(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043797
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ドロップシャフト格納設備
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20220309BHJP
E02B 5/00 20060101ALI20220309BHJP
E03F 5/02 20060101ALI20220309BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
E03F5/04 H
E02B5/00 C
E03F5/02
F16L1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149260
(22)【出願日】2020-09-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ドロップシャフト
(71)【出願人】
【識別番号】515256729
【氏名又は名称】ゲートアップ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 泰夫
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA25
2D063DA07
(57)【要約】
【課題】大深度のドロップシャフト格納設備に、昇降安全性、土砂搬出及びスクリーン機能性、設備点検・交換性などの維持管理性と、人孔構築時の短工期及び低廉性と、新たな流入管の接続などへの拡張性を満たす。
【解決手段】人孔に配備され、下水を、人孔壁を貫通する流入管から螺旋案内式のドロップシャフトを介して人孔底部で人孔壁を貫通する流出管より幹線に導水するためのドロップシャフトを格納するドロップシャフト格納設備として、流出管の上部付近の人孔の内部に設けた中間スラブはドロップシャフトの下端を支持し、ドロップシャフトの下端に接続され流出管の方向へ下水を導水するために人孔底部に設けた迂回管は、ドロップシャフトの下端より流出管と概反対方向に設ける第一の屈曲管と、第一の屈曲管を経て下方に下がる鉛直管と、鉛直管を経て人孔底部にて流出管に下水を導水する第二の屈曲管とから構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人孔に配備され、下水を、人孔壁を貫通する流入管から人孔の内部に導水し、螺旋案内式のドロップシャフトの内部を概上端から下端へ落下させ、人孔底部で前記人孔の外部に前記人孔壁を貫通する流出管より幹線に導水するための前記ドロップシャフトを格納するドロップシャフト格納設備であって、
前記流出管の上部付近の前記人孔の内部に中間スラブを設け、当該中間スラブは、前記ドロップシャフトの下端を支持し、
前記ドロップシャフトの下端に接続され前記流出管の方向へ下水を導水する迂回管を前記人孔底部に設け、当該迂回管は、前記ドロップシャフトの下端より平面視で前記流出管と概反対方向の位置に設ける第一の屈曲管と、当該第一の屈曲管を経て前記中間スラブの下方に下がる鉛直管と、当該鉛直管を経て前記人孔底部にて前記流出管に下水を導水する第二の屈曲管とから構成される
ことを特徴とするドロップシャフト格納設備。
【請求項2】
請求項1に記載のドロップシャフト格納設備であって、
前記ドロップシャフトは、平面視で概円形の前記人孔の中心より前記流出管と概反対方向に前記人孔の中心より所定の距離を偏心した位置に格納され、
前記ドロップシャフトから前記流出管側の前記中間スラブの位置に、土砂搬出孔を設け、
前記土砂搬出孔の直下の前記人孔底部で前記迂回管の出口と前記流出管との狭隘に、インバートを設ける
ことを特徴とするドロップシャフト格納設備。
【請求項3】
人孔に配備され、下水を、人孔壁を貫通する流入管から人孔の内部に導水し、螺旋案内式のドロップシャフトの内部を概上端から下端へ落下させ、人孔底部で前記人孔の外部に前記人孔壁を貫通する流出管より幹線に導水するための前記ドロップシャフトを格納するドロップシャフト格納設備であって、
