(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043759
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】シート材固定具及びシート材敷設構造
(51)【国際特許分類】
A47G 27/04 20060101AFI20220309BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A47G27/04 A
A47G27/02 101D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149215
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】392003225
【氏名又は名称】第一ビニール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085246
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 清一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀夫
【テーマコード(参考)】
3B120
【Fターム(参考)】
3B120AB01
3B120EA20
3B120EB21
(57)【要約】
【課題】人工芝マットを地面に安定的に固定し、且つ、人工芝面の安全性向上を図る。
【解決手段】 人工芝マット30を地面に固定するシート材固定具である。上下方向に延長し下端部分が細く形成された軸体6の上端に頭部10を設ける。地面に敷設された人工芝マット30のシート基材26の上面部27に軸体6の下端が当接された状態で頭部10を下方向に打圧することにより、軸体6が、シート基材26に貫通孔16を形成して土中に埋設される。頭部10の下方部で、軸体の外周面に係合突部20が突設されている。軸体6が土中に埋設され且つ頭部10がシート基材26を下方向に押圧した状態で、頭部の外縁部分11と係合突部20との間の嵌入凹部21に、貫通孔16の孔縁部分22が入り込む。係合突部20が、孔縁部分22の下面部23に当接した係合状態となることにより、係合突部20が、埋設状態にある軸体の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を地面に固定するシート材固定具であって、
上下方向に延長し下端部分が細く形成された1本の軸体の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記シート材の押圧部となる頭部が設けられており、該頭部の外縁部分の全体又は一部分が前記軸体の上端の外方に突出されることによって張り出し突部が設けられており、
地面に敷設された前記シート材の上面部に該軸体の下端が当接された状態で前記頭部を下方向に打圧することにより、該軸体が、該シート材に貫通孔を形成して土中に埋設されるように構成されており、
前記頭部の下方部で、前記軸体の外面部に係合突部が突設されており、前記軸体が土中に埋設され且つ前記張り出し突部が前記シート材を地面に向けて押圧した状態で、前記張り出し突部と前記係合突部との間に形成された嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込み、前記係合突部が、該嵌入凹部に入り込んだ状態にある該孔縁部分の下面部に当接した係合状態となることによって、該係合突部が、土中に埋設状態にある前記軸体の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となることを特徴とするシート材固定具。
【請求項2】
シート材を地面に固定するシート材固定具であって、
上下方向に延長し下端部分が細く形成された1本の軸体の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記シート材の押圧部となる頭部が設けられており、該頭部の外縁部分の全体又は一部分が前記軸体の上端の外方に突出されることによって張り出し突部が設けられており、
地面に敷設された前記シート材の上面部に該軸体の下端が当接された状態で前記頭部を下方向に打圧することにより、該軸体が、前記シート材に貫通孔を形成して土中に埋設されるように構成されており、
前記頭部の下方部で、前記軸体の外面部に係合突部が突設されており、前記軸体は、土中に埋設される軸体本体の外周面に、その上下延長方向に延びる如く1条の螺旋突条が捩れ状態で突設されて螺旋軸が形成されており、或いは、複数条の螺旋突条が、同一方向の捩れ状態で突設されて螺旋軸が形成されており、該螺旋突条の所要のものの上端部分が前記係合突部を構成しており、前記螺旋突条の、前記軸体本体の軸線と直角をなす平面に対する捻れ角度が60~80度に設定されており、
