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特開2022-43751燻煙方法、燻煙装置及び燻煙装置ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043751
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】燻煙方法、燻煙装置及び燻煙装置ユニット
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/20 20060101AFI20220309BHJP
   A01N 25/18 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A01M1/20 Y
A01N25/18 103B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149206
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】山岸 弘
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA13
2B121AA14
2B121AA17
2B121AA20
2B121CA07
2B121CA21
2B121CC02
2B121CC03
2B121CC04
2B121CC25
2B121CC31
2B121EA01
2B121FA15
4H011DE06
4H011DF02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燻煙開始を遅延できる間接加熱方式の燻煙方法を提供する。
【解決手段】水を含む液体と酸化カルシウムとを接触させ、前記水と前記酸化カルシウムとの反応熱により燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙方法であって、前記液体が、高分子化合物及び非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上の燻煙開始遅延剤を含み、前記液体の25℃における粘度が3.5~30mPa・sである、燻煙方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む液体(A)と酸化カルシウムとを接触させ、前記水と前記酸化カルシウムとの反応熱により燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙方法であって、
前記液体(A)が、高分子化合物(B1)及び非イオン性界面活性剤(B2)からなる群から選ばれる1種以上の燻煙開始遅延剤(B)を含み、
前記液体(A)の25℃における粘度が3.5~30mPa・sである、燻煙方法。
【請求項2】
前記高分子化合物(B1)が、キサンタンガム及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の燻煙方法。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤(B2)が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤及びアルキルアミンオキシド型非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の燻煙方法。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤(B2)が、分枝型アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の燻煙方法。
【請求項5】
有底筒状の外容器と、前記外容器内に設けられ、底部が透水性を有する有底筒状の内容器とを備え、前記内容器内には、酸化カルシウムが充填された加熱部と、燻煙剤が充填された被加熱部とが伝熱部を介して設けられ、前記外容器に水を溜め、前記水と前記酸化カルシウムとの反応熱により前記燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙装置であって、
前記外容器における水が溜められる部分に、高分子化合物(B1)及び非イオン性界面活性剤(B2)からなる群から選ばれる1種以上の燻煙開始遅延剤(B)が付着しており、
前記外容器の前記部分への前記燻煙開始遅延剤(B)の付着量が、前記外容器に溜められる水と前記燻煙開始遅延剤(B)とが混合された液体の25℃における粘度が3.5~30mPa・sとなる量である、燻煙装置。
【請求項6】
酸化カルシウムが充填された加熱部と、燻煙剤が充填された被加熱部とが伝熱部を介して設けられ、前記酸化カルシウムと水とを反応させ、その反応熱により前記燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙装置と、
水と、高分子化合物(B1)及び非イオン性界面活性剤(B2)からなる群から選ばれる1種以上の燻煙開始遅延剤(B)とを含む液体(A)と、
を備える燻煙装置ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙方法、燻煙装置及び燻煙装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭においては、有害生物、例えばカビ、細菌等の微生物やハエ、カ、ゴキブリ等の衛生害虫の防除等のために、家屋内、車両内等の空間を燻煙剤(燻蒸剤)で処理することが行われる。燻煙剤には、殺菌成分、殺虫成分等の有効成分と燃焼基剤とを含む固形製剤がある。使用時において燻煙剤を加熱すると、燃焼基剤が燃焼又は分解することで煙(ガス及び微粒子)が発生し、この煙と熱の作用により有効成分が空気中に揮散する。そのため、短時間で有効成分が空間内全体に行き渡り、有害生物の防除等を行うことができる。
燻煙剤の加熱には、燻煙剤の一部分を直接加熱して燻煙剤を燃焼させる直接加熱方式や、酸化カルシウム等の発熱剤と水との反応熱(水和反応熱)により燻煙剤を加熱する間接加熱方式が用いられる。
【0003】
間接加熱方式において、発熱剤と水とを接触させてから発煙が始まるまでの時間(燻煙開始時間)を従来よりも短くすることが検討されている。
特許文献1には、発熱剤を収容する密閉容器の底壁及び側壁の少なくともいずれか一方を水浸透性壁とし、水浸透性壁に界面活性剤を含浸させることにより、発熱剤に迅速に水を浸透させ、スムースな加熱を行う技術が開示されている。
特許文献2には、容器の形状の工夫や発熱剤の成形により、効率的に燻煙剤を加熱せしめ、速やかに燻煙を開始させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-350688号公報
【特許文献2】特開2000-60405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の間接加熱方式や特許文献1、2の技術における燻煙開始時間では、建築物の床下のような狭くて作業者の退避に手間取る空間や、大規模倉庫のような一度に大量の燻煙剤を使う広い空間を燻煙する際に、作業者の退避中や作業中に発煙が始まってしまい、作業者の安全が確保できないおそれがある。
本発明の一態様は、燻煙開始を遅延できる間接加熱方式の燻煙方法、燻煙装置及び燻煙装置ユニットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]水を含む液体(A)と酸化カルシウムとを接触させ、前記水と前記酸化カルシウムとの反応熱により燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙方法であって、
