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▶ 後藤 正幸の特許一覧

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  • 特開-リラクゼーション装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043956
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】リラクゼーション装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20220309BHJP
【FI】
A61M21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020160210
(22)【出願日】2020-09-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
(71)【出願人】
【識別番号】520369652
【氏名又は名称】後藤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 峯羽
(57)【要約】
【課題】自然との間接的接触によるリラクゼーション効果を、使用者の周囲への影響を抑えて使用者にのみ効率よく与えるリラクゼーション装置を提供する。
【解決手段】
使用者の頭部に固定してリラクゼーション効果を与えるリラクゼーション装置1で、使用者にのみに効果が得られる強度の1/fゆらぎ特性を持つ発光を行う発光装置10と、使用者の耳孔を覆う形で1/fゆらぎ特性を持つ音を提供する音響装置4と、使用者の鼻近辺に芳香性物質を放出する香り生成部5と、芳香性物質の周囲への散逸を防ぐ香り回収部6を有する装置。さらに、これらの構成が制御部11に接続され、制御部11がデータ収納部115に収納されたタイムチャート117に従って各構成を同期させつつ制御する。これにより、使用者の周囲への影響を抑えつつ、使用者に複数のリラクゼーション効果を相乗的に効率よく与えることが実現される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に視覚刺激を与える発光装置と、聴覚刺激を与える音響装置と、嗅覚刺激を与える嗅覚提示部を有し、前記嗅覚提示部は使用者の鼻付近に芳香性物質の放出部と回収部を設けることで、芳香性物質の周囲への散逸を防ぐことを、特徴とするリラクゼーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載するリラクゼーション装置において、頭部に固定して使用することを特徴とするリラクゼーション装置。
【請求項3】
前記発光装置は1/fゆらぎ特性を持つ発光を行い、かつ前記音響装置は1/fゆらぎを含んだ音を発することを特徴とする請求項2に記載のリラクゼーション装置。
【請求項4】
所定のタイムチャートに従って前記発光装置と前記音響装置と前記嗅覚提示部を同期させつつ制御する制御部を備えることを特徴とする請求項3に記載するリラクゼーション装置。
【請求項5】
請求項4に記載のリラクゼーション装置において、リラクゼーション装置とリラクゼーション装置に電力を供給する給電装置が吸着手段によって密着状態を維持することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音・光・香りの複合的作用によって使用者が受動的に効率良くリラクゼーション効果を得られるものである。
【背景技術】
【0002】
現代人は様々な精神的ストレスがかかる環境で日々の生活を過ごしており、このストレスを緩和するために自然との接触が有効であることが知られている。森林浴や園芸療法などの直接的な接触以外にも、間接的な接触のための手法は数多く開発・利用されてきた。例えば、自然の香りを提供するアロマセラピーや、自然音による音響療法、自然映像による癒しの提供などが挙げられる。さらにこれらのリラクゼーション手法を併用することで使用者に相乗的なストレス緩和効果を与えることができることも知られており、その実現手段となる装置も開発されている。
【0003】
直接的・間接的に関わらず、自然との接触によるリラクゼーション効果の背景には、人間の生体リズムと一致してリラックスをもたらす1/fゆらぎの存在が影響しているとする研究報告がある。川のせせらぎ、浜辺の波の打ち寄せる音、木洩れ日、焚火などもすべて1/fゆらぎであり、自然界のあらゆる現象に存在する。人の脳波はその周波数によって分類されるが、各々の出現率には精神状態が大きく関与するとされている。心身が安定しリラックスした状態での脳波はα波(8-13Hz)が優勢となるが、そのパワースペクトルも1/f特性を示すとされている。人工環境では、1/fに該当するゆらぎが少なく、心身にストレスをもたらす要因のひとつとなる。
【0004】
この1/fゆらぎの要素を取り込むことでリラクゼーション効果を謳った空調機器や照明器具なども商品化されている。単一の1/f ゆらぎ刺激においてもリラクゼーション効果は得られるが、組合せ手法によって効果が高まるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-300676号報
【0006】
【特許文献2】特開2003-180839号報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】音楽のゆらぎが人間に与えるリラックス効果に関する基礎的検討.橋本恵理子,ほか.日本大学生産工学部第44回学術講演会公演概要.2011
【0008】
【非特許文献2】脳波(α波)の1/fゆらぎスペクトルの補綴学的応用について.山村善治,ほか.日本補綴歯科学会雑誌41:502-506,1997.
