IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧 ▶ 国立大学法人金沢大学の特許一覧

<>
  • 特開-燃料電池 図1
  • 特開-燃料電池 図2
  • 特開-燃料電池 図3
  • 特開-燃料電池 図4
  • 特開-燃料電池 図5
  • 特開-燃料電池 図6
  • 特開-燃料電池 図7
  • 特開-燃料電池 図8
  • 特開-燃料電池 図9
  • 特開-燃料電池 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043610
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20220309BHJP
   H01M 8/1009 20160101ALI20220309BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20220309BHJP
   H01M 8/0263 20160101ALI20220309BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20220309BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220309BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/1009
H01M8/04746
H01M8/0263
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020148972
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】辻口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武田 恭英
(72)【発明者】
【氏名】中井 基生
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】久保 厚
(72)【発明者】
【氏名】古橋 資丈
(72)【発明者】
【氏名】仲曽根 歩
(72)【発明者】
【氏名】中根 淳志
(72)【発明者】
【氏名】阿知波 文高
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA08
5H126AA10
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD04
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE04
5H126EE22
5H126EE23
5H126EE24
5H126JJ03
5H126JJ09
5H127AA06
5H127AC11
5H127AC15
5H127BA01
5H127BA03
5H127BA21
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
(57)【要約】
【課題】電極反応に伴って発生した生成水を効率よく外部に排出することができる燃料電池を提供すること。
【解決手段】燃料電池は、MEA40における電極反応に伴ってカソード電極にて発生する生成水(H2O)を外部に排出する排出機構Fを備える。排出機構Fは、酸化剤である空気が流れる排出路28と、酸化剤供給流路21と排出路28とを連通可能に接続し、カソード電極にて発生した生成水を排出路28に移動させる通路29と、排出路28に移動した生成水を外部に排出する排出部20cとを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜、アノード電極及びカソード電極を有する電極構造体と、
前記アノード電極に液体燃料を供給する燃料供給流路を有するアノード側セパレータと、
前記カソード電極に酸化剤を供給する酸化剤供給流路を有するカソード側セパレータと、を備え、
一対の前記アノード側セパレータ及び前記カソード側セパレータの間に前記電極構造体が配置された単セルを形成し、前記電極構造体における電極反応によって発電する燃料電池であって、
前記電極反応に伴って前記カソード電極にて発生する生成水を前記カソード側セパレータの前記カソード電極に対応する対向面から前記カソード側セパレータの板厚方向にて前記対向面の裏面に向けて移動させる通路を有し、前記通路を介して前記裏面に移動した前記生成水を外部に排出する排出機構を備えた、燃料電池。
【請求項2】
前記排出機構は、前記裏面に設けられて、前記通路と連通する排出路を有し、
前記通路は、前記酸化剤供給流路と前記排出路とを連通可能に接続する、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記排出路は、
前記電極構造体にて前記電極反応が生じている状態で流体が流れることにより、前記通路を介して前記裏面に移動した前記生成水を外部に排出する、請求項2に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記排出路は、前記酸化剤供給流路に供給される前記酸化剤から分岐した前記酸化剤が前記流体として流れる、請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記酸化剤供給流路は蛇行形状に形成されると共に、前記排出路は直線形状に形成されており、