前記流出管の上部付近の前記人孔の内部に中間スラブを設け、当該中間スラブは、前記ドロップシャフトの下端を支持し、
前記人孔壁の内周面に螺旋階段を設け、当該螺旋階段は、前記ドロップシャフトを自らの内側に包み込む態様である
ことを特徴とするドロップシャフト格納設備。
【請求項4】
請求項3に記載のドロップシャフト格納設備であって、
前記中間スラブの上方の前記人孔壁は、組立式のRCセグメントから構成され、
前記螺旋階段は、前記RCセグメントに予め設けられたインサート金物に固定される
ことを特徴とするドロップシャフト格納設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大深度のドロップシャフト格納設備に関し、人孔に配置され、下水を、人孔壁を貫通する流入管から人孔内に導水し、強化プラスチック製のらせん案内式ドロップシャフト内を上端から下端へ落下させ、人孔底部において人孔外に人孔壁を貫通する流出管より幹線に導水するためのドロップシャフトを格納する設備である。
【背景技術】
【0002】
昨今、都市部の下水幹線の老朽化や下水総量の増大に対し、流下性に優れ耐久性及び維持管理性に優れた、新たな下水と雨水の合流式の流域下水幹線網の新設が求められている。具体的には、下水を、既存の下水管から人孔に流入させる流入管及びこれを落下させる設備を備えた人孔と、人孔より幹線へ流出させる流出管と、幹線自体の新設である(特許文献1の
図8及び特許文献2の
図1、参照)。また、これら新設の幹線及び人孔は、輻輳する都市部の地下埋設の状況から、勢い50m級の大深度に設置される事例が増えている。ここに、大深度のドロップシャフト格納設備には、流下能力を兼ね備える流下減勢性と、耐久性及び幹線も含めた維持管理性とに優れている必要性がある。
【0003】
特許文献1には、異物排除の維持管理性に優れたドロップシャフトの技術が示されている。また、特許文献2には、流下性能に優れたドロップシャフトの技術が示されている。そして、特許文献3には、組立式のセグメントを構成部材とする圧入式オープンケーソンの技術として、その内部に大深度のドロップシャフトを格納する人孔の構築に活用できる技術が示されている。
【0004】
過去、鉛直方向の「流下能力を兼ね備える流下減勢性」を有する人孔には、多段の床を設けて下水を段々に流下させつつ減衰させる「多段流下方式」が主流であった。しかし、この方式の人孔の場合、「臭気や衝撃音の拡散による公害」や「大深度化に伴う、水理抵抗増大や硫化水素発生による人孔や管渠の破損などの耐久性低下」といった問題があった。
【0005】
近年、多段流下方式のこれらの問題を解決する、中心筒34と外側筒36とその狭隘のらせん案内路37から構成される強化プラスチック製のらせん案内式ドロップシャフト(以下、簡略して「ドロップシャフト」という)を人孔内に設置する方式(
図7、また合わせて、特許文献1の
図8及び特許文献2の
図1も参照)が主流となっている。
【0006】
ドロップシャフトは、下水を密閉された中心筒と外側筒の狭隘のらせん案内路により空気を巻き込むことなく渦流状に流下させ、位置エネルギーを効率かつ安定的に運動エネルギーに消散できる。よって、上記した「臭気や衝撃音の拡散による公害」や「大深度化に伴う、水理抵抗増大や、硫化水素発生による人孔や管渠の破損などの耐久性低下」といった問題を効果的に解決する。
【0007】
一方で、本来、大深度化に伴うドロップシャフトを格納する人孔には、維持管理において、幹線へ安全に入坑できる「昇降点検機能」と、幹線から地上への「土砂搬出機能」が求められる。また、ドロップシャフト上端付近には流木などの異物を排除する「スクリーン機能」が必要となる。
【0008】
「昇降点検機能」は、一般に、10m前後までの浅い人孔の場合は、特許文献1の