前記液体(A)が、高分子化合物(B1)及び非イオン性界面活性剤(B2)からなる群から選ばれる1種以上の燻煙開始遅延剤(B)を含み、
前記液体(A)の25℃における粘度が3.5~30mPa・sである、燻煙方法。
[2]前記高分子化合物(B1)が、キサンタンガム及びポリビニルアルコールからなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]の燻煙方法。
[3]前記非イオン性界面活性剤(B2)が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤及びアルキルアミンオキシド型非イオン性界面活性剤からなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]又は[2]の燻煙方法。
[4]前記非イオン性界面活性剤(B2)が、分枝型アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤である、前記[1]~[3]のいずれかの燻煙方法。
[5]有底筒状の外容器と、前記外容器内に設けられ、底部が透水性を有する有底筒状の内容器とを備え、前記内容器内には、酸化カルシウムが充填された加熱部と、燻煙剤が充填された被加熱部とが伝熱部を介して設けられ、前記外容器に水を溜め、前記水と前記酸化カルシウムとの反応熱により前記燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙装置であって、
前記外容器における水が溜められる部分に、高分子化合物(B1)及び非イオン性界面活性剤(B2)からなる群から選ばれる1種以上の燻煙開始遅延剤(B)が付着しており、
前記外容器の前記部分への前記燻煙開始遅延剤(B)の付着量が、前記外容器に溜められる水と前記燻煙開始遅延剤(B)とが混合された液体の25℃における粘度が3.5~30mPa・sとなる量である、燻煙装置。
[6]酸化カルシウムが充填された加熱部と、燻煙剤が充填された被加熱部とが伝熱部を介して設けられ、前記酸化カルシウムと水とを反応させ、その反応熱により前記燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙装置と、
水と、高分子化合物(B1)及び非イオン性界面活性剤(B2)からなる群から選ばれる1種以上の燻煙開始遅延剤(B)とを含む液体(A)と、
を備える燻煙装置ユニット。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、燻煙開始を遅延できる間接加熱方式の燻煙方法、燻煙装置及び燻煙装置ユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】燻煙装置の一例を示す模式断面図である。
図2】燻煙装置の他の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔燻煙方法〕
本発明の一態様に係る燻煙方法は、水を含む液体(A)と酸化カルシウムとを接触させ、水と酸化カルシウムとの反応熱により燻煙剤を加熱する間接加熱方式の燻煙方法である。
液体(A)は、水とともに、高分子化合物(B1)及び非イオン性界面活性剤(B2)からなる群から選ばれる1種以上燻煙開始遅延剤(B)(以下、「(B)成分」とも記す。)を含む。液体(A)は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。液体(A)の25℃における粘度は3.5~30mPa・sである。
【0010】
液体(A)と酸化カルシウムとを接触させると、液体(A)中の水と酸化カルシウムとが反応し、反応熱(水和反応熱)が発生する。
液体(A)と酸化カルシウムとを接触させる方法は、特に限定されるものではないが、例えば、予め水と(B)成分とを混合して液体(A)を調製しておき、この液体(A)を、燻煙剤の加熱に用いる燻煙装置に供給する方法(方法1)、燻煙剤の加熱に用いる燻煙装置の水と接触する部分(後述の外容器の所定の内面や内容器の底部)に(B)成分を予め付着させておき、この燻煙装置に水を供給する方法(方法2)等が挙げられる。
燻煙剤の加熱に用いる燻煙装置は、典型的には、酸化カルシウムが充填された加熱部と、燻煙剤が充填された被加熱部と、加熱部と被加熱部とを区画する伝熱部とを備えており、燻煙装置に供給された液体が加熱部に導入されるようになっている。加熱部に液体が導入されると、液体中の水と酸化カルシウムとが反応し、その反応熱が伝熱部を介して被加熱部に伝わって燻煙剤が加熱される。
【0011】
酸化カルシウムと液体(A)との質量比[酸化カルシウム/液体(A)]は、0.5~5.0が好ましく、1.0~4.5がより好ましい。酸化カルシウムと液体(A)との質量比が前記下限値以上であれば、燻煙剤の発煙に充分な熱量が得られやすく、前記上限値以下であれば、突沸等の異常反応が起きにくい。
【0012】
酸化カルシウムと燻煙剤との質量比[酸化カルシウム/燻煙剤]は、2.0~15.0が好ましく、4.0~13.0がより好ましい。酸化カルシウムと燻煙剤との質量比が前記下限値以上であれば、燻煙剤の発煙に充分な熱量が得られやすく、前記上限値以下であれば、突沸等の異常反応が起きにくい。
【0013】
<水>
水としては、特に制限はなく、イオン交換水、蒸留水、水道水等を用いることができる。容易に入手できる点で、水道水が好ましい。
水の含有量は、液体(A)から(B)成分及び他の成分を除いた残部である。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分は、高分子化合物(B1)(以下、「(B1)成分」とも記す。)及び非イオン性界面活性剤(B2)(以下、「(B2)成分」とも記す。)からなる群から選ばれる1種以上である。
(B)成分は、液体(A)の粘度を高め、燻煙開始を遅延する効果を有する。液体(A)が、25℃における粘度が3.5~30mPa・sとなるように(B)成分を含むことで、燻煙開始を遅延でき、狭い空間や広い空間を燻煙処理する場合に安全に作業できる。
【0015】
(B1)成分は、水溶性高分子化合物であることが好ましい。水溶性高分子化合物は、水に溶解したときに、分子のまわりに多くの水を包含したヒドロゲルを形成し、水溶液の粘度を著しく増大させる効果をもつ。
「水溶性」とは、25℃の水1Lへの溶解度が0.1g以上であることを示す。
【0016】
(B1)成分としては、例えば、キサンタンガム、クインスシードガム等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースナノファイバー等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子化合物が挙げられる。これらの中でも、粘度制御性に優れる点で、キサンタンガム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、セルロースナノファイバー、カルボキシビニルポリマーが好ましく、キサンタンガム、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0017】
(B1)成分の分子量は、10000以上が好ましく、100000以上がより好ましい。(B1)成分の分子量の上限は、例えば1000000である。該分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量である。
