(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043544
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B63H 21/21 20060101AFI20220309BHJP
B63H 21/14 20060101ALI20220309BHJP
B63H 21/17 20060101ALI20220309BHJP
B63H 21/20 20060101ALI20220309BHJP
B63B 79/20 20200101ALI20220309BHJP
B63B 79/15 20200101ALI20220309BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20220309BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220309BHJP
H02J 7/14 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B63H21/21
B63H21/14
B63H21/17
B63H21/20
B63B79/20
B63B79/15
H02P9/04 K
H02P9/04 N
H02J7/00 B
H02J7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148866
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】川谷 聖
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真
【テーマコード(参考)】
5G060
5G503
5H590
【Fターム(参考)】
5G060AA05
5G060DB07
5G503AA07
5G503BB01
5G503BB03
5G503CA08
5G503DA07
5G503GD03
5G503GD06
5H590AA02
5H590CA07
5H590CA22
5H590CE03
5H590CE05
5H590EA13
5H590FA01
5H590FA08
5H590GA06
5H590HA06
(57)【要約】
【課題】電気ハイブリッド推進システムのエネルギー効率を向上させることが可能である制御装置、制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置は、負荷の変動量を予測する予測部と、主機への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出部と、蓄電部への充電量又は電動機への放電量を変更することによって負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出部と、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量とを比較する比較部と、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量未満である場合には第1方法に応じて主機の燃料投入量を変更し、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量以上である場合には第2方法に応じて蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御部とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記電動機から伝達された動力によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置であって、
前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測部と、
前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出部と、
前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出部と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較部と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記推進器は、前記蓄電部を介さずに前記発電機から供給された電力によって駆動され、
前記第1導出部は、前記主機の燃費と前記発電機の発電の効率とに基づいて、前記第1エネルギー損失量を導出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記主機から伝達された動力と前記電動機から伝達された動力とのうちの少なくとも一方によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置であって、
前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測部と、
前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更することによって、前記推進器に前記主機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出部と、
前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって、前記推進器に前記電動機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出部と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較部と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御部と
を備える制御装置。
【請求項4】
