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特開2022-43722Sn-In系低融点接合部材およびその製造方法ならびに半導体電子回路およびその実装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043722
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】Sn-In系低融点接合部材およびその製造方法ならびに半導体電子回路およびその実装方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220309BHJP
   B23K 35/26 20060101ALI20220309BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20220309BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20220309BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
H01L21/92 603B
B23K35/26 310A
C22C13/00
C22C28/00 B
B23K35/26 310D
B23K35/14 Z
H01L21/92 604B
H01L21/60 311Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149167
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】594146179
【氏名又は名称】株式会社新菱
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】西 弘敏
(72)【発明者】
【氏名】沢井 毅
(72)【発明者】
【氏名】城川 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾前 聡一朗
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044LL01
5F044LL05
5F044QQ03
5F044QQ04
5F044QQ05
(57)【要約】
【課題】半導体部品の実装において、Pbフリーの導電性接合方法に用いられ、低温接合ができるSn-In系低融点接合部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともSnめっきおよびInめっきを含むめっき処理を行い、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を、被めっき物上に形成するめっき工程を有するSn-In系低融点接合部材の製造方法。SnとInを含むSnIn層を含み、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材およびこれを加熱させてなるSn-In系低融点接合部材。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともSnめっきおよびInめっきを含むめっき処理を行い、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を、被めっき物上に形成するめっき工程を有するSn-In系低融点接合部材の製造方法。
【請求項2】
前記被めっき物が、その表面に、Ti、Ni、Cu、Au、Sn、Ag、Cr、Pd、Pt、W、Co、TiW、NiP、NiB、NiCo、およびNiVからなる群から選択される1以上を含むアンダーメタルの層を有し、
前記めっき工程において、前記アンダーメタルの層の上に前記積層めっき層を形成する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記めっき工程において、Snめっきを行った後にInめっきを行い、前記積層めっき層を形成させる請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記積層めっき層が、Ag、Cu、Ni、Zn、およびSbからなる群から選択される1以上の混合成分を含み、
前記積層めっき層に対する前記混合成分の合計質量が0.001質量%以上3.0質量%以下である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記被めっき物が、大きさが1mm以下である、微小金属ボール、導電性の金属の被覆層を有する微小樹脂ボール、はんだ合金の被覆層を有する微小樹脂ボール、および微小ピン部材からなる群から選択されるいずれかの微小コア部材であり、
前記めっき工程おいて、前記微小コア部材が前記積層めっき層で被覆された微小部材を製造する請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
導電性接合部の上に配置された請求項1~5のいずれかに記載の製造方法で製造された低融点接合部材を、加熱リフローしてバンプを形成するSn-In系低融点接合部材の製造方法。
【請求項7】
配線基板と、半導体チップ表面との間に配置された請求項1~6のいずれかに記載の製造方法により製造されたSn-In系低融点接合部材を、137~140℃で加熱リフローして、前記配線基板と前記半導体チップを接合する半導体電子回路の実装方法。
【請求項8】
SnとInを含むSnIn層を含み、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材。
【請求項9】
Ti、Ni、Cu、Au、Sn、Ag、Cr、Pd、Pt、W、Co、TiW、NiP、NiB、NiCo、およびNiVからなる群から選択される1以上を含むアンダーメタルの層の上に、前記積層めっき層が形成された請求項8に記載のSn-In系低融点接合部材。
【請求項10】
前記積層めっき層が、Ag、Cu、Ni、Zn、およびSbからなる群から選択される1以上の混合成分を含み、
前記積層めっき層に対する前記混合成分の合計質量が0.001質量%以上3.0質量%以下である請求項8または9に記載のSn-In系低融点接合部材。
【請求項11】
大きさが1mm以下である、微小金属ボール、導電性の金属の被覆層を有する微小樹脂ボール、はんだ合金の被覆層を有する微小樹脂ボール、および微小ピン部材からなる群から選択されるいずれかの微小コア部材が前記積層めっき層で被覆された微小部材を有する請求項8~10のいずれかに記載のSn-In系低融点接合部材。
【請求項12】
請求項8~11のいずれかに記載のSn-In系低融点接合部材を加熱リフローさせてなるSn-In系低融点接合部材。
【請求項13】
請求項8~12のいずれかに記載のSn-In系低融点接合部材を有することを特徴とする半導体電子回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体実装時の鉛フリーはんだ材料に関し、特に低温領域で使用可能なSn-In系低融点接合部材およびその製造方法に関する。また、これらを用いた半導体電子回路およびその実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RoHS規制等により環境への有害物質に対する規制がますます厳しくなってきており、半導体チップを含む電子部品をプリント配線板(PWB)に接合する目的で使用されるはんだ合金も規制対象になる。これらのはんだ成分には古くから主成分として鉛(Pb)が使用されてきたため、鉛を含まないはんだ合金(以下、「Pbフリーはんだ合金」とも称する)の開発が活発に行われている。
【0003】
電子部品をプリント配線板に接合する際に使用するはんだ合金等の導電性接合材料は、その使用限界温度によって高温用(約260℃~400℃)と中低温用(約140℃~230℃)とに大別される。その中で、低温用のはんだ合金は、一般的に、Pb-63Snの共晶合金の融点183℃よりも融点が低いはんだ合金を指すものとされている。
【0004】
しかしながら、最近は電子部品の中には、フレキシブル性を有する樹脂基板や圧電セラミックスのPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)基板などの耐熱性が非常に低く、高温に晒されるとその機能が劣化したり破壊されたりするものがある。そのような電子部品の実装時の接合温度は140℃以下の低温ではんだ付けする必要があるため、より融点の低い低温用のはんだ合金が求められている。
【0005】
また、集積回路はCMOS技術の微細化による機能あたりのコスト低減が進められ、実装工程でも最近は微細化チップをパッケージレベルで集積して単位面積当たりの多チップ化、多層化、複合化による高集積化が進んでいる。実装での接合方法もリード線からはんだボール、はんだバンプ接合へ進展しており、実装時のはんだ接合の簡便性、低コスト化が望まれている。
【0006】
従来、Pbフリーはんだとしては、Sn-3.5Ag(融点=221℃)やSn-0.7Cu(融点=227℃)、Sn-Ag-Cu(融点=217℃)などが使用されている。しかしながら、これらのはんだ合金は融点が200℃以上と高く、半導体実装時のはんだ付け温度140℃以下での使用は困難である。
【0007】
Pbフリーの低温用はんだ合金としては、特許文献1には、Sn37~47質量%、Ag0.1質量%以上1.0質量%未満、Biが残部の低温接合用はんだ合金が記載されている。
【0008】
