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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043779
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】表面改質方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/06 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
C08J7/06 Z CER
C08J7/06 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149240
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227331
【氏名又は名称】株式会社ソフト99コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】西川 邦之
【テーマコード(参考)】
4F006
【Fターム(参考)】
4F006AB63
4F006AB64
4F006AB65
4F006AB67
4F006AB68
4F006BA01
4F006BA10
4F006DA01
(57)【要約】
【課題】基材の表面を効率よく改質でき、より効果的に表面処理を容易化できる表面改質方法を提供する。
【解決手段】燃料組成物を燃焼させ、火炎を発生させる工程と、火炎を被処理物に接触させ、被処理物の表面を改質する工程とを備える表面改質方法において、燃料組成物が、可燃成分と、ケイ素含有有機化合物、チタン含有有機化合物およびアルミニウム含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、表面改質剤を補助する改質助剤とを含有し、改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーが、可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーを超過する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料組成物を燃焼させ、火炎を発生させる工程と、
前記火炎を被処理物に接触させ、前記被処理物の表面を改質する工程と
を備え、
前記燃料組成物が、
可燃成分と、
ケイ素含有有機化合物、チタン含有有機化合物およびアルミニウム含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、
前記表面改質剤を補助する改質助剤と
を含有し、
前記改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーが、
前記可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーを超過する
ことを特徴とする、表面改質方法。
【請求項2】
前記改質助剤が、分子骨格中に酸素原子および/または環構造を含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の表面改質方法。
【請求項3】
前記改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーと、
前記可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーとの差が、
1000kJ/mol以上である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の表面改質方法。
【請求項4】
前記被処理物の表面自由エネルギーが、40mN/m以下である
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の表面改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質方法、詳しくは、火炎噴射により基材の表面を改質する表面改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種材料からなる基材は、例えば、接着、塗装、印刷などの方法で表面処理され、各種産業分野において使用されている。
【0003】
一方、例えば、基材の材質が、高分子材料、金属材料、セラミック材料などである場合、上記の表面処理が困難な場合がある。
【0004】
そこで、基材の表面に、表面改質剤を含む火炎を噴射して改質させ、表面処理の容易化を図ることが、提案されている。
【0005】
より具体的には、例えば、可燃成分と表面改質成分との混合組成物を蓄えている貯留容器の液相領域からその混合組成物を液状のまま混合組成物通路に導入し、混合組成物通路に導入された液状の混合組成物を予熱して混合組成物通路を通過する液状の混合組成物を高温高圧の状態にし、混合組成物通路で予熱されて高温高圧の状態の液状の混合組成物を噴射ノズルから噴射させて筒状の火口を通過させ、火口から噴出した混合組成物を燃焼させることにより発生した火炎を処理対象物に接触させてその処理対象物を表面処理する、火炎表面処理方法が提案されている。また、表面改質成分として、ケイ素原子、チタン原子、アルミニウム原子またはジルコニウム原子を含む化合物が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-155982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、基材の材質によっては、上記の方法では、表面を十分に改質できず、表面処理の容易化を十分に図ることができない場合がある。
【0008】
そこで、より効率よく基材の表面を改質するため、表面改質成分を過剰に添加することも検討されるが、そのような場合、表面改質成分が可燃成分の供給経路に付着および堆積し、可燃成分の燃焼を阻害する場合がある。
【0009】
また、より効率よく基材の表面を改質するため、空気の供給量を増加させ、可燃成分の燃焼効率を向上させることも検討させるが、空気の供給量は、バーナーなどの機構に依存するため、調整には限界がある。
【0010】
