(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043686
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0569 20100101AFI20220309BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220309BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220309BHJP
H01M 50/10 20210101ALI20220309BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220309BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20220309BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20220309BHJP
H01G 11/60 20130101ALI20220309BHJP
H01G 11/62 20130101ALI20220309BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20220309BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/0585
H01M2/02 Z
H01M4/66 A
H01M2/30 D
H01G11/68
H01G11/60
H01G11/62
H01G11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149096
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佑介
(72)【発明者】
【氏名】山路 智也
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】大谷 まどか
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H017
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AA12
5E078AB02
5E078DA03
5E078DA05
5E078EA11
5E078FA13
5E078FA23
5H011AA17
5H011CC02
5H011DD13
5H017AA03
5H017DD06
5H017EE05
5H017HH04
5H029AJ15
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ04
5H029BJ06
5H029DJ04
5H029EJ12
5H029HJ07
5H043AA07
5H043BA19
5H043CA08
5H043CA13
5H043KA09E
5H043KA24E
5H043LA12
(57)【要約】
【課題】特定構造の蓄電装置における集電体とシール部の接着性を向上させる。
【解決手段】蓄電装置10は、正極集電体21a及び正極活物質層21bを有する正極21と、負極集電体22a及び負極活物質層22bを有する負極22と、正極活物質層21bと負極活物質層22bとの間に配置されたセパレータ23と、正極21と負極22との間に液体電解質を収容する密閉空間Sを形成するシール部24とを備える。正極集電体21a及び負極集電体22aの少なくとも一方は、正極活物質層21b又は負極活物質層22bが設けられる第1面がアルミニウムにより構成されるアルミニウム集電体である。液体電解質は、金属フッ化物塩と、リン酸エステルが配合された非水溶媒とを含有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の第1面に正極活物質層が設けられた正極と、
負極集電体の第1面に負極活物質層が設けられてなり、前記負極活物質層が前記正極の前記正極活物質層と対向するように配置された負極と、
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されたセパレータと、
前記正極と前記負極との間において、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の周囲を囲むように配置されるとともに、前記正極集電体及び前記負極集電体の各第1面に接着されることにより、前記正極と前記負極との間に液体電解質を収容する密閉空間を形成するシール部とを備え、
前記正極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一方は、第1面がアルミニウムにより構成されるアルミニウム集電体であり、
前記液体電解質は、金属フッ化物塩を含有する液体電解質である蓄電装置であって、
