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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043963
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】定圧弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20220309BHJP
   F16K 31/126 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
F16K17/04 H
F16K31/126 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020186597
(22)【出願日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2020149106
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【テーマコード(参考)】
3H056
3H059
【Fターム(参考)】
3H056AA07
3H056BB41
3H056CA08
3H056CB03
3H056CD01
3H056DD04
3H059AA14
3H059CA13
3H059CD05
3H059DD04
3H059EE12
(57)【要約】
【課題】微少流量の被制御流体を高精度で供給しかつ流体の清浄度をより高い状態で維持することが可能な定圧弁を提供する。
【解決手段】流入側チャンバ20に第1ダイアフラム30と、第1ダイアフラムに設けられてともに進退する弁体35及び第1可動部40が配置され、流出側チャンバ50に第2ダイアフラム60と、第2ダイアフラムを第3チャンバ51側に加圧する調圧手段65と、第2ダイアフラムに設けられてともに進退する第2可動部70とが配置され、第1ダイアフラムが加圧手段90によって第1チャンバ側に加圧され、接続チャンバ80に第1可動部とともに進退する第1ラック部材45と、第2可動部とともに進退する第2ラック部材75と、各ラック部材と歯合する伝達部材85とが配置され、伝達部材を介して第2ダイアフラムの進退動を第1ダイアフラムへ伝達して流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被制御流体の流入部と被制御流体の流出部とを有する弁本体部に、前記流入部に接続された流入側チャンバと、前記流出部に接続された流出側チャンバと、前記流入側チャンバと前記流出側チャンバとを接続する接続流路とを備えた定圧弁であって、
前記流入側チャンバには、前記流入部との接続部に弁座が形成され、被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧する第1ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの前記第1チャンバ側に設けられて前記弁座に対して前記第1ダイアフラムとともに進退動する弁体と、前記第1ダイアフラムの前記第2チャンバ側に設けられて前記第1ダイアフラムとともに進退動する第1可動部とが配置され、
前記流出側チャンバには、被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画して前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧する第2ダイアフラムと、前記第2ダイアフラムを前記第3チャンバ側に所定圧力で加圧する調圧手段と、前記第2ダイアフラムの前記第4チャンバ側に設けられて前記第2ダイアフラムとともに進退動する第2可動部とが配置され、
前記第1ダイアフラムが加圧手段によって常時一定圧力で第1チャンバ側に加圧されており、
前記弁本体部に前記第2チャンバ及び前記第4チャンバとその後部側で隣接する接続チャンバが形成され、該接続チャンバには、前記第1可動部とともに進退する第1ラック部材と、前記第2可動部とともに進退する第2ラック部材と、前記第1ラック部材及び前記第2ラック部材と歯合して各ラック部材の進退動を伝達する歯車状の伝達部材とが配置されていて、
前記伝達部材を介して前記第2ダイアフラムの進退動を前記第1ダイアフラムへ伝達して前記流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するようにした
ことを特徴とする定圧弁。
【請求項2】