特許文献2には、Sn40質量%、Bi55質量%、In5質量%とからなるはんだ合金や、Sn34質量%、Bi46質量%、In20質量%とからなるはんだ合金が記載されている。また、前記はんだ合金を、球体形成としたはんだ粉末や、はんだペースト、これらを用いたはんだ付け方法などが記載されている。
【0009】
特許文献3には、まず第1層の錫/インジウム層をめっきし、次にこの錫/インジウム層の上に第2層の光沢錫/ビスマス層をめっきし、続いて第1及び第2めっき層をリフローするSn-In-Biはんだ合金めっき層の形成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3347512号公報
【特許文献2】特許第3224185号公報
【特許文献3】特開2001-219267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1記載のSn-Bi-Ag系はんだ合金は、融点が137~139℃である。実装時の接合温度は融点+20℃程度必要な場合が多いため、実装時の接合温度が157℃以上は必要で140℃以下では接合できない。
【0012】
特許文献2記載のSn-Bi-In系はんだ合金については、融点が117~139℃であり、実装時の接合温度ははんだ合金の融点より20℃程度、高い温度で行われるのが通常のため、少なくても137~159℃は必要となる。当該はんだ合金は一部分の限られた組成を選択すれば140℃以下での接合が可能な範囲が含まれる。しかしながら、当該はんだ合金はSn-Bi-Inの3種類の金属を配合して、電気炉(400℃)で加熱溶融して作製した物を用いており「金属の配合→加熱溶融」の工程およびはんだ材料とするために次工程として「粉砕→はんだペースト化」の工程を必要とするため生産性に乏しい。なお、当該はんだ合金を被めっき物の表面にめっき加工処理したことのみが記載されているが、そのめっき処理の詳細は示されていない。
【0013】
特許文献3記載のめっき方法で得られるSn-In-Biはんだ合金めっき層は、Biが10質量%以下、Inが20質量%以下、残部がSnの組成で、融点が180~220℃のため、リフロー温度が260℃程度と非常に高く、実装時の接合温度が140℃以下では接合することができない。
【0014】
また、スマートフォンやセンサー類の高機能化需要に向けてフレキシブル基板やストレッチャブル基板に使用される樹脂基板、圧電素子CdTe半導体素子、CCD素子、フォログラム素子などの耐熱性の低い配線基板や電子素子の需要増が予想されており、これに伴い実装工程で低温接合(140℃以下)できる導電性接合材料およびその接合方法の開発が求められている。
【0015】
更に、これらの導電性接合材料を用いた電子製品は、通常の使用環境下では、季節変動、屋内外、電子製品の作動による自己発熱などによって60~80℃程度まで温度上昇しうることを考慮すると、接合材料の融点が80℃以下だと接合強度の低下などの耐久性に問題が生じる可能性がある。そのため、接合材料としての融点はこれ以上、好ましくは85℃以上は必要と考える。
【0016】
前述した様に、近年はRoHS規制等による有害物質に対する規制が厳しくなってきており、従来から半導体製品の製造工程で導電性接合材料として使用されてきたPb含有はんだ合金も規制対象となるため、Pbフリーはんだ合金への転換が求められている。
また、集積回路は微細化の進展に伴い、実装時の接合精度の向上および接合工程の簡便性の向上などの高信頼性、低コスト化が求められている。
【0017】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、140℃以下での低温接合が可能で、かつ、電子製品の通常の使用環境下における耐久性を有する信頼性の高い、Pbフリーの導電性接合部材やその簡便な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従来のPbフリーの導電性接合材料であるSn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系の融点は200℃以上、Sn-Bi系、Sn-Bi-In系の融点は約120℃以上である。実装時のリフロー温度(接合温度)はこれらの融点よりも約20℃以上高くする必要がある。そのため、少なくとも140℃以上のリフロー温度となり、必ずしも低温の接合方法に適しているとは言えるものでなかった。また、はんだ成分の金属を混合、溶融してはんだ合金とした後、解砕、粉砕したはんだ合金微粒子をペースト化して用いるため、煩雑で手間とコストを要し生産性に乏しいことも課題であった。
【0019】
しかしながら、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、被めっき物の表面にSn-Inを特定の組成範囲で各々単独で積層めっき処理することで低融点の積層めっき層を形成できること、この積層めっき層またはこの積層めっき層を加熱リフローしてバンプ化したものを用いることで電子部品実装工程の簡便性が向上し、かつ140℃以下での低温実装ができることを見出し本発明の完成に至った。
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
【0020】
<1> 少なくともSnめっきおよびInめっきを含むめっき処理を行い、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を、被めっき物上に形成するめっき工程を有するSn-In系低融点接合部材の製造方法。
<2> 前記被めっき物が、その表面に、Ti、Ni、Cu、Au、Sn、Ag、Cr、Pd、Pt、W、Co、TiW、NiP、NiB、NiCo、およびNiVからなる群から選択される1以上を含むアンダーメタルの層を有し、前記めっき工程において、前記アンダーメタルの層の上に前記積層めっき層を形成する前記<1>に記載の製造方法。
<3> 前記めっき工程において、Snめっきを行った後にInめっきを行い、前記積層めっき層を形成させる前記<1>または<2>に記載の製造方法。
<4> 前記積層めっき層が、Ag、Cu、Ni、Zn、およびSbからなる群から選択される1以上の混合成分を含み、前記積層めっき層に対する前記混合成分の合計質量が0.001質量%以上3.0質量%以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の製造方法。
<5> 前記被めっき物が、大きさが1mm以下である、微小金属ボール、導電性の金属の被覆層を有する微小樹脂ボール、はんだ合金の被覆層を有する微小樹脂ボール、および微小ピン部材からなる群から選択されるいずれかの微小コア部材であり、前記めっき工程おいて、前記微小コア部材が前記積層めっき層で被覆された微小部材を製造する前記<1>から<4>のいずれかに記載の製造方法。
<6> 導電性接合部の上に配置された前記<1>から<5>のいずれかに記載の製造方法で製造された低融点接合部材を、加熱リフローしてバンプを形成するSn-In系低融点接合部材の製造方法。
【0021】
<7> 配線基板と、半導体チップ表面との間に配置された前記<1>から<6>のいずれかに記載の製造方法により製造されたSn-In系低融点接合部材を、137~140℃で加熱リフローして、前記配線基板と前記半導体チップを接合する半導体電子回路の実装方法。
【0022】
<8> SnとInを含むSnIn層を含み、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材。
<9> Ti、Ni、Cu、Au、Sn、Ag、Cr、Pd、Pt、W、Co、TiW、NiP、NiB、NiCo、およびNiVからなる群から選択される1以上を含むアンダーメタルの層の上に、前記積層めっき層が形成された前記<8>に記載のSn-In系低融点接合部材。
<10> 前記積層めっき層が、Ag、Cu、Ni、Zn、およびSbからなる群から選択される1以上の混合成分を含み、前記積層めっき層に対する前記混合成分の合計質量が0.001質量%以上3.0質量%以下である前記<8>または<9>に記載のSn-In系低融点接合部材。
<11> 大きさが1mm以下である、微小金属ボール、導電性の金属の被覆層を有する微小樹脂ボール、はんだ合金の被覆層を有する微小樹脂ボール、および微小ピン部材からなる群から選択されるいずれかの微小コア部材が前記積層めっき層で被覆された微小部材を有する前記<8>から<10>のいずれかに記載のSn-In系低融点接合部材。
<12> 前記<8>から<11>のいずれかに記載のSn-In系低融点接合部材を加熱リフローさせてなるSn-In系低融点接合部材。
【0023】
<13> 前記<8>から<12>のいずれかに記載のSn-In系低融点接合部材を有することを特徴とする半導体電子回路。
【発明の効果】
【0024】
本発明のSn-In系低融点接合部材は、Pbフリーの組成を容易に調整でき、低温での接合が可能で低温実装性に優れる。また、本発明のSn-In系低融点接合部材の製造方法は、このような接合部材の簡便な製造方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】Sn-In二元系状態図である。
図2】本発明にかかるはんだ合金バンプを形成するまでの製造工程フロー図である。
図3】本発明にかかるはんだ合金バンプによる実装工程の概念図である。
図4】実施例1のDSC測定プロファイルである。
図5】実施例2のDSC測定プロファイルである。
図6】実施例4のDSC測定プロファイルである。
図7】比較例2のDSC測定プロファイルである。
図8】比較例3のDSC測定プロファイルである。
図9】実施例7のめっき積層物の外観SEM写真である。
図10】実施例7のめっき積層物の断面SEM-EDXである。
