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特開2022-43702ガスタービン燃焼器の多孔板、ガスタービン燃焼器及びガスタービン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043702
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器の多孔板、ガスタービン燃焼器及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/10 20060101AFI20220309BHJP
   F23R 3/26 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F23R3/10
F23R3/26 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149132
(22)【出願日】2020-09-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼山 剣太郎
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健太
(72)【発明者】
【氏名】大原 利信
(72)【発明者】
【氏名】小野 正樹
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ガスタービン燃焼器の内筒と外筒との間に設けられる整流板の変形や破損を抑制する。
【解決手段】少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器の多孔板100は、ガスタービン燃焼器の内筒47と外筒との間に設けられ、内筒の外周部に固定配置される多孔板である。多孔板は、複数の貫通孔110が設けられた孔配置エリア105のうち、内筒に近い側の領域は、外筒に近い側の領域と比べて、複数の貫通孔のうち隣り合う2つの孔の中心間距離で該2つの孔の外周縁間の距離を除したリガメント率の平均値が大きい。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン燃焼器の内筒と外筒との間に設けられ、前記内筒の外周部に固定配置される多孔板であって、
前記多孔板における複数の貫通孔が設けられた孔配置エリアのうち、前記内筒に近い側の領域は、前記外筒に近い側の領域と比べて、前記複数の貫通孔のうち隣り合う2つの孔の中心間距離で該2つの孔の外周縁間の距離を除したリガメント率の平均値が大きい
ガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項2】
前記多孔板は、前記孔配置エリアのうち、少なくとも一部の領域において、前記リガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有する
請求項1に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項3】
前記多孔板は、径方向に延びる支持部材を周方向に複数有し、
前記孔配置エリアは、隣り合う前記支持部材によって周方向に区画される部分円環状の領域であり、
前記多孔板は、前記一部の領域として、前記部分円環状の領域の周方向中央において前記径方向分布を有する
請求項2に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項4】
前記多孔板は、周方向の前記リガメント率の平均値である周方向リガメント率が前記一部の領域において前記径方向外側から前記径方向内側に向かって増大する
請求項2又は3に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項5】
前記径方向分布は、径方向位置の変化量に対する前記リガメント率の変化量の比が、径方向の第1範囲における第1比よりも、前記第1範囲よりも内側の径方向の第2範囲における第2比の方が大きい
請求項2乃至4の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項6】
前記径方向分布は、前記比が、前記径方向外側から前記径方向内側に向かうにつれて漸増する
請求項5に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項7】
前記孔配置エリアにおける前記複数の貫通孔の開口率は、45%以上70%以下である
請求項1乃至6の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項8】
前記複数の貫通孔は、周方向に隣り合うように配置され、且つ、径方向位置が互いに異なる一対の孔を有する
請求項1乃至7の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項9】
前記複数の貫通孔は、複数の第1孔と、前記第1孔の開口面積よりも大きい開口面積を有する少なくとも1つの第2孔と、を含み、
前記複数の第1孔の少なくとも一部の中心は、前記第2孔の開口縁の存在する周方向範囲内であって該開口縁よりも径方向内側及び該開口縁よりも径方向外側に存在する
請求項1乃至8の何れか一項に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第2孔の中心の径方向位置は、前記孔配置エリアの径方向内側端部の前記径方向位置を0%とし前記孔配置エリアの径方向外側端部の前記径方向位置を100%としたときに、25%以上75%以下の範囲に存在する
請求項9に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第2孔の孔径は、前記第1孔の孔径の2.0倍以上3.0倍以下である
請求項9又は10に記載のガスタービン燃焼器の多孔板。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の多孔板
を備えたガスタービン燃焼器。
【請求項13】
請求項12に記載のガスタービン燃焼器
を備えたガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービン燃焼器の多孔板、ガスタービン燃焼器及びガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器では、ガスタービン燃焼器内で空気の偏流を抑制するためにガスタービン燃焼器の内筒と外筒の間に整流板(パンチングメタル)を配置することがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-9262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記整流板をガスタービン燃焼器の内筒に溶接して固定した場合、運転時の燃焼振動によって上記整流板が振動し、上記整流板の内筒側の固定部分に作用する応力が大きくなる。そのため、上記整流板の変形や、上記整流板の孔同士が繋がるような破損が生じるおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、ガスタービン燃焼器の内筒と外筒との間に設けられる整流板の変形や破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器の多孔板は、
