(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043949
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】クラッチ装置及び衝突緩和機構
(51)【国際特許分類】
F16D 11/04 20060101AFI20220309BHJP
F16D 3/02 20060101ALI20220309BHJP
B60W 20/00 20160101ALI20220309BHJP
B60L 7/14 20060101ALI20220309BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20220309BHJP
B60L 3/04 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F16D11/04 A ZHV
F16D11/04 Z
F16D3/02
B60W20/00
B60L7/14
B60L15/20 K
B60L3/04 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149490
(22)【出願日】2020-09-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】514109330
【氏名又は名称】澤田 ▲福衛▼
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】澤田 ▲福衛▼
【テーマコード(参考)】
3D202
3J056
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB11
3D202CC89
3D202DD00
3D202DD01
3D202DD06
3J056AA62
3J056GA12
5H125AA01
5H125BA00
5H125BE05
5H125CB02
5H125DD01
5H125DD08
5H125DD14
5H125EE41
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE51
5H125EE62
5H125EE66
5H125FF30
(57)【要約】
【課題】 衝突時における被害の緩和を図るとともに、燃費の向上や環境負荷の低減を図る。
【解決手段】 衝突すると、駆動軸12の駆動力は、慣性吸収ギア機構840を介して逆転用高負荷多板クラッチ850に伝達される。すると、駆動力は、ギア866を介してギア862に伝達され、慣性が吸収されて出力軸14を低速回転させるように作用する。一方、ギア862が回転すると、回生・後退モーター864も回転し、いわゆる回生駆動も行われるようになる。これらのため、出力軸14は、急激に回転数が低下し、正転状態から回転停止状態となる。そして、車速センサ304により車速=「0」になったことが検知されると、回生・後退モーター864を駆動し、出力軸14を数秒間逆転駆動した後、回生・後退モーター864の駆動を停止する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時の被害を緩和する衝突緩和機構であって、
車両が衝突したことを検知する衝突検知手段,
この衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、駆動源による駆動力の伝達を遮断するクラッチ手段,
車両を急減速して停止する減速停止手段,
この減速停止手段によって車両が停止した後に、車両を後退して停止する後退手段,
前記衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、前記減速停止手段によって車両を急減速して停止するとともに、車両が停止した後に、前記後退手段によって車両を後退して停止する衝突緩和制御手段,
を備えたことを特徴とする衝突緩和機構。
【請求項2】
前記減速停止手段が、前記車両の慣性を吸収する回生手段であることを特徴とする請求項1記載の衝突緩和機構。
【請求項3】
前記後退手段をモーター手段によって構成し、このモーター手段を逆回転することで、前記回生手段としたことを特徴とする請求項2記載の衝突緩和機構。
【請求項4】
入力側の動力の出力側への伝達をON,OFFする空走機構と、前記ON,OFFを制御する空走制御装置を含むクラッチ装置であって、
前記空走機構は、
複数の磁石が交互の極性となるように配列された入力側ロータ及び出力側ロータと、
ON時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に生ずる磁力によって入力側ロータの回転を出力側ロータに伝達し、OFF時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に磁力が生じないように、少なくとも一方のロータをスライドさせるスライド手段と、
を備えており、
前記空走制御装置は、
車両の走行状態や道路の状態を検知するセンサ手段と、
このセンサ手段による検知結果に基づいて、安全に空走可能かどうかを判断して、対応する空走制御信号を前記スライド手段に出力する空走制御手段と、
