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特開2022-43567拡散接合のための積層装置及び積層方法
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  • 特開-拡散接合のための積層装置及び積層方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043567
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】拡散接合のための積層装置及び積層方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
B23K20/00 310P
B23K20/00 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148898
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】519231201
【氏名又は名称】株式会社U・M・R
(71)【出願人】
【識別番号】303004532
【氏名又は名称】ナカヤマ精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】上村 誠
(72)【発明者】
【氏名】安宅 榮治
(72)【発明者】
【氏名】中山 愼一
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳佑
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BA02
4E167CA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】板材の拡散接合に必要な温度及び圧力を低減することが可能な積層装置及び積層方法の提供。
【解決手段】拡散接合のための積層装置1は、拡散接合により接合する板材10を複数枚積層する積層部3と、積層した板材に超音波を付与して、積層した板材同士を摺り合わせる摺動処理部6と、積層する板材にポリッシング(研磨)を施すための表面加工部2と、複数のピン23を用いて板材を位置決めするための位置決め部4と、板材が斜めに積層されるのを抑制するために、板材を吸引して板材の姿勢を補正するための吸引装置5を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散接合により接合する板材を複数枚積層する積層部と、
積層した前記板材に超音波を付与して、積層した前記板材同士を摺り合わせる摺動処理部と、を備える、拡散接合のための積層装置。
【請求項2】
積層する前記板材にポリッシングを施す表面加工部を備える、請求項1に記載の拡散接合のための積層装置。
【請求項3】
複数のピンを用いて前記板材を位置決めする位置決め部を備える、請求項1又は2に記載の拡散接合のための積層装置。
【請求項4】
前記板材が斜めに積層されるのを抑制するために、前記板材を吸引して前記板材の姿勢を補正する吸引装置を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の拡散接合のための積層装置。
【請求項5】
拡散接合により接合する板材を複数枚積層するステップと、
積層した前記板材に超音波を付与して、積層した前記板材同士を摺り合わせるステップと、を含む、拡散接合のための積層方法。
【請求項6】
前記板材を複数枚積層する前に、積層する前記板材にポリッシングを施すステップを含む、請求項5に記載の拡散接合のための積層方法。
【請求項7】
積層した前記板材に超音波を付与する前に、複数のピンを用いて前記板材を位置決めするステップを含む、請求項5又は6に記載の拡散接合のための積層方法。
【請求項8】
前記板材が斜めに積層されるのを抑制するために、吸引装置を用いて前記板材を吸引して前記板材の姿勢を補正するステップを含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の拡散接合のための積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散接合のための積層装置及び積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、接合する材料同士を密着させて加圧、加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する、拡散接合と称される技術が公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1において、2以上の被接合物を重ね、この重ねられた複合体の両側から加圧して被接合物同士を接合する。特許文献1においては、加圧と同時に加熱を行なう。また、特許文献1においては、加圧、加熱の同時作業を接合治具と複合体との熱膨張量差にて行なう。