図8に示されるように、タラップのみ具備すれば昇降階段は必要ない。一方、大深度の人孔の場合は、昇降時に危険となるタラップに代えてより安全な昇降階段が必須となる。そして、その形状としては、最低幅60cm、踏面15cm以上、蹴上23cm以下の階段と踊り場が、安全上必要となることが、建築基準法施行令に定められている。
このように、大深度のドロップシャフトを格納する人孔には、内部に、タラップに代えて上記法規に適う昇降階段を併設する必要があるので、規模が拡大し、工費工期を著しく高騰させる問題があった。
【0009】
次に、大深度のドロップシャフトを格納する人孔には、幹線から地上への「土砂搬出機能」が必要である。地震が起こると、流域下水幹線網の個々のコンクリート構造物は少なからず損壊し、コンクリートの剥落片が幹線に集積し沈降する。また、大雨の後には、流木や産業廃棄物などが幹線に集積し沈降する。そうすると、幹線は流下能力を喪失し、冠水などの災害が起こる。
したがって、幹線の流下状況の確認や定期的な清掃と堆積物の回収、これに伴う土砂搬出は、流下能力の確保や構造物の延命に不可欠である。
【0010】
一般に、人孔から幹線に下水を流出させる流出管は、特許文献1の
図8及び特許文献2の
図1に示されるように、ドロップシャフトに直接接続するので、幹線から土砂搬出が不可能な構造となっている。これは、一般にドロップシャフト自体が人孔底部に固定されることで狭隘となり土砂搬出のためのインバートのスペースを取ることが難しいからである。無理に人孔規模を拡大し、ドロップシャフト出口に土砂搬出のためのインバートを設ける場合、インバートに必要なインバートコンクリートがドロップシャフトを巻き込む形となる。そうすると、この部分のドロップシャフトの交換が不可能となるからである。
【0011】
また一般に、人孔に下水を流入させる流入管は、特許文献1の
図8及び特許文献2の
図1に示されるように、ドロップシャフト上端に直接接続するので、ここに開水路やスクリーンの設置が不可能な構造となっている。これは、一般にドロップシャフト自体が人孔壁に固定されることでスペースが取れないからである。
【0012】
要するに、従来、ドロップシャフトを格納する人孔には、大深度の場合に、本来必要な「昇降点検機能」、「土砂搬出機能」及び「スクリーン機能」を満たす構造はなく、単に、人孔の耐久性などを向上するための、強化プラスチック製のらせん案内式ドロップシャフトの技術が存在するのみである(特許文献1の
図8及び特許文献2の
図1、参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第4990540号公報
【特許文献2】特開2000-110146号公報
【特許文献3】特開2018-150731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上では、人孔に配置され、下水を、人孔壁を貫通する流入管から人孔内に導水し、ドロップシャフト内を上端から下端へ落下させ、人孔底部において人孔外に人孔壁を貫通する流出管より幹線に導水するためのドロップシャフトを格納する大深度のドロップシャフト格納設備に関する課題を、特許文献1及び2を例にして説示したが、本発明が解決しようとする課題を、以下に総括する。
【0015】
1)大深度の人孔の場合、タラップに代えて安全上必要となる昇降階段を別途併設する必要があるので、設備規模が拡大し、工費工期が高騰する。
【0016】
2)従来、幹線への流出管は、ドロップシャフトに直接接続するので、幹線からの土砂搬出は不可能であった。無理にドロップシャフト出口に土砂搬出のためのインバートを設ける場合、インバートに必要なインバートコンクリートがドロップシャフトを巻き込む形となり、この部分のドロップシャフトの交換を不可能とし維持管理上に問題がある。
【0017】
3)仮にドロップシャフトをインバートコンクリートに巻き込まずにインバートを設ける場合、巻き込まないことでドロップシャフト下端の周辺などに汚濁物が滞留し、臭気やコンクリートの劣化が誘発される問題がある。
【0018】
4)従来、大深度のドロップシャフトを格納する人孔には、本来必要な「昇降点検機能」、「土砂搬出機能」及び「スクリーン機能」を満たす構造は存在しなかった。単に人孔の耐久性を向上する、強化プラスチック製のらせん案内式ドロップシャフトの技術があるのみである(特許文献1の
