(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043664
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】制御システム、移動装置、及びコントローラ
(51)【国際特許分類】
B66C 13/40 20060101AFI20220309BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B66C13/40 B
B66C15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149061
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】505199739
【氏名又は名称】株式会社五合
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 宏二
(72)【発明者】
【氏名】澤田 輝彦
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA02
3F204BA02
(57)【要約】
【課題】操作者の安全性を高めることができる制御システム、移動装置、及びコントローラを提供すること。
【解決手段】制御システムは移動装置に用いられる。制御システムは、コントローラと、演算ユニットとを備える。コントローラは、1つの移動方向を選択する第1操作を受け付ける方向操作部と、第2操作を受け付ける駆動操作部と、方向信号を出力するように構成された方向信号出力部と、駆動信号を出力するように構成された駆動信号出力部とを備える。演算ユニットは、移動体が停止しているときに、方向信号と駆動信号とが入力していることを必要条件として、方向信号が表す移動方向への移動体の移動を開始する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動方向に移動可能な移動体を備える移動装置に用いられる制御システムであって、
コントローラと、
演算ユニットと、を備え、
前記コントローラは、
操作者による、前記複数の移動方向のうちの1つの移動方向を選択する第1操作を受け付ける方向操作部と、
操作者による第2操作を受け付ける駆動操作部と、
前記第1操作が行われているとき、前記第1操作によって選択された前記移動方向を表す方向信号を前記演算ユニットに出力するように構成された方向信号出力部と、
前記第2操作が行われているとき、駆動信号を前記演算ユニットに出力するように構成された駆動信号出力部と、
を備え、
前記演算ユニットは、前記移動体が停止しているときに、前記方向信号と前記駆動信号とが前記演算ユニットに入力していることを必要条件として、前記演算ユニットに入力している前記方向信号が表す前記移動方向への前記移動体の移動を開始するように構成された制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御システムであって、
前記演算ユニットは、前記移動体が停止しているときに、(1)前記方向信号と前記駆動信号とが前記演算ユニットに入力しており、且つ(2)前記方向信号の入力が開始された時刻t1は、前記駆動信号の入力が開始された時刻t2よりも、予め設定された閾値ΔT以上、早いことを必要条件として、前記演算ユニットに入力されている前記方向信号が表す前記移動方向への前記移動体の移動を開始するように構成された制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御システムであって、
前記移動方向を報知するように構成された報知部をさらに備え、
前記演算ユニットは、前記移動体が停止しているときに前記方向信号が前記演算ユニットに入力された場合、前記報知部を用いて、前記方向信号が表す前記移動方向を報知する制御システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の制御システムであって、
前記演算ユニットは、前記移動体が移動しているときに前記方向信号又は前記駆動信号の入力が途絶えた場合、前記移動体を停止させる制御システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の制御システムであって、
前記移動装置はクレーンである制御システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の制御システムを備える移動装置。
【請求項7】
移動体の移動方向を操作者が操作するためのコントローラであって、
筐体と、
前記筐体に備えられた第一のボタン型スイッチと、
前記筐体に備えられ、前記第一のボタン型スイッチとは別の第二のボタン型スイッチと、
を備え、
前記第一のボタン型スイッチは、操作者が移動体の移動方向を選択するためのスイッチであって、前記操作者が選択した前記移動方向への前記移動体の移動の開始、維持、又は停止を指示するためのスイッチではなく、