ガスタービン燃焼器の内筒と外筒との間に設けられ、前記内筒の外周部に固定配置される多孔板であって、
前記多孔板における複数の貫通孔が設けられた孔配置エリアのうち、前記内筒に近い側の領域は、前記外筒に近い側の領域と比べて、前記複数の貫通孔のうち隣り合う2つの孔の中心間距離で該2つの孔の外周縁間の距離を除したリガメント率の平均値が大きい。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器は、上記(1)の構成の多孔板を備える。
【0008】
(3)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービンは、上記(2)の構成のガスタービン燃焼器を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、ガスタービン燃焼器の内筒と外筒との間に設けられる整流板の変形や破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】幾つかの実施形態に係るガスタービンを示す概略構成図である。
図2】幾つかの実施形態に係る燃焼器を示す断面図である。
図3】幾つかの実施形態に係る燃焼器の要部を示す断面図である。
図4】空気通路の下流側から見た、幾つかの実施形態に係る内筒及び整流板についての斜視図である。
図5】幾つかの実施形態に係る内筒及び整流板についての、図3におけるA-A矢視図である。
図6】幾つかの実施形態に係る整流板の孔について説明するための図である。
図7A】リガメント率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図7B】リガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図8A】リガメント率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図8B】リガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図9A】リガメント率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図9B】リガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図10A】リガメント率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図10B】リガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例である。
図11】孔の大きさについての他の実施形態の一例を示す図である。
図12】孔の大きさについての他の実施形態の一例を示す図である。
図13】孔の大きさについての他の実施形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
(ガスタービン1について)
図1は、幾つかの実施形態に係るガスタービンを示す概略構成図である。
幾つかの実施形態に係るガスタービン燃焼器及びガスタービン燃焼器の多孔板の適用先の一例であるガスタービンについて、図1を参照して説明する。
【0013】
図1に示すように、幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、酸化剤としての圧縮空気を生成するための圧縮機2と、圧縮空気及び燃料を用いて燃焼ガスを発生させるためのガスタービン燃焼器4と、燃焼ガスによって回転駆動されるように構成されたタービン6と、を備える。発電用のガスタービン1の場合、タービン6には不図示の発電機が連結され、タービン6の回転エネルギーによって発電が行われるようになっている。以下の説明では、ガスタービン燃焼器4のことを単に燃焼器4とも称する。
【0014】
幾つかの実施形態に係るガスタービン1における各部位の具体的な構成例について説明する。
幾つかの実施形態に係る圧縮機2は、圧縮機車室10と、圧縮機車室10の入口側に設けられ、空気を取り込むための空気取入口12と、圧縮機車室10及び後述するタービン車室22を共に貫通するように設けられたロータ8と、圧縮機車室10内に配置された各種の翼と、を備える。各種の翼は、空気取入口12側に設けられた入口案内翼14と、圧縮機車室10側に固定された複数の静翼16と、静翼16に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼18と、を含む。なお、圧縮機2は、不図示の抽気室等の他の構成要素を備えていてもよい。このような圧縮機2において、空気取入口12から取り込まれた空気は、複数の静翼16及び複数の動翼18を通過して圧縮されることで高温高圧の圧縮空気となる。そして、高温高圧の圧縮空気は圧縮機2から後段の燃焼器4に送られる。
【0015】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4は、ケーシング20内に配置される。図1に示すように、燃焼器4は、ケーシング20内にロータ8を中心として環状に複数配置されていてもよい。燃焼器4には燃料と圧縮機2で生成された圧縮空気とが供給され、燃料を燃焼させることによって、タービン6の作動流体である燃焼ガスを発生させる。そして、燃焼ガスは燃焼器4から後段のタービン6に送られる。なお、幾つかの実施形態に係る燃焼器4の詳細な構成例については後述する。
【0016】
幾つかの実施形態に係るタービン6は、タービン車室22と、タービン車室22内に配置された各種の翼と、を備える。各種の翼は、タービン車室22側に固定された複数の静翼24と、静翼24に対して交互に配列されるようにロータ8に植設された複数の動翼26と、を含む。なお、タービン6は、出口案内翼等の他の構成要素を備えていてもよい。タービン6においては、燃焼ガスが複数の静翼24及ぶ複数の動翼26を通過することでロータ8が回転駆動する。これにより、ロータ8に連結された発電機が駆動されるようになっている。
タービン車室22の下流側には、排気車室28を介して排気室30が連結されている。タービン6を駆動した後の燃焼ガスは、排気車室28及び排気室30を介して外部へ排出される。
【0017】
(燃焼器4について)
図2は、幾つかの実施形態に係る燃焼器を示す断面図である。図3は、幾つかの実施形態に係る燃焼器の要部を示す断面図である。