図8及び特許文献2の
図1、参照)。
【0019】
5)そこで総括すると、大深度のドロップシャフト格納設備には、本来以下の6つの機能が求められる。
・流下能力と流下減勢性(必要な水理特性と耐久性)
・高耐久性(硫化水素発生や腐食が少ない)
・低公害性(臭気や衝撃音の拡散が少ない)
・維持管理性(昇降安全性、土砂搬出及びスクリーン機能性、設備点検・交換性)
・人孔構築時の短工期、低廉性
・設備の拡張性(新たな流入管の接続などへの拡張性)
【0020】
ここで、従来の、強化プラスチック製のらせん案内式ドロップシャフトの技術(特許文献1の
図8及び特許文献2の
図1、参照)は、強化プラスチック製のドロップシャフトゆえに、前半の3つは満たすが、ドロップシャフト格納設備としては合理性が十分ではないため、後半の3つは十分満たすことはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係るドロップシャフト格納設備の代表的な構成としては、人孔に配備され、下水を、人孔壁を貫通する流入管から人孔の内部に導水し、螺旋案内式のドロップシャフトの内部を概上端から下端へ落下させ、人孔底部において人孔の外部に人孔壁を貫通する流出管より幹線に導水するためのドロップシャフトを格納するドロップシャフト格納設備であって、流出管の上部付近の人孔の内部に中間スラブを設け、当該中間スラブは、ドロップシャフトの下端を支持し、ドロップシャフトの下端に接続され流出管の方向へ下水を導水する迂回管を人孔底部に設け、当該迂回管は、ドロップシャフトの下端より平面視で流出管と概反対方向の位置に設ける第一の屈曲管と、当該第一の屈曲管を経て中間スラブの下方に下がる鉛直管と、当該鉛直管を経て人孔底部にて流出管に下水を導水する第二の屈曲管とから構成されることを特徴とする。
【0022】
更に、本発明に係るドロップシャフト格納設備は、ドロップシャフトが、平面視で概円形の人孔の中心より流出管と概反対方向に人孔の中心より所定の距離を偏心して設置され、ドロップシャフトから流出管側の中間スラブの位置に、土砂搬出孔を設け、土砂搬出孔の直下の人孔底部で迂回管の出口と流出管との狭隘に、インバートを設けることを特徴とする。
【0023】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るドロップシャフト格納設備の別の構成としては、下水を、人孔壁を貫通する流入管から人孔の内部に導水し、螺旋案内式のドロップシャフトの内部を概上端から下端へ落下させ、人孔底部において人孔の外部に人孔壁を貫通する流出管より幹線に導水する、ドロップシャフトを格納する人孔に配備されるドロップシャフト格納設備であって、流出管の上部付近の人孔の内部に中間スラブを設け、当該中間スラブは、ドロップシャフトの下端を支持し、人孔壁の内周面に螺旋階段を設け、当該螺旋階段は、ドロップシャフトを自らの内側に包み込む態様であることを特徴とする。
【0024】
更に、本発明に係るドロップシャフト格納設備は、中間スラブの上方の人孔壁が組立式のRCセグメントから構成され、螺旋階段が、RCセグメントに予め設けられたインサート金物に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記した本発明の代表的に構成によれば、以下の効果を奏することができる。
1)人孔底部には、人孔壁側の迂回管しか存在しないため、この人孔底部が広くなり、土砂集積及び荷上げの作業が安全かつ効率よく行える。
【0026】
2)ドロップシャフト下端は、中間スラブに支持し、その中心筒は人孔底部に連通するため、幹線内部で使用する点検用のケーブル付きカメラのケーブルが、この中心筒を経由でき、維持管理性が向上する。
【0027】
3)ドロップシャフト下端は、中間スラブに支持し、人孔底部でインバートコンクリートに巻き込まないため、交換が容易となり、維持管理性が向上する。
【0028】
