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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043646
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】治具及び位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/04 20060101AFI20220309BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20220309BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
F16C29/04
F16C35/06 Z
B23Q1/01 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149026
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】矢河 一馬
(72)【発明者】
【氏名】崔 ▲イン▼
【テーマコード(参考)】
3C048
3J104
3J117
【Fターム(参考)】
3C048BB03
3J104AA12
3J104AA25
3J104AA34
3J104AA67
3J104AA69
3J104AA74
3J104DA18
3J104EA04
3J104EA09
3J117AA01
3J117BA10
3J117CA06
3J117DB01
3J117HA02
(57)【要約】
【課題】2本のリニアガイドを容易かつ精度よく位置決めする。
【解決手段】リニアガイド体Gの第1側Y1の第1リニアガイドG1から第2リニアガイドG2に亘って配置された第1側押圧部材12と、第2側Y2の第1リニアガイドG1から第2リニアガイドG2に亘って配置された第2側押圧部材22とを備え、リニアガイド体Gを挟持する挟持部50を有し、第1側押圧部材12は、第1ガイド面S1を押圧する第1直線押圧部12pと、第1直線押圧部12pの延長線上に一致し、第2ガイド面S2を押圧する第2直線押圧部12qとを有し、第2側押圧部材22は、第3所定部T3(S3)を押圧する第3直線押圧部22pと、第3直線押圧部22pの延長線上に一致し、第4所定部T4(S4)を押圧する第4直線押圧部22qとを有し、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、長手方向X及び幅方向Yを含む面に直交する軸P1、P2まわりに回転可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガイド面を有する第1リニアガイドと、第2ガイド面を有する第2リニアガイドとを長手方向に並べたリニアガイド体を形成する際に、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面とが前記リニアガイド体の幅方向に揃うように位置決めする治具であって、
前記リニアガイド体の前記幅方向における両側の一方を第1側、他方を第2側として、前記第1側の前記第1リニアガイドから前記第2リニアガイドに亘って配置された第1側押圧部材と、前記第2側の前記第1リニアガイドから前記第2リニアガイドに亘って配置された第2側押圧部材とを備え、前記幅方向に相対的に接近することにより前記リニアガイド体を挟持する挟持部を有し、
前記第1側押圧部材は、前記第1ガイド面又は前記第1ガイド面とは前記幅方向において第1距離離れた第1所定部を押圧する第1直線押圧部と、前記第1直線押圧部の延長線上に一致し、前記第1直線押圧部が前記第1ガイド面を押圧する際には前記第2ガイド面を押圧し、前記第1直線押圧部が前記第1所定部を押圧する際には前記第2ガイド面とは前記幅方向において前記第1距離離れた第2所定部を押圧する第2直線押圧部とを有し、
前記第2側押圧部材は、前記第1ガイド面とは前記幅方向において第2距離離れた第3所定部を押圧する第3直線押圧部と、前記第3直線押圧部の延長線上に一致し、前記第2ガイド面とは幅方向において前記第2距離離れた第4所定部を押圧する第4直線押圧部とを有し、
前記第1側押圧部材及び前記第2側押圧部材は、それぞれ前記長手方向及び前記幅方向を含む面に直交する軸まわりに回転可能である、治具。
【請求項2】
前記第1直線押圧部は、前記第1ガイド面を押圧し、
前記第2直線押圧部は、前記第2ガイド面を押圧し、
前記第3直線押圧部は、前記第3所定部として、前記第1リニアガイドが有する第3ガイド面を押圧し、
前記第4直線押圧部は、前記第4所定部として、前記第2リニアガイドが有する第4ガイド面を押圧する、請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記第1ガイド面、前記第2ガイド面、前記第3ガイド面、及び前記第4ガイド面のそれぞれは、前記リニアガイド体の厚み方向に離間して設けられた2つのテーパ面であり、
前記第1側押圧部材及び前記第2側押圧部材のそれぞれは、前記長手方向に直交する断面が円形であり、
前記第1直線押圧部、前記第2直線押圧部、前記第3直線押圧部、及び前記第4直線押圧部のそれぞれは、前記2つのテーパ面にあたって押圧する、請求項2に記載の治具。
【請求項4】
前記挟持部は、対向して配置された2枚の板材と、前記2枚の板材に挿通される第1ボルト及び第2ボルトと、を有し、
前記第1側押圧部材及び前記第2側押圧部材は、前記2枚の板材において対向するように設けられており、
前記第1ボルトは、前記第2ボルトよりも前記第1側押圧部材及び前記第2側押圧部材から離れて配置され、かつ、前記2枚の板材の間隔を保持しており、
前記第2ボルトを締めることにより前記第1側押圧部材と前記第2側押圧部材とが前記幅方向に相対的に接近する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の治具。
【請求項5】
前記第2ボルトは、前記2枚の板材を開く方向に弾性力を付与する弾性部材を備える、請求項4に記載の治具。
【請求項6】
前記2枚の板材は、前記第1ボルト及び前記第2ボルトを挿通させる挿通孔を有し、
前記挿通孔は、前記第1ボルト及び前記第2ボルトに対して前記2枚の板材を揺動可能とするように、前記第1ボルト及び前記第2ボルトの外径よりも大きな内径を有する、請求項4又は請求項5に記載の治具。
【請求項7】
前記第1側押圧部材及び前記第2側押圧部材は、前記リニアガイド体より硬度が小さい材質で形成される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の治具。
【請求項8】