前記螺旋軸が土中に埋設され且つ前記張り出し突部が前記シート材を地面に向けて押圧した状態で、前記張り出し突部と前記係合突部との間に形成された嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込み、該係合突部が、該嵌入凹部に入り込んだ状態にある該孔縁部分の下面部に当接した係合状態となることによって、該係合突部が、土中に埋設状態にある前記螺旋軸の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となることを特徴とするシート材固定具。
【請求項3】
シート材を地面に固定するシート材固定具であって、
上下方向に延長し下端部分が細く形成された1本の軸体の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記シート材の押圧部となる頭部が設けられており、該頭部の外縁部分の全体又は一部分が前記軸体の上端の外方に突出されることによって張り出し突部が設けられており、
地面に敷設された前記シート材の上面部に該軸体の下端が当接された状態で前記頭部を下方向に打圧することにより、該軸体が、該シート材に貫通孔を形成して土中に埋設されるように構成されており、
前記頭部の下方部で、前記軸体の外面部に係合突部が突設されており、前記軸体は、土中に埋設される軸体本体の外面が平滑であるストレート軸として構成されており、
該ストレート軸が土中に埋設され且つ前記頭部が前記シート材を下方向に押圧した状態で、前記張り出し突部と前記係合突部との間に形成された嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込み、該係合突部が、該嵌入凹部に入り込んだ状態にある該孔縁部分の下面部に当接した係合状態となることによって、該係合突部が、土中に埋設状態にある前記ストレート軸の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となることを特徴とするシート材固定具。
【請求項4】
前記係合突部の上端部分の外縁部は、上に凸の円弧面状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のシート材固定具。
【請求項5】
前記係合突部を構成する、前記螺旋突条の上端部分は、上に凸の球面状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のシート材固定具。
【請求項6】
前記シート材は、シート基材の上面部に芝葉片が植設されてなる人工芝マットであり、該シート基材に形成された前記貫通孔の前記孔縁部分の全体又は一部分が前記嵌入凹部に入り込むことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のシート材固定具。
【請求項7】
前記頭部は平面視で円形状を呈しており、その上面が緩い球面状を呈し且つその外側縁部分が外方に突に丸みを帯びていることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のシート材固定具。
【請求項8】
請求項1~3の何れかに記載のシート材固定具を用いて前記シート材が地面に固定され、前記嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込んでいることを特徴とするシート材敷設構造。
【請求項9】
前記シート材が、シート基材の上面部に芝葉片が植設されてなる人工芝マットであり、前記嵌入凹部に、前記シート基材に設けられている前記貫通孔の前記孔縁部分の全体または一部分が入り込んでいることを特徴とする請求項8記載のシート材敷設構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝マットや防草マット等のシート材を地面に固定するために用いるシート材固定具に関するものであり、又、これを用いて構成されたシート材敷設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工芝マットや防草マット等のある程度の厚さとある程度の重さを有するシート材を地面に敷設する際は従来、これらを固定ピンを用いて地面に固定していた。かかる固定ピンとしては、たとえば特許文献1に記載されているような、土中に打ち込まれる左右2本のピン体(周面が平滑面に形成されている)の上端相互が、ハンマーによる打圧部となり且つ前記人工芝マットの押圧部となる連結片で連結されたコ字状の固定ピンや、特許文献2に記載されているような、土中に打ち込まれる1本のピン体(周面が平滑面に形成されている)の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記人工芝マットの押圧部となる頭部が設けられてなる釘状の固定ピンが用いられていた。