を備えていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項5】
前記入力側ロータを、前記出力側ロータの外周に複数設けるとともに、動力が入力される入力軸の動力を前記複数の入力側ロータに伝達する動力伝達機構を設けたことを特徴とする請求項4記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記センサ手段は、
アクセルペダルが踏まえているかどうかを検知するアクセルスイッチ,
車速を検知する車速センサ,
ブレーキペダルが踏まえているかどうかを検知するブレーキスイッチ,
ハンドルが切られているかどうかを検知するハンドル舵角センサ,
シフトレバーの位置を検知する変速位置スイッチ,
前方の障害物の有無を検知する前方障害物感知センサ,
路面の傾斜を検知する路面角度センサ,
のうちの少なくとも一つを備えていることを特徴とする請求項4又は5記載のクラッチ装置。
【請求項7】
前記空走制御手段は、前記センサ手段の検知結果を参照して、空走を安全に行うことが可能かどうかを判断し、可能と判断したときは、前記スライド手段を駆動して空走を行うことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のクラッチ装置。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載のクラッチ装置であって、
前記出力側ロータにより回転駆動される従動シャフトに取り付けられている回転盤,
該回転盤の表裏に設けられており、前記従動シャフトに沿ってスライドするスライド体,
該スライド体に揺動可能に設けられた複数の腕,
を備えており、
前記空走機構がONからOFFとなったときに、前記腕が前記回転盤の外周側に移動することで、前記空走機構のON・OFF切替時の衝撃を軽減する衝撃軽減機構を設けたことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項9】
緊急時に前記回転盤の回転を停止するリバース駆動手段を設けたことを特徴とする請求項8記載のクラッチ装置。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の衝突緩和機構であって、
前記クラッチ手段として、請求項4~9のいずれか一項に記載のクラッチ装置を使用したことを特徴とする衝突緩和機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両用のクラッチ装置及び衝突緩和機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車では、エンジンから機械式や電気式のクラッチやトルクコンバーターを介して、エンジンの駆動力が変速機に伝達されるようになっている。例えば、下記特許文献1には、フィールドコアと駆動プーリとの間に磁性流体を充填することで、磁路の磁気抵抗を小さくして、従来よりもコンパクトに構成できるようにした電磁クラッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今は、燃費の向上や環境対策が強く要望されており、ハイブリッド方式や電気モーター方式の自動車が研究・開発されている。しかしながら、ハイブリッド方式はガソリンエンジンと電気モーターを併用することから、構造や制御が極めて複雑となってしまう。一方、電気モーター方式は、バッテリーの蓄電能力や充電手法において研究の余地があり、充電施設の整備といった課題もある。
【0005】
一方、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故も多発している。このような事故を未然に防ぐことができればよいが、次善の策として、事故が起きてしまったときにその被害を緩和することができれば、好都合である。
【0006】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、エネルギーの有効利用を図ることができ、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることである。他の目的は、衝突時における被害の緩和を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の衝突時の被害を緩和する衝突緩和機構であって、車両が衝突したことを検知する衝突検知手段,この衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、駆動源による駆動力の伝達を遮断するクラッチ手段,車両を急減速して停止する減速停止手段,この減速停止手段によって車両が停止した後に、車両を後退して停止する後退手段,前記衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、前記減速停止手段によって車両を急減速して停止するとともに、車両が停止した後に、前記後退手段によって車両を後退して停止する衝突緩和制御手段,を備えたことを特徴とする。
【0008】