図2及び図3を参照して、幾つかの実施形態に係る燃焼器4の詳細な構成について説明する。
【0018】
図2及び図3に示すように、幾つかの実施形態に係る燃焼器4は、ロータ8を中心として環状に複数配置されている(図1参照)。各燃焼器4は、ケーシング20により画定される燃焼器車室40に設けられた燃焼器ライナ46と、燃焼器ライナ46内にそれぞれ配置されたパイロット燃焼バーナ50及び複数の予混合燃焼バーナ(メイン燃焼バーナ)60と、を含む。燃焼器4は、ケーシング20の内部において燃焼器ライナ46の内筒47の外周側に設けられた外筒45をさらに含む。内筒47の外周側かつ外筒45の内周側には、圧縮空気が流れる空気通路43が形成される。
なお、燃焼器4は、燃焼ガスをバイパスさせるためのバイパス管(不図示)等の他の構成要素を備えていてもよい。
【0019】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、上記空気通路43に整流板100が配置されている。整流板100は、内筒47と外筒45との間に設けられ、内筒47の外周部に固定配置される多孔板であり、整流板100を貫通する複数の貫通孔(孔110)が配置されている。幾つかの実施形態に係る整流板100については、後で詳細に説明する。
【0020】
例えば、燃焼器ライナ46は、パイロット燃焼バーナ50及び複数の予混合燃焼バーナ60の周囲に配置される内筒47と、内筒47の先端部に連結された尾筒48と、を有している。
パイロット燃焼バーナ50は、燃焼器ライナ46の中心軸に沿って配置されている。そして、パイロット燃焼バーナ50を囲むように、複数の予混合燃焼バーナ60が互いに離間して配列されている。
パイロット燃焼バーナ50は、燃料ポート52に連結されたパイロットノズル(ノズル)54と、パイロットノズル54を囲むように配置されたパイロットコーン56と、パイロットノズル54の外周に設けられたスワラ58と、を有している。
予混合燃焼バーナ60は、燃料ポート62に連結されたメインノズル(ノズル)64と、ノズル64を囲むように配置されたバーナ筒66と、バーナ筒66と燃焼器ライナ46(例えば内筒47)をつなぐ延長管65と、ノズル64の外周に設けられたスワラ70と、を有している。
【0021】
上記構成を有する燃焼器4において、圧縮機2で生成された高温高圧の圧縮空気は車室入口42から燃焼器車室40内に供給され、さらに燃焼器車室40から空気通路43を経由してバーナ筒66内に流入する。なお、空気通路43を流れる圧縮空気は、整流板100に形成された複数の孔110を通過して整流される。そして、この圧縮空気と、燃料ポート62から供給された燃料とがバーナ筒66内で予混合される。この際、予混合気はスワラ70により主として旋回流を形成し、燃焼器ライナ46内に流れ込む。また、圧縮空気と、燃料ポート52を介してパイロット燃焼バーナ50から噴射された燃料とが燃焼器ライナ46内で混合され、図示しない種火により着火されて燃焼し、燃焼ガスが発生する。このとき、燃焼ガスの一部が火炎を伴って周囲に拡散することで、各予混合燃焼バーナ60から燃焼器ライナ46内に流れ込んだ予混合気に着火されて燃焼する。すなわち、パイロット燃焼バーナ50から噴射されたパイロット燃料によるパイロット火炎によって、予混合燃焼バーナ60からの予混合気(予混合燃料)の安定燃焼を行うための保炎を行うことができる。
【0022】
(整流板(多孔板)100について)
図4は、空気通路の下流側から見た、幾つかの実施形態に係る内筒及び整流板についての斜視図である。なお、図4では、後述する孔110の記載を省略している。
図5は、幾つかの実施形態に係る内筒及び整流板についての、図3におけるA-A矢視図である。
図6は、幾つかの実施形態に係る整流板の孔について説明するための図である。
以下の説明では、内筒47の中心軸AXを中心とする径方向を燃焼器4の径方向、又は、単に径方向と称する。また、以下の説明では、内筒47の中心軸AXを中心とする周方向を燃焼器4の周方向、又は、単に周方向と称する。
【0023】
幾つかの実施形態に係る整流板100は、空気通路43の入口部分に設けられ、空気通路43の上流側と下流側とを連通する孔110が多数形成された多孔板である。幾つかの実施形態に係る整流板100は、リング状の板部材であり、内筒47の周囲を囲むように構成されている。幾つかの実施形態に係る整流板100には、整流板100に対して空気通路43の下流側において整流板100を固定するためのリブ161が周方向に等間隔に設置されている。リブ161は、外筒45の内周面に対して対向配置されるリング部材163と、内筒47とに両端が接するように径方向に放射状に設けられている。以下の説明では、整流板100のことを多孔板100とも称する。
【0024】
幾つかの実施形態に係る多孔板100は、内筒47の外周部に例えば溶接によって接合されている。すなわち、幾つかの実施形態に係る多孔板100は、径方向内側の端部101が内筒47の外周面47bに溶接によって接合されている。
【0025】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、リブ161の径方向内側の端部161aは、内筒47の外周面47bに隅肉溶接によって接合されている。
幾つかの実施形態に係る燃焼器4では、リブ161の径方向外側の端部161bは、リング部材163の内周面163aに例えば隅肉溶接によって接合されている。
【0026】
幾つかの実施形態に係る多孔板100は、多孔板100の空気通路43の下流側に面した表面100dのうち、径方向外側の端部103近傍において、リブ161の端部161bとリング部材163の内周面163aとの隅肉溶接部165においてリブ161とリング部材163とに溶接によって接合されている。
【0027】
幾つかの実施形態に係る多孔板100のように、内筒47の外周部に固定配置されていると、ガスタービン1の運転時の燃焼振動によって、多孔板100の内筒47側の固定部分に対して多孔板100の外筒45側の領域が振れるように振動する。そのため、この振動によって多孔板100に作用する応力は、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる。したがって、このような多孔板100の振動が発生すると、多孔板100の内筒47側の固定部分に作用する応力が大きくなり、多孔板100の変形や、多孔板100の孔110同士が繋がるような破損が生じるおそれがある。
該応力を低減するためには、多孔板100における孔110の開口率(単位面積当たりの孔110の面積)を小さくして、孔110ではない領域の面積を増やすことが考えられる。しかし、一般的に整流板では、複数の孔を通過する空気の流量を確保する観点から、上記開口率を大きくすることが望ましい。
【0028】