前記第二のボタン型スイッチは、前記操作者が前記第一のボタン型スイッチにより選択した前記移動方向への前記移動体の移動の開始、維持、又は停止を指示するためのスイッチである、
コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は制御システム、移動装置、及びコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井クレーン等の移動装置が知られている。移動装置は特許文献1に開示されている。移動装置は、複数の移動方向に移動可能なフックを備える。移動装置は、物品を吊り下げたフックを移動させることで、物品の移動を行う。
【0003】
移動装置は制御システムを備える。制御システムは、コントローラと、演算ユニットとを備える。コントローラは、複数の移動方向のそれぞれに対応して設けられた操作ボタンを備える。操作者は、いずれか1つの操作ボタンを押すことができる。コントローラは、いずれか1つの操作ボタンが押されているとき、操作されている操作ボタンに対応する移動方向を表す信号を演算ユニットに出力する。演算ユニットは、演算ユニットへ入力している信号が表す移動方向へフックを移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の制御システムを用いた場合、操作者は、1つの操作ボタンを押すだけでフックを移動させることができる。そのため、操作者は、片手のみで容易にコントローラの操作を行うことができる。操作者は、コントローラの操作を行っていない方の手で、フックに吊り下げられた物品に触れることがある。安全性の点から、操作者の手は物品に触れないことが望ましい。
【0006】
本開示の1つの局面では、操作者の安全性を高めることができる制御システム、移動装置、及びコントローラを提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、複数の移動方向に移動可能な移動体を備える移動装置に用いられる制御システムである。制御システムは、コントローラと、演算ユニットと、を備える。
前記コントローラは、操作者による、前記複数の移動方向のうちの1つの移動方向を選択する第1操作を受け付ける方向操作部と、操作者による第2操作を受け付ける駆動操作部と、前記第1操作が行われているとき、前記第1操作によって選択された前記移動方向を表す方向信号を前記演算ユニットに出力するように構成された方向信号出力部と、前記第2操作が行われているとき、駆動信号を前記演算ユニットに出力するように構成された駆動信号出力部と、を備える。
【0008】
前記演算ユニットは、前記移動体が停止しているときに、前記方向信号と前記駆動信号とが前記演算ユニットに入力していることを必要条件として、前記演算ユニットに入力している前記方向信号が表す前記移動方向への前記移動体の移動を開始する。
【0009】
本開示の1つの局面である制御システムは、移動体が停止しているときに、操作者が両方の手でコントローラを操作している場合に、移動体の移動を開始する。そのため、移動体が移動しているとき、操作者の両手はコントローラに触れているので、操作者の手が移動体に吊り下げられた物品に触れることを抑制できる。その結果、本開示の1つの局面である制御システムは、操作者の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】移動装置1の電気的構成を表すブロック図である。
【
図2】コントローラ11の構成を表す説明図である。
【
図4】フック39が停止しているときに演算ユニット13が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図5】フック39が移動しているときに演算ユニット13が実行する処理を表すフローチャートである。
【
図6】停止しているフック39の移動が開始される場合の方向信号と駆動信号とを表す説明図である。
【
図7】停止しているフック39の移動が開始されない場合の方向信号と駆動信号とを表す説明図である。
【
図8】別の形態であるコントローラ11の構成を表す説明図である。
【
図9】別の形態であるコントローラ11の構成を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.移動装置1の構成
移動装置1の構成を
図1~
図3に基づき説明する。移動装置1は、例えば、天井クレーンである。
図1に示すように、移動装置1は、制御システム3と、X軸モータ5と、Y軸モータ7と、Z軸モータ9と、を備える。
【0012】
制御システム3は、操作者の操作に応じて移動装置1を制御するためのシステムである。制御システム3は、コントローラ11と、演算ユニット13と、報知部15と、制御盤16と、を備える。演算ユニット13は、コントローラ11、報知部15、及び制御盤16とケーブルにより接続されている。また、制御盤16は、X軸モータ5、Y軸モータ7、及びZ軸モータ9とケーブルにより接続されている。
【0013】
コントローラ11は、移動装置1の操作者の操作を受け付ける部材である。