前記第1導出部は、前記主機の燃費に基づいて、前記第1エネルギー損失量を導出する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第2導出部は、前記電動機の駆動の効率に基づいて、前記第2エネルギー損失量を導出する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記予測部は、前記船舶が現在航行している海域と前記船舶が将来航行する海域とのうちの少なくとも一方における気象データと海象データとのうちの少なくとも一つに基づいて、前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記負荷が増加すると予測され、且つ、前記負荷の増加分の電力が前記蓄電部に充電されていない場合には、前記比較結果に関わらず、前記第1方法に応じて前記負荷の増加分を前記主機の回転数の変更によって補償する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記負荷が減少すると予測され、且つ、前記蓄電部の充電量が一定量未満である場合には、前記比較結果に関わらず、前記第2方法に応じて前記負荷が減少すると予測される前における充電量よりも多い電力を前記蓄電部に充電する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記船舶の位置情報を取得し、特定の海域に前記船舶が位置することを前記位置情報が示す場合、前記負荷の変動量を前記蓄電部の充電又は放電によって補償する、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記電動機から伝達された動力によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置が実行する制御方法であって、
前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測ステップと、
前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出ステップと、
前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出ステップと、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較ステップと、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御ステップと
を含む制御方法。
【請求項11】
主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記主機から伝達された動力と前記電動機から伝達された動力とのうちの少なくとも一方によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置が実行する制御方法であって、
前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測ステップと、
前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更することによって、前記推進器に前記主機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出ステップと、
前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって、前記推進器に前記電動機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出ステップと、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較ステップと、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御ステップと
を含む制御方法。
【請求項12】
主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記電動機から伝達された動力によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムのコンピュータに、
前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測手順と、
前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出手順と、
前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出手順と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較手順と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御手順と
を実行させるためのプログラム。
【請求項13】
主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記主機から伝達された動力と前記電動機から伝達された動力とのうちの少なくとも一方によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムのコンピュータに、
前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測手順と、
前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更することによって、前記推進器に前記主機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出手順と、
前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって、前記推進器に前記電動機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出手順と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較手順と、
前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御手順と
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ及び発電機のうちの少なくとも一方とエンジンとが組み合わされた電気ハイブリッド推進システムへの関心が高まっている。特許文献1に示された電気ハイブリッド推進システムでは、エンジンに掛かる負荷の情報が、エンジンに直結されたトルク計から取得される。特許文献1に示された電気ハイブリッド推進システムでは、負荷の情報に基づいて、負荷の直流分をエンジンが負担し、負荷の長周期変動分をモータ又は発電機が負担する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、バッテリ寿命の延長は可能だが、エネルギー効率を向上させることができない。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、電気ハイブリッド推進システムのエネルギー効率を向上させることが可能である制御装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記電動機から伝達された動力によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置であって、前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測部と、前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出部と、前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出部と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較部と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御部とを備える制御装置である。