【0018】
(B2)成分としては、例えば、ポリオキシエチレン(以下、「POE」とも記す。)アルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、ショ糖脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、プロピレングリコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、グリセリンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、アルキルアミンオキシド型非イオン性界面活性剤、POE-ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、POE-グリセリン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、POE-プロピレングリコール脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤、POE・ポリオキシプロピレン(以下、「POP」とも記す。)-アルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤、オキプロピレンとオキシエチレンの共重合型非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0019】
(B2)成分としては、上記の中でも、水への溶解性に優れる点で、POEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、アルキルアミンオキシド型非イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が好ましく、POEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、アルキルアミンオキシド型非イオン性界面活性剤がより好ましい。これらの中でも、燻煙遅延効果に優れる点で、分枝型アルキル基を有するPOEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が好ましい。
POEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤が有するアルキル基の炭素数は、例えば8~20である。POEにおけるオキシアルキレン基の平均繰り返し数は、例えば6~40である。
【0020】
液体(A)中の(B)成分の含有量は、液体(A)の25℃における粘度が3.5~30mPa・sとなるように設定される。
(B)成分が(B1)成分である場合、(B1)成分の含有量は、液体(A)の総質量に対し、0.005~1.0質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。(B1)成分の含有量が前記範囲内であることで、液体(A)の粘度特性が好ましい範囲になりやすく、優れた燻煙開始遅延効果が得られやすい。
(B)成分が(B2)成分である場合、(B2)成分の含有量は、液体(A)の総質量に対し、2.0~15.0質量%が好ましく、4.0~10.0質量%がより好ましい。(B2)成分の含有量が前記範囲内とすることで、液体(A)の粘度特性が好ましい範囲になりやすく、優れた燻煙開始遅延効果が得られやすい。
【0021】
<他の成分>
他の成分としては、例えば香料、防腐剤、着色剤、抗菌剤が挙げられる。これらの成分は2種以上を併用してもよい。
液体(A)中の他の成分の含有量は、例えば、液体(A)の総質量に対し、0~10質量%である。
【0022】
<粘度>
液体(A)の25℃における粘度は、3.5~30mPa・sであり、4.5~30mPa・sが好ましく、5.5~30mPa・sがより好ましる。液体(A)の粘度が3.5mPa・s以上であれば、燻煙開始遅延効果に優れる。また、燻煙剤の揮散率にも優れ、燻煙時の燻煙装置の蓋体の目詰まりを抑制できる。特に5.5mPa・s以上であれば、燻煙時の焦げ臭を抑制できる。液体(A)の粘度が30mPa・s以下であれば、液体(A)が酸化カルシウムに浸透しやすく、燻煙剤を発煙させるのに充分に反応熱が得られやすい。
「粘度」はB型粘度計により測定される値である。詳しい測定条件は後述する実施例に示す。
【0023】
<酸化カルシウム>
酸化カルシウムは、水と反応(水和反応)して発熱する発熱剤である。水と酸化カルシウムとの反応熱の温度は約250℃~約400℃である。
酸化カルシウムは、粒状、粉状、塊状等であってよい。
酸化カルシウムの20℃における嵩比重は、0.50~1.0g/cmが好ましい。
酸化カルシウムの平均粒子径は、1.0~5.0mmが好ましい。平均粒子径は、ふるい法により測定される。
【0024】
<燻煙剤>
燻煙剤は、間接加熱方式での加熱によって燻煙可能なものであればよく、微生物、衛生害虫等の有害生物の防除等に用いられる燻煙剤として公知の燻煙剤を用いることができる。
燻煙剤の一例として、有機発泡剤及び微生物制御剤を含むものが挙げられる。この例の燻煙剤は、微生物制御効果がより高まる点から、界面活性剤をさらに含むことが好ましい。この例の燻煙剤は、有機発泡剤、微生物制御剤及び界面活性剤以外の成分(以下、「任意成分」とも記す。)をさらに含んでいてもよい。
【0025】
(有機発泡剤)
有機発泡剤は、加熱により熱分解して多量の熱を発生すると共に、炭酸ガスや窒素ガス等(以下、これらを総称して「発泡ガス」という。)を発生する成分であり、燃焼基材として機能する。
有機発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。これらの中でも、分解温度、発泡ガスの発生量等の観点から、アゾジカルボンアミドが好ましい。
有機発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0026】
有機発泡剤の含有量は、有機発泡剤の種類や他の成分を勘案して決定することができる。具体的に、有機発泡剤の含有量は、燻煙剤の総質量に対して50~90質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましい。有機発泡剤の含有量が上記下限値以上であると、微生物制御剤を効率よく煙化させて揮散させやすくなる。有機発泡剤の含有量が上記上限値以下であると、有機発泡剤の分解物の飛散量が少なくなり、処理対象の空間(対象空間)を汚染しにくくなる。
【0027】
(微生物制御剤)
微生物制御剤は、微生物制御効果や微生物由来の臭気に対する消臭効果を発揮する成分であり、燻煙剤の有効成分として機能する。
微生物制御剤としては、例えば、従来の除菌剤、殺菌剤、抗菌剤、防カビ剤、抗カビ剤等に用いられる銀系薬剤や有機系薬剤が挙げられる。銀系薬剤及び有機系薬剤は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0028】
銀系薬剤は、有効成分として、銀単体又は銀化合物を含む。銀単体は、除菌、殺菌、抗菌、防カビ、抗カビ又は消臭作用を有する。銀化合物としては、例えば、酸化銀;塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、スルホン酸銀塩等の無機銀塩;蟻酸銀、酢酸銀等の有機銀塩等が挙げられる。