【0003】
しかしながら、これらの固定ピンは前記ピン体の周面が平滑であったために抜け易い問題があった。かかる問題点を前記シート材が人工芝マットである場合について以下具体的に説明する。
【0004】
天然芝面は除草、施肥、芝刈り、水やり等の手入れを根気よく続けなければならないのに対して人工芝面は基本的に手入れが不要であることから、該人工芝面は家庭用で人気がある。該人工芝面は、シート基材の上面部に芝葉片を植設して構成された人工芝マットを地面に敷設し、該人工芝マットを前記固定ピンで地面に固定することにより形成される。家庭の庭やベランダ・バルコニーの周辺等で施工された人工芝面は、その上を人が裸足で歩いたり走ったりでき、又その上に直接座ったり、或いはその上に寝そべったりできる等の、くつろぎのための空間を形成できる。又、該人工芝面を用いてドッグランを形成することも行われている。そして、前記人工芝マットを地面に固定する前記固定ピンとしては前記したコ字状の固定ピンや釘状の固定ピンが用いられていた。
【0005】
かかる構成を有する固定ピンを用いて前記人工芝マットを地面に固定する要領を説明すれば、該人工芝マットの前記シート基材の前記上面部に前記ピン体の下端を当てて該固定ピンの上端(前記連結片又は前記頭部)をハンマーで下方向に打圧することによって該ピン体を前記シート基材に貫通させ、その後の打圧によって該ピン体を土中に埋設し、これにより、前記連結片又は前記頭部によって該シート基材を地面に押圧して行っていた。
【0006】
ここで、前記人工芝マットを地面に固定するために用いられるコ字状の前記固定ピンと釘状の前記固定ピンの前記打ち込み時の状態を対比する。コ字状の前記固定ピンを叩打によって土中に打ち込む際は、左右のピン体が左右バランスよく土中に打ち込まれていくように前記連結片をハンマーで打圧する必要があるが、この打圧作業は不安定化しやすいため、該連結片の打圧に慎重さを要した。これに対して、釘状の前記固定ピンを打圧によって土中に打ち込む際は、ピン体が1本であるために、該ピン体を土中に打ち込むために前記頭部を打圧する作業を安定状態で正確且つ能率的に行うことができる。
【0007】
そして前記人工芝マットを、コ字状の前記固定ピンを用いて地面に固定した場合は、前記連結片が前記シート基材を地面に向けて押圧した状態にある。一方、前記人工芝マットを、釘状の前記固定ピンを用いて地面に固定する場合は、前記頭部が前記シート基材を地面に向けて押圧した状態にある。
【0008】
前記人工芝マットが、このようにして前記連結片や前記頭部で地面に押圧されて前記人工芝面が構成されるのであるが、該人工芝面にあっては、前記連結片や前記頭部が前記シート基材の上面部から浮き上がった状態となる場合があった。その浮き上がり量は、部分的には10mm程度と大きい量(異常な浮き上がり量)となることもあった。
【0009】
このように浮き上がる原因として考えられるのは、人工芝面上を人が歩いたり走ったりすることが繰り返される内に前記シート基材にしわが寄る等の変形が生じて前記固定ピンが浮き上がることである。又、前記固定ピンを打ち込んだ部分の土が柔らかい場合に、人工芝面を人が歩いたり走ったりすることにより該固定ピンの周辺の地面に窪みが発生し、該窪み部分で前記基材シートの上面部に凹みが生じ、結果的に前記固定ピンの頭部が浮き上がった状態となることである。更には、強風時において、敷設されている人工芝マットと地面との間に風が進入して前記固定ピンが引き抜かれ、その結果、前記頭部が前記シート基材の上面部から浮き上がることである。
【0010】
前記頭部の浮き上がり量が大きい場合は、前記人工芝面を人が裸足で歩いたり、子供が裸足で人工芝面を走り回った際に、或いは人工芝面に座って該人工芝面に手を付いたりした際に、浮き上がった該頭部の突起部で足や手に切り傷を負う等怪我をする恐れがあり危険であった。又、前記人工芝面に座った状態から立ち上がろうとしたときに、ズボンのポケットの縁部に前記頭部の突起部が引っ掛かる恐れもあった。又、前記ドッグランの人工芝面を駆け回る犬が、浮き上がった前記頭部で怪我をする恐れもあった。
【0011】
なお前記連結片の場合も、前記理由によって浮き上がることがあったが、この場合は、人が該連結片につまずく恐れはあったものの、該連結片は危険な突起部を具えてはいないため、足や手に切り傷を負う等の怪我をする恐れはなかった。