図2に示すように、コントローラ11は、筐体17と、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24と、駆動操作ボタン25と、を備える。方向操作ボタン19、20、21、22、23、24は第一のボタン型スイッチに対応する。駆動操作ボタン25は、第二のボタン型スイッチに対応する。
【0014】
筐体17は筒状の形態を有する。方向操作ボタン19、20、21、22、23、24及び駆動操作ボタン25は、筐体17の軸方向に沿って一列に並んでいる。駆動操作ボタン25は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24よりも、筐体17の軸方向における一方の端の側に位置する。
【0015】
方向操作ボタン19には「上」の文字が表示されている。方向操作ボタン20には「下」の文字が表示されている。方向操作ボタン21には「東」の文字が表示されている。方向操作ボタン22には「西」の文字が表示されている。方向操作ボタン23には「南」の文字が表示されている。方向操作ボタン24には「北」の文字が表示されている。駆動操作ボタン25には「駆」の文字が表示されている。
【0016】
方向操作ボタン19、20、21、22、23、24、及び駆動操作ボタン25は、それぞれ、操作者による操作を受け付ける。操作とは、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24、及び駆動操作ボタン25のうちの1又は2を指で押し続けることである。
【0017】
方向操作ボタン19、20、21、22、23、24は、後述するフック39の移動方向を選択するために操作される。方向操作ボタン19を操作することは、フック39の移動方向として、上方向を選択することに対応する。方向操作ボタン20を操作することは、フック39の移動方向として、下方向を選択することに対応する。方向操作ボタン21を操作することは、フック39の移動方向として、東方向を選択することに対応する。方向操作ボタン22を操作することは、フック39の移動方向として、西方向を選択することに対応する。方向操作ボタン23を操作することは、フック39の移動方向として、南方向を選択することに対応する。方向操作ボタン24を操作することは、フック39の移動方向として、北方向を選択することに対応する。
【0018】
方向操作ボタン19、20、21、22、23、24及び駆動操作ボタン25は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つと駆動操作ボタン25とを片手で同時に操作することは困難であるように配置されている。
【0019】
そのため、操作者は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つと駆動操作ボタン25とを同時に操作する場合、一方の手で方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つを操作するとともに、反対の手で駆動操作ボタン25を操作しなければならない。
【0020】
なお、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24は方向操作部に対応する。駆動操作ボタン25は駆動操作部に対応する。方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つを操作することは、複数の移動方向のうちの1つの移動方向を選択する第1操作に対応する。駆動操作ボタン25を操作することは第2操作に対応する。上方向、下方向、東方向、西方向、南方向、及び北方向は、複数の移動方向に対応する。
【0021】
図1に示すように、コントローラ11は、方向信号出力部27と、駆動信号出力部28と、を備える。方向信号出力部27は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つが操作されているとき、方向信号を演算ユニット13に出力する。方向信号は、第1操作によって選択された移動方向を表す信号である。
【0022】
方向操作ボタン19が操作されているとき、方向信号が表す移動方向は上方向である。方向操作ボタン20が操作されているとき、方向信号が表す移動方向は下方向である。方向操作ボタン21が操作されているとき、方向信号が表す移動方向は東方向である。方向操作ボタン22が操作されているとき、方向信号が表す移動方向は西方向である。方向操作ボタン23が操作されているとき、方向信号が表す移動方向は南方向である。方向操作ボタン24が操作されているとき、方向信号が表す移動方向は北方向である。
【0023】
方向信号出力部27は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つが押されているときのみ、方向信号を出力する。操作者の手が方向操作ボタン19、20、21、22、23、24から離れると、方向信号出力部27は、方向信号の出力を停止する。
【0024】