第1ガイド面を有する第1リニアガイドと、第2ガイド面を有する第2リニアガイドとを長手方向に並べたリニアガイド体を形成する際に、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面とが前記リニアガイド体の幅方向に揃うように位置決めする方法であって、
前記リニアガイド体の前記幅方向における両側の一方を第1側、他方を第2側として、前記第1側の前記第1リニアガイドから前記第2リニアガイドに亘って配置された第1側押圧部材と、前記第2側の前記第1リニアガイドから前記第2リニアガイドに亘って配置された第2側押圧部材とを有し、前記第1側押圧部材及び前記第2側押圧部材のそれぞれが前記長手方向及び前記幅方向を含む面に直交する軸まわりに回転可能な治具を用いて、前記第1側押圧部材と前記第2側押圧部材とで前記リニアガイド体を挟持することにより、
前記第1側押圧部材の第1直線押圧部は、前記第1ガイド面又は前記第1ガイド面とは前記幅方向において第1距離離れた第1所定部を押圧し、
前記第1側押圧部材の、前記第1直線押圧部の延長線上に一致する第2直線押圧部は、前記第1直線押圧部が前記第1ガイド面を押圧する際には前記第2ガイド面を押圧し、前記第1直線押圧部が前記第1所定部を押圧する際には前記第2ガイド面とは前記幅方向において前記第1距離離れた第2所定部を押圧し、
前記第2側押圧部材の第3直線押圧部は、前記第1ガイド面とは前記幅方向において第2距離離れた第3所定部を押圧し、
前記第2側押圧部材の、前記第3直線押圧部の延長線上に一致する第4直線押圧部は、前記第2ガイド面とは幅方向において前記第2距離離れた第4所定部を押圧する、位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具及び位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアガイドにより被ガイド部材を案内する構成において、複数のリニアガイドが長手方向に直線状に並べて用いられる場合がある。例えば、物品を保管するストッカ内において、物品を受け渡すクレーンでは、昇降台を昇降させるためのガイドとしてリニアガイドが用いられている。このリニアガイドは、長手方向に分割された状態で製造され、クレーンにおけるマストの組み立て時に連結される。複数のリニアガイドを段差なく連結するには、連結対象である複数のリニアガイドを精度よく位置決めする必要がある。複数のリニアガイドを位置決めする方法としては、例えば、複数のリニアガイドを治具で挟み込む構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この治具は、複数のリニアガイドを基準面に沿わせた状態で、基準面の反対側からボルト等により複数個所でリニアガイドを基準面に押し付け、複数のリニアガイドを位置決めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3331755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の治具は、複数個所のボルト等によりリニアガイドを基準面に押し付けるので、ボルト等の締め具合などによって複数のリニアガイドの位置決め精度にばらつきが生じる場合がある。このような位置決め作業は作業者の熟練度に依存し、さらに熟練度の高い作業者にとっても時間がかかるため作業者の負担が大きくなる。例えば、ストッカのクレーンにおけるマストの連結は、ストッカが設置される現場での作業となり、複数のリニアガイドの位置決めも現場での作業となる。このような現場でのマストの連結作業(リニアガイドの位置決め作業)を熟練度の高い作業者に限定するのではクレーンの組み立てにおける作業効率が悪く、さらに、熟練度の高い作業者の負担増加にもなるため好ましくない。また、リニアガイドの位置決め精度が低く、複数のリニアガイドの間に段差が生じたままでは、被ガイド部材(例えば、クレーンの昇降台に備えるスライダ)の円滑な動作を阻害する要因となる。
【0005】
本発明は、2本のリニアガイドを容易かつ精度よく位置決めすることが可能な治具及び位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る治具は、第1ガイド面を有する第1リニアガイドと、第2ガイド面を有する第2リニアガイドとを長手方向に並べたリニアガイド体を形成する際に、第1ガイド面と第2ガイド面とがリニアガイド体の幅方向に揃うように位置決めする治具であって、リニアガイド体の幅方向における両側の一方を第1側、他方を第2側として、第1側の第1リニアガイドから第2リニアガイドに亘って配置された第1側押圧部材と、第2側の第1リニアガイドから第2リニアガイドに亘って配置された第2側押圧部材とを備え、幅方向に相対的に接近することによりリニアガイド体を挟持する挟持部を有し、第1側押圧部材は、第1ガイド面又は第1ガイド面とは幅方向において第1距離離れた第1所定部を押圧する第1直線押圧部と、第1直線押圧部の延長線上に一致し、第1直線押圧部が第1ガイド面を押圧する際には第2ガイド面を押圧し、第1直線押圧部が第1所定部を押圧する際には第2ガイド面とは幅方向において第1距離離れた第2所定部を押圧する第2直線押圧部とを有し、第2側押圧部材は、第1ガイド面とは幅方向において第2距離離れた第3所定部を押圧する第3直線押圧部と、第3直線押圧部の延長線上に一致し、第2ガイド面とは幅方向において第2距離離れた第4所定部を押圧する第4直線押圧部とを有し、第1側押圧部材及び第2側押圧部材は、それぞれ長手方向及び幅方向を含む面に直交する軸まわりに回転可能である。
【0007】
本発明の態様に係る位置決め方法は、第1ガイド面を有する第1リニアガイドと、第2ガイド面を有する第2リニアガイドとを長手方向に並べたリニアガイド体を形成する際に、第1ガイド面と第2ガイド面とがリニアガイド体の幅方向に揃うように位置決めする方法であって、リニアガイド体の幅方向における両側の一方を第1側、他方を第2側として、第1側の第1リニアガイドから第2リニアガイドに亘って配置された第1側押圧部材と、第2側の第1リニアガイドから第2リニアガイドに亘って配置された第2側押圧部材とを有し、第1側押圧部材及び第2側押圧部材のそれぞれが長手方向及び幅方向を含む面に直交する軸まわりに回転可能な治具を用いて、第1側押圧部材と第2側押圧部材とでリニアガイド体を挟持することにより、第1側押圧部材の第1直線押圧部は、第1ガイド面又は第1ガイド面とは幅方向において第1距離離れた第1所定部を押圧し、第1側押圧部材の、第1直線押圧部の延長線上に一致する第2直線押圧部は、第1直線押圧部が第1ガイド面を押圧する際には第2ガイド面を押圧し、第1直線押圧部が第1所定部を押圧する際には第2ガイド面とは幅方向において第1距離離れた第2所定部を押圧し、第2側押圧部材の第3直線押圧部は、第1ガイド面とは幅方向において第2距離離れた第3所定部を押圧し、第2側押圧部材の、第3直線押圧部の延長線上に一致する第4直線押圧部は、第2ガイド面とは幅方向において第2距離離れた第4所定部を押圧する。
