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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043929
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ヒップマット
(51)【国際特許分類】
   A61H 39/04 20060101AFI20220309BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
A61H39/04 J
A47C27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149456
(22)【出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】599072530
【氏名又は名称】株式会社山利製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】山口 誠平
【テーマコード(参考)】
3B096
4C101
【Fターム(参考)】
3B096AA01
3B096AB02
3B096AB10
4C101BA01
4C101BB05
4C101BB06
4C101BC23
4C101BD17
4C101BD18
4C101BD26
4C101BE01
(57)【要約】
【課題】使用者の座っている状態で姿勢を変えやすく、しかも安定した姿勢を保ちやすいヒップマットを提供する。
【解決手段】上端および下端に球面状の当接面を有する複数個の押圧体11と、前記押圧体11同士を連結するゴムまたはエラストマー製の連結シート12と、前記複数個の押圧体11の下面に配置される底シート13とからなる。押圧体11の環状の外周部が前記連結シート12と連結され、連結シート12の上面および下面から押圧体11の上部11bおよび下部11cが突出している。押圧体11は連結シート12の左右および後部のみに配列され、中央部から前部にかけて設けられていない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端および下端に球面状の当接面を有する複数個の押圧体と、
前記押圧体同士を連結するゴムまたはエラストマー製の連結シートと、
前記複数個の押圧体の下面に配置される底シートとからなり、
前記押圧体の環状の外周部が前記連結シートと連結され、
連結シートの上面および下面から押圧体の上部および下部が突出しており、
前記押圧体が連結シートの左右および後部のみに配列され、中央部から前部にかけて設けられていない、ヒップマット。
【請求項2】
前記連結シートに複数の孔が列設され、
前記押圧体の外周に沿って環状の連結溝が形成されており、
前記押圧体の連結溝が連結シートの孔の内周縁に係合されている請求項1記載のヒップマット。
【請求項3】
前記連結シートと底シートが周辺の複数個所で互いに連結されている請求項1または2記載のヒップマット。
【請求項4】
前記押圧体、連結シートおよび底シートを収容する袋または押圧体を覆うカバーをさらに備えている請求項1~3のいずれかに記載のヒップマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒップマットに関し、とくに椅子や車の座席などの上に配置し、体重で指圧効果をもたらすことができるヒップマットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラスチック、ゴムなどで形成した、上面に多数の凸粒を備えた基台と、その基台の下面に取り付けられるクッションとからなる敷物が開示されている。基台の左右両側部の凸粒を高くし、座骨部に対応する部分(中央部ないし後部)については凸粒を微小化もしくは除去することも記載されている。さらに座り心地をよくするために、基台の後端部を若干高くすることも記載されている。
【0003】
特許文献2には、カバー本体の臀部当接部分に突条部材を備えたサドルカバーが開示されている。突条部材として、ゴムまたはプラスチック製のクッション板の一面に配列した複数個の球状または半球状の弾性部材を用いることが開示されている。
【0004】