4)人孔の形状に関して、平面視で円形の場合は、土水圧耐荷上有利となり、平面視で矩形の場合も含めて、流入管や流出管を人孔面に直角に貫通させれば、開口補強筋が配筋しやすく強固となる(図示せず)。
【0029】
また、上記した本発明の別の構成によれば、以下の効果を奏することができる。
5)円形の人孔壁の内周面に配置する螺旋階段の平面視曲率を最大化することができ、昇降が安全になる。
【0030】
6)ドロップシャフトが人孔の中心に寄るから、円形の人孔において流入管がどの方向から人孔壁を貫通しても概直角に貫通でき、貫通孔は最小化するため、人孔構造の耐久性が向上する。また、新たな流入管の接続の場合、どの方向から人孔壁を貫通しても容易に増設でき、将来の拡張性を満たす。
【0031】
7)ドロップシャフトが人孔の中心に寄るから、ドロップシャフト上端付近に設けた別の中間スラブに人孔壁を貫通する流入管とドロップシャフト上端との間に開水路とスクリーンを配備できるため、異物や流木をこのスクリーンで排除でき、ドロップシャフトの耐久性が向上する。
【0032】
8)ドロップシャフトが人孔の中心に寄るから、ドロップシャフト概上端に直接流入管を接続した場合、開水路及びスクリーンは配備できないとしても、螺旋階段との最適配置によって人孔の全体をスリム化できる。
【0033】
9)人孔の形状に関して、平面視で円形の場合は、螺旋階段の形状は単純化するのでプレキャスト化でき、設置もスムーズとなる。また、例えば、平面視で六角形の場合でも、螺旋階段の形状を人孔壁に密着するよう工夫すれば、同様にプレキャスト化できスムーズに設置することができる(図示せず)。
【0034】
10)流出管の上部付近の中間スラブに、ドロップシャフトの下端と併せて螺旋階段の下端を支持すれば、人孔底部には広い空間が確保でき、土砂搬出作業を効率化できる。
【0035】
更に、上記した土砂搬出孔を設けた本発明の構成によれば、以下の効果を奏することができる。
11)中間スラブに加え、ドロップシャフト上端付近に設けた別の中間スラブにも同様の位置に土砂搬出孔を設け、更に、土砂搬出孔の直下の人孔底部で迂回管の出口と流出管との狭隘にインバートを設けると、人孔底部のインバートから各中間スラブの土砂搬出孔は鉛直に並ぶことになる。これにより、土砂は幹線からインバートに集積の上、直接真上にワイヤモッコ等を使って地上へ揚土できる。
【0036】
12)ドロップシャフトが流出管と概反対方向に所定の距離を偏心することにより、平面視で人孔の断面内において、中間スラブにはドロップシャフトの流出管側の中間スラブに土砂搬出孔を効率よく配置でき、人孔構築の工期工費を縮減する。
【0037】
13)仮に偏心するための所定の距離がゼロで、ドロップシャフトを円形の人孔中心に配置したとしても、効率的な配置ではないが、人孔底部のインバートから各中間スラブの土砂搬出孔を鉛直に並べることは可能であるから、土砂は幹線からインバートに集積の上、直接真上にワイヤモッコ等にて地上へ揚土できる(図示せず)。
【0038】
14)螺旋階段に内包されるドロップシャフトは、人孔の中心に寄せつつ人孔の中心より流出管と概反対方向に偏心させて、各中間スラブにおいて流出管側には土砂搬出孔が、また、流出管側と反対側のドロップシャフト上端には開水路とスクリーンが効率よく配置できる。これにより、昇降点検機能、土砂搬出機能及びスクリーン機能を具備しつつ、人孔径が最小化し人孔構築の工期工費を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の実施例1に係るドロップシャフト格納設備の構造を示す図である。
【
図4】本発明の実施例2に係るドロップシャフト格納設備の構造を示す図である。
【
図8】迂回管及びドロップシャフトの中心筒の構造を示す図である。
【
図10】階段ピースを取り付ける概念を示す図である。
【
図11】階段ピースの取り付け状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明に係る実施例1及び実施例2について説明する。
