(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043520
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ベリー系果汁入り鉄含有飲食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/16 20160101AFI20220309BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220309BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220309BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20220309BHJP
A23C 9/123 20060101ALN20220309BHJP
A23C 9/13 20060101ALN20220309BHJP
A23C 9/133 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
A23L33/16
A23L33/105
A23L2/52 101
A23L2/52
A23L2/00 F
A23L2/02 C
A23L2/02 Z
A23C9/123
A23C9/13
A23C9/133
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148829
(22)【出願日】2020-09-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年9月12日に株式会社ヤクルト本社のウェブサイト(https://www.yakult.co.jp/news/file.php?type=release&id=156825343246.pdf)で公開 〔刊行物等〕 令和1年10月21日に全国各地の家庭及び小売業者に販売
(71)【出願人】
【識別番号】000006884
【氏名又は名称】株式会社ヤクルト本社
(74)【代理人】
【識別番号】100145517
【弁理士】
【氏名又は名称】宮原 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】星 亮太郎
(72)【発明者】
【氏名】中森 真依子
(72)【発明者】
【氏名】富永 裕恵
(72)【発明者】
【氏名】脇阪 昌明
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC20
4B001AC21
4B001AC31
4B001AC44
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC03
4B001BC14
4B001EC01
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4B018LB07
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4B117LC01
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4B117LG05
4B117LK01
4B117LK18
4B117LL09
(57)【要約】
【課題】ベリー系果汁中のポリフェノールと鉄素材の反応により発生する変色や、鉄味の低減されたベリー系果汁入り鉄含有飲食品を提供する。
【解決手段】鉄素材として乳化製剤化されていない鉄を用いるとともに、アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種以上の果汁ベリー系果汁とを併用することで、鉄味、変色が抑制され、風味良好なベリー系果汁入り鉄含有飲食品を得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種または2種以上の果汁と、ベリー系果汁と、乳化製剤化されていない鉄とを含有することを特徴とするベリー系果汁入り鉄含有飲食品。
【請求項2】
乳化製剤化されていない鉄が、乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄であることを特徴とする請求項1記載のベリー系果汁入り鉄含有飲食品。
【請求項3】
乳化製剤化されていない鉄の含有量が、飲食品100gあたりの鉄換算で、1.0~25mgである請求項1または2記載のベリー系果汁入り鉄含有飲食品。
【請求項4】
乳化製剤化されていない鉄の平均粒子径が、10μm未満である請求項1~3記載のベリー系果汁入り鉄含有飲食品。
【請求項5】
ベリー系果汁が、ストロベリー果汁、ブルーベリー果汁、ラズベリー果汁またはアローニャ果汁から選ばれる1種または2種以上である請求項1~4記載のベリー系果汁入り鉄含有飲食品。
【請求項6】