【0012】
このようなことから、固定ピンの安全性について言えば、コ字状を呈する前記固定ピンを用いて人工芝面を形成する方が、釘状を呈する前記固定ピンを用いて人工芝面を形成する場合に比して安全性がより高いと言える。反面、固定ピンの打ち込み作業の安定性、正確性、打ち込み作業の能率化の面では、ピン体が1本である釘状の前記固定ピンを用いて人工芝面を形成する方が、左右のピン体を有するコ字状の前記固定ピンを用いる場合に比してより優れていると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2019-132007号公報
【特許文献2】特開平7-82704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者は、人工芝マットや防草マット等のある程度の厚さとある程度の重さを有するシート材を地面に固定してシート材敷設構造を構成するに際し、該シート材の固定に用いるコ字状の前記固定ピンと釘状の前記固定ピンの利益と不利益について種々検討した。これらの検討結果を踏まえて本発明者は、土中への打ち込み作業を安定状態で正確且つ能率的に行い得る点をより重視し、釘状を呈する前記固定ピンの改良に着手して本発明を完成させる至ったものである。
【0015】
即ち本発明は、釘状を呈する前記固定ピンによって得られる打ち込み作業の安定性、正確性、打ち込み作業の能率化の利点をそのまま活かしつつ、土中からの抜け(浮き上がり)によって、シート材の敷設状態が不安定化するのを防止し得るシート材固定具の提供を課題とするものであり、該シート材が特に人工芝マットである場合は、人工芝面での前記した各種の危険を防止し得るシート材固定具の提供を課題とするものである。又本発明は、敷設状態の安定性、安全性に優れるシート材敷設構造の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係るシート材固定具の第1の態様は、シート材を地面に固定するシート材固定具であって、上下方向に延長し下端部分が細く形成された1本の軸体の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記シート材の押圧部となる頭部が設けられており、該頭部の外縁部分の全体又は一部分が前記軸体の上端の外方に突出されることによって張り出し突部が設けられており、地面に敷設された前記シート材の上面部に該軸体の下端が当接された状態で前記頭部を下方向に打圧することにより、該軸体が、該シート材に貫通孔を形成して土中に埋設されるように構成されている。そして、前記頭部の下方部で、前記軸体の外面部に係合突部が突設されており、前記軸体が土中に埋設され且つ前記張り出し突部が前記シート材を地面に向けて押圧した状態で、前記張り出し突部と前記係合突部との間に形成された嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込み、前記係合突部が、該嵌入凹部に入り込んだ状態にある該孔縁部分の下面部に当接した係合状態となることによって、該係合突部が、土中に埋設状態にある前記軸体の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となることを特徴とするものである。
【0017】
本発明に係るシート材固定具の第2の態様は、シート材を地面に固定するシート材固定具であって、上下方向に延長し下端部分が細く形成された1本の軸体の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記シート材の押圧部となる頭部が設けられており、該頭部の外縁部分の全体又は一部分が前記軸体の上端の外方に突出されることによって張り出し突部が設けられており、地面に敷設された前記シート材の上面部に該軸体の下端が当接された状態で前記頭部を下方向に打圧することにより、該軸体が、前記シート材に貫通孔を形成して土中に埋設されるように構成されている。又、前記頭部の下方部で、前記軸体の外面部に係合突部が突設されており、前記軸体は、土中に埋設される軸体本体の外周面に、その上下延長方向に延びる如く1条の螺旋突条が捩れ状態で突設されて螺旋軸が形成されており、或いは、複数条の螺旋突条が、同一方向の捩れ状態で突設されて螺旋軸が形成されており、該螺旋突条の所要のものの上端部分が前記係合突部を構成しており、前記螺旋突条の、前記軸体本体の軸線と直角をなす平面に対する捻れ角度が60~80度に設定されている。