また、銀系薬剤としては、前記の銀化合物をゼオライト、シリカゲル、低分子ガラス、リン酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化チタン等の物質(以下、「担体」ともいう。)に担持させた担持体を用いてもよい。担持体としては、例えば銀単体又は酸化銀、無機銀塩、有機銀塩等の銀化合物を担持したゼオライト系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、ケイ酸塩系抗菌剤等が挙げられる。
【0029】
上記の中でも、銀系薬剤としては、微生物制御剤由来の臭気をより低減する観点から、銀単体、酸化銀、硝酸銀等の無機銀塩、又はこれらを担体に担持させた担持体が好ましい。特に銀単体、酸化銀、硝酸銀等の無機銀塩等の銀化合物を担持したゼオライト系抗菌剤が好ましい。
銀系薬剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0030】
銀系薬剤の含有量は、燻煙剤の総質量に対する銀濃度が0.001~0.5質量%となる量が好ましく、0.05~0.1質量%となる量がより好ましい。銀濃度が上記下限値以上であると、微生物制御効果や消臭効果が充分に得られる。銀濃度が上記上限値を超えても、微生物制御効果や消臭効果が飽和するため、コストを高めるだけである。加えて、銀濃度が上記上限値を超えると、相対的に燻煙剤中の他の成分の含有量が少なくなり、微生物制御剤の揮散率が低下するおそれがある。
【0031】
有機系薬剤としては、例えば3-メチル-4-イソプロピルフェノール(IPMP)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト(IPBC)、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、o-フェニルフェノール(OPP)、安息香酸ナトリウム、グルタルアルデヒド、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩等が挙げられる。これらの中でも微生物制御効果の観点から、IPMP、IPBC、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドが好ましく、IPMPがより好ましい。
有機系薬剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0032】
有機系薬剤の含有量は、燻煙剤の総質量に対して、1~30質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましい。有機系薬剤の含有量が上記下限値以上であると、微生物制御効果や消臭効果が充分に得られる。有機系薬剤の含有量が上記上限値を超えても、微生物制御効果や消臭効果が飽和するため、コストを高めるだけである。加えて、有機系薬剤の含有量が上記上限値を超えると、相対的に燻煙剤中の他の成分の含有量が少なくなり、微生物制御剤の揮散率が低下するおそれがある。
【0033】
(界面活性剤)
燻煙剤が界面活性剤を含むと、微生物制御効果がより高まる。これは、処理対象面が特定量の水分を有する場合、界面活性剤によって微生物制御剤が微生物に浸透しやすくなるためと考えられる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、デイビス法で求められるHLBが7~15である非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0034】
非イオン性界面活性剤としては、例えば下記式(1)で表されるトリブロック型界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル型界面活性剤等が挙げられる。
-O-(PO)-(EO)-(PO)-R ・・・(1)
式(1)中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6の炭化水素基であり、POはオキシプロプレン基であり、EOはオキシエチレン基であり、fはPOの平均繰り返し数を表し5~150の数であり、gはEOの平均繰り返し数を表し5~250の数であり、hはPOの平均繰り返し数を表し5~150の数である。
【0035】
及びRは、それぞれ水素原子が好ましい。
fは10~30の数が好ましい。
gは5~30の数が好ましい。
hは10~30の数が好ましい。
f+g+hは20~500の数が好ましい。
【0036】
界面活性剤の市販品としては、例えばBASFジャパン株式会社製の「PluronicRPE1720」、「PluronicRPE1740」、「PluronicRPE2520」;花王株式会社製の「エマゾールL-10V」、「エマゾールO-10V」、「エマゾールS-10V」などが挙げられる。
界面活性剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0037】
界面活性剤の含有量は、燻煙剤の総質量に対して1~15質量%が好ましく、5~12質量%がより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であると、微生物制御効果がより高まる。
【0038】
(任意成分)
任意成分としては、例えば結合剤、賦形剤、発熱助剤、安定剤、効力増強剤、酸化防止剤、賦香剤、溶剤などが挙げられる。
【0039】
結合剤としては、例えばセルロース系化合物(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとそのカルシウム塩及びナトリウム塩、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、デンプン系化合物(デンプン、α化デンプン、デキストリン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム塩等)、天然物系化合物(アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント、ゼラチン等)、合成高分子系化合物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等)が挙げられる。
賦形剤としては、例えば無機鉱物(クレー、カオリン、タルク、石英、水晶等)が挙げられる。
発熱助剤としては、例えば酸化亜鉛、リン酸カルシウム、メラミン等が挙げられる。
安定剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドキシアニソール、没食子酸プロピル(プロピル-3,4,5-トリヒドロキシベンゾエート)、エポキシ化合物(エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等)が挙げられる。
効力増強剤としては、例えばピペロニルブトキシド(5-[2-(2-ブトキシエトキシ)エトキシメチル]-6-プロピル-1,3-ベンゾジオキソール)、S-421(ジ(2,3,3,3-テトラクロロプロピル)エーテル)が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、トコフェロールが挙げられる。
賦香剤としては、例えば各種の香料が挙げられる。
溶剤としては、例えば水、1価アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノール等)が挙げられる。
これら任意成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0040】
(燻煙剤の製造方法)
燻煙剤は、粉状、粒状、錠剤等の固形製剤、又は液体製剤として調製される。