本発明は、基材の表面を効率よく改質でき、より効果的に表面処理を容易化できる表面改質方法である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明[1]は、燃料組成物を燃焼させ、火炎を発生させる工程と、前記火炎を被処理物に接触させ、前記被処理物の表面を改質する工程とを備え、前記燃料組成物が、可燃成分と、ケイ素含有有機化合物、チタン含有有機化合物およびアルミニウム含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、前記表面改質剤を補助する改質助剤とを含有し、前記改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーが、前記可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーを超過する、表面改質方法である。
【0012】
本発明[2]は、前記改質助剤が、分子骨格中に酸素原子および/または環構造を含有する、上記[1]に記載の表面改質方法である。
【0013】
本発明[3]は、前記改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーと、前記可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーとの差が、1000kJ/mol以上である、上記[1]または[2]に記載の表面改質方法である。
【0014】
本発明[4]は、前記被処理物の表面自由エネルギーが、40mN/m以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の表面改質方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表面改質方法は、燃料組成物を燃焼させ、火炎を発生させ、その火炎を被処理物に接触させて、被処理物の表面を改質する方法において、燃料組成物が、可燃成分と、ケイ素含有有機化合物、チタン含有有機化合物およびアルミニウム含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、表面改質剤を補助する改質助剤とを含有する。また、その改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーが、可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーを超過する。
【0016】
そのため、本発明の表面改質方法によれば、基材の表面を効率よく改質でき、より効果的に表面処理を容易化できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の表面改質方法は、燃料組成物を燃焼させ、火炎を発生させる工程(火炎発生工程)と、火炎を被処理物に接触させ、被処理物の表面を改質する工程(火炎接触工程)とを備える。
【0018】
火炎発生工程において、燃料組成物は、可燃成分と、表面改質剤と、改質助剤とを含有し、好ましくは、燃料組成物は、可燃成分と、表面改質剤と、改質助剤とからなる。
【0019】
可燃成分は、可燃性を有する化合物であれば、特に制限されないが、例えば、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、石油ガス、アセチレンガスなどの可燃ガス、例えば、可燃ガスの液化物などが挙げられる。また、可燃成分としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、イソオクタン、ミネラルターペンなどのパラフィン系溶剤、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、例えば、ガソリン、灯油などの石油系溶剤、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤などが挙げられる。
【0020】
これら可燃成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0021】
可燃成分として、好ましくは、可燃ガス、より好ましくは、ブタンガスが挙げられる。
【0022】
可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーは、例えば、3500kJ/mol以上、好ましくは、3900kJ/mol以上であり、例えば、6000kJ/mol以下、好ましくは、5500kJ/mol以下である。
【0023】
なお、1分子あたりの結合エネルギーは、1分子に含まれる全ての原子間の結合エネルギーの総和である。原子間の結合エネルギーは、化学便覧基礎編(改定3版 昭和59年6月25日発行 編者財団法人日本化学会)に記載される表に従う(以下同じ。)。
【0024】
表面改質剤は、ケイ素含有有機化合物、チタン含有有機化合物およびアルミニウム含有有機化合物からなる群から選択される。
【0025】
ケイ素含有化合物としては、例えば、シロキサン化合物が挙げられる。
【0026】
シロキサン化合物としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンなど)、ジヒドロテトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルトリシロキサン、ペンタメチルトリヒドロトリシロキサン、環状メチルヒドロテトラシロキサン、環状メチルヒドロペンタシロキサン、環状ジメチルテトラシロキサン、環状メチルトリフルオロプロピルテトラシロキサン、環状メチルフェニルテトラシロキサン、環状ジフェニルテトラシロキサン、末端がメチル封塞されたメチルヒドロポリシロキサン、末端がメチル封塞されたフェニルヒドロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0027】
これらシロキサン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0028】
シロキサン化合物として、非発火性、純度およびコストの観点から、好ましくは、ジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0029】
これらケイ素含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
チタン含有化合物としては、例えば、アルキルチタン化合物が挙げられる。
【0031】