【発明の効果】
【0008】
上記態様に係る治具及び位置決め方法によれば、直線部分を持つ第1直線押圧部と第2直線押圧部とは延長線上に一致しており、直線部分を持つ第3直線押圧部と第4直線押圧部とは延長線上に一致している。従って、第1側押圧部材及び第2側押圧部材でリニアガイド体を挟持すると、第1直線押圧部と第3直線押圧部とで挟まれた第1リニアガイドと、第2直線押圧部と第4直線押圧部とで挟まれた第2リニアガイドとは、長手方向に直線状に並んだ状態となる。すなわち、上記態様に係る治具及び位置決め方法によれば、リニアガイド体を治具の挟持部で挟持するといった簡単な作業により正確かつ短時間で2本のリニアガイドを位置決めすることができる。例えば、2本のリニアガイドの位置決め作業を現場等で行う場合、上記のように容易に位置決めできるので、作業者の熟練度が不要となり、作業時間の短縮、及び作業者の負担軽減を実現できる。
【0009】
また、第1直線押圧部は、第1ガイド面を押圧し、第2直線押圧部は、第2ガイド面を押圧し、第3直線押圧部は、第3所定部として、第1リニアガイドが有する第3ガイド面を押圧し、第4直線押圧部は、第4所定部として、第2リニアガイドが有する第4ガイド面を押圧してもよい。この構成によれば、第1直線押圧部、第2直線押圧部、第3直線押圧部及び第4直線押圧部が各ガイド面に接触するので、第1リニアガイドと第2リニアガイドとの連結時に、ガイド面同士の間に段差が生じるのを確実に回避できる。また、第1ガイド面、第2ガイド面、第3ガイド面、及び第4ガイド面のそれぞれは、リニアガイド体の厚み方向に離間して設けられた2つのテーパ面であり、第1側押圧部材及び第2側押圧部材のそれぞれは、長手方向に直交する断面が円形であり、第1直線押圧部、第2直線押圧部、第3直線押圧部、及び第4直線押圧部のそれぞれは、2つのテーパ面にあたって押圧してもよい。この構成によれば、第1直線押圧部、第2直線押圧部、第3直線押圧部、及び第4直線押圧部のそれぞれが、第1ガイド面、第2ガイド面、第3ガイド面、及び第4ガイド面の2つのテーパ面を押圧するので、幅方向に加えて厚み方向においてもガイド面同士を段差なく接続できる。
【0010】
また、挟持部は、対向して配置された2枚の板材と、2枚の板材に挿通される第1ボルト及び第2ボルトと、を有し、第1側押圧部材及び第2側押圧部材は、2枚の板材において対向するように設けられており、第1ボルトは、第2ボルトよりも第1側押圧部材及び第2側押圧部材から離れて配置され、かつ、2枚の板材の間隔を保持しており、第2ボルトを締めることにより第1側押圧部材と第2側押圧部材とが幅方向に相対的に接近してもよい。この構成によれば、第1ボルトを支点、第2ボルトを力点として、作用点である第1側押圧部材及び第2側押圧部材によるリニアガイド体への押圧力を容易に調整できる。また、第2ボルトは、2枚の板材を開く方向に弾性力を付与する弾性部材を備えてもよい。この構成によれば、第2ボルトを緩めることで、第1側押圧部材と第2側押圧部材との間を容易に広げることができる。また、2枚の板材は、第1ボルト及び第2ボルトを挿通させる挿通孔を有し、挿通孔は、第1ボルト及び第2ボルトに対して2枚の板材を揺動可能とするように、第1ボルト及び第2ボルトの外径よりも大きな内径を有してもよい。この構成によれば、第1リニアガイドと第2リニアガイドとが幅方向にずれていても、このずれに倣うように第1側押圧部材及び第2側押圧部材を配置させることができ、第1側押圧部材と第2側押圧部材とでリニアガイド体を挟持することにより、2本のリニアガイドのずれを容易に解消できる。また、第1側押圧部材及び第2側押圧部材は、リニアガイド体より硬度が小さい材質で形成されてもよい。この構成によれば、リニアガイド体を挟持した際に、リニアガイド体に傷がつくことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る治具の一例を示し、(A)はX方向から見た図、(B)はZ方向から見た図である。
図2】本実施形態に係る治具の一例をY方向から見た図である。
図3】第1側押圧部材と第2側押圧部材とを拡げた状態を示す図である。
図4】(A)はリニアガイド体と被ガイド部材との位置関係の一例を模式的に示す図、(B)は第1側押圧部材及び第2側押圧部材と、ガイド面との接触状態の一例を模式的に示す図である。
図5】リニアガイド体を治具で挟持する動作の一例を模式的に示し、(A)は、治具で挟持する前の状態を示す図、(B)は治具で挟持した状態を示す図である。
図6】リニアガイドを有する構造体の連結工程を模式的に示し、第1リニアガイドと第2リニアガイドとを仮設置した状態を示す図である。
図7】リニアガイド体を治具で挟持した状態を示す図である。
図8】構造体にジョイントプレートを取り付ける前の状態を示し、(A)はジョイントプレートの図、(B)は拡大図である。
図9】構造体におけるジョイントプレートの取り付け位置の一例を示す図である。
図10】構造体にジョイントプレートを取り付け、第1リニアガイドを固定した状態を示す図である。
図11】第1側押圧部材及び第2側押圧部材の他の例を示す図である。
図12】第1側押圧部材及び第2側押圧部材の他の例を示し、(A)はX方向から見た図、(B)はZ方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品とは大きさ、形状等が異なっている場合がある。以下の各図において、XYZ直交座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ直交座標系においては、リニアガイド体Gが延びる長手方向に平行な方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向であってリニアガイド体Gの幅方向をY方向と表記する。また、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と表記する。
【0013】
図1から図3は、本実施形態に係る治具100の一例を示す図である。図1(A)は、治具100をX方向から見た図である。図1(B)は、治具100をZ方向から見た図である。図2は、治具100をY方向から見た図である。図1及び図2では、それぞれ治具100によりリニアガイド体G(第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2)を挟んだ状態を示している。図3は、図1(A)と同様、治具100をX方向から見た図であり、後述する第1側押圧部材と第2側押圧部材とを拡げた状態を示している。
【0014】
