(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043608
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20220309BHJP
H01M 8/1009 20160101ALI20220309BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20220309BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20220309BHJP
H01M 8/2465 20160101ALI20220309BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220309BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/1009
H01M8/02
H01M8/04746
H01M8/2465
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148969
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】辻口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】古橋 資丈
(72)【発明者】
【氏名】仲曽根 歩
(72)【発明者】
【氏名】中根 淳志
(72)【発明者】
【氏名】阿知波 文高
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126AA10
5H126AA15
5H126AA22
5H126AA24
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126FF04
5H127AA06
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA03
5H127BA21
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】電極反応に伴って発生した気体反応物を効率よく外部に排出することができる燃料電池を提供すること。
【解決手段】燃料電池は、MEA40における電極反応に伴ってアノード電極にて発生する気体反応物である二酸化炭素(CO
2)等を選択的に透過させることにより、二酸化炭素(CO
2)等を液体燃料であるギ酸から分離する透過膜52を備える。又、燃料電池は、カソード側セパレータ20に形成された排出路28を備える。排出路28は、透過膜52によってアノード側セパレータ10の燃料供給流路11に対して気密的に区画されており、MEA40にて電極反応が生じている状態で加圧された加圧流体である空気が流れることにより、透過膜52を透過した二酸化炭素(CO
2)等を外部に排出する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜、アノード電極及びカソード電極を有する電極構造体と、
前記アノード電極に液体燃料を供給する燃料供給流路を有するアノード側セパレータと、
前記カソード電極に酸化剤を供給する酸化剤供給流路を有するカソード側セパレータと、を備え、
一対の前記アノード側セパレータ及び前記カソード側セパレータの間に前記電極構造体が配置された単セルを形成し、前記電極構造体における電極反応によって発電する燃料電池であって、
前記電極反応に伴って前記アノード電極にて発生する気体反応物を選択的に透過させることにより、前記気体反応物を前記液体燃料から分離する透過膜と、
前記透過膜によって前記燃料供給流路に対して気密的に区画されており、前記電極構造体にて前記電極反応が生じている状態で流体が流れることにより、前記透過膜を透過した前記気体反応物を外部に排出する排出路と、
を備えた、燃料電池。
【請求項2】
前記排出路の内部の圧力は、前記流体が加圧された加圧流体として流れることにより、前記透過膜によって区画された前記燃料供給流路の内部の圧力に比べて小さい、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記排出路は、前記酸化剤供給流路に供給される前記酸化剤、又は、前記燃料供給流路に供給される前記液体燃料から分岐した前記酸化剤又は前記液体燃料が流れる、請求項1又は2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記透過膜は、前記液体燃料の透過を阻止する一方で、前記気体反応物のみを透過させる多孔質膜である、請求項1-3の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記透過膜及び前記排出路は、前記アノード側セパレータに形成された前記燃料供給流路に対して鉛直方向にて上方に配置される、請求項1-4の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記単セルは複数積層されて燃料電池スタックを形成するものであり、
前記燃料電池スタックが、鉛直方向にて隣接する前記単セルの間に前記透過膜を配置した状態で形成された場合において、
隣接する前記単セルのうち、鉛直方向にて上方の前記単セルの前記カソード側セパレータは、前記透過膜を介して、鉛直方向にて下方の前記単セルの前記アノード側セパレータと隣接しており、
前記排出路は、
