(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043522
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】液精製装置
(51)【国際特許分類】
B01D 15/10 20060101AFI20220309BHJP
B01D 15/04 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B01D15/10
B01D15/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148831
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 智子
【テーマコード(参考)】
4D017
【Fターム(参考)】
4D017AA01
4D017AA03
4D017AA06
4D017BA04
4D017BA11
4D017BA12
4D017CA03
4D017CA05
4D017CA13
4D017CA17
4D017CB01
4D017DB01
4D017EA05
4D017EB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】pptオーダーでの液の高純度精製に適用可能な液精製装置を提供する。
【解決手段】液精製装置は、内部に多孔質の吸着材12を充填したカラム13と、前記カラムの上流側に設けられ前記カラム内に液を供給する供給部14と、前記カラムの下流側に設けられ前記カラム内を通る前記液に所定の圧力を付与する樹脂製のオリフィス22と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に多孔質の吸着材を充填したカラムと、
前記カラムの上流側に設けられ前記カラム内に液を供給する供給部と、
前記カラムの下流側に設けられ前記カラム内を通る前記液に第1所定値以上の圧力を付与する樹脂製のオリフィスと、
を備える液精製装置。
【請求項2】
前記オリフィスは、フッ素樹脂製である請求項1に記載の液精製装置。
【請求項3】
前記カラムと前記供給部との間の位置に設けられ前記カラム内の液の圧力を前記第1所定値よりも大きい第2所定値以下に維持する逃し弁を備える請求項2に記載の液精製装置。
【請求項4】
前記吸着材は、第1吸着部材を有し、
前記第1吸着部材は、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群より選ばれる一種又は二種以上で構成される請求項3に記載の液精製装置。
【請求項5】
前記吸着材は、第2吸着部材を有し、
前記第2吸着部材は、前記逃し弁から発生する微粒子を吸着可能なフィルターで構成される請求項4に記載の液精製装置。
【請求項6】
前記カラムと前記オリフィスとの間の位置に設けられた切換弁と、
前記切換弁から延びる流路であって、前記オリフィスを含む第1流路よりも大きい流量の前記液を通すことが可能な第2流路と、
を備える請求項1に記載の液精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液を高純度に精製可能な液精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール中の不純物を除去するアルコール精製装置が開示されている。このアルコール精製装置は、イオン交換樹脂等を用いてアルコール中のイオン性の不純物を除去することができる。このアルコール精製装置では、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔の後段に背圧弁を設けている。これによって、イオン交換塔内を流れるアルコールに所定の圧力をかけることで、イオン交換樹脂内に気泡を生じることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5739687号公報
【特許文献2】特公昭52-010107号公報
【特許文献3】特開平4-334503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、pptオーダーでの高純度精製では、背圧弁から溶出される金属微粒子や金属イオンがアルコール等の溶媒に混入する問題がある。このため、上記従来のアルコール精製装置は、pptオーダーでの高純度精製には適用できない問題があった。
従って、本発明は、pptオーダーでの液の高純度精製に適用可能な液精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の本発明により解決される。すなわち、本発明(1)の液精製装置は、
内部に多孔質の吸着材を充填したカラムと、
前記カラムの上流側に設けられ前記カラム内に液を供給する供給部と、
前記カラムの下流側に設けられ前記カラム内を通る前記液に第1所定値以上の圧力を付与する樹脂製のオリフィスと、
を備える。
【0006】
また、本発明(2)の液精製装置は、(1)記載の液精製装置であって、
前記オリフィスは、フッ素樹脂製である。
【0007】
また、本発明(3)の液精製装置は、(2)記載の液精製装置であって、
前記カラムと前記供給部との間の位置に設けられ前記カラム内の液の圧力を前記第1所定値よりも大きい第2所定値以下に維持する逃し弁を備える。
【0008】
また、本発明(4)の液精製装置は、(3)記載の液精製装置であって、
前記吸着材は、第1吸着部材を有し、
前記第1吸着部材は、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群より選ばれる一種又は二種以上で構成される。
【0009】
また、本発明(5)の液精製装置は、(4)記載の液精製装置であって、
前記吸着材は、第2吸着部材を有し、
前記第2吸着部材は、前記逃し弁から発生する微粒子を吸着可能なフィルターで構成される。
【0010】
また、本発明(6)の液精製装置は、(1)記載の液精製装置であって、
前記カラムと前記オリフィスとの間の位置に設けられた切換弁と、
前記切換弁から延びる流路であって、前記オリフィスを含む第1流路よりも大きい流量の前記液を通すことが可能な第2流路と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、pptオーダーでの液の高純度精製に適用可能な液精製装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の液精製装置の全体構成を示す系統図である。
【
図2】
図1に示す液精製装置のオリフィスおよびその周辺構造を示した断面図である。
【
図3】第2実施形態の液精製装置のオリフィスおよびその周辺構造を示した断面図である。
【
図4】第3実施形態の液精製装置のオリフィスおよびその周辺構造を示した断面図である。
【