前記第2ダイアフラムの受圧面積(S2)と前記第1ダイアフラムの受圧面積(S1)との差に対する前記接続部の断面積(S0)の割合が1%以下である請求項1に記載の定圧弁。
【請求項3】
被制御流体の流入部と被制御流体の流出部とを有する弁本体部に、前記流入部に接続された流入側チャンバと、前記流出部に接続された流出側チャンバと、前記流入側チャンバと前記流出側チャンバとを接続する接続流路とを備えた定圧弁であって、
前記流入側チャンバには、前記接続流路との接続部に弁座が形成され、被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧する第1ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの前記第1チャンバ側に設けられ前記弁座に対して前記第1ダイアフラムとともに進退動する後側に前記流入部側の流体圧力を受圧する膨出状の受圧部を有する弁体と、前記第1ダイアフラムの前記第2チャンバ側に設けられて前記第1ダイアフラムとともに進退動する第1可動部とが配置され、
前記流出側チャンバには、被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画して前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧する第2ダイアフラムと、前記第2ダイアフラムを前記第3チャンバ側に所定圧力で加圧する調圧手段と、前記第2ダイアフラムの前記第4チャンバ側に設けられて前記第2ダイアフラムとともに進退動する第2可動部とが配置され、
前記第1ダイアフラムが加圧手段によって常時一定圧力で第1チャンバ側に加圧されており、
前記弁本体部に前記第2チャンバ及び前記第4チャンバとその後部側で隣接する接続チャンバが形成され、該接続チャンバには、前記第1可動部とともに進退する第1ラック部材と、前記第2可動部とともに進退する第2ラック部材と、前記第1ラック部材及び前記第2ラック部材と歯合して各ラック部材の進退動を伝達する歯車状の伝達部材とが配置されていて、
前記伝達部材を介して前記第2ダイアフラムの進退動を前記第1ダイアフラムへ伝達して前記流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するようにした
ことを特徴とする定圧弁。
【請求項4】
前記第1ダイアフラムの有効受圧面積(S5)と前記弁体の前記受圧部の有効受圧面積(S6)とが等しく構成されている請求項3に記載の定圧弁。
【請求項5】
前記加圧手段が前記流出側チャンバの前記第4チャンバ内に前記第2可動部を前記接続チャンバ側へ加圧するように配置されて、前記伝達部材を介して前記第1ダイアフラムを第1チャンバ側に付勢する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定圧弁。
【請求項6】
前記加圧手段が前記流入側チャンバの前記第2チャンバ内に前記第1可動部を前記第1チャンバ側へ加圧するように配置されて、前記第1可動部を介して前記第1ダイアフラムを第1チャンバ側に付勢する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定圧弁。
【請求項7】
前記伝達部材が分割可能な複数の歯車部材で構成されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の定流量弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持する機能を備えた定圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工程では、シリコンウエハ(基板)表面を希釈した薬液で洗浄する処理等が行われる。これは、パーティクルや金属汚染物、酸化膜等を除去することを目的としており、複数種の薬液や純水を適当な比率で混合した処理液が使用される。処理液には、APM(アンモニアと過酸化水素水と純水)、HPM(塩酸と過酸化水素水と純水)、DHF(フッ酸と純水)、SPM(硫酸と過酸化水素水)等が挙げられる。例えば、この洗浄処理が枚葉式の装置で実施される場合、水平に保持されて回転しているウエハの表面に処理液等が供給される。
【0003】