前記カソード電極に対向して前記酸化剤供給流路が形成される前記カソード側セパレータの一面側に対して、前記カソード側セパレータの前記透過膜に対向する他面側に形成される、請求項1-5の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記アノード電極に供給される前記液体燃料は、ギ酸(HCOOH)である、請求項1-6の何れか一項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、特に、固体高分子型燃料電池は、一般に、電解質膜の一面側に形成されたアノード電極と、他面側に形成されたカソード電極とからなる電極構造体を備えている。そして、固体高分子型燃料電池においては、アノード電極に燃料が供給され且つカソード電極に酸化剤が外部から供給されることにより、電極構造体にて電極反応が生じて発電される。
【0003】
近年、アノード電極に供給される燃料として、メタノールやギ酸等の液体燃料を直接用いる直接型の燃料電池が開発されている。液体燃料を用いる場合、水素ガスを燃料として用いる場合に比べて、取り扱いが容易であり、体積当たりのエネルギー密度が高く、極めて有用である。
【0004】
しかし、メタノールやギ酸等を燃料として用いた場合、電極反応に伴って二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)等の気体反応物がアノード電極側で発生する。気体反応物がアノード電極の表面に留まった場合、アノード電極を形成する触媒と液体燃料との接触が損なわれ、その結果、燃料電池の発電効率が低下する虞がある。
【0005】
このため、従来から、例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、発生した気体反応物を透過させる透過膜を介して分離してアノード電極、特に、触媒の表面から除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-235519号公報
【特許文献2】特開2011-129431号公報
【特許文献3】特開2006-278295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術では、透過膜を透過した気体反応物を燃料電池の外部に向けて連続的に排出する構成を備えていない。このため、気体反応物が外部に排出されない状況においては、既に透過膜を透過した気体反応物が溜まり、新たな気体反応物が透過膜を透過できない状態が生じる虞がある。この場合、例えば、アノード電極に気体反応物が付着した状態が生じ、その結果、燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。従って、上述した従来の技術には、透過膜を透過した気体反応物を外部に排出する点で、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、電極反応に伴って発生した気体反応物を効率よく外部に排出することができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
燃料電池は、電解質膜、アノード電極及びカソード電極を有する電極構造体と、アノード電極に液体燃料を供給する燃料供給流路を有するアノード側セパレータと、カソード電極に酸化剤を供給する酸化剤供給流路を有するカソード側セパレータと、を備え、一対のアノード側セパレータ及びカソード側セパレータの間に電極構造体が配置された単セルを形成し、電極構造体における電極反応によって発電する燃料電池であって、電極反応に伴ってアノード電極にて発生する気体反応物を選択的に透過させることにより、気体反応物を液体燃料から分離する透過膜と、透過膜によって燃料供給流路に対して気密的に区画されており、電極構造体にて電極反応が生じている状態で流体が流れることにより、透過膜を透過した気体反応物を外部に排出する排出路と、を備える。
【0010】
これによれば、電極構造体における電極反応によって発生した気体反応物は、透過膜を透過することによって液体燃料から分離される。これにより、電極構造体、例えば、アノード電極の近傍から気体反応物を除去することができる。そして、液体燃料から分離された、即ち、透過膜を透過した気体反応物は、流体が流れる排出路を介して、流体と共に燃料電池の外部に排出される。これにより、既に発生した気体反応物が溜まることがなく、新たに発生した気体反応物を効率良く、且つ、連続的に外部に排出することができる。従って、燃料電池が発電を継続する状況であっても、電極反応によって発生した気体反応物を連続的に外部に排出することができ、発生した気体反応物による燃料電池の発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】積層された単セルによって形成された燃料電池スタックの構成を示す図である。
【
図3】アノード側セパレータの構成を示す図である。
【
図4】カソード側セパレータの一面側の構成を示す図である。
【
図5】カソード側セパレータの他面側の構成を示す図である。
【
図8】
図7のVIII-VIIIにおけるMEAの断面を示す断面図である。
【
図11】気体反応物の分離と排出を説明するための断面図である。
【
図12】第一別例の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.燃料電池の概要)
本例においては、燃料電池として固体高分子型燃料電池を例示する。即ち、本例の燃料電池は、電解質膜の一面側にアノード電極が形成され、電解質膜の他面側にカソード電極が形成される。ここで、電解質膜、アノード電極及びカソード電極は、電極構造体であるMEA(Membrane-Electrode-Assembly:膜―電極接合体)を形成する。
【0013】