図5】第4実施形態の液精製装置のオリフィスおよびその周辺構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
液精製装置の実施形態について説明する。液精製装置は、例えば、超純水や純水、その純水を得るための前段階の処理水を得るために用いることができる。液精製装置は、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)等の溶媒精製に用いることができる。前記溶媒の混合物、前記溶媒にポリマー等を溶解した溶液、酸、アルカリ水溶液の精製にも用いることができる。或いは、液精製装置は、例えば、家庭において浄水を得るための家庭用浄水器等として用いることができる。
【0014】
液精製装置は、内部に多孔質の吸着材を充填したカラムと、前記カラムの上流側に設けられ前記カラム内に液を供給する供給部と、前記カラムの下流側に設けられ前記カラム内を通る前記液に所定の圧力を付与する樹脂製のオリフィスと、を備える。
【0015】
カラムの内部には、種々の多孔質の吸着材(粒子)を充填することができる。多孔質の吸着材は、例えば、イオン交換体であってもよいし、活性炭であってもよいし、合成吸着剤、ゼオライトでも良い。またカラムの出口側に微粒子除去フィルターを設置して吸着材(粒子)からの微粒子を除去できる構造で使用してもよい。
【0016】
イオン交換体は、例えば、粒状のカチオン交換樹脂、粒状のキレート樹脂、粒状のアニオン交換樹脂、粒状のカチオン交換樹脂と粒状のキレート樹脂と粒状のアニオン交換樹脂の組み合わせ等の粒状のイオン交換樹脂、モノリス状有機多孔質カチオン交換体、モノリス状有機多孔質キレート交換体、モノリス状有機多孔質アニオン交換体、モノリス状有機多孔質カチオン交換体とモノリス状有機多孔質キレート交換体とモノリス状有機多孔質アニオン交換体の組み合わせ等のモノリス状有機多孔質イオン交換体、又は粒状のイオン交換樹脂とモノリス状有機多孔質イオン交換体の組み合わせである。イオン交換体が、粒状のカチオン交換樹脂、粒状のキレート交換樹脂、粒状のアニオン交換樹脂の組み合わせの場合、粒状のカチオン交換樹脂と粒状のキレート交換樹脂と粒状のアニオン交換樹脂が均一に混合されている混床として用いる場合と、イオン交換体の充填領域の上流側に、粒状のカチオン交換樹脂及び/又は粒状のキレート交換樹脂が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、粒状のアニオン交換樹脂が充填されているか、又はイオン交換体の充填領域の上流側に、粒状のアニオン交換樹脂が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、粒状のカチオン交換樹脂及び/又は粒状のキレート交換樹脂が充填されている複床として用いる場合がある。また、イオン交換体が、モノリス状有機多孔質カチオン交換体とモノリス状有機多孔質アニオン交換体の組み合わせのときは、イオン交換体の充填領域の上流側に、モノリス状有機多孔質カチオン及び/又はモノリス状有機多孔質キレート交換体が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、モノリス状有機多孔質アニオン交換体が充填されているか、又はイオン交換体の充填領域の上流側に、モノリス状有機多孔質アニオン交換体が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、モノリス状有機多孔質カチオン交換体及び/又はモノリス状有機多孔質キレート交換体が充填されている複床として用いる。イオン交換体が、粒状のイオン交換樹脂とモノリス状有機多孔質イオン交換体の組み合わせの場合、イオン交換体の充填領域の上流側に、モノリス状有機多孔質イオン交換体が充填され、且つ、イオン交換体の充填領域の下流側に、粒状のイオン交換樹脂が充填される。
【0017】
粒状のカチオン交換樹脂は、強酸性カチオン交換樹脂であっても、弱酸性カチオン交換樹脂であっても、キレート樹脂でもそれらの併用であってもよい。強酸性カチオン交換樹脂としては、オルライトDS-1、オルライトDS-4、XSC-1415HG等が挙げられる。また、弱酸性カチオン交換樹脂としては、アンバーライト(登録商標)IRC76等が挙げられる。キレート樹脂としては、オルライトDS-21、DS-22等が挙げられる。被処理液中のカチオン性の不純物を低減するためには、カチオン交換樹脂はH形で使用することが望ましい。
【0018】
粒状のアニオン交換樹脂は、強塩基性アニオン交換樹脂であっても、弱塩基性アニオン交換樹脂であっても、それらの併用であってもよい。強塩基性アニオン交換樹脂としては、オルライトDS-2、オルライトDS-5、XSA-2415HG等が挙げられる。また、弱塩基性アニオン交換樹脂としては、オルライトDS-6、グルカミン基を官能基に持つホウ素選択性陰イオン交換樹脂としては、アンバーライト(登録商標)IRA743が挙げられる。被処理液中のアニオン性の不純物を低減するためには、アニオン交換樹脂はOH形で使用することが望ましい。ただし炭酸が不純物にならない場合は、炭酸形、重炭酸形で使用することができる。
【0019】
また、イオン交換体は、これらの混床のイオン交換体であってもよい。粒状の強酸性カチオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)と粒状の強塩基性アニオン交換樹脂(陰イオン交換樹脂)との混合品である混床イオン交換樹脂としては、オルライトDS-3、オルライトDS-7、XSM-N411HG等が挙げられる。
【0020】
粒状のイオン交換体の平均粒径は、特に制限されないが、好ましくは200~1000μm、特に好ましくは300~800μmである。なお、イオン交換体の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定される値である。
【0021】
モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、モノリス状の有機多孔質体にイオン交換基が導入されているものであれば、特に制限されないが、例えば、以下に示すモノリス状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
【0022】
モノリス状有機多孔質イオン交換体としては、例えば、連続骨格相と連続空孔相からなり、連続骨格の厚みは1~100μm、連続空孔の平均直径は1~1000μm、全細孔容積は0.5~50mL/gであり、カチオン交換基又はアニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当たりのイオン交換容量が1~6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリス状有機多孔質イオン交換体(以下、第一の形態のモノリス状有機多孔質イオン交換体とも記載する。)が挙げられる。
【0023】