【0007】
本発明の一態様は、主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記主機から伝達された動力と前記電動機から伝達された動力とのうちの少なくとも一方によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置であって、前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測部と、前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更することによって、前記推進器に前記主機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出部と、前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって、前記推進器に前記電動機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出部と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較部と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御部とを備える制御装置である。
【0008】
上記の各制御装置は、電気ハイブリッド推進システムのエネルギー効率を向上させることが可能である。
【0009】
本発明の一態様は、主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記電動機から伝達された動力によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置が実行する制御方法であって、前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測ステップと、前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出ステップと、前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出ステップと、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較ステップと、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御ステップとを含む制御方法である。
【0010】
本発明の一態様は、主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記主機から伝達された動力と前記電動機から伝達された動力とのうちの少なくとも一方によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムの制御装置が実行する制御方法であって、前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測ステップと、前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更することによって、前記推進器に前記主機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出ステップと、前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって、前記推進器に前記電動機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出ステップと、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較ステップと、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御ステップとを含む制御方法である。
【0011】
本発明の一態様は、主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記電動機から伝達された動力によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムのコンピュータに、前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測手順と、前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出手順と、前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出手順と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較手順と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御手順とを実行させるためのプログラムである。
【0012】
本発明の一態様は、主機によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された電力を充電又は放電する蓄電部と、前記蓄電部から供給された電力によって駆動される電動機と、前記主機から伝達された動力と前記電動機から伝達された動力とのうちの少なくとも一方によって船舶を推進させる推進器とを備える電気ハイブリッド推進システムのコンピュータに、前記推進器に掛かる負荷の変動量を予測する予測手順と、前記発電機から前記蓄電部への充電又は前記蓄電部から前記電動機への放電によって前記負荷の変動量を補償せずに、前記主機への燃料投入量を変更することによって、前記推進器に前記主機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する第1導出手順と、前記負荷の変動量を前記主機への燃料投入量の変更によって補償せずに、前記蓄電部への充電量又は前記蓄電部から前記電動機への放電量を変更することによって、前記推進器に前記電動機から伝達される動力を調整することで前記負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する第2導出手順と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量とを比較する比較手順と、前記第1エネルギー損失量と前記第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量未満である場合には前記第1方法に応じて前記主機の燃料投入量を変更し、前記第1エネルギー損失量が前記第2エネルギー損失量以上である場合には前記第2方法に応じて前記蓄電部の充電量又は放電量を変更する制御手順とを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、電気ハイブリッド推進システムのエネルギー効率を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における、電気ハイブリッド推進システムの構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態における、制御装置の構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における、制御装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態における、電気ハイブリッド推進システムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、電気ハイブリッド推進システム1aの構成例を示す図である。電気ハイブリッド推進システム1aは、船舶用の電気ハイブリッド推進システムである。船舶用の推進器に掛かる負荷は、時系列で変化する。例えば、現在時刻「t0」において推進器に掛かる負荷よりも、将来時刻「t1」において推進器に掛かる負荷のほうが大きくなることがある。
【0016】
電気ハイブリッド推進システム1aは、シリーズハイブリッドに相当する構成を有する。エンジンの動力はモータの動力よりも桁違いに大きいので、シリーズハイブリッドに相当する構成は、例えば、フェリー等の小型船舶に用いられる。
【0017】
電気ハイブリッド推進システム1aは、制御装置10と、燃料供給装置11と、エンジン12と、発電機13と、蓄電部14と、充放電制御装置15と、モータ16と、推進器17とを備える。燃料供給装置11は、ポンプ及びバルブを有する。蓄電部14は、蓄電と放電とが可能なバッテリ又はキャパシタと、インバータと、コンバータとを有する。
【0018】
モータ16と推進器17とは、推進軸で連結される。推進軸には、クラッチが備えられてもよい。また、推進軸には、トルク計が備えられてもよい。エンジン12と推進器17とは、電気ハイブリッド推進システム1aでは互いに直結されていない。
【0019】
推進器17は、例えば、プロペラ、ジェット推進又はフィンである。以下では、推進器17は、一例としてプロペラである。プロペラは、モータ16に内蔵されていてもよい。また、プロペラは、可変ピッチプロペラでもよい。
【0020】
以下では、「蓄電部14を介さずに、エンジン12で発電された電力でモータ16が駆動されて、モータ16が推進器17の推進軸を回転させる方法」と、「エンジン12で発電された電力が蓄電部14に充電され、蓄電部14からの電力供給でモータ16が駆動され、モータ16が推進器17の推進軸を回転させる方法」との2種類の方法で、推進器17の推進軸を回転させることが可能である。
【0021】
以下、「E0」は、エンジンに燃料供給装置から投入される燃料の量(燃料投入量)をエネルギーとして表す。「Eout」は、エンジンが出力する動力エネルギーの量(エンジン出力)を表す。「Eg」は、発電機に入力される動力エネルギーの量を表す。「Eb」は、発電機が出力する電力エネルギーの量を表す。「Pm」は、モータに発電機から直接入力される電力エネルギーの量を表す。「Pb」は、蓄電部に発電機から入力される電力量を表す。「Em」は、モータに蓄電部から入力される電力エネルギーの量を表す。「Emp」は、モータが出力する動力エネルギーの量(モータ出力)を表す。「Ep」は、推進器に入力される動力エネルギーの量を表す。
【0022】
以下、「β1」は、エンジンにおけるエネルギーの変換効率(エンジン効率、燃費)を表す。「β2」は、発電機におけるエネルギーの変換効率(発電機効率)を表す。「β3」は、蓄電部におけるエネルギーの変換効率(充放電効率)を表す。例えば、変換効率「β3」は、コンバータの変換効率と、インバータの変換効率と、バッテリ又はキャパシタの変換効率との積である。「β4」は、モータにおけるエネルギーの変換効率(モータ駆動効率)を表す。「Δ」は、現在時刻「t0」から将来時刻「t1」までの時間(制御をループさせる微小時間)における変化量を表す。例えば「Δβ1」は、エンジン効率「β1」の変化量を表す。
【0023】
なお、以下では、発電機の出力が、モータの消費電力を上回っている。すなわち、「Eg×β2≧Ep/β4」の成立が想定されている。
【0024】
現在時刻「t0」において、制御装置10は、将来時刻「t1」における推進器17に掛かる負荷(推進負荷)を予測する。制御装置10は、現在時刻「t0」までに推進器17に掛かった負荷の変動履歴に基づいて、将来時刻「t1」における負荷の変動量を予測する。
【0025】
制御装置10は、負荷の変動量を補償する場合にエネルギー損失量が小さくなるように、燃料供給装置11又は充放電制御装置15の動作を制御する。制御装置10は、燃料の投入量を表すデータ(以下「投入量データ」という。)を、燃料供給装置11に出力する。
【0026】
燃料供給装置11は、制御装置10から予め入力された投入量データに応じた量「E0」の燃料を、将来時刻「t1」においてエンジン12に投入する。したがって、現在時刻「t0」から将来時刻「t1」までの間に決定された投入量データに応じた量「E0」の燃料は、将来時刻「t1」以降に、エンジン12において消費される。
【0027】
エンジン12(主機)は、燃料を用いて動力を発生させる機関であり、例えば「2ストローク・ディーゼルエンジン」である。エンジン12は、動力エネルギーの量「Eout」のエンジン出力で、発電機13を駆動する。発電機13における発電エネルギー「Eb」のうちの電力エネルギーの量「Pm」は、モータ16で消費される。発電機13は、量「Eb」の発電エネルギー(電力エネルギー)のうちの量「Pb(=Eb-Pm)」のエネルギーを、蓄電部14の充電のために蓄電部14に出力してもよい。
【0028】