そして、前記螺旋軸が土中に埋設され且つ前記張り出し突部が前記シート材を地面に向けて押圧した状態で、前記張り出し突部と前記係合突部との間に形成された嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込み、該係合突部が、該嵌入凹部に入り込んだ状態にある該孔縁部分の下面部に当接した係合状態となることによって、該係合突部が、土中に埋設状態にある前記螺旋軸の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となることを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係るシート材固定具の第3の態様は、シート材を地面に固定するシート材固定具であって、上下方向に延長し下端部分が細く形成された1本の軸体の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記シート材の押圧部となる頭部が設けられており、該頭部の外縁部分の全体又は一部分が前記軸体の上端の外方に突出されることによって張り出し突部が設けられている。又、地面に敷設された前記シート材の上面部に該軸体の下端が当接された状態で前記頭部を下方向に打圧することにより、該軸体が、該シート材に貫通孔を形成して土中に埋設されるように構成されており、前記頭部の下方部で、前記軸体の外面部に係合突部が突設されており、前記軸体は、土中に埋設される軸体本体の外面が平滑であるストレート軸として構成されている。そして、該ストレート軸が土中に埋設され且つ前記頭部が前記シート材を下方向に押圧した状態で、前記張り出し突部と前記係合突部との間に形成された嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込み、該係合突部が、該嵌入凹部に入り込んだ状態にある該孔縁部分の下面部に当接した係合状態となることによって、該係合突部が、土中に埋設状態にある前記ストレート軸の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となることを特徴とするものである。
【0019】
本発明に係るシート材固定具の第4の態様は、前記第1の態様において、前記係合突部の上端部分の外縁部が、上に凸の円弧面状に形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係るシート材固定具の第5の態様は、前記第2の態様において、前記係合突部を構成する、前記螺旋突条の上端部分が、上に凸の球面状に形成されていることを特徴とするものである。
【0021】
本発明に係るシート材固定具の第6の態様は、前記第1~5の何れかの態様において、前記シート材が、シート基材の上面部に芝葉片が植設されてなる人工芝マットであることを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係るシート材固定具の第7の態様は、前記第1~5の何れかの態様において、前記頭部は平面視で円形状を呈しており、その上面が緩い球面状を呈し且つその外側縁部分が外方に突に丸みを帯びていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明に係るシート材敷設構造の第1の態様は、前記第1~第4の何れかに記載のシート材固定具を用いて前記シート材が地面に固定され、前記嵌入凹部に、前記貫通孔の孔縁部分の全体又は一部分が入り込んでいることを特徴とするものである。
【0024】
本発明に係るシート材敷設構造の第2の態様は、前記第1の態様に係るシート材敷設構造おいて、前記シート材が、シート基材の上面部に芝葉片が植設されてなる人工芝マットであり、前記嵌入凹部に、前記シート基材に設けられている前記貫通孔の前記孔縁部分の全体または一部分が入り込んでいることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るシート材固定具によるときは、上下方向に延長し下端部分が細く形成された1本の軸体の上端に、ハンマーによる打圧部となり且つ前記シート材の押圧部となる頭部が設けられているため、シート材を地面に固定するに際し、打ち込みによって前記軸体を土中に埋設する打圧作業を安定状態で、正確に且つ能率的に行うことができる。
【0026】