駆動信号出力部28は、駆動操作ボタン25が操作されているとき、駆動信号を演算ユニット13に出力する。駆動信号出力部28は、駆動操作ボタン25が押されているときのみ、駆動信号を出力する。操作者の手が駆動操作ボタン25から離れると、駆動信号出力部28は、駆動信号の出力を停止する。
【0025】
演算ユニット13は、CPU、RAM、ROM等を備えたコンピュータを備える。コンピュータとして、例えば、マイコン、PLC等が挙げられる。報知部15は、演算ユニット13からの指示に応じて画像を表示可能な表示面15Aを備える部材である。表示面15Aは、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等により構成される。報知部15は、操作者が表示面15Aを視認可能な位置に設けられている。
【0026】
制御盤16は、インバータ又は電圧接点を備える。制御盤16は、演算ユニット13からの指示に応じて、X軸モータ5、Y軸モータ7、及びZ軸モータ9の回転方向及び回転速度を制御する。制御盤16の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。制御盤16の数が複数である場合、それぞれの制御盤16は、X軸モータ5、Y軸モータ7、及びZ軸モータ9のうちの一部を制御する。例えば、制御盤16の数が2つである場合、1つの制御盤16は、X軸モータ5、及びY軸モータ7を制御する。他方の制御盤16は、Z軸モータ9を制御する。
【0027】
X軸モータ5、Y軸モータ7、及びZ軸モータ9は、それぞれ、制御盤16からの指示に応じて、移動装置1に含まれる部材を駆動する。詳しくは後述する。
図3に示すように、移動装置1は、上述した構成に加えて、走行レール29A、29B、サドル31A、31B、クレーンガーダ33、巻上機35、支持ワイヤ37、及びフック39を備える。
【0028】
走行レール29A、29Bは、建物の天井近傍に敷設されている。走行レール29A、29Bの長手方向は互いに平行であり、水平面内に属する。以下では、走行レール29A、29Bの長手方向をX方向とする。X方向は、東西方向と平行である。
【0029】
サドル31Aは走行レール29A上に設けられている。サドル31AはX方向に移動可能である。また、サドル31Bは走行レール29B上に設けられている。サドル31Bは、サドル31Aと連動して、X方向に移動可能である。サドル31A、31Bを移動させるための駆動源は、X軸モータ5である。
【0030】
クレーンガーダ33の一端はサドル31A上に固定されている。クレーンガーダ33の他端はサドル31B上に固定されている。クレーンガーダ33の長手方向は、水平面内に属する方向であって、X方向とは直交する方向(以下ではY方向とする)である。Y方向は南北方向と平行である。サドル31A、31B、及びクレーンガーダ33は、一体となってX方向に移動可能である。
【0031】
巻上機35は、Y方向に沿って移動可能に、クレーンガーダ33に取り付けられている。巻上機35をY方向に沿って移動させるための駆動源は、Y軸モータ7である。また、巻上機35は、支持ワイヤ37を巻き上げること、及び引き出すことが可能である。支持ワイヤ37を巻き上げたり引き出したりするための駆動源は、Z軸モータ9である。
【0032】
フック39は支持ワイヤ37の先端に取り付けられている。巻上機35が支持ワイヤ37を巻き上げるとフック39は上方に移動する。巻上機35が支持ワイヤ37を引き出すと、フック39は下方に移動する。すなわち、フック39は上下方向(以下ではZ方向と呼ぶこともある)に沿って移動可能である。フック39は、移動させる物品を吊り下げることができる。
【0033】
フック39は移動体に対応する。サドル31A、31B、及びクレーンガーダ33がX方向に移動する場合、フック39もX方向に移動する。すなわち、フック39はX方向に移動可能である。巻上機35がY方向に移動する場合、フック39もY方向に移動する。すなわち、フック39はY方向に移動可能である。上述したように、フック39はZ方向に移動可能である。よって、フック39は、X方向、Y方向、及びZ方向に移動可能である。X方向、Y方向、及びZ方向は複数の移動方向に対応する。
【0034】
2.演算ユニット13が実行する処理
(2-1)フック39が停止しているときに実行する処理
フック39が停止しているときに演算ユニット13が所定時間ごとに繰り返し実行する処理を、
図4、
図6、
図7に基づき説明する。
【0035】
図4のステップ1では、方向信号が演算ユニット13に入力しているか否かを、演算ユニット13が判断する。なお、上述したとおり、方向信号は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つが操作されているとき、コントローラ11が演算ユニット13に出力する信号である。方向信号が演算ユニット13に入力していると判断した場合、本処理はステップ2に進む。方向信号が演算ユニット13に入力していないと判断した場合、本処理は終了する。
【0036】
ステップ2では、演算ユニット13が、報知部15を用いて、予告報知を開始する。予告報知とは、演算ユニット13に入力している方向信号が表す移動方向を、画像等により表示することである。予告報知で表示する画像は、例えば、移動方向を指す矢印等を含む。予告報知は、後述する本報知が始まるか、方向信号が演算ユニット13に入力しなくなるまで継続する。