前記液体電解質は、リン酸エステルが配合された非水溶媒を含有することを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記非水溶媒には、前記リン酸エステルが2体積%以上配合されている請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記非水溶媒には、前記リン酸エステルが2体積%以上15体積%以下配合されている請求項2に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、個々に作製された複数の蓄電セルを直列に積層することにより構成される扁平型の蓄電装置が開示されている。上記蓄電セルは、箔状の正極集電体の片面の中央部に正極活物質層が形成されてなる正極と、箔状の負極集電体の片面の中央部に負極活物質層が形成されてなり、負極活物質層が正極の正極活物質層と対向するように配置された負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータとを備えている。
【0003】
さらに、上記蓄電セルは、正極と負極との間かつ正極活物質層及び負極活物質層よりも外周側に配置されるシール部を備えている。シール部は、正極集電体と負極集電体との間隔を保持して集電体間の短絡を防止するとともに、正極集電体と負極集電体との間を液密に封止して、正極集電体と負極集電体との間に液体電解質を収容する密閉空間を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LiPF6を電解質塩として含む液体電解質は、リチウムイオン二次電池の液体電解質として広く使用されている。LiPF6を電解質塩として含む液体電解質を上記の蓄電装置に適用するとともに、集電体としてアルミニウムにより構成される集電体を用いた場合には、正極集電体と負極集電体との間の密閉空間から液体電解質の液漏れが生じることがあった。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、正極集電体と負極集電体との間に設けられるシール部によって液体電解質を収容する密閉空間が形成されている蓄電装置に関して、集電体とシール部の接着性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する蓄電装置は、正極集電体の第1面に正極活物質層が設けられた正極と、負極集電体の第1面に負極活物質層が設けられてなり、前記負極活物質層が前記正極の前記正極活物質層と対向するように配置された負極と、前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配置されたセパレータと、前記正極と前記負極との間において、前記正極活物質層及び前記負極活物質層の周囲を囲むように配置されるとともに、前記正極集電体及び前記負極集電体の各第1面に接着されることにより、前記正極と前記負極との間に液体電解質を収容する密閉空間を形成するシール部とを備え、前記正極集電体及び前記負極集電体の少なくとも一方は、第1面がアルミニウムにより構成されるアルミニウム集電体であり、前記液体電解質は、金属フッ化物塩を含有する液体電解質である蓄電装置であって、前記液体電解質は、リン酸エステルが配合された非水溶媒を含有する。
【0008】
上記蓄電装置において、前記非水溶媒には、前記リン酸エステルが2体積%以上配合されていることが好ましい。
上記蓄電装置において、前記非水溶媒には、前記リン酸エステルが2体積%以上15体積%以下配合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定構造の蓄電装置における集電体とシール部の接着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示す蓄電装置10は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる蓄電モジュールである。蓄電装置10は、例えば、ニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電装置10は、電気二重層キャパシタであってもよい。本実施形態では、蓄電装置10がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0012】
図1に示すように、蓄電装置10は、複数の蓄電セル20が積層方向にスタック(積層)されたセルスタック30(積層体)を含んで構成されている。以下では、複数の蓄電セル20の積層方向を単に積層方向という。各蓄電セル20は、正極21と、負極22と、セパレータ23と、シール部24とを備える。
【0013】
正極21は、正極集電体21aと、正極集電体21aの第1面21a1に設けられた正極活物質層21bとを備える。積層方向から見た平面視(以下、単に平面視という。)において、正極活物質層21bは、正極集電体21aの第1面21a1の中央部に形成されている。平面視における正極集電体21aの第1面21a1の周縁部は、正極活物質層21bが設けられていない正極未塗工部21cとなっている。正極未塗工部21cは、平面視において正極活物質層21bの周囲を囲むように配置されている。
【0014】
負極22は、負極集電体22aと、負極集電体22aの第1面22a1に設けられた負極活物質層22bとを備える。平面視において、負極活物質層22bは、負極集電体22aの第1面22a1の中央部に形成されている。平面視における負極集電体22aの第1面22a1の周縁部は、負極活物質層22bが設けられていない負極未塗工部22cとなっている。負極未塗工部22cは、平面視において正極活物質層21bの周囲を囲むように配置されている。
【0015】