さらに、特許文献1においては、接合治具は複合体を挟む上下の押え板と、各押え板の複数箇所の穴を通す複数の拘束ボルトと、拘束ボルトの両端に螺合されるナットとを備えてなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63-210074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の拡散接合の技術においては、板材の拡散接合に必要な温度及び圧力が比較的高く、この点につき改良の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、板材の拡散接合に必要な温度及び圧力を低減することができる拡散接合のための積層装置及び積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る拡散接合のための積層装置は、拡散接合により接合する板材を複数枚積層する積層部と、積層した板材に超音波を付与して、積層した板材同士を摺り合わせる摺動処理部と、を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る拡散接合のための積層方法は、拡散接合により接合する板材を複数枚積層するステップと、積層した板材に超音波を付与して、積層した板材同士を摺り合わせるステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、板材の拡散接合に必要な温度及び圧力を低減することができる拡散接合のための積層装置及び積層方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る積層装置の概略的な斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る積層装置の要部を示す分解斜視図である。
図3】積層する板材の概略的な平面図である。
図4】超音波によるマイクロ摺動処理を行う前の板材の模式的な拡大断面図である。
図5】超音波によるマイクロ摺動処理を行った後の板材の模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
[拡散接合のための積層装置]
図1及び図2に示すように、積層装置1は、表面加工部2と、積層部3と、位置決め部4と、吸引装置5と、摺動処理部6と、を備える。
【0013】
なお、図1において、板材10の搬送方向を矢印X方向で表す。
【0014】
積層装置1は、拡散接合する板材10(図3参照)に対して、超音波によるマイクロ摺動処理を行うことを目的とする装置である。
【0015】
拡散接合する板材10には、位置決めのための位置決め穴11が形成されている。板材10は、例えば平面視において矩形状に形成され、位置決め穴11は、板材10の長手方向に沿って形成される第一スリット11aと、板材10の短手方向に沿って形成される第二スリット11bとを有してL字状に形成される(図3参照)。
【0016】
表面加工部2は、積層する板材10にポリッシング(研磨)を施すためのものである。
【0017】
表面加工部2には、板材10の搬送方向Xの上流側から順に、第一コンベア12と、第一加工部13と、第二コンベア14と、第二加工部15とが配置されている。
【0018】
第一加工部13は、上下方向で一対の第一ローラー16,16を有している。上側の第一ローラー16が、例えばバフローラーであり、下側の第一ローラー16が、例えば送りローラーである。
【0019】
上側の第一ローラー16がバフローラーであり、下側の第一ローラー16が送りローラーである場合、第一加工部13においては、板材10の上面に対してポリッシングが施される。
【0020】
第二加工部15は、上下方向で一対の第二ローラー17,17を有している。上側の第二ローラー17が、例えば送りローラーであり、下側の第二ローラー17が、例えばバフローラーである。
【0021】
上側の第二ローラー17が送りローラーであり、下側の第二ローラー17がバフローラーである場合、第二加工部15においては、板材10の下面に対してポリッシングが施される。
【0022】
なお、表面加工部2よりも板材10の搬送方向Xの上流側に、図示しないフィーダーを配置して、このフィーダーにより、板材10を1枚ずつ、表面加工部2の第一コンベア12に供給するようにしてもよい。
【0023】
表面加工部2よりも板材10の搬送方向Xの下流側には、ベースブロック18及びベースプレート19を有する積層部3が配置されている。
【0024】
ベースプレート19は、平面視において矩形状に形成されている。ベースプレート19には、複数の通気穴20が貫通形成されている。
【0025】
ベースプレート19の一対の長辺部分の一方に、後述する押え部材25が入り込む切欠き部19aが形成され、一対の長辺部分の他方が、固定部材21によりベースブロック18に対して固定される。
【0026】
その一方、ベースプレート19の一対の短辺部分の一方にも、後述する押え部材26が入り込む切欠き部19bが形成され、一対の短辺部分の他方が、固定部材22によりベースブロック18に対して固定される。
【0027】
位置決め部4は、複数のピン23を用いて板材10を位置決めするためのものである。
【0028】
位置決め部4には、板材10の位置決め穴11に挿通される複数のピン23と、表面加工部2を通過した板材10を位置決め部4(ピン23)へと案内するためのガイド部24とが形成されている。ガイド部24は、板材10の搬送方向Xに沿って延びている一対の第一ガイド片24a,24aと、これら一対の第一ガイド片24a,24aの先端同士を接続する第二ガイド片24bとを有して平面視においてU字状に形成されている。
【0029】
位置決め部4には、一対の押え部材25,26が配置されており、これらの押え部材25,26が、位置決め穴11にピン23が挿通された板材10を所定の位置に移動させるようになっている。各押え部材25,26は、押え部材25,26を移動可能に保持するシャフト27と、押え部材25,26をベースプレート19側へと付勢するバネ28とを有している。