又、本例の燃料電池は、アノード電極に液体燃料を供給するアノード側セパレータ(コレクタを含む)及びカソード電極に酸化剤を供給するカソード側セパレータ(コレクタを含む)が設けられる。そして、本例の燃料電池は、MEA、アノード側セパレータ及びカソード側セパレータを含む1つのセル(以下、単セルと称呼する。)が形成され、単セルが複数積層されることによって燃料電池スタックが形成される。
【0014】
本例においては、燃料電池のアノード電極に対して供給される液体燃料としては、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)等を例示することができる。ここで、以下に説明する燃料電池においては、供給される液体燃料として、ギ酸を直接用いる場合を例示する。即ち、本例の燃料電池は、固体高分子型燃料電池であって、直接ギ酸型燃料電池(DFAFC)を例示する。又、本例においては、燃料電池のカソード電極に対して供給される酸化剤(酸化剤ガス)としては、酸素(O2)ガス、空気等を例示することができる。ここで、以下に説明する燃料電池においては、供給される気体の酸化剤即ち酸化剤ガスとして、空気を用いる場合を例示する。
【0015】
そして、本例の燃料電池は、アノード電極にて発生した気体反応物のみを透過する透過膜を備える。又、本例の燃料電池は、透過膜を透過した気体反応物を外部に排出する排出路を備える。
【0016】
直接ギ酸型燃料電池の場合、MEAのアノード電極に液体燃料であるギ酸が直接供給されると、MEAにおける電極反応に伴って気体反応物として二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)が発生する。このため、透過膜は、アノード電極の近傍にギ酸と二酸化炭素(CO2)(又は、一酸化炭素(CO))とが混在する場合、気体である二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)を選択的に透過させることによって気液分離する。これにより、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)のみが透過膜を透過して排出路に移動することができ、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)はアノード電極から除去される。
【0017】
又、排出路は、例えば、燃料電池スタックにおいて隣接する単セルを構成するカソード側セパレータに形成することが可能である。即ち、排出路は、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)が発生するアノード電極、より詳しくは、二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)を透過させる透過膜に隣接するカソード側セパレータに形成することが可能である。この場合、排出路に流体を加圧した加圧流体として、例えば、加圧された酸化剤(空気)を流すことができる。これにより、透過膜を透過した二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)は、透過膜に隣接するカソード側セパレータに形成された排出路を介して、例えば、酸化剤(空気)と共に外部に排出される。尚、流体については、加圧することに代えて、例えば、外部から吸引して流すことも可能である。
【0018】
(2.直接ギ酸型燃料電池1の構成の詳細)
以下、本例の直接ギ酸型燃料電池1(以下、単に「燃料電池1」と称呼する。)の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本例の燃料電池1は、燃料電池スタックSを形成する。燃料電池スタックSは、複数の単セルUが積層された状態とされ、積層された複数の単セルUがホルダH及びボルトBによって保持される。本例においては、複数の単セルUは、水平方向に沿って配置されて、各々、鉛直方向にて上方に向けて積層される。燃料電池スタックSには、供給タンクT1に貯留された液体燃料であるギ酸を加圧して供給する燃料ポンプP1が配管(図示省略)を介して接続される。又、燃料電池スタックSには、酸化剤(酸化剤ガス)として空気を加圧して供給するブロアP2(加圧ポンプ)が配管(図示省略)を介して接続される。
【0019】
本例の単セルUは、
図2に示すように、アノード側セパレータ10と、カソード側セパレータ20と、アノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20の間に配置されて積層されるシール部材30及びMEA40とを含んで構成される。そして、本例の単セルUは、MEA40(より詳しくは、後述するアノード電極であるアノード電極層AE)における電極反応によって発生した二酸化炭素(CO
2)を選択的に透過させる透過部材50を有する。ここで、透過部材50は、積層されて隣接する単セルUのうち、鉛直方向にて上方に配置された単セルU1のカソード側セパレータ20と、鉛直方向にて下方に配置されて隣接する単セルU2のアノード側セパレータ10との間にて、挟持されることによって気密的に配置される。
【0020】
アノード側セパレータ10は、
図3に示すように、板状に形成される。そして、本例のアノード側セパレータ10は、MEA40における電極反応によって発電された電気を集電する集電機能(所謂、コレクタ)を有しており、金属製の素材、例えば、SUS316等のステンレスの薄板等に対して金メッキ等の導電処理が施される。尚、本例においては、アノード側セパレータ10を金属製の素材を用いて形成するが、導電性を有する非金属材料(例えば、カーボン或いはカーボンとの複合材等)を素材にして形成することも可能である。
【0021】