前記排出路の内部の圧力は、前記流体が流れることにより、前記燃料供給流路の内部の圧力に比べて小さい、請求項3又は4に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記通路の形成位置における前記酸化剤供給流路の形成方向と、前記通路の形成位置における前記排出路の形成方向とが交差する、請求項2-5の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記排出路は、鉛直方向に沿って配置される、請求項2-6の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記通路は、前記対向面及び前記裏面における開口がスリット状に設けられる、請求項1-6の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記通路の軸方向に直交する断面形状は、円形状又は多角形状の一方である、請求項1-8の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記排出機構によって排出された前記生成水を回収して貯水するリザーバタンクを有する、請求項1-9の何れか一項に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記リザーバタンクに貯水された前記生成水は、前記アノード電極を洗浄する洗浄水として用いられる、請求項10に記載の燃料電池。
【請求項12】
前記アノード電極に供給される前記液体燃料は、ギ酸(HCOOH)である、請求項1-11の何れか一項に記載の燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池、特に、固体高分子型燃料電池は、一般に、電解質膜の一面側に形成されたアノード電極と、他面側に形成されたカソード電極とからなる電極構造体を備えている。そして、固体高分子型燃料電池においては、アノード電極に燃料が供給され且つカソード電極に酸化剤が外部から供給されることにより、電極構造体にて電極反応が生じて発電される。
【0003】
近年、アノード電極に供給される燃料として、メタノールやギ酸等の液体燃料を直接用いる直接型の燃料電池が開発されている。液体燃料を用いる場合、水素ガスを燃料として用いる場合に比べて、取り扱いが容易であり、体積当たりのエネルギー密度が高く、極めて有用である。
【0004】
燃料電池においては、水素ガスや液体燃料を用いた場合であっても、電極反応に伴って生成水がカソード電極側で発生する。特に、液体状態の生成水がカソード電極の表面を覆った場合、即ち、フラッディング現象が発生した場合、カソード電極を形成する触媒と酸素(O)との接触が損なわれ、その結果、燃料電池の発電効率が低下する虞がある。
【0005】
このため、従来から、例えば、特許文献1及び特許文献2には、発生した生成水をカソード電極の表面から除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-108573号公報
【特許文献2】特開2012-38569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の技術では、カソード電極の表面の近傍に存在する生成水を、積極的にカソード電極から離間する方向に移動させることなく、酸化剤の圧力を生成水に作用させることによりカソード電極の表面に沿って除去する。この場合、カソード電極の表面に液体状態の生成水が存在してフラッディング現象が生じ得る状況であっても、カソード電極の表面形状に依っては生成水を燃料電池の外部に連続的に効率よく排出することができない虞がある。この場合、燃料電池の発電が継続することに伴ってカソード電極の表面に液体状態の生成水が多量に存在するようになり、その結果、フラッディング現象が生じて燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。従って、上述した従来の技術には、発生した気体状態及び液体状態の生成水を効率よく外部に排出する点で、改善の余地がある。
【0008】
本発明は、電極反応に伴って発生した生成水を効率よく外部に排出することができる燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
燃料電池は、電解質膜、アノード電極及びカソード電極を有する電極構造体と、アノード電極に液体燃料を供給する燃料供給流路を有するアノード側セパレータと、カソード電極に酸化剤を供給する酸化剤供給流路を有するカソード側セパレータと、を備え、一対のアノード側セパレータ及びカソード側セパレータの間に電極構造体が配置された単セルを形成し、電極構造体における電極反応によって発電する燃料電池であって、電極反応に伴ってカソード電極にて発生する生成水をカソード側セパレータのカソード電極に対応する対向面からカソード側セパレータの板厚方向にて対向面の裏面に向けて移動させる通路を有し、通路を介して裏面に移動した生成水を外部に排出する排出機構を備える。
【0010】
これによれば、排出機構は、電極構造体における電極反応によってカソード電極にて発生した生成水を、カソード側セパレータに設けられた通路を介して、カソード電極に対向する対向面からカソード側セパレータの裏面に向けて移動させて、外部に排出することができる。即ち、排出機構は、カソード電極にて発生する生成水を、通路を介してカソード電極から離間する方向に移動させて外部に連続的に排出することができる。これにより、燃料電池が発電を継続する状況であっても、カソード電極の表面に生成水が多量に溜まることがなく、その結果、フラッディング現象が生じることを抑制することができる。従って、カソード電極にて発生した生成水による燃料電池の発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】燃料電池の構成を示す図である。
図2】積層された単セルによって形成された燃料電池スタックの構成を示す図である。