【0009】
【非特許文献3】1/fゆらぎを適用した癒し環境空間の検討.中村 達郎,ほか.電子情報通信学会通信ソサイエティ大会,2007
【0010】
【非特許文献4】五感がひらく森の魅力~健康を支える森林浴.小野 なぎさ,新都市ハウジングニュースVol.95,2020
【0011】
【非特許文献5】超音波領域における1/fゆらぎ音がもたらす心身ストレス緩和効果の一検討.佐巻 優太,ほか.第29回バイオメディカル・ファジィ・システム学会年次大会 講演論文集(BMFSA2016),2016
【0012】
【非特許文献6】宇宙でのストレス.道喜 将太郎,ほか.生体の科学 69(2):142-146,2018
【0013】
【非特許文献7】人に快適感を与える1/fゆらぎとその家電機器への応用.安久 正紘,ほか.電気学会誌,113(1):27-33,1993
【0014】
【非特許文献8】脳波のゆらぎ計測と快適評価.吉田 倫幸.目本音響学会誌46(11):914-919,1990
【0015】
【非特許文献9】臨床脳波学.大熊 輝雄.医学書院,36,99,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
多くの場合、間接的な自然との接触を実現する装置と1/fゆらぎを提供する装置が別個に存在し、それらが統合されていないために効果が薄い。また、これらが統合された装置は大型化しやすく運搬しにくいことから、使用できる場所・場面に制限がある。
【0017】
それらのリラクゼーション装置について、特定の場所でしか使用できない、または使用中は安静にする必要があるなど、他の作業を中断する必要がある装置、すなわち能動的にリラクゼーションを享受する装置の場合、意識的な休憩を取らなければこれらの効果を享受できない。
【0018】
視覚への刺激について、癒しに繋がる映像を画面によって提供する装置の場合、視界を奪われるため使用できる場面に制限がある。さらに没入感が強い装置の場合、長時間の使用は疲労感が伴うためリラックスに向いていない。
【0019】
上に加えて、多忙な生活環境にある現代人が意識的に休憩を取ることは容易ではなく、結果的に休憩を取らずに生活のメリハリが保てなくなる。
【0020】
複数人が周囲にいる状況で利用できるリラクゼーションの手段には限りがある。例えば、香りについては個人の感受性の差異による満足感の不均衡が生ずるため、空間に広範囲に物質を拡散させない手段が必要である。一方で、医療従事者やパイロットなど高度な緊張を強いられる職務では休憩時にリラックスすることが重要だが、ICUなどの病棟や飛行機のコックピット内は閉鎖空間であるため、周囲への影響をより強く抑制した手段が求められる。
【0021】
宇宙や南極基地を代表とする極限環境では前述の課題に加えて、自然要素の不足による不安や、文化的背景の異なるメンバーとの共生が求められるなど、より高レベルなストレス環境下に置かれる上、一般的な生活と比べて使用できる場所的・エネルギー的リソースへの制限が強い。極限環境の中でも宇宙においては、無重力であるため、あらゆる物が飛散しやすく物の固定に手間がかかることが生活上のストレスとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
請求項1に記載の装置はリラクゼーション装置であって、使用者にリラクゼーション効果のある光と音を提供する発光装置と音響装置を備える。また、リラクゼーション効果のある自然の香りを提供する嗅覚提示部と、発生した香りをファンによって鼻周辺に向かって送風するための放出部と、送風した空気を吸引した後に香り物質を吸収するための回収部を備える。
【0023】
請求項2に記載のリラクゼーション装置は、装置全体の重量・大きさは使用者が手軽に持ち運べる程度の筐体に収まって、使用者の頭部に固定することができる。
【0024】
請求項3に記載の装置は、使用者の目近辺で使用者にのみに効果が得られる強度の1/fゆらぎ特性を持つ発光を行う装置を備える。また、耳孔を覆う形によって使用者にのみ1/fゆらぎ特性を持つ音を提供する音響装置を備える。
【0025】
請求項4に記載のシステムは、所定のタイムチャートに則って前記発光装置と前記音響装置と前記嗅覚提示部の少なくとも一つを制御するための制御部を備える。
【0026】
請求項5に記載の装置は受電装置と充電池と吸着手段を備える。外部の給電装置と吸着手段によって接触式で受電して電力を蓄えて装置全体へ給電する。