図11】実施例7のバンプ外観SEM写真である。
図12】実施例7のバンプ断面SEM-EDXである。
図13】シェア強度試験の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0027】
<Sn-In系低融点接合部材の製造方法>
本発明は、少なくともSnめっきおよびInめっきを含むめっき処理を行い、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を、被めっき物上に形成するめっき工程を有するSn-In系低融点接合部材の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と記載する場合がある。)に関する。
本発明の製造方法は、Pbフリーの組成を容易に調整できる。また得られる接合部材は、低温で接合でき低温実装性に優れる。また、それぞれの元素をめっきにより積層することで積層めっき層の組成の再現性が得られると共に、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snが46~51質量%、Inが49~54質量%の組成範囲内となるように任意に制御しやすい。また、合金化とそのバンプ化が一気に行えるため簡便性および接合信頼性に優れ、工業的に有用である。
【0028】
<Sn-In系低融点接合部材>
本発明は、SnとInを含むSnIn層を含み、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材に関する。
また、本発明は、SnとInを含むSnIn層を含み、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材を加熱リフローさせてなるSn-In系低融点接合部材に関する。
以下、これらのSn-In系低融点接合部材をまとめて、「本発明の接合部材」と記載する場合がある。
本発明の接合部材は、本発明の製造方法により製造することができ、Pbフリーの組成を容易に調整でき、低温で接合でき低温実装性に優れる。
【0029】
本願において、本発明の製造方法と本発明の接合部材のそれぞれに対応する構成は相互に利用することができる。
また、本願において、本発明の接合部材やその製造方法において、前述したSnやInの質量濃度は、積層めっき層やはんだ合金、微小部材の被覆層の部分のSnおよびInの合計質量を100質量%としたときの各元素が占める割合(質量分率)により規定したものである。
【0030】
図1は、Sn-In系積層めっき層の組成を説明するためのSn-In二元状態図である。本発明の接合部材やその製造方法では、Sn-In二元状態図で、Snが46~51質量%、Inが49~54質量%の範囲内にSn(スズ)、In(インジウム)の濃度を制御した積層めっき層を利用する。この範囲内の組成であれば、積層めっき層は、その融点が117~120℃となる。そのため、SnとInを含むSnIn層を含み、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき(Sn-In系積層めっき層)を有する接合部材は、集積回路の低温実装の実現に大きく寄与できる。また、この積層めっき層は137~140℃で加熱溶融することで容易にSn-In系低融点はんだ合金とできる。
【0031】
本発明において、「融点」は、DSC(示差走査熱量計)を用いて求められる。DSCの昇温過程の吸熱プロファイルにおいて、各成分の融解熱が吸熱ピークとして表れ、測定サンプルの組成によって単独または複数の吸熱ピークとなる。本発明では、便宜的に各吸熱ピークのトップ温度をその成分の融点として扱い、複数のピークがある場合は、最も低い温度の吸熱ピークを最低融点(固相線温度)、最も高い温度の吸熱ピークを最高融点(液相線温度)として扱う。
【0032】
さらに、積層めっき層中のSnが46~51質量%、Inが49~54質量%の組成の範囲内であれば、DSC測定における吸熱プロファイルで単独ピークを示し、融点の温度範囲がシャープとなる。そのため、実装時の加熱リフローの短時間化でき、かつ接合信頼性を高める効果が期待できる。
【0033】
なお、形成される積層めっき層中、SnおよびInの合計に対するSnが、46質量%未満の場合は、積層めっき層のDSC測定の結果から125℃近傍および残留Inと思われる157℃近傍、更には残留Snと思われる232℃近傍に吸熱ピークを有する高融点成分が含まれてくるため、140℃の加熱リフローでは未溶融物が残留し、接合強度や寸法精度等の接合材料としての信頼性低下が懸念されて好ましくない。
【0034】
一方、形成される積層めっき層中、SnおよびInの合計に対するSnが51質量%を超える場合も同様で、積層めっき層のDSC測定の結果から前記の157℃近傍の吸熱ピークが認められると共に残留Snと思われる232℃近傍の吸熱ピークが増加することから、これらの高融点成分が含まれるため、140℃の加熱リフローでは未溶融物が残留し、接合強度や寸法精度等の接合材料としての信頼性低下が懸念されて好ましくない。
【0035】
また、本発明の製造方法では、このような接合部材を効率よく製造することができる。さらに、低温で処理できるため実装時に消費するエネルギーも低減することができる。
また、めっきにより製造するため、合金化のための熱処理に消費するエネルギーも低減することができる。
【0036】
以下、Sn-In系低融点接合部材の製造方法およびSn-In系低融点接合部材について詳しく説明する。
【0037】
<Sn-In系低融点接合部材の製造方法>
前述の通り、本発明の製造方法は、少なくともSnめっきおよびInめっきを含むめっき処理を行い、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を、被めっき物上に形成するめっき工程を有する。
【0038】
[被めっき物]
(基板)
被めっき物としては、LSIや半導体チップなどの半導体電子部品、半導体電子部品またはこれを複数搭載して回路構成されたパッケージやモジュールとするためのプリント配線板などの配線基板などが挙げられる。これらの被めっき物は、必要に応じてその表面をフォトリソグラフィー等により所要の導電性接合部(パッド)がパターン形成されたものを使用できる。
【0039】
(アンダーメタルの形成)
被めっき物は、導電性接合部がパターン形成された基板の表面に、必要に応じてTi(チタン)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Au(金)、Sn(スズ)、Ag(銀)、Cr(クロム)、Pd(パラジウム)、Pt(白金)、W(タングステン)、Co(コバルト)、TiW(チタン-タングステン)、NiP(ニッケル-リン)、NiB(ニッケル-ホウ素)、NiCo(ニッケル-コバルト)、NiV(ニッケル-バナジウム)からなる群から選択される1以上のアンダーメタルを含むアンダーメタルの層を有する基板(アンダーメタルを成膜したもの)を用いることも可能である。これらのアンダーメタルは、単独または複数を積層して用いても構わない。成膜方法は、蒸着、PVD、めっき法などから適応可能な方法を適時選択して用いれば良い。成膜の膜厚は、各々で0.01~10μmの範囲で適時設定すれば良い。
【0040】
(導電性ポストの形成)
集積回路の微細化に伴って導電性接合材料のはんだ合金を狭い間隔(狭ピッチ)で並べることによる実装時(加熱リフロー時)のショート防止などの目的で設けられる円柱状の導電性ポストをアンダーメタル上に形成したものを被めっき物として用いることも可能である。円柱状のポスト材としては、Cu、Ag、Niなどの導電性金属から適時選択すれば良い。円柱状ポストの形成は、PVD、めっき法などから適応可能な方法を適時選択して用いれば良い。円柱状ポストの高さは、1~200μmの範囲が通常であり、その必要に応じて適時設定すれば良い。
【0041】
(微小コア部材)
以下に説明するように、大きさが1mm以下である、微小金属ボール、導電性の金属の被覆層を有する微小樹脂ボール、はんだ合金の被覆層を有する微小樹脂ボール、および微小ピン部材からなる群から選択されるいずれかの微小コア部材を被めっき物とすることもできる。これらを被めっき物とすることで、微小部材の接合部材を得ることができる。
【0042】
被めっき物としてボールグリッドアレイ(BGA)等の微小ボール搭載型の導電性接合材料のコアボールとして用いられる微小ボールを被めっき物として用いることも可能である。微小ボールは、直径1mm以下であり、微小金属ボールまたは微小樹脂ボールを使用できる。特に微小樹脂ボールは電子回路部品の軽量化、熱応力緩和(弾性変形が可能)などに有効なコアボール材として用いられている。
【0043】
微小金属ボールとしては、例えば、直径が0.05~1.0mmのCu、Ni-Co-Fe合金、Ni-Fe合金などの導電性金属球であればいずれも用いることができる。また、必要に応じてその表面に厚み0.1~30μmのNi、Cu、はんだなどの導電性被覆を施した微小金属ボールの使用も可能である。
【0044】
微小樹脂ボールとしては、例えば、直径が0.05~1.0mmのアクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンサルファイト、ジビニルベンゼン架橋重合体などの一般的な樹脂で微小ボール化が可能なものであればいずれも用いることができる。なお、これらの微小樹脂ボールは非導電性のため、その表面に無電解めっき等により0.5~5.0μm程度のNi、Cu、はんだなどの導電性金属または合金等で被覆したものを使用する。
【0045】