又、前記係合突部が、前記嵌入凹部に入り込んだ状態にある前記孔縁部分の下面部に当接した係合状態となることによって、該係合突部が、土中に埋設状態にある前記軸体の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部となるため、土中に埋設状態にある前記軸体の抜け(浮き上がり)を防止できる。これによって、シート材を敷設し該シート材を前記シート材固定具で地面に固定して構成されたシート材敷設構造が風等によって不安定化するのを防止できる。特に該シート材が人工芝マットであるときは、前記シート材固定具の頭部が前記シート基材の上面部から異常に浮き上がるのを防止できる。これによって、例えば、本発明に係る前記シート材固定具を用いて人工芝マットを地面に敷設して構成された人工芝面でくつろぐ利用者が前記頭部の突起部で怪我をする恐れを回避でき、これによって、人工芝面の安全性向上を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係るシート材固定具を、これが螺旋軸を具備するタイプについて、その使用状態で説明する説明図である。
【
図2】そのシート材固定具の上端側の部分を示す斜視図である。
【
図3】そのシート材固定具の螺旋軸の断面図である。
【
図4】そのシート材固定具を用いて、人工芝マットとしてのシート材を地面に固定した状態を示す説明図である。
【
図6】本発明に係るシート材固定具を、これがストレート軸を具備するタイプについて、その使用状態で説明する説明図である。
【
図7】そのシート材固定具を用いて人工芝マットとしてのシート材を地面に固定した状態を示す説明図である。
【
図8】防草マットとしてのシート材を、螺旋軸を具備するタイプのシート材固定具を用いて地面に固定した状態を示す説明図である。
【
図9】嵌入凹部の他の態様を説明する説明図である。
【
図10】係合突部の他の態様を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0028】
図1~5において本発明に係るシート材固定具1は、ある程度の厚さとある程度の重さを有するシート材2を地面3に固定するために用いられるものであり、上下方向に延長し下端部分5が細く形成された1本の軸体6の上端7に、ハンマーによる打圧部8となり且つ前記シート材2の押圧部9となる頭部10が設けられており、該頭部10の外縁部分11の全体又は一部分が前記軸体6の前記上端7の外方に突出されることによって張り出し突部12が設けられている。そして、地面3に敷設された前記シート材2の上面部13に前記軸体6の下端15が当接された状態で前記頭部10を下方向に打圧Fすることにより、該軸体6が、該シート材2に貫通孔16(
図4)を形成して土中17に埋設されるようになされている。又
図1~2に示すように、前記頭部10の下方部で、前記軸体6の外面部19に係合突部20が突設されており、前記軸体6が土中17に埋設され且つ前記張り出し突部12が前記シート材2を地面3に向けて押圧した
図4~5に示す状態で、該張り出し突部12と該係合突部20との間に形成された
図1~2に示す嵌入凹部21に、
図4~5に示すように、前記貫通孔16の孔縁部分22の全体又は一部分が入り込む。そして、前記係合突部20が、
図4~5に一点鎖線で示すように、該嵌入凹部21に入り込んだ状態にある該孔縁部分22の下面部23に当接した係合状態となることによって、該係合突部20が、土中に埋設状態にある前記軸体6の浮き上がりを阻止する引っ掛かり部25となる。以下、これを具体的に説明する。
【0029】
前記シート材2は、ある程度の厚さとある程度の重さを有するものであり、本実施例においては
図1、
図4~5に示すように、シート基材26の上面部27に芝葉片29が植設されてなる人工芝マット30として構成されている。該人工芝マット30を構成する前記シート基材26は例えば1~2mmの厚さを有しており、布地がプラスチック乃至ゴムで被覆されてなり、ある程度の剛性と可撓性を具えており強度が高い。該人工芝マット30はロール状に巻回できるもので、そのサイズの一例は、幅が1mで長さが10mである。
【0030】
かかる構成を有する人工芝マット30は、広げられた状態で、前記シート基材26を地面3に当接させて該地面3に敷設される。そして該人工芝マット30がこのように敷設された状態で、該人工芝マット30は前記シート材固定具1で地面に固定される。
【0031】
該シート材固定具1は、本実施例においてはポリカーボネート等のプラスチック製であり、
図1~3に示すように、前記軸体6は、土中に埋設される軸体本体31の外周面32に、その上下延長方向に延びる如く螺旋突条33が突設されて螺旋軸35が構成されている。本実施例においては、複数条、例えば4条の螺旋突条33が、前記軸体本体31の周方向に90度の角度ピッチで、同一方向の捩れ状態で突設されて螺旋軸35が構成されている。そして
図1に示すように、該螺旋突条33の夫々の上端36(
図1)の、前記軸体6の前記下端15からの高さは略同一(本実施例においては同一)に設定されている。又
図1~2に示すように、前記軸体6の前記外面部19に、該螺旋突条33の夫々の上端部分37としての前記係合突部20が突設された状態にある。本実施例においては、該螺旋突条33の上端部分37が、前記頭部10の下方部で突設された前記係合突部20を構成しており、該係合突部20の該上端部分37の外縁部34(