充放電制御装置15(監視装置)は、蓄電部14の充電率データを、制御装置10に出力する。充放電制御装置15は、充放電指示を制御装置10から取得する。蓄電部14の動作モードは、充放電指示に応じて、充電モード又は放電モードとなる。蓄電部14の動作モードが充電モードである場合、蓄電部14は、量「Pm」の電力エネルギーを蓄電部14に蓄える動作を実行する。蓄電部14の動作モードが放電モードである場合、蓄電部14は、量「Em」の電力エネルギーを、モータ16に出力する。
【0029】
モータ16(電動機)は、発電機13と蓄電部14とのうちの少なくとも発電機13によって駆動される。モータ16には、量「Pm」の発電エネルギー(電力エネルギー)が、発電機13から入力される。また、モータ16には、量「Em」の電力エネルギーが、蓄電部14から入力される。
【0030】
推進器17の推進軸は、モータ16から伝達された動力によって回転する。ここで、推進器17の推進軸には、量「Ep(=Emp)の動力エネルギーが、モータ16から伝達される。推進器17の推進軸の回転によって、船舶(電気推進船)は推進する。
【0031】
推進器17の推進軸の回転数を表すデータは、制御装置10にセンサ(不図示)から入力される。推進器17の推進軸に掛かるトルク量を表すデータは、制御装置10にトルク計(不図示)から入力される。
【0032】
次に、制御装置10について説明する。
図2は、制御装置10の構成例を示す図である。制御装置10は、予測部100と、第1導出部101と、第2導出部102と、比較部103と、制御部104とを備える。
【0033】
制御装置10の各機能部のうちの一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ(コンピュータ)が、記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。記憶部は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)が好ましい。記憶部は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記録媒体を備えてもよい。制御装置10の各機能部のうちの一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0034】
予測部100は、時系列の気象データを取得する。予測部100は、時系列の潮流速度、海流速度及び波高のうちの少なくとも一つに関するデータ(以下「海象データ」という。)を取得してもよい。予測部100は、例えば、船舶が現在航行している海域と船舶が将来航行する海域とのうちの少なくとも一方における気象データと海象データとのうちの少なくとも一つに基づいて、推進器17に掛かる負荷の変動量を予測する。
【0035】
現在時刻「t0」において、予測部100は、所定の過去時刻から現在時刻「t0」までに推進器17にかかった負荷(負荷履歴)に基づいて、将来時刻「t1」における推進器17に掛かる負荷(推進負荷)を予測する。時系列の気象データと時系列の海象データとが加味されることによって、推進器17に掛かる負荷の変動量の予測精度は向上する。予測部100は、負荷の変動量のデータ(予測値)を、第1導出部101と第2導出部102とに出力する。なお、予測部100は、例えば特許文献1に開示された方法を用いて、負荷の変動量を予測してもよい。
【0036】
以下、推進器に掛かる負荷の変動量を、蓄電部の充電量又は放電量で補償せずに、エンジンへの燃料投入量の変更で補償する方法を、「第1方法」という。第1導出部101は、第1方法におけるエネルギー損失量(以下「第1エネルギー損失量」という。)を導出する。
【0037】
以下、推進器に掛かる負荷の変動量を、エンジンへの燃料投入量の変更で補償せずに、蓄電部の充電量又は放電量で補償する方法を、「第2方法」という。第2導出部102は、第2方法におけるエネルギー損失量(以下「第2エネルギー損失量」という。)を導出する。
【0038】
比較部103は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量とを比較する。例えば、比較部103は、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量以上であるか否かを判定する。比較部103は、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量以上である場合、第2方法(第2制御方法)を選択する。比較部103は、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量未満である場合、第1方法(第1制御方法)を選択する。比較部103は、比較結果に基づいて選択された方法の目標データを、制御部104に出力する。
【0039】
制御部104は、目標データを比較部103から取得する。目標データは、例えば、エンジン12への燃料投入量と蓄電部14への充放電指示とのうちの少なくとも一方である。目標データは、例えば、推進器17の推進軸に掛かるトルク量でもよい。制御部104は、処理(制御のループ)を終了させる指示信号を、所定の外部装置(不図示)から受信してもよい。
【0040】
比較部103によって第1方法が選択された場合、制御部104は、エンジン12への燃料の投入量の目標データを、比較部103から取得する。制御部104は、推進器17に掛かる負荷の変動量をエンジン12出力の変更で補償するように、エンジン12への燃料投入量を燃料供給装置11を用いて変更する。これによって、推進器17にエンジン12から伝達される動力が調整される。
【0041】
比較部103によって第2方法が選択された場合、制御部104は、蓄電部14の充電量又は放電量の目標データを、比較部103から取得する。制御部104は、エンジン12への燃料投入量を変更せずに、推進器17に掛かる負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償するように、蓄電部14の充電量又は放電量を変更する。これによって、推進器17にモータ16から伝達される動力が調整される。
【0042】
次に、燃料投入量「E0」が変更された場合に負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失について説明する。
【0043】
負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失「L1A」は、式(1)のように表される。
【0044】
【0045】