ベリー系果汁に対するアップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種または2種以上の果汁の質量比がストレート果汁換算で、1:0.11~1:1.5であり、ベリー系果汁入り鉄含有飲食品全量に対する果汁の総量が、質量比で5%~20%である請求項1~5記載のベリー系果汁入り鉄含有飲食品。
【請求項7】
ベリー系果汁入り鉄含有飲食品が乳含有飲食品である請求項1~6記載のベリー系果汁入り鉄含有飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベリー系果汁と鉄分を含み、鉄分に由来する鉄味、鉄分とベリー系果汁中のポリフェノールとの反応により生じる変色が改善された、ベリー系果汁入り鉄含有飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄分は体内組織への酸素の運搬や細胞内のエネルギー産生等の働きに関与する重要な栄養素であり、不足すると貧血や胃腸障害などの悪影響が生じる。厚生労働省の調査では、鉄分は日本人に不足し易い栄養素とされており、特に女性では、鉄不足による貧血が多い。鉄欠乏性貧血を予防するためには、食事からしっかりと鉄など必要な栄養素をとることが大切であるものの、日頃からバランス良く必要な栄養素を摂取することは難しいため、各種機能性飲食品やサプリメントを通じ、不足しがちな栄養素の補給が行われている。鉄不足の生じやすい20~40代の女性は、ヨーグルトなどの機能性飲食品の喫食率が高いため、鉄分を強化した飲食品を提供することは、鉄不足解消の一助となる。
【0003】
しかし、鉄素材には独特の臭味(鉄味)が存在するため、鉄含有飲食品の摂取にあたっては鉄味の抑制が課題となる。また、鉄素材は、飲食品に添加すると鉄イオンとなり他の成分と反応し、変色等を起こすことが知られている。例えば、果汁と組み合わせた場合、果汁中のポリフェノールと鉄イオンが反応し、褐色に変色する。鉄が不足し易い女性は、ベリー系果汁を好む傾向があるところ、ベリー系果汁にはポリフェノールが多量に含まれているため、ベリー系果汁を含む鉄含有飲食品では、こうした変色が顕著であり、摂食時の嗜好性を低下させる一因となっている。
【0004】
このため、以前から鉄の強化にあたり、鉄味や変色の抑制を目的として、様々な工夫がなされている。鉄味の抑制には、例えばキシリトール、トレハロース等の甘味料や、酪酸、酢酸等の酸味料がマスキング剤として用いられているが、日常的な摂取のためには、更なる鉄味の抑制が期待される。この点、特許文献1には、乳酸発酵した酸乳に、ピロリン酸第二鉄乳化剤被覆組成物を配合した鉄分強化発酵乳が開示されており、ピロリン酸第二鉄乳化剤被覆組成物を使用することで、鉄分が有する特有の不快風味の発現を抑え、安定した発酵乳を得られることが記載されているが、鉄素材の影響による変色を改善できるかについては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、ベリー系果汁中のポリフェノールと鉄素材の反応により発生する変色や、鉄味の低減されたベリー系果汁入り鉄含有飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、鉄素材として乳化製剤化されていない鉄を用いるとともに、アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種以上の果汁とベリー系果汁とを併用することで、鉄味、変色が抑制され、風味良好なベリー系果汁入り鉄含有飲食品を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種以上の果汁と、ベリー系果汁と、乳化製剤化されていない鉄とを含有することを特徴とするベリー系果汁入り鉄含有飲食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ベリー系果汁入り鉄含有飲食品の製造において、鉄素材として乳化製剤化されていない鉄を用いるとともに、アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種以上の果汁を添加することで、鉄含有飲食品の鉄味、ベリー系果汁のポリフェノールに由来する変色に対する好適な抑制効果がもたらされる。本発明により、風味良好かつ保存安定性の高いベリー系果汁入り鉄含有飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明でいう鉄含有飲食品とは、鉄を含む飲食品であればよく鉄の含有量は限定されないが、製品中の鉄含有量が、製品100gあたり鉄換算で、1.0mg以上であることが好ましく、製品100gあたり鉄換算で、1.0~25mgを含む場合に、ベリー系果汁入り鉄含有飲食品の風味が良好となり、変色抑制効果も高いため特に好ましい。
【0011】