図3】アノード側セパレータの構成を示す図である。
図4】カソード側セパレータの対向面側の構成を示す図である。
図5】カソード側セパレータの裏面側の構成を示す図である。
図6】シール部材の構成を示す図である。
図7】MEAの構成を示す図である。
図8図7のVIII-VIIIにおけるMEAの断面を示す断面図である。
図9】生成水の排出を説明するための断面図である。
図10】第一別例の構成を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.燃料電池の概要)
本例においては、燃料電池として固体高分子型燃料電池を例示する。即ち、本例の燃料電池は、電解質膜の一面側にアノード電極が形成され、電解質膜の他面側にカソード電極が形成される。ここで、電解質膜、アノード電極及びカソード電極は、電極構造体であるMEA(Membrane-Electrode-Assembly:膜―電極接合体)を形成する。
【0013】
又、本例の燃料電池は、アノード電極に燃料を供給するアノード側セパレータ(コレクタを含む)及びカソード電極に酸化剤(酸化剤ガス)を供給するカソード側セパレータ(コレクタを含む)が設けられる。そして、本例の燃料電池は、MEA、アノード側セパレータ及びカソード側セパレータを含む1つのセル(以下、単セルと称呼する。)が形成され、単セルが複数積層されることによって燃料電池スタックが形成される。
【0014】
本例においては、燃料電池のアノード電極に対して供給される燃料としては、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CHOH)、エタノール(COH)等の液体燃料を例示することができる。ここで、以下に説明する燃料電池においては、供給される液体燃料として、ギ酸を直接用いる場合を例示する。即ち、本例の燃料電池は、固体高分子型燃料電池であって、直接ギ酸型燃料電池(DFAFC)を例示する。又、本例においては、燃料電池のカソード電極に対して供給される酸化剤(酸化剤ガス)としては、酸素(O)ガス、空気等を例示することができる。ここで、以下に説明する燃料電池においては、供給される気体の酸化剤即ち酸化剤ガスとして、空気を用いる場合を例示する。
【0015】
直接ギ酸型燃料電池の場合、MEAのアノード電極に液体燃料であるギ酸が直接供給され、MEAのカソード電極に酸化剤(酸化剤ガス)である空気(O)が供給されると、MEAにおける電極反応に伴ってカソード電極側にて生成水(HO)が発生する。そして、発生した生成水は、冷却に伴い凝集して液体状態になると、カソード電極(より詳しくは、カソード電極を構成する触媒層)の表面を覆い、カソード電極と空気との接触を阻害するようになる。本例の燃料電池は、生成水を外部に排出するために、カソード電極で発生した生成水をカソード電極の表面から離間するように移動させ、移動させた生成水を外部に排出する排出機構を備える。
【0016】
このため、本例の燃料電池のカソード側セパレータは、カソード電極に対向する対向面に酸化剤(酸化剤ガス)を供給する供給路が形成されると共にカソード側セパレータの板厚方向にて対向面の裏側となる裏面に排出路が形成され、且つ、供給路と排出路とを板厚方向に沿って形成された通路によって連結する。これにより、カソード電極側にて発生した生成水は、通路を通ってカソード側セパレータの対向面側から裏面側に形成された排出路に向けて移動することができ、排出路を通って外部に排出される。従って、電極反応に伴って発生した生成水は、カソード電極から連続的に効率よく除去される。
【0017】
又、排出路はカソード側セパレータに形成されるため、流体を加圧した加圧流体として、例えば、加圧されてカソード電極に供給される酸化剤(酸化剤ガス)即ち空気を分岐させることにより、排出路に流すことができる。これにより、通路を通って排出路に到達した生成水は、例えば、酸化剤(空気)と共に外部に排出される。尚、流体については、加圧することに代えて、例えば、外部から吸引して流すことも可能である。
【0018】
(2.直接ギ酸型燃料電池1の構成の詳細)
以下、本例の直接ギ酸型燃料電池1(以下、単に「燃料電池1」と称呼する。)の構成について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、本例の燃料電池1は、燃料電池スタックSを形成する。燃料電池スタックSは、複数の単セルUが積層された状態とされ、積層された複数の単セルUがホルダH及びボルトBによって保持される。本例の燃料電池スタックSは、鉛直方向に配置した複数の単セルUを水平方向に沿って積層した横置きとされる。燃料電池スタックSには、供給タンクT1に貯留された液体燃料であるギ酸を加圧して供給する燃料ポンプP1が配管(図示省略)を介して接続部K1に接続される。又、燃料電池スタックSには、酸化剤(酸化剤ガス)として空気を加圧して供給するブロアP2(加圧ポンプ)が配管(図示省略)を介して接続部K2に接続される。
【0019】
単セルUは、図2に示すように、アノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20を備える。そして、本例の単セルUは、アノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20の間に配置されて積層されるシール部材30及びMEA40を含んで構成される。
【0020】
アノード側セパレータ10は、図3に示すように、板状に形成される。そして、本例のアノード側セパレータ10は、MEA40における電極反応によって発電された電気を集電する集電機能(所謂、コレクタ)を有しており、金属製の素材、例えば、SUS316等のステンレスの薄板等に対して金メッキ等の導電処理が施される。尚、本例においては、アノード側セパレータ10を金属製の素材を用いて形成するが、導電性を有する非金属材料(例えば、カーボン或いはカーボンとの複合材等)を素材にして形成することも可能である。