燻煙剤の製造方法としては、目的とする剤形に応じて、公知の製造方法が用いられる。例えば、粒状製剤とする場合は、有機発泡剤及び微生物制御剤、必要に応じて界面活性剤及び任意成分の1つ以上を混合し、造粒する製造方法により製造できる。造粒方法としては、押出し造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、転動造粒法、流動層造粒法等、公知の造粒法が用いられる。液体製剤とする場合は、各成分を混合して溶解又は分散する製造方法により製造できる。
【0041】
押出し造粒法による製造方法の具体例として、有機発泡剤及び微生物制御剤と、必要に応じて界面活性剤及び任意成分の1つ以上をニーダー等により混合し、必要に応じて適量の水を加えて混合し、得られた混合物を任意の開孔径を有するダイスを用い、前押出しあるいは横押出し造粒機で造粒する方法が挙げられる。該造粒物をさらにカッター等で任意の大きさに切断し、水分除去のための乾燥を行ってもよい。
乾燥方法は、例えば従来公知の乾燥機を用いた加熱乾燥法が挙げられる。乾燥温度は特に限定されないが、香料等の揮発を抑制する観点から、50~80℃が好ましい。乾燥時間は、乾燥温度に応じて適宜決定される。
【0042】
乾燥後の燻煙剤の水分量は特に限定されないが、燻煙剤の総質量に対して5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%であってもよい。水分量が上記上限値以下であると、微生物制御剤の揮散率を良好にしやすい。
水分の含有量は、例えば、乾燥後の燻煙剤をすりつぶし、105℃、20分の条件にて、水分計で測定することができる。水分計としては、株式会社島津製作所製の水分計「MOC-120H」が挙げられる。
【0043】
以下、本態様に係る燻煙方法の実施形態について、図面を参照して詳述する。
なお、以下の説明で用いる各図面において、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。
【0044】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る燻煙方法では、図1に示す燻煙装置1と、液体(A)とを備える燻煙装置ユニットが用いられる。
液体(A)は前記したとおりである。液体(A)は典型的には容器に収容されている。
【0045】
(燻煙装置)
図1に示す燻煙装置1は、有底筒状の外容器10と、外容器10内に設けられ、底部24が透水性を有する有底筒状の内容器20とを備えている。
【0046】
外容器10は、筒状の周壁部12と底部14とで概略構成されている。
底部14の内底面14aには、4つの直方体状の突起部15が90°間隔で配置されている。
【0047】
外容器10の大きさは、使用する燻煙剤の量、内容器20等の大きさに応じて決定される。処理対象とする空間の床面積が6.5~30m程度の家庭用であれば、例えば、外容器10の高さは40~120mm、外容器10の内径は55~100mmとされる。処理対象とする空間の床面積が30~300m程度の大規模倉庫用であれば、例えば、外容器10の高さは100~150mm、外容器10の内径は80~150mmとされる。
【0048】
外容器10の材質は、耐水性を少なくとも有するものであればよく、例えばプラスチック、紙等が挙げられる。外容器10の厚さは、強度等を勘案して決定でき、例えば0.5~10mmとされる。
【0049】
内容器20は、筒状の側壁部22と底部24とで概略構成されている。
内容器20の外周面22bは、外容器10の内周面12aと離間している。
内容器20内には、加熱部30と被加熱部40とが伝熱部50を介して設けられている。加熱部30は、酸化カルシウムが内容器20に充填されて形成されたものである。
【0050】
伝熱部50は、有底筒状の部材であり、その一部が加熱部30に埋まるように内容器20内に設けられている。伝熱部50内には、燻煙剤が充填されて被加熱部40が形成されている。
伝熱部50の上端部50cと側壁部22の上端部22cは連結部材26で連結され、上端面20eにおいて内容器20と伝熱部50との間は連結部材26で塞がれている。また、連結部材26には、発熱剤と水との反応の際に発生する蒸気の抜け穴となる通気孔26aが設けられている。
伝熱部50の上端面50e近傍には、蓋体60が設けられている。
【0051】
伝熱部50は、内容器20より小さく、その上端面50eが内容器20の上端面20eと面一となるように設けられている。すなわち、内容器20における内周面22aは伝熱部50における外周面50bと離間し、内容器20の底部24は伝熱部50における底部54と離間している。そして、内容器20と伝熱部50との間には、酸化カルシウムが充填されている。内容器20の底部24と伝熱部50における底部54との距離は、10~18mmが好ましく、12~14mmがより好ましい。
【0052】
内容器20の大きさは、使用する燻煙剤の量等に応じて決定される。処理対象とする空間の床面積が6.5~30m2程度の家庭用であれば、例えば、内容器20の高さは30~110mm、内容器20の外径は45~90mmとされる。
【0053】
燻煙装置1において、外周面22bと内周面12aとは、7mm以上離間していることが好ましい。両者の間の距離が7mm未満であると、燻煙した際に外容器10が熱くなりすぎるおそれがある。外周面22bと内周面12aとの間の距離が15mm以下であると、加熱による内容器20からの燻煙剤の噴出力がより強まり、有効成分の揮散性がより優れる傾向がある。
【0054】
この例の内容器20の底部24は、通水孔241aを有する板241b上に透水性材料241cが載置した透水性底板241からなる。透水性材料241cは板241bの略全面を覆うように載置されることが好ましく、特に、底部24は、板241bに透水性材料241cをかしめて固着してなる透水性底板が好ましい。底部24が、板241bに透水性材料241cをかしめて固着してなる透水性底板241であれば、透水性材料241cの位置が底部24上でずれたり、捲れ上がったりするのを防ぐことができる。よって、燻煙を開始する時間にバラツキが生じにくく、また包装工程の機械化も容易である。
透水性材料241cを板241bにかしめて固着する方法としては特に制限されず、特開2001-247407号公報に記載の方法などが挙げられる。例えば、通水用の通水孔を有する金属製の円形板に、さらに数個所(好ましくは4個所以上、より好ましくは6~8個所)、好ましくは通水用の通水孔よりも外側の円周に近い位置で、より好ましくは対称の位置に、孔を穿つ際に金属板の裏側に、好ましくは1つの孔につき2個以上の突起を生じるように小孔を穿つ。そして、突起の出ている方の面上に透水性材料を載せてプレスにかける。そうすると、突起が横に倒れ、押し潰されることにより透水性材料が金属板に固着される。
【0055】
板241bとしては、ブリキ、鋼板、アルミニウム等の金属板が好ましい。
透水性材料241cとしては、透水性の高い不織布や濾紙等が好ましく、例えばポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維、またはこれら合成繊維と綿、レーヨン等とを素材とする不織布;ガラス繊維からなる不織布または濾紙;セルロース系の濾紙等が挙げられる。中でもレーヨンを多く含有する不織布は透水性が高く、かつセルロース系の濾紙等よりも丈夫で好ましい。
【0056】
側壁部22の材質は、加熱部30で発生する熱による変形等が生じない耐熱性を有するものが用いられ、例えば金属、セラミックス、紙等が挙げられる。側壁部22、底部24の各厚さは、要求される強度、耐熱性等を勘案して決定でき、例えば、側壁部22の厚さは0.1~5mm、底部24の厚さは0.1~5mmとされる。