他の発明は、入力側の動力の出力側への伝達をON,OFFする空走機構と、前記ON,OFFを制御する空走制御装置を含むクラッチ装置であって、前記空走機構は、複数の磁石が交互の極性となるように配列された入力側ロータ及び出力側ロータと、ON時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に生ずる磁力によって入力側ロータの回転を出力側ロータに伝達し、OFF時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に磁力が生じないように、少なくとも一方のロータをスライドさせるスライド手段と、を備えており、前記空走制御装置は、車両の走行状態や道路の状態を検知するセンサ手段と、このセンサ手段による検知結果に基づいて、安全に空走可能かどうかを判断して、対応する空走制御信号を前記スライド手段に出力する空走制御手段と、を備えていることを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衝突を検知したときに急減速を行うとともに、停止後後退を行って停止することとしたので、更なる衝突事故の拡大が低減されるようになり、被害が緩和される。また、空走機構により、安全に空走可能な状態を空走制御装置で検出して空走を行うようにしたので、簡便な構成でありながら、エネルギーの有効利用を図ることができ、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1の空走機構の構成を示す図である。
【
図2】前記実施例1を矢印F2方向から見た図である。
【
図3】前記実施例1の空走機構の自動車における配置を示す図である。
【
図5】前記実施例1の空走制御プログラムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】自動車の走行例と空走機構の動作の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例2の空走機構及び衝撃軽減機構の構成を示す図である。
【
図8】前記実施例2の衝撃軽減機構を矢印F8方向から見た図である。
【
図9】前記実施例2の衝撃軽減プログラムの動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施例3の衝突緩和機構を示す図である。
【
図11】(A)は前記実施例3の制御装置を示す図であり、(B)はその動作をフローチャートである。
【
図12】前記実施例3の減速・回生時の様子を示す図である。
【
図13】前記実施例3の後退時の様子を示す図である。
【
図14】前記実施例3の走行動作例を示す図である。
【
図15】本発明の実施例4の低速・低回転時の様子を示す図である。
【
図16】前記実施例4の中速・中回転時の様子を示す図である。
【
図17】前記実施例4の高速回転時の様子を示す図である。
【
図18】前記実施例4の慣性・回生時の様子を示す図である。
【
図19】前記実施例4の逆転・後退時の様子を示す図である。
【
図20】前記実施例4の動作例の全体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0012】
図1には、本実施例にかかるクラッチ装置の空走機構が示されており、同図(A)は駆動力が入力軸から出力軸に伝達される「ON」の状態であり、同図(B)は駆動力が入力軸から出力軸に伝達されない「OFF」の状態を示す。また、
図2は、軸方向から見た主要部の様子を示す。これらの図において、空走機構100は、複数の外側ロータ110と、それらに挟まれて内側ロータ150が配置された構成となっている。外側ロータ110の外周には多数の磁石112が隣接して設けられており、内側ロータ150の外周には多数の磁石152が隣接して設けられている。これら磁石112,152の極性は
図2(B)に示すように、磁化(着磁)方向が厚み方向ないし径方向となっており、また、交互にN,Sの極性が反対となるように磁化されている。
【0013】
外側ロータ110は、回転軸114を中心に回転可能となっており、これらの回転軸114はギア機構120によって回転駆動されるようになっている。ギア機構120は、エンジン(あるいはモーター)130の駆動シャフト132に設けられている主ギア134と、これに歯合する複数の従ギア136によって構成されており、これら複数の従ギア136が、前記外側ロータ110の回転軸114に設けられている。すなわち、エンジン130によって駆動シャフト132が回転すると、主ギア134が回転し、更には従ギア136が回転して回転軸114が回転し、外側ロータ110が回転するように構成されている。一方、内側ロータ150は、従動シャフト154によって回転可能に支持されており、この従動シャフト154の回転が自動車の車軸204(
図3参照)に伝達されるようになっている。
【0014】
上述した外側ロータ110の外周面の磁石112と、内側ロータ150の外周面の磁石152との間には僅かな隙間が形成されており、両者が接触しないように構成されている。また、内側ロータ150は、スライド機構160によって従動シャフト154の方向にスライド可能に構成されている。図示の例では、従動シャフト154に取り付けられているレバー162を、一方においてはバネ164で付勢するとともに、他方において空走制御アクチュエータ166で逆方向に付勢することで、外側ロータ110をスライドさせている。