まず、一般的なRC構造の実施例1について、実施例1及び実施例2に共通する構成である、「人孔形状及び土留」、「下水の流下経路」、「土砂の搬出経路」及び「幹線23への入出経路」の構成と効果について説明する。
【0041】
続いて、一般的なRC構造の実施例1に対し、組立式本設(RC)ケーソンを構造壁にする実施例2について、上記の共通する構成を補足して説明する。
【0042】
図については、
図1~
図3が、実施例1対応の図で、
図4~6及び
図9~11が、実施例2対応の図で、
図7及び
図8が両実施例に共通する図である。
【実施例0043】
図1は、実施例1に係り、組立式仮設(鋼製)ケーソン64を土留とし、これを内巻きに現場打設の人孔壁(現場打)13を本設構造物として構築するドロップシャフト格納設備の構造を示す図で、左側が側面図、右側が各層の平面図である。
また、
図2は、
図1に矩形枠で示す上層部の拡大
図1を示す図で、
図3は、
図1に矩形枠で示す下層部の拡大
図2を示す図で、共に、上側が側面図、下側が平面図である。
【0044】
(1)人孔形状及び土留について
実施例1は、組立式ケーソンの内側に、RC構造の現場打設にて構築する平面視で概円形の人孔10に対して、1基のドロップシャフト31を格納する。ここで、実施例1では、組立式ケーソンとして、組立式仮設(鋼製)ケーソン64を使用する。
【0045】
まず、オープンケーソン(特許文献3に記載のケーソンが参考になる)により、土留として、組立式仮設(鋼製)ケーソン64を構築する。
次に、オープンケーソンは、内部を帯水させながら圧入及び掘削の上、刃口部コンクリート17を水中打設し、揚水後に均しコンクリート16(
図1の側面図の下部)を打設する。
その後、その内側に、RC構造の現場打により人孔10を構築する。
【0046】
以上の構造により、以下の効果を奏することができる。
ア 人孔が、概円形形状のため、大深度に起因し卓越する土水圧にアーチアクションにて効果的に耐荷できる。
【0047】
イ 人孔の形状を楕円形にすれば、中間スラブで補助的に土水圧に耐荷しつつ、2条のドロップシャフト31を格納することもできる。
【0048】
ウ オープンケーソンは、内部を帯水させながら圧入するから、大深度の土水圧の条件に安価な構築工法である。
【0049】
エ 土質条件や施工深さによっては、土留をライナープレートや鋼矢板によって構築してもよい。
【0050】
(2)下水の流下経路について
図1に示すように、概円形の人孔10は、人孔頂版11、下床(現場打)15及び人孔壁(現場打)13を有し、その内部にて、ドロップシャフト31を概人孔中心に寄せて配置する。ここで、
図7に、ドロップシャフト31の構造を示す。ドロップシャフト31は、連結式にジョイントができ、上側のドロップシャフト31を、下側のドロップシャフト31に挿入する状況も併せて示す。
【0051】
下水は、ドロップシャフト上端32の人孔壁を貫通する流入管21から流入し、
図7に示すように、密閉された中心筒34と外側筒36の狭隘のらせん案内路37により空気を巻き込むことなく渦流状に流下し、ドロップシャフト下端33から人孔壁を貫通する流出管22を経て幹線23へ流出する。
【0052】
図2に示すように、流入管21の下部付近にてドロップシャフト上端32を拘束し、ここへ流入管21から導水する開水路(堰)46を支持する第二の中間スラブ54を配置する。
【0053】
次に、
図3に示すように、概円形の人孔10の内側に、流出管22上部付近にて、ドロップシャフト下端33を支持しここより流出管22に導水する迂回管41を下方に配する第一の中間スラブ53を配置する。
【0054】
また、
図8に、迂回管41及び中心筒34の構造を示す。上側が側面図、下側が実施例1及び後述する実施例2のそれぞれの「断面D」及び「断面E」に相当する各断面図を示す。
【0055】
迂回管41は、ドロップシャフト下端33に接続し、これより平面視で流出管22と概反対方向に第一の屈曲管42を経て鉛直管44が下方に下がり、人孔底部12にて少なくとも第二の屈曲管43を経て、流出管22の方向へ下水を導水する。
【0056】