アノード側セパレータ10の中央部分、即ち、MEA40のアノード電極層AEに対向する位置には、液体燃料であるギ酸をアノード電極層AEに供給すると共に、アノード電極層AEにて発生した二酸化炭素(CO
2)を透過部材50に向けて集気するための燃料供給流路11が形成される。本例の燃料供給流路11は、
図3に示すように、蛇行するように形成されており、アノード側セパレータ10の板厚方向にて貫通するように形成される。尚、本例においては、燃料供給流路11を蛇行するように形成する場合を例示するが、燃料供給流路11の形状についてはこれに限られない。
【0022】
又、アノード側セパレータ10の周縁部分には、燃料供給流路11にギ酸を供給するための燃料供給口12と、燃料供給流路11を通過したギ酸を排出するための燃料排出口13が設けられる。燃料供給口12は、燃料電池スタックSの外部に設けられた燃料ポンプP1(
図1を参照)によって加圧されたギ酸が供給される。燃料ポンプP1は、供給タンクT1(
図1を参照)に貯留されたギ酸を加圧して供給する。燃料排出口13は、燃料電池スタックSの外部に設けられた回収タンクT2(
図1を参照)に接続されており、排出されたギ酸を回収タンクT2に排出する。
【0023】
これにより、本例の単セルUにおいては、供給タンクT1から燃料ポンプP1によって加圧されたギ酸が燃料供給口12から燃料供給流路11に供給され、燃料供給流路11を流れるギ酸はアノード電極層AEに接触しながら燃料排出口13に到達する。そして、燃料排出口13に到達した、即ち、未反応のギ酸は、回収タンクT2に回収される。
【0024】
又、アノード側セパレータ10の周縁部分には、単セルUを構成するカソード側セパレータ20に空気を供給すると共に未反応の空気を排出するための貫通孔14及び貫通孔15が設けられる。尚、貫通孔14,15は、燃料供給口12及び燃料排出口13に対して、例えば、90度ずれた位置に設けられる。更に、アノード側セパレータ10の周縁部分には、ホルダHのボルトBを挿通するための大径の挿通孔16が複数(
図3においては、8箇所)設けられると共に、外部に電気を取り出すための電極部17が設けられる。尚、電極部17については、燃料電池スタックSの形成時において、例えば、最上部に位置する単セルUを構成するアノード側セパレータ10にのみ設けることも可能である。
【0025】
カソード側セパレータ20は、
図4及び
図5に示すように、板状に形成される。そして、本例のカソード側セパレータ20も、MEA40における電極反応によって発電された電気を集電する集電機能(所謂、コレクタ)を有しており、金属製の素材、例えば、SUS316等のステンレスの薄板等に対して金メッキ等の導電処理が施される。尚、本例においては、カソード側セパレータ20も、アノード側セパレータ10と同様に、金属製の素材を用いて形成するが、導電性を有する非金属材料(例えば、カーボン或いはカーボンとの複合材等)を素材にして形成することも可能である。
【0026】
カソード側セパレータ20の中央部分において、MEA40(より詳しくは、後述するカソード電極であるカソード電極層CE)に対向する一面側には、
図4に示すように、酸化剤(酸化剤ガス)である空気をカソード電極層CEに供給するための酸化剤供給流路21が形成される。本例の酸化剤供給流路21は、直線状の凹凸として形成される場合を例示する。尚、酸化剤供給流路21は、燃料供給流路11と類似形状として形成することも可能である。
【0027】
又、カソード側セパレータ20の周縁部分には、酸化剤供給流路21に空気即ち酸素(O
2)を供給するための酸化剤供給口22と、酸化剤供給流路21を通過した空気を排出するための酸化剤排出口23が設けられる。酸化剤供給口22は、燃料電池スタックSの外部に設けられたブロアP2(
図1を参照)によって加圧された空気が供給される。尚、本例においては、燃料電池1がブロアP2を備え、空気をブロアP2によって加圧して供給するようにする。しかし、必要に応じて、ブロアP2を省略することも可能である。
【0028】
酸化剤排出口23は、排出された空気を燃料電池スタックSの外部に排出する。これにより、本例の単セルUにおいては、ブロアP2によって加圧された空気即ち酸素(O2)が酸化剤供給口22から酸化剤供給流路21に供給され、酸化剤供給流路21を流れる空気即ち酸素(O2)はカソード電極層CEに接触しながら酸化剤排出口23に到達する。そして、酸化剤排出口23に到達した、即ち、未反応の空気(酸素(O2))は、燃料電池スタックSの外部に排出される。
【0029】
又、カソード側セパレータ20の周縁部分には、単セルUを構成するアノード側セパレータ10にギ酸を供給すると共に未反応のギ酸を排出するための貫通孔24及び貫通孔25が設けられる。尚、貫通孔24,25は、酸化剤供給口22及び酸化剤排出口23に対して、例えば、90度ずれた位置に設けられる。
【0030】
更に、カソード側セパレータ20の周縁部分にも、ホルダHのボルトBを挿通するための大径の挿通孔26が複数(
図4及び
図5においては、8箇所)設けられると共に、外部に電気を取り出すための電極部27が設けられる。尚、電極部27については、燃料電池スタックSの形成時において、例えば、最下部に位置する単セルUを構成するカソード側セパレータ20にのみ設けることが可能である。
【0031】
ここで、アノード側セパレータ10の燃料供給口12はカソード側セパレータ20の貫通孔24と連通可能とされ、アノード側セパレータ10の燃料排出口13はカソード側セパレータ20の貫通孔25と連通可能とされる。又、カソード側セパレータ20の酸化剤供給口22はアノード側セパレータ10の貫通孔14と連通可能とされ、カソード側セパレータ20の酸化剤排出口23はアノード側セパレータ10の貫通孔15と連通可能とされる。即ち、アノード側セパレータ10の貫通孔14,15はカソード側セパレータ20の酸化剤供給口22及び酸化剤排出口23に対応して形成され、カソード側セパレータ20の貫通孔24,25はアノード側セパレータ10の燃料供給口12及び燃料排出口13に対応して形成される。