正極21及び負極22は、正極活物質層21b及び負極活物質層22bが積層方向において互いに対向するように配置されている。つまり、正極21及び負極22の対向する方向は積層方向と一致している。負極活物質層22bは、正極活物質層21bよりも一回り大きく形成されており、積層方向からみた平面視において、正極活物質層21bの形成領域の全体が負極活物質層22bの形成領域内に位置している。
【0016】
正極集電体21aは、第1面21a1とは反対側の面である第2面21a2を有する。正極21は、正極集電体21aの第2面21a2に正極活物質層21b及び負極活物質層22bのいずれも形成されていないモノポーラ構造の電極である。負極集電体22aは、第1面22a1とは反対側の面である第2面22a2を有する。負極22は、負極集電体22aの第2面21a2に正極活物質層21b及び負極活物質層22bのいずれも形成されていないモノポーラ構造の電極である。
【0017】
セパレータ23は、正極21と負極22との間に配置されて、正極21と負極22とを隔離することで両極の接触による短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。
【0018】
セパレータ23は、例えば、液体電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ23を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステルなどが挙げられる。セパレータ23は、単層構造又は多層構造を有してもよい。多層構造は、例えば、接着層、耐熱層としてのセラミック層等を有してもよい。
【0019】
シール部24は、正極21の正極集電体21aの第1面22a1と、負極22の負極集電体22aの第1面22a1との間、かつ正極集電体21a及び負極集電体22aよりも外周側に配置され、正極集電体21a及び負極集電体22aの両方に接着されている。シール部24は、正極集電体21aと負極集電体22aとの間を絶縁することによって、集電体間の短絡を防止する。
【0020】
シール部24は、平面視において、正極集電体21a及び負極集電体22aの周縁部に沿って延在するとともに、正極集電体21a及び負極集電体22aの周囲を取り囲む枠状に形成されている。シール部24は、正極集電体21aの第1面21a1の正極未塗工部21cと、負極集電体22aの第1面22a1の負極未塗工部22cとの間に配置されている。
【0021】
蓄電セル20の内部には、枠状のシール部24、正極21及び負極22によって囲まれた密閉空間Sが形成されている。密閉空間Sには、セパレータ23及び液体電解質が収容されている。なお、セパレータ23の周縁部分は、シール部24に埋まった状態とされている。
【0022】
シール部24は、正極21及び負極22との間の密閉空間Sを封止することにより、密閉空間Sに収容された液体電解質の外部への透過を抑制し得る。また、シール部24は、蓄電装置10の外部から密閉空間S内への水分の侵入を抑制し得る。さらに、シール部24は、例えば、充放電反応等により正極21又は負極22から発生したガスが蓄電装置10の外部に漏れることを抑制し得る。
【0023】
セルスタック30は、複数の蓄電セル20が、正極集電体21aの第2面21a2と負極集電体22aの第2面22a2とが接触するように重ね合わされた構造を有する。これにより、セルスタック30を構成する複数の蓄電セル20が直列に接続されている。
【0024】
ここで、セルスタック30においては、積層方向に隣り合う二つの蓄電セル20により、互いに接する正極集電体21a及び負極集電体22aを一つの集電体とみなした疑似的なバイポーラ電極25が形成される。疑似的なバイポーラ電極25は、正極集電体21a及び負極集電体22aが重ね合わされた構造の集電体と、その集電体の一方側の面に形成された正極活物質層21bと、他方側の面に形成された負極活物質層22bとを含む。
【0025】
各蓄電セル20のシール部24は、正極集電体21aと負極集電体22aの各縁部よりも外側に延びる外周部分24aを有している。外周部分24aは、積層方向から見て正極集電体21aと負極集電体22aの各縁部よりも積層方向に直交する方向に突出している。積層方向に隣り合う蓄電セル20は、それぞれのシール部24の外周部分24a同士が接着されることにより一体化している。隣り合うシール部24同士を接着する方法としては、例えば、熱溶着、超音波溶着又は赤外線溶着など、公知の溶着方法が挙げられる。
【0026】
蓄電装置10は、セルスタック30の積層方向においてセルスタック30を挟むように配置された、正極通電板40及び負極通電板50からなる一対の通電体を備える。正極通電板40及び負極通電板50は、それぞれ、導電性に優れた材料で構成される。
【0027】
正極通電板40は、積層方向の一端において最も外側に配置された正極21の正極集電体21aの第2面21a2に電気的に接続される。負極通電板50は、積層方向の他端において最も外側に配置された負極22の負極集電体22aの第2面22a2に電気的に接続される。
【0028】