【発明の効果】
【0027】
リラクゼーション効果のある香りと1/fゆらぎ特性を持つ光と音の統合効果によって単一の手段よりも高度なリラクゼーション効果が得られる。
【0028】
使用者が身につけて使用できる装置であること、視覚への刺激を映像ではなく1/fゆらぎ特性を持つ発光によって行うことによって場所と場面を問わず利用でき、他の作業の中断が発生しないために受動的にリラックス効果を得ることができる。
【0029】
事前に設定したタイムチャートによって自動的に起動するので、意識的な休憩が難しい現代人の生活環境においても、使用者に対して無意識のうちに自然な形で休憩を促し効果を得ることができる。
【0030】
香りを使用者の鼻周辺にのみ発生させることができ、光の強度も使用者にのみ影響する程度であり、音も耳腔を覆う形で提供することで周囲へ漏洩にくくなることから、複数人が周囲にいる環境や閉鎖空間においても利用が可能である。
【0031】
宇宙や南極基地を代表とする極限環境において、時間帯・季節を反映した制御を行うことで自然要素の不足を補い、使用者が身につけて使用し、使用者に対してのみ影響を及ぼす程度の省電力で実現することで場所的・エネルギー的リソースの制限がある中でも使用が可能となる。また宇宙において、吸着手段による固定と給電を合わせて実現することで、機器が飛散するリスクを抑えて使用者のストレスを緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】リラクゼーション装置の構成を示す正面図
図2】リラクゼーション装置の構成を示す右側面図
図3】制御部の構成
図4】充電部の構成
【発明を実施するための形態】
【0033】
リラクゼーション装置1は、頭部に装着するためのポリカーボネートなどの樹脂製の筐体2、耳を覆う形で装着するための耳当て具3、音を出すための音響装置4、香りを使用者に供給するための香り生成部5と送風ファン7、香りを装置内へ回収するための香り回収部6と吸引ファン8、空気を筐体内部で循環させるための空気循環流路9、使用者の目に1/fゆらぎの光を照射する発光装置10、各種機構を同期させつつ制御する制御部11、外部から受電し各種機構への給電を行う充電部12、音声を拾うためのマイク13を備える。
【0034】
耳当て具3の内部に音響装置4が備えられている。音響装置からは小鳥のさえずりや小川のせせらぎなどの自然音が出力される。これらの音源は外部端末118に保存されており、制御部11を通じて音響装置へと転送されることで再生される。
【0035】
香り生成部5は、香り充填部51、香り放出経路52、香り放出口53、香り切替機構54、香り充填部取替機構55を備える。送風ファン7が空気循環流路9の空気を香り充填部51へ供給し、香料を染み込ませた多孔質材を充填した香り充填部から発生した香りは、香り放出経路52を通って香り放出口53から使用者の鼻周辺に送風される。香り充填部には一つ以上の香料が混ざり合わない状態で充填されており、香り切替機構54で空気の流路を切り替えることで、使用者へ提供する香料を切り替えることができる。また使用期限を迎えた香り充填部51は、着脱機構を持つ香り充填部取替機構55によって手動で取り替えることができる。
【0036】
香り回収部6は、香り回収口61、香り回収経路62、香り吸収部63、香り吸収部取替機構64を備える。香り回収口61から香りつきの空気を吸い込み、香り吸引経路62を通って香り回収部63で香りを吸収する。香りが回収された空気は吸引ファン8によって空気循環流路9へと流れていく。また使用期限を迎えた香り吸収部63は、着脱機構を持つ香り吸収部取替機構64によって手動で取り替えることができる。
【0037】
空気循環流路9の内部は銅製のダクトで構成されており、制御部11などの発熱を空気循環流路内の空気へと放出する放熱機能を兼ね備える。
【0038】
使用者の目に1/fゆらぎの光を照射する発光装置10を一つ以上備える。発光の強度は使用者のみにその効果が発現する程度であり、制御部11によって強度を調整できる。発光装置には1/fゆらぎを再現した複数のLED照明を備えており、発光色を変更することが可能である。
【0039】