枚葉式の洗浄装置では、混合された処理液がタンクに貯蔵されておりその処理液をウエハへ供給するキャビネット方式と、ウエハ直前で混合した処理液を直接供給するインラインミキシング方式がある。装置には流体の混合部があり、高濃度の薬液(原液)や純水が流通する配管が接続され、混合液の生成が行われる。ウエハを1枚ずつ処理する枚葉式の装置によるとウエハ表面に供給される混合液は少量であり、インライン方式を用いる場合、混合部への供給される薬液は微少量となる。例えば、DHFの生成では、フッ酸と純水の流量比は1:100であり、純水の流量が2.0L/minに設定されていると、必要なフッ酸の流量は0.02L/minとなる。このような微少量の薬液を制御する必要がある処理では、わずかな流量変化によりその洗浄効果に大きなばらつきが生じてしまう。そのため、混合部に対し薬液や純水を高精度に供給することができる定流量弁が必要となる。
【0004】
また、半導体製造における大規模集積化、加工の微細化が進み、国際半導体技術ロードマップ(ITRS)において、2014年に24nmプロセスとなることが定められている。プロセスで表される数字(24nm)は、MPUにおける最下層の最も狭い配線のピッチ(線幅+線間隔)の半分(ハーフピッチ)として定義されている。このように配線幅が定められる中にあっては、半導体製造工程内における流体の流通経路に微細なゴミ(パーティクル)の混入は、製品の歩留まりに大きな影響を与える。パーティクルは、配線ピッチの4分の1(2014年のプロセスの場合、12nm)以下とする必要があることから、流体の清浄度を維持しながら流通させる部材は大きな意味を持つ。
【0005】
特許文献1に開示の定圧弁(圧力制御弁)では、同軸上に配置された複数のダイアフラムが被制御流体の圧力に対し一体に変動するように構成されている。流入部側に存在する弁座には、各ダイアフラムと一体に変動する弁体がバルブの開閉動作を行う。これらにより、一次側の流体の圧力変動に対応して二次側の流体の圧力を所定状態に制御することが可能となる。また、流路構造は被制御流体を滞留させることがなく、差圧調節を簡単にできて応答性がよい。
【0006】
しかし、微少流量域で制御を行う場合は、狭い開度で弁体を進退させる必要がある。この定圧弁では、複数のダイアフラムが軸部で連結され、弁座が形成される流路内に前記軸部を挿通した構成である。このため、制御時の弁体の動作により、弁座と弁体が摺動するおそれがある。また、半導体製造工程等の微少量の薬液等の被制御流体を制御制御する必要がある処理においては、わずかな流量変化によりその洗浄効果に大きなばらつきが生じる。そこで、微少流量の被制御流体を高精度で供給することが可能であり、さらに高い清浄度を維持することが可能な装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-84841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、微少流量の被制御流体を高精度で供給しかつ流体の清浄度をより高い状態で維持することが可能な定圧弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、被制御流体の流入部と被制御流体の流出部とを有する弁本体部に、前記流入部に接続された流入側チャンバと、前記流出部に接続された流出側チャンバと、前記流入側チャンバと前記流出側チャンバとを接続する接続流路とを備えた定圧弁であって、前記流入側チャンバには、前記流入部との接続部に弁座が形成され、被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧する第1ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの前記第1チャンバ側に設けられて前記弁座に対して前記第1ダイアフラムとともに進退動する弁体と、前記第1ダイアフラムの前記第2チャンバ側に設けられて前記第1ダイアフラムとともに進退動する第1可動部とが配置され、前記流出側チャンバには、被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画して前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧する第2ダイアフラムと、前記第2ダイアフラムを前記第3チャンバ側に所定圧力で加圧する調圧手段と、前記第2ダイアフラムの前記第4チャンバ側に設けられて前記第2ダイアフラムとともに進退動する第2可動部とが配置され、前記第1ダイアフラムが加圧手段によって常時一定圧力で第1チャンバ側に加圧されており、前記弁本体部に前記第2チャンバ及び前記第4チャンバとその後部側で隣接する接続チャンバが形成され、該接続チャンバには、前記第1可動部とともに進退する第1ラック部材と、前記第2可動部とともに進退する第2ラック部材と、前記第1ラック部材及び前記第2ラック部材と歯合して各ラック部材の進退動を伝達する歯車状の伝達部材とが配置されていて、前記伝達部材を介して前記第2ダイアフラムの進退動を前記第1ダイアフラムへ伝達して前記流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するようにしたことを特徴とする定圧弁に係る。