正極通電板40及び負極通電板50のそれぞれに設けられた端子を通じて蓄電装置10の充放電が行われる。正極通電板40を構成する材料としては、例えば、正極集電体21aを構成する材料と同じ材料を用いることができる。正極通電板40は、セルスタック30に用いられた正極集電体21aよりも厚い金属板で構成してもよい。負極通電板50を構成する材料としては、例えば、負極集電体22aを構成する材料と同じ材料を用いることができる。負極通電板50は、セルスタック30に用いられた負極集電体22aよりも厚い金属板で構成してもよい。
【0029】
次に、正極集電体21a、負極集電体22a、正極活物質層21b、負極活物質層22b、液体電解質、及びシール部24の詳細について説明する。
<正極集電体及び負極集電体>
正極集電体21a及び負極集電体22aは、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層21b及び負極活物質層22bに電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。
【0030】
正極集電体21a及び負極集電体22aの少なくとも一方は、第1面21a1又は第1面22a1となる表面がアルミニウムにより構成されるアルミニウム集電体である。
アルミニウム集電体は、全体がアルミニウムにより構成された単体物であってもよいし、アルミニウムにより構成される部分とアルミニウム以外の材料により構成される部分とを有する複合体であってもよい。上記複合体としては、第1面21a1を構成する層がアルミニウム層である多層構造体、第1面21a1を含む表面がアルミニウム膜によって被覆された基材が挙げられる。
【0031】
上記アルミニウム以外の材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料が挙げられる。上記金属材料としては、例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)が挙げられる。上記導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。
【0032】
アルミニウム集電体の形態は、例えば、箔、シート、フィルムである。アルミニウム集電体の厚さは、例えば、1~100μmである。
正極集電体21a及び負極集電体22aの一方は、アルミニウム集電体以外の集電体(以下、その他の集電体という。)であってもよい。その他の集電体を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。
【0033】
金属材料としては、例えば、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301、SUS304等)が挙げられる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料又は非導電性高分子材料に必要に応じて導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。
【0034】
その他の集電体は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。その他の集電体の表面は、公知の保護層により被覆されてもよい。その他の集電体の表面は、メッキ処理等の公知の方法により処理されてもよい。
【0035】
その他の集電体は、例えば、箔、シート、フィルム、線、棒、メッシュ又はクラッド材等の形態を有してもよい。箔、シート、フィルムである場合のその他の集電体の厚さは、例えば、1~100μmである。
【0036】
正極集電体21a及び負極集電体22aの好ましい一例としては、正極集電体21aをアルミニウム集電体であるアルミニウム箔により構成するとともに、負極集電体22aをその他の集電体である銅箔により構成した場合が挙げられる。
【0037】
<正極活物質層及び負極活物質層>
正極活物質層21bは、リチウムイオンなどの電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、層状岩塩構造を有するリチウム複合金属酸化物、スピネル構造の金属酸化物、ポリアニオン系化合物など、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものを採用すればよい。また、2種以上の正極活物質を併用してもよい。本実施形態において、正極活物質層21bはポリアニオン系化合物としてのオリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)を含む。
【0038】
負極活物質層22bは、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出可能である単体、合金又は化合物であれば特に限定はなく使用可能である。例えば、負極活物質としてLi、又は、炭素、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物等が挙げられる。炭素としては天然黒鉛、人造黒鉛、あるいはハードカーボン(難黒鉛化性炭素)又はソフトカーボン(易黒鉛化性炭素)を挙げることができる。人造黒鉛としては、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。本実施形態において、負極活物質層22bは炭素系材料としての黒鉛を含む。
【0039】