また、第一の形態のモノリス状有機多孔質イオン交換体としては、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が平均直径30~300μmの開口となる連続マクロポア構造体であり、全細孔容積が0.5~10ml/g、カチオン交換基又はアニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1~6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しており、且つ、連続マクロポア構造体(乾燥体)の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中25~50%であるモノリス状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
【0024】
また、第一の形態のモノリス状有機多孔質イオン交換体としては、前記モノリス状有機多孔質イオン交換体が、イオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.1~5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが1~60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が10~200μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であり、全細孔容積が0.5~10mL/gであり、カチオン交換基又はアニオン交換基が導入されており、乾燥状態での重量当りのイオン交換容量が1~6mg当量/gであり、イオン交換基が有機多孔質イオン交換体中に均一に分布しているモノリス状有機多孔質イオン交換体が挙げられる。
【0025】
粒子がイオン交換体で構成される場合の被処理液(液)は、例えば、IPA(イソプロピルアルコール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)である。酸性からアルカリ性を示す水溶液を被処理液(液)としても良い。被処理液(液)中で除去される不純物は、例えば、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cd、Pb等の金属イオン、Cl、SO4、NO3、PO4、CO3、HCO3等のアニオン、ギ酸、酢酸、マレイン酸、プロピオン酸等の有機酸、プラスないしマイナスの荷電を持つ中から高分子化合物である。
【0026】
活性炭は、商業的に入手可能な活性炭である。活性炭粒子の直径は、任意である。活性炭は、例えば0.7nm~数十μmの直径の微細孔を有し、被処理液(液)中の有機不純物(有機酸、色素、油など)を物理的に除去できる。また、活性炭中の炭素成分を用いて塩素を分解できる。活性炭としては、炭化フェノール樹脂が挙げられる。
【0027】
以下図面を参照して、実施形態の液精製装置の具体的な態様について説明する。
[第1実施形態]
【0028】
図1、
図2を参照して、第1実施形態の液精製装置11について説明する。液精製装置11は、カラム13内に精製対象の液を通すことによって、カラム13内の吸着剤に不純物を吸着させて、液を精製することができる。
【0029】
液精製装置11は、内部に多孔質の吸着材12を充填したカラム13(イオン交換塔)と、カラム13の上流側に設けられカラム13内に液を供給する供給部14と、カラム13の上流側に設けられる圧力計16と、カラム13の下流側に設けられた第1三方弁17と、第1三方弁17から延びる第1流路であるサンプリングライン18と、第1三方弁17から延びる第2流路であるブローライン21と、サンプリングライン18の途中に設けられカラム13内を通る液に第1所定値以上の圧力を付与する樹脂製のオリフィス22と、カラム13の上流側に設けられカラム13内の液の圧力を第2所定値以下に維持する逃し弁15と、カラム13の上流側に設けられる第1予備三方弁23および第2予備三方弁24と、を備える。
【0030】
液精製装置11は、サンプリングライン18の途中でオリフィス22よりも下流側に設けられたサンプリング用クリーンブース25と、サンプリングライン18の途中でサンプリング用クリーンブース25よりも下流側に設けられたグローブボックス26と、サンプリングライン18の途中でサンプリング用クリーンブース25内に設けられた第2三方弁27と、第2三方弁27から分岐して精製された液が供給される第1ユーズポイント28と、サンプリングライン18の途中でグローブボックス26内に設けられた第3三方弁31と、第3三方弁31から分岐して精製された液が供給される第2ユーズポイント32と、を備える。
【0031】
吸着材12は、イオン交換樹脂で構成された第1吸着部材33と、逃し弁15から発生する金属の微粒子を吸着可能なフィルターで構成された第2吸着部材34と、を有する。第1吸着部材33および第2吸着部材34は、カラム13の内部で直列に並んでいる。第1吸着部材33および第2吸着部材34は、多孔質の吸着材の一例である。カラム13は、PFA等のフッ素樹脂によって形成されている。
【0032】
第1吸着部材33は、カラム13の内部に充填されたイオン交換樹脂で構成されている。また、第2吸着部材34は、平板状に成形された不織布のフィルターによって構成されている。第2吸着部材34は、第1吸着部材33の下流側に配置されており、逃し弁15や第1吸着部材33(イオン交換樹脂)から発生する微粒子を吸着・除去できる。
【0033】
カラム13に対する液の流れ方向は、任意であって良い。すなわち、液がカラム13の上方から供給されて、カラム13内で精製されて、下方に液が抜けていくダウンフロー形式であってもよいし、液がカラム13の下方から供給されて、カラム13内で精製されて、上方に液が抜けていくアップフロー形式であってもよい。
図1の例では、ダウンフロー形式を示している。
【0034】
多孔質の吸着材12の組み合わせは、イオン交換樹脂で構成される第1吸着部材33と、不織布のフィルターで構成される第2吸着部材34と、の組み合わせに限られるものではない。第1吸着部材33は、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群より選ばれる一種であってもよい。或いは、第1吸着部材33は、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群から任意に選択される二種以上の組み合わせで構成されてもよい。すなわち、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤は、それぞれ個別のケースに収納されたカートリッジの形態で構成されてもよい。個別のケースには、液を通すことが可能な複数の通水孔が設けられており、ケースの内側にイオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着のいずれかが収納されている。これらカートリッジ形態で構成されたイオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤を適宜に二種以上組み合わせてカラム13内に配置して第1吸着部材33を構成してもよい。