アルキルチタン化合物としては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラノルマルブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ-2-エチルヘキソキシド、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニウムジ-2-エチルヘキソキシビス(2-エチル-3-ヒドロキシヘキソキシド)、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)などが挙げられる。
【0032】
これらアルキルチタン化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
アルキルチタン化合物として、非発火性、純度およびコストの観点から、好ましくは、チタンテトライソプロポキシドが挙げられる。
【0034】
これらチタン含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
アルミニウム含有化合物としては、例えば、アルキルアルミニウム化合物が挙げられる。
【0036】
アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムエチレート、アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノセカンダリーブチレート、アルミニウムセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムオキサイドイソプロポキサイドトリマー、アルミニウムオキサイドオクチレートトリマー、アルミニウムオキサイドステアレートトリマーなどが挙げられる。
【0037】
これらアルキルアルミニウム化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
これらアルミニウム含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
これら表面改質剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
表面改質剤として、好ましくは、ケイ素含有化合物、チタン含有化合物が挙げられ、より好ましくは、ケイ素含有化合物が挙げられ、さらに好ましくは、ポリシロキサン化合物が挙げられ、とりわけ好ましくは、ヘキサメチルジシロキサンが挙げられる。
【0041】
なお、表面改質剤の状態は、特に制限されず、気体、液体(蒸気)、固体(粉塵)などのいずれ状態であってもよい。表面改質剤は、好ましくは、液体状態で燃料組成物に含まれる。
【0042】
改質助剤は、表面改質剤のラジカル化(後述)を促進し、また、表面改質剤をラジカル状態で安定化させることにより、表面改質剤による表面改質性能を向上させる有機化合物(上記した可燃成分および表面改質剤を除く(以下同じ。))である。
【0043】
改質助剤は、結合エネルギーに応じて選択される。すなわち、本発明では、改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーが、可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーを超過する。
【0044】
より具体的には、可燃成分が、ブタンガス(1分子あたりの結合エネルギー:5168kJ/mol)である場合、改質助剤として、1分子あたりの結合エネルギーが5168kJ/molを超過する有機化合物が選択される。
【0045】
このような改質助剤としては、例えば、1分子あたりの結合エネルギーが5168kJ/molを超過する、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、含窒素化合物などが挙げられる。
【0046】
より具体的には、可燃成分が、ブタンガス(1分子あたりの結合エネルギー:5168kJ/mol)である場合、改質助剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、ベンゼンなどの炭化水素、例えば、塩化ブチルなどのハロゲン化炭化水素、例えば、sーブタノール、t-ブタノール、t-アミルアルコールなどのアルコール、例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジグリシジルエーテル、1,4-ジオキサン、テロラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ホルムアルデヒドジエチルアセタールなどのエーテル、例えば、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトンなどのケトン、例えば、ギ酸プロピル、ギ酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチルなどのエステル、例えば、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、第2ブチルアミン、n-アミルアミン、第2アミルアミン、モルホリンなどの含窒素化合物などが挙げられる。
【0047】
これら改質助剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
また、改質助剤として、好ましくは、分子骨格中に酸素原子および/または環構造を含有する改質助剤が挙げられる。
【0049】
上記した改質助剤のうち、分子骨格中に酸素原子を含有する改質助剤としては、例えば、sーブタノール、t-ブタノール、t-アミルアルコールなどのアルコール、例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジグリシジルエーテル、1,4-ジオキサン、テロラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ホルムアルデヒドジエチルアセタールなどのエーテル、例えば、メチルアセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトンなどのケトン、例えば、ギ酸プロピル、ギ酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチルなどのエステル、例えば、モルホリンなどの含窒素化合物(窒素酸素併有化合物)などが挙げられる。
【0050】