本発明にかかる乳化製剤化されていない鉄は、鉄塩が乳化剤で被覆されていないものをいい、特に限定されるものではなく、例えば、水溶性鉄および乳化製剤化されていない不溶性鉄が挙げられ、具体的には塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム(クエン酸鉄ナトリウム)、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、乳酸鉄、硫酸第一鉄、乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄等が挙げられるが、ベリー系果汁入り鉄含有飲食品の風味が良好となる点と変色抑制効果が高い点から乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄が好ましい。ピロリン酸第二鉄は、第二鉄イオンとピロリン酸イオンとの反応によって得られる。市販製剤としては、食品添加物ピロリン酸第二鉄(富田製薬株式会社製)、食品添加物ピロリン酸第二鉄フェルソーブ(富田製薬株式会社製)、食品添加物ピロリン酸第二鉄(太洋化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0012】
乳化製剤化されていない鉄は、水に懸濁させた状態の平均粒子径10μm未満であれば、本発明の鉄含有飲食品に添加した場合の変色抑制度、物性安定性が高く、平均粒子径5μm未満の場合に特に好ましい。平均粒子径10μm未満の乳化製剤化されていない鉄の製造方法は特に限定されず、常法で製造されたものを使用することができる。平均粒子径は、鉄1重量部をイオン交換水99重量部に懸濁し、株式会社堀場製作所製の粒子径分布測定装置LA-960V2を用い、屈折率を1.6として測定した粒子径分布の体積平均値を算出することで得ることができる。変色抑制度は、色差計(日本電色工業製、型式:SE6000D)を用い色調を計測することで測定できる。
【0013】
なお、乳化製剤化したピロリン酸第二鉄は、例えば、飲食品用乳化剤存在下で塩化第二鉄水溶液とピロリン酸四ナトリウム水溶液を中和造塩させる方法や、塩化第二鉄水溶液とピロリン酸四ナトリウム水溶液を中和反応させた後に飲食品用乳化剤により被膜させ、その後遠心分離、膜分離等により固-液分離して固相部を回収することにより得られる。市販製剤としては、ピロリン酸第二鉄を微細均質化し、乳化基材のガティガムを用いて乳化させた製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)などが挙げられる。
【0014】
ベリー系果汁とは、ベリー系果実の汁をいう。その調製方法は特に限定されず、熱水等での抽出、搾汁、すりおろし、破砕または摩砕等の任意の処理を経て、ベリー系果実から得られる汁、ピューレ等が挙げられる。抽出、搾汁等の前に、加水やブランチング処理等の前処理を行ったものや、搾汁後にアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等を用い酵素処理した処理液、加熱により水分を蒸発させて濃縮した濃縮液、適切な濃度に加水した希釈液、乾燥後の微粉末も含まれる。アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁も特に限定されるものではなく、その調製方法は、ベリー系果汁と同様である。
【0015】
ベリー系果汁の調製に用いる果実は特に制限されず、果実が小さく、多肉で食用であり、ポリフェノールを含む果物、部位であればよい。例えば、バラ科のストロベリー、ブラックベリー 、ラズベリー、アローニャ(アロニア)、ジューンベリー、ユキノシタ科のレッドカラント、ブラックカラント、ホワイトカラント、グースベリー、ツツジ科のブルーベリー 、クロマメノキ、コケモモ科のクランベリー等が挙げられる。中でも、ストロベリー果汁、ブルーベリー果汁、ラズベリー果汁またはアローニャ果汁から選ばれる1種または2種以上を鉄含有飲食品に配合することで、アップル果汁と併用した場合の鉄味、変色の抑制効果が高いため好ましい。特に、ベリー系果汁として、ストロベリー果汁、ブルーベリー果汁及びラズベリー果汁から選ばれる1種または2種以上の果汁1に対し、アローニャ果汁を、質量比で、0.05~0.4となるように含むベリー系果汁入り鉄含有飲食品は、果汁の総量を低下させた場合でも高い果汁感を得られ好ましい。この場合、ベリー系果汁の総量は、ストレート果汁換算で、鉄含有飲食品全量に対し3質量%~30質量%とすることが好ましい。また、アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種以上の果汁の含有量は、2~20質量%であることが好ましい。
【0016】