【0010】
請求項2の発明は、前記第2ダイアフラムの受圧面積と前記第1ダイアフラムの受圧面積との差に対する前記接続部の断面積の割合が1%以下である請求項1に記載の定圧弁に係る。
【0011】
請求項3の発明は、被制御流体の流入部と被制御流体の流出部とを有する弁本体部に、前記流入部に接続された流入側チャンバと、前記流出部に接続された流出側チャンバと、前記流入側チャンバと前記流出側チャンバとを接続する接続流路とを備えた定圧弁であって、前記流入側チャンバには、前記接続流路との接続部に弁座が形成され、被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧する第1ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの前記第1チャンバ側に設けられ前記弁座に対して前記第1ダイアフラムとともに進退動する後側に前記流入部側の流体圧力を受圧する膨出状の受圧部を有する弁体と、前記第1ダイアフラムの前記第2チャンバ側に設けられて前記第1ダイアフラムとともに進退動する第1可動部とが配置され、前記流出側チャンバには、被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画して前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧する第2ダイアフラムと、前記第2ダイアフラムを前記第3チャンバ側に所定圧力で加圧する調圧手段と、前記第2ダイアフラムの前記第4チャンバ側に設けられて前記第2ダイアフラムとともに進退動する第2可動部とが配置され、前記第1ダイアフラムが加圧手段によって常時一定圧力で第1チャンバ側に加圧されており、前記弁本体部に前記第2チャンバ及び前記第4チャンバとその後部側で隣接する接続チャンバが形成され、該接続チャンバには、前記第1可動部とともに進退する第1ラック部材と、前記第2可動部とともに進退する第2ラック部材と、前記第1ラック部材及び前記第2ラック部材と歯合して各ラック部材の進退動を伝達する歯車状の伝達部材とが配置されていて、前記伝達部材を介して前記第2ダイアフラムの進退動を前記第1ダイアフラムへ伝達して前記流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するようにしたことを特徴とする定圧弁に係る。
【0012】
請求項4の発明は、前記第1ダイアフラムの有効受圧面積と前記弁体の前記受圧部の有効受圧面積とが等しく構成されている請求項3に記載の定圧弁に係る。
【0013】
請求項5の発明は、前記加圧手段が前記流出側チャンバの前記第4チャンバ内に前記第2可動部を前記接続チャンバ側へ加圧するように配置されて、前記伝達部材を介して前記第1ダイアフラムを第1チャンバ側に付勢する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定圧弁に係る。
【0014】
請求項6の発明は、前記加圧手段が前記流入側チャンバの前記第2チャンバ内に前記第1可動部を前記第1チャンバ側へ加圧するように配置されて、前記第1可動部を介して前記第1ダイアフラムを第1チャンバ側に付勢する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の定圧弁に係る。
【0015】
請求項7の発明は、前記伝達部材が分割可能な複数の歯車部材で構成されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の定流量弁に係る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る定圧弁によると、被制御流体の流入部と被制御流体の流出部とを有する弁本体部に、前記流入部に接続された流入側チャンバと、前記流出部に接続された流出側チャンバと、前記流入側チャンバと前記流出側チャンバとを接続する接続流路とを備えた定圧弁であって、前記流入側チャンバには、前記流入部との接続部に弁座が形成され、被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧する第1ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの前記第1チャンバ側に設けられて前記弁座に対して前記第1ダイアフラムとともに進退動する弁体