【0032】
更に、カソード側セパレータ20の中央部分における他面側、即ち、酸化剤供給流路21の形成面の裏面側には、
図5に示すように、透過部材50によって分離された気体反応物である二酸化炭素(CO
2)を外部に排出するための排出路28が形成される。本例の排出路28は、凹状に形成される。そして、排出路28の一端側即ち上流側は酸化剤供給口22に接続され、排出路28の他端側即ち下流側は酸化剤排出口23に接続される。
【0033】
これにより、単セルUが積層されて燃料電池スタックSが形成された状態において、ブロアP2によって加圧されて酸化剤供給口22に供給された空気は、一部が酸化剤(酸化剤ガス)として酸化剤供給流路21を流れると共に、他部が加圧流体として排出路28を流れる。即ち、酸化剤供給口22に供給された空気は、分岐されることにより、酸化剤供給流路21と排出路28とを流れる。
【0034】
これにより、後述するように、透過部材50を透過した二酸化炭素(CO2)は、排出路28を流れる加圧流体である空気と共に酸化剤排出口23から燃料電池スタックSの外部に排出される。ここで、排出路28に向けて二酸化炭素(CO2)が透過膜52を透過し易くするために、空気をカソード電極層CEに供給する酸化剤供給流路21の流路断面積に比べて排出路28の流路断面積を小さくする。これにより、排出路28を流れる空気の流速を燃料供給流路11を流れるギ酸の流速よりも大きくすることが可能となり、排出路28の内部における圧力を燃料供給流路11の内部における圧力よりも低くすることができる。これにより、アノード電極層AEにて発生した二酸化炭素(CO2)は、燃料供給流路11の内部と排出路28の内部とに生じた圧力差(差圧)により、透過膜52を透過し易くなり、その結果、排出路18に向けて進入し易くなる。
【0035】
シール部材30は、
図6に示すように、板状に形成されている。ここで、シール部材30は、弾性材料、例えば、EPDM等のゴム材料やエラストマー材料等から形成される。シール部材30は、2枚一対で用いられ、各々のシール部材30がMEA40を挟持すると共にアノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20によって挟持される。
【0036】
シール部材30は、中央部分にMEA40のアノード電極層AE及びカソード電極層CEを収容するように貫通した収容部31を有する。これにより、シール部材30がMEA40を挟持した状態において、アノード側セパレータ10の燃料供給流路11を介して供給されたギ酸は、収容部31の内部を流れることにより、アノード電極層AEに供給される。又、シール部材30がMEA40を挟持した状態において、カソード側セパレータ20の酸化剤供給流路21を介して供給された空気は、収容部31の内部を流れることにより、カソード電極層CEに供給される。
【0037】
又、シール部材30の周縁部分には、単セルUを形成した状態で、アノード側セパレータ10に設けられた燃料供給口12(カソード側セパレータ20の貫通孔24に対応)、及び、燃料排出口13(カソード側セパレータ20の貫通孔25に対応)に対応する位置に貫通孔32,33が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、燃料供給口12(貫通孔24)は貫通孔32と連通し、燃料排出口13(貫通孔25)は貫通孔33と連通する。
【0038】
又、シール部材30の周縁部分には、単セルUを形成した状態で、カソード側セパレータ20に設けられた酸化剤供給口22(アノード側セパレータ10の貫通孔14に対応)及び酸化剤排出口23(アノード側セパレータ10の貫通孔15に対応)に対応する位置に貫通孔34,35が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、酸化剤供給口22(貫通孔14)は貫通孔34と連通し、酸化剤排出口23(貫通孔15)は貫通孔35と連通する。更に、シール部材30の周縁部分には、ホルダHのボルトBを挿通するように形成された挿通孔36が形成される。
【0039】
電極構造体としてのMEA40は、
図7及び
図8に示すように、電解質膜EFと、電解質膜EF上にて所定の触媒を層状に積層することにより形成されて、ギ酸が供給されるアノード電極としてのアノード電極層AEと、空気が供給されるカソード電極としてのカソード電極層CEとを主要構成部品としている。尚、これら電解質膜EF、アノード電極層AE及びカソード電極層CEの電極反応については、広く知られているため、以下の記載においてその詳細な説明を省略する。
【0040】
本例の電解質膜EFは、カチオン(より具体的には、水素イオン(H
+))を選択的に透過するイオン交換膜(例えば、デュポン社製ナフィオン(登録商標)等)から形成される。そして、電解質膜EFの周縁部分には、
図7に示すように、単セルUを形成した状態で、アノード側セパレータ10に設けられた燃料供給口12(カソード側セパレータ20の貫通孔24に対応)、燃料排出口13(カソード側セパレータ20の貫通孔25に対応)及びシール部材30の貫通孔32,33に対応する位置に貫通孔41,42が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、燃料供給口12(貫通孔24,32)は貫通孔41と連通し、燃料排出口13(貫通孔25,33)は貫通孔42と連通する。
【0041】