本発明にかかるベリー系果汁入り鉄含有飲食品において、ベリー系果汁、アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種以上の果汁の総量は、ストレート果汁換算の総量として、鉄含有飲食品全量あたり5質量%~50質量%、特に5質量%~20質量%配合することが、果汁感、ベリー感等の風味面から好ましい。ベリー系果汁として、アローニャ果汁と他のベリー系果汁を併用する場合、果汁の総量は、3質量%~30質量%、特に3質量%~20質量%とすることが好ましい。ベリー系果汁に対するアップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁、マスカット果汁からなる群から選ばれる1種以上の果汁の質量比はストレート果汁換算で、1:0.11~1:1.5であることが好ましく、1:0.25~1:1とすることが特に好ましい。
【0017】
本発明のベリー系果汁入り鉄含有飲食品には、通常の飲食品を製造する場合と同様に、副素材を添加することができる。例えば、蔗糖、異性化糖、グルコース、フラクトース、ガラクトオリゴ糖、パラチノース、トレハロース、ラクトース、キシロース、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴等の甘味料、スクラロース、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムK、ステビア等の高甘味度甘味料、大豆多糖類、寒天、澱粉、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム等の他の増粘(安定)剤、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等の酸味料、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE等のビタミン類、ピーチ系、オレンジ系、メロン系、バナナ系等の果汁、ベリー系、オレンジ系、花梨系、シトラス系、アップル系、シソ系、ミント系、アプリコット系、ペア系等のフレーバー類、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等のミネラル類等を添加することが可能である。なお、これらの飲食品素材を添加する際の添加順序について、特に制限はない。
【0018】
本発明にかかるベリー系果汁入り鉄含有飲食品の形態としては、例えば果汁飲料、果実ミックスジュース、果実・野菜ミックスジュース、野菜・果実ミックスジュース、果汁入り清涼飲料、アルコール飲料、発酵乳飲料、機能性飲料、清涼飲料、茶系飲料、スポーツドリンク等の飲料類、乳含有飲食品、米菓、ゼリー、アメ、ガム、洋生菓子等の菓子類等、果汁含有飲食品等が挙げられ、乳含有飲食品とすることが、鉄味、変色の抑制効果の点で好ましい。乳含有飲食品には、発酵乳など乳成分を含む飲食品が含まれる。発酵乳とは、乳もしくは乳製品またはそれらの類似製品を乳酸発酵させて得られる発酵乳製品もしくはその類似製品全般を総称する。具体的には、ヨーグルト等の乳等省令により定められた発酵乳だけでなく、乳酸菌発酵した乳酸菌飲料やケフィア等が含まれる。乳含有飲食品としては、その他に、乳酸菌発酵後に滅菌処理を施した菌液を含む飲食品や、乳成分溶液を含む飲食品、蛋白質強化のために乳蛋白質を使用した飲食品、チーズやバター等の乳加工品を含む飲食品等が挙げられる。ソフトタイプ、ハードタイプ、ドリンクタイプ、フローズンタイプ等が挙げられ、特にソフトタイプとした場合に、鉄味、変色の抑制効果が高く好ましい。鉄含有飲食品中の鉄味、変色抑制効果の観点からは、発酵乳とすることが好ましい。
【0019】
発酵乳の製造に用いられる微生物としては、通常飲食品に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・マリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・デルブルッキィ サブスピーシーズ ブルガリカス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ヘルベティカス等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィルス等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクチス等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカーリス等のエンテロコッカス属細菌、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム等のビフィドバクテリウム属細菌等を挙げることができる。
【0020】
本発明にかかるベリー系果汁入り鉄含有飲食品として、例えばソフトタイプヨーグルトについては、まず、殺菌した乳を乳酸菌で発酵した後、ホモゲナイザー等で均質化した菌液(培養液)と、熱水に増粘剤を溶解・殺菌した増粘剤液と、果汁、色素、香料等を溶解・殺菌した果汁液及び鉄原料を水に分散・殺菌した鉄液をそれぞれ別個に調製し、調整水とともに混合したうえ混合タンク内で攪拌し、その後容器に充填することで製造できる。
【実施例0021】
以下、実施例を挙げて本発明の内容をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