図2)は上に凸の円弧面状に形成されている。本実施例において、該螺旋突条33の上端部分37は、全体として、上に凸の球面状に形成されている。
【0032】
前記頭部10は、本実施例においては
図1~2に示すように、前記軸体6の軸線38と同心の円板状を呈しており、その外周縁部分11の全体が前記軸体6の上端7の外方に突出されることによって、前記張り出し突部12が設けられている。そして
図1~2に示すように、該頭部10の上面39は上に凸の緩い円弧面状を呈しており、その外側縁部分40は、外方に突に丸みを帯びている。
【0033】
本実施例においては、前記張り出し突部12と、4本の前記螺旋突条33の夫々の上端部分37としての前記係合突部20との間に形成された前記嵌入凹部21が、前記軸体6の軸心回りで見て周方向に連続する円周溝部41(
図1~2)として構成されている。
【0034】
又、該螺旋突条33の、前記軸体本体31の軸線38と直角をなす平面42に対する捻れ角度θ(
図1)は60~80度に、本実施例においては78度に設定されている。該捩れ角度θが60度よりも小さいと、前記頭部10を下方向にハンマーで打圧しても前記螺旋軸部35を土中に回転埋設させにくいために好ましくない。一方、該捩れ角度θが80度よりも大きいと、螺旋軸35による所要の引き抜き抵抗力が得られなくなるために好ましくない。
【0035】
かかる構成を有するシート材固定具1の各部の寸法を例示すれば、全長が150mmに設定されると共に、前記軸体本体31の径は6mmに設定され、前記螺旋軸35の径は8mmに設定され、前記円周溝部41を構成する軸部(本実施例においては前記軸体6)43(
図2、
図4)の径は6mmに設定され、該軸部43の長さは3.5mmに設定されている。この軸部43の長さは、市販の人工芝マットの前記シート基材26の厚さが各種であることを考慮し、これらの厚さに応じられるように大き目に設定されている。
【0036】
次に、前記構成を有するシート材固定具1を用いて前記人工芝マット30を地面3に固定する要領を説明する。先ず
図1に示すように、人工芝面45(
図4)を施工する施工場所に前記ロール状に巻回された人工芝マット30を搬入し、整地された地面3に、巻き戻した該人工芝マット30を、前記シート基材26の下面を地面3に当接させて敷設する。その後、該人工芝マット30を前記シート材固定具1を用いて地面3に固定する。この固定は、例えば1m間隔で行う。
【0037】
この固定を行うには、先ず
図1に示すように、敷設された前記人工芝マット30の前記シート基材26の上面部27の所要部位に前記軸体6の下端15を当接状態とし、前記螺旋軸部35(前記軸体6)を一方の手で垂直状態に保持する。該シート基材26の該上面部(前記シート材2の上面部13の一種)27は、前記シート材2の上面部13の一種であり、該下端15は、前記芝葉片29の一部分を介在させて前記上面部46上に当接された状態となることもある。
【0038】
この状態で、
図1に矢印Fで示すように、他方の手に把持したハンマーで前記頭部10を下方向に打圧する。これにより、前記螺旋軸35が、
図4~5に示すように、前記シート基材26を突き破って貫通孔16を形成し、その後、土中に回転埋設される。即ち、前記したように、前記軸体6が前記シート材2に貫通孔16を形成して土中に埋設される。前記シート材固定具1は、
図1に示すように、1本の前記軸体6の上端7に前記頭部10が設けられた構成であるため、該軸体6を土中に打ち込むために該頭部10を打圧する作業を、安定状態で正確に且つ能率的に行うことができる。
【0039】
前記回転埋設の最終段階において、前記貫通孔16の前記孔縁部分22の全体又は一部分が前記嵌入凹部21(前記円周溝部41)に入り込む。
図4~5においては、前記孔縁部分22の全体が入り込んだ状態が示されている。このようにして回転埋設が完了した状態で、前記張り出し突部12(
図4~5においては、前記孔縁部分22の全体)が前記人工芝マット30の前記シート基材26を地面3に向けて押圧し、これによって前記人工芝マット30が地面3に安定状態で固定されることとなる。この押圧は、
図4~5においては、前記張り出し突部12と前記シート基材26との間に前記芝葉片29が介在された状態で行われている。
【0040】
そして前記のように、前記孔縁部分22が前記嵌入凹部21に入り込んだ状態で前記軸体6に、前記した原因によって若干の浮き上がりが発生したときは、周方向に90度の角度ピッチで配置されている前記係合突部20が、