【0021】
アノード側セパレータ10の中央部分、即ち、MEA40(より詳しくは、後述するアノード電極であるアノード電極層AE)に対向する位置には、液体燃料であるギ酸をアノード電極層AEに供給するための燃料供給流路11が形成される。本例の燃料供給流路11は、図3に示すように、蛇行するように形成される場合を例示する。又、アノード側セパレータ10の周縁部分には、燃料供給流路11にギ酸を供給するための燃料供給口12と、燃料供給流路11を通過したギ酸を排出するための燃料排出口13が設けられる。
【0022】
燃料供給口12は、燃料電池スタックSの外部に設けられた燃料ポンプP1(図1を参照)によって加圧されたギ酸が供給される。燃料ポンプP1は、供給タンクT1(図1を参照)に貯留されたギ酸を加圧して供給する。燃料排出口13は、燃料電池スタックSの外部に設けられた回収タンクT2(図1を参照)に接続されており、排出されたギ酸を回収タンクT2に排出する。尚、本例のアノード側セパレータは、燃料電池スタックSが設置された状態において、鉛直方向にて下方側に燃料供給口12設け、鉛直方向にて上方側に燃料排出口13を設ける場合を例示する。但し、必要に応じて、鉛直方向にて上方側に燃料供給口12設け、鉛直方向にて下方側に燃料排出口13を設けても良い。
【0023】
これにより、本例の単セルUにおいては、供給タンクT1から燃料ポンプP1によって加圧されたギ酸が燃料供給口12から燃料供給流路11に供給され、燃料供給流路11を流れるギ酸はアノード電極層AEに接触しながら燃料排出口13に到達する。即ち、本例においては、燃料供給口12から供給されたギ酸は、燃料供給流路11を鉛直方向にて下方側から上方側に向けて流れ、燃料排出口13に到達する。そして、燃料排出口13に到達した、即ち、未反応のギ酸は、回収タンクT2に回収される。
【0024】
又、アノード側セパレータ10の周縁部分には、単セルUを構成するカソード側セパレータ20に空気を供給すると共に未反応の空気を排出するための貫通孔14及び貫通孔15が設けられる。尚、貫通孔14,15は、燃料供給口12及び燃料排出口13に対して、例えば、90度ずれた位置に設けられる。更に、アノード側セパレータ10の周縁部分には、ホルダHのボルトBを挿通するための大径の挿通孔16が複数(図3においては、8箇所)設けられると共に、外部に電気を取り出すための電極部17が設けられる。尚、電極部17については、燃料電池スタックSの形成時において、例えば、端部に位置する単セルUを構成するアノード側セパレータ10にのみ設けることも可能である。
【0025】
カソード側セパレータ20は、図4及び図5に示すように、板状に形成される。そして、本例のカソード側セパレータ20も、MEA40における電極反応によって発電された電気を集電する集電機能(所謂、コレクタ)を有しており、金属製の素材、例えば、SUS316等のステンレスの薄板等に対して金メッキ等の導電処理が施される。尚、本例においては、カソード側セパレータ20も、アノード側セパレータ10と同様に、金属製の素材を用いて形成するが、導電性を有する非金属材料(例えば、カーボン或いはカーボンとの複合材等)を素材にして形成することも可能である。
【0026】
カソード側セパレータ20の中央部分において、MEA40(より詳しくは、後述するカソード電極であるカソード電極層CE)に対向する対向面20a側には、図4に示すように、酸化剤(酸化剤ガス)である空気をカソード電極層CEに供給するための酸化剤供給流路21が形成される。本例の酸化剤供給流路21は、図4に示すように、蛇行形状の凹凸(溝)として形成される場合を例示する。
【0027】
又、カソード側セパレータ20の周縁部分には、酸化剤供給流路21に空気即ち酸素(O)を供給するための酸化剤供給口22と、酸化剤供給流路21を通過した空気を排出するための酸化剤排出口23が設けられる。酸化剤供給口22は、燃料電池スタックSの外部に設けられたブロアP2(図1を参照)によって加圧された空気が供給される。尚、本例においては、燃料電池1がブロアP2を備え、空気をブロアP2によって加圧して供給するようにする。しかし、必要に応じて、ブロアP2を省略することも可能である。
【0028】
酸化剤排出口23は、排出された空気を燃料電池スタックSの外部に排出する。これにより、本例の単セルUにおいては、ブロアP2によって加圧された空気即ち酸素(O)が酸化剤供給口22から酸化剤供給流路21に供給され、酸化剤供給流路21を流れる空気即ち酸素(O)はカソード電極層CEに接触しながら酸化剤排出口23に到達する。そして、酸化剤排出口23に到達した、即ち、未反応の空気(酸素(O))は、燃料電池スタックSの外部に排出される。
【0029】
又、カソード側セパレータ20の周縁部分には、単セルUを構成するアノード側セパレータ10にギ酸を供給すると共に未反応のギ酸を排出するための貫通孔24及び貫通孔25が設けられる。尚、貫通孔24,25は、酸化剤供給口22及び酸化剤排出口23に対して、例えば、90度ずれた位置に設けられる。
【0030】
更に、カソード側セパレータ20の周縁部分にも、ホルダHのボルトBを挿通するための大径の挿通孔26が複数(図4及び図5においては、8箇所)設けられると共に、外部に電気を取り出すための電極部27が設けられる。尚、電極部27については、燃料電池スタックSの形成時において、例えば、端部に位置する単セルUを構成するカソード側セパレータ20にのみ設けることが可能である。
【0031】