【0037】
ステップ3では、駆動信号が演算ユニット13に入力しているか否かを、演算ユニット13が判断する。なお、上述したとおり、駆動信号は、駆動操作ボタン25が操作されているとき、コントローラ11が演算ユニット13に出力する信号である。駆動信号が演算ユニット13に入力していると判断した場合、本処理はステップ4に進む。駆動信号が演算ユニット13に入力していないと判断した場合、本処理は終了する。なお、ステップ4に進む場合は、方向信号と駆動信号とが演算ユニット13に入力している場合である。
【0038】
ステップ4では、時刻t1は、時刻t2よりも、予め設定された閾値ΔT以上、早いか否かを演算ユニット13が判断する。
図6、
図7に示すように、時刻t1とは、現時点で演算ユニット13に入力している方向信号の入力が開始された時刻である。時刻t2とは、現時点で演算ユニット13に入力している駆動信号の入力が開始された時刻である。
図6に示すように、時刻t1が時刻t2よりも、閾値ΔT以上早い場合、本処理はステップ5に進む。
図7に示すように、時刻t1が時刻t2よりも、閾値ΔT以上早くない場合、本処理はステップ7に進む。
【0039】
ステップ5では、演算ユニット13が、報知部15を用いて、本報知を開始する。本報知は、予告報知と基本的には同じである。ただし、表示の色等の形態において予告報知と相違する。本報知は、方向信号又は駆動信号が演算ユニット13に入力しなくなるまで継続する。
【0040】
ステップ6では、演算ユニット13が、X軸モータ5、Y軸モータ7、及びZ軸モータ9のいずれかを用いて、フック39の移動を開始させる。フック39の移動方向は、演算ユニット13に入力している方向信号が表す移動方向である。フック39の移動は、後述するステップ14で停止の処理が行われるまで継続する。
【0041】
ステップ7では、演算ユニット13が、報知部15を用いてエラー報知を行う。
(2-2)フック39が移動しているときに実行する処理
フック39が移動しているときに演算ユニット13が所定時間ごとに繰り返し実行する処理を、
図5に基づき説明する。
【0042】
図5のステップ11では、方向信号が演算ユニット13に入力しているか否かを、演算ユニット13が判断する。方向信号が演算ユニット13に入力していると判断した場合、本処理はステップ12に進む。方向信号が演算ユニット13に入力していないと判断した場合、本処理はステップ14に進む。
【0043】
ステップ12では、駆動信号が演算ユニット13に入力しているか否かを、演算ユニット13が判断する。駆動信号が演算ユニット13に入力していると判断した場合、本処理はステップ13に進む。駆動信号が演算ユニット13に入力していないと判断した場合、本処理はステップ14に進む。なお、ステップ11又はステップ12からステップ14に進む場合は、フック39が移動しているときに方向信号又は駆動信号の入力が途絶えた場合である。
【0044】
ステップ13では、演算ユニット13は、フック39の移動をそのまま継続する。
ステップ14では、演算ユニット13は、X軸モータ5、Y軸モータ7、及びZ軸モータ9のうち、それまで駆動されていたモータを停止させることで、フック39の移動を停止する。
【0045】
3.制御システム3が奏する効果
(1A)制御システム3は、フック39が停止しているときに、方向信号と駆動信号とが演算ユニット13に入力していることを必要条件として、フック39の移動を開始する。
【0046】
方向信号と駆動信号とが演算ユニット13に入力している場合とは、操作者が方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちの1つを操作しているとともに、駆動操作ボタン25を操作している場合である。
【0047】
ここで、上述したように、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つと駆動操作ボタン25とを片手で同時に操作することは困難であるので、操作者は、一方の手で方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちのいずれか1つを操作するとともに、反対の手で駆動操作ボタン25を操作する。
【0048】
よって、方向信号と駆動信号とが演算ユニット13に入力している場合とは、操作者が一方の手で方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちの1つを操作しているとともに、反対の手で駆動操作ボタン25を操作している場合である。
【0049】
以上をまとめると、制御システム3は、フック39が停止しているときに、操作者が両方の手でコントローラ11を操作している場合に、フック39の移動を開始する。
そのため、フック39が移動しているとき、操作者の両手はコントローラ11に触れているので、操作者の手がフック39に吊り下げられた物品に触れることを抑制できる。その結果、制御システム3は、操作者の安全性を高めることができる。例えば、制御システム3は、操作者の手が物品等に挟まれる事故を抑制できる。