図5に一点鎖線で示すように、該孔縁部分22の下面部23に当接した係合状態(引っ掛かった状態)となり得る。このように、該係合突部20が該孔縁部分22に引っ掛かった状態になると、前記シート材固定具1の浮き上がりが前記人工芝マット30の自重によって阻止される。なお、前記シート基材26の厚さが例えば
図4に示すように、前記軸部43の長さ(即ち、前記嵌入凹部21の上下幅)よりも小さい場合は、前記頭部10が例えば2~3mm程度浮き上がることもあるが、この程度の浮き上がりは、後述するように、足や手等に怪我をさせるほどのものでなく異常な浮き上がりとはいえない。これによって、前記頭部10が異常に浮き上がる恐れのないシート材敷設構造49(
図4)が構成されることとなる。
【0041】
特に本実施例においては
図1に示すように、土中に埋設される前記軸体本体31の外周面32に前記螺旋突条33が突設されて前記螺旋軸35が構成されており、該螺旋軸35が土中に埋設された状態となるために、前記シート材固定具1の引き抜き抵抗力が大きい。そのため、強風時において、敷設されている人工芝マット30と地面3との間に風が侵入した場合も、風による該人工芝マット30の浮き上がりが効果的に防止されることとなる。
【0042】
かかることから、前記シート材敷設構造49が構成する前記人工芝面45(
図4)を人が裸足で歩いたり、子供が裸足で該人工芝面45を走り回ったり、或いは、該人工芝面45に座って該人工芝面45に手を付いたりした際等においても、従来におけるように、異常に浮き上がった頭部の突出部で足や手に怪我をするといった恐れがない。又、前記人工芝面45に座った状態から立ち上がろうとしたときに、ズボンのポケットの縁部に前記頭部10が引っ掛かる恐れもない。又、該人工芝面45で形成されたドッグランで駆け回る犬が、浮き上がった前記頭部10で足に怪我をするといった恐れもない。
【0043】
前記したように、前記シート基材26の厚さが例えば
図4に示すように、前記軸部43の長さ(即ち、前記嵌入凹部の上下幅)よりも小さい場合は、前記した原因によって前記頭部10が例えば2~3mm程度)浮き上がることもあるが、この程度の浮き上がりによっては、足や手に怪我をする恐れはない。特に本実施例におけるように、前記頭部10の上面39が上に凸の緩い球面状に構成されると共にその外側縁部分40が外方に突に丸みを帯びた形態に構成される場合は、なおさら怪我の恐れがない。
【0044】
前記人工芝マット30は、長期間にわたって設置されることの他、一時的に設置されることもある。一時的に設置する場合において人工芝マット30を地面から取り外す際は、前記シート材固定具1が土中17に埋設された状態で該人工芝マット30を端側から順次持ち上げて該シート材固定具1を地面3から引き抜くことになる。引き抜かれた該シート材固定具1は該人工芝マット30に取り付いたままの状態であるので、該シート材固定具1を該人工芝マット30から取り外す必要のある場合がある。しかしながら、該シート材固定具1を該人工芝マット30から取り外さんとして、前記軸体6を該人工芝マット30の上方に向けて移動させようとしたとき、前記係合突部20が、前記嵌入凹部21に入り込んだ状態にある前記孔縁部分22の前記下面部23に当接した係合状態となる。そのため、該シート材固定具1を前記貫通孔16から取り外にくい問題がある。
【0045】
そこで本実施例においては、
図5に基づいて前記したように、前記係合突部20の上端部分37(前記螺旋突条33の上端部分37)の外縁部34を上に凸の円弧面状に形成している。本実施例においては、前記したように、前記係合突部20を構成する前記螺旋突条33の上端部分37を、上に凸の球面状に形成している。このように構成する場合は、前記シート材固定具1の前記螺旋軸部35を手で把持して該螺旋軸部35を前記人工芝マット30の上面側50に向けて押す(
図4に矢印で示すように押す)ことにより、該係合突部20が、前記貫通孔16を押し広げて孔縁51を乗り越え該上面側50に移動しやすい。これによって、前記係合突部20による前記引っ掛かり作用が効果的に発揮されて前記頭部10の浮き上がりを防止できながら、前記シート材固定具1を前記人工芝マット30から比較的容易に取り外すことができる。
又、前記のようにシート材固定具1を前記人工芝マット30等の前記シート材2から取り外さんとするときは、前記円環状の突部62の前記上端部分の外縁部34が上に凸の円弧面状に構成されているため、前記シート材固定具1の軸体本体31を手で把持して該軸体本体31を前記シート材2の上面側に向けて押すことにより、前記係合突部20が、前記貫通孔16を押し広げて、孔縁51を乗り越え該上面側50に移動しやすい。これによって、前記シート材固定具1を前記シート材から比較的容易に取り外すことができる。