そこで、幾つかの実施形態では、以下のように多孔板100を構成することで上述した課題の解決を図っている。すなわち、幾つかの実施形態では、複数の貫通孔(孔110)が設けられた孔配置エリア105のうち、内筒47に近い側の領域(内側領域108a)は、外筒45に近い側の領域(外側領域108b)と比べて、複数の貫通孔(孔110)のうち隣り合う2つの孔110の中心間距離P1で該2つの孔の外周縁109間の距離P2を除したリガメント率(P2/P1)の平均値が大きい。すなわち、幾つかの実施形態では、多孔板100は、複数の貫通孔(孔110)が設けられた孔配置エリア105のうち、内筒47に近い側の領域(内側領域108a)が外筒45に近い側の領域(外側領域108b)と比べて、リガメント率(P2/P1)の平均値が大きくなるように構成されている。
以下、上記構成について説明する。
【0029】
幾つかの実施形態に係る多孔板100では、上述したように複数のリブ161が放射状に配置されている。そのため、孔110を設けることができる領域は、図3のA-A矢視において、周方向で隣り合う2つのリブ161の間、且つ、内筒47の外周面47bとリング部材163の内周面163aとの間の領域となる。この部分円環状の領域を孔配置エリア105と称する(図6参照)。
孔配置エリア105のうち、内筒47に近い側の領域を内側領域108aとも称し、外筒45に近い側の領域を外側領域108bとも称する。
例えば図6において、図示左右方向に延在する2点鎖線の仮想線Lvよりも図示下方の領域を内側領域108aとしてもよく、仮想線Lvよりも図示上方の領域を外側領域108bとしてもよい。なお、内側領域108aと外側領域108bとは、仮想線Lvを挟んで接している必要はなく、内側領域108aと外側領域108bとが径方向に離間していてもよい。また、図6では、図示左右方向に延在する直線として仮想線Lvを図示しているが、仮想線Lvは曲線であってもよい。例えば、仮想線Lvは、内筒47の中心軸AXを中心とする円弧形状であってもよい。
【0030】
また、複数の孔110のうち隣り合う2つの孔110の中心間距離P1で、該2つの孔110の外周縁109間の距離P2を除した値(P2/P1)をリガメント率とする。したがって、リガメント率が大きくなるほど、隣り合う2つの孔110の中心間距離P1に対する該2つの孔110の外周縁109間の距離P2が大きくなるので、多孔板100の内、孔110ではない、枠に相当する部分が占める割合が大きくなる。そのため、リガメント率が大きくなるほど、孔110の開口率は小さくなるが孔110ではない領域の面積が増えて、多孔板100の強度が大きくなる。
【0031】
したがって、上述したように、内側領域108aの方が外側領域108bよりもリガメント率(P2/P1)の平均値が大きくなるように多孔板100を構成することで、内側領域108aの方が外側領域108bよりも多孔板100の単位面積当たりの孔110ではない領域の面積の割合が大きくなるので、多孔板100の強度が向上する。これにより、孔110の開口率に与える影響を抑制しつつ、上述したように径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる傾向にある多孔板100の応力を効果的に緩和できる。
【0032】
幾つかの実施形態では、多孔板100は、孔配置エリア105のうち、少なくとも一部の領域において、リガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有するとよい。
これにより、孔配置エリア105のうち少なくとも上記一部の領域において、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、多孔板100の単位面積当たりの孔110ではない領域の面積の割合が大きくなるので、多孔板100の強度が向上する。したがって、孔110の開口率に与える影響を抑制しつつ、上述したように径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる傾向にある多孔板100の応力を効果的に緩和できる。
【0033】
幾つかの実施形態では、多孔板100は、径方向に延びる支持部材(リブ161)を周方向に複数有する。孔配置エリア105は、隣り合う支持部材(リブ161)によって周方向に区画される部分円環状の領域である。多孔板100は、孔配置エリア105のうち少なくとも一部の領域として、上記部分円環状の領域(孔配置エリア105)の周方向中央においてリガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有するとよい。
これにより、孔配置エリア105のうち少なくとも周方向中央において、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、多孔板100の単位面積当たりの孔110ではない領域の面積の割合が大きくなるので、多孔板100の強度が向上する。したがって、孔110の開口率に与える影響を抑制しつつ、上述したように径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる傾向にある多孔板100の応力を効果的に緩和できる。
【0034】
なお、幾つかの実施形態では、複数の貫通孔(孔110)が配置された部分円環状の孔配置エリア105のうち少なくとも周方向中央領域107において、リガメント率(P2/P1)が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有するように多孔板100を構成してもよい。
これにより、孔配置エリア105のうち少なくとも周方向中央領域107において、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、多孔板100の単位面積当たりの孔110ではない領域の面積の割合が大きくなるので、多孔板100の強度が向上する。これにより、孔110の開口率に与える影響を抑制しつつ、上述したように径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる傾向にある多孔板100の応力を効果的に緩和できる。
【0035】
なお、図6に示す実施形態では、孔配置エリア105において、各孔110は、図示左右方向に直線状に並んだ孔110の列が図示上下方向に複数段配置されている。
より具体的には、図6に示す実施形態では、図示左右方向は、内筒47の中心軸AXを中心とする不図示の仮想円の接線の内、孔配置エリア105の周方向の中央位置での接線の延在方向(接線方向)と一致する。すなわち、図6に示す実施形態では、各孔110は、該接線方向に並んでいる。
そして、図6に示す実施形態では、複数段の孔110の列の内の図示下側の3段の列におけるリガメント率は、複数段の孔110の列の内の図示上側の4段の列におけるリガメント率よりも大きくなるように構成されている。
【0036】
例えば図6に示す実施形態において、破線で囲んだ円内に存在する3つの孔110の内、上記接線方向に並んだ2つの孔110うちの図示左側の孔110を左孔110Lと称し、上記接線方向に並んだ2つの孔110うちの図示右側の孔110を右孔110Rと称する。また、破線で囲んだ円内に存在する3つの孔110の内、上記接線方向に並んだ2つの孔110の図示上側の孔110を上孔110Uと称する。