また、コア部材はボール状に限られず、円柱状や角柱状、錘状、またこれらの角を面取りした形状などの微小ピンを用いることもできる。微小ピンは、前述の微小金属ボールや微小樹脂ボールに準じる材質や大きさ等を有する微小金属ピンや微小樹脂ピンを用いることができる。なお、微小ピンの場合、最も小さい辺を、微小金属ボールや微小樹脂ボールにおける直径に相当するものとする。
【0046】
[被めっき物の表面洗浄・乾燥]
本発明の製造方法では、めっき工程の前に、被めっき物の表面洗浄・乾燥を行ってもよい。
被めっき物の表面洗浄は、被めっき物の表面の付着物を除去して清浄化することが目的であり、付着物除去が可能な溶媒を選定して用いる。例えば、有機溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、イソブチルケトン(MIBK)等のケトン類などが挙げられる。水系溶媒としては、アンモニア、有機アミン化合物等と過酸化水素水の併用、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤などが添加された水溶液が挙げられる。これらの溶媒のうち、被めっき物の材質を侵さないことを考慮して適時選択して用いる。
【0047】
被めっき物の表面洗浄は、室温~100℃の範囲内でこれらの溶媒中に浸漬または溶媒でのシャワー洗浄などの方法で洗浄する。溶媒洗浄後は、表面に付着した溶媒成分を水洗して、表面を清浄化すれば良い。次に、被めっき物の乾燥であるが、室温~100℃の範囲で加温乾燥または通風乾燥すれば良い。なお、乾燥工程は省略して次めっき工程に進めることも可能である。
【0048】
[めっき工程]
めっき工程は、少なくともSnめっきおよびInめっきを含むめっき処理を行い、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層を、被めっき物上に形成する工程である。
具体的には、各めっき処理で形成されるめっき層がそれぞれ所望の厚みとなるように、各めっき液の濃度やめっき処理時間などを調整することで、めっき層の組成を制御することができる。
【0049】
めっき方法は、電解めっきまたは無電解めっきのいずれの方法でも可能であるが、めっき所要時間や生産性などを考慮すると電解めっきが好ましい。
【0050】
使用可能なめっき装置を電解めっきの場合を例に述べると、用いる各めっき液に対して耐蝕性を有する材質で構成されためっき槽に、撹拌翼、揺動、スキージ撹拌などの撹拌機能と電流値を所定の範囲で制御できる整流器を備えたものを使用して、陽極に溶解性アノードや不溶性アノードなどを用いて、陰極に被めっき物をセットできるめっき装置を用いることができる。
【0051】
(Snめっき)
Snめっきは、被めっき物をめっきする主たる成分としてSnを含むめっき液等を用いて行うめっき処理である。Snめっき液は、市販のものを使用すれば良く、例えば石原ケミカル社のSnめっき液などが挙げられる。めっき条件としては、例えば撹拌翼、揺動、スキージ撹拌などを用いた撹拌下で、温度5~50℃、めっき液中のSnイオン濃度1~70g/L、電流密度0.1~20.0A/dm2の範囲内で任意に設定すれば良い。Snめっき量は、設定条件下でのめっき処理時間(めっき液浸漬時間)で制御可能である。
【0052】
(Inめっき)
Inめっきは、被めっき物をめっきする主たる成分としてInを含むめっき液等を用いて行うめっき処理である。Inめっき液は、市販のものを使用すれば良く、例えば石原ケミカル社のInめっき液などが挙げられる。めっき条件としては、例えば撹拌翼、揺動、スキージ撹拌などを用いた撹拌下で、温度5~50℃、めっき液中のInイオン濃度1~70g/L、電流密度0.1~20.0A/dm2の範囲内で任意に設定すれば良い。Inめっき量は、設定条件下でのめっき処理時間(めっき液浸漬時間)で制御可能である。
【0053】
なお、これらのSnめっき、およびInめっきは、後述する任意で用いる混合成分等の他のめっき成分を含むものを用いてもよい。めっき液等のめっき用組成物において、他のめっき成分の総量は、主たる成分に対して(他のめっき成分の総量(g/L)/主たる成分(g/L))、50質量%以下が好ましく、30質量%以下が好ましく、20質量%以下が好ましい。例えば、Snめっきに、任意の混合成分であるCuを混合したSn・Cu複合めっき液や、Agを混合したSn・Ag複合めっき液を、主成分としてSnを含むことからSnめっきとして用いてもよい。Inめっきも同様である。
【0054】
(微量金属の添加)
本発明のSn-In系低融点接合部材の製造方法では、積層めっき層の皮膜の平滑性、密着性、酸化抑制などの物性向上の目的で、必要に応じて得られる積層めっき層の融点が120℃を超えない範囲でAg、Cu、Ni、Zn、およびSbからなる群から選択される1以上を添加してもよい。Ag、Cu、Ni、Zn、およびSbからなる群から選択される1以上の混合成分を含み、積層めっき層に対する前記混合成分の合計質量が占める割合(混合成分の合計質量/積層めっき層の合計質量)が、0.001~3.0質量%である積層めっき層を形成することも可能である。積層めっき層に対する混合成分の合計質量が占める割合は、0.005質量%以上や、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上としてもよい。また、積層めっき層に対する混合成分の合計質量が占める割合は、2.5質量%以下や、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下としてもよい。
【0055】
これらの特定の混合成分の添加の方法は、目的物のSn-In系積層めっき層中の含有量が所定量になる様に、Sn、Inのいずれかのめっき液中に添加してSnまたはIn被膜中に導入することができる。また、混合成分自体のめっき液を用いて、単独めっきして積層めっき層に導入することも可能である。
【0056】
なお、錯化剤等により、析出電位を調整して添加金属との合金めっきを得る観点からSnめっき液中に添加することが好ましい。Snめっき液中へのこれらの添加金属の添加量は、Snの重量濃度に対して1/1000~1/10濃度の範囲で、得られる積層めっき層中で所定濃度になる様に適時選定して用いれば良い。
【0057】
(めっき積層順番)
SnめっきとInめっきのいずれも行うものであれば、めっき積層の順序は任意でよい。具体的には、被めっき物の表面から順に、Sn→In、In→Snの順のいずれの順番でも可能である。電解めっきでSn-Inを所定の組成で安定的に積層するには、標準電極電位が高くイオン化傾向の小さいものからめっきした方が好ましい。そのため、「Sn→In」の順番でめっきすることがより好ましい。
なお、25℃、105パスカル(Pa)で標準水素電極を基準した場合の標準電極電位は、Sn=-0.138V、In=-0.338Vである。電位の低いInめっきを1つ目のめっきとすると、Inは2つ目のSnめっき操作中に電解めっき浴中でイオン化して溶出し、最終目的物の積層めっき層中における濃度が設定条件よりも低下し易い。よって、Snめっきを行った後にInめっきを行い、積層めっき層を形成させることが好ましい。
【0058】
(積層めっき層)
積層めっき層は、SnめっきおよびInめっきを逐次行う積層めっき処理により形成される層であり、SnとInを含むSnIn層を含み、積層めっき層中のSnとInとの合計を100質量%としたとき、Snが46~51質量%であり、Inが49~54質量%以下である。積層めっき層が形成される過程で、Snの層にInが拡散した合金層やInの層にSnが拡散した合金層が形成されることで、Sn(融点232℃)、In(融点157℃)各々の単独の融点よりも大幅に低い117~120℃の低融点のめっき積層物にできることが特徴である。
Sn-In系積層めっき層は、Sn、Inの濃度が異なる少なくとも2層を有する構成であればよい。各層において、SnおよびInは均一に分布しても、不均一に分布してもよい。例えば、SnとInの濃度が異なる複数のSnIn層を有する構成であってよい。SnIn層は、後述のとおり、Snめっきによる層にInが拡散したSnIn層および/またはInめっきによる層にSnが拡散したSnIn層である。また、各層は厚みが均一であっても、不均一であってもよい。
【0059】
なお、積層めっき層における各元素の濃度は、積層めっき層を被めっき物から剥離して、酸溶解後、高周波誘導結合プラズマ-発光分析装置によって定量分析して、その濃度を求めることができる。各層は、その層の主たる金属となるSnやInを含み、SnIn層はSnとInを含む。
【0060】
各層は、その層の金属元素に加えて、原料や製造工程上、不可避的に含まれる不純物を含むものでもよい。このような不純物としては、Fe(鉄)やC(炭素)などがあげられる。また、前述のとおり、積層めっき層は混合元素として含まれる任意添加元素を含んでもよい。
例えば、Sn-In系積層めっき層は、Sn、In、混合成分および不可避的に含まれる不純物からなるものとしてもよい。
【0061】
なお、Pbフリーとして使用するためにPbの混合量を低減することが好ましく、積層めっき層におけるPbの濃度は0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下、0.01質量%以下がより好ましい。Pbは検出下限以下であることがさらに好ましい。
【0062】
また、積層めっき層において、Sn、Inの合計量が占める割合(SnとInとの合計質量/積層めっき層の全質量)は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。また、97質量%以上や、98質量%以上、99質量%以上としてもよい。
【0063】
(Snの層)