図1から図3に示すように、治具100は、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とを長手方向に並べたリニアガイド体Gを形成する際に、第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2を位置決めする。リニアガイド体Gは、例えば物品を保管するストッカ内において、物品を受け渡すためのクレーンの昇降台を昇降させるリニアガイドとして用いられる。リニアガイド体Gは、例えば、長手方向に複数分割された状態で製造され、クレーンにおけるマストの組み立て時において接続(連結)される。
【0015】
第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2は、一方向に直線状に延びた形状を有する。第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2が直線状に延びる長手方向をX方向とする。以下、この長手方向を長手方向Xと表記する。第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2は、長手方向Xと直交する幅方向であるY方向の寸法が等しい。以下、この幅方向を幅方向Yと表記する。第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2は、長手方向X及び幅方向Yとそれぞれ直交する厚み方向であるZ方向の寸法が等しい。以下、この厚み方向を厚み方向Zと表記する。また、リニアガイド体Gの幅方向Yにおける両側の一方を第1側Y1とし、他方を第2側Y2として説明する。
【0016】
第1リニアガイドG1は、第1ガイド面S1及び第3ガイド面S3を有する。第1ガイド面S1は、第1リニアガイドG1の第1側Y1の側面に設けられる。第3ガイド面S3は、第1リニアガイドG1の第2側Y2の側面に設けられる。第1ガイド面S1及び第3ガイド面S3は、リニアガイド体Gの厚み方向Zに離間している。第3ガイド面S3は、幅方向Yにおいて第2距離D2a離れて設けられている。第3ガイド面S3は、第3所定部の1つである。第1ガイド面S1及び第3ガイド面S3は、それぞれ厚み方向Zに離間する2つのテーパ面として構成されている。2つのテーパ面は、それぞれ第1リニアガイドG1の厚み方向Zの中央部から外側に向けてV状に傾斜して設けられる。
【0017】
第2リニアガイドG2は、第2ガイド面S2及び第4ガイド面S4を有する。第2ガイド面S2は、第2リニアガイドG2の第1側Y1の側面に設けられる。第4ガイド面S4は、第2リニアガイドG2の第2側Y2の側面に設けられる。第4ガイド面S4は、幅方向Yにおいて第2距離D2a離れて設けられている。第4ガイド面S4は、第4所定部の1つである。第2ガイド面S2及び第4ガイド面S4は、それぞれ厚み方向Zに離間する2つのテーパ面として構成されている。2つのテーパ面は、それぞれ第2リニアガイドG2の厚み方向Zの中央部から外側に向けてV状に傾斜して設けられる。また、2つのテーパ面は、それぞれ凹凸がなく、曲面のない平面状に形成されている。
【0018】
第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とが、幅方向Y及び厚み方向Zにずれなく長手方向Xに接続された場合、第1ガイド面S1と第2ガイド面S2とが段差なく接続された状態となり、かつ、第3ガイド面S3と第4ガイド面S4とが段差なく接続された状態となる。
【0019】
第1リニアガイドG1は、第1所定部T1及び第3所定部T3を有する。第1所定部T1は、第1側Y1において第1ガイド面S1から外れて側方に突き出た部分である。第1所定部T1は、第1ガイド面S1から幅方向Yにおいて第1距離D1離れた位置に設けられている。第3所定部T3は、第3ガイド面S3から外れて側方に突き出た部分である。第3所定部T3は、第1ガイド面S1から幅方向Yにおいて第2距離D2b離れた位置に設けられている。第1所定部T1は、図2に示すように、厚み方向Zにおいて第1ガイド面S1を挟んだ両側に設けられている。第3所定部T3は、第1所定部T1と同様に、厚み方向Zにおいて第3ガイド面S3を挟んだ両側に設けられている。
【0020】
第2リニアガイドG2は、第2所定部T2及び第4所定部T4を有する。第2所定部T2は、第1側Y1において第2ガイド面S2から外れて側方に突き出た部分である。第2所定部T2は、第2ガイド面S2から幅方向Yにおいて第1距離D1離れた位置に設けられている。第4所定部T4は、第4ガイド面S4から外れて側方に突き出た部分である。第4所定部T4は、第2ガイド面S2から幅方向Yにおいて第2距離D2b離れた位置に設けられている。第2所定部T2は、図2に示すように、厚み方向Zにおいて第2ガイド面S2を挟んだ両側に設けられている。第4所定部T4は、第2所定部T2と同様に、厚み方向Zにおいて第4ガイド面S4を挟んだ両側に設けられている。
【0021】
上記したように、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とは、それぞれ幅方向Y及び厚み方向Zの寸法が同一である。また、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とは、長手方向Xと直交する断面形状が同一である。なお、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とは、長手方向Xの寸法が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2は、それぞれの長手方向(X方向)の端部同士を繋げた状態で配置される。この状態では、第1リニアガイドG1の第1ガイド面S1と、第2リニアガイドG2の第2ガイド面S2とが長手方向Xに繋げられた状態となる。また、同様に、第1リニアガイドG1の第3ガイド面S3と、第2リニアガイドG2の第4ガイド面S4とが長手方向Xに繋げられた状態となる。治具100は、第1ガイド面S1と第2ガイド面S2とが幅方向Y(及び厚み方向Z)に揃うように第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とを位置決めする。
【0023】
治具100は、リニアガイド体Gを挟持する挟持部50を有する。挟持部50は、第1板材(板材)10と、第2板材(板材)20と、第1ボルト30と、第2ボルト40とを有する。第1板材10及び第2板材20は、対向配置されている。第1板材10及び第2板材20は、それぞれ厚み方向Zに延びた矩形状である。第1板材10及び第2板材20は、互いに同一寸法となるように形成されている。第1板材10及び第2板材20は、幅方向Yに対向する対向面11、21を有する。第1板材10の対向面11において、厚み方向Zの一方の端部側には、第1側押圧部材12が設けられる。第2板材20の対向面21において、厚み方向Zの一方の端部側には、第2側押圧部材22が設けられる。
【0024】