ドロップシャフト31の中心筒34は、ドロップシャフト上端32の上方から、
図8に示すように、第一の中間スラブ53の連通孔56を通じて人孔底部12に連通する。
【0057】
以上の構造により、以下の効果を奏することができる。
オ ドロップシャフト31は、下水を密閉された中心筒34と外側筒36の狭隘のらせん案内路37により空気を巻き込むことなく渦流状に流下させ、位置エネルギーを効率かつ安定的に運動エネルギーに消散できることから、「臭気や衝撃音の拡散による公害」や「大深度化に伴う、水理抵抗増大や硫化水素発生による人孔や管渠の破損などの耐久性低下」の問題を効果的に解決する。
【0058】
カ ドロップシャフト31は、人孔の中心に寄ることから、円形の人孔10において流入管21がどの方向から人孔壁を貫通しても、概直角に貫通でき貫通孔は最小化するため、人孔構造の耐久性が向上する。また、ドロップシャフト上端32に第二の中間スラブ54を設ければ、ここに人孔壁を貫通する流入管21とドロップシャフト上端32との間に、開水路(堰)46及びスクリーン45を配せるため、異物や流木をスクリーン45で排除でき、ドロップシャフト31の耐久性が向上する。
【0059】
キ 流出管22上部に配置した第一の中間スラブ53及び流入管21下部に配置した第二の中間スラブ54により、流出管22及び流入管21の貫通孔で脆弱となる人孔壁を効果的に補強できる。
【0060】
ク 迂回管41は、
図8に示すように、ドロップシャフト下端33から平面視で流出管22と斜め反対方向に第一の屈曲管42を経て鉛直管44が下方に下がり、人孔底部12にて第二の屈曲管43及び第三の屈曲管48にてインバート19を経て流出管22の方向へ下水を導水すれば、平面視で流出管22と正反対方向に第三の屈曲管48を用いず導水するのに対し、その径を最大化できる。
【0061】
ケ ドロップシャフト31は、第一の中間スラブ53に支持し、人孔底部12でインバートコンクリート18に巻き込まないため、交換が容易となり、維持管理性が向上する。
【0062】
コ ドロップシャフト31の中心筒34は、人孔底部12に連通するため、幹線23内部で使用する点検用のケーブル付きカメラ63のケーブルがこの中心筒34を経由でき、維持管理性が向上し、更に、この中心筒34は、種々の計測ケーブルを配置できる他、換気配管としても活用できる(
図8を参照)。
【0063】
(3)土砂の搬出経路について
地上部のマンホール62及びその下方の人孔頂版11にも、土砂搬出孔58と昇降口57を配する。この土砂搬出孔58を、マンホール62から人孔頂版11、人孔10の内側である以下の、第四の中間スラブ91、第二の中間スラブ54、1以上の第三の中間スラブ55及び第一の中間スラブ53の平面視で同一位置に配置し、また、人孔底部12の同一位置にはインバート19を配置する。
【0064】
各中間スラブ(53、55及び54)において、ドロップシャフト31は、人孔の中心より流出管22と概反対方向に偏心させておき、流出管22側に土砂搬出孔58を配置する。
【0065】
また、ドロップシャフト31は、流出管22の上部付近で第一の中間スラブ53で支持し、迂回管41は、人孔底部12にて、第二の屈曲管43及び第三の屈曲管48をインバートコンクリート18に埋め込み、下水を流出管22の方向へ導水する。
【0066】
以上の構造により、以下の効果を奏することができる。
サ 人孔底部12のインバート19から、上方へ向けて各中間スラブ(53、55、54及び91)並びに人孔頂版11の土砂搬出孔58は、鉛直に並ぶことになるため、土砂は、幹線23からインバート19に集積の上、直接真上にワイヤモッコ等にて地上へ揚土できる。
【0067】
シ 人孔頂版11と第二の中間スラブ54との間に設けた第四の中間スラブ91により、ここにテルハクレーンを配置して、荷揚げした土砂を一旦仮置きできる(図示せず)。そうすると、人孔直上の交通規制を行わなくとも人孔内部で土砂の荷揚げ及び集積が完結でき、外部へは夜間に集中的に搬出すれば交通規制を最小化できる。
【0068】