Snめっきにより得られるSnの層は、Snを含む層である。Snの層は、Inを除いてSnを主たる成分として含んでおり、この層におけるInを除く元素におけるSn濃度は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。このSnの層は、Snめっきにより得ることができる。
【0064】
また、Snの層は、Inも含む、SnIn層としてもよい。このSnIn層は、その層の主たる成分として、SnおよびInを含み、SnとInの合計が、その層における70質量%以上や、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上とすることができる。SnIn層は、双方を含み、Sn:Inの質量比率が、1:99~99:1であり、5:95~95:5や、10:90~90:10、20:80~80:20などとすることもできる。
【0065】
(Inの層)
Inめっきにより積層めっき層に含まれるInは、めっき処理中にSnの層中に拡散し易いため、In単独を主成分とした単独層は形成し難く、SnIn合金の形態で形成される場合がある。
Inの層は、Snも含む、SnIn層としてもよい。このSnIn層は、その層の主たる成分として、SnおよびInを含み、SnとInの合計が、その層における70質量%以上や、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上とすることができる。SnIn層は、双方を含み、Sn:Inの質量比率が、1:99~99:1であり、5:95~95:5や、10:90~90:10、20:80~80:20などとすることもできる。
【0066】
(めっき積層数)
めっき積層数は、特に限定されず、Sn、Inの濃度が異なる少なくとも2層あれば良い。なお、被めっき物とめっき成分の相互作用による双方の成分の合金化や拡散防止などの目的により、前記の2成分の濃度が異なる層を形成させて、3層、4層または5層などの積層も可能である。
【0067】
(各めっき工程後の水洗・乾燥)
各めっき工程後の水洗の目的は、めっき浴から引上げた時に被めっき物の表面に付着しためっき液の除去であり、水中に浸漬または水シャワーにより水洗して清浄化する。その後の乾燥は、積層めっき層の融点未満の温度で乾燥すれば良い。積層めっき層の融点を考慮したうえで水分除去が目的ならば、通常は室温~100℃の範囲で適時設定して加温乾燥または通風乾燥すれば良い。なお、次工程で残存水分があっても問題なければ、乾燥工程は省略して次工程に進めることも可能である。
【0068】
以上のめっき工程を行うことで、Sn-In系積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材が得られる。この方法で得られたSn-In系低融点接合部材の積層めっき層の最も高い融点は、117~120℃と低融点である。
【0069】
当該積層めっき層は、被めっき物として基板等を用いて製造し、被めっき物に配置された積層めっき層のまま実装工程で接合部材として用いても良い。後述する低融点はんだ合金バンプ化や微小部材搭載バンプ化して実装工程で用いても良い。また、適宜、被めっき物から積層めっき層を離隔して、接合部材として用いてもよい。
【0070】
[バンプ化工程]
また、本発明の接合部材の製造方法は、Sn-In系積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材を加熱リフローさせてなるSn-In系低融点接合部材の製造方法とできる。これにより、バンプを有するSn-In系低融点接合部材が製造できる。バンプは、Sn-In系積層めっき層を加熱リフローすることで形成されるSn-In系はんだ合金バンプの形態や、後述する微小部材を加熱リフローすることで形成される微小部材搭載型バンプの形態とできる。
このようなバンプを有する接合部材の製造方法とするとき、本発明の製造方法は、めっき工程の後に、バンプ化工程を有してよい。バンプ化工程は、導電性接合部の上に形成されたSn-In系積層めっき層を、加熱リフローしてSn-In系はんだバンプを形成する工程、または、導電性接合部の上に配置された微小部材(Sn-In系積層めっき層で被覆された微小コア材)を、加熱リフローして微小部材搭載型のバンプを形成する工程である。加熱リフローは還元雰囲気下で行われる。例えば、後述するように、ギ酸ガス雰囲気下で行うことができる。
【0071】
はんだ合金バンプなどのバンプを製造するにあたっては、Sn-In系低融点接合部材に係る積層めっき層を加熱リフローすることで製造することができる。
一般的に加熱リフローによるはんだ合金バンプなどのバンプの形成では、合金組成が均一で表面凹凸が無く、均一な球状または半球状の形状物性が求められる。また、実装物性としては、被めっき物との接合強度が3mg/μm2以上、ヒートサイクル耐久性などが必要である。これらの要求物性に悪影響する因子は、はんだ合金そのものの基本物性や、加熱リフロー前の合金成分の自然酸化膜や、不純物の付着や混入などが挙げられる。
【0072】
バンプ化工程では、加熱リフロー時の低温での自然酸化膜除去を目的に「ぎ酸ガス還元法」を用いることが好ましい。自然酸化膜の除去方法としては、一般的には以下に示す「ぎ酸ガス還元法」と「水素ガス還元法」があり、後者は230℃以上で、前者は150℃付近で還元反応が生じるため、低温領域に適応でき、安全性、信頼性、コスト面で優位な「ぎ酸ガス還元法」の適応が好ましい。すなわち、バンプ化工程は、ギ酸ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
・ぎ酸ガス還元法 MeO + HCOOH → Me + CO2 +H2
・水素ガス還元法 MeO + H2 → Me + H2
【0073】
バンプ化工程は、「ぎ酸ガス還元法」を用いて、還元剤:ぎ酸、圧力:20~400mbar、昇温速度:10~150℃/min、トップ温度:137~140℃、トップ温度保持時間:20~300秒の範囲で、Sn-In系接合部材に係る積層めっき層の組成見合いで適時選定すれば良い。こうして得られるはんだ合金バンプなどのバンプは、実装時の加熱リフロー温度が137~140℃の低温領域での接合が可能であるため低温実装に適することが特徴である。
【0074】
なお、当該積層めっき層を形成したり、微小部材を配置したりする対象物となる半導体素子または配線基板の耐熱性が140℃以上の場合は、140℃以上の温度から、半導体素子または配線基板の耐熱温度以下の温度範囲内で加熱リフローしてバンプ化や後述する接合実装することも可能である。
【0075】
また、被めっき物によって、めっき工程とバンプ化工程との間にその他の工程を有してもよい。被めっき物がレジスト膜を有する基板の場合には、めっき工程とバンプ化工程との間に、レジスト膜を除去する工程を有してよい。被めっき物が微小コア部材である場合には、めっき工程を行うことで、微小コア部材が積層めっき層で被覆された微小部材が得られるため、この微小部材を基板上に配置する工程を行って後、バンプ工程を行ってよい。
【0076】
<Sn-In系低融点接合部材>
前述のように、本発明の接合部材は、SnとInを含むSnIn層を含み、SnとInとの合計を100質量%としたとき、Snを46質量%以上51質量%以下、Inを49質量%以上54質量%以下含む積層めっき層(Sn-In系積層めっき層)を有するSn-In系低融点接合部材に関するものである。
Sn-In系積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材は、めっき工程を有する本発明の製造方法により効率的に製造することができる。
Sn-In系積層めっき層は、融点が117~120℃のため、この融点以上の温度で溶融し、20~30℃程度の常温付近では固体である。そのため、積層めっき層は、接合部として機能する。
【0077】
このような本発明の接合部材は、Sn-In系積層めっき層そのものであってもよい。また、基板と、基板上に形成されたSn-In系積層めっき層とを有するものとしてもよい。例えば、本発明の接合部材は、Ti、Ni、Cu、Au、Sn、Ag、Cr、Pd、Pt、W、Co、TiW、NiP、NiB、NiCo、およびNiVからなる群から選択される1以上を含むアンダーメタルの層を有する基板と、アンダーメタルの層の上に形成されたSn-In系積層めっき層を有するものとできる。アンダーメタルの層を有する基板としては、半導体チップなどが挙げられる。また、微小コア部材がSn-In系積層めっき層で被覆された微小部材を有するものとしてもよい。
【0078】
また、前述のとおり、本発明の接合部材は、Sn-In系積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材を加熱リフローさせてなるSn-In系低融点接合部材に関するものである。
Sn-In系積層めっき層を有するSn-In系低融点接合部材を加熱リフローさせてなるSn-In系低融点接合部材は、めっき工程とバンプ化工程とを有する本発明の製造方法により効率的に製造することができる。
【0079】
このような本発明の接合部材は、Sn-In系はんだ合金バンプそのものであってもよい。また、導電性接合部と、導電性接合部上に形成されたSn-In系はんだ合金バンプとを有するものとしてもよい。また、基板と、基板上に配置されたSn-In系はんだ合金で被覆された微小部材とを有するものとしてもよい。例えば、Sn-In系積層めっき層で被覆された微小コア部材を、導電性接合部が設けられた基板の導電性接合部の上に配置し、加熱リフローすることで、導電性接合部上に微小部材が実装された接合部材とできる。また、導電性接合部上に微小部材が実装された接合部材は、導電性接合部が設けられた基板と、導電性接合部の上に接合された微小部材搭載型バンプを有するものとなる。