第1板材10と第1側押圧部材12との間、及び第2板材20と第2側押圧部材22との間は、溶接等により固着されていてもよいし、ボルト等により取り外し可能に取り付けられてもよい。第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22を取り外し可能とすることにより、位置決めするリニアガイド体Gの形状(第1ガイド面S1等の形状)に合わせて第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22を適宜交換することができる。
【0025】
第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、それぞれ円柱状又は円筒状であり、中心軸の方向が長手方向Xに沿うように、第1板材10及び第2板材20にそれぞれ取り付けられている。第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、それぞれ剛体であって、例えば金属又は樹脂等により形成される。
【0026】
第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とが繋げられた部分において、それぞれ第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2との間に跨って配置される。第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、それぞれ長手方向X及び幅方向Yを含む面(XY平面)に直交する軸、つまり、厚み方向Zに沿った軸P1、P2の軸まわりにそれぞれ回転可能である。なお、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22が軸P1、P2の軸まわりに回転可能とする構成については後述する。
【0027】
第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、曲面である円筒面12a、22aを有する。円筒面12aは、第1リニアガイドG1の第1ガイド面S1、及び第2リニアガイドG2の第2ガイド面S2にそれぞれ接触可能な径となるように形成される。円筒面22aは、第1リニアガイドG1の第3ガイド面S3、及び第2リニアガイドG2の第4ガイド面S4にそれぞれ接触可能な径となるように形成される。円筒面12a、22aは、第1ガイド面S1、第2ガイド面S2、第3ガイド面S3、及び第4ガイド面S4を、それぞれ複数個所で押圧する。
【0028】
円筒面12aは、第1ガイド面S1を押圧する第1直線押圧部12pと、第2ガイド面S2を押圧する第2直線押圧部12qとを有する。第2直線押圧部12qは、第1直線押圧部12pの延長線上に一致する。第1直線押圧部12p及び第2直線押圧部12qは、長手方向Xに沿う直線状である。また、円筒面22aは、第3ガイド面S3を押圧する第3直線押圧部22pと、第4ガイド面S4を押圧する第4直線押圧部22qとを有する。第4直線押圧部22qは、第3直線押圧部22pの延長線上に一致する。第3直線押圧部22p及び第4直線押圧部22qは、長手方向Xに沿う直線状である。
【0029】
第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2よりも硬度が小さい材質(例えば金属、樹脂など)で形成されている。このため、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22で第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2(第1ガイド面S1、第2ガイド面S2、第3ガイド面S3、及び第4ガイド面S4)を挟持(押圧)した際に、第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2に傷がつくことが抑制される。
【0030】
第1ボルト30は、第1板材10の挿通孔13と、第2板材20の挿通孔23とを挿通して配置される。第1板材10と第2板材20との間には筒状のスペーサ32が配置されており、第1ボルト30は、スペーサ32を貫通して配置されている。スペーサ32は、第1板材10と第2板材20との間隔を狭くする際の支点を形成する。挿通孔13は、第1板材10において、第1側押圧部材12とは反対側の端部に形成される。挿通孔23は、第2板材20において、第2側押圧部材22とは反対側の端部に形成される。従って、第1ボルト30は、第1板材10及び第2板材20において第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22とは反対側の端部に挿通される。第1ボルト30の端部には、ストッパ31が取り付けられる。第1ボルト30は、ストッパ31により、第1板材10及び第2板材20から外れることが防止される。
【0031】
第2ボルト40は、第1板材10の挿通孔14と、第2板材20の挿通孔24とを挿通して配置される。挿通孔14は、第1板材10において、第1側押圧部材12と挿通孔13との間に配置される。挿通孔24は、第2板材20において、第2側押圧部材22と挿通孔23との間に配置される。従って、第2ボルト40は、第1板材10及び第2板材20において、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22と、第1ボルト30との間の位置に挿通される。第1板材10と第2板材20との間には筒状のスペーサ42が配置されており、第2ボルト40は、スペーサ42を貫通して配置されている。スペーサ42は、第1板材10と第2板材20との間隔を狭くする際の最小間隔を規定する。
【0032】
第2ボルト40は、締めることにより第1ボルト30を支点として第1板材10と第2板材20との間隔を狭くすることができる。第2ボルト40には、弾性部材41が設けられる。弾性部材41は、第1板材10と第2板材20との間においてスペーサ42の外側に配置され、第2ボルト40に挿通される。弾性部材41は、第1板材10と第2板材20との間を開く方向に弾性力を付与している。従って、第2ボルト40を緩めることで、図3に示すように、弾性部材41の弾性力により第1板材10と第2板材20との間を拡げることができる。
【0033】
第1ボルト30は、第2ボルト40よりも第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22から離れて配置され、かつ、スペーサ32で第1板材10と第2板材20との間隔を保持している。このため、第2ボルト40において第1板材10と第2板材20との間隔を変えることで、第1側押圧部材12と第2側押圧部材22との間隔を変更可能である。すなわち、第1ボルト30が支点、第2ボルト40が力点であり、第2ボルト40を締めることで、作用点である第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22によるリニアガイド体Gへの押圧力を容易に調整できる。