特許文献3には、背もたれや座部に半球状突起または球状ローラーを設けた、指圧とマッサージ効果を発揮するベンチが記載されている。特許文献4には、クッションの中にボール入り袋部を収容したボール入りマッサージクッションが開示されている。袋部の上面と下面は、ボールが自由に動けるスペースごとに区切った縫い目で接合され、ボールは区切られたスペース内で自由に動くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭60-69132号公報
【特許文献2】特開2006-232001号公報
【特許文献3】実用新案登録第3119624号公報
【特許文献4】特開2013-22214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の敷物は、基台の下面に配置したクッション材でクッション性を与えると共に、基台の凸粒により指圧効果を発揮させることができる。しかし使用者の臀部と敷物の間に摩擦作用が生じ、両者が滑りにくいため、使用者は敷物の上で動いたり姿勢を変えたりしにくい。特許文献2のサドルカバーは、カバー本体の内部に弾性ボールが収容されているので、使用者はサドルカバーの上で動きやすい半面、弾性ボールの位置は安定しない。
【0007】
特許文献3のベンチの半球状の突起は回転しないので、また、回転ローラは回転方向が一定であるので、使用者は座っている姿勢を変えにくい。特許文献4の袋部の区切られたスペースにボールを収容するタイプのクッションは、ボールが自由に回転することができる。しかしボールの移動可能な範囲が広いため、ボール同士の間隔が大きく変化する。
【0008】
本発明は、使用者が座っている状態で、姿勢を変えやすく、しかも安定した姿勢を保ちやすいヒップマットを提供することを技術課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のヒップマット10は、上端および下端に球面状の当接面を有する複数個の押圧体11と、前記押圧体11同士を連結するゴムまたはエラストマー製の連結シート12と、前記複数個の押圧体11の下面に配置される底シート13とからなり、前記押圧体11の環状の外周部が前記連結シート12と連結され、連結シート12の上面および下面から押圧体11の上部および下部が突出しており、前記押圧体11が連結シート12の左右および後部のみに配列され、中央部から前部にかけて設けられていないことを特徴としている。
【0010】
このようなヒップマット10においては、前記連結シート12に複数の孔15が列設され、前記押圧体11の外周に沿って環状の連結溝11aが形成されており、前記押圧体11の連結溝11aが連結シート12の孔15の内周縁に係合されているものが好ましい。
【0011】
また、前記連結シート12と底シート13が周辺の複数個所(係合舌片13aと孔15)で互いに連結されているものが好ましい。前記いずれのヒップマット10においても、前記押圧体11、連結シート12および底シート13を収容する袋14または押圧体11を覆うカバーをさらに備えているものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒップマットは、椅子や車のシートの上に置き、使用者はその上に座って使用する。その状態では使用者の臀部と座席の間に連結シートと複数個の押圧体が介在され、使用者の体重の大半は連結シートおよび底シートを介して座席によって支えられ、臀部の周辺部が押圧体を介して支えられる。そのため使用者の体が椅子やシートの上で安定して支持され、さらに指圧マッサージ効果が得られる。
【0013】
また、連結シートが弾力的に撓むことにより、押圧体は所定の角度範囲内で揺動することができる。そのため使用者は姿勢を変えやすい。そして押圧体が連結シートの左右および後部のみに配列されているので、使用する押圧体の数を少なくすることができ、製造コストが低減する。しかも体が外方向にずれるのを防止することができ、座っている姿勢が安定する。さらに押圧体が底シートで支持されるので、クッション性のある座席でも、押圧体が沈みこまず、転動させやすい。
【0014】
前記連結シートに複数の孔が列設され、前記押圧体の外周に沿って環状の連結溝が形成されており、前記押圧体の連結溝が連結シートの孔の周縁に係合されている場合は、押圧体が揺動しやすい。そのため、使用者は一層姿勢を変えやすく、また、体を傾けるなどにより押圧体による指圧の位置を変えやすい。
【0015】