【0015】
図1(A)の状態では、レバー162がバネ164で引っ張られて、外側ロータ110の磁石112と内側ロータ150の磁石152との磁力がお互いに影響する状態となる。このため、外側ロータ110が回転すると、磁石112,152の磁力の作用によって、内側ロータ150が回転するようになる。すなわち、エンジン130の駆動力が、ギア機構120を介して外側ロータ110から内側ロータ150に伝達され、従動シャフト154が回転するようになる。この状態が空走ONの状態である。
【0016】
これに対し、同図(B)の状態では、レバー162がバネ164の力に抗して空走制御アクチュエータ166で引っ張られており、内側ロータ150が外側ロータ110の位置からスライドした位置となって、磁石112,152の磁力が互いに影響しない状態となる。このため、外側ロータ110が回転しても、磁石112,152の磁力の作用がなく、内側ロータ150は回転しない。すなわち、エンジン130の駆動力は、ギア機構120を介して外側ロータ110には伝達されるものの、内側ロータ150には伝達されず、従動シャフト154は回転しない。この状態が空走OFFの状態である。
【0017】
図3には、上述した空走機構100を含む動力伝達系統の全体が示されている。同図(A)の例では、エンジン130とクラッチ機構200との間に空走機構100が設けられており、クラッチ機構200の駆動力がミッション機構202を介して車軸204に伝達されている。クラッチ機構200とミッション機構202の間に空走機構100を設けてもよい。同図(B)の例では、エンジン130の代わりにモータ230を使用しており、その駆動力が空走機構100を介して車軸204に伝達されている。
【0018】
次に、
図4及び
図5を参照しながら、本実施例の空走制御装置について説明する。
図4には、空走制御装置300の構成が示されており、各種のスイッチないしセンサ302~314がECU(engine control unit)320に接続された構成となっている。これらのうち、アクセルスイッチ302は、アクセルペダルが踏まれているかどうかを検知するためのスイッチで、例えばアクセルペダルが踏まれているときはON,踏まれていないときはOFFとなる。車速センサ304は、自動車の走行速度を検知するセンサである。ブレーキスイッチ306は、ブレーキペダルが踏まれているかどうかを検知するためのスイッチで、例えばブレーキペダルが踏まれているときはON,踏まれていないときはOFFとなる。
【0019】
ハンドル舵角センサ308は、カーブを走行中など、ハンドル(ステアリングホイール)を切っているかどうかを検知するためのセンサである。変速位置スイッチ310は、シフトレバーの位置を検知するスイッチで、トップギヤの位置にあるときはON,それ以外はOFFとなる。前方障害物感知センサ312は、自動車の前方に障害物があるかどうかを検知するためのセンサである。路面角度センサ314は、道路前方の路面が坂になっているかどうかを検知するセンサである。他のセンサ等については後述する。
【0020】
ECU320には、空走制御プログラム322が用意されており、これを実行することで、上述したスイッチないしセンサ302~314の検知結果に応じて、空走制御アクチュエータ166に動作制御信号が出力されるようになっている。
図5には、その動作の流れが示されている。なお、ECU320は、上述した動作の他に、エンジンないしモーター,空調などの自動車の動作の全般を制御する機能を備えている。衝撃軽減プログラム722については後述する。
【0021】
次に、空走制御装置300における空走制御プログラム322の動作を、
図5を参照して説明すると、
a,アクセルペダルが踏まれて、アクセルスイッチ302がONのときは(ステップS10のYes)、アクセルペダル操作による加減速を行う必要があると考えられるので、駆動力を伝達する必要があり、空走機構100をONとする。すなわち、空走機構100をONとする制御信号が、ECU320から空走制御アクチュエータ166に対して出力され、空走機構100はONとなって(ステップS24)、
図1(A)に示したように、駆動力が伝達されるようになる。
b,車速センサ304により、加速中であることが検出されているときも(ステップS12のYes)、同様に駆動力を伝達する必要があり、空走機構100をONとする。
c,ブレーキペダルが踏まれて、ブレーキスイッチがONのときは(ステップS14のYes)、空走は危険であると考えられるので、空走機構100をONとする。
d,ハンドル舵角センサ308により、ハンドルが左もしくは右に切られているときは(ステップS16のYes)、道路がカーブしており、同様に空走すると危険であると考えられるので、空走機構100をONとする。
e,変速位置スイッチ310により、シフトレバーがトップ以外に入っていることが検知されたときは(ステップS18のNo)、加速ないし減速の途中にあると考えられるので、駆動力を伝達する必要があり、空走機構100をONとする。
f,前方障害物感知センサ312により、前方に障害物が検知されたときは(ステップS20のYes)、減速するか、ハンドルを切る必要があり、空走は危険であると考えられるので、空走機構100をONとする。