ここで、アノード側セパレータ10の燃料供給口12はカソード側セパレータ20の貫通孔24と連通可能とされ、アノード側セパレータ10の燃料排出口13はカソード側セパレータ20の貫通孔25と連通可能とされる。又、カソード側セパレータ20の酸化剤供給口22はアノード側セパレータ10の貫通孔14と連通可能とされ、カソード側セパレータ20の酸化剤排出口23はアノード側セパレータ10の貫通孔15と連通可能とされる。即ち、アノード側セパレータ10の貫通孔14,15はカソード側セパレータ20の酸化剤供給口22及び酸化剤排出口23に対応して形成され、カソード側セパレータ20の貫通孔24,25はアノード側セパレータ10の燃料供給口12及び燃料排出口13に対応して形成される。
【0032】
更に、カソード側セパレータ20の板厚方向にて対向面20aの裏側になる裏面20bの中央部分には、図5に示すように、MEA40(カソード電極層CE)における電極反応によって発生した生成水(HO)を燃料電池スタックS(単セルU)の外部に向けて排出する排出機構Fが形成される。排出機構Fは、図5に示すように、排出部20c、排出路28及び通路29を備える。
【0033】
本例の排出路28は、複数の直線形状の凹凸、具体的に、図5においては6本の直線形状の溝28aによって形成される場合を例示する。本例の排出路28は、対向面20aに形成された酸化剤供給流路21の直線部分に対して、例えば、90度回転して形成される。そして、排出路28の溝28aの一端側即ち上流側は酸化剤供給口22に接続され、排出路28の溝28aの他端側即ち下流側は燃料電池スタックSを構成した状態で外部と連通するようにカソード側セパレータ20に形成された排出部20cに接続される。
【0034】
尚、本例においては、排出機構Fが排出部20c及び排出路28を備え、排出路28が排出部20cに接続されるように構成する。しかし、排出部20cに代えて(排出部20cを省略して)、排出路28(溝28a)をカソード側セパレータ20の端部まで延設して、生成水(HO)を燃料電池スタックS(単セルU)の外部に排出するように構成することも可能である。
【0035】
ここで、本例のカソード側セパレータ20は、燃料電池スタックSが設置された状態において、鉛直方向にて上方側に酸化剤供給口22が配置され、鉛直方向にて下方側に排出部20cが配置される。即ち、本例の排出路28は、酸化剤供給口22に接続される上流側が鉛直方向にて上方側になり、排出部20cに接続される下流側が鉛直方向にて下方側になる。
【0036】
これにより、単セルUが積層されて燃料電池スタックSが形成された状態において、ブロアP2によって加圧されて酸化剤供給口22に供給された空気は、一部が酸化剤(酸化剤ガス)として酸化剤供給流路21を流れると共に、他部が加圧流体として排出路28(溝28a)を流れる。即ち、酸化剤供給口22に供給された空気は、分岐されることにより、酸化剤供給流路21と排出路28(溝28a)とを流れる。
【0037】
通路29は、カソード側セパレータ20の対向面20aに形成された酸化剤供給流路21(より詳しくは、酸化剤供給流路21を形成する溝)とカソード側セパレータ20の裏面20bに形成された排出路28(より詳しくは、溝28a)とを、カソード側セパレータ20の板厚方向にて連通可能に接続する。本例の通路29は、図4及び図5にて破線の丸により囲んで示すように、対向面20a及び裏面20bにおける開口がスリット状に設けられると共に軸方向に直交する断面形状が四角形状の貫通孔とされ、複数(例えば、90個)設けられる。
【0038】
ここで、本例においては、例えば、カソード側セパレータ20の板厚の半分の深さとなるように対向面20aに酸化剤供給流路21の溝が形成され、酸化剤供給流路21に対して90度回転した方向に沿ってカソード側セパレータ20の板厚の半分の深さとなるように裏面20bに排出路28の溝28aが形成される。即ち、本例においては、図4及び図5に示すように、通路29の形成位置における酸化剤供給流路21の溝の形成方向と、通路29の形成位置における排出路28の溝28aの形成方向とが交差する。これにより、本例においては、酸化剤供給流路21及び排出路28が形成されることにより、断面形状が四角形状の通路29が形成される。
【0039】
これにより、後述するように、MEA40における電極反応によってカソード電極層CEにて発生した生成水(HO)は、通路29を介して、カソード側セパレータ20の対向面20aから裏面20bに向けて、即ち、酸化剤供給流路21から排出路28に向けて移動する。そして、通路29を通って排出路28に到達した生成水(HO)は、排出路28を流れる空気と共にカソード側セパレータ20の排出部20cから外部に排出される。即ち、排出部20c、排出路28及び通路29を有する排出機構Fは、MEA40における電極反応によってカソード電極層CEにて発生した生成水(HO)を、カソード電極層CEから離間する方向に移動させて外部に排出することができる。
【0040】
ここで、直線形状の排出路28(溝28a)に空気を流すことにより、排出路28における圧力は、蛇行形状の酸化剤供給流路21における圧力に比べ、空気の流速の差(或いは、圧損の差)に起因して相対的に低下し、気体状態(水蒸気)の生成水(HO)は通路29を通って排出路28に向けて移動し易くなる。又、発生した生成水(HO)が凝縮して液化した場合には、液体状態の生成水(HO)の表面張力に起因する毛細管現象が生じ、生成水(HO)は通路29を通って排出路28に向けて移動し易くなる。従って、排出機構Fは、発生した生成水(HO)を効率良く、燃料電池スタックS(単セルU)の外部に排出することができる。
【0041】