【0035】
フィルターで構成される第2吸着部材34は、第1吸着部材33の下流側だけでなく、必要に応じて第1吸着部材33の上流側に設けられていてもよい。第2吸着部材34は、省略されていてもよい。
【0036】
供給部14は、精製処理がなされる対象の液が貯留される金属製のタンクである。供給部14の内部には不活性化ガスである窒素ガスが送られている。供給部14は、図示しないポンプを有し、ポンプの駆動によって、内部に貯留された液をカラム13に送ることができる。供給部14内には、例えば、精製対象となる液が貯留されている。この精製対象の液は、任意であり、水又は水溶液であってもよいし、IPA(イソプロピルアルコール)、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル)等の溶媒(非水液)であってもよい。精製対象の液は、水又は溶媒の混合物、水又は溶媒にポリマー等を溶解した溶液、或いは、酸又はアルカリ水溶液であってもよい。
【0037】
逃し弁15は、カラム13と供給部14との間の位置に設けられている。逃し弁15は、一般的な金属製のリリーフ弁で構成されており、カラム13内の圧力が所定値(第2所定値)以上になった際に、液を周囲に放出し、カラム13周辺の圧力を所定値以下に下げる役割を果たす。これによって、カラム13およびその周辺の構造(スリーブ、三方弁等)が異常に高圧になった際に、これらが破損してしまうことが防止される。すなわち、逃し弁15は、カラム13内部の液の圧力を第2所定値以下に規制することができる。第2所定値は、オリフィス22が規定する、カラム13内を通る液の圧力である第1所定値よりも大きい所定の値である。第2所定値は、例えば、ゲージ圧で1MPaであり、好ましくは0.5MPaであり、より好ましくは0.25MPaである。
【0038】
第1三方弁17は、耐薬品性の良好なPTFE、PFA等のフッ素樹脂で構成されている。第1三方弁17は、カラム13とオリフィス22との間の位置に設けられた切換弁の一例である。第1三方弁17は、カラム13がオリフィス22を含む第1流路(サンプリングライン18)と接続した状態と、カラム13が第1三方弁17から延びる第2流路(ブローライン21)と接続した状態と、の間で接続状態を切り換えることができる。
【0039】
第2三方弁27および第3三方弁31は、PTFE、PFA等のフッ素樹脂で構成されている。サンプリングライン18を構成する管(チューブ)もPTFE、PFA等のフッ素樹脂で構成されている。ブローライン21を構成する管は、鉄管、樹脂管等、任意の材料で構成されてよい。ブローライン21(第2流路)は、サンプリングライン18とは異なり、途中にオリフィス22を介在させていないため、サンプリングライン18(第1流路)よりも著しく大きい流量の液を通すことができる。
【0040】
第1予備三方弁23および第2予備三方弁24は、PTFE、PFA等のフッ素樹脂で構成されている。
【0041】
本実施形態において、オリフィス22は、樹脂製のオリフィススリーブで構成されている。より詳細には、オリフィス22は、例えばフッ素樹脂製のオリフィススリーブで構成されている。さらに詳細には、オリフィス22は、例えばPTFE、PFA等で形成されたオリフィススリーブで構成されている。
【0042】
図2に示すように、オリフィス22は、オリフィススリーブ本体35と、オリフィススリーブ本体35に対してねじによる係合を用いて接続されるアダプター部材36と、を有する。したがって、オリフィススリーブ本体35およびアダプター部材36のそれぞれは、樹脂、例えばフッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA等)で形成されている。なお、オリフィススリーブ本体35およびアダプター部材36のうち、少なくとも一方が樹脂、例えばフッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA等)で形成されていてもよい。ここで、オリフィススリーブ本体35およびアダプター部材36のそれぞれを、樹脂製、例えばフッ素樹脂製にするという概念には、オリフィススリーブ本体35およびアダプター部材36のそれぞれで、内部を通る液に接触する部分(接液部)に対して、樹脂、例えばフッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA等)をコーティングすることが含まれる。アダプター部材36は、雄ねじ部36Aを有する。アダプター部材36は、オリフィススリーブ本体35の内側に形成された雌ねじ部35Aに対して当該雄ねじ部36Aを係合させることで、オリフィススリーブ本体35に固定できる。アダプター部材36は、オリフィススリーブ本体35の内部に差し込まれる第1接続部41と、第1接続部41とは反対側に設けられる第2接続部42と、を有する。第2接続部42は、サンプリングライン18を構成する管の端部に接続されている。
【0043】
オリフィススリーブ本体35は、継手部43と、継手部43の内側に設けられる空洞部44と、継手部43に設けられ空洞部44の内径よりも極端に小さい内径を有する狭窄部45と、を有する。継手部43の外側に、サンプリングライン18を構成するチューブの端部が接続される。
【0044】
狭窄部45の内径は、目的とする背圧の大きさ(例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上)、サンプリングライン18を構成する管の内径、精製対象となる液の室温における粘度、サンプリングライン18および狭窄部45を流れる液の流速等を考慮して、適宜に設定できる。これにより、オリフィス22(狭窄部45)は、カラム内を通る液に対して第1所定値以上の圧力を付与することができる。オリフィス22が規定する第1所定値は、ゲージ圧で0.05MPaであり、好ましくは0.025MPaである。
【0045】
サンプリング用クリーンブース25、第1ユーズポイント28、グローブボックス26、および第2ユーズポイント32は、例えば、半導体製造工場内に設置されている。本実施形態の液精製装置11で精製された液は、例えば、半導体製造工程において使用される。サンプリング用クリーンブース25、第1ユーズポイント28、グローブボックス26、および第2ユーズポイント32は、半導体以外の他の製品の製造工場等に設置されてもよい。
【0046】