このSn-In系はんだ合金バンプや微小部材搭載型バンプも、Sn-In系積層めっき層と同様に接合部として機能する。
【0080】
次に、本発明の製造方法および本発明の製造方法により得られる接合部材について、より具体的な例を説明する。
【0081】
<導電性接合部上への積層めっき層およびはんだ合金バンプの形成>
本発明の製造方法は、パターン形成された導電性接合部と、導電性接合部が露出する開口部が設けられたレジスト膜とを有する基板を被めっき物として、めっき工程とレジスト膜除去工程とを有する製造方法とすることができる。この製造方法により、導電性接合部の上にSn-In系積層めっき層が形成されたSn-In系低融点接合部材を得ることができる。
また、本発明の製造方法は、パターン形成された導電性接合部と、導電性接合部が露出する開口部が設けられたレジスト膜とを有する基板を被めっき物として、めっき工程とレジスト膜除去工程とバンプ化工程とを有する製造方法とすることができる。この製造方法により、導電性接合部の上にSn-In系はんだ合金バンプが形成されたSn-In系低融点接合部材を得ることができる。
【0082】
(めっき工程)
めっき工程において、導電性接合部の上に、Sn-In系積層めっき層を形成させる。めっき工程の方法は、前述の通りである。
【0083】
(レジスト膜除去工程)
めっき工程の後にレジスト膜除去工程を行うことで、導電性接合部の上に、Sn-In系めっき層が接合部として形成された接合部材が得られる。
レジスト膜除去工程は、めっき工程の後に行われる工程であり、基板上に設けられたレジスト膜(「レジスト」、または「レジストパターン」と記載する場合もある)を除去する工程である。
【0084】
レジストパターン除去は、Sn-In系積層めっき層を侵さずにレジスト除去できる薬液に浸漬またはシャワー洗浄などの公知の湿式法、または酸素プラズマによるアッシング処理などの公知の乾式法などの方法を用いて除去することが可能である。
湿式法の場合に用いる薬液としては、例えば、主成分がジメチルスルホキシドなどの有機溶媒、水酸化カリウムなどの水系溶媒などが挙げられ、レジスト材料の除去性やめっき析出物の耐性を考慮して適時選択すれば良い。
薬液でのレジスト除去後に、被めっき物を水中に浸漬または水シャワーにより水洗して清浄化した後、室温~100℃の範囲で加温乾燥または通風乾燥する。
【0085】
(バンプ化工程)
レジスト膜除去工程の後に、導電性接合部の上に形成されたSn-In系積層めっき層を、加熱リフローすることで、導電性接合部の上に、Sn-In系はんだ合金バンプが接合部として形成される。バンプ化工程は、前述の通りである。
【0086】
めっき工程において、Sn→Inの順で積層する場合を例に説明すると「被めっき物の表面洗浄・乾燥→Snめっき→水洗・乾燥→Inめっき→水洗・乾燥→レジスト除去→水洗・乾燥→はんだ合金バンプ化(加熱リフロー)」の順で各工程を行うことで、導電性接合部がパターン形成された基板の導電性接合部の上に、Sn-In系はんだ合金バンプが形成された接合部材が得られる。
【0087】
以上が、導電性接合部上にSn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプを有する接合部材の製造方法である。
また、同様の方法で、導電性接合部の上に、アンダーメタルの層および/または導電ポストが形成された基板を被めっき物として用いて、アンダーメタルの層または導電性ポストの上にSn-In系めっき層やSn-In系はんだ合金バンプを形成させることもできる。
これにより、例えば、Sn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプがパターン形成された半導体チップや配線基板の製造することができる。
【0088】
従来、はんだ合金の製造方法は、各々の合金成分を粉砕または破砕し、表面洗浄・乾燥して所定の組成になる様に配合混合したものを、配合成分中で最も融点が高い成分の融点以上で加熱溶融して合金化したものを塊状で取り出し、更にこれを粉砕して合金微粒子とし、フラックス成分などと調合してはんだ合金ペースト等にしたものを被めっき物に塗布して加熱リフローにより実装するのが主流となっている。しかし、この方法は、工程が多く手間が掛かることから生産性が悪いと共に、集積回路の微細化に伴う配線接合の狭ピッチ化に伴う寸法信頼性への適応が難しいなどの問題がある。
【0089】
本発明の製造方法は、従来のはんだ合金の製造方法の工程を大幅に軽減し、かつ微細なパターン形成表面に直接、めっき工法で導電性接合部材(導電性接合材料)を形成することができる。また、寸法信頼性が高いことや、得られる当該積層めっき層が117~120℃の低融点であるため、加熱リフロー温度が137~140℃の低温領域での接合が可能であり、低温実装に適することが特徴である。
【0090】
<微小コア部材が積層めっき層で被覆された微小部材の形成>
本発明の製造方法は、被めっき物が、大きさが1mm以下である、微小金属ボール、導電性の金属の被覆層を有する微小樹脂ボール、はんだ合金の被覆層を有する微小樹脂ボール、および微小ピン部材からなる群から選択されるいずれかの微小コア部材であり、めっき工程おいて、微小コア部材が積層めっき層で被覆された微小部材を製造する製造方法とすることができる。この製造方法により、前記微小コア部材が積層めっき層で被覆された微小部材を有するSn-In系低融点接合部材を得ることができる。
【0091】
微小金属ボールなどの微小コア部材のめっき方法としては、円周方向に回転する円柱状めっき槽で、めっき槽内中央部に陽極、槽内円周部に陰極が配設され、回転軸が水平軸による垂直方向回転あるいは傾斜軸による傾斜回転ができる装置を用いて、5~200rpm程度の回転数でめっき処理を行う。具体的には、槽内にめっき液と被めっき物のボール等を入れて、所定のめっき厚みになる様に電流密度および通電時間を設定してめっき処理を行い、終了すれば回転円周部よりめっき処理されたボール等およびめっき液が排出される回転型めっき装置(バレルめっき法)を用いることができる。また、これを微小金属ボールのめっき用に改良された特開平10-18096号公報や、特開平10-270836号公報に記載の回転型めっき装置や、更には特開平11-92994号公報に記載の回転型めっき装置を用いることができる。
【0092】
微小コア部材の表面などにSn-In系積層めっき層を形成する場合は、前記したバレルめっき法(回転型めっき装置)等の公知の装置を用いることができる。めっき方法は、前述のめっき工程と同様の条件でめっきすれば良い。めっき処理の順番は特に限定されないが、最初(最下層)にSnめっきを行い、最後(最上層)にInめっきを行う方法が好ましい。また、めっき膜の平滑性、密着性向上、またはめっき処理中のボール相互の凝集防止などの物性向上の目的で前述した(特定の微量金属添加)と同様の微量金属を添加することができる。
【0093】
以上が、微小金属ボールや微小樹脂ボール、微小ピン部材など微小コア部材の表面にSn-In系積層めっき層を形成する方法である。この方法で得られた微小部材である接合部材は、表層の積層めっき層の融点が117~120℃の低温領域であり、そのまま実装工程で用いても良い。また、これを後述する微小ボール搭載型バンプなどの微小部材搭載型バンプとして実装工程で用いても良い。
【0094】
<微小部材搭載バンプの形成>
本発明の製造方法は、大きさが1mm以下である、微小金属ボール、導電性の金属の被覆層を有する微小樹脂ボール、はんだ合金の被覆層を有する微小樹脂ボール、および微小ピン部材からなる群から選択されるいずれかを微小コア部材を被めっき物として、めっき工程と導電性接合部上に微小部材を配置する工程とバンプ化工程とを有する製造方法とすることができる。この製造方法により、導電性接合部の上に微小部材搭載型バンプを有するSn-In系低融点接合部材を得ることができる。
【0095】
例えば、BGA用プリント配線板のパット上にフラックスを塗布し、その上に前記したSn-In系積層めっき層で被覆された微小部材を配置する。次いで、前述のバンプ化工程と同様の方法と同様の方法で加熱リフローすることで、導電性接合部の上に、BGAなどの微小部材搭載バンプの形成が可能である。
【0096】
<半導体電子回路の実装>
本発明は、配線基板と、半導体チップ表面との間に配置された本発明の製造方法により製造されたSn-In系低融点接合部材を、137~140℃で加熱リフローして、配線基板と半導体チップを接合する半導体電子回路の実装方法に関するものとできる。本発明の半導体電子回路の実装方法により、本発明の接合部材を有する半導体電子回路が作製できる。
【0097】
具体的には、Sn-In系積層めっき層、Sn-In系はんだ合金バンプ、および微小部材搭載型バンプからなる群から選択されるいずれかを介して配線基板と半導体チップ表面とが接触するように半導体チップと配線基板とを重ねた状態で、低温領域(137~140℃)で加熱リフローすることで、半導体電子回路の実装を行うことができる。
【0098】
Sn-In系積層めっき層およびこれを加熱リフローしたバンプが、実装時の接合強度を発現するためには液相線温度まで加熱して溶融接合することが好ましい。本発明の接合部材では、Sn-In系積層めっき層およびこれを加熱リフローしたバンプの最も高い温度の吸熱ピークの最高融点(液相線温度)が117~120℃であるため、液相線温度まで加熱しても低温領域(137~140℃)での接合が可能である。
【0099】