と、前記第1ダイアフラムの前記第2チャンバ側に設けられて前記第1ダイアフラムとともに進退動する第1可動部とが配置され、前記流出側チャンバには、被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画して前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧する第2ダイアフラムと、前記第2ダイアフラムを前記第3チャンバ側に所定圧力で加圧する調圧手段と、前記第2ダイアフラムの前記第4チャンバ側に設けられて前記第2ダイアフラムとともに進退動する第2可動部とが配置され、前記第1ダイアフラムが加圧手段によって常時一定圧力で第1チャンバ側に加圧されており、前記弁本体部に前記第2チャンバ及び前記第4チャンバとその後部側で隣接する接続チャンバが形成され、該接続チャンバには、前記第1可動部とともに進退する第1ラック部材と、前記第2可動部とともに進退する第2ラック部材と、前記第1ラック部材及び前記第2ラック部材と歯合して各ラック部材の進退動を伝達する歯車状の伝達部材とが配置されていて、前記伝達部材を介して前記第2ダイアフラムの進退動を前記第1ダイアフラムへ伝達して前記流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するようにしたため、微少流量の被制御流体であっても高精度で供給しかつ流体の清浄度をより高い状態で維持することが可能となる。
【0017】
請求項2の発明に係る定圧弁によると、請求項1において、前記第2ダイアフラムの受圧面積と前記第1ダイアフラムの受圧面積との差に対する前記接続部の断面積の割合が1%以下であるため、流出部側の被制御流体の流体圧力の制御が容易となる。
【0018】
請求項3の発明に係る定圧弁によると、被制御流体の流入部と被制御流体の流出部とを有する弁本体部に、前記流入部に接続された流入側チャンバと、前記流出部に接続された流出側チャンバと、前記流入側チャンバと前記流出側チャンバとを接続する接続流路とを備えた定圧弁であって、前記流入側チャンバには、前記接続流路との接続部に弁座が形成され、被制御流体と接する第1チャンバと該第1チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバとに区画し前記第1チャンバ内の流体圧力を受圧する第1ダイアフラムと、前記第1ダイアフラムの前記第1チャンバ側に設けられ前記弁座に対して前記第1ダイアフラムとともに進退動する後側に前記流入部側の流体圧力を受圧する膨出状の受圧部を有する弁体と、前記第1ダイアフラムの前記第2チャンバ側に設けられて前記第1ダイアフラムとともに進退動する第1可動部とが配置され、前記流出側チャンバには、被制御流体と接する第3チャンバと該第3チャンバの背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバとに区画して前記第3チャンバ内の流体圧力を受圧する第2ダイアフラムと、前記第2ダイアフラムを前記第3チャンバ側に所定圧力で加圧する調圧手段と、前記第2ダイアフラムの前記第4チャンバ側に設けられて前記第2ダイアフラムとともに進退動する第2可動部とが配置され、前記第1ダイアフラムが加圧手段によって常時一定圧力で第1チャンバ側に加圧されており、前記弁本体部に前記第2チャンバ及び前記第4チャンバとその後部側で隣接する接続チャンバが形成され、該接続チャンバには、前記第1可動部とともに進退する第1ラック部材と、前記第2可動部とともに進退する第2ラック部材と、前記第1ラック部材及び前記第2ラック部材と歯合して各ラック部材の進退動を伝達する歯車状の伝達部材とが配置されていて、前記伝達部材を介して前記第2ダイアフラムの進退動を前記第1ダイアフラムへ伝達して前記流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するようにしたため、微少流量の被制御流体であっても高精度で供給しかつ流体の清浄度をより高い状態で維持することが可能となる。
【0019】
請求項4の発明に係る定圧弁によると、請求項3において、前記第1ダイアフラムの有効受圧面積と前記弁体の前記受圧部の有効受圧面積とが等しく構成されているため、流出部側の被制御流体の流体圧力の制御が容易となる。
【0020】
請求項5の発明に係る定圧弁によると、請求項1ないし4において、前記加圧手段が前記流出側チャンバの前記第4チャンバ内に前記第2可動部を前記接続チャンバ側へ加圧するように配置されて、前記伝達部材を介して前記第1ダイアフラムを第1チャンバ側に付勢するため、装置の小型化を図ることができる。