続いて、本実施形態の液精製装置11の使用方法および作用について説明する。本実施形態の液精製装置11は、液を生成する精製モードと、カラム13等を洗浄する洗浄モードと、の2つのモードの間で切換え可能である。この精製モードと洗浄モードとの間の切り替えは、第1三方弁17の接続状態を切り替えることで行うことができる。すなわち、オリフィス22を含むサンプリングライン18にカラム13を接続した場合には、精製モードが実行される。そして、第1三方弁17を切り替えて、カラム13をブローライン21に接続した場合には、洗浄モードが実行される。以下に、各モードの詳細について説明する。
【0047】
施設管理者は、第1三方弁17を操作してカラム13をサンプリングライン18に接続する。この状態で、ポンプを駆動することで、精製モードを開始できる。ポンプの駆動力によって、供給部14からカラム13に向けてIPA等の液が送られる。カラム13内を通る液は、第1三方弁17を経由してオリフィス22を含むサンプリングライン18に供給される。このとき、サンプリングライン18には、オリフィス22の影響によって、極端に大きな流路抵抗が付与される。この流路抵抗によって、カラム13内に背圧が付与される。カラム13内に付与される背圧は、例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上である。この背圧によって、カラム13の第1吸着部材33であるイオン交換樹脂中の水分に溶解していた気体が気泡となって現れてしまうことが防止される。
【0048】
すなわち、含水させたイオン交換樹脂には、40~60質量%の水分が含有される。このため、このようなイオン交換樹脂に対してIPA等の非水液を通液すると、イオン交換樹脂の内部の水分が徐々にIPA等に置換される。一般に、混合溶媒に対する気体の飽和溶解量は、単独溶媒に対する気体の飽和溶解量に比して小さい。このため、イオン交換樹脂に対して初めてIPA等を通す際には、イオン交換樹脂の内部の水分に溶けていた気体が、IPA-水の混合溶媒の飽和溶解量を超えて、気泡としてカラム13内に発生することとなる。
【0049】
しかしながら、本実施形態では、カラム13内に0.05MPa以上の背圧が付与されているために、高圧力下で当該気泡になりえる気体をIPA等に溶かし込むことができる。これによって、カラム13内で気泡が発生することが防止される。
【0050】
また、イオン交換樹脂が上記した炭酸形、重炭酸形で構成される場合には、反応に際してCO2が発生して、カラム13内に気泡が発生することとなる。しかしながら、本実施形態の液精製装置11では、オリフィス22によってカラム13内に背圧が付与されているために、CO2に起因する気泡を液中に溶かし込むことができる。これによって、カラム13内に気泡が発生することが防止される。
【0051】
なお、カラム13を通る液に付与される背圧は、逃し弁15の作用によって、第2所定値を超えて大きくなることがない。これによって、カラム13内部の圧力が高くなりすぎて、カラム13やその周辺の構造を破損してしまう危険が回避される。
【0052】
カラム13において液が第1吸着部材33であるイオン交換樹脂と、第2吸着部材34であるフィルターの間を通って、液から不純物が除去される。第1吸着部材33(イオン交換樹脂)では、液中のイオン性の不純物が吸着・除去される。第2吸着部材34(フィルター)では、逃し弁15から漏れ出した金属の微粒子や第1吸着部材33(イオン交換樹脂)から漏れ出した微粒子が吸着・除去される。
【0053】
カラム13で精製され、サンプリングライン18を通る液は、
図1に示すように、オリフィス22を通って、サンプリング用クリーンブース25の第1ユーズポイント28と、グローブボックス26の第2ユーズポイント32と、に供給される。第1ユーズポイント28および第2ユーズポイント32で、精製された液が実施の使用に供される。
【0054】
液精製装置11を所定の期間稼働させると、第1吸着部材33(イオン交換樹脂)における不純物の吸着性能が低下する。このため、施設管理者は、液精製装置11を所定の期間稼働させた後に、酸を含む水溶液をカラム13に通過させる洗浄モードを行うことで、イオン交換樹脂の吸着性能の再生(洗浄)を行うことができる。
【0055】
洗浄モードに先立ち、施設管理者は、ポンプを停止してカラム13に対する液の送りを停止する。施設管理者は、第1三方弁17を切り替えて、カラム13にブローライン21が接続するようにする。施設管理者は、第2予備三方弁24を切り替えて、カラム13の上流側に、酸を含む液を貯留した洗浄液タンク(図示省略)を接続する。ポンプ等の駆動によって、カラム13内に酸を含む水溶液を送ると、カラム13内の第1吸着部材33(イオン交換樹脂)が洗浄される。これによって、イオン交換樹脂が再生(リフレッシュ)される。この洗浄モードを経ることにより、イオン交換樹脂は、液中のイオン性の不純物を再び吸着除去できるようになる。
【0056】
なお、洗浄モードでは、カラム13中に発生する気泡の影響を考慮する必要がないため、ブローライン21には背圧を付与するためのオリフィス22が設けられていない。
【0057】
洗浄モードで所定時間カラム中のイオン交換樹脂を洗浄し、イオン交換樹脂の再生が完了した後、施設管理者は、洗浄液タンクから酸を含む液の送りを停止し、洗浄モードを終了する。施設管理者は、第1三方弁17を切り替えてカラム13にサンプリングライン18を接続する。また、施設管理者は、第2予備三方弁24を切り替えてカラム13に供給部14を接続する。施設管理者は、精製モードを再開するため、ポンプを駆動させ、供給部14からカラム13内に液を送る。これによって、カラム13内の第1吸着部材33であるイオン交換樹脂の内部の水分がIPA等の液に置換される。その際、先に行った精製モードと同様に、オリフィス22によってカラム13内に背圧が付与されるために、カラム13内で気泡が発生することが防止される。カラム13で精製された液は、サンプリングライン18を経由して第1ユーズポイント28および第2ユーズポイント32で実際の利用に供される。
【0058】
このように、施設管理者は、一定の時間間隔で上記精製モードと洗浄モードとを切り替えて、液精製装置11を運用することができる。その際、第1三方弁17の切り替えによって上記精製モードと洗浄モードとを迅速に切り替えることができ、切り替えに際してほとんど時間を要しない。また、上記精製モードと洗浄モードとを切り替えは、コンピュータを用いて一定の時間間隔で行っても当然によい。その際、液精製装置11に含まれる第1~第3三方弁17、27、31および第1、第2予備三方弁23、24のそれぞれは、コンピュータで制御可能な、例えば電磁弁等で構成することができる。
【0059】
以下の実施形態では、主として上記第1実施形態と異なる部分を説明する。第1実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
[第2実施形態]
【0060】
図3を参照して、第2実施形態の液精製装置11について説明する。本実施形態の液精製装置11は、オリフィス22の構造が異なっている。
【0061】