又、電解質膜EFの周縁部分には、単セルUを形成した状態で、カソード側セパレータ20に設けられた酸化剤供給口22(アノード側セパレータ10の貫通孔14に対応)、酸化剤排出口23(アノード側セパレータ10の貫通孔15に対応)及びシール部材30の貫通孔34,35に対応する位置に貫通孔43,44が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、酸化剤供給口22(貫通孔14,34)は貫通孔43と連通し、酸化剤排出口23(貫通孔15,35)は貫通孔44と連通する。更に、電解質膜EFの周縁部分には、ホルダHのボルトBを挿通するように形成された挿通孔45が形成される。
【0042】
電極層としてのアノード電極層AE及びカソード電極層CEは、貴金属触媒(例えば、パラジウム(PD)や白金(Pt)等)を担持したカーボン(担持カーボン)を主成分とするものであり、
図8に示すように、電解質膜EFの中央部分における表面に対して層状に形成される。ここで、層状に形成されるアノード電極層AE及びカソード電極層CEは、厚みがシール部材30の厚みに比べて僅かに大きくなるように形成される。又、層状に形成されるアノード電極層AE及びカソード電極層CEは、シール部材30の収容部31の大きさに比べて僅かに小さい外形寸法とされている。
【0043】
又、アノード電極層AE及びカソード電極層CEは、
図8に示すように、各々の表面側が導電性を有する繊維から形成された拡散層としてのカーボンクロス(又はカーボンペーパー)CCで覆われる。カーボンクロスCCは、アノード電極層AEに供給されるギ酸及びカソード電極層CEに供給される空気を拡散させると共に、電極反応によって発電された電気をアノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20に効率良く供給するものである。
【0044】
即ち、カーボンクロスCCは繊維状であるため、繊維間を導通することによって、供給されたギ酸及び空気は一様に拡散される。又、カーボンクロスCCは導電性を有しているため、発電された電気を効率良くアノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20に流すことができる。
【0045】
透過部材50は、
図9に示すように、板状に形成されている。透過部材50は、アノード側セパレータ10の燃料供給流路11を流れるギ酸の外部への漏出を防止すると共に、アノード電極層AEにおける電極反応によって発生した気体反応物である二酸化炭素(CO
2)を透過させることにより外部に排出する。本例において、透過部材50は、燃料電池スタックSが形成された状態で、隣接する単セルUの間、例えば、単セルU1と単セルU2の間に配置される(
図2を参照)。
【0046】
透過部材50は、フレーム51と透過膜52とを有する。フレーム51は、中央部分に開口部分を有し、透過膜52を支持する。フレーム51は、アノード側セパレータ10の燃料供給流路11を流れるギ酸が外部に漏出することを防止するシール機能を発揮する。このため、フレーム51は、例えば、樹脂材料(弾性材料を含む)或いは、弾性材料がコーティングされた金属板等を用いて形成される。
【0047】
又、フレーム51は、周縁部分に、単セルUを形成した状態で、アノード側セパレータ10に設けられた燃料供給口12(カソード側セパレータ20の貫通孔24に対応)、燃料排出口13(カソード側セパレータ20の貫通孔25に対応)、シール部材30の貫通孔32,33及びMEA40の貫通孔41,42に対応する位置に貫通孔53,54が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、燃料供給口12(貫通孔24,32,41)は貫通孔53と連通し、燃料排出口13(貫通孔25,33,42)は貫通孔54と連通する。
【0048】
又、フレーム51の周縁部分には、単セルUを形成した状態で、カソード側セパレータ20に設けられた酸化剤供給口22(アノード側セパレータ10の貫通孔14に対応)、酸化剤排出口23(アノード側セパレータ10の貫通孔15に対応)、シール部材30の貫通孔34,35及びMEA40の貫通孔43,44に対応する位置に貫通孔55,56が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、酸化剤供給口22(貫通孔14)は貫通孔55と連通し、酸化剤排出口23(貫通孔15,34,43)は貫通孔56と連通する。更に、フレーム51の周縁部分には、ホルダHのボルトBを挿通するように形成された挿通孔57が形成される。
【0049】
透過膜52は、フレーム51の開口部分を覆い、且つ、フレーム51に接着される。透過膜52は、多孔質膜であり、アノード電極層AEにおける電極反応によって発生した気体反応物である二酸化炭素(CO2)のみを透過させる膜である。即ち、透過膜52は、気体である二酸化炭素(CO2)を透過させる一方で、液体であるギ酸が透過することを阻止する。透過膜52は、ポリテトラフルオロエチレン(Poly Tetra Fluoro Ethylene:PTEF)を基材とした多孔質膜(例えば、日本ゴア社製ゴアテックス(登録商標)等)を用いて形成される。尚、透過膜52としては、PTFEを基材とする多孔質膜に限られず、例えば、撥水加工を施したカーボンシート等を用いて形成することも可能である。
【0050】
そして、単セルUは、
図2及び
図10に示すように、カソード側セパレータ20、シール部材30、MEA40、シール部材30、アノード側セパレータ10及び透過部材50を順次積層することによって形成される。尚、
図10においては、説明の便宜上、シール部材30を省略して示す。ここで、単セルUを形成する場合には、必要に応じて、各部材同士を、例えば、導電性接着剤等を用いて気密的に接着することが可能である。尚、燃料電池スタックSの形成時において、最下部に位置する単セルUを構成するカソード側セパレータ20については排出路28を省略することも可能である。