【0034】
また、第1板材10及び第2板材20は、例えば、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22より硬度が高い材質で設けられてもよい。この構成により、第2ボルト40を締めることによって第1板材10及び第2板材20が変形することを抑制し、第2ボルト40を締めた作用を第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22に効率よく伝達することができる。
【0035】
挿通孔13、14、23、24は、図2に示すように、第1ボルト30及び第2ボルト40の外径よりも大きな内径を有する。すなわち、挿通孔13、14、23、24は、第1ボルト30及び第2ボルト40の外径よりも長手方向Xに大きく形成されている。この構成により、第1ボルト30及び第2ボルト40に対して2枚の第1板材10及び第2板材20が揺動可能となっている。その結果、第1板材10に固定されている第1側押圧部材12は、第1板材10の揺動により軸P1の軸まわりに回転する。また、第2板材20に固定されている第2側押圧部材22は、第2板材20の揺動により軸P2の軸まわりに回転する。
【0036】
また、図2に示すように、挿通孔13、23よりも、挿通孔14、24の方が、厚み方向Zの寸法が大きくなっている。この構成により、図3に示すように、第1側押圧部材12と第2側押圧部材22との間を拡げた際に、第2ボルト40が挿通孔14、24と干渉することを防止できる。
【0037】
図4(A)は、リニアガイド体Gと被ガイド部材SLとの位置関係の一例を模式的に示す図である。被ガイド部材SLは、リニアガイド体Gにガイドされるスライダであり、例えば、クレーンのマストに沿って昇降する昇降台に備えられる。図4(A)に示すように、被ガイド部材SLは、第1ガイド面S1(第2ガイド面S2を含む)及び第3ガイド面S3(第4ガイド面S4を含む)に接触するローラRを有する。ローラRは、2つのテーパ面で構成される第1ガイド面S1等にそれぞれ接触するように配置される。ローラRは、それぞれ転動可能に設けられている。被ガイド部材SLが第1ガイド面S1及び第3ガイド面S3に沿って長手方向Xに移動する際、ローラRが転動することにより滑らかに移動することができる。このように、第1ガイド面S1及び第3ガイド面S3は、被ガイド部材SLをX方向に滑らかに案内するため、凹凸がなく、さらに曲面のない高精度な平面状に形成されている。
【0038】
図4(B)は、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22と第1ガイド面S1及び第3ガイド面S3との接触状態の一例を模式的に示す図である。図4(B)に示すように、第1側押圧部材12は、第1直線押圧部12pにより長手方向Xに沿った直線状に第1ガイド面S1と接触する。なお、図4(B)では示していないが、第1側押圧部材12は、第2直線押圧部12qにより長手方向Xに沿った直線状に第2ガイド面S2と接触する。第2側押圧部材22は、第3直線押圧部22pにより長手方向Xに沿った直線状に第3ガイド面S3と接触する。なお、図4(B)では示していないが、第2側押圧部材22は、第4直線押圧部22qにより長手方向Xに沿った直線状に第4ガイド面S4と接触する。
【0039】
このように、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は、被ガイド部材SLを案内するために高精度で形成された第1ガイド面S1、第2ガイド面S2に接触してリニアガイド体Gを挟持する。このとき、第1直線押圧部12p等が第1ガイド面S1等に直線状に接触するので、第1ガイド面S1等に対する接触面積を小さくして、第1ガイド面S1等に対するダメージを小さくしている。
【0040】
図5は、リニアガイド体Gを治具100で挟持する動作の一例を模式的に示している。図5(A)は、治具100で挟持する前の状態を示す図、図5(B)は治具100で挟持した状態を示す図である。なお、図5では、第1ガイド面S1等の記載を省略している。上記したように第1板材10及び第2板材20は揺動することにより、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22は回転可能である。このため、図5(A)に示すように、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とが幅方向Yにズレていても、このズレに倣うように第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22をそれぞれリニアガイド体Gの第1側Y1及び第2側Y2に配置させることができる。
【0041】
この状態で第2ボルト40を締めると、第1板材10と第2板材20との間隔が狭くなることに伴って、第1側押圧部材12と第2側押圧部材22との間隔が狭くなる。図5(B)に示すように、第1直線押圧部12pと第3直線押圧部22pとで第1リニアガイドG1を挟み、第2直線押圧部12qと第4直線押圧部22qとで第2リニアガイドG2を挟んだ状態では、第1直線押圧部12pの延長線上に第2直線押圧部12qが一致し、かつ第3直線押圧部22pの延長線上に第4直線押圧部22qが一致しているので、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とが、幅方向Yに揃えられた状態となる。その結果、第1ガイド面S1と第2ガイド面S2とは、幅方向Yのズレが解消され(矯正され)、かつ、第3ガイド面S3と第4ガイド面S4とは、幅方向Yのズレが解消される。
【0042】
また、第1直線押圧部12p等は、2つのテーパ面で構成された第1ガイド面S1等にそれぞれ接触しているので(図4(B)参照)、図5(B)に示す状態では、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とが、厚み方向Zに揃えられた状態となる。その結果、第1ガイド面S1と第2ガイド面S2とは、厚み方向Zのズレが解消され、かつ、第3ガイド面S3と第4ガイド面S4とは、厚み方向Zのズレが解消される。従って、第1ガイド面S1及び第2ガイド面S2は段差なく接続され、かつ、第3ガイド面S3及び第4ガイド面S4は段差なく接続される。
【0043】