オリフィス22は、サンプリングライン18に接続する接続部となる上流端部51および下流端部52を有する接続管53と、接続管の内部に差し込まれたスリーブ状のオリフィス本体54と、を有する。オリフィス本体54は、接続管53の内側の管路に対して圧入によって差し込まれている。オリフィス本体54は、接続管53の内径よりも極端に内径が小さくなった狭窄部45を有する。接続管53およびオリフィス本体54は、例えばフッ素樹脂製である。さらに詳細には、接続管53およびオリフィス本体54は、例えばPTFE、PFA等で形成されている。
【0062】
狭窄部45の内径は、目的とする背圧の大きさ(例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上)、サンプリングライン18を構成する管の内径、精製対象となる液の室温における粘度、サンプリングライン18および狭窄部45を流れる液の流速等を考慮して、適宜に設定できる。これにより、オリフィス22(狭窄部45)は、カラム内を通る液に対して第1所定値以上の圧力を付与することができる。オリフィス22が規定する第1所定値は、ゲージ圧で0.05MPaであり、好ましくは0.025MPaである。
【0063】
本実施形態の構造のオリフィス22を有する液精製装置11によっても、第1実施形態の液精製装置11と同様の作用効果を奏する。
[第3実施形態]
【0064】
図4を参照して、第3実施形態の液精製装置11について説明する。本実施形態の液精製装置11は、オリフィス22の構造が異なっている。
【0065】
オリフィス22は、一対のフランジ管部55の接合面に挟まれて保持された円盤状をなしている。オリフィス22は、フランジ管部55の内径よりも極端に内径が小さくなった狭窄部45を有する。一対のフランジ管部55は、サンプリングライン18の途中に介在されている。フランジ管部55同士は、オリフィス22を間に挟んで互いに突き合わせられるように、複数のボルト・ナット(ボルト・ナットの締結位置を一点鎖線で示す)で接合される。
【0066】
オリフィス22は、フランジ管部55の内径よりも極端に内径が小さくなった狭窄部45を有する。
【0067】
狭窄部45の内径は、目的とする背圧の大きさ(例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上)、サンプリングライン18を構成する管の内径、精製対象となる液の室温における粘度、サンプリングライン18および狭窄部45を流れる液の流速等を考慮して、適宜に設定できる。これにより、オリフィス22(狭窄部45)は、カラム内を通る液に対して第1所定値以上の圧力を付与することができる。オリフィス22が規定する第1所定値は、ゲージ圧で0.05MPaであり、好ましくは0.025MPaである。
【0068】
本実施形態の構造のオリフィス22を有する液精製装置11によっても、第1実施形態の液精製装置11と同様の作用効果を奏する。
[第4実施形態]
【0069】
図5を参照して、第4実施形態の液精製装置11について説明する。本実施形態の液精製装置11は、オリフィス22の構造が異なっている。
【0070】
本実施形態において、オリフィス22は、樹脂製のオリフィススリーブで構成されている。より詳細には、オリフィス22は、例えばフッ素樹脂製のオリフィススリーブで構成されている。さらに詳細には、オリフィス22は、例えばPTFE、PFA等で形成されたオリフィススリーブで構成されている。
【0071】
図2に示すように、オリフィス22は、先端に円筒部36Aとその外周面に形成された雄ねじ部36Bとを有するアダプター部材36と、アダプター部材36の円筒部36Aの内側に回転可能に嵌め込まれて保持されるオリフィススリーブ本体35と、アダプター部材36の雄ねじ部36Bに係合される雌ねじ部61Aを有するナット部材61と、を有する。
【0072】
アダプター部材36は、先端とは反対側の他端でサンプリングライン18に接続されていてもよいし、先端とは反対側の他端で先端側とは直交するようにエルボ形状に折れ曲がっていてもよい。
【0073】
オリフィススリーブ本体35は、継手部43と、継手部43の内側に設けられる空洞部44と、継手部43に設けられ空洞部44の内径よりも極端に小さい内径を有する狭窄部45と、を有する。継手部43の外側に、サンプリングライン18を構成するチューブの端部が接続される。
【0074】
オリフィススリーブ本体35の継手部43の外側にサンプリングライン18を構成するチューブが被せられている。ナット部材61は、貫通孔部61Bを介してサンプリングライン18の外周面に当接し、サンプリングライン18を構成するチューブがオリフィススリーブ本体35から脱落しないようにこれを保持できる。サンプリングライン18を構成するチューブは、アダプター部材36の円筒部36Aの内面で差し込まれて保持される。
【0075】
オリフィススリーブ本体35、アダプター部材36、およびナット部材61のそれぞれは、樹脂、例えばフッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA等)で形成されている。なお、オリフィススリーブ本体35およびアダプター部材36が樹脂、例えばフッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA等)で形成され、ナット部材61が他の材料で形成されていてもよい。ここで、オリフィススリーブ本体35およびアダプター部材36のそれぞれを、樹脂製、例えばフッ素樹脂製にするという概念には、オリフィススリーブ本体35およびアダプター部材36のそれぞれで、内部を通る液に接触する部分(接液部)に対して、樹脂、例えばフッ素樹脂(例えば、PTFE、PFA等)をコーティングすることが含まれる。
【0076】
狭窄部45の内径は、目的とする背圧の大きさ(例えば、ゲージ圧で0.05MPa以上)、サンプリングライン18を構成する管の内径、精製対象となる液の室温における粘度、サンプリングライン18および狭窄部45を流れる液の流速等を考慮して、適宜に設定できる。これにより、オリフィス22(狭窄部45)は、カラム内を通る液に対して第1所定値以上の圧力を付与することができる。オリフィス22が規定する第1所定値は、ゲージ圧で0.05MPaであり、好ましくは0.025MPaである。
【0077】
本実施形態の構造のオリフィス22を有する液精製装置11によっても、第1実施形態の液精製装置11と同様の作用効果を奏する。
【0078】
上記第1~第4実施形態によれば、以下のことがいえる。液精製装置11は、内部に多孔質の吸着材12を充填したカラム13と、カラム13の上流側に設けられカラム13内に液を供給する供給部14と、カラム13の下流側に設けられカラム13内を通る前記液に第1所定値以上の圧力を付与する樹脂製のオリフィス22と、を備える。
【0079】