シール部材30は、図6に示すように、板状に形成されている。ここで、シール部材30は、弾性材料、例えば、EPDM等のゴム材料やエラストマー材料等から形成される。シール部材30は、2枚一対で用いられ、各々のシール部材30がMEA40を挟持すると共にアノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20によって挟持される。
【0042】
シール部材30は、中央部分にMEA40のアノード電極層AE及びカソード電極層CEを収容するように貫通した収容部31を有する。これにより、シール部材30がMEA40を挟持した状態において、アノード側セパレータ10の燃料供給流路11を介して供給されたギ酸は、収容部31の内部を流れることにより、アノード電極層AEに供給される。又、シール部材30がMEA40を挟持した状態において、カソード側セパレータ20の酸化剤供給流路21を介して供給された空気は、収容部31の内部を流れることにより、カソード電極層CEに供給される。
【0043】
又、シール部材30の周縁部分には、単セルUを形成した状態で、アノード側セパレータ10に設けられた燃料供給口12(カソード側セパレータ20の貫通孔24に対応)、及び、燃料排出口13(カソード側セパレータ20の貫通孔25に対応)に対応する位置に貫通孔32,33が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、燃料供給口12(貫通孔24)は貫通孔32と連通し、燃料排出口13(貫通孔25)は貫通孔33と連通する。
【0044】
又、シール部材30の周縁部分には、単セルUを形成した状態で、カソード側セパレータ20に設けられた酸化剤供給口22(アノード側セパレータ10の貫通孔14に対応)及び酸化剤排出口23(アノード側セパレータ10の貫通孔15に対応)に対応する位置に貫通孔34,35が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、酸化剤供給口22(貫通孔14)は貫通孔34と連通し、酸化剤排出口23(貫通孔15)は貫通孔35と連通する。更に、シール部材30の周縁部分には、ホルダHのボルトBを挿通するように形成された挿通孔36が形成される。
【0045】
電極構造体としてのMEA40は、図7及び図8に示すように、電解質膜EFと、電解質膜EF上にて所定の触媒を層状に積層することにより形成されて、ギ酸が供給されるアノード電極としてのアノード電極層AEと、空気が供給されるカソード電極としてのカソード電極層CEとを主要構成部品としている。尚、これら電解質膜EF、アノード電極層AE及びカソード電極層CEの電極反応については、広く知られているため、以下の記載においてその詳細な説明を省略する。
【0046】
本例の電解質膜EFは、カチオン(より具体的には、水素イオン(H))を選択的に透過するイオン交換膜(例えば、デュポン社製ナフィオン(登録商標)等)から形成される。そして、電解質膜EFの周縁部分には、図7に示すように、単セルUを形成した状態で、アノード側セパレータ10に設けられた燃料供給口12(カソード側セパレータ20の貫通孔24に対応)、燃料排出口13(カソード側セパレータ20の貫通孔25に対応)及びシール部材30の貫通孔32,33に対応する位置に貫通孔41,42が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、燃料供給口12(貫通孔24,32)は貫通孔41と連通し、燃料排出口13(貫通孔25,33)は貫通孔42と連通する。
【0047】
又、電解質膜EFの周縁部分には、単セルUを形成した状態で、カソード側セパレータ20に設けられた酸化剤供給口22(アノード側セパレータ10の貫通孔14に対応)、酸化剤排出口23(アノード側セパレータ10の貫通孔15に対応)及びシール部材30の貫通孔34,35に対応する位置に貫通孔43,44が形成される。これにより、単セルUを形成した状態で、酸化剤供給口22(貫通孔14,34)は貫通孔43と連通し、酸化剤排出口23(貫通孔15,35)は貫通孔44と連通する。更に、電解質膜EFの周縁部分には、ホルダHのボルトBを挿通するように形成された挿通孔45が形成される。
【0048】
電極層としてのアノード電極層AE及びカソード電極層CEは、貴金属触媒(例えば、パラジウム(Pd)や白金(Pt)等)を担持したカーボン(担持カーボン)を主成分とするものであり、図8に示すように、電解質膜EFの中央部分における表面に対して層状に形成される。ここで、層状に形成されるアノード電極層AE及びカソード電極層CEは、厚みがシール部材30の厚みに比べて僅かに大きくなるように形成される。又、層状に形成されるアノード電極層AE及びカソード電極層CEは、シール部材30の収容部31の大きさに比べて僅かに小さい外形寸法とされている。
【0049】
又、アノード電極層AE及びカソード電極層CEは、図8に示すように、各々の表面側が導電性を有する繊維から形成された拡散層としてのカーボンクロス(又はカーボンペーパー)CCで覆われる。カーボンクロスCCは、アノード電極層AEに供給されるギ酸及びカソード電極層CEに供給される空気を拡散させると共に、電極反応によって発電された電気をアノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20に効率良く供給するものである。
【0050】
即ち、カーボンクロスCCは繊維状であるため、繊維間を導通することによって、供給されたギ酸及び空気は一様に拡散される。又、カーボンクロスCCは導電性を有しているため、発電された電気を効率良くアノード側セパレータ10及びカソード側セパレータ20に流すことができる。
【0051】