g,路面角度センサ314により、前方の路面が上り坂ないし下り坂になっていることが検知されたときは(ステップS22のYes)、加速するか、エンジンブレーキをかける必要があって、空走は危険であると考えらえられるので、空走機構100をONとする。
【0022】
一方、上記条件を満たさないときは、空走を行っても危険はないと判断され、空走機構100をOFFとする制御信号が、ECU320から空走制御アクチュエータ166に対して出力され、空走機構100は
図1(B)に示すようにOFFとなる(ステップS26)。これにより、エンジン130からの動力は伝達されず、空走状態となる。
【0023】
次に、
図6も参照しながら、本実施例の全体動作をを説明する。
図6(A)は、自動車の加減速の一例を示すグラフで、自動車が時刻TaからTbまで加速し、その後定速運転を行い、時刻Tcから時刻Tdまで減速し、その後再び加速する場合の速度変化を示す。また、同図(B)は、空走機構100のON・OFFの状態を示している。
【0024】
まず、時刻TaからTbまでの加速期間では、アクセルペダルが踏み込まれるため、アクセルスイッチ302がONとなる(ステップS10のYes)。このため、ECU320では、空走制御プログラム322によって空走機構100をONとする制御信号が空走制御アクチュエータ166(
図4参照)に出力される。これにより、空走制御アクチュエータ166は、
図1(A)に示すONの状態となり(ステップS24)、エンジン130の駆動力が、ギア機構120を介して外側ロータ110から内側ロータ150に伝達され、従動シャフト154が回転し、更にはクラッチ機構200,ミッション機構202を通じて車軸204が回転し、自動車は加速することとなる。なお、坂道などで加速している場合、アクセルペダルが踏み込まれず、アクセルスイッチ302がOFFとなっている場合(ステップS10のNo)も想定されるが、車速センサ304により、加速中であることが検出されるので(ステップS12のYes)、
図6(B)に示すように空走機構100はONとなって(ステップS24)、動力が伝達される。
【0025】
次に、時刻TbからTcまでの定速期間では、同様にアクセルスイッチ302がONとなっているので(ステップS10のNo)、同様に空走機構100はONのままであり、動力が伝達される。
【0026】
次に、時刻TcからTdまでの減速期間では、アクセルペダルが離されてアクセルスイッチ302がOFFとなるとともに(ステップS10のNo)、減速中となることから(ステップS12のNo)、ブレーキが踏まれていなかったり(ステップS14のNo)、ハンドルが切られていなかったり(ステップS16のNo)、シフトレバーがトップで(ステップS18のYes)、前方に障害物がなかったり(ステップS20のNo)、前方が坂道でないとき(ステップS22のNo)は、ECU320では、空走制御プログラム322によって空走機構100をOFFとする制御信号が空走制御アクチュエータ166に出力される。これにより、空走制御アクチュエータ166は、
図1(B)に示すOFFの状態となり(ステップS26)、エンジン130の駆動力は車軸204に伝達されない(
図6(B)参照)。すなわち、自動車は惰性で走行する空走状態となり、エンジン130は無負荷となってアイドリング状態となる。このため、エンジン130の燃料消費や排気ガスの排出量が低減されるようになり、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることができる。また、
図3(B)のように、モータ230を駆動源とするときは、モータ230を完全に停止させることができ、無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0027】
次に、時刻Td以降については、再び加速されるので、上述した時刻TaからTbまでと同様となり、エンジン130の駆動力が車軸204に伝達され、自動車は加速されることとなる。
【0028】
以上のように、本実施例によれば、空走機構100の外側ロータ110と内側ロータ150を、永久磁石を利用して構成するとともに、平坦な道路を直進中に減速する際に空走機構100をOFFとして、空走を行うようにしたので、簡便な構成でありながら、エネルギーの有効利用を図ることができ、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることができる。
回転盤510は、従動シャフト154を回転軸とする回転制御ギア512が設けられており、リバース駆動部600の制御駆動力が伝達されるようになっている。すなわち、リバース駆動部600のリバースモーター602の回転軸の駆動力がリバースクラッチ604,制御駆動ギア606を介して、回転制御ギア512に伝達されるようになっている。
上述したスライド体520には、複数の腕522が揺動可能に設けられており、これら腕522の先端にはローラ524が設けられている。また、他のスライド体530には、複数の腕532が揺動可能に設けられており、これら腕532の先端にはローラ534が設けられている。一方、回転盤510の表裏には、凹部514,516がそれぞれ設けられており、上述したローラ524,534が径方向にスライドするようになっている。