この構成によれば、樹脂製のオリフィス22を用いた極めて簡単な構造によって、カラム13内に背圧を付与することができる。これによって、第1所定値の圧力下で、吸着材12から発生する気泡をカラム13を通る液中に溶かし込む(吸収させる)ことができる。すなわち、吸着材12がイオン交換樹脂で構成される場合には、カラム13内を通る溶媒の種類が変更される際に、カラム13内に気泡が発生する問題がある。その場合には、カラム13内で気泡の発生個所に液が流れなくなるという片流れ現象を生じ、カラム13において当初予定した不純物除去性能を発揮できなくなる問題がある。上記構成によれば、片流れを防止して、設計値通りの不純物除去性能を発揮できる。
【0080】
また、オリフィス22が樹脂製であるために、オリフィス22から金属の微粒子や金属イオンが漏れ出して、これらが生成された液に混入してしまう不具合を防止できる。さらに、上記オリフィス22を用いた構造は、内径の小さい抵抗管等を用いた構造に比して、より小さい内径の狭窄部を適宜に設定できるメリットがある。また、オリフィス22を用いる方が、抵抗管を用いる構造に比して流路を短く構成することができ、洗浄性も良好となり清浄度が高くなるメリットを有する。
【0081】
また、吸着材12が活性炭等で構成される場合には、活性炭の微細孔中に空気が残存している場合がある。この構成によれば、オリフィス22によってカラム13内に背圧をかけることで、活性炭の微細孔中の気泡を第1所定値の圧力下で溶媒に溶け込ませることができる。これによって、カラム13内において活性炭の微細孔中にも液を通すことができ、設計値通りの不純物除去性能を発揮できる。
【0082】
オリフィス22は、フッ素樹脂製である。この構成によれば、耐薬品性の高いフッ素樹脂によってオリフィス22を形成できる。これによって、精製される液によってオリフィス22が侵されて膨潤したり、浸食されたりする恐れがない。また、オリフィス22から生じた微粒子が精製された液中に混入してしまう不具合を防止して、清浄度の高い精製液を提供できる。
【0083】
液精製装置11は、カラム13と供給部14との間の位置に設けられカラム13内の液の圧力を前記第1所定値よりも大きい第2所定値以下に維持する逃し弁15を備える。この構成によれば、オリフィス22によって背圧を付与する構造で、カラム13内の圧力が異常に高くなってしまった場合に、逃し弁15を介して液を外部に排出させることができる。これによって、カラム13やオリフィス22等が高い圧力で破損してしまう危険を防止できる。
【0084】
吸着材12は、第1吸着部材33を有し、第1吸着部材33は、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性炭、および合成吸着剤からなる群より選ばれる一種又は二種以上で構成される。この構成によれば、気泡を抱き込みやすい第1吸着部材33において、オリフィス22を用いてカラム13内に背圧を付与する簡単な構造によって、カラム13内に生じた気泡を液中に溶け込ませることができる。これによって、カラム13内で気泡を生じることを防いでカラム13中で片流れが発生することを防止し、設計値通りの精製性能を発揮することができる。
【0085】
吸着材12は、第2吸着部材34を有し、第2吸着部材34は、逃し弁15から発生する微粒子を吸着可能なフィルターで構成される。この構成によれば、逃し弁15から発生する微粒子を第2吸着部材34で吸着することができる。これによって、装置の安全上必要不可欠な逃し弁15から生じる不純物を精製後の液から除去することができる。
【0086】
液精製装置11は、カラム13とオリフィス22との間の位置に設けられた切換弁と、前記切換弁から延びる流路であって、オリフィス22を含む第1流路よりも大きい流量の前記液を通すことが可能な第2流路と、を備える。
【0087】
この構成によれば、例えば、カラム内の吸着材を洗浄する洗浄モード等において、オリフィスを通る流量を超える流量の液を流して、カラム内を洗浄することができる。これによって、洗浄モード等においてカラムの洗浄効率を向上させることができる。また、切換弁を介した構造を採用することで、上記したモードの切換時にゴミや微粒子が精製された液中に混入してしまうことがなく、液精製装置11の清浄度を高く維持することができる。
【0088】
上記した実施形態は、種々の置き換えや変形を加えて実施できる。
【実施例0089】
(実施例1)イオン交換樹脂(湿潤)
【0090】
強カチオンと強アニオンの混合樹脂(イオン交換樹脂)であるオルライトDS-3をPFA製のビーカーでIPAと混合して500mlの湿潤オルライトDS-3を用意した。湿潤オルライトDS-3はスラリー状をなしていた。このスラリー状の湿潤オルライトDS-3をPFA製のカラムに充填した。カラムを密閉し、カラムの出口にサンプリングラインを接続し、このサンプリングラインの途中に、狭窄部の内径が0.2mm、狭窄部の長さが2mmのPTFE製のオリフィスを設置した。その後、カラムに対してSV5(SVは、単位時間当たり、体積基準でイオン交換樹脂に対して何倍の液体が流れるかを示す)でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値がゲージ圧で0.05MPaを示し、カラム内に背圧がかかっていることが確認された。通液中にイオン交換樹脂に気泡を生じることはなかった。
(比較例1-1)イオン交換樹脂(湿潤)
【0091】
強カチオンと強アニオンの混合樹脂(イオン交換樹脂)であるオルライトDS-3をPFA製のビーカーでIPAと混合して500mlの湿潤オルライトDS-3を用意した。湿潤オルライトDS-3はスラリー状をなしていた。このスラリー状の湿潤オルライトDS-3をPFA製のカラムに充填した。カラムを密閉し、カラムの出口にブローライン(オリフィスを設置しない流路)を接続した。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値は常圧(大気圧)を示した。通液中にイオン交換樹脂に気泡を生じた。
(比較例1-2)イオン交換樹脂(湿潤)
【0092】
強カチオンと強アニオンの混合樹脂(イオン交換樹脂)であるオルライトDS-3をPFA製のビーカーでIPAと混合して500mlの湿潤オルライトDS-3を用意した。湿潤オルライトDS-3はスラリー状をなしていた。このスラリー状の湿潤オルライトDS-3をPFA製のカラムに充填した。カラムを密閉し、カラムの出口にサンプリングラインを接続した。このサンプリングラインの途中に、PFA製のニードルバルブを設けた。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液しながら、カラムに背圧がゲージ圧で0.05MPa以上かかるまでニードルバルブを微調整しながらサンプリングラインの流路の内径(断面積)を絞った。その後、カラムの上流に位置する圧力計の値がゲージ圧で0.05MPaを示し、カラム内に背圧がかかっていることが確認された。通液中にイオン交換樹脂に気泡を生じることはなかった。ただし、ニードルバルブを用いた背圧の調整に30分の時間を要した。
(実施例2)イオン交換樹脂(乾燥)
【0093】