ここで、「(E0-ΔE0)×(1-(β1+Δβ1))」の項は、エンジン12において生じるエネルギー損失を表す。「(Eg-ΔEg)×(1-β2)」の項は、発電機13において生じるエネルギー損失を表す。「(Pb-ΔPb)×(1-β3)」の項は、蓄電部14において生じるエネルギー損失を表す。「((Pb-ΔPb)×β3+Pm-ΔPm)×(1-β4)」の項は、モータ16において生じるエネルギー損失を表す。
【0046】
エンジン12が出力する動力エネルギーの量「Eout(=Eg)」は、式(2)のように表される。
【0047】
【0048】
ここで、式(3)が成り立つ。
【0049】
【0050】
第1導出部101は、式(2)と式(3)とに基づいて、燃料投入量の変化量を式(4)のように導出する。
【0051】
【0052】
ここで、式(5)が成り立つ。
【0053】
【0054】
また、エンジン12から出力された動力エネルギーの量が船舶の推進負荷を上回るという条件の下では、蓄電部14の電力が利用される際に充電又は放電によるエネルギー損失が生じるので、式(6)が成り立つ。
【0055】
【0056】
第1導出部101は、式(4)から式(6)までの各式を式(1)に代入することによって、負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失「L1A」を導出する。エネルギー損失「L1A」は、式(7)のように表される。
【0057】
【0058】
次に、燃料投入量「E0」が変更されない場合におけるエネルギー損失、すなわち、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失について説明する。
【0059】
負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失「L1B」は、式(8)のように表される。
【0060】
【0061】
燃料投入量「E0」が変更されないので、式(9)が成り立つ。
【0062】
【0063】
第2導出部102は、式(5)と式(9)とを式(8)に代入することによって、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失「L1B」を導出する。エネルギー損失「L1B」は、式(10)のように表される。
【0064】
【0065】
次に、エネルギー損失の比較について説明する。
式(7)のエネルギー損失と式(10)のエネルギー損失との差「DL1」は、式(11)のように表される。
【0066】
【0067】
なお、エネルギー損失が最小になる場合、燃料投入量「E0」と推進器17の推進軸に入力される動力エネルギーの量「Ep」との比「E0/Ep」は最小になる。「E0/Ep」は、式(12)のように表される。
【0068】
【0069】
負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失が、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失よりも大きい場合、差「DL1」は正値となる。比較部103は、差「DL1」が0以上であるかを判定する。差「DL1」が0以上であると判定された場合、比較部103は、蓄電部14の充電量又は放電量の目標データを、制御部104に出力する。
【0070】
制御部104は、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償するように、比較部103から取得された目標データに応じて、蓄電部14の動作(充電量又は放電量)を制御する。
【0071】
差「DL1」が0未満であると判定された場合、比較部103は、燃料投入量の目標データを、制御部104に出力する。制御部104は、負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償するように、比較部103から取得された目標データに応じて、燃料供給装置11の動作を制御する。すなわち、制御部104は、燃料投入量を変更する。
【0072】
次に、制御装置10の動作例を説明する。
図3は、制御装置10の動作例を示すフローチャートである。予測部100は、推進器17に掛かる負荷の変動量を予測する(ステップS101)。第1導出部101は、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償せずにエンジンへの燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失量を、第1エネルギー損失量として導出する(ステップS102)。第2導出部102は、負荷の変動量をエンジンへの燃料投入量の変更で補償せずに蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失量を、第2エネルギー損失量として導出する(ステップS103)。
【0073】
比較部103は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量とを比較する(ステップS104)。第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量以上である場合(ステップS104:YES)、比較部103は、負荷の変動量をエンジンへの燃料投入量の変更で補償せずに蓄電部14の充電量又は放電量で補償するように、蓄電部14の充電量又は放電量の目標値(変更目標値)を、制御部104に出力する(ステップS105)。
【0074】
第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量未満である場合(ステップS104:NO)、比較部103は、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償せずにエンジンへの燃料投入量の変更で補償するように、燃料投入量の目標値(変更目標値)を制御部104に出力する(ステップS106)。制御部104は、蓄電部14の充電量又は放電量の目標値に基づいて、蓄電部14の充電量又は放電量を制御する。また、制御部104は、燃料投入量の目標値に基づいて、燃料供給装置11の動作(燃料投入量)を制御する(ステップ107)。
【0075】
このように、比較部103は、エネルギー損失量がより小さくなる方法を、比較結果に基づいて第1方法又は第2方法から選択し、選択結果に基づいて制御目標値(目標データ)を制御部104に出力する。制御部104は、入力された制御目標値に応じて、燃料供給装置11又は充放電制御装置15の動作を制御する。
【0076】
制御部104は、処理(制御のループ)を終了させる指示信号を受信したか否かを判定する(ステップS108)。処理を終了させる指示信号を受信したと判定された場合(ステップS108:YES)、制御部104は、
図3に示された処理を終了する。処理を終了させる指示信号を受信していないと判定された場合(ステップS108:NO)、制御部104は、ステップS101に処理を戻す。