前記連結シートと底シートが周辺の複数個所で互いに連結されている場合は、連結シート、押圧体および底シートが一体に保持されるので、取り扱いが容易である。前記押圧体、連結シートおよび底シートを収容する袋をさらに備えている場合は、押圧体による集中的な指圧効果が緩和されるので、使用者は一層リラックスすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aおよび図1Bは本発明のヒップマットの一実施形態を示す平面図および正面図、図1C図1AのC-C線断面図である。
図2図1Aの押圧体付き連結シートの要部斜視図である。
図3図3Aおよび図3Bはそれぞれ押圧体を連結シートに取り付ける前および後の要部断面図、図3Cは取り付けた後の要部平面図である。
図4図4Aおよび図4Bはそれぞれ図1Aのヒップマットの押圧体付き連結シートおよび底シートの組み付け前の平面図である。
図5図5A図5Bはそれぞれ図1Aのヒップマットの要部断面図および変形状態を示す断面図である。
図6図1Aのヒップマットの別の変形状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すヒップマット10は、複数個の球状の押圧体11と、それらを取り付けて支持する連結シート12と、押圧体11群の下面を支持する底シート13と、全体を覆う袋14とからなる。この実施形態では、連結シート12は平面視で略六角形であり、押圧体11は連結シート12の左右および後部に1~3列で配列されている。中央部および前部には押圧体11は設けられていない。底シート13は略矩形状であり、連結シート12の左右の角部に1個所ずつ、前後の辺に2か所ずつ係合舌片13aが設けられている。そしてそれらの係合舌片13aは、連結シート12の孔15に係止されている。
【0018】
押圧体11は球状であり、大円に沿って断面矩形状の連結溝11aが形成されている(図2参照)。見方を変えれば、押圧体11は、上下の半球部11b、11cと、それらを連結する軸部11dとからなる。連結シート12には、押圧体11を取り付けるための多数の孔15が形成されている。なお、この実施形態では孔15はほぼ連結シート12の全体に形成しているが、押圧体11を取り付けている左右および後部の1~3列のみに形成し、押圧体11を取り付けない連結シート12の中央部から前部にかけては孔15を形成していなくてもよい。
【0019】
押圧体11は、たとえばゴム硬度50~70度程度、好ましくは55~65度程度のエチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)などの合成ゴムや天然ゴムなどのゴム、あるいは熱可塑性エラストマーからなり、一体成形品である。図3Aの状態で、左右に割れる金型を用いて可塑性を有するゴム材料あるいはエラストマー材料を成形し、ついで加硫ないしベイキングすることにより製造することができる。上下の半球部11b、11cおよび軸部11dを別部品として成形した後、接着ないし接合してもよい。押圧体11の径(図3Aの符号D)は10~30mm程度、とくに15~25mm程度が好ましく、さらに20mm前後が一層好ましい。また、ナイロンやポリエステルなど、他の合成樹脂材料から形成することもできる。
【0020】
図3Aを参照して、押圧体11の連結溝11aの幅Wは1~5mm程度、とくに2~4mm、さらに3mm前後が好ましい。軸部11dの径d1は8~12mm程度、とくに9~11mm程度、さらに10mm前後が好ましい。他方、連結シート12の厚さtは0.5~3mm程度、とくに1~2mm程度、さらに1mm前後が好ましい。連結シート12の孔15の内径d2(図3A参照)は押圧体11の径より3~10mm程度、とくに5~8mm程度、さらに6.5mm前後小さくするのが好ましく、それにより挿入が可能で、外れにくくなる。押圧体11の径が20mm程度のときは、内径d2は11~15mm程度、とくに13~14mm、さらに13.5mm前後とし、軸部11dを嵌合させたとき、片側で0.5~1.5mm程度の隙間G2が生ずるのが好ましい。
【0021】
押圧体11の連結溝11aの幅Wは連結シート12の厚さtよりいくらか大きくし、図3Bのように係合させたときに0.5~2mm程度、とくに0.8~1.2mm程度の隙間、片側でそれらの半分の隙間G1が生ずるのが好ましい。連結溝11aの幅Wは、たとえば2~4mm程度、とくに3mm前後が好ましい。
【0022】