【0021】
請求項6の発明に係る定圧弁によると、請求項1ないし4において、前記加圧手段が前記流入側チャンバの前記第2チャンバ内に前記第1可動部を前記第1チャンバ側へ加圧するように配置されて、前記第1可動部を介して前記第1ダイアフラムを第1チャンバ側に付勢するため、装置の小型化を図ることができる。
【0022】
請求項7の発明に係る定流量弁によると、請求項1ないし6において、前記伝達部材が分割可能な複数の歯車部材で構成されているため、メンテナンスや組み立て作業等が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施例に係る定圧弁の縦断面図である。
図2図1の定圧弁の第1ダイアフラムが前進した状態を表す縦断面図である。
図3図1の定圧弁の第1ダイアフラムが後退した状態を表す縦断面図である。
図4】第1実施例に係る定圧弁の第1ダイアフラム近傍の拡大断面図である。
図5】第1実施例に係る定圧弁の第2ダイアフラム近傍の拡大断面図である。
図6】第2実施例に係る定圧弁の縦断面図である。
図7図4の定圧弁の第1ダイアフラムが前進した状態を表す縦断面図である。
図8図4の定圧弁の第1ダイアフラムが後退した状態を表す縦断面図である。
図9】第2実施例に係る定圧弁の第1ダイアフラム近傍の拡大断面図である。
図10】第3実施例に係る定圧弁の第1ダイアフラムが前進した状態を表す縦断面図である。
図11】第3実施例に係る定圧弁の第1ダイアフラムが後退した状態を表す縦断面図である。
図12】第4実施例に係る定圧弁の第1ダイアフラムが前進した状態を表す縦断面図である。
図13】第4実施例に係る定圧弁の第1ダイアフラムが後退した状態を表す縦断面図である。
図14】第5実施例に係る定流量弁の接続チャンバの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1図3に示す本発明の第1実施例に係る定圧弁10Aは、主に半導体製造工場や半導体製造装置等の流体管路に配設され、超純水、フッ酸、過酸化水素水、アンモニア水、塩酸等の各種の被制御流体の流通流量を一定化することができる装置であって、特にシリコンウエハの枚葉方式による洗浄に対応した被制御流体の制御を可能とする。この定圧弁10Aは、弁本体部11と、接続流路15と、流入側チャンバ20と、流出側チャンバ50と、接続チャンバ80と、加圧手段90とを備える。
【0025】
定圧弁10Aでは、各部を構成する部材が、被制御流体からの腐食、あるいは被制御流体の清浄度に影響を与えない性質を有することが求められる。このため、定圧弁10Aの各部は、PTFE、PFA、PVDF等のフッ素樹脂、または、ステンレス鋼等の耐食性金属、もしくはこれらの組み合わせ等、耐食性及び耐薬品性の高い材料によって形成される。図示の定圧弁10Aはフッ素樹脂のブロックから切削により加工、形成される。
【0026】
弁本体部11は、被制御流体の流入部12と被制御流体の流出部13とを有するブロック状の部材であり、内部に接続流路15、流入側チャンバ20、流出側チャンバ50、接続チャンバ80等が設けられる。接続流路15は、流入側チャンバ20と流出側チャンバ50とを接続して連通させる流路である。実施例の弁本体部11は、複数のブロック体の組合せにより形成される。図において、符号12aは流入部12と流入側チャンバ20との接続部、13aは流出部13aと流出側チャンバ50との接続部、16は接続流路15と流入側チャンバ20との接続部、17は接続流路15と流出側チャンバ50との接続部である。
【0027】
流入側チャンバ20は、被制御流体の流入部12に接続されてその接続部12aに弁座25が形成されるとともに、第1ダイアフラム30と、弁体35と、第1可動部40とが配置される。弁座25は、流入部12から流入する被制御流体のための開口部であって、後述の弁体35が当接される部位である。実施例の弁座25は、流入側チャンバ20の下面側に接続された流入部12から流入側チャンバ20内へ突出して形成される。
【0028】
第1ダイアフラム30は、被制御流体と接する第1チャンバ21と該第1チャンバ21の背面側となり被制御流体と接しない第2チャンバ22とに区画し、第1チャンバ内の流体圧力を受圧する部材である。実施例の第1ダイアフラム30は、ダイアフラム面となる肉薄の可動膜部31と、可動膜部31の外周に配置される外周部32を有する。図において、符号33は第1ダイアフラム30の外周部32を固定する固定ブロックである。
【0029】