【0050】
(1B)制御システム3は、フック39が停止しているときに、(1)方向信号と駆動信号とが演算ユニット13に入力しており、且つ(2)時刻t1は、時刻t2よりも、閾値ΔT以上早いことを必要条件として、フック39の移動を開始する。
【0051】
そのため、フック39の移動を開始するためには、操作者は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のうちの1つを操作し始めた時刻t1から、閾値ΔT以上経過してから、駆動操作ボタン25を操作し始める必要がある。操作者は、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24及び駆動操作ボタン25の操作を一層慎重に行うため、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24の操作ミスを抑制できる。その結果、制御システム3は、操作者の安全性を一層高めることができる。
【0052】
(1C)制御システム3は、フック39が停止しているときに方向信号が演算ユニット13に入力された場合、報知部15を用いて、予告報知を行う。予告報知は、方向信号が表す移動方向を報知する。操作者は、予告報知を見て、フック39の移動が開始される前に、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のいずれか1つを正しく操作したか否かを確認できる。その結果、制御システム3は、操作者の安全性を一層高めることができる。
【0053】
(1D)制御システム3は、フック39が移動しているときに方向信号又は駆動信号の入力が途絶えた場合、フック39を停止させる。そのため、フック39が移動しているときに、操作者が方向操作ボタン19、20、21、22、23、24又は駆動操作ボタン25の操作を止めると、フック39は停止する。その結果、移動装置1の安全性が一層向上する。
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0054】
(1)前記ステップ3で肯定判断した場合、本処理は、常に前記ステップ5に進んでもよい。すなわち、前記ステップ4、7の処理は行わなくてもよい。この場合でも、前記(1A)、(1C)、(1D)の効果を奏することができる。
【0055】
(2)コントローラ11の形態は
図8に示すものであってもよい。
図8に示すコントローラ11の構成を説明する。コントローラ11は、方向操作ボタン21、22、23、24は備えない。コントローラ11の筐体17は、上部筐体17Aと、下部筐体17Bとに分割されている。上部筐体17Aと下部筐体17Bとは、円筒形の筐体17の軸方向に沿って並んでいる。方向操作ボタン19、20及び駆動操作ボタン25は下部筐体17Bに設けられている。
【0056】
上部筐体17Aに対し、下部筐体17Bは相対的に回転可能である。その回転の回転軸は、筐体17の軸方向と一致する。上部筐体17Aのうち、下部筐体17Bの側の端部には、複数の移動方向を示す複数の目盛り41が設けられている。目盛り41は、東、西、南、北を含む。下部筐体17Bのうち、上部筐体17Aの側の端部には、1つのマーカー43が設けられている。
【0057】
操作者は、上部筐体17Aに対し、下部筐体17Bを相対的に所定の角度だけ回転させることで、水平方向における移動方向を選択する。例えば、操作者が、上部筐体17Aに対し、下部筐体17Bを相対的に回転させ、
図8に示すように、マーカー43の位置と、「南」の目盛り41とを一致させる操作は、移動方向として「南」を選択する操作である。
【0058】
なお、上部筐体17A及び下部筐体17Bは方向操作部に対応する。上部筐体17Aに対し、下部筐体17Bを相対的に回転させる操作は第1操作に対応する。
(3)コントローラ11の形態は、
図9に示すものであってもよい。
図9に示すコントローラ11の構成を説明する。コントローラ11は、方向操作ボタン21、22、23、24は備えない。コントローラ11は、ジャイロセンサ又は加速度センサを備え、コントローラ11の軸方向45を検出することができる。コントローラ11は、軸方向45の水平成分47を検出する。コントローラ11は、水平成分47の方向を、水平面内における移動方向とする。
【0059】
操作者は、移動方向を選択するとき、水平成分47が狙いの移動方向となるように、コントローラ11を傾ける。コントローラ11は、無線通信により、方向信号及び駆動信号を演算ユニット13に送信する。なお、筐体17は方向操作部に対応する。筐体17を傾ける操作は第1操作に対応する。
【0060】
(4)フック39の水平面内での移動方向は、東方向、西方向、南方向、北方向から選択された1~3の方向であってもよい。また、フック39の移動方向は、東方向、西方向、南方向、北方向のいずれでもない方向を含んでいてもよい。フック39の移動方向として、例えば、山側、海側、前、後、左、右、矢印で示す方向等が挙げられる。