図4Aに示すように、連結シート12は平面視で略六角形状であり、前後に直線状の辺12a、12bが来るように配置される。左右の後部に、前方に向かって拡がる傾斜辺12c、12cが設けられ、左右の前部に、後方に向かって拡がる傾斜辺12d、12dが形成されている。連結シート12の材質はクロロプレンゴムなどの合成ゴムが好ましく、ゴム硬度50~70度、とくに55~65度(Aタイプデュロメータ)程度が好ましい。天然ゴムやウレタンゴムなどのゴム、あるいはポリエステル系やポリオレフィン系などの合成樹脂エラストマー、ポリエステル系やポリオレフィン系などの軟質の合成樹脂などから形成され、弾力性および柔軟性を備えている。押圧体11は下部の半球部11cを連結シート12の孔15に押しつけて、孔15を拡げながら陥入させることにより、連結シート12に取り付けることができる。
【0023】
孔15は後辺12b側の第1列21および前辺12a側の第11列31でそれぞれ12個、前後方向の中央(第6列26)で17個、前後に11列で形成されている。孔15の列は、後辺12b側および前辺12a側から順次、中央に向かって1個ずつ増えており、前の列の孔15の間に次の列の孔15が来るように千鳥状に配列されている。それぞれの列における孔15の左右のピッチPは等しく、前後の列の孔15の斜め方向のピッチPも同一にしている(図3C参照)。そのため隣接する3個の孔15は正三角形の頂点の位置に配置されている。
【0024】
ピッチPは押圧体11の直径Dより1~3mm程度大きくするのが好ましい。その場合、図3Cに示すように、平面視で各列の隣接する押圧体11同士の間に1~3mm程度の隙間S1が形成される。また、異なる列同士で斜めに隣接する押圧体11同士の間にも、同一の、すなわち1~3mmの隙間S2が形成される。
【0025】
図4Aに示すように、後辺12a側の第1列21では、中央の6か所の孔15に押圧体11が取り付けられ、第2列22では、中央の孔15に取り付けず、その孔15を挟む4か所ずつの孔15に押圧体11が取り付けられている。このように六角形の連結シート12の後部の左右の角の近辺に押圧体11を設けないのは、角の孔15に底シート13の係合舌片13aを安定して係合させるためである。なお、孔15の前後方向のピッチは押圧体11の径Dより小さいため、第2列22の押圧体11の一部11e(図3C参照)が第1列21の隣接する押圧体11同士の間に割って入り込む形となっている。第3列23についても同様である。
【0026】
第3列23では中央の2個および左右端以外の5か所の孔15に押圧体11が取り付けられている。第2列22の中央の1個の孔15および第3列23の中央部の2個の孔15に押圧体11を取り付けないのは、尾骨が当たって痛みが生じることがないようにするためである。第1列21の左右端の孔15およびその周囲の孔15に押圧体11を設けないのは、左右端の孔15に底シート13の係合舌片13aを安定して係合させるためである。
【0027】
第4列24では、左右端側の3個の孔15にそれぞれ押圧体11を取り付けて、左右端の1個ずつの孔15および中央側の7個の孔15には押圧体11を取り付けていない。第5列25の左右端側の2個の孔15に押圧体11が取り付けられ、左右端の1個ずつの孔15および中央側の10個の孔15には押圧体11を取り付けていない。第6列、すなわち前後の中央の列26では、左右端の孔15およは底シート13の係合舌片13aと係合させるため、押圧体11を設けず、さらにその1個内側の孔15も、係合舌片13aを安定して係合させるために押圧体11を取り付けていない。そしてそれより内側の1個ずつの孔15に押圧体11を取り付けると共に、中央側の11個の孔15には押圧体11を取り付けていない。
【0028】
第7列27は第5列と同様であり、端部側の2個の孔15に押圧体11を取り付けて、左右の端部および中央側の10個の孔15には押圧体11を取り付けていない。第8列28および第9列29では、それぞれ左右端から2個目の孔15に押圧体11を取り付け、それぞれ端部および中央側の11個、10個の孔15に押圧体11を取り付けていない。第10列30および第11列、すなわち前端から2列目と前端の列31では、使用者の体を安定させるためにそれぞれ押圧体11を設けていない。
【0029】