【0030】
吸引装置5は、板材10が斜めに積層されるのを抑制するために、板材10を吸引して板材10の姿勢を補正するためのものである。
【0031】
吸引装置5は、ベースブロック18に形成される空気流路29と、この空気流路29に連結されるバキュームポンプ等の吸引機構30とを有している。空気流路29の末端が、ベースプレート19の通気穴20と連通している。
【0032】
摺動処理部6は、積層した板材10に超音波を付与して、積層した板材10同士を摺り合わせるためのものである。
【0033】
摺動処理部6は、積層した板材10の内、最も上層の板材10の上面に押し当てられる超音波ヘッド31を有している(図4参照)。
【0034】
[拡散接合のための積層方法]
次に、本実施形態に係る積層方法について説明する。
【0035】
先ず、板材10を複数枚積層する前に、積層する板材10にポリッシングを施す。
【0036】
図1に示す積層装置1においては、表面加工部2が積層する板材10にポリッシングを施すように構成されている。
【0037】
次に、拡散接合により接合する板材10を複数枚(2枚~3枚程度)積層する。
【0038】
図1に示す積層装置1においては、拡散接合により接合される板材10が積層部3において積層されるように構成されている。
【0039】
また、積層した板材10に超音波を付与する前に、複数のピン23を用いて板材10を位置決めする。
【0040】
図1に示す積層装置1においては、板材10が位置決め部4において所定の位置に位置決めされるようになっている。
【0041】
また、板材10が斜めに積層されるのを抑制するために、吸引装置5を用いて板材10を吸引して板材10の姿勢を補正する。
【0042】
図1に示す積層装置1においては、吸引装置5の吸引機構30が板材10を吸引して板材10全体がベースプレート19と接するように姿勢を補正するようになっている。
【0043】
そして、積層した板材10に超音波を付与して、積層した板材10同士を摺り合わせる。
【0044】
図1に示す積層装置1においては、摺動処理部6の超音波ヘッド31が板材10に超音波を付与して、積層した板材10同士を摺り合わせるようになっている。
【0045】
具体的には、図4に示すように、超音波ヘッド31が最も上層の板材10の上面に押し当てられて、この超音波ヘッド31から積層した板材10に対して、極めて短時間(0.5秒程度)だけ超音波が付与される。
【0046】
超音波ヘッド31による超音波の付与は超音波接合を目的としていないので、積層した板材10同士が超音波接合されないように、極めて短時間(0.5秒程度)であることが好ましい。
【0047】
積層した板材10同士を摺り合わせることにより、図5に示されるように、板材10の不動態膜(酸化被膜)10aを破壊すると同時に、板材10の接合面に新生面10bを形成して、板材10同士の接触面積を微視的に増やすことが可能になる。
【0048】
1枚ずつの積層工程を採用することにより、板材10の積層可能層数に限界がない。
【0049】
また、超音波接合のように過度な表面加工をしないので、パーティクル等の発生がほとんどないクリーンな積層が可能であり、また、板材10には残留歪みもない。このため、超音波によるマイクロ摺動処理を採用することにより、板材10の多層の積層が可能になる。
【0050】
以下、本実施形態による作用効果を説明する。
【0051】
(1)拡散接合のための積層装置1は、拡散接合により接合する板材10を複数枚積層する積層部3と、積層した板材10に超音波を付与して、積層した板材10同士を摺り合わせる摺動処理部6と、を備える。
【0052】
積層した板材10に対して超音波によるマイクロ摺動処理を行うことにより、板材10の不動態膜10aを破壊すると同時に、板材10の接合面に新生面10bを形成して、板材10同士の接触面積を微視的に増やすことが可能になる。このため、板材10の拡散接合に必要な温度及び圧力を低減することが可能になる。
【0053】
(2)積層装置1は、積層する板材10にポリッシングを施す表面加工部2を備える。
【0054】
積層装置1が表面加工部2を備えることにより、積層した板材10に対して超音波によるマイクロ摺動処理を行う際に、複数枚の板材10を適切に積層することが可能になる。
【0055】
(3)積層装置1は、複数のピン23を用いて板材10を位置決めする位置決め部4を備える。
【0056】
積層装置1が位置決め部4を備えることにより、積層した板材10に対して超音波によるマイクロ摺動処理を行う際に、複数枚の板材10を適切に積層することが可能になる。
【0057】
(4)積層装置1は、板材10が斜めに積層されるのを抑制するために、板材10を吸引して板材10の姿勢を補正する吸引装置5を備える。
【0058】
積層装置1が吸引装置5を備えることにより、積層した板材10に対して超音波によるマイクロ摺動処理を行う際に、複数枚の板材10を適切に積層することが可能になる。
【0059】
ところで、本発明の拡散接合のための積層装置及び積層方法は前述の実施形態に例をとって説明したが、この実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 積層装置
2 表面加工部
3 積層部
4 位置決め部
5 吸引装置
6 摺動処理部
10 板材
23 ピン
図1
図2
図3
図4
図5