制御部11は通常のコンピュータと同様に、各種演算処理を行うCPU111、実行されるプログラムを記憶し演算処理の作業領域となるRAM112、スイッチボタンなどの入力部113、基本プログラムを記憶するROM114、各種情報を保存するデータ収納部115等を接続した構成となっている(図3)。制御部11はさらに、送風ファン7、吸引ファン8、音響装置4、発光装置10(以下、「リラクゼーション付与部」と総称する。)と、充電部12、マイク13、さらに本リラクゼーション装置外の外部端末との間で信号を送受信する信号送受信部116を備える。データ収納部115には各リラクゼーション付与部を制御するための複数のタイムチャート117が収納される。
【0040】
タイムチャート117は時間や季節に合わせたリラクゼーションを使用者に提供するべく使用者によって編集することが可能である。例えば、朝であれば小鳥のさえずりの音声に覚醒を促す香りと朝日のような色温度の高い光を提供する。夜であれば、焚き火の音と睡眠導入をサポートする香りと色温度の低い光を提供する。季節が夏であれば海のさざなみの音声と、海を彷彿させる香りと、他の季節より強い照度の光に設定できる。タイムチャート117はスマートフォンなどの外部端末118によって生成され、無線あるいは有線の通信手段によって信号送受信部116へと送られる。また、タイムチャートの編集方法によっては、時間や季節に合わせるだけではなく、会議スケジュールなどの使用者が設定したイベントの開始前、実施中、開始後に、リラクゼーション付与部への制御内容を切り替えることもできる。
【0041】
使用者が入力部113によってリラクゼーション装置1を起動させるとRAM112が保存されたタイムチャート117を呼び出す。そして、CPU111が呼び出されたタイムチャート117に従って演算処理を行うことにより、時間の経過とともに各リラクゼーション付与部に信号送受信部116から制御信号が出力される。これにより、各リラクゼーション付与部はタイムチャート117に示されたシーケンスに合わせてお互いに同期して動作することとなる。
【0042】
充電部12は充電器制御部121と充電池122と受電装置123と表示部124と吸着機構125で構成される(図3)。充電器制御部121の指示により、受電装置123で受電した電力を充電池122へ転送する。リラクゼーション装置を使用する際には、充電池112からリラクゼーション装置1の各種機構へと給電される。表示部124は色の異なる複数のLED照明を備え、充電池122の充電状態に応じて点灯する照明を切替える。充電部12の吸着機構125は磁石やマジックテープなどで構成されており、対をなす吸着機構を持つ外部の給電装置126と充電部12の接続を維持するために機能する。
【0043】
マイク13によって集音した音声はCPU111に入力され、信号送受信部116を介して外部端末118へと出力される。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0045】
発光装置10は必ずしもLEDにより構成される必要はなく、例えば電球や液晶画面などが利用されても良い。
【0046】
耳当て具3は必ずしも耳を覆う形である必要はなく、耳孔内へ差し込む形状や、骨伝導によって音声を提供するための形状でも良い。
【0047】
上記実施の形態ではリラクゼーション付与部の全てが同期して制御されるが、これらの一部が独立して制御されてもよい。
【0048】
筐体2は必ずしも使用者の頭部に固定する必要はなく、肩や背中などの他の部位でも良い。
【0049】
香り充填部51は必ずしも香料を染み込ませた多孔質材を充填する必要はなく、香料を含むオイルを充填したものでも良く、その場合は充填部にオイルを加熱するための加熱具を備える。
【0050】
音響装置4から発する音声は必ずしも自然音である必要はなく、自然音と類似のリラクゼーション効果のある音声でも良い。また、音声は必ずしも外部端末118から転送される必要はなく、制御部11のデータ格納部のタイムチャート117として保存した音声データを利用しても良い。
【0051】
マイク13は必ずしも筐体2の中に収まっている必要はなく、独立した機器として外部から制御部を通じて接続する形式でも良い。
【符号の説明】
【0052】
1 リラクゼーション装置
2 筐体
3 耳当て具
4 音響装置
5 香り生成部
6 香り回収部
7 送風ファン
8 吸引ファン
9 空気循環流路
10 発光装置
11 制御部
12 充電部
13 マイク
図1
図2
図3
図4