上記のように第4~9列で中央部の7~11個の孔15に押圧体11を設けず、第10~11列ですべての孔15に押圧体を設けないことにより、中央部から前部にわたり、押圧体11を設けない領域、すなわち凹んだ領域Rが形成される。そしてこの凹んだ領域Rに使用者の臀部34が嵌り込み、凹んでいる領域Rを囲む押圧体11の列が使用者の体が横や後ろにずれるのを防ぐことができ、使用者の身体32を安定して保持することができる。また、図1Aおよび図2に示すように、前記凹んでいる領域Rとその外側の押圧体11の列との間では略C字状に連続する段差ができ、段差を形成する最も内側の一連の押圧体11が臀部34や太ももを刺激する。それにより、使用者は快適なマッサージ効果を受けることができる。
【0030】
なお、この実施形態では、押圧体11を連結シート12の孔15に着脱自在に取り付けることができるので、体格の大きい使用者では、凹んだ領域Rの外側の一列の押圧体11を取り外すことにより、凹んだ領域Rを拡げることができ、使用者の安定感を増大させることができる。なお、必要であれば、最も外側の孔15に押圧体15を追加することにより、さらに凹んだ領域Rを拡げることができる。他方、子供などの小柄な使用者では、凹んだ領域Rの内側に一列分、押圧体11を追加して取り付けると、凹んだ領域Rを狭くすることができ、安定感を増大させることができる。
【0031】
前記底シート13は、図4Bに示すように、略矩形状の平面形状を有するシートである。大きさは連結シート12に合わせており、前後左右の角は袋14との取り合いがよいように円弧状に形成している。そして左右の辺の中央部および後の辺の左右端近辺、前の辺の2か所に、連結シート12の6個所の孔15に係合する係合舌片13aが形成されている。係合舌片13aは、底シート13の各辺に形成した切り欠き部13b内に切り残すようにして設けられている。
【0032】
後の辺の係合舌片13aは、平面視で斜め外側を向くように傾斜しており、切り欠き部13bは三角形状である。前の辺の係合舌片13aはまっすぐ前を向いて突出しており、切り欠き部13bは矩形状である。それにより連結シート12を拡げるように保持することができる。係合舌片13aは、基部が孔15に挿入される幅で、先端部が孔15の内径より広くされた略T字状を呈している。図1A図1Cに示すように、係合舌片13aは連結シート12の孔15に対し、下側から上向きに貫通し、広幅の先端部が孔15の内縁と係合する。このようにこの実施形態では、係合舌片13aが孔15に対して着脱自在とされている。
【0033】
前記底シート13は、ポリエチレン、ポリエステル、PET、ポリカーボネートなどの合成樹脂、天然ゴムまたはシリコーンゴム、ポリウレタンゴムなどの合成のゴムなどからなる可撓性を有するシートが好適である。金属、ベニヤ板などの木など、剛性を有するシートないし板材でもよい。底シート13の厚さは0.3~1.5mm程度、とくに0.5~1mm程度が好ましい。底シート13の表面、とくに上面は、押圧体11が転動しやすいように平滑なものが好ましい。底シート13が可撓性を有する場合は、袋14の出入り口が小さくても挿入しやすい。また、自動車のシートに載置する場合になじみやすい。
【0034】
前記袋14は肌感触のよい布地が用いられ、たとえばニット、メリヤス織布などの伸縮性を有する生地が好ましい。また、外層がネット状で、内層が細い糸のメリヤス編みの織布の2層構造としてもよい。袋14は平面視で、底シート13と略同形状の、コーナー部を円弧状とした矩形状とする。また、たとえば図1Aの後ろ側の縁に沿ってスライドファスナ14aなどで開閉できる開口を設け、連結シート12で連結した押圧体11および底シート13を容易に出し入れできるようにするのが好ましい。袋14を設ける場合は、使用者は袋14を介して押圧体11と接触するので、押圧体11の指圧作用を緩和することができる。また、押圧体11がゴム製の場合、使用者が押圧体11に直接触れると熱伝達によって冷たく感ずることがあるが、袋14を採用することにより、熱伝達を抑制し、冷たさを緩和することができ、快適な使用感が得られる。なお、袋14は省略することもできる。その場合は使用者は押圧体11の上に直接座ることになる。
【0035】
袋14の素材として通気性が高い生地、たとえばメッシュなどを用いるときは、座板33と身体32の間に空気が通る通路が形成される。そのため、蒸れにくい。他方、通気性が低い生地で袋14を形成する場合は、押圧体11の隙間に空気を閉じ込めるので、保温性が高くなり、冬場などに体温が奪われにくくなる。また、使用者の好みに応じて厚手や薄手の袋を被せてもよく、上面と下面とで異なる素材を用いた袋14を採用することもできる。袋14に代えて押圧体の上面を覆うカバーを採用することもできる。
【0036】