半導体電子回路の実装時の加熱リフローは、前述のバンプ化工程の加熱リフローと同様にギ酸などの還元雰囲気中で行うことができる。圧力や昇温速度、トップ温度、トップ温度保持時間などの条件も、前述のバンプ化工程の加熱リフローの条件と同様にできる。
【0100】
この実装は、例えば、Sn-In系積層めっき層やSn-In系はんだ合金バンプを形成した半導体チップを準備し、配線基板の接続用の電極部に重ねて、ギ酸などの還元雰囲気中で137~140℃の範囲内で加熱リフローして両者を接合する。
Sn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプがパターン形成された半導体チップは、半導体チップを被めっき物として、本発明の製造方法により製造することができる。半導体チップ上にパターン形成されたSn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプと、配線基板の接続用の電極部とを重ねた状態で、還元雰囲気下で加熱リフローすることで、半導体チップと配線基板とを接合することができる。
【0101】
Sn-In系積層めっき層やSn-In系はんだ合金バンプは、配線基板側に形成しても良く、その場合、半導体チップ側に接続用の電極部に接合する。
Sn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプがパターン形成された配線基板は、配線基板を被めっき物として、本発明の製造方法により製造することができる。この場合、配線基板上にパターン形成されたSn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプめっき層と、半導体チップの接続用の電極部とを重ねた状態で、還元雰囲気下で加熱リフローすることで、半導体チップと配線基板とを接合することができる。
【0102】
Sn-In系積層めっき層やSn-In系はんだ合金バンプは、半導体チップ側、配線基板側ともに形成させても良い。この場合、配線基板上にパターン形成されSn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプと、半導体チップ上にパターン形成されたSn-In系積層めっき層またはSn-In系はんだ合金バンプとを重ねた状態で、還元雰囲気下で加熱リフローすることで、両者を接合することができる。
【0103】
また、微小部材搭載型バンプがパターン形成された半導体チップや、微小部材搭載型バンプがパターン形成された配線基板を用いてもよい。
【0104】
また、Sn-In系積層めっき層、Sn-In系はんだ合金バンプ、および微小部材搭載型バンプを利用した接合は、半導体チップや配線基板などの電子回路基板以外のはんだ付けにも適用できる。
【0105】
本発明のSn-In系低融点接合部材にかかる積層めっき層およびそのはんだ合金バンプの製造工程の概念図を図2に、その実装概念図を図3に、参考として示す。
【0106】
図2は、本発明のはんだ合金バンプ形成までの製造工程の概念図の一例である。
1)加工前ウエハに示すように、まず、基板1(シリコン、化合物半導体、圧電素子、樹脂基板等)上に、パッド3(Au、Al-Cu等)が配置され、保護膜2(SiN、ポリイミド等)を有している。
2)給電膜形成に示すように、次に、保護膜2やパッド3上に、給電膜4(Ti/Cu等)を形成する。
3)レジスト膜塗布に示すように、次に、給電膜4の上に、レジスト膜5を塗布する。
4)露光・現像に示すように、次に、レジスト膜5に所定のパターンで露光・現像を行い、レジスト膜5の一部を除去する。この時、通常、パッド3に対応する位置に露光を行う。
5)アンダーメタル形成に示すように、次に、レジスト膜5を露光・現像して孔が形成された部分にアンダーメタル6(Ni、Cu等)を形成する。
【0107】
次いで、本発明の製造方法により、6)~9)を行う。
6)めっき積層に示すように、積層めっき層7(Sn、In)を形成する。
7)レジスト剥離に示すように、次に、残存していたレジスト膜5も除去する。これにより、パッド3上に積層めっき層7が形成された状態となる。
8)給電膜エッチングに示すように、次に、給電膜4をエッチングにより除去する。
そして、9)バンプ形成に示すように、加熱リフローすることで、積層めっき層7から、はんだ合金バンプ8(Sn/In)が形成され、接合部材として用いることができる。
【0108】
なお、8)給電膜エッチング後の積層めっき層7をそのまま接合部材として用いることもできる。
【0109】
この様にして得られた接合部材を次に実装する場合は、一例として図3に示した実装概念図で説明すると、はんだ合金バンプ9を形成した半導体チップを、相対する配線基板等の接合用の金属膜10(Au)に接触するように位置合せして配置(図3上部参照)し、137~140℃の範囲内で加熱リフローして、半導体チップと配線基板等とを接合することができる(図3下部参照)。
【実施例0110】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
(めっき積層物およびはんだ合金バンプの組成測定)
実施例1~6、比較例1~4で得られためっき積層物(積層めっき層)をSUS基板から剥離して、酸溶解後、ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ-発光分光分析装置)にて、定量分析を行った。また、実施例7、参考例1~3については、めっき積層物(積層めっき層)を加熱リフローしたはんだ合金バンプを前記と同様に測定した。使用機器及び測定条件は以下の通りである。
・測定機器Thermo Fisher Scientific社ICP発光分光分析装置 形式:ICAP6300Duo
・測定条件 検量線法による定量分析
測定波長:Sn188.9nm、In325.6nm
【0112】
(めっき積層物の融点測定)
実施例1~6、比較例1~4で得られためっき積層物をSUS基板から剥離、粉砕したサンプルを測定サンプルとして、DSC(示差走査熱量計)を用いて昇温過程における吸熱プロファイルを測定した。昇温過程のDSC測定においては、各成分の融解熱が吸熱ピークとして表れ、測定サンプルの組成によって単独または複数の吸熱ピークとなる。本発明では、便宜的に各吸熱ピークのトップ温度をその成分の融点として扱い、複数のピークがある場合は、最も低い温度の吸熱ピークを最低融点(固相線温度)、最も高い温度の吸熱ピークを最高融点(液相線温度)とした。使用機器及び測定条件は以下の通りである。
・測定機器 セイコーインスツル株式会社DSC装置 形式:DSC6220型
・測定条件 サンプル量:10~15mg
測定パン:アルミニウム
雰囲気:窒素ガス
測定温度範囲:室温~300℃,昇温速度:10℃/分
【0113】
(バンプ直径の測定)
実施例7、参考例1~3で得られたはんだ合金バンプのバンプ直径を画像計測にて測定した。使用機器及び測定条件は以下の通りである。
・測定機器 キーエンス社レーザー顕微鏡 形式:VK-X150
・測定条件 画像計測:200倍画像からの測長
【0114】
(バンプのシェア強度測定)
実施例7、参考例1~3で得られたはんだ合金バンプのシェア強度をシェア強度試験機にて測定した。使用機器及び測定条件は以下の通りである。
・測定機器 DAGE社ボンドテスター 形式:4000
・測定条件 シェアスピード:150μm/S、シェア位置:はんだ部
【0115】
[実施例1]
脱脂洗浄したSUS304板(100mm×40mm×厚み0.3mm)の裏面の全面にテフロン(登録商標)テープを張り付け、一方の表面にテフロン(登録商標)テープを張り付けてSUS板開口部が40mm×40mmとして被めっき物とした。めっき浴としては、ガラス製1Lビーカーを用い、各々のめっき液を約500ml入れて、陽極には白金を使用した。Sn、In各々のめっき液は以下のものを使用した。
・Snめっき液 石原ケミカル社製(Sn濃度 5g/L)
・Inめっき液 EEJA社製(In濃度 25g/L)
【0116】
第1層目はSnめっきを行った。条件は、前記の被めっき物をSnめっき液に浸漬して揺動しながら、温度20℃、電流密度1A/dm2一定で、所定のめっき厚を得るために必要な時間、めっき処理した後、引上げて、直ぐに水槽に浸漬し、これを引上げて水シャワー洗浄した。これを通風乾燥器中で50℃×5分間乾燥して、Snめっき物を得た。
【0117】
続いて、第2層目のInめっきを行った。Snめっき処理された被めっき物をInめっき液に浸漬して揺動しながら、温度20℃、電流密度3A/dm2一定で、所定のめっき厚を得るために必要な時間、めっき処理した後、引上げて、直ぐに水槽に浸漬し、引上げて水シャワー洗浄した。これを通風乾燥器中で50℃×5分間乾燥して、Sn-In系めっき積層物(Sn-In系積層めっき層)を得た。
【0118】
得られたSn-In系積層物をSUS板から剥ぎ取り粉砕したサンプルの組成を、Thermo Fisher Scientific社ICP発光分光分析装置を用いて測定し、融点を、セイコーインスツル株式会社DSC装置を用いて測定した。
【0119】
[実施例2~4、比較例1~4]
実施例1と同様の方法で、各めっき成分のめっき処理時間を変えて、種々のSn-In組成に調製しためっき積層物サンプルを作製した。
表1(めっき積層物の組成分析と融点測定結果)に、実施例1~4および比較例1~4で得られたSn-In系めっき積層物の組成分析結果および融点測定結果を示す。また、実施例1、2、4、比較例2、3の融点測定時のDSC測定プロファイルを図4~8に示す。
【0120】
実施例1~4のDSC測定の結果から、117~120℃で単独の吸熱ピークを示すことが確認できた。積層めっき層のSnとInの組成をSnが46~51質量%、Inが49~54質量%である特定の範囲内に制御することで、融点が117~120℃の低融点めっき積層物が得られることが判る。