正極活物質層21b及び負極活物質層22b(以下、単に活物質層ともいう。)はそれぞれ、必要に応じて電気伝導性を高めるための導電助剤、結着剤、電解質(ポリマーマトリクス、イオン伝導性ポリマー、液体電解質等)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)等をさらに含み得る。活物質層に含まれる成分又は当該成分の配合比及び活物質層の厚さは特に限定されず、リチウムイオン二次電池についての従来公知の知見が適宜参照され得る。活物質層の厚さは、例えば2~150μmである。
【0040】
導電助剤は、正極21又は負極22の導電性を高めるために添加される。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。溶媒又は分散媒には、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン等が用いられる。
【0041】
正極集電体21a及び負極集電体22aの表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法等の従来から公知の方法を用いてもよい。
正極21又は負極22の熱安定性を向上させるために、活物質層の表面に上記の耐熱層を設けてもよい。
【0042】
<シール部>
シール部24は、ポリオレフィン系樹脂により構成される。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、変性ポリエチレン(変性PE)、変性ポリプロピレン(変性PP)、イソプレン、変性イソプレン、ポリブテン、変性ポリブテン、ポリブタジエンが挙げられる。変性ポリエチレンとしては、例えば、酸変性ポリエチレン、エポキシ変性ポリエチレンが挙げられる。変性ポリプロピレンとしては、例えば、酸変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリプロピレンが挙げられる。なお、これら公知のポリオレフィン系樹脂を二種以上組合せて用いてもよい。また、ポリオレフィン系樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。
【0043】
<液体電解質>
液体電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩としての金属フッ化物塩と、を含む液体電解質である。
【0044】
非水溶媒は、必須成分としてリン酸エステルを含有する。また、非水溶媒は、リン酸エステルと、リン酸エステル以外のその他の成分とを組み合わせたものであってもよい。その他の成分としては、例えば、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の非水溶媒が挙げられる。非水溶媒は、二種以上のその他成分を含有するものであってもよい。
【0045】
リン酸エステルは、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、及びリン酸トリエステルのいずれであってもよいが、リン酸トリエステルであることが好ましい。
リン酸エステルとしては、例えば、下記の一般式(1)に示されるリン酸エステルが挙げられる。
【0046】
O=P(OR1)(OR2)(OR3) …(1)
一般式(1)において、R1は、鎖状又は環状のアルキル基、フッ素化アルキル基、フェニル基から選ばれる基である。R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、鎖状又は環状のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、芳香族基、アリル基から選ばれる基である。
【0047】
R1~R3を構成する上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。
R1~R3を構成する上記ハロゲン化アルキル基は、鎖状又は環状のアルキル基の一部又は全部の水素がハロゲン化された有機基である。上記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、フッ素化メチル基、フッ素化エチル基、フッ素化プロピル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基等の炭素数1~4のフッ素化アルキル基や、クロロメチル基、クロロエチル基、クロロプロピル基等の炭素数1~4のクロロアルキル基が挙げられる。
【0048】
R1~R3を構成する上記芳香族基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
リン酸エステルの具体例としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリフェニル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)などが挙げられる。
【0049】
液体電解質を構成する非水溶媒におけるリン酸エステルの配合割合は、例えば、1体積%以上であり、2体積%以上であることが好ましい。また、液体電解質を構成する非水溶媒におけるリン酸エステルの含有割合は、15体積%以下であることが好ましい。この場合には、抵抗の増加を抑制できる。
【0050】