破線で囲んだ円内に存在する3つの孔110について、左孔110Lと右孔110Rとについてのリガメント率(P2a/P1a)と、左孔110Lと上孔110Uとについてのリガメント率(P2b/P1b)と、右孔110Rと上孔110Uとについてのリガメント率(P2c/P1c)とは、同じであってもよい。
また、上記三つのリガメント率について、一つのリガメント率が他の二つのリガメント率と異なっていてもよく、三つのリガメント率がすべて異なっていてもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、多孔板100は、周方向のリガメント率の平均値である周方向リガメント率が孔配置エリア105のうち少なくとも一部の領域において径方向外側から径方向内側に向かって増大するとよい。
これにより、上記一部の領域において径方向外側から径方向内側に向かうにつれて孔110ではない領域の面積が大きくなり、多孔板100の強度が向上する。
【0038】
幾つかの実施形態では、多孔板100は、周方向におけるリガメント率の平均値である周方向リガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大するとよい。
これにより、多孔板100における周方向の一部の領域において、仮にリガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって減少する場合であっても、周方向全体では、リガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大することとなる。これにより、周方向全体にわたって径方向外側から径方向内側に向かうにつれて孔110ではない領域の面積が大きくなり、多孔板100の強度が向上する。
【0039】
図7Aは、リガメント率の径方向分布を示すグラフの一例であり、例えば図6に示す実施形態におけるリガメント率の径方向分布を示している。図7Aに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率をとっている。
図7Bは、図7Aに示すグラフにおけるリガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例であり、例えば図6に示す実施形態におけるリガメント率の増加率の径方向分布を示している。図7Bに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率の増加率をとっている。
ここで、リガメント率の増加率とは、径方向位置の変化量に対するリガメント率の変化量の比である。より具体的には、リガメント率の増加率とは、径方向位置の径方向内側への変化量に対するリガメント率の増加量の比である。
なお、図7A及び図7Bに示すグラフ、及び、後述する各グラフでは、孔配置エリア105(図6参照)の径方向内側端部105aの径方向位置を0%とし、孔配置エリア105の径方向外側端部105bの径方向位置を100%としている。
【0040】
図7Aに示すように、例えば図6に示す実施形態では、径方向のある境界位置を境に径方向内側と径方向外側とでは、リガメント率が異なっているが、該境界位置よりも径方向内側の領域内では、径方向に位置によらずリガメント率が一定である。同様に、該境界位置よりも径方向外側の領域内では、径方向に位置によらずリガメント率が一定である。
【0041】
図7Bに示すように、例えば図6に示す実施形態では、リガメント率の増加率は、上記境界位置において正の比較的大きな値となるが、その他の径方向位置では、その値は0となる。
【0042】
図8Aは、リガメント率の径方向分布を示すグラフの他の一例である。図8Aに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率をとっている。
図8Bは、図8Aに示すグラフにおけるリガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例である。図8Bに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率の増加率をとっている。
【0043】
例えば、図8Aに示すグラフでは、リガメント率は、径方向内側に向かうにつれて直線的に増加している。すなわち、図8Aに示すグラフでは、図8Bに示すように、リガメント率の増加率は、径方向に位置によらず正の一定の値である。
【0044】
図9Aは、リガメント率の径方向分布を示すグラフの他の一例である。図9Aに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率をとっている。
図9Bは、図9Aに示すグラフにおけるリガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例である。図9Bに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率の増加率をとっている。
【0045】
例えば、図9Aに示すグラフにおいて、細線及び太線で示したグラフ線のそれぞれでは、径方向内側に向かうにつれてリガメント率が増加し、且つ、その増加割合も径方向内側に向かうにつれて増加している。
図9Aにおいて、細線で示したグラフ線は、例えば図9Bにおいて細い実線で示したようにリガメント率の増加率が径方向内側に向かうにつれて直線的に増加している場合のグラフ線である。
図9Aにおいて、太線で示したグラフ線は、例えば図9Bにおいて太い実線のグラフ線のようにリガメント率の増加率が径方向内側に向かうにつれてリガメント率の増加率が増加し、且つ、その増加割合も径方向内側に向かうにつれて増加している場合のグラフ線である。
なお、リガメント率の増加率は、例えば図9Bにおける破線や一点鎖線で示したグラフ線のように、径方向内側に向かうにつれて単調に増加するのではなく、径方向のある領域において径方向の位置によらず一定であってもよい。
【0046】
図10Aは、リガメント率の径方向分布を示すグラフの他の一例である。図10Aに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率をとっている。
図10Bは、図10Aに示すグラフにおけるリガメント率の増加率の径方向分布を示すグラフの一例である。図10Bに示すグラフでは、横軸に径方向位置をとり、縦軸にリガメント率の増加率をとっている。
【0047】
例えば、図10Aに示すように、リガメント率は、径方向内側に向かうにつれて増加するが、その増加割合が径方向内側に向かうにつれて減少していてもよい。
例えば、図10Bに示すように、リガメント率の増加率は、正の値をとりつつも、径方向内側に向かうにつれて減少していてもよい。
【0048】
