、吊り上げ金具20、固定金具40を収容するケーシング50を有する場合について説明したが、吊り治具1は、必ずしも第1調整ボルト10、第2調整ボルト30、第3調整ボルト31、吊り上げ金具20、固定金具40を収容するケーシング50を有していなくてもよい。例えば、吊り治具1は、ケーシング50に替えて、第1調整ボルト10、第2調整ボルト30、第3調整ボルト31を支えるベースを有してもよい。例えば、ベースは、図1及び図2において、+Z側の面、-Z側の面を有さないものである。
【0039】
(変形例1)
上記の説明では、クランクハンドルを用いて、手動で第1調整ボルト10を回転する場合について説明した。変形例1では、ドライブユニット70を用いて第1調整ボルト10を回転駆動させる場合について説明する。図9に示されるように、変形例1に係る吊り治具1は、ドライブユニット70を第1調整ボルト10の端部に有する。
【0040】
図10は、ドライブユニット70の構成図である。ドライブユニット70は、傾斜センサ71、制御装置72、電源装置73、電動モータ74、駆動部75を有する。傾斜センサ71は、大地に対する傾きを計測する装置である。傾斜センサ71は、ドライブユニット70の内部に実装してもよいし、第1調整ボルト10に取り付けてもよいし、吊り上げ対象の機器120に取り付けてもよい。
【0041】
制御装置72は、CPU,RAM,ROM等を有するコンピュータである。ROMには、制御用プログラムが記憶されている。制御装置72は、制御用プログラムと傾斜センサ71の出力に基づいて、傾斜センサ71で計測される傾斜の値が大地に対して0度になるように、電源装置73および電動モータ74を制御する。
【0042】
電源装置73は、電動モータ74の電源である。電源装置73は、制御装置72による制御に基づき、電動モータ74に加える電源装置73の出力の電圧極性を反転させる。電動モータ74は、制御装置72の制御に基づいて回転する。電動モータ74の回転軸は、駆動部75に接続される。駆動部75は、電動モータ74の回転を第1調整ボルト10に伝える部材である。駆動部75は、電動モータ74の回転に伴って第1調整ボルト10を回転駆動する。
【0043】
次に、変形例1に係る吊り治具1の動作について説明する。作業者は、吊り治具1で機器120を吊り上げた状態で、ドライブユニット70を動作させる。傾斜センサ71は、機器120の大地に対する傾きを計測する。傾斜センサ71は、計測結果を制御装置72に出力する。
【0044】
図9に示される吊り上げ金具20の位置が機器120の重心位置よりも-X側に位置する場合、制御装置72は、駆動部75を介して第1調整ボルト10を回転させ、吊り上げ金具20が+X側に移動するように、電源装置73および電動モータ74を制御する。また、吊り上げ金具20の位置が機器120の重心よりも+X側に位置する場合、制御装置72は、電動モータ74に加える電源装置73の出力の電圧極性を反転させ、吊り上げ金具20が-X側に移動するように、電動モータ74を制御する。このような制御装置72の制御により、図7に示される機器120のフランジ面121は、既設の機器110のフランジ面111に対して水平な状態になる。
【0045】
なお、上記の説明では、制御装置72が電動モータ74に加える電源装置73の出力の電圧極性を反転させることにより、第1調整ボルト10の回転方向、つまり、吊り上げ金具20の移動方向を制御する説明をした。第1調整ボルト10の回転方向の制御方法としては、駆動部75に第1調整ボルト10の回転方向を反転させる機構を設けてもよい。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…吊り治具
10…第1調整ボルト(第1調整送りネジ)
20…吊り上げ金具
21…螺合部
22…取付部
23…車輪
221…開口
30…第2調整ボルト(第2調整送りネジ)
31…第3調整ボルト(第3調整送りネジ)
40…固定金具
41…第2螺合部
42…第2取付部
421…穴
43…脚部
45…車輪
50…ケーシング
51、52…開口
55…軸受部材
70…ドライブユニット
71…傾斜センサ
72…制御装置
73…電源装置
74…電動モータ
75…駆動部
110…既設の機器
120…増設する機器
111,121,122…フランジ面
130…リング
131…シャックル
132…ナイロンスリング
135…天井フック
140…チェーンブロック
141…荷物持ち上げ用鎖
142…下フック
143…操作鎖
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