なお、本願明細書において、A体積%のリン酸エステルが配合されている非水溶媒は、非水溶媒を構成するリン酸エステル以外の成分を混合した混合液を母液としたとき、母液(100-A)体積部に対してリン酸エステルA体積部を混合した場合に相当する量のリン酸エステルを含有する非水溶媒を意味する。
【0051】
次に、本実施形態の蓄電装置10の製造方法について説明する。
蓄電装置10は、電極形成工程と、蓄電セル形成工程と、セルスタック形成工程と順に経ることにより製造される。ここでは、一例として、正極集電体21aをアルミニウム箔により構成し、負極集電体22aを銅箔により構成した場合について説明する。
【0052】
<電極形成工程>
電極形成工程は、正極21を形成する正極形成工程と、負極22を形成する負極形成工程とを有する。
【0053】
正極形成工程は特に限定されるものではなく、正極集電体21a及び正極活物質層21bを備える正極21の形成に適用される公知の方法を用いることができる。例えば、正極集電体21aとしてのアルミニウム箔の第1面21a1に対して、固化することにより正極活物質層21bとなる正極合材を所定厚みとなるように付着させた後、正極合材に応じた固化処理を行うことにより正極21を形成することができる。
【0054】
負極形成工程は特に限定されるものではなく、負極集電体22a及び負極活物質層22bを備える負極22の形成に適用される公知の方法を用いることができる。例えば、負極集電体22aとしての銅箔の第1面22a1に対して、固化することにより負極活物質層22bとなる負極合材を所定厚みとなるように付着させた後、負極合材に応じた固化処理を行うことにより負極22を形成することができる。
【0055】
<蓄電セル形成工程>
蓄電セル形成工程では、まず、セパレータ23を間に挟んで正極活物質層21b及び負極活物質層22bが互いに積層方向に対向するように正極21及び負極22を配置するとともに、正極21と負極22の間、かつ正極集電体21a及び負極集電体22aよりも外周側にシール部24となるシール材、例えば、ポリエチレンシートを配置する。
【0056】
その後、正極21、負極22、及びセパレータ23とシール材とを溶着により接着することにより、正極21、負極22、セパレータ23、及びシール部24が一体化された組立体を形成する。シール材の溶着方法としては、例えば、熱溶着、超音波溶着又は赤外線溶着など、公知の溶着方法が挙げられる。
【0057】
次に、シール部24の一部に設けられた注入口を通じて組立体の内部の密閉空間Sに液体電解質を注入した後、注入口を封止する。これにより、蓄電セル20が形成される。
<セルスタック形成工程>
セルスタック形成工程では、まず、複数の蓄電セル20を、正極集電体21aの第2面21a2と負極集電体22aの第2面22a2とを向い合せるように重ねて積層する。その後、積層方向に隣り合う蓄電セル20におけるシール部24の外周部分24a同士を接着することにより複数の蓄電セル20を一体化する。
【0058】
次に、積層方向の一端において最も外側に配置された正極21の正極集電体21aの第2面21a2に対して、正極通電板40を重ねて電気的に接続した状態にて固定する。同様に、積層方向の他端において最も外側に配置された負極22の負極集電体22aの第2面22a2に対して、負極通電板50を重ねて電気的に接続した状態にて固定する。
【0059】
次に、本実施形態の作用について説明する。
LiPF6を電解質塩として含む液体電解質を用いた場合に生じる液体電解質の液漏れは、LiPF6に由来するフッ化物アニオン(PF6
-)に起因するものと考えられる。すなわち、「PF6
-」は、特に高温時において「PF5+F-」との間で平行状態となることが示唆されている。このときに生じる「PF5」は、強いルイス酸性を示すことから、アルミニウムにより構成される集電体の表面を腐食する。この腐食によって、シール部を構成する樹脂と集電体との結合が破壊されることにより、集電体と樹脂製のシール部との接着部分の剥離強度が低下する。
【0060】
ここで、正極集電体と負極集電体との間に設けられるシール部によって液体電解質を収容する密閉空間が形成されている蓄電装置の場合、正極活物質層及び前記負極活物質層の周囲を囲むようにシール部が配置されており、平面視における密閉空間の全周がシール部により封止されている。加えて、密閉空間の内圧が上昇した際に、内圧を逃がす構造的な余裕が少ないため、密閉空間の内圧による負荷が集電体とシール部との接着部分に強く作用しやすい。そのため、集電体と樹脂製のシール部との接着部分の剥離強度が低下した場合に、シール部からの集電体の剥離が生じやすく、シール部におけるどの部分に剥離が生じたとしても、その剥離が液体電解質の液漏れにつながりやすい。
【0061】
本実施形態の蓄電装置10では、液体電解質中にリン酸エステルを配合することによって、フッ化物アニオンから生じるルイス酸性を示す物質の反応性を低下させている。これにより、アルミニウム集電体における上記接着部分の表面が、フッ化物アニオンから生じるルイス酸性を示す物質によって腐食されることによる上記接着部分の剥離強度の低下が抑制される。その結果、密閉空間Sの内圧が上昇した場合にもシール部24からアルミニウム集電体が剥がれ難くなり、液体電解質の液漏れを抑制できる。
【0062】
本実施形態によれば、以下に記載する効果を得ることができる。