上記のごとく構成されるヒップマット10は、図1B図1Cに示すように、床や椅子、車のシートなどの座板33の上に置き、使用者はその上に座って使用する。それにより使用者の臀部34は大部分が凹んでいる領域Rで支持され、周辺部が押圧体11の上面によって部分的に押圧される。座板33が硬く平坦である場合は、図5Aに示すように押圧体11の上面も平坦に並ぶ。他方、座板33にクッション性がある場合は、図5Bに示すように、中央部が凹んで底シート13が湾曲する。しかし底シート13があるため、押圧体11が沈み込まず、押圧体11によるマッサージ効果が得られる。
【0037】
ヒップマット10は座っているだけでもマッサージ効果が得られるが、この状態で使用者が前後あるいは左右に動くと、図6に示すように、押圧体11が連結シート12をS字状に撓ませながら底シート13の上で転動ないし揺動する。したがってマッサージ効果が一層高くなる。使用者の臀部34の周辺には腸腰筋、大臀筋、大腿二頭筋などが集まっており、これらの筋肉の凝りをほぐし、効果的にマッサージすることができる。
【0038】
図6に示すように、複数個の押圧体11は使用者の身体32を支えながら、底シート13の上で一斉に転動するが、隣接する押圧体11の間に連結シート12があるため、転動の角度は制限される。そのため、押圧体11が大きく転がって移動することはない。上記のようにヒップマット10は簡単な構成でありながら、使用者を安定して支持することができ、さらに加圧によるマッサージ効果と転動によるマッサージ効果を奏することができる。
【0039】
前記実施形態では連結シート12を略六角形としているが、小判状、矩形状、逆U字状、後部が半円状で前部が矩形状など、他の形状にすることもできる。図4Aなどの実施形態では、孔15の配列状態は、上(後部)から、12個、13個、14個、15個、16個、17個、16個・・・・12個(全体で11列、157個)としているが、各列の個数や前後の列数は変更可能である。たとえば上から11個、12個・・・16個、17個、16個・・・11個(全体で9列、全体で133個)などとしたり、上から13個、・・・18個、・・・15個(全体で10列、155個)などとすることもできる。押圧体11を取り付けない領域Rでは孔15を形成しなくてもよい。その場合、小柄な使用者のために、内側の一列程度は後で押圧体15を装着できるように、予備の孔15を設けておくのが好ましい。
【0040】
押圧体11は後部から後側部および側部にかけて2~3列で、前側部では1~2列で配列しているが、1~3列で逆U字状に配列するなど、配列個数や配列形状は変更可能である。大柄の使用者のため、2列以上にして内側を外して使用する余地を残しておくのが好ましい。前記実施形態では、押圧体11は球状のものを採用しているが、楕円体、あるいは上下に球面を有する円柱体など、他の形態のものを採用することもできる。押圧体11を硬質の合成樹脂、金属や木など、剛体で形成することもできる。
【0041】
前記実施形態では、連結シート12に形成した孔15の周縁部を押圧体11の連結溝11aに嵌め込むことにより押圧体11を連結シート12に取り付けているが、接着や溶着により接合してもよく、連結シート12と押圧体11の全体を一体成形で形成することもできる。また、連結シート12と底シート13を孔15と係合舌片13aの係合で連結しているが、ねじとナット、クリップなど、他の連結器具で着脱自在に連結してもよく、熱溶着などで接合してもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 ヒップマット
11 押圧体
11a 連結溝
11b、11c 半球部
11d 軸部
11e 押圧体の一部
W 連結溝の幅
12 連結シート
12a 前辺
12b 後辺
12c 後部の傾斜辺
12d 前部の傾斜辺
t 連結シートの厚さ
G1 隙間
P 孔のピッチ
13 底シート
13a 係合舌片
13b 切り欠き部
14 袋
15 孔
G2 隙間
D 押圧体の径
d1 軸部の径
d2 孔の内径
21 第1列
22 第2列
23 第3列
24 第4列
25 第5列
26 第6列
27 第7列
28 第8列
29 第9列
30 第10列
31 第11列
S1、S2 押圧体同士の隙間
14a スライドファスナ
32 使用者の身体
33 座板
34 臀部
R 凹んだ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6