【0077】
以上のように、予測部100は、推進器17に掛かる負荷の変動量を予測する。第1導出部101は、発電機13から蓄電部14への充電又は蓄電部14からモータ16(電動機)への放電によって負荷の変動量を補償せずに、エンジン12(主機)への燃料投入量を変更して発電量を調整することによって負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する。第1導出部101は、蓄電部14を介さずに発電機13から供給された電力によって推進器17が駆動されている場合、エンジン12の燃費と発電機13の発電の効率とに基づいて、第1エネルギー損失量を導出する。第2導出部102は、負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更によって補償せずに、蓄電部14への充電量又は蓄電部14からモータ16への放電量を変更することによって負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する。比較部103は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量とを比較する。制御部104は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量未満である場合には、第1方法に応じてエンジン12の燃料投入量を変更する。制御部104は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量以上である場合には、第2方法に応じて蓄電部14の充電量又は放電量を変更する。
【0078】
これによって、電気ハイブリッド推進システムのエネルギー効率を向上させることが可能である。
【0079】
第2導出部102は、推進器17のモータ16の駆動の効率に基づいて、第2エネルギー損失量を導出してもよい。予測部100は、例えば、気象データと海象データとのうちの少なくとも一つに基づいて、推進器17に掛かる負荷の変動量を予測してもよい。
【0080】
制御部104は、負荷が増加すると予測され、且つ、負荷の増加分の電力が蓄電部14に充電されていない場合には、負荷の増加分をエンジン12の回転数の変更によって補償してもよい。制御部104は、負荷が減少すると予測され、且つ、蓄電部14の充電量が一定量未満である場合には、負荷が減少すると予測される前における充電量よりも多い電力を蓄電部14に充電してもよい。制御部104は、自船の位置情報を取得してもよい。制御部104は、特定の海域(例えば、環境規制が厳しい海域)に自船が位置していることを位置情報が示す場合、負荷の変動量を、蓄電部14の充電又は放電によって積極的に補償してもよい。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態では、エンジン12が推進器17の推進軸を直接駆動する点が、第1実施形態と相違する。第2実施形態では、第1実施形態との相違点を主に説明する。
【0082】
図4は、電気ハイブリッド推進システム1bの構成例を示す図である。電気ハイブリッド推進システム1bは、パラレルハイブリッドに相当する構成を有する。エンジンの動力はモータの動力よりも桁違いに大きいので、パラレルハイブリッドに相当する構成は、例えば、タンカー等の大型船舶に用いられる。
【0083】
電気ハイブリッド推進システム1bは、制御装置10と、燃料供給装置11と、エンジン12と、発電機13と、蓄電部14と、モータ16と、推進器17を備える。
図4では、発電機13とモータ16とが別体として図示されているが、電気ハイブリッド推進システム1bは、発電機機能とモータ機能との両方の機能を有するモータ又は発電機を備えてもよい。
【0084】
電気ハイブリッド推進システム1bでは、エンジン12と推進器17とが推進軸で直結されているので、エンジン12は、推進器17を直接駆動する。電気ハイブリッド推進システム1bでは、船舶は、基本的にはエンジン12の動力で推進する。モータ16の電力は、船舶の推進を補助するために使用される。なお、モータ16による推進力は、エンジン12による推進力より大きくてもよい。この場合、船舶は、基本的にモータ16の動力で推進してもよい。また、モータ16による推進力と、エンジン12による推進力とは、同程度でもよい。この場合、船舶は、エンジン12とモータ16とのそれぞれによる同程度の推進力によって推進してもよい。
【0085】
以下、「Egp」は、推進器にエンジンから入力される動力エネルギーの量を表す。すなわち、「Egp」は、エンジンと推進器とをつなぐ軸(推進軸)を用いてエンジンが推進器を回す際にエンジンから推進器に伝達される回転エネルギー(動力エネルギー)の量を表す。
【0086】
エンジン12は、量「Eout」の動力エネルギーのうちの量「Eg」の動力エネルギーを、発電機13に出力する。エンジン12は、量「Eout」の動力エネルギーのうちの量「Egp」の動力エネルギーを、推進器17の推進軸に出力する。発電機13は、量「Eb」の電力エネルギーを、蓄電部14に出力する。
【0087】
蓄電部14の動作モードが充電モードである場合、蓄電部14は、充放電制御装置15による制御に応じて、量「Pb(=Eb)」の電力エネルギーの少なくとも一部を蓄える。蓄電部14の動作モードが放電モードである場合、蓄電部14は、量「Em」の電力エネルギーを、モータ16に出力する。モータ16は、量「Em」の電力エネルギーによって駆動する。
【0088】
推進器17の推進軸は、エンジン12による駆動とモータ16による駆動とによって回転する。ここで、推進器17には、量「Emp」の動力エネルギーがモータ16から入力される。また、推進器17には、量「Egp」の動力エネルギーがエンジン12から入力される。船舶(電気推進船)は、推進器17の推進軸の回転によって推進する。
【0089】
次に、燃料投入量「E0」が変更された場合、すなわち、負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失について説明する。
【0090】
負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失「L2A」は、式(13)のように表される。
【0091】
【0092】
ここで、「(E0-ΔE0)×(1-(β1+Δβ1))」の項は、エンジン12において生じるエネルギー損失を表す。「Eg×(1-β2)」の項は、発電機13において生じるエネルギー損失を表す。「Eg×β2×(1-β3)」の項は、蓄電部14において生じるエネルギー損失を表す。「Eg×β2×β3×(1-β4)」の項は、モータ16において生じるエネルギー損失を表す。
【0093】