【0121】
一方、Snが46質量%未満、残部Inである比較例1、2では、残留In起因と思われる157℃近傍と125℃付近の吸熱ピークと、Sn起因と思われる232℃付近の吸熱ピークが観察され、高融点成分の存在が確認された。
また、Snが51質量%を超え、残部がInである比較例3、4も同様に、InとSn起因と思われる160℃付近と232℃付近の吸熱ピークが観察され、高融点成分の存在が確認された。
【0122】
これらの結果から、特定の組成範囲内に制御する本発明の製造方法で得られる低融点めっき積層物は、集積回路の低温実装の実現に大きく寄与できると判断する。
更に、本発明の製造方法は、煩雑な合金製造工程が省略できると共に、めっき時間(めっき液浸漬時間)を変えるだけの操作でSn-In組成を任意に制御できるため、従来のはんだ合金の製造工程を著しく簡便に行うことができる。
【0123】
【表1】
【0124】
[混合成分の添加について]
[実施例5]
Snめっき液にCuを添加して、Sn=60g/L、Cu=1g/Lの複合めっき液を調製し、これを用いて、Sn・Cu→Inの順番でめっき積層した以外は実施例1と同様の操作を行い、微量のCu添加系めっき積層物を得た。このめっき積層物をSUS板から剥ぎ取り粉砕したサンプルの組成を、Thermo Fisher Scientific社ICP発光分光分析装置を用いて測定し、融点を、セイコーインスツル株式会社DSC装置を用いて測定した。結果を表2(Cu、Ag微量添加系めっき積層物の組成分析と融点測定結果)に示す。
【0125】
[実施例6]
Snめっき液にAgを添加して、Sn=40g/L、Ag=2.5g/Lの複合めっき液を調製し、これを用いて、Sn・Ag→Inの順番でめっき積層した以外は実施例1と同様の操作を行い、微量のAg添加系めっき積層物を得た。このめっき積層物をSUS板から剥ぎ取り粉砕したサンプルの組成を、Thermo Fisher Scientific社ICP発光分光分析装置を用いて測定し、融点を、セイコーインスツル株式会社DSC装置を用いて測定した。結果を表2(Cu、Ag微量添加系めっき積層物の組成分析と融点測定結果)に示す。
【0126】
実施例5~6のDSC測定の結果から、微量のCuまたはAgを添加したSn-In系めっき積層物の融点は微量のCuを添加した実施例5は118℃、また微量のAgを添加した実施例6は116℃であり、何れも120℃以下の低融点領域であることがわかる。この結果から、微量のCuまたはAgが添加されたSn-In系めっき積層物が低温実装用の導電性接合材料としての使用できることが確認された。
【0127】
【表2】
【0128】
[バンプシェア強度の測定(実施例7、参考例1~3)]
[実施例7]
酸化膜付きのシリコンウェハ表面に、スパッタで厚み0.1μmのTi膜と0.3μmのCu膜を成膜し、フォトリソグラフィーにて配線接続用の開口部(30μmφ×高さ20μm:1000000個、ピッチ間隔:50μm)が設けられたレジストパターンが形成されたシリコンウェハを作製した。続いて、電解めっきでNiを3μm厚みで成膜して、アンダーメタル付きのパターン形成被めっき物を作製した。
【0129】
前記のパターン形成被めっき物を用いて、「Sn→In」の順番でめっき積層物を作製した。めっき浴としては、30Lの塩化ビニル樹脂製のめっき槽を用い、各々のめっき液を25Lほど入れて、Snめっきの陽極はスズ、Inめっきの陽極は白金を使用した。
Snめっき、Inめっき各々のめっき液は以下のものを使用した。
・Snめっき液 石原ケミカル社製(Sn濃度 20g/L)
・Inめっき液 石原ケミカル社製(In濃度 20g/L)
【0130】
第1層目はSnめっきを行った。条件は、前記の被めっき物をSnめっき液に浸漬して揺動しながら、温度20℃、電流密度1.5A/dm2の定電流で、所定のめっき厚を得るために必要な時間、めっき処理を行った。めっき処理後、引上げて、シャワーにて水洗を行った。
続いて、第2層目のInめっきを行った。Snめっき処理を行った被めっき物をInめっき液に浸漬して揺動しながら、温度20℃、電流密度1.5A/dm2の定電流で、所定のめっき厚を得るために必要な時間、めっき処理を行った。めっき処理後、引上げて、シャワーにて水洗を行った。
これを恒温乾燥機にて、50℃で5分間乾燥した後、これをレジスト剥離液に浸漬して、レジスト除去した。
続いて、Cuエッチング液に浸漬し、めっき積層物が形成されいない部分のCuをエッチングした。引き続いて、Tiエッチング液に浸漬し、めっき積層物が形成されいない部分のTiをエッチングしてSn-In系めっき積層物を作製した。
【0131】
続いて、このSn-In系低融点めっき積層物をシンアペックス社製VSU-200リフロー装置を用いて、下記条件でリフローしてSn-In系低融点はんだ合金バンプを作製した。
【0132】
・還元剤 :ギ酸
・圧力 :200mbar
・昇温速度 :20℃/min
・トップ温度:140℃(キープ時間180sec)
【0133】
Sn-In系低融点めっき積層物の外観写真を図9に示す。更にその断面をSEM-EDX観察した結果を図10に示す。
Sn-In系低融点めっき積層物を加熱リフローして作製したSn-In系低融点はんだ合金バンプ外観写真を図11に示す。また、そのバンプ断面をSEM-EDX観察した結果を図12に示す。
【0134】
[参考例1~3]
参考例1~3は、公知のPbフリーはんだ合金とのバンプシェア強度の比較の目的で作製した、公知のPbフリーはんだ合金バンプである。実施例7と同様のレジストパターン(但し、接続用の開口部が、参考例1は、60μmφ×高さ60μm、参考例2は、50μmφ×高さ35μm、参考例3は、200μmφ×高さ10μm)が形成されたシリコンウェハを用いて、同様の操作で表3に示すアンダーメタルを成膜した。但し、参考例1は、Niめっき層の下に電解めっきで10μmのCuポスト形成、参考例2は、Niめっき層を5μm形成、参考例3は、Niめっき層を省略した。そして、その上に、参考例1、参考例2では、公知のSn・Agめっき液を用いてSnAgめっき処理した。参考例3では、公知のInめっき液を用いてInめっき処理した。これらをそれぞれ乾燥して、実施例7と同様のレジスト除去操作を行った後、同様のリフロー装置を用いて表3記載のリフロー温度以外は同様の操作条件ではんだ合金バンプを作製した。
【0135】
表3に、実施例7および参考例1~3のバンプ組成とシェア強度測定結果を示す。なお、表中のめっき積層厚みは所定の組成にするための目標値である。参考までに、シェア強度試験機の概念図を図13に示す。
公知のPbフリーはんだ合金バンプのうち、参考例3のインジウム単独系はバンプシェア強度が0.3mg/μm2と著しく低いため実用できないが、Pbフリーはんだ合金として通常的に用いられている参考例1~2のSnAg系のバンプシェア強度は3.3mg/μm2であった。
【0136】
Sn-In系低融点めっき積層物の形状については、図9に示した実施例7のめっき積層物のSEM外観写真から、レジストパターンに相応した円柱状のめっき積層物を形成していることが判る。また、これはCu/Niのアンダーメタル上にSn→Inの順に積層めっきしたものであるが、図10に示したこのめっき積層物の断面SEM-EDXから、Sn層にInがほぼ均一に拡散しているのが観察された。また、In層にSnがほぼ均一拡散しているのが観察され、Sn層にInが拡散したSnIn層と、In層にSnが拡散したSnIn層との積層構造を形成していることがわかる。この様に、最終物のめっき積層物では、SnおよびInが相互に拡散してSnInの合金を形成することで、Sn、In各々単独の融点よりも大幅に低い融点を示すと考えられる。また、加熱リフロー段階でもめっき積層物のSnIn合金化が進行し、更に低融点化が進むものと考えられる。
【0137】
図11に示しためっき積層物を140℃で加熱リフローして作製したSn-In系低融点はんだ合金バンプのバンプ外観SEM写真から、Cu/Niアンダーメタル上に半球状のはんだ合金バンプが形成されているのが判る。また、図12に示したこのバンプ断面のSEM-EDX写真から、加熱リフローすることで形成されたはんだ合金バンプは、Snが高濃度な部分とInが高濃度の部分があるものの、SnとInを含むSnIn合金で形成されていることがわかる。
【0138】
また、表3(バンプ組成とシェア強度)に示した実施例7の本発明の製造方法で得られるSn-In系低融点めっき積層物のはんだ合金バンプのシェア強度はいずれも公知のPbフリーはんだ合金バンプのシェア強度と同等で、「3mg/μm2以上」と十分な接合強度を有しており、接合材料として実用的にも十分使用できることが判明した。
【0139】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の接合部材およびその製造方法は、半導体電子部品と配線基板のPbフリーのはんだ付け実装用途に好適に利用することができる。また、特に低温接合が可能であることからフレキシブル基板(樹脂基板)や圧電素子CDTe半導体素子、CCD素子、フォログラム素子などの耐熱性の低い電子部品の低温実装の方法に、好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0141】
1 基板
2 保護膜
3 パッド
4 給電膜
5 レジスト膜
6 アンダーメタル
7 積層めっき層
8 はんだ合金バンプ
9 はんだ合金バンプ
10 接合用の金属膜(Au)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13