なお、リガメント率の増加率、すなわち径方向位置の変化量Δdに対するリガメント率の変化量Δrの比(Δr/Δd)は、例えば図9Bの各グラフ線に示すように、径方向の第1範囲R1における第1比よりも、第1範囲R1よりも内側の径方向の第2範囲R2における第2比の方が大きいとよい。
これにより、比較的径方向外側の領域(例えば第1範囲R1)よりも比較的径方向内側の領域(例えば第2範囲R2)の方が、上記比(リガメント率の増加率)が大きくなる。したがって、比較的径方向外側の領域おいて、上記開口率を確保して複数の孔110を通過する空気の流量を確保しつつ、比較的径方向内側の領域において、多孔板100の強度を向上できる。
【0049】
また、リガメント率の増加率、すなわち径方向位置の変化量Δdに対するリガメント率の変化量Δrの比(Δr/Δd)は、例えば図9Bの実線のグラフ線で示すように、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて漸増するとよい。
これにより、径方向内側に近づくにつれて、上記比が大きくなる。したがって、比較的径方向外側の領域おいて、上記開口率を確保して複数の孔110を通過する空気の流量を確保しつつ、比較的径方向内側の領域において、多孔板100の強度を向上できる。
なお、リガメント率の増加率は、少なくとも周方向中央領域107において、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて漸増するとよい。
【0050】
なお、孔配置エリア105(図6参照)の径方向内側端部105aの径方向位置を0%とし、孔配置エリア105の径方向外側端部105bの径方向位置を100%としたときに、幾つかの実施形態におけるリガメント率は、以下の値であってもよい。
例えば、孔配置エリア105における径方向位置が0%以上50%以下範囲内では、リガメント率は0.10以上であるとよい。
例えば、孔配置エリア105における径方向位置が0%以上25%以下範囲内では、リガメント率は0.11以上であるとよい。
例えば、孔配置エリア105における径方向位置が0%以上12.5%以下範囲内では、リガメント率は0.15以上であるとよい。
【0051】
(開口率について)
以下の説明では、多孔板100における孔110の開口率、より具体的には、孔配置エリア105における複数の孔110の開口率は、孔配置エリア105の単位面積当たりの複数の孔110の面積の合計を百分率で表した値とする。
幾つかの実施形態では、孔配置エリア105における複数の孔110の開口率は、45%以上70%以下であるとよい。
上記開口率が45%未満であると、複数の孔110を通過する空気の流量、すなわち燃焼器4において必要とされる空気量の確保に支障をきたすおそれがある。また、上記開口率が70%を超えると、多孔板100の強度に支障をきたすおそれがある。
したがって、上記開口率を45%以上70%以下とすることで、複数の孔110を通過する空気の流量を確保しつつ、多孔板100の強度を確保できる。
【0052】
(孔110の並びについて)
例えば、図6に示すように、幾つかの実施形態において、各孔110は、周方向に隣り合う2つの孔110の径方向位置が同じになるのではなく、図示左右方向に直線状に並んだ孔110の列が図示上下方向に複数段配置されていてもよい。すなわち、例えば、図6に示すように、幾つかの実施形態において、複数の孔110は、周方向に隣り合うように配置され、且つ、径方向位置が互いに異なる一対の孔110を有していてもよい。
これにより、孔110の配置密度を比較的大きくすることができ、複数の孔110を通過する空気の流量を確保できる。
【0053】
(孔110の形状について)
例えば、図6に示すように、幾つかの実施形態において、少なくとも周方向中央領域107において、複数の孔110は、丸孔であるとよい。
各孔110が丸孔であれば、各孔110が角孔等である場合と比べて加工が容易である。
【0054】
(孔110の大きさについて)
図11は、孔110の大きさについての他の実施形態の一例を示す図である。
幾つかの実施形態に係る多孔板100では、例えば、図11に示すように、複数の孔110は、複数の第1孔111と、第1孔111の開口面積よりも大きい開口面積を有する少なくとも1つの第2孔112と、を含んでいてもよい。
例えば、図11に示す実施形態では、孔配置エリア105(図6参照)内に図示左右方向に直線状に並んだ第2孔112の列が図示上下方向に2段配置されている。径方向内側の列における第2孔112の数は、例えば2つであり、径方向外側の列における第2孔112の数は、例えば4つである。
なお、隣り合う2つの孔110の一方が第1孔111であり、他方が第2孔112となる場合であっても、これら2つの孔111、112に係るリガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有するとよい。
【0055】
例えば、図11に示す実施形態のように、複数の第1孔111の少なくとも一部の中心C1は、第2孔112の開口縁(外周縁109)の存在する周方向範囲141内であって外周縁109よりも径方向内側及び外周縁109よりも径方向外側に存在するとよい。
一般的に開口面積が比較的小さな孔を通過した空気流の方が開口面積が比較的大きな孔を通過した空気流に比べて、孔から流出した後に、空気流の径方向の中心領域の速度が維持され易い。したがって、例えば図11に示す実施形態によれば、第2孔112に対して該第2孔112の径方向外側及び径方向内側に該第2孔112よりも開口面積が小さな第1孔111が配置されることとなるので、第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との流速の差(圧力の差)が大きくなり2次流れが発生する。そのため、第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が促進され、燃焼器4内で空気の偏流を抑制できる。
【0056】
例えば、少なくとも1つの第2孔112の中心C2の径方向位置は、孔配置エリア105(図6参照)の径方向内側端部105aの径方向位置を0%とし孔配置エリア105の径方向外側端部105bの径方向位置を100%としたときに、25%以上75%以下の範囲に存在するとよい。
少なくとも1つの第2孔112の中心C2の径方向位置が上記範囲から外れた場合、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が不十分となるおそれがある。
したがって、少なくとも1つの第2孔112の中心C2の径方向位置が上記範囲に存在するように構成すれば、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が促進され、燃焼器4内で空気の偏流を抑制できる。
【0057】
例えば、少なくとも1つの第2孔112の孔径は、第1孔111の孔径の2.0倍以上3.0倍以下であるとよい。