エンジン12が出力するエネルギーの量「Eout(=Eg+Egp)」は、式(14)のように表される。
【0094】
【0095】
第1導出部101は、式(14)に基づいて、燃料投入量の変化量を式(15)のように導出する。
【0096】
【0097】
第1導出部101は、式(15)を式(13)に代入することによって、エネルギー損失「L2A」を導出する。負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失「L2A」は、式(16)のように表される。
【0098】
【0099】
次に、燃料投入量「E0」が変更されない場合におけるエネルギー損失、すなわち、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失について説明する。
【0100】
負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失「L2B」は、式(17)のように表される。
【0101】
【0102】
燃料投入量「E0」が変更されない場合、式(18)と式(19)とが成り立つ。
【0103】
【0104】
【0105】
式(19)は、式(20)のように表される。
【0106】
【0107】
第2導出部102は、式(18)と式(20)とを式(17)に代入することによって、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失「L2B」を導出する。エネルギー損失「L2B」は、式(21)のように表される。
【0108】
【0109】
次に、エネルギー損失の比較について説明する。
式(16)のエネルギー損失と式(21)のエネルギー損失との差「DL2」は、式(11)のように表される。
【0110】
【0111】
なお、エネルギー損失が最小になる場合、投入量「E0」と推進器17の推進軸に入力されるエネルギー量「Ep」との比「E0/Ep」は最小になる。「E0/Ep」は、式(23)のように表される。
【0112】
【0113】
負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償する場合におけるエネルギー損失が、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償する場合におけるエネルギー損失よりも大きい場合、差「DL2」は正値となる。比較部103は、差「DL2」が0以上であるかを判定する。差「DL2」が0以上であると判定された場合、比較部103は、蓄電部14の充電量又は放電量の目標データを、制御部104に出力する。
【0114】
制御部104は、負荷の変動量を蓄電部14の充電量又は放電量で補償するように、比較部103から取得された目標データに応じて、充放電制御装置15を用いて、蓄電部14(コンバータ又はインバータ)の動作を制御する。
【0115】
差「DL2」が0未満であると判定された場合、比較部103は、燃料投入量の目標データを制御部104へ出力する。制御部104は、負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更で補償するように、比較部103から取得された目標データに応じて、燃料供給装置11の動作を制御する。すなわち、制御部104は、燃料投入量を変更する。
【0116】
以上のように、予測部100は、推進器17に掛かる負荷の変動量を予測する。第1導出部101は、発電機13から蓄電部14への充電又は蓄電部14からモータ16(電動機)への放電によって負荷の変動量を補償せずに、エンジン12(主機)への燃料投入量を変更することによって、推進器17にエンジン12から伝達される動力を調整することで負荷の変動量を補償する第1方法における、第1エネルギー損失量を導出する。第1導出部101は、主機から供給された動力によって推進器17が駆動されている場合、エンジン12の燃費に基づいて、第1エネルギー損失量を導出してもよい。第2導出部102は、負荷の変動量をエンジン12への燃料投入量の変更によって補償せずに、蓄電部14への充電量又は蓄電部14から電動機への放電量を変更することによって、推進器に電動機から伝達される動力を調整することで負荷の変動量を補償する第2方法における、第2エネルギー損失量を導出する。比較部103は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量とを比較する。制御部104は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量未満である場合には、第1方法に応じてエンジン12の燃料投入量を変更する。制御部104は、第1エネルギー損失量と第2エネルギー損失量との比較結果に応じて、第1エネルギー損失量が第2エネルギー損失量以上である場合には、第2方法に応じて蓄電部14の充電量又は放電量を変更する。
【0117】
これによって、電気ハイブリッド推進システムのエネルギー効率を向上させることが可能である。
【0118】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0119】
上記の各実施形態では、燃料投入量が変更される第1方法と、蓄電部14の充電量又は放電量が変更される第2方法とが、二者択一であった。これに対して、制御部104は、燃料投入量と充電量又は放電量との両方を同時に変更する複数のパターンの組み合わせの中から、エネルギー効率が最大となる組み合わせ(エネルギー損失が最小となる組み合わせ)を選定し、選定結果に基づいて制御を実行してもよい。
【0120】
制御部104は、現在時刻における制御モード(例えば、蓄電部14の動作モード)を報知してもよい。
【0121】
蓄電部14の充電率が閾値未満である場合、制御部104は、エンジンへ12への燃料の投入量を、所定量よりも増加させてもよい。
【0122】
制御部104は、所定期間以上の長期間において負荷が変動することが予測された場合には、蓄電部14の充電率を高くするように、現在の充電率と入港までの予定航路とに応じて、燃料の投入量を増加させてもよい。例えば、制御部104は、予定航路が短い場合ほど、燃料の投入量を増加させてもよい。
【0123】
制御部104は、海域ごとに制御方法を変更してもよい。例えば、制御部104は、環境規制が厳しい海域では、エンジン12を用いずに蓄電部14を用いて、推進器17を駆動させてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1a,1b…電気ハイブリッド推進システム、10…制御装置、11…燃料供給装置、12…エンジン、13…発電機、14…蓄電部、15…充放電制御装置、16…モータ、17…推進器、100…予測部、101…第1導出部、102…第2導出部、103…比較部、104…制御部