そして、単セルUは、図2に示すように、アノード側セパレータ10、シール部材30、MEA40、シール部材30、及び、カソード側セパレータ20を水平方向にて順次積層することによって形成される。ここで、単セルUを形成する場合には、必要に応じて、各部材同士を、例えば、導電性接着剤等を用いて気密的に接着することが可能である。
【0052】
形成された単セルUは、要求出力に応じて複数積層されることにより、燃料電池スタックSを構成する。このように構成された燃料電池スタックSにおいては、積層された単セルU間で各々のアノード側セパレータ10の燃料供給口12及び燃料排出口13がカソード側セパレータ20の貫通孔24,25等を介して連通した状態になる。又、燃料電池スタックSにおいては、積層された単セルU間で各々のカソード側セパレータ20の酸化剤供給口22及び酸化剤排出口23がアノード側セパレータ10の貫通孔14,15等を介して連通した状態になる。
【0053】
尚、以下の説明においては、アノード側セパレータ10の燃料供給口12及びカソード側セパレータ20の貫通孔24等によって形成されて、ギ酸が流れる連通路を「燃料側マニホールド」と称呼する。又、カソード側セパレータ20の酸化剤供給口22及びアノード側セパレータ10の貫通孔14等によって形成されて、空気が流れる連通路を「酸化剤側マニホールド」と称呼する。
【0054】
(3.燃料電池1の作動)
次に、上述したように燃料電池スタックSが構成された燃料電池1の作動を説明する。燃料電池1においては、燃料ポンプP1によって加圧されたギ酸は、燃料側マニホールドを介して各々の単セルUのアノード電極層AEに供給される。又、燃料電池1においては、ブロアP2からの空気は、酸化剤側マニホールドを介して各々の単セルUのカソード電極層CEに供給される。
【0055】
即ち、各々の単セルUにおいては、図9に示すように、アノード側セパレータ10の燃料供給口12を介して供給されたギ酸が燃料供給流路11を燃料排出口13に向けて流れる。これにより、液体燃料であるギ酸は、MEA40のアノード電極層AEに供給される。又、各々の単セルUにおいては、カソード側セパレータ20の酸化剤供給口22を介して供給された空気は、分岐されることにより、一部が酸化剤供給流路21を酸化剤排出口23に向けて流れると共に他部が排出路28を排出部20cに向けて流れる。これにより、酸化剤供給流路21を流れる酸化剤(酸化剤ガス)である空気は、MEA40のカソード電極層CEに供給される。
【0056】
ところで、各々の単セルUのMEA40においては、周知の通り、ギ酸(HCOOH)と空気(酸素(O))とを用いた電極反応によって、カソード電極層CEにて生成水(HO)が発生する。具体的に、本例においては、MEA40の電解質膜EFがカチオンを選択的に透過するイオン交換膜から形成されている。このため、MEA40においては、下記化学反応式1,2に従い、カソード電極層CEにおいて生成水(HO)が発生する。
アノード電極層AE:HCOOH→2H+2e+CO …化学反応式1
カソード電極層CE:2H+2e+(1/2)O→HO …化学反応式2
【0057】
ここで、本例の燃料電池1は、各々の単セルUが水平方向にて積層されて燃料電池スタックSが形成される。又、本例の燃料電池1においては、鉛直方向に沿って排出機構Fが設けられる。これにより、図9にて破線により示すように、カソード電極層CEにおける電極反応によって発生した気体状態(水蒸気)又は液体状態の生成水(HO)は、排出機構Fの通路29を通って、カソード側セパレータ20の対向面20a(即ち、カソード電極層CE側)から裏面20b(即ち、排出路28側)に移動する。
【0058】
排出路28(溝28a)には、酸化剤供給口22にて分岐された空気が排出部20cに向けて流れている。従って、通路29を通って移動した生成水(HO)は、排出路28を流れる空気と共に排出部20cから燃料電池スタックSの外部に排出される。尚、排出機構Fは、鉛直方向に沿って形成される、即ち、排出部20cが鉛直方向にて下方側に配置される。このため、MEA40の電極反応に伴う熱によって気体状態(水蒸気)で発生した生成水(HO)が通路29を通ることにより冷却されて液化した場合には、排出路28を流れる空気の圧力と液体状態の生成水(HO)の自重とにより排出部20cに向けて移動し、燃料電池スタックSの外部に排出される。
【0059】
ところで、上述したように、燃料電池1(より詳しくは、燃料電池スタックS)が排出機構Fを有することにより、電極反応に伴って発生した過剰な生成水(HO)がカソード電極層CEから連続的に効率よく排出される。これにより、カソード電極層CEの近傍に生成水(HO)が溜まり難くなり、その結果、生成水(HO)が凝縮(液化)することによってカソード電極層CEの表面を覆うフラッディング現象が生じることを抑制することができる。従って、酸化剤供給流路21を介して供給される空気(O)がカソード電極層CEに接触する接触面積が低下することが防止される。これにより、例えば、燃料電池1の発電が継続した場合であっても、カソード電極層CEにおける電極反応効率が低下することがなく、その結果、燃料電池1の発電効率が低下することを防止することができる。
【0060】
以上の説明からも理解できるように、本例の燃料電池1によれば、電極構造体であるMEA40における電極反応によってカソード電極層CE(カソード電極)にて発生した生成水(HO)は、排出部20c、排出路28及び通路29を有する排出機構Fによって、カソード電極層CEの近傍から離間するように移動して空気と共に燃料電池1の外部に排出される。これにより、燃料電池1が発電を継続する状況であっても、電極反応によって発生した過剰な(多量の)生成水(HO)を連続的に外部に排出することができ、過剰な(多量の)生成水(HO)によって引き起こされるフラッディング現象による燃料電池1の発電効率の低下を抑制することができる。
【0061】
(4.第一別例)