また、上記した改質助剤のうち、分子骨格中に環構造を含有する改質助剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロペンテン、メチルシクロヘキサン、ベンゼンなどの炭素環を含有する炭化水素、例えば、テロラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル、例えば、モルホリンなどの含窒素化合物(含窒素複素環化合物)などが挙げられる。
【0051】
これら改質助剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0052】
改質助剤として、好ましくは、分子骨格中に酸素原子および/または環構造を含有する改質助剤が挙げられ、より好ましくは、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンテン、酢酸エチル、ジエチルアセタール、モルホリンが挙げられ、さらに好ましくは、酢酸エチル、ジエチルアセタールが挙げられる。
【0053】
なお、上記は可燃成分がブタンガスである場合について説明しているが、改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーが可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーを超過していればよく、改質助剤は、可燃成分に応じて適宜選択される。
【0054】
改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーと、可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーとの差は、例えば、1kJ/mol以上、好ましくは、300kJ/mol以上、より好ましくは、500kJ/mol以上、さらに好ましくは、1000kJ/mol以上であり、通常、10000kJ/mol以下である。

また、燃料組成物は、後述する火炎表面処理装置などにより、液体状態で取り出され、燃焼する。そのため、改質助剤は、好ましくは、常温(25℃)液体である。
【0055】
より具体的には、改質助剤の融点は、例えば、40℃以上、好ましくは、20℃以下、より好ましくは、10℃以下であり、通常、-200℃以上である。
【0056】
また、改質助剤の沸点は、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下、より好ましくは、105℃以下、通常、50℃以上である。
【0057】
燃料組成物において、可燃成分、表面改質剤および改質助剤の割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0058】
十分に火炎を発生させる観点から、可燃成分は、燃料組成物の総量に対して、例えば、85質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、98質量%以下である。
【0059】
また、表面改質剤および改質助剤の総量(可燃成分に対する残部)が、燃料組成物の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、2以上であり、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
また、表面改質剤および改質助剤の比率も、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0060】
表面改質剤は、燃料組成物の総量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、1.5質量%以上であり、例えば、8質量%以下、好ましくは、6質量%以下、より好ましくは、4質量%以下である。また、改質助剤は、燃料組成物の総量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、1.5質量%以上であり、例えば、4.5質量%以下、好ましくは、4質量%以下、より好ましくは、3.5質量%以下である。
【0061】
また、表面改質剤および改質助剤の総量に対して、表面改質剤が、例えば、20質量%以上、好ましくは、40質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。また、改質助剤が、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下である。
【0062】
すなわち、表面改質剤が比較的多い場合、表面改質効果の向上を図ることができるが、表面改質剤が可燃成分の供給経路に付着および堆積し、可燃成分の燃焼を阻害する場合がある。一方、表面改質剤が比較的少ないと、十分に表面改質効果を得られない場合がある。
【0063】
また、改質助剤が比較的多い場合、表面改質剤のラジカル化(後述)を阻害する場合があり、また、改質助剤が比較的少ない場合、ラジカル化(後述)した表面改質剤を、十分に安定化できない場合がある。
【0064】
これらに対して、表面改質剤および改質助剤の割合が上記範囲であれば、良好に表面改質剤をラジカル化し、また、ラジカル化した表面改質助剤を安定化でき、さらに、可燃成分の燃焼を阻害しないため、とりわけ良好に表面改質効果を得ることができる。
【0065】
燃料組成物は、公知の方法で調製される。より具体的には、例えば、公知のガス容器(ガスボンベ)に、可燃成分、表面改質剤および改質助剤を封入することにより、燃料組成物が調製される。
【0066】
そして、火炎発生工程では、上記の燃料組成物を、公知の方法で燃焼させる。
【0067】
より具体的には、上記の燃料組成物を、公知の火炎表面処理装置(例えば、特開2013-155982号公報に記載の火炎表面処理装置)にセットし、燃料組成物をバーナーにより燃焼させる。
【0068】
これにより、火炎が発生するとともに、表面改質剤が可燃成分中で燃焼し、分解されることによりラジカル化される。また、改質助剤が、表面改質剤のラジカル化を促進し、また、ラジカル化した表面改質剤を安定させる。そのため、ラジカル消失までの時間を比較的長く調整できる。
【0069】
次いで、この方法では、燃料化合物の燃焼により得られた火炎を、被処理物に接触させ、被処理物の表面を改質する(火炎接触工程)。
【0070】