【0022】
実施例1
【0023】
(1)果汁液の調製
【0024】
各種果汁の濃縮液を用いて、表1に示す果汁液を調製した。果汁の濃縮倍率は、ラズベリー果汁が9.21倍、ストロベリー果汁が9.14倍、アローニャ果汁が3,81倍、アップル果汁が4.00倍、オレンジ果汁が5.82倍、パイナップル果汁が5.45倍、ピーチ果汁が3.88倍、ホワイトグレープ果汁が5.00倍、マスカット果汁が5.91倍であるものを用いた。総果汁がストレート果汁換算で15質量%となるようこれらの濃縮果汁をそれぞれ常温のRO水で希釈し、果汁溶液とした。
【0025】
(2)乳成分溶液の調製
【0026】
全粉乳20質量%、グラニュー糖10質量%となるよう両者を65℃に加熱したRO水に溶解し、乳成分を含む溶液を調製した。
【0027】
(3)鉄液の調製
【0028】
各鉄素材を鉄含量として250mg/100gとなるように常温のRO水に分散・懸濁させ、2種類の鉄液を調製した。鉄素材は、乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄であるフェルソーブ(富田製薬株式会社製)と、ピロリン酸第二鉄の乳化製剤であるFe-2010N(太陽化学株式会社製)を用いた。
【0029】
(4)製品の調製
【0030】
果汁液60質量部、乳成分溶液20質量部、鉄液20質量部をビーカー内で撹拌しながら混合し、表1に示す処方の製品を調製した。なお、鉄素材を含まない製品は、鉄液にかえ、純水(RO水)を使用し、表1の果汁含量はストレート果汁換算の値である(以下の実施例も同様である)。
【0031】
【0032】
(5)官能試験
【0033】
上記(4)で調製した製品の一部を専門パネラー5名で飲用し、以下の指標に従い、官能評価した。その結果、表2に示すとおり、アップル果汁またはマスカット果汁と、ベリー系果汁とを併用した場合に、果汁感、ベリー感を損なわず、良好な風味が得られた。また、アップル果汁とベリー系果汁を併用した際に、特に良好な風味が得られた。
【0034】
<評価指標:果汁感、ベリー感>
【0035】
(指標) (評価)
【0036】
5 : かなりある。
【0037】
4 : ある。
【0038】
3 : ややある。
【0039】
2 : ほとんどない。
【0040】
1 : ない。
【0041】
<評価指標:おいしさ>
【0042】
(指標) (評価)
【0043】
5 : かなりおいしい。
【0044】
4 : おいしい。
【0045】
3 : どちらともいえない。
【0046】
2 : ややまずい。
【0047】
1 : まずい。
【0048】
【0049】
(6)色調の測定
【0050】
調製した各製品について、25℃で30分間静置保持した後、色差計(日本電色工業製、型式:SE6000D)で色調を測定した。各製品について、鉄を添加した製品と、鉄を添加していない製品との色差(ΔE値)を下式により算出した。
【0051】
ΔE={(L1-L2)2 +(a1-a2)2 +(b1-b2)2}1/2
【0052】
その結果、表3のとおり、乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄、アップル果汁、オレンジ果汁、パイナップル果汁、ピーチ果汁、ホワイトグレープ果汁からなる群から選ばれる1種の果汁と、ベリー系果汁とを併用した場合に、製品の変色が抑制された。また、アップル果汁とベリー系果汁とを併用した場合に製品の変色が特に抑制された。
【0053】
【0054】
実施例2
【0055】
果汁の種類、比率以外は、実施例1と同様に、表4の処方にて製品を調製し、官能評価、色調の測定を行った。その結果、表5、6のとおり、ベリー系果汁の種類や組み合わせによらず、アップル果汁を併用したものでは変色抑制効果が認められ、風味も良好であった。なお、官能評価については、実施例の指標に、以下の指標も追加した。果汁としてアップル果汁を単独で用いた対照品については、官能評価は行わず、色調の測定のみを行った。
【0056】
<評価指標:渋味>
【0057】
(指標) (評価)
【0058】
5 : 弱い。
【0059】
4 : やや強い。
【0060】
3 : 強い。
【0061】
2 : 強すぎる。
【0062】
1 : かなり強すぎる。
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
実施例3 製造方法検討
【0067】
果汁として、ベリー系果汁とアップル果汁を用い、両者の比率を変えた製品を実施例1と同様に、表7の処方にて調製した。実施例1と同一の指標、条件で官能評価、色調の測定を行った。その結果、表8、9のとおり、質量比でベリー系果汁1に対し、アップル果汁を0.11~1.5(1:0.11~1:1.5)となるように添加した場合に、高い変色抑制効果が認められ、風味も良好であった。特に、ベリー系果汁1に対し、アップル果汁を0.25~1とした場合の評価が優れていた。