上述した本例においては、カソード電極層CEにて発生した生成水を排出機構Fの排出路28を流れる空気と共に燃料電池スタックS(単セルU)の外部に排出するようにした。ところで、燃料電池1においては、発電が継続する場合、例えば、アノード電極層AEの貴金属触媒や拡散層であるカーボンクロスCCの汚染等が生じ、発電効率が低下する場合がある。このため、燃料電池1においては、アノード電極層AE側を一定期間ごとに洗浄するリフレッシュ動作が行われる。このリフレッシュ動作は、例えば、液体燃料であるギ酸に代えて洗浄水をアノード電極層AE側で循環させる動作である。洗浄水を循環させることにより、アノード電極層AE側を洗浄し、再び、発電効率を向上させることができる。
【0062】
そこで、第一別例においては、カソード電極層CEにて発生した生成水を洗浄水として利用できるようにする。具体的に、第一別例においては、図10に示すように、排出機構Fから排出される生成水(気体状態又は液体状態)を、例えば、チューブ(図示省略)を介して、リザーバタンクRに回収して貯水する。尚、気体状態で排出された生成水は、リザーバタンクRに回収されるまでに冷却されることにより、リザーバタンクRに液体状態の生成水として回収されて貯水される。
【0063】
そして、リザーバタンクRに貯水された生成水は、例えば、リフレッシュ動作のために別途用意される洗浄水に加えられてアノード電極層AE側を循環し、アノード電極層AEを洗浄する。これにより、生成水をリフレッシュ動作に有効に利用することができると共に、リフレッシュ動作により低下した燃料電池1の発電効率を通常の発電効率に戻すことができる。
【0064】
(5.その他の別例)
上述した本例及び第一別例においては、カソード側セパレータ20の裏面20bに複数の直線形状の複数の溝28aを有する排出路28を形成するようにした。これに代えて、複数の溝28aを形成することなく、裏面20bの中央部分にて、一端側(上流側)が酸化剤供給口22に接続され、他端側(下流側)が排出部20cに接続されるように形成された幅広の凹部を排出路28とすることも可能である。この場合、通路29は、例えば、穴あけ加工等により形成され、酸化剤供給流路21と上述したように形成された排出路28とを、カソード側セパレータ20の板厚方向にて連通可能に接続する。この場合においても、上述した本例及び第一別例と同様の効果が得られる。
【0065】
又、上述した本例及び第一別例においては、通路29の軸線に直交する断面形状を四角形状とした。しかし、通路29の断面形状については、四角形状に限られるものではなく、例えば、円形状や四角形状以外の多角形状であっても良いことは言うまでもない。通路29の断面形状が四角形状以外の形状であっても、通路29が酸化剤供給流路21と排出路28とを連通可能に接続することにより、上述した本例及び第一別例と同様の効果が得られる。
【0066】
又、上述した本例及び第一別例においては、排出路28及び通路29の形成位置を酸化剤供給流路21の形成位置に合わせてカソード側セパレータ20の中央部分にした。しかし、排出路28及び通路29の形成位置及び排出路28の大きさについては、酸化剤供給流路21の形成位置及び大きさに合わせてカソード側セパレータ20の中央部分に形成することに限られるものではない。例えば、酸化剤供給口22、酸化剤排出口23及び貫通孔24,25の形成に影響を与えない範囲であれば、排出路28及び通路29をカソード側セパレータ20の周縁部分に設けることも可能である。
【0067】
又、上述した本例及び第一別例においては、鉛直方向に配置した複数の単セルUを水平方向に積層することにより、燃料電池スタックSを形成するようにした。しかし、カソード電極層CEにて発生した生成水(HO)が通路29、排出路28及び排出部20cを通過することにより、生成水を外部に排出可能であれば、これに限られない。即ち、この場合には、上述した本例のように燃料電池スタックSを横置きとすることに代えて、水平方向に配置した複数の単セルUを鉛直方向に積層して燃料電池スタックを形成する、即ち、燃料電池スタックSを縦置きとすることが可能である。
【0068】
更に、上述した本例及び第一別例においては、カソード電極層CEに供給する酸化剤である空気を酸化剤供給口22にて分岐させ、分岐した空気即ち加圧流体が排出路28を流れるようにした。しかしながら、排出路28に対して、空気を分岐させずに、即ち、別途供給した流体である空気を加圧流体として流すことも可能である。この場合においても、上述した本例及び第一別例と同様の効果が得られる。尚、流体を別途供給する場合、流体である空気を、例えば、排出部20c側から吸引し、吸引された空気を排出路28に流すことも可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…直接ギ酸型燃料電池(燃料電池)、10…アノード側セパレータ、11…燃料供給流路、12…燃料供給口、13…燃料排出口、14,15…貫通孔、16…挿通孔、17…電極部、20…カソード側セパレータ、20a…対向面、20b…裏面、20c…排出部、21…酸化剤供給流路、22…酸化剤供給口、23…酸化剤排出口、24,25…貫通孔、26…挿通孔、27…電極部、28…排出路、28a…溝、29…通路、30…シール部材、31…収容部、32~35…貫通孔、36…挿通孔、40…MEA(電極構造体)、41…貫通孔、41~44…貫通孔、45…挿通孔、AE…アノード電極層、CE…カソード電極層、EF…電解質膜、CC…カーボンクロス、S…燃料電池スタック、U…単セル、H…ホルダ、B…ボルト、P1…燃料ポンプ、P2…ブロア、T1…供給タンク、T2…回収タンク、R…リザーバタンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10