【0057】
伝熱部50は、燻煙剤を充填する容器として機能すると共に、加熱部30で生じた熱エネルギーを被加熱部40に伝える機能を有するものである。
伝熱部50の材質は、伝熱性を有するものであればよく、金属が好ましい。伝熱部50の厚さは、伝熱性等を勘案して決定でき、例えば0.1~5mmとされる。
【0058】
伝熱部50の大きさは、燻煙剤の量に応じて決定される。処理対象とする空間の床面積が6.5~30m程度の家庭用であれば、例えば、伝熱部50を構成する部材の高さ(底部54と上端面50eとの距離)は10~80mm、該部材の外径は40~85mmとされる。処理対象とする空間の床面積が30~300m程度の大規模倉庫用であれば、例えば、伝熱部50を構成する部材の高さは50~200mm、該部材の外径は70~220mmとされる。
【0059】
蓋体60は、燻煙剤の蒸気が通過する孔を有するものであり、メッシュ、パンチングメタル、格子状の枠体等が挙げられる。
蓋体60の材質は、被加熱部40から発生する高温の蒸気による変形等が生じない耐熱性を有するものが用いられ、例えば金属、セラミックス、紙等が挙げられる。
【0060】
(燻煙方法)
上記燻煙装置ユニットを用いた本実施形態の燻煙方法について説明する。本実施形態の燻煙方法は、前記した方法1に該当する。
まず、燻煙装置1の外容器10に液体(A)を入れる。ついで、液体(A)を入れた外容器10を対象空間内に設置し、その外容器10の突起部15上に、内容器20の底部24を液体(A)中に浸漬するように、内容器20を配置する。
内容器20を配置すると、底部24から内容器20内に浸入した液体(A)中の水が加熱部30で酸化カルシウムと水和反応し、発熱する。この熱が伝熱部50の周壁や底壁を介して燻煙剤に伝わり、燻煙剤はその温度が上昇して蒸散する。つまり、燃焼基剤の蒸気が発生し、この生じた蒸気と共に有効成分が蓋体60の孔を通過して拡散する。
【0061】
外容器10に入れる液体(A)の量は、内容器20の底部24が液体(A)中に浸漬する程度の量が少なくとも必要であるが、発熱効率を高める観点では、できるだけ少ないことが好ましく、酸化カルシウムと液体(A)との質量比[酸化カルシウム/液体(A)]等を勘案して適宜決定すればよい。
酸化カルシウムと液体(A)との質量比は、前記したように、0.5~5.0が好ましく、1.0~4.5がより好ましい。
【0062】
燻煙剤の加熱温度、加熱速度及び保持時間は、有効成分の種類に応じて適宜設定すればよい。酸化カルシウムと液体(A)との質量比、酸化カルシウムの使用量、酸化カルシウムの商品グレード、酸化カルシウムの粒度の選択により、加熱温度、加熱速度及び保持時間を制御できる。酸化カルシウムと液体(A)との質量比は、発生する煙状物の色の濃さ、煙状物の発生量、発煙継続時間、有効成分の揮散量等を勘案して適宜決定すればよい。また、燻煙剤を充填する伝熱部50を構成する部材の容量または材質等によっても制御できる。
また、揮散させるのに充分な加熱温度(例えば190℃以上)に到達する時間を延ばすことで燻煙開始を遅延させることができる。燻煙開始を遅延させることで揮散状態が穏やかになり、揮散率が向上し、燻煙残渣物の焦げが少なく臭気が改善され、蓋体(図1の60)の詰まりが減るとの効果が得られる。
【0063】
燻煙剤の加熱温度は、150~450℃が好ましく、170~400℃がより好ましく、190~400℃がさらに好ましい。150℃以上で加熱することで、発生した燃焼基剤の蒸気を煙状に噴出させることができ、短時間で有効成分を対象空間全体に拡散させることができる。該加熱温度の範囲内においては、加熱温度が高いほど、有効成分が対象空間全体に拡散する時間が短くなり、その拡散範囲も広くなる。加熱温度が450℃を超えると、有効成分が熱分解し、有効な状態(未分解の状態)で揮散する量が減少(揮散効率が低下)するおそれがある。
【0064】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る燻煙方法では、燻煙装置1Aが用いられる。
【0065】
(燻煙装置)
本実施形態で用いられる燻煙装置1Aは、図1に示す燻煙装置1において、外容器10における水が溜められる部分(以下、「外容器の所定の内面」とも記す。)に(B)成分が付着している以外は、燻煙装置1と同様である。外容器の所定の内面には、必要に応じて、他の成分が付着していてもよい。
ここで、外容器10における水が溜められる部分とは、外容器10の底部14の内底面14aや、外容器10の周壁部12の内周面12aのうちの水と接する部分である。
外容器10に水を入れると、外容器10に溜められる水と(B)成分等が混ざり合って液体(A)となる。
(B)成分及び他の成分は前記したとおりである。
第2実施形態では、燻煙遅延性の点から、(B)成分が(B2)成分であることが好ましい。
【0066】
外容器10の所定の内面への(B)成分の付着量は、外容器10に溜められる水と(B)成分とが混合された液体の25℃における粘度が3.5~30mPa・sとなる量である。
外容器10に溜められる水と(B)成分とが混合された液体の好ましい粘度は、前記した液体(A)の好ましい粘度と同様である。
【0067】
燻煙装置1Aを使用するまでの間に、外容器10の所定の内面に付着した(B)成分が欠落する可能性を考慮して、外容器10の所定の内面に(B)成分を理論量よりも過剰に付着させておいてもよい。理論量は、その量の(B)成分と、外容器に入れる量の水とを混合したときに、目的の粘度の液体が得られる量である。
【0068】
(B)成分が(B1)成分である場合、外容器10に入れた水と(B)成分等が混合されて液体(A)となったときに、液体(A)の総質量に対する(B1)成分の含有量が0.005~1.0質量%となることが好ましく、0.01~0.5質量%となることがより好ましい。
(B)成分が(B2)成分である場合、外容器10に入れた水と(B)成分等が混合されて液体(A)となったときに、液体(A)の総質量に対する(B2)成分の含有量が2.0~15.0質量%となることが好ましく、4.0~10.0質量%となることがより好ましい。
【0069】
(燻煙方法)
燻煙装置1Aを用いた本実施形態の燻煙方法について説明する。本実施形態の燻煙方法は、前記した方法2に該当する。
まず、燻煙装置1Aの外容器10に水を入れる。このとき、外容器10の所定の内面に付着した(B)成分等が水と混ざり合い、液体(A)が得られる。ついで、水を入れた外容器10を対象空間内に設置し、その外容器10の突起部15上に、内容器20の底部24を液体(A)中に浸漬するように、内容器20を配置する。
内容器20を配置すると、底部24から内容器20内に浸入した液体(A)中の水が加熱部30で酸化カルシウムと水和反応し、発熱する。この熱が伝熱部50の周壁や底壁を介して燻煙剤に伝わり、燻煙剤はその温度が上昇して蒸散する。つまり、燃焼基剤の蒸気が発生し、この生じた蒸気と共に有効成分が蓋体60の孔を通過して拡散する。
外容器10に入れる水の量や燻煙剤の加熱温度等は、第1実施形態に係る燻煙方法において、外容器10に入れる液体(A)の量や燻煙剤の加熱温度等と同様である。
【0070】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る燻煙方法では、燻煙装置1Bが用いられる。
【0071】
(燻煙装置)
本実施形態で用いられる燻煙装置1Bは、図1に示す燻煙装置1において、内容器20の底部24に(B)成分が付着している以外は、燻煙装置1と同様である。内容器20の底部24には、必要に応じて、他の成分が付着していてもよい。