強カチオンと強アニオンの混合樹脂(イオン交換樹脂)である乾燥オルライトDS-3を必要量用意した。その際、溶媒で湿潤させたときに500mlになるように、乾燥オルライトDS-3の重量を予め測定して、必要な重量の乾燥オルライトDS-3をPFA製のカラムに充填した。カラムの出口にサンプリングラインを接続し、このサンプリングラインの途中に、狭窄部の内径が0.2mm、狭窄部の長さが2mmのPTFE製のオリフィスを設置した。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値がゲージ圧で0.05MPaを示し、カラム内に背圧がかかっていることが確認された。乾燥樹脂が充填されたカラム内にIPAを満たすと、乾燥オルライトDS-3の間の気泡や乾燥オルライトDS-3の内部に存在する気泡が確認された。しかしながら背圧をかけてIPAを3時間通液すると、気泡が消失した。
(比較例2)イオン交換樹脂(乾燥)
【0094】
強カチオンと強アニオンの混合樹脂(イオン交換樹脂)である乾燥オルライトDS-3を必要量用意した。その際、溶媒で湿潤させたときに500mlになるように、乾燥オルライトDS-3の重量を予め測定して、必要な重量の乾燥オルライトDS-3をPFA製のカラムに充填した。カラムを密閉し、カラムの出口にブローライン(オリフィスを設置しない流路)を接続した。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値は常圧(大気圧)を示した。カラム内にIPAを満たすと、乾燥オルライトDS-3の間に存在する気泡や乾燥オルライトDS-3の内部に存在する気泡が確認された。これらの気泡は、IPAを3時間通液しても消失しなかった。
(実施例3)ゼオライト(乾燥)
【0095】
A型ゼオライト、ゼオラムSA-500A(東ソー製)を必要量用意した。その際、溶媒で湿潤させたときに500mlになるように、乾燥ゼオラムSA-500Aの重量を予め測定して、必要な重量の乾燥ゼオラムSA-500AをPFA製のカラムに充填した。カラムの出口にサンプリングラインを接続し、このサンプリングラインの途中に、狭窄部の内径が0.2mm、狭窄部の長さが2mmのPTFE製のオリフィスを設置した。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値がゲージ圧で0.05MPaを示し、カラム内に背圧がかかっていることが確認された。カラム内にIPAを満たすと、乾燥ゼオラムSA-500A間に存在する気泡や乾燥ゼオラムSA-500Aの内部に存在する気泡が確認された。しかしながら背圧をかけてIPAを3時間通液すると、気泡が消失した。
(比較例3)ゼオライト(乾燥)
【0096】
A型ゼオライト、ゼオラムSA-500A(東ソー株式会社製)を必要量用意した。その際、溶媒で湿潤させたときに500mlになるように、乾燥ゼオラムSA-500Aの重量を予め測定して、必要な重量の乾燥ゼオラムSA-500AをPFA製のカラムに充填した。カラムを密閉し、カラムの出口にブローライン(オリフィスを設置しない流路)を接続した。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値は常圧(大気圧)を示した。カラム内にIPAを満たすと、ゼオラムSA-500Aの間に存在する気泡やゼオラムSA-500Aの内部に存在する気泡が確認された。これらの気泡は、IPAを3時間通液しても消失しなかった。
(実施例4)活性炭(乾燥)
【0097】
炭化フェノール樹脂(株式会社MET製)を必要量用意した。その際、溶媒で湿潤させたときに500mlになるように、炭化フェノール樹脂の重量を予め測定して、必要な重量の炭化フェノール樹脂をPFA製のカラムに充填した。カラムの出口にサンプリングラインを接続し、このサンプリングラインの途中に、狭窄部の内径が0.2mm、狭窄部の長さが2mmのPTFE製のオリフィスを設置した。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値がゲージ圧で0.05MPaを示し、カラム内に背圧がかかっていることが確認された。カラム内にIPAを満たすと、炭化フェノール樹脂間に存在する気泡や炭化フェノール樹脂の内部に存在する気泡が確認された。しかしながら背圧をかけてIPAを3時間通液すると、気泡が消失した。
(比較例4)活性炭(乾燥)
【0098】
炭化フェノール樹脂(株式会社MET製)を必要量用意した。その際、溶媒で湿潤させたときに500mlになるように、炭化フェノール樹脂の重量を予め測定して、必要な重量の炭化フェノール樹脂をPFA製のカラムに充填した。カラムを密閉し、カラムの出口にブローライン(オリフィスを設置しない流路)を接続した。その後、カラムに対してSV5でIPAを通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値は常圧(大気圧)を示した。カラム内にIPAを満たすと、炭化フェノール樹脂間に存在する気泡や炭化フェノール樹脂の内部に存在する気泡が確認された。これらの気泡は、IPAを3時間通液しても消失しなかった。
(実施例5)PTFE製オリフィスからの金属溶出
【0099】
容量50mlのPFA製のカラムを、PTFE製のコネクターを用いて、PFA製のチューブに接続した。カラムの下流側で、チューブの途中に、PTFE製のオリフィスを介在させた。カラム、コネクター、チューブ、オリフィスからなる試験系内に超純水を通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値がゲージ圧で10kPaを示し、カラム内に背圧がかかっていることが確認された。超純水で一晩洗浄した後、超純水を300ml/時で流し、オリフィスの出口における超純水中の金属濃度を測定した。金属濃度分析には、ICP-MS8900(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。結果を表1に示す。上記試験系からの金属溶出は全て5ppt未満であった。
(比較例5)SUS製背圧弁からの金属溶出
【0100】
容量50mlのPFA製のカラムを、PTFE製のコネクターを用いて、PFA製のチューブに接続した。カラムの下流側で、チューブの途中に、SURPASS工業社製 SLT型背圧弁を介在させた。背圧弁は、SUS316ステンレス鋼製の本体と、PTFE製のダイヤフラムと、を有する。カラム、コネクター、チューブ、背圧弁からなる試験系内に超純水を通液した。カラムの上流に位置する圧力計の値がゲージ圧で10kPaを示し、カラム内に背圧がかかっていることが確認された。超純水で一晩洗浄した後、超純水を300ml/時で流し、背圧弁の出口における超純水中の金属濃度を測定した。金属濃度分析には、ICP-MS8900(アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いた。結果を表1に示す。上記試験系からの金属溶出は、Na以外は5ppt以上であった。
【0101】