フック39の数は2以上であってもよい。移動装置1は、例えば、2以上のフック39のそれぞれを移動させることができる。
【0061】
(5)移動装置1が備える移動体の形態は、フック39以外の形態であってもよい。
(6)移動装置1は、天井クレーン以外のクレーンであってもよい。天井クレーン以外のクレーンとして、例えば、タワークレーン等が挙げられる。また、移動装置1は、クレーン以外の装置であってもよい。クレーン以外の装置として、例えば、ユニック車、はしご車、ゲーム、遊技機、ユーフォーキャッチャー等が挙げられる。
【0062】
(7)報知部15は、音声により、フック39の移動方向を報知してもよい。また、報知部15は、画像と音声との両方により、フック39の移動方向を報知してもよい。報知部15は、例えば、音声を出力するスピーカを備える。
【0063】
(8)コントローラ11は、無線通信により、信号を演算ユニット13に送信してもよい。この場合、例えば、コントローラ11は送信機を備え、演算ユニット13は受信機を備える。
(9)駆動操作ボタン25は、多段式のボタンであってもよい。多段式のボタンとは、押し込む深さに複数の段階があるボタンである。駆動操作ボタン25が多段式のボタンである場合、制御システム3は、駆動操作ボタン25が深く押し込まれるほど、フック39の移動速度を速くすることができる。また、駆動操作ボタン25が多段式のボタンである場合、制御システム3は、駆動操作ボタン25の押し込みが浅い段階では、フック39を移動させず、予告表示と同様の表示を行ってもよい。
【0064】
(10)移動装置1は、フック39の目標位置を設定し、フック39を目標位置に向けて自動で移動させてもよい。報知部15は、フック39の現在位置、フック39の現在の移動方向、予定移動経路等を表示する。
【0065】
(11)報知部15と同様の構成及び機能を有する報知部をコントローラ11が備えていてもよい。
(12)コントローラ11の1つのボタンが、駆動操作部と方向操作部とを兼ねていてもよい。例えば、コントローラ11は、駆動操作ボタン25を備えていない。例えば、操作者は、最初に、方向操作ボタン21を1回押し、次に、押すことを止める。これらの操作は、移動方向として東方向を選択する第1操作に対応する。第1操作が行われたとき、コントローラは、東方向を表す方向信号を演算ユニット13に出力する。演算ユニット13は、報知部15を用いて、予告報知を開始する。予告報知は、移動方向が東方向であることを報知する。
次に、操作者は、方向操作ボタン21を再び押し、押した状態を維持する。方向操作ボタン21を再び押すことは、第2操作に対応する。第2操作が行われたとき、コントローラ11は、駆動信号を演算ユニット13に出力する。
例えば、方向信号の入力が開始された時刻t1が、駆動信号の入力が開始された時刻t2よりも、予め設定された閾値ΔT以上、早いことを必要条件として、演算ユニット13は、演算ユニット13に入力されている方向信号が表す移動方向へのフック39の移動を開始する。
操作者が方向操作ボタン19、20、22、23、24のいずれか1つに対し第1操作及び第2操作を行った場合も、演算ユニット13は、移動方向が異なる点以外は同様の処理を行う。
(13)コントローラ11は、例えば、方向操作ボタン19、20、21、22、23、24のいずれかを先に押さないと、駆動操作ボタン25を押せない構造を備えていてもよい。
(14)本開示に記載の演算ユニット13及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の演算ユニット13及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の演算ユニット13及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。演算ユニット13に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0066】
(15)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0067】
(16)上述した制御システムの他、当該制御システムを構成要素とするさらに上位のシステム、演算ユニット13としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実態的記録媒体、移動装置の制御方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0068】
1…移動装置、3…制御システム、5…X軸モータ、7…Y軸モータ、9…Z軸モータ、11…コントローラ、13…演算ユニット、15…報知部、15A…表示面、16…制御盤、17…筐体、17A…上部筐体、17B…下部筐体、19、20、21、22、23、24…方向操作ボタン、25…駆動操作ボタン、27…方向信号出力部、28…駆動信号出力部、29A、29B…走行レール、31A、31B…サドル、33…クレーンガーダ、35…巻上機、37…支持ワイヤ、39…フック、41…目盛り、43…マーカー