【0072】
内容器20の底部24への(B)成分の付着量は、外容器10に溜められる水と(B)成分とが混合された液体の25℃における粘度が3.5~30mPa・sとなる量である。
外容器10に溜められる水と(B)成分とが混合された液体の好ましい粘度は、前記した液体(A)の好ましい粘度と同様である。
【0073】
燻煙装置1Bを使用するまでの間に、内容器20の底部24に付着した(B)成分が欠落する可能性を考慮して、内容器20の底部24に(B)成分を理論量よりも過剰に付着させておいてもよい。
【0074】
(B)成分が(B1)成分である場合、外容器10に入れた水と(B)成分等が混合されて液体(A)となったときに、液体(A)の総質量に対する(B1)成分の含有量が0.005~1.0質量%となることが好ましく、0.01~0.5質量%となることがより好ましい。
(B)成分が(B2)成分である場合、外容器10に入れた水と(B)成分等が混合されて液体(A)となったときに、液体(A)の総質量に対する(B2)成分の含有量が2.0~15.0質量%となることが好ましく、4.0~10.0質量%となることがより好ましい。
【0075】
(燻煙方法)
燻煙装置1Bを用いた本実施形態の燻煙方法について説明する。本実施形態の燻煙方法は、前記した方法2に該当する。
まず、燻煙装置1Bの外容器10に水を入れる。ついで、水を入れた外容器10を対象空間内に設置し、その外容器10の突起部15上に、内容器20の底部24を液体(A)中に浸漬するように、内容器20を配置する。このとき、内容器20の底部24に付着した(B)成分等が水と混ざり合い、液体(A)が得られる。
内容器20を配置すると、内容器20の底部24に付着した(B)成分等が水と混ざり合い、液体(A)が得られる。この液体(A)は、底部24から内容器20内に浸入する。侵入した液体(A)中の水が加熱部30で酸化カルシウムと水和反応し、発熱する。この熱が伝熱部50の周壁や底壁を介して燻煙剤に伝わり、燻煙剤はその温度が上昇して蒸散する。つまり、燃焼基剤の蒸気が発生し、この生じた蒸気と共に有効成分が蓋体60の孔を通過して拡散する。
外容器10に入れる水の量や燻煙剤の加熱温度等は、第1実施形態に係る燻煙方法において、外容器10に入れる液体(A)の量や燻煙剤の加熱温度等と同様である。
【0076】
<他の実施形態>
本発明の燻煙方法に用いられる燻煙装置は、上述したものに限定されない。例えば図2に示す燻煙装置2を用いてもよい。
【0077】
図2に示す燻煙装置2は、内容器20の底部24の周縁から下方に延びる環状壁23が設けられている点と、内容器20の底部24が透水性材料241cからなる点以外は、図1に示す燻煙装置1と同じである。よって、図2において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0078】
燻煙装置2の内容器20は、環状壁23の下端部22dが外容器10の底部14と接し、底部24が外容器10の底部14と離間するものとされている。環状壁23には切欠が形成されている。
内容器20の底部24を構成する透水性材料241cとしては、水を透過し、かつ加熱部30を構成する発熱剤が透過しない大きさの孔を有するもの、例えば不織布、メッシュ等が挙げられる。これにより、使用時に底部24から水を内容器20内に浸入させ、発熱剤を発熱させることができるようになっている。不織布としては、図1に示す燻煙装置1の説明において先に例示した不織布が挙げられる。
【0079】
また、図1に示す燻煙装置1及び図2に示す燻煙装置2は、被加熱部40の形状が円筒状であるが、すり鉢状であってもよい。さらに、図1、2の外容器10及び内容器20は筒状であるが、筒の形状については制限されず、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。
【0080】
<作用効果>
以上説明した燻煙方法にあっては、水及び(B)成分を含み、25℃における粘度が3.5~30mPa・sである液体(A)を酸化カルシウムと接触させ、水と酸化カルシウムとの反応熱により燻煙剤を加熱するので、水のみを酸化カルシウムと接触させる場合に比べて、燻煙開始を遅延できる。例えば第1実施形態又は第2実施形態において、液体(A)が入った外容器10の突起部15上に内容器20を配置してから発煙が始まるまでの時間を長くできる。燻煙開始が遅延されることで、建築物の床下のような狭くて作業者の退避に手間取る空間や、大規模倉庫のような一度に大量の燻煙剤を使う広い空間を燻煙する際に、作業者の退避中や作業中に発煙が始まることを防止でき、作業者の安全を確保できる。また、燻煙剤の揮散率の向上効果、燻煙時の蓋体60の目詰まりの抑制効果も得られる。
特に、液体(A)の25℃における粘度が5.5mPa・s以上であれば、燻煙開始の遅延効果、揮散率の向上効果、蓋体の目詰まり抑制効果がより優れ、さらに、燻煙時の焦げ臭を抑制できる。
燻煙開始が遅延されることで、燻煙剤の揮散状態が穏やかになり、揮散率が向上し、蓋体60の目詰まりが減り、燻煙残渣物の焦げが少なくなり臭気が改善されると考えられる。
【実施例0081】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0082】
<使用材料>
(燻煙剤)
銀系薬剤:銀担持ゼオライト系無機抗菌剤(株式会社シナネンゼオミック製、商品名「ゼオミックAJ10N」、銀含量2.5質量%、平均粒子径約2.5μm)。
IPMP:3-メチル-4-イソプロピルフェノール(大阪化成株式会社製)。
アゾジカルボンアミド:永和化成工業株式会社製、商品名「ビニホールAC#3-K7」。
酸化亜鉛:堺化学工業株式会社製、商品名「日本薬局方酸化亜鉛」。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース:信越化学株式会社製、商品名「メトローズ60SH-50」。
POE・POPブロックポリマー:BASFジャパン株式会社製、商品名「Pluronic RPE1740」、前記式(1)で表されるトリブロック型界面活性剤。
香料:特開2013-249262の表1に記載の香料組成物。
クレー:昭和鉱業株式会社製、商品名「NK-300C」。
【0083】
((B)成分)
B1-1:キサンタンガム(ケルコ社製、商品名「ケルザンT」)。
B1-2:ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製、商品名「ポバールPVA-624」)。
B1-3:セルロースナノファイバー(モリマシナリー株式会社製、商品名「C-100」)。
B1-4:カルボキシビニルポリマー(BFGoodrich社製、商品名「カーボポール934」)。
B2-1:POE(7)アルキル(分枝型C13)エーテル(ライオンケミカル株式会社製、商品名「RHA-234 TAG-90」)。
B2-2:POE(8)アルキル(分枝型C10)エーテル(BASFジャパン製、商品名「Lutensol XP89」)。
B2-3:n-ドデシルメチルアミンオキシド(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名「AX-CS」)。
B’2-1:ヤシ油脂肪酸カリウム(ライオンケミカル株式会社製、商品名「ヤシ油脂肪酸カリウム」)。
B’2-2:塩化ベンザルコニウム液(ライオンアクゾ製、商品名「アーカードCB-50」)。
なお、POEの後の括弧内に示した数値はオキシアルキレン基の平均繰り返し数を示す。
【0084】
(水)
水:水道水(ライオン株式会社平井研究所)。
(酸化カルシウム)