被処理物として、より具体的には、例えば、シリコ-ンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどのゴム、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂などの樹脂、例えば、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス、ニッケル、クロム、タングステン、金、銅、鉄、銀、亜鉛、スズ、鉛などの金属、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズなどの酸化金属、例えば、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、石灰、ゼオライト、ガラス、セラミックなどの無機材料などが挙げられる。また、被処理物の形状は、特に制限されず、例えば、板状、シート状、フィルム状、テープ状、短冊状、パネル状、紐状、筒状、柱状、球状、ブロック状、チューブ状、パイプ状、凹凸状、膜状、繊維状、織物状、束状などが挙げられる。
【0071】
これら被処理物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0072】
また、被処理物は、好ましくは、上記の表面改質方法により改質された後に、表面処理(例えば、接着、塗装、印刷などの表面処理)される。
【0073】
換言すれば、被処理物は、好ましくは、表面処理の前に、表面の改質が要求される基材であり、より具体的には、表面自由エネルギーが比較的低い基材である。
【0074】
被処理物の表面自由エネルギー(火炎による処理前の表面自由エネルギー)は、例えば、40mN/m以下、好ましくは、30mN/m以下である。
【0075】
そして、この方法では、上記の火炎発生工程で発生した火炎を、被処理物の表面に接触させる。
【0076】
接触条件は、被処理物の種類、可燃成分の種類などに応じて、適宜設定されるが、例えば、火炎の噴射速度が、例えば、15cm/s以上、好ましくは、20cm/s以上であり、例えば、80cm/s以下、好ましくは、60cm/s以下である。
【0077】
また、火炎の噴射口と、被処理物(基材)との距離が、例えば、0.5cm以上、好ましくは、1.0cm以上であり、例えば、10cm以下、好ましくは、8cm以下である。
【0078】
また、被処理物に対する火炎の接触時間が、例えば、0.01秒以上、好ましくは、0.02秒以上であり、例えば、0.20秒以下、好ましくは、0.10秒以下である。
【0079】
また、この方法では、必要により、上記の処理を、複数回繰り返してもよい。
【0080】
さらに、この方法では、火炎と接触させた被処理物を、適宜の時間放置し、冷却してもよい。
【0081】
このようにして火炎が被処理物に接触すると、表面改質剤の分解により得られ、火炎中に含まれるラジカル(すなわち、ラジカル化した表面改質剤)が、被処理物(基材)とラジカルカップリング反応する。また、この方法では、改質助剤により、表面改質剤のラジカル化が促進され、また、表面改質剤がラジカル状態で安定化されている。
【0082】
そのため、火炎が被処理物(基材)に接触することによって、被処理物(基材)表面に、緻密製の高い被膜が強固に形成される。その結果、被処理物(基材)の表面の濡れ性(親水性)が向上する。すなわち、被処理物(基材)の表面が改質される。
【0083】
これにより、被処理物(基材)を、より効果的に、表面処理(例えば、接着、塗装、印刷などの表面処理)に供することができる。その結果、より多くの種類の被処理物(基材)を、表面処理の対象物として選択できる。
【0084】
以上の通り、上記の表面改質方法は、燃料組成物を燃焼させ、火炎を発生させ、その火炎を被処理物に接触させて、被処理物の表面を改質する方法において、燃料組成物が、可燃成分と、ケイ素含有有機化合物、チタン含有有機化合物およびアルミニウム含有有機化合物からなる群から選択される少なくとも1種の表面改質剤と、表面改質剤を補助する改質助剤とを含有する。また、その改質助剤の1分子あたりの結合エネルギーが、可燃成分の1分子あたりの結合エネルギーを超過する。
【0085】
そのため、上記の表面改質方法によれば、被処理物(基材)の表面を効率よく改質でき、より効果的に表面処理を容易化できる。
【実施例0086】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0087】
実施例1~6および比較例1~4
可燃成分、表面改質剤および改質助剤を、表1および表2に記載の処方で、火炎処理装置(新富士バーナー)のガスボンベに封入した。
【0088】
また、被処理物(基材)として、厚み2mmのシリコ-ンゴム(表面自由エネルギー24mN/m、70mm×150mm)を用意した。
【0089】
そして、被処理物(基材)の表面に、火炎処理装置(新富士バーナー)により、火炎を噴き付けた。
【0090】
なお、火炎の噴射口と被処理物(基材)の表面との距離を3cmとした。
【0091】
また、火炎の噴出速度を30cm/sとした。
【0092】
また、火炎の噴き付け回数は2回(ガス圧0.1MPa)、噴き付け時間(合計)は、約0.03秒~0.20秒とした。
【0093】
また、火炎を噴き付けた後、被処理物(基材)を10分間放置した。
【0094】
その後、印刷機(型番:UJF-3042MKII、ミマキエンジニアリング製、プライマー:PR-200 インク:LUS-120)を用いて、被処理物(基材)に印刷(表面処理)した。
【0095】
得られた印刷物を1日放置し、評価用の試験片とした。
【0096】
評価
(1)接触角
各実施例および各比較例において、印刷前の基材の表面と水との接触角を、接触角計(型番DoM-501、協和界面科学製)を用いて測定した。その結果を、表中に示す。
【0097】
(2)密着性
各実施例および各比較例において、印刷後の基材表面(試験片の印刷面)を、カッターにより切り込み、2mm幅の碁盤目を100個(10行×10列)形成した。
【0098】
次いで、その上から粘着テープを強く押し付けた。
【0099】
その後、粘着テープを試験片表面に対して90度方向に向かって急速に剥がし、剥離せずに残っている碁盤目の個数を数えた。
【0100】
そして、以下の評価基準に従って、密着性を評価した。
【0101】
◎ :碁盤目が全く剥がれず、100個残っている。
【0102】
○ :残っている碁盤目の数が95個以上100未満。
【0103】
△ :残っている碁盤目の数が50個以上95未満。
【0104】
× :残っている碁盤目の数が50個未満。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】