ス ドロップシャフト31の偏心により、人孔10の平面視で断面内において、各中間スラブ(53、55、54及び91)にはドロップシャフト31の流出管22側に土砂搬出孔58を効率よく配置でき、人孔構築の工期工費を縮減する。
【0069】
セ 人孔底部12には、人孔壁側の迂回管41しか存在しないため、人孔底部12が広くなり、インバート19における土砂集積及び荷上げの作業が安全かつ効率よく行える。
【0070】
(4)幹線23への入出経路について
地上部のマンホール62及びその下方の人孔頂版11にある、昇降口57から人孔内の螺旋階段51の最上に位置する第四の中間スラブ91へ降り、ドロップシャフト31を内側に包み込む態様にて人孔壁内周面に配する螺旋階段51を、螺旋階段51の最下に位置する第一の中間スラブ53へ降りる。
【0071】
螺旋階段51の最上の第四の中間スラブ91と、螺旋階段51の最下に位置する第一の中間スラブ53との間に、螺旋階段51が人孔中心に概270度回転し、降下するたびに、複数の第三の中間スラブ55が配置される。
【0072】
各中間スラブ(53、55及び54)においてドロップシャフト31は人孔中心より流出管22と概反対方向に偏心させておき、流出管22側に土砂搬出孔58を配置している。そして、螺旋階段51の階段開口52は、平面視でドロップシャフト31及び土砂搬出孔58に当たらない位置に、鉛直に連続して開口する(
図2及び
図5の下側の平面図を参照)。
【0073】
以上の構造により、以下の効果を奏することができる。
ソ 人孔壁内周面に配置する螺旋階段51は、平面視で曲率が最大化し、昇降が安全になる。
【0074】
タ 螺旋階段51に内包されるドロップシャフト31は、人孔の中心に寄せつつ、人孔の中心より流出管22と概反対方向に偏心させ、流出管22側には土砂搬出孔58を配置し、流出管22側と反対側のドロップシャフト上端32には開水路とスクリーンを効率よく配置することから、昇降点検機能、土砂搬出機能及びスクリーン機能を具備しつつ、人孔径が最小化し人孔構築の工期工費を最小化する。
【0075】
チ 複数の第三の中間スラブ55に必要な螺旋階段51の階段開口52は、各スラブにおいて人孔中心に概90度の範囲に概螺旋階段の踏み面の幅に限定でき、各層の中間スラブの剛性を脆弱化させない(
図2及び
図5の下側の平面図を参照)。また、複数の第三の中間スラブ55及び螺旋階段51の形状を共有化でき、これらのプレキャスト化により工期工費を縮減できる(
図9~
図11を参照)。
実施例2は、実施例1が組立式ケーソンとして「組立式仮設(鋼製)ケーソン64」を用いるのに対して、「組立式本設(RCセグメント)ケーソン14」を用いる点が相違する。
なお、実施例2の人孔内周面の形状については、実施例1と同一とした。したがって、実施例1に対して実施例2は、実施例1の組立式仮設(鋼製)ケーソンの壁厚分が縮径するから、工期工費の縮減効果がある。しかし、一般的なRC構造ではなく、設計思想を異にするRCセグメントを本設とする柔構造であるから、採用に当たっては施工条件に対し注意が必要となる。
以下、実施例2について、実施例1と実施例2とに共通する構成は踏襲するものとし、これ以外の、「組立式本設(RCセグメント)ケーソン14」の構成と効果について説明する。
テ 第一の中間スラブ53は、人孔底部12において、現場打設の下床(現場打)15と第一の中間スラブ53との狭隘に、工場製作のRCセグメント61を内巻きにする現場打設の人孔壁(現場打)13に一体にして現場打設する。
2つ目に、第一の中間スラブ53より上部の人孔壁は、柔構造のRCセグメント61を、組立式本設(RCセグメント)ケーソン14である人孔壁とするから、実施例1の組立式仮設(鋼製)ケーソンの壁厚分が縮径し、現場構築の総量を低減することができる。
3つ目に、流出管22を鋼管推進で施工の際、止水エントランスを固定する構造とできるので、止水性が向上し凍結工法などの補助工法の規模を最小化できることから、共に、工期 工費を削減することにつながる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。