【0051】
そして、形成された単セルUは、要求出力に応じて複数積層される、より詳しくは、鉛直方向に沿って複数積層されることにより、燃料電池スタックSを構成する。このように構成された燃料電池スタックSにおいては、積層された単セルU間で各々のアノード側セパレータ10の燃料供給口12及び燃料排出口13がカソード側セパレータ20の貫通孔24,25等を介して連通した状態になる。又、燃料電池スタックSにおいては、積層された単セルU間で各々のカソード側セパレータ20の酸化剤供給口22及び酸化剤排出口23がアノード側セパレータ10の貫通孔14,15等を介して連通した状態になる。
【0052】
尚、以下の説明においては、アノード側セパレータ10の燃料供給口12及びカソード側セパレータ20の貫通孔24等によって形成されて、ギ酸が流れる連通路を「燃料側マニホールド」と称呼する。又、カソード側セパレータ20の酸化剤供給口22及びアノード側セパレータ10の貫通孔14等によって形成されて、空気が流れる連通路を「酸化剤側マニホールド」と称呼する。
【0053】
(3.燃料電池1の作動)
次に、上述したように燃料電池スタックSが構成された燃料電池1の作動を説明する。燃料電池1においては、燃料ポンプP1によって加圧されたギ酸は、燃料側マニホールドを介して各々の単セルUのアノード電極層AEに供給される。又、燃料電池1においては、ブロアP2からの空気は、酸化剤側マニホールドを介して各々の単セルUのカソード電極層CEに供給される。
【0054】
即ち、各々の単セルUにおいては、
図11に示すように、アノード側セパレータ10の燃料供給口12を介して供給されたギ酸が燃料供給流路11を燃料排出口13に向けて流れる。これにより、液体燃料であるギ酸は、MEA40のアノード電極層AEに供給される。又、各々の単セルUにおいては、カソード側セパレータ20の酸化剤供給口22を介して供給された空気は、分岐されることにより、一部が酸化剤供給流路21を酸化剤排出口23に向けて流れると共に他部が排出路28を酸化剤排出口23に向けて流れる。これにより、酸化剤供給流路21を流れる酸化剤(酸化剤ガス)である空気は、MEA40のカソード電極層CEに供給される。
【0055】
ここで、各々の単セルUのMEA40においては、周知の通り、ギ酸(HCOOH)と空気(酸素(O2))とを用いた電極反応によって、アノード電極層AEにて気体反応物である二酸化炭素(CO2)が発生する。具体的に、本例においては、MEA40の電解質膜EFがカチオンを選択的に透過するイオン交換膜から形成されている。このため、MEA40においては、下記化学反応式1,2に従い、アノード電極層AEにおいて二酸化炭素(CO2)が発生する。
アノード電極層AE:HCOOH→2H++2e-+CO2↑ …化学反応式1
カソード電極層CE:2H++2e-+(1/2)O2→H2O …化学反応式2
【0056】
ここで、本例の燃料電池1は、各々の単セルUが鉛直方向にて上方に向けて積層される。又、本例の燃料電池1は、鉛直方向にて隣接する単セルU1及び単セルU2において、
図11に示すように、鉛直方向にて下方の単セルU1のアノード側セパレータ10と鉛直方向にて上方の単セルU2のカソード側セパレータ20との間に透過部材50が設けられる。更に、単セルU2のカソード側セパレータ20には、透過部材50に対向するように、排出路28が設けられる。
【0057】
これにより、
図11に示すように、アノード電極層AEにおける電極反応によって発生した二酸化炭素(CO
2)は、ギ酸に比べて比重が小さいため、鉛直方向にて上方、即ち、透過部材50に向けて移動する。透過部材50は、気体のみを選択的に透過して気液分離する。従って、アノード電極層AEにおいて、ギ酸中にて透過部材50に接触するように集められた二酸化炭素(CO
2)は、透過部材50を透過する。
【0058】
透過部材50を透過した二酸化炭素(CO2)は、隣接するカソード側セパレータ20の排出路28に進入する。排出路28は、透過膜52によって区画された状態で、酸化剤供給口22にて分岐された空気を酸化剤排出口23に向けて流している。ここで、排出路28を流れる空気の流速(流量)が燃料供給流路11を流れるギ酸の流速(流量)よりも大きい場合、排出路28内の圧力は燃料供給流路11内の圧力に比べて相対的に小さくなる(負圧になる)。即ち、透過部材50に対して、排出路28側と燃料供給流路11側とで排出路28側の圧力が相対的に小さくなる圧力差(差圧)を生じさせることができる。
【0059】
これにより、透過部材50に接触するように集気した二酸化炭素(CO
2)は、隣接するカソード側セパレータ20の排出路28側に容易に透過する。そして、排出路28側に透過した二酸化炭素(CO
2)は、
図11にて矢印付き破線により示すように、空気と共に酸化剤排出口23を介して燃料電池スタックSの外部に排出される。
【0060】
ところで、上述したように、燃料電池1(より詳しくは、燃料電池スタックS)が透過部材50及び排出路28を有しており、排出路28を加圧流体である空気が流れることにより、電極反応に伴って発生した二酸化炭素(CO2)がアノード電極層AEから連続的に排出される。これにより、アノード電極層AEの近傍に二酸化炭素(CO2)が存在し難くなり、その結果、燃料供給流路11を介して供給されるギ酸がアノード電極層AEに接触する接触面積が低下することが防止される。従って、例えば、燃料電池1の発電が継続した場合であっても、アノード電極層AEにおける電極反応効率が低下することがなく、その結果、燃料電池1の発電効率が低下することを防止することができる。