(1)蓄電装置10は、正極集電体21a及び正極活物質層21bを有する正極21と、負極集電体22a及び負極活物質層22bを有する負極22と、正極活物質層21bと負極活物質層22bとの間に配置されたセパレータ23と、正極21と負極22との間に液体電解質を収容する密閉空間Sを形成するシール部24とを備える。
【0063】
正極集電体21a及び負極集電体22aの少なくとも一方は、正極活物質層21b又は負極活物質層22bが設けられる第1面がアルミニウムにより構成されるアルミニウム集電体である。液体電解質は、金属フッ化物塩と、リン酸エステルが配合された非水溶媒とを含有する。
【0064】
上記構成によれば、液体電解質に配合されたリン酸エステルによって、金属フッ化物塩由来のフッ化物アニオンから生じるルイス酸性を示す物質の反応性が低下することにより、ルイス酸性を示す物質によるアルミニウム集電体の表面の腐食が抑制される。これにより、シール部24からアルミニウム集電体が剥がれ難くなり、液体電解質の液漏れを抑制できる。
【0065】
(2)液体電解質を構成する非水溶媒には、2体積%以上のリン酸エステルが配合されている。
上記構成によれば、シール部24からアルミニウム集電体が剥がれ難くなる効果が顕著に得られる。その結果、液体電解質の液漏れをより確実に抑制できる。
【0066】
(3)液体電解質を構成する非水溶媒には、15体積%以下のリン酸エステルが配合されている。
上記構成によれば、液体電解質にリン酸エステルを配合したことによる抵抗の増加が抑制される。これによりレート特性に優れた蓄電装置10が得られる。
【0067】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
〇正極集電体21a及び正極活物質層21bの平面視形状は特に限定されるものではない。矩形状等の多角形状であってもよいし、円形や楕円形であってもよい。負極集電体22a及び負極活物質層22bについても同様である。
【0068】
〇シール部24の平面視形状は特に限定されるものではなく、矩形状等の多角形状であってもよいし、円形や楕円形であってもよい。
○正極通電板40と正極集電体21aとの間に、両部材間の導電接触を良好にするために、正極集電体21aに密着する導電層を配置してもよい。導電層としては、例えば、アセチレンブラック又はグラファイト等のカーボンを含む層、Au等を含むメッキ層などの正極集電体21aよりも低い硬度を有する層が挙げられる。また、負極通電板50と負極集電体22aとの間に同様の導電層を配置してもよい。
【0069】
〇蓄電装置10を構成する蓄電セル20の数は特に限定されない。蓄電装置10を構成する蓄電セル20の数は、1であってもよい。
〇正極集電体21aの第2面21a2に、正極活物質層21b又は負極活物質層22bが設けられていてもよい。また、負極集電体22aの第2面22a2に、正極活物質層21b又は負極活物質層22bが設けられていてもよい。
【0070】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。
(イ)前記正極と、前記負極と、前記セパレータと、が繰り返し積層された構造を有し、前記正極集電体における前記第1面の反対側の第2面と、前記負極集電体における前記第1面の反対側の第2面とが接触している前記蓄電装置。
【0071】
(ロ)前記リン酸エステルは、リン酸トリエステルである前記蓄電装置。
【実施例0072】
以下に、上記実施形態をさらに具体化した実施例について説明する。
<試験1>
(液体電解質の調製)
フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートを体積比10:20:30:40で混合した母液を調製した。母液及びリン酸エステルを混合した混合溶媒中に1Mの濃度となるようにLiPF6を溶解させることにより試験例1~4及び試験例6の液体電解質を調製した。上記混合溶媒に用いたリン酸エステルの種類、及び上記混合溶媒における母液とリン酸エステルとの体積比は表1に示すとおりである。また、母液に1Mの濃度となるようにLiPF6を溶解させることにより、リン酸エステルを含有しない試験例5の液体電解質を調製した。
【0073】
(剥離試験)
縦15mm×横7cmの長方形状に切り出した厚さ15μmのアルミニウム箔、及び同形状の厚さ10μmの銅箔を用意した。アルミニウム箔の上に、縦15mm×横13.5mm長方形状のシール材をアルミニウム箔の端部に揃えるように配置した後、更にその上に、アルミニウム箔の端部に揃えるように銅箔を配置することにより積層体を得た。シール材としては、厚さ150μmの酸変性ポリプロピレンシートを用いた。
【0074】
次に、インパルス式シーラーを用いて積層体を220℃で10秒間、加熱することにより試験片と銅箔とがシール材により接着された測定サンプルを作製した。測定サンプル及び試験例1~6のいずれかの液体電解質2mlをアルミラミネート袋に入れ、これを真空封止した。
【0075】
測定サンプル及び液体電解質が収容されたアルミラミネート袋を250時間、60℃の高温環境下にて静置した後、アルミラミネート袋から測定サンプルを取り出した。取り出した測定サンプルを炭酸ジエチルで洗浄した後、風乾させた。乾燥した測定サンプルに対して、試験片と銅箔とを引き剥がす形式にて、180°ピール試験を室温で行うことにより、剥離強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0076】
(液漏れ試験)