第2孔112の孔径が第1孔111の孔径の2.0倍未満であると、第2孔112の孔径と第1孔111の孔径との差が小さく、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が不十分となるおそれがある。
また、第2孔112の孔径が第1孔111の孔径の3.0倍超えると、第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との流速の差(圧力の差)がより大きくなるため、発生する2次流れによる圧損が大きくなり、この圧損の影響を無視できなくなる。
したがって、少なくとも1つの第2孔112の孔径が第1孔111の孔径の2.0倍以上3.0倍以下となるように構成すれば、2次流れによる圧損の影響を抑制しつつ、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合を促進できる。
【0058】
図12は、孔110の大きさについての他の実施形態の一例を示す図である。
図13は、孔110の大きさについての他の実施形態の一例を示す図である。
幾つかの実施形態に係る多孔板100では、例えば、図12に示すように、複数の孔110は、複数の第1孔111と、第1孔111の開口面積よりも大きい開口面積を有する少なくとも1つの第2孔112と、第1孔111の開口面積よりも小さい開口面積を有する少なくとも1つの第3孔113とを含んでいてもよい。
幾つかの実施形態に係る多孔板100では、例えば、図13に示すように、複数の孔110は、複数の第1孔111と、第1孔111の開口面積よりも小さい開口面積を有する少なくとも1つの第3孔113とを含んでいてもよい。
第3孔の孔径は、例えば、第1孔の孔径の0.3倍以上0.8倍以下であってもよい。
【0059】
なお、例えば図12に示すように、第3孔113は、図11に示す多孔板100において、第1孔111及び第2孔112が存在していない領域に設けるとよい。また、例えば図13に示すように、第3孔113は、図6に示す多孔板100において第1孔111が存在していない領域に設けるとよい。これにより、多孔板100における開口面積を増やすことができ、多孔板100を通過する圧縮空気の流量を増やすことができる。
【0060】
なお、隣り合う2つの孔110の一方が第1孔111であり、他方が第3孔113となる場合であっても、これら2つの孔111、113に係るリガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有するとよい。
同様に、隣り合う2つの孔110の一方が第2孔112であり、他方が第3孔113となる場合であっても、これら2つの孔112、113に係るリガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有するとよい。
【0061】
幾つかの実施形態に係る燃焼器4は、上述した何れかの実施形態に係る多孔板100を備える。これにより、多孔板100を通過する空気量を確保しつつ、多孔板100の耐久性を向上させた燃焼器4を実現できる。
【0062】
幾つかの実施形態に係るガスタービン1は、上述した燃焼器4を備える。これにより、ガスタービン1の信頼性を向上できる。
【0063】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した幾つかの実施形態に係る各孔110は、内筒47の中心軸AXを中心とする周方向に配置されていてもよいし、ランダムに配置されていてもよい。
【0064】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器4の多孔板100は、ガスタービン燃焼器4の内筒47と外筒45との間に設けられ、内筒47の外周部に固定配置される多孔板100である。多孔板100における複数の貫通孔(孔110)が設けられた孔配置エリア105のうち、内筒47に近い側の領域(内側領域108a)は、外筒45に近い側の領域(外側領域108b)と比べて、複数の貫通孔(孔110)のうち隣り合う2つの孔110の中心間距離P1で該2つの孔の外周縁109間の距離P2を除したリガメント率の平均値が大きい。
【0065】
上記(1)の構成によれば、孔配置エリア105において、内筒47に近い側の領域(内側領域108a)の方が外筒45に近い側の領域(外側領域108b)よりも多孔板100の単位面積当たりの孔110ではない領域の面積の割合が大きくなるので、多孔板100の強度が向上する。これにより、孔110の開口率に与える影響を抑制しつつ、上述したように径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる傾向にある多孔板100の応力を効果的に緩和できる。
【0066】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、多孔板100は、孔配置エリア105のうち、少なくとも一部の領域において、リガメント率が径方向外側から径方向内側に向かって増大する径方向分布を有するとよい。
【0067】
上記(2)の構成によれば、孔配置エリア105のうち少なくとも上記一部の領域において、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、多孔板100の単位面積当たりの孔110ではない領域の面積の割合が大きくなるので、多孔板100の強度が向上する。これにより、孔110の開口率に与える影響を抑制しつつ、上述したように径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる傾向にある多孔板100の応力を効果的に緩和できる。
【0068】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、多孔板100は、径方向に延びる支持部材(リブ161)を周方向に複数有する。孔配置エリア105は、隣り合う支持部材(リブ161)によって周方向に区画される部分円環状の領域である。多孔板100は、上記一部の領域として、上記部分円環状の領域の周方向中央において上記径方向分布を有するとよい。
【0069】
上記(3)の構成によれば、孔配置エリア105のうち少なくとも周方向中央において、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて、多孔板100の単位面積当たりの孔110ではない領域の面積の割合が大きくなるので、多孔板100の強度が向上する。これにより、孔110の開口率に与える影響を抑制しつつ、上述したように径方向外側から径方向内側に向かうにつれて大きくなる傾向にある多孔板100の応力を効果的に緩和できる。
【0070】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、多孔板100は、周方向のリガメント率の平均値である周方向リガメント率が孔配置エリア105のうち少なくとも一部の領域において径方向外側から径方向内側に向かって増大するとよい。