【0061】
以上の説明からも理解できるように、本例の燃料電池1によれば、電極構造体であるMEA40における電極反応によってアノード電極層AEにて発生した気体反応物である二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)は、透過膜52を透過することによって液体燃料であるギ酸から分離される。これにより、アノード電極層AEの近傍から二酸化炭素(CO2)等を除去することができる。そして、ギ酸から分離された、即ち、透過膜52を透過した二酸化炭素(CO2)等は、加圧流体として酸化剤供給口22にて分岐された空気が流れる排出路18を介して、空気と共に燃料電池1の外部に排出される。これにより、既に発生した二酸化炭素(CO2)等が排出路28に溜まることがなく、二酸化炭素(CO2)等を効率良く、且つ、連続的に外部に排出することができる。従って、燃料電池1が発電を継続する状況であっても、電極反応によって発生した二酸化炭素(CO2)等を連続的に外部に排出することができ、発生した二酸化炭素(CO2)等による燃料電池1の発電効率の低下を抑制することができる。
【0062】
(4.第一別例)
上述した本例においては、カソード電極層CEに供給される空気を分岐して加圧流体として用い、アノード電極層AEにて発生した二酸化炭素(CO
2)を外部に排出するようにした。しかしながら、アノード電極層AEに供給されるギ酸を分岐して加圧流体として用い、アノード電極層AEにて発生した二酸化炭素(CO
2)を外部に排出することも可能である。この場合、
図12に示すように、例えば、透過膜52を用いて区画することにより、アノード側セパレータ10に排出路18が形成される。
【0063】
ここで、
図12に示すように、排出路18に向けて二酸化炭素(CO
2)が透過膜52を透過し易くするために、ギ酸をアノード電極層AEに供給する燃料供給流路11の流路断面積に比べて排出路18の流路断面積を小さくする。これにより、排出路18を流れるギ酸の流速は燃料供給流路11を流れるギ酸の流速よりも大きくなり、排出路18の内部における圧力を燃料供給流路11の内部における圧力よりも低くすることができる。これにより、透過膜52を透過した二酸化炭素(CO
2)を排出路18に流れるギ酸と共に外部に排出することができる。従って、第一別例においても、上述した本例と同様の効果が得られる。
【0064】
(5.第二別例)
上述した本例及び第一別例においては、アノード電極層AEにおける電極反応によって発生した二酸化炭素(CO2)を外部に排出するようにした。しかし、アノード電極層AEにて発生した二酸化炭素(CO2)を回収して利用することも可能である。この場合、回収した二酸化炭素(CO2)を用いて、例えば、ギ酸ソーダ等の再生原料を生成することにより、液体燃料であるギ酸を生成するために利用することができる。このように、燃料電池1の発電に伴って発生する二酸化炭素(CO2)を液体燃料の生成することに利用することにより、二酸化炭素(CO2)の大気中への排出(放出)を抑制することができる。
【0065】
(6.その他の別例)
上述した本例、第一別例及び第二別例においては、電解質膜EFがプロトンを透過させるイオン電導膜であるプロトン伝導体である場合を説明した。しかし、電解質膜EFが水酸化物イオン等のアニオンを透過させるイオン電導膜であるアニオン伝導体とすることも可能である。
【0066】
又、上述した本例、第一別例及び第二別例においては、水平方向に配置した複数の単セルUを鉛直方向に積層することにより、燃料電池スタックSを形成するようにした。しかし、気体反応物である二酸化炭素(CO2)や一酸化炭素(CO)を集気し、且つ、透過膜が集気した気体反応物を透過させることにより、排出路が透過膜を透過した気体反応物を外部に排出可能であれば、これに限られない。即ち、この場合には、上述した本例のように燃料電池スタックSを縦置きとすることに代えて、燃料電池スタックを横置きとすることが可能である。
【0067】
更に、上述した本例、第一別例及び第二別例においては、カソード電極層CEに供給する酸化剤である空気、又は、アノード電極層AEに供給する液体燃料であるギ酸を、酸化剤供給口22又は燃料供給口12にて分岐させ、分岐した空気又はギ酸即ち加圧流体が排出路28又は排出路18を流れるようにした。しかしながら、排出路28又は排出路18に対して、空気やギ酸を分岐させずに、即ち、別途供給した流体である空気やギ酸を加圧流体として流すことも可能である。この場合においても、上述した本例、第一別例及び第二別例と同様の効果が得られる。尚、流体を別途供給する場合、流体である空気やギ酸を外部から吸引し、排出路28又は排出路18に吸引された空気やギ酸を流すことも可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…直接ギ酸型燃料電池(燃料電池)、10…アノード側セパレータ、11…燃料供給流路、12…燃料供給口、13…燃料排出口、14,15…貫通孔、16…挿通孔、17…電極部、18…排出路、20…カソード側セパレータ、21…酸化剤供給流路、22…酸化剤供給口、23…酸化剤排出口、24,25…貫通孔、26…挿通孔、27…電極部、28…排出路、30…シール部材、31…収容部、32~35…貫通孔、36…挿通孔、40…MEA(電極構造体)、41…貫通孔、41~44…貫通孔、45…挿通孔、50…透過部材、51…フレーム、52…透過膜、53~56…貫通孔、57…挿通孔、AE…アノード電極層、CE…カソード電極層、EF…電解質膜、CC…カーボンクロス、S…燃料電池スタック、U…単セル、U1…単セル、U2…単セル、H…ホルダ、B…ボルト、P1…燃料ポンプ、P2…ブロア、T1…供給タンク、T2…回収タンク