縦150mm×横150mmの正方形状に切り出した厚さ15μmのアルミニウム箔、及び同形状の厚さ10μmの銅箔を用意した。アルミニウム箔の上に、縦150mm×横150mm×幅10mmの正方形枠状のシール材、及び銅箔を順に積層することにより積層体を得た。シール材としては、厚さ150μmの酸変性ポリプロピレンシートを用いた。
【0077】
次に、積層体の3辺における幅10mmの範囲を、インパルス式シーラーを用いて、シール材を構成する熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のピークトップ温度となるようにシール材を加熱することにより接着した。未接着の一辺側から積層体内に試験例1~6のいずれかの液体電解質3mlを加えた後、未接着の一辺を真空封止することにより測定サンプルを作製した。
【0078】
測定サンプルを45℃にて1日間、放置した。放置の前後において測定サンプルの質量を測定して、放置の前後における測定サンプルの質量差を算出した。そして、上記質量差が1g以上である場合を液漏れ有りと評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
表1に示すように、リン酸エステルを含有しない試験例5の液体電解質を用いた場合と比較して、リン酸エステルを含有する試験例1~4及び試験例6の液体電解質を用いた場合には、剥離強度が上昇した。特にリン酸エステルの配合割合が5~20体積%の試験例1~4は、リン酸エステルを含有しない試験例5の液体電解質を用いた場合と比較して、剥離強度が2倍以上に大きく上昇した。また、試験例5及び試験例6の液体電解質を用いた場合には、液漏れが発生したのに対して、試験例1~4の液体電解質を用いた場合には、液漏れは発生しなかった。そのため、液体電解質の液漏れを抑制する観点から、リン酸エステルの配合割合が2体積%以上である液体電解質を用いることが好ましいと考えられる。
【0080】
なお、試験例6の液体電解質を用いた場合には、液漏れが確認されたものの、リン酸エステルを含有しない試験例5の液体電解質を用いた場合と比較して、放置の前後における測定サンプルの質量差は小さい結果であった。そのため、試験例6の液体電解質についても、液漏れを抑制する効果として、液漏れが生じるまでの時間を遅らせる効果を有していると考えられる。
【0081】
<試験2>
(リチウムイオン二次電池の作製)
縦50mm×横50mmの正方形状に切り出した厚さ15μmのアルミニウム箔の片側の表面における中央の縦20mm×横20mmの範囲に、固形分13.8mgになるように正極合材を塗布した。塗布した正極合材を乾燥させることにより、正極集電体の片側の表面に正極活物質層が形成された正極を作製した。正極合材としては、LiFePO4、アセチレンブラック、ポリフッ化ビニリデンを固形分質量比90:5:5の割合で含有し、N-メチルピロリドンを溶媒とするスラリーを用いた。
【0082】
正極におけるアルミニウム箔の正極活物質層が形成されている表面の中央の縦40mm×横40mmの範囲に、正極活物質層を覆うように正方形状のセパレータを配置し、ホットメルト接着剤を用いてセパレータを正極に接着した。セパレータとしては、ポリオレフィン製の多孔質膜を用いた。
【0083】
縦50mm×横50mmの正方形状に切り出した厚さ10μmの銅箔の表面における中央の縦20mm×横20mmの範囲に、固形分6.24mgになるように負極合材を塗布した後、乾燥させることにより、銅箔の片側の表面に負極活物質層が形成された負極を作製した。負極合材としては、黒鉛、カルボキシメチルセルロース、及びスチレン-ブタジエンゴムを固形分質量比97:2.2:0.8の割合で含有し、水を溶媒とするスラリーを用いた。
【0084】
セパレータを接着させた正極の正極活物質層が形成されている表面の上に、縦50mm×横50mm×幅10mmの正方形枠状のシール材、及び負極活物質層を正極側に向けた負極を、周縁を揃えるように順に積層することにより積層体を得た。シール材としては、厚さ150μmの酸変性ポリプロピレンシートを用いた。
【0085】
次に、積層体の3辺における幅10mmの範囲を、インパルス式シーラーを用いて加熱することにより接着させた。未接着の一辺側から積層体内に試験例1~4のいずれかの液体電解質3mlを加えた後、未接着の一辺を真空封止することによりリチウムイオン二次電池を作製した。
【0086】
(電池特性の評価)
作製した各リチウムイオン二次電池について、電圧3.0~3.7Vの範囲で電流値0.2mAで充電容量を確認した。引き続いて、3.0Vまで放電した後に再び同電圧範囲で電流値0.8mAで充電容量を測定した。ここで得られた電流値0.8mAで確認された充電容量を電流値0.2mAで確認された充電容量で割る事でレート特性を算出した。その結果を表2に示す。
【0087】
【表2】
表2に示すように、リン酸エステルの配合割合が15体積%を超える試験例4の液体電解質を用いた場合と比較して、リン酸エステルの含有割合が5体積%又は10体積%である試験例1~3の液体電解質を用いた場合には、レート特性の数値が約2倍であった。
S…密閉空間、10…蓄電装置、20…蓄電セル、21…正極、21a…正極集電体、21b…正極活物質層、22…負極、22a…負極集電体、22b…負極活物質層、23…セパレータ、24…シール部、30…セルスタック、40…正極通電板、50…負極通電板。