次に、本実施形態に係る位置決め方法について説明する。図6から図10は、クレーンのマストを形成するための2つの構造体B1、B2を連結してマストを形成する方法を示している。本実施形態に係る位置決め方法は、マストを形成する際の一工程であり、上記した治具100が用いられる。マストの形成は、クレーンが設置されるストッカ近傍での現場作業となる。図6は、第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2をそれぞれ有する構造体B1、B2の連結工程を模式的に示し、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とを仮設置した状態を示す図である。
【0044】
まず、図6に示すように、構造体B1、B2の端部同士を突き合わせて、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とを仮接続させる。図6に示すように、構造体B1には第1リニアガイドG1が複数の固定個所Geにおいてボルト等の固定部材Gfにより予め固定されている。構造体B2には第2リニアガイドG2が複数の固定個所Geにおいてボルト等の固定部材Gfにより予め固定されている。第1リニアガイドG1は、構造体B1の端部から突出した状態で固定されている。一方、第2リニアガイドG2は、第1リニアガイドG1の突出分だけ構造体B2の端部から離れて固定されている。これは、構造体B1、B2の接続位置と、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2との接続位置とを長手方向Xにずらすためである。なお、構造体B2には、第1リニアガイドG1を固定するための固定個所Geが設けられている。
【0045】
次に、図7に示すように、治具100により、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とに亘る部分を治具100で挟持させる。図7は、リニアガイド体Gを治具100で挟持した状態を示す図である。まず、治具100の第2ボルト40を緩め、第1側押圧部材12と第2側押圧部材22との間隔が開き、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22を第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2に亘る第1側Y1及び第2側Y2にそれぞれ配置する。
【0046】
この状態から第2ボルト40を締めることで、第1側押圧部材12と第2側押圧部材22との間隔を狭くして、第1側押圧部材12及び第2側押圧部材22によって第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2を挟持させる。この作業により、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2との突合せ部分にずれが生じていても、幅方向Y及び厚み方向Zのずれが解消される。このとき、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とが長手方向Xに直線状となるように、構造体B1、B2を幅方向Y及び厚み方向Zに相対的に移動させてもよい。
【0047】
次に、図8(A)及び(B)に示すように、構造体B1、B2にジョイントプレートJを配置する。図8は、構造体B1、B2にジョイントプレートJを取り付ける前の状態を示し、(A)はジョイントプレートJの図、(B)は拡大図である。まず、図8(A)に示すように、構造体B1、B2の双方に位置出し用プレートPを取り付ける。位置出し用プレートPは、不図示のボルト等の固定部材により、構造体B1、B2の所定の位置に固定される。位置出し用プレートPには、複数の位置出しピンPa、Pbと、後述する固定部材Cの取り付け孔Pcが設けられている。
【0048】
2つの位置出し用プレートPの間に亘って、ジョイントプレートJが配置される。ジョイントプレートJには、位置出しピンPaに対応した複数のピン挿入孔Ja、Jbと、複数の挿入孔Jcと、が設けられている。ピン挿入孔Jaは、例えば円形状であり、位置出しピンPaが挿入される。ピン挿入孔Jbは、厚み方向Zに長い長円状であり、位置出しピンPbが挿入される。ジョイントプレートJは、ピン挿入孔Jaに位置出しピンPaが挿入され、かつ、ピン挿入孔Jbに位置出しピンPbが挿入された状態で構造体B1、B2に配置される。ジョイントプレートJは、複数の位置出しピンPbにより位置決めされる。挿入孔Jcには、後述する固定部材Cが挿通される。
【0049】
図9は、構造体B1、B2におけるジョイントプレートJの取り付け位置の一例を示す図である。図9では、図7図8に示す構造体B1、B2とは断面形状が異なっており、上記したマストの断面形状の一例を示している。図9に示すように、構造体B1、B2は、リニアガイド体Gが取り付けられる第1部分Baと、この第1部分Baの端部から幅方向Yの両側に延びる第2部分Bbと、第2部分Bbの端部に設けられて厚み方向Zに延びる第3部分Bc及び第4部分Bdとを有する。ジョイントプレートJは、例えば、第1部分Ba、第2部分Bb、第3部分Bc及び第4部分Bdの各部分に配置される。
【0050】
図10は、構造体B1、B2にジョイントプレートJを取り付け、第1リニアガイドG1を構造体B2に固定した状態を示す図である。ジョイントプレートJを配置した後、図10に示すように、治具100でリニアガイド体Gを挟持させたまま、第1リニアガイドG1のうち構造体B2まで延びた部分について、固定部材Gfにより構造体B2の固定個所Geに固定する。次に、第1リニアガイドG1の一部を構造体B2に固定した後、図10に示すように、位置出し用プレートPに取り付けられたジョイントプレートJを、ボルト等の固定部材Cにより構造体B1、B2に固定する。固定部材Cは、ジョイントプレートJの挿入孔Jcを貫通して、位置出し用プレートPの取り付け孔Pcにネジ結合している。
【0051】
その後、第2ボルト40を緩め、治具100をリニアガイド体Gから取り外す。このとき、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とが位置決めされた状態で構造体B1、B2に固定され、かつ構造体B1、B2は互いに連結されているので、おり、治具100を取り外した後であっても、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とズレは生じにくい。
【0052】
ただし、治具100を取り外した後、第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2の突き合わせ部分において段差が形成されていないかどうかを確認する。この確認においては、作業者が手で触って行ってもよいし、被ガイド部材SL(図4(A)参照)を実際にスライドさせて行ってもよい。なお、段差が形成されている場合、第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2の接続部分近傍の固定部材Gfを取り外し、再度、治具100でリニアガイド体Gを挟持させた状態で位置決めしてから固定部材Gfによりリニアガイド体Gの固定を行う。