酸化カルシウム:吉澤石灰工業株式会社製、商品名「CAg」、ロータリーキルン炉焼成品(葛生産)、嵩比重0.80g/cm(20℃))。
【0085】
<燻煙剤の製造>
以下の手順に従って、表1に示す組成の燻煙剤を製造した。表1中の各材料の配合量の単位は質量%である。「バランス」は燻煙剤の全量が100質量%となる量である。
室温(20℃)条件下において、表1に示す組成に従い、各材料をニーダー(株式会社モリヤマ製、「S5-2G型」)で攪拌混合した後、組成全量を100質量部として10質量部の水を加えて混合して混合物を得た。得られた混合物を、直径2mmの開孔を有するダイスの前押し出し造粒機(株式会社不二パウダル製、「EXK-1」)を用いて造粒して造粒物を得た。得られた造粒物をフラッシュミル(株式会社不二パウダル製、「FL300」)で長さ2~5mmに切断し、70℃に設定した乾燥機(アルプ株式会社製、「RT-120HL」)で2時間乾燥させ、顆粒状の燻煙剤を得た。
【0086】
【表1】
【0087】
<液体(A)の調製>
以下の手順に従って、表2~3に示す組成の液体(A)(S1~S16、R1~R5)を調製した。表2~3中の各材料の配合量の単位はgである。「バランス」は液体(A)の全量が100gとなる量である。
室温(20℃)条件下において、表2~3に示す組成に従い、200mLガラスビーカーに水を入れ、そこに(B)成分を加え、500rpmで液が透明均一になるまで撹拌した。
得られた液体(A)の25℃における粘度(mPa・秒)を以下の測定方法により測定した。結果を表2に示す。
【0088】
(粘度の測定方法)
液体(A)を100mLのガラス容器(東京硝子器械株式会社製、商品名「SV-100」、外径40mm×高さ120mm、口内径26.5mm、PSびん)に入れ、B型粘度計(東機産業社製粘度計BLII型、No.1ローター)で、60rpm、60秒の回転後に液体(A)の粘度を測定した。
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
[実施例1~20、比較例1~8]
<燻煙開始時間の測定>
以下の方法1又は方法2により燻煙開始時間を計測し、計測結果から下記評価基準で遅延効果を評価した。表4~5に、採用した方法、燻煙開始時間、評価結果を示す。
【0092】
(方法1:予め調製した液体(A)を燻煙装置に供給する方法)
図1に示す構成の内容器20を用意した。内容器20内に表4~5に示す量の酸化カルシウムを充填し、内容器20の伝熱部50内に表4~5に示す量の燻煙剤を充填し、蓋体60を取り付けた。別途、燻煙用のプラスチック容器に、表4~5に示す液体(A)20gを入れた。液体(A)を入れたプラスチック容器の上に、燻煙剤及び酸化カルシウムを充填した内容器20を設置した。内容器20を設置してから煙が出始めるまでの時間をストップウォッチで計測し、その時間を燻煙開始時間とした。その際、10分間経っても煙が出ない場合は発煙不良と判定した。
【0093】
(方法2:燻煙剤の加熱に用いる燻煙装置の水と接触する部分に(B)成分を予め付着させておく方法)
図1に示す構成の内容器20を用意した。内容器20内に表4~5に示す量の酸化カルシウムを充填し、内容器20の伝熱部50内に表4~5に示す量の燻煙剤を充填し、蓋体60を取り付けた。別途、燻煙用のプラスチック容器に、表4~5に示す液体(A)20gを入れ、このプラスチック容器を110℃にて6時間加熱して液体(A)を蒸発させ、室温まで冷却した。その後、このプラスチック容器に水20gを入れた。水を入れたプラスチック容器の上に、燻煙剤及び酸化カルシウムを充填した内容器20を設置した。内容器20を設置してから煙が出始めるまでの時間をストップウォッチで計測し、その時間を燻煙開始時間とした。その際、10分間経っても煙が出ない場合は発煙不良と判定した。
【0094】
(遅延効果の評価基準)
〇〇〇〇:燻煙開始時間が300秒以上。
〇〇〇:燻煙開始時間が120秒以上300秒未満。
〇〇:燻煙開始時間が60秒以上120秒未満。
〇:燻煙開始時間が40秒以上60秒未満。
△:燻煙開始時間が35秒以上40秒未満。
×:燻煙開始時間が35秒未満。
【0095】
<蓋体の目詰まりの評価>
上記<燻煙開始時間の測定>にてプラスチック容器の上に内容器20を設置してから1時間経過後に蓋体60の目詰まりの状態を目視で観察し、下記評価基準で評価した。結果を表4~5に示す。発煙不良の例については目詰まりを評価しなかった。
(蓋体の目詰まりの評価基準)
〇〇:目詰まりがない。
〇:目詰まりが僅かに認められる。
△:目詰まりが蓋体の1/3程度認められる。
×:目詰まりが蓋体の1/2以上認められる。
【0096】
<揮散率の測定>
上記<燻煙開始時間の測定>にてプラスチック容器の上に内容器20を設置してから12時間以上経過後に蓋体60を開けて燻煙剤残渣を取り出し、その質量(g)を測定した。充填した燻煙剤の質量(=4g)から以下の式により揮散率を算出し、下記評価基準で評価した。結果を表4~5に示す。発煙不良の例については揮散率を0%とした。
揮散率(%)=100-[燻煙剤残渣の質量(g)/充填した燻煙剤の質量(g)]×100
(揮散率の評価基準)
〇〇〇:揮散率が65%以上。
〇〇:揮散率が60%以上65%未満。
〇:揮散率が58%以上60%未満。
△:揮散率が55%以上58%未満。
×:揮散率が55%未満。
【0097】
<焦げ臭の評価>
上記<燻煙開始時間の測定>にてプラスチック容器の上に内容器20を設置してから1時間経過後に内容器20の上部の臭気を下記評価基準で官能評価した。結果を表4~5に示す。発煙不良の例については焦げ臭を評価しなかった。
(焦げ臭の評価基準)
〇〇:焦げ臭を感じない~僅かに感じる。
〇:焦げ臭を少し感じる。
×:明らかに焦げ臭を感じる。
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
実施例1~17では、液体(A)として水を用いた比較例1に比べて、燻煙開始時間が長く、燻煙開始が遅延されていた。また、揮散率が向上し、蓋体の目詰まりが抑制されていた。特に、実施例2~9、11~17では、焦げ臭も抑制されていた。
液体(A)又は酸化カルシウムの量を変更した実施例18~20もそれぞれ、液体(A)として水を用いた比較例6~8に比べて、燻煙開始時間が長く、燻煙開始が遅延されていた。また、揮散率が向上し、蓋体の目詰まりが抑制されていた。焦げ臭も抑制されていた。
【0101】
一方、液体(A)の粘度が30mPa・s超の比較例2では、発煙不良となった。
液体(A)の粘度が3.5mPa・s未満の比較例3では、燻煙開始の遅延効果が少なかった。また、揮散率の向上効果及び蓋体の目詰まり抑制効果は見られなかった。
液体(A)の粘度が3.5mPa・s未満であり、(B)成分としてアニオン性界面活性剤であるB’2-1を用いた比較例4では、発煙不良となった。
液体(A)の粘度が3.5mPa・s未満であり、(B)成分としてカチオン性界面活性剤であるB2’-2を用いた比較例5では、発煙不良となった。
【符号の説明】
【0102】
1…燻煙装置、2…燻煙装置、10…外容器、12…周壁部、12a…内周面、14…底部、14a…内底面、15…突起部、20…内容器、20e…上端面、22…側壁部、22a…内周面、22b…外周面、22c…上端部、22d…下端部、23…環状壁、24…底部、241…透水性底板、241a…通水孔、241b…板、241c…透水性材料、26…連結部材、26a…通気孔、30…加熱部、40…被加熱部、50…伝熱部、50b…外周面、50c…上端部、50e…上端面、51…内底面中央部、54…底部、60…蓋体
図1
図2