【0071】
上記(4)の構成によれば、上記一部の領域において径方向外側から径方向内側に向かうにつれて孔110ではない領域の面積が大きくなり、多孔板100の強度が向上する。
【0072】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)乃至(4)の何れかの構成において、上記径方向分布は、径方向位置の変化量Δdに対するリガメント率の変化量Δrの比(Δr/Δd)が、径方向の第1範囲R1における第1比よりも、第1範囲R1よりも内側の径方向の第2範囲R2における第2比の方が大きいとよい。
【0073】
上記(5)の構成によれば、比較的径方向外側の領域よりも比較的径方向内側の領域の方が、上記比(Δr/Δd)が大きくなる。これにより、比較的径方向外側の領域おいて、上記開口率を確保して複数の孔110を通過する空気の流量を確保しつつ、比較的径方向内側の領域において、多孔板100の強度を向上できる。
【0074】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、上記径方向分布は、上記比(Δr/Δd)が、径方向外側から径方向内側に向かうにつれて漸増するとよい。
【0075】
上記(6)の構成によれば、径方向内側に近づくにつれて、上記比(Δr/Δd)が大きくなる。これにより、比較的径方向外側の領域おいて、上記開口率を確保して複数の孔110を通過する空気の流量を確保しつつ、比較的径方向内側の領域において、多孔板100の強度を向上できる。
【0076】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、孔配置エリア105における複数の貫通孔(孔110)の開口率は、45%以上70%以下であるとよい。
【0077】
上記開口率が45%未満であると、複数の孔110を通過する空気の流量、すなわち燃焼器4において必要とされる空気量の確保に支障をきたすおそれがある。また、上記開口率が70%を超えると、多孔板100の強度に支障をきたすおそれがある。
上記(7)の構成によれば、複数の孔110を通過する空気の流量を確保しつつ、多孔板100の強度を確保できる。
【0078】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、複数の貫通孔(孔110)は、周方向に隣り合うように配置され、且つ、径方向位置が互いに異なる一対の孔110を有するとよい。
【0079】
上記(8)の構成によれば、孔110の配置密度を比較的大きくすることができ、複数の孔110を通過する空気の流量を確保できる。
【0080】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、複数の貫通孔(孔110)は、複数の第1孔111と、第1孔111の開口面積よりも大きい開口面積を有する少なくとも1つの第2孔112と、を含むとよい。複数の第1孔111の少なくとも一部の中心C1は、第2孔112の開口縁(外周縁109)の存在する周方向範囲141内であって該開口縁(外周縁109)よりも径方向内側及び該開口縁(外周縁109)よりも径方向外側に存在するとよい。
【0081】
一般的に開口面積が比較的小さな孔を通過した空気流の方が開口面積が比較的大きな孔を通過した空気流に比べて、孔から流出した後に、空気流の径方向の中心領域の速度が維持され易い。上記(9)の構成によれば、第2孔112に対して該第2孔112の径方向外側及び径方向内側に該第2孔112よりも開口面積が小さな第1孔111が配置されることとなるので、第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との流速の差(圧力の差)が大きくなり2次流れが発生する。そのため、第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が促進され、燃焼器4内で空気の偏流を抑制できる。
【0082】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、少なくとも1つの第2孔112の中心C2の径方向位置は、孔配置エリア105の径方向内側端部105aの径方向位置を0%とし孔配置エリア105の径方向外側端部105bの径方向位置を100%としたときに、25%以上75%以下の範囲に存在するとよい。
【0083】
少なくとも1つの第2孔112の中心C2の径方向位置が上記範囲から外れた場合、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が不十分となるおそれがある。
上記(10)の構成によれば、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が促進され、燃焼器4内で空気の偏流を抑制できる。
【0084】
(11)幾つかの実施形態では、上記(9)又は(10)の構成において、少なくとも1つの第2孔112の孔径は、第1孔111の孔径の2.0倍以上3.0倍以下であるとよい。
【0085】
第2孔112の孔径が第1孔111の孔径の2.0倍未満であると、第2孔112の孔径と第1孔111の孔径との差が小さく、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合が不十分となるおそれがある。
また、第2孔112の孔径が第1孔111の孔径の3.0倍超えると、第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との流速の差(圧力の差)がより大きくなるため、発生する2次流れによる圧損が大きくなり、この圧損の影響を無視できなくなる。
上記(11)の構成によれば、2次流れによる圧損の影響を抑制しつつ、上述したような第1孔111を通過した空気と第2孔112を通過した空気との混合を促進できる。
【0086】
(12)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン燃焼器4は、上記(1)乃至(11)の何れかの構成の多孔板100を備える。
【0087】
上記(12)の構成によれば、多孔板100を通過する空気量を確保しつつ、多孔板100の耐久性を向上させたガスタービン燃焼器4を実現できる。
【0088】
(13)本開示の少なくとも一実施形態に係るガスタービン1は、上記(12)の構成のガスタービン燃焼器4を備える。
【0089】
上記(13)の構成によれば、ガスタービン1の信頼性を向上できる。
【符号の説明】
【0090】
1 ガスタービン
4 ガスタービン燃焼器(燃焼器)
43 空気通路
45 外筒
46 燃焼器ライナ
47 内筒
100 整流板(多孔板)
105 孔配置エリア
107 周方向中央領域
110 貫通孔(孔)
111 第1孔
112 第2孔
113 第3孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13