【0053】
このように、本実施形態に係る治具100及び位置決め方法によれば、挟持部50でリニアガイド体Gを挟持することにより、直線部分を持つ第1直線押圧部12pと第3直線押圧部22pとが第1リニアガイドG1を挟持し、さらに同じく直線部分を持つ第2直線押圧部12qと第4直線押圧部22qとが第2リニアガイドG2を挟持することで、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とを幅方向Y及び厚み方向Zに容易かつ正確に位置決めすることができる。例えば、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2との位置決め作業を現場等で行う場合に、容易に第1リニアガイドG1及び第2リニアガイドG2を位置決めできるので、作業者の熟練度が不要となり、かつ作業時間の短縮、及び作業者の負担軽減を実現できる。
【0054】
また、上記した実施形態では、第1側押圧部材12と第2側押圧部材22がそれぞれ円柱状である構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。図11は、第1側押圧部材及び第2側押圧部材の他の例を示す図である。例えば、図11に示すように、第1側押圧部材112は、第1直線押圧部112pの延長線上に第2直線押圧部112qが一致しつつも、第1直線押圧部112pと第2直線押圧部112qとが直線状に連続せず、両者の間に凹部112aが形成されている。また、第2側押圧部材122は、第3直線押圧部122pの延長線上に第4直線押圧部122qが一致しつつも、第3直線押圧部122pと第4直線押圧部122qとが直線状に連続せず、両者の間に凹部122aが形成されている。
【0055】
このような第1側押圧部材112及び第2側押圧部材122が用いられる場合であっても、第1直線押圧部112pと第3直線押圧部122pとで第1リニアガイドG1を挟持し、かつ第2直線押圧部112qと第4直線押圧部122qとで第2リニアガイドG2を挟持することにより、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とを幅方向Y及び厚み方向Zに容易かつ正確に位置決めすることができる。
【0056】
また、図12(A)及び(B)は、第1側押圧部材及び第2側押圧部材の他の例を示す図である。図12(A)は厚み方向Zから見た図、(B)は長手方向Xから見た図である。図12(A)及び(B)に示すように、第1側押圧部材212及び第2側押圧部材222は、それぞれ矩形状に形成された板材である。第1側押圧部材212は、第2側Y2に向いた面に第1直線押圧部212pと第2直線押圧部212qとが設けられる。第2直線押圧部212qは、第1直線押圧部212pの延長線上に一致している。第2側押圧部材222は、第1側Y1に向いた面に第3直線押圧部222Pと第4直線押圧部222qとが設けられる。第4直線押圧部222qは、第3直線押圧部222Pの延長線上に一致している。
【0057】
図12(B)に示すように、第1側押圧部材212は、厚み方向Zに離間する2つの第1所定部T1を押圧する。第2直線押圧部212qは、厚み方向Zに離間する2つの第2所定部T2を押圧する。第3直線押圧部222Pは、厚み方向Zに離間する2つの第3所定部T3を押圧する。第4直線押圧部222qは、厚み方向Zに離間する2つの第4所定部T4を押圧する。
【0058】
このような第1側押圧部材212及び第2側押圧部材222が用いられる場合であっても、第1直線押圧部212pと第3直線押圧部222pとで第1リニアガイドG1を挟持し、かつ第2直線押圧部212qと第4直線押圧部222qとで第2リニアガイドG2を挟持することにより、第1リニアガイドG1と第2リニアガイドG2とを幅方向Y及び厚み方向Zに容易かつ正確に位置決めすることができる。なお、上記では、厚み方向Zに離間する2つの第1所定部T1、第2所定部T2、第3所定部T3、及び第4所定部T4を挟持しているが、2つのうちのいずれか一方を挟持する構成であってもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。また、上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述した実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、本実施形態において示した各手順の実行順序は、前の手順の結果を後の手順で用いない限り、任意の順序で実現可能である。また、上述した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【0060】
また、上記した実施形態では、第2ボルト40に弾性部材41が配置された構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。弾性部材41は、設けられなくてもよい。この場合、第2ボルト40を緩めた後、作業者が手作業により第1板材10及び第2板材20の間を広げることができる。
【0061】
また、上記した実施形態では、挿通孔13、14、23、24の内径が第1ボルト30、第2ボルト40の外径よりも大きい構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。挿通孔13、14、23、24の内径は、第1ボルト30、第2ボルト40の外径と同一又はほぼ同一であってもよい。この場合、例えば第1ボルト30、第2ボルト40の締める又は緩めることにより、第1側押圧部材12と第2側押圧部材22との間隔を調整することができる。
【符号の説明】
【0062】
D1・・・第1距離
D2a、D2b・・・第2距離
G・・・リニアガイド体
G1・・・第1リニアガイド
G2・・・第2リニアガイド
SL・・・被ガイド部材
S1・・・第1ガイド面
S2・・・第2ガイド面
S3・・・第3ガイド面(第3所定部)
S4・・・第4ガイド面(第4所定部)
T1・・・第1所定部
T2・・・第2所定部
T3・・・第3所定部
T4・・・第4所定部
10、110、210・・・第1板材(板材)
12、112、212・・・第1側押圧部材
12p、112p、212p・・・第1直線押圧部
12q、112q、212q・・・第2直線押圧部
13、14、23、24・・・挿通孔
20、120、220・・・第2板材(板材)
22、122、222・・・第2側押圧部材
22p、122p、222p・・・第3直線押圧部
22q、122q、222q・・・第4直線押圧部
30・・・第1ボルト
40・・・第2ボルト
41・・・弾性部材
50・・・挟持部
100・・・治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12