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
実施例4
【0072】
(1)鉄液の物性安定性
【0073】
平均粒径の異なる鉄素材について、鉄液調製後の物性安定性を比較した。鉄素材として、3種類の乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄(ピロリン酸鉄A~C)と、乳化されている乳化ピロリン酸第二鉄(乳化ピロリン酸鉄A~C)を用い、鉄素材の濃度が250mg/100gとなる3種類の鉄液を調製した。
【0074】
各溶液を1分間静置した後に外観を確認し、次の指標により物性安定性を評価した。なお、平均粒子径は、ピロリン酸第二鉄1重量部をイオン交換水99重量部に懸濁し、株式会社堀場製作所製の粒子径分布測定装置LA-960V2を用い、屈折率を1.6として測定した粒子径分布の体積平均値を算出した。
【0075】
<評価指標:安定性>
【0076】
(指標) (評価)
【0077】
〇 : 分離や濃度勾配がない。
【0078】
△ : 分離や濃度勾配がややある。
【0079】
× : 明らかに分離している。
【0080】
その結果、鉄素材として乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄を用いた場合には、平均粒子径が小さいもので良好な物性安定性が得られた(表10)。
【0081】
【0082】
(2)色調の測定
【0083】
果汁濃度が、ラズベリー果汁6%、ストロベリー果汁2%、アローニャ果汁2%、アップル果汁5%となる果汁溶液を調製した。別途、全粉乳20質量%、グラニュー糖10質量%の乳成分を含む溶液を調製した。果汁液60重量部、乳成分溶液20重量部、鉄液20重量部を表11のとおり混合して製品を作り、各製品の変色を実施例1と同様に測定した。なお、鉄液中の鉄素材としては、粒子径が10μm以下の乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄(ピロリン酸鉄A~C)と、ピロリン酸第二鉄乳化製剤(乳化ピロリン酸鉄A~C)を用いた。
【0084】
その結果、表11に示すとおり、ピロリン酸鉄A、B、Cを用いた場合に、製品保存時の良好な変色抑制効果が認められた。
【0085】
【0086】
実施例5
【0087】
以下のとおり、ソフトタイプヨーグルトを製造した。
【0088】
(1)菌液の調製
【0089】
脱脂粉乳20%、全粉乳5%を熱水に溶解し、117℃で3秒間殺菌後、37℃に冷却した。その後、ストレプトコッカス・サーモフィルスYIT2001株およびラクトバチルス・カゼイYIT9029株を含むスターター(合計の初発生菌数:1×109/ml)を0.25%接種して、37℃で撹拌培養を行い、pH4.4に到達した時点で10℃以下に冷却した。
【0090】
(2)他の溶液の調製
【0091】
次のとおり各溶液を調製した。
【0092】
{1}クリーム(乳脂肪47%)5質量%水溶液を98℃で30分間殺菌し、30℃以下に冷却して、クリーム液とした。
【0093】
{2}グラニュー糖5質量%、スターチ3質量%、増粘剤(新田ゼラチン株式会社製FM-1690:ゼラチン、ローカストビーンガム、グアーガムを含む)2.5質量%、ピロリン酸第二鉄(フェルソーブ:富田製薬株式会社製)0.15質量%、ビタミンBミックス(葉酸、ビタミンB6、B12を含む)0.2質量%を水に溶解し、95℃で30分間殺菌後、40~50℃に冷却し、増粘剤液とした。
【0094】
{3}ラズベリー果汁15%、アップル果汁15%、ストロベリー果汁5%、アローニャ果汁3%、蔗糖型液糖(Bx糖度:68)40%、クチナシ色素0.1%、結晶クエン酸0.1%、キサンタンガム0.8%、ペクチン0.2%、ベリーミックス香料0.7%を混合、溶解し、103℃で3分間殺菌後、10℃以下に冷却して果汁液とした。
【0095】
(3)混合
【0096】
15MPaで均質化処理した菌液35重量部、クリーム液26重量部、増粘剤液22重量部を撹拌混合して10℃以下に冷却し、更に果汁液17重量部を撹拌混合して、直ちにカップ(ポリプロピレン製)に90g充填した。
【0097】
こうして得たソフトタイプヨーグルト製品について、製造直後、10℃、12日間保存後に、実施例2と同様に、官能評価、色調の測定を行った。あわせて、専門パネラー5名が次の指標に基づき、外観評価を行った。
【0098】
<評価指標:外観>
【0099】
(指標) (評価)
【0100】
5 : とても明るい。
【0101】
4 : 明るい。
【0102】
3 : どちらとも言えない。
【0103】
2 : やや暗い。
【0104】
1 : 暗い。
【0105】
その結果、表12、13のとおり、ベリー系果汁とアップル果汁を併用し、乳化製剤化されていないピロリン酸第二鉄を添加したヨーグルトは、果汁感やベリー感があり渋味は弱く、良好な風味であった。外観は、製造中や保存中の変化が小さく、保存期間を通して、明るく良好であった。
【0106】
【0107】