弁体35は、第1ダイアフラム30の第1チャンバ21側に設けられて弁座25に対して第1ダイアフラム30とともに進退動する部位であり、進退動により弁座25の開口量を調整又は閉鎖するように構成される。実施例の弁体35は、弁座25の開口径より大径の平面形状に形成される。平面形状の弁体35は、加工が容易であるとともに、第1チャンバ21内に突出して形成された弁座25の開閉に好適な形状である。なお、弁体35の形状は弁座25の開閉を適切に行うことが可能であれば平面形状に限定されるものではなく、例えば円錐形状の突出部等としてもよい。
【0030】
第1可動部40は、第1ダイアフラム30の第2チャンバ22側に設けられて、第1ダイアフラム30とともに進退動する部材である。実施例の第1可動部40は、第2チャンバ22内に摺動自在に嵌挿されたピストン部41を有し、第1ダイアフラム30と一体に連結されている。
【0031】
流出側チャンバ50は、被制御流体の流出部13に接続され、第2ダイアフラム60と、調圧手段65と、第2可動部70とが配置される。第2ダイアフラム60は、被制御流体と接する第3チャンバ51と該第3チャンバ51の背面側となり被制御流体と接しない第4チャンバ52とに区画して、第3チャンバ51内の流体圧力を受圧する部材である。実施例の第2ダイアフラム60は、ダイアフラム面となる肉薄の可動膜部61と、可動膜部61の外周に配置される外周部62を有する。図において、符号63は第2ダイアフラム60の外周部62を固定する固定ブロックである。
【0032】
調圧手段65は、第2ダイアフラム60を第3チャンバ51側に所定圧力で加圧するように構成される。調圧手段65は、ばね等の弾性部材や、加圧気体(調圧気体)等が適宜に用いられる。実施例の調圧手段65は、電空レギュレータ等の電空変換器(図示せず)から供給される加圧気体である。加圧気体は、流入口66から第3チャンバ51内に流入されて、第2ダイアフラム60を第3チャンバ51側へ加圧する。また、加圧気体は、供給圧力に応じて第2ダイアフラム60に対する加圧量を適時変化可能である。
【0033】
第2可動部70は、第2ダイアフラム60の第4チャンバ52側に設けられて、第2ダイアフラム60とともに進退動する部材である。実施例の第2可動部70は、第4チャンバ52内に摺動自在に嵌挿されたピストン部71を有し、第2ダイアフラム60と一体に連結されている。
【0034】
接続チャンバ80は、流入側チャンバ20の第2チャンバ22及び流出側チャンバ50の第4チャンバ52と、その後部側で隣接するように形成され、第1ラック部材45と、第2ラック部材75と、伝達部材85とが配置される。第1ラック部材45は、第1可動部40に連結されて第1可動部40とともに進退する棒状部材であり、複数の歯部46が形成される。第2ラック部材75は、第2可動部70に連結されて第2可動部70とともに進退する棒状部材であり、複数の歯部76が形成される。第1ラック部材45と第2ラック部材75は、互いに歯部46,76が対向するように配置されている。
【0035】
また、伝達部材85は、第1ラック部材45及び第2ラック部材75の各歯部46,76と歯合して各ラック部材45,75の進退動を伝達する歯車状の部材である。歯車状の伝達部材85は、円形状の一般的な歯車の他、第1ラック部材45と第2ラック部材75の双方と歯合して揺動又は回動可能な適宜の形状とすることができる。実施例の伝達部材85は、円形状の歯車部材85aである。
【0036】
加圧手段90は、第1ダイアフラム30を常時一定圧力で第1チャンバ21側に加圧する部材である。この加圧手段90は、ばね等の弾性部材が好適に用いられる。加圧手段90は、第1ダイアフラム30を第1チャンバ21側へ加圧可能であれば、弁本体部11内のどこに配置しても構わない。実施例の加圧手段90は、流出側チャンバ50の第4チャンバ52内に第2可動部70を接続チャンバ80側へ加圧するように配置されて、伝達部材85を介して第1ダイアフラム30を第1チャンバ21側に付勢するように構成される。すなわち、加圧手段90は、第4チャンバ52内の接続チャンバ80側に位置する第2可動部70のばね受け部72と、第4チャンバ52内の第2ダイアフラム60側に位置する第2ダイアフラム60の固定ブロック63に形成されたばね受け部64との間に配置される。第2可動部70が設けられる第4チャンバ52の空間を利用して加圧手段90を配置することにより、装置の小型化を図ることができる。
【0037】
本発明の第1実施例に係る定圧弁10Aでは、伝達部材85を介して第2ダイアフラム60の進退動を第1ダイアフラム30へ伝達して流出部13側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するように構成される。そこで、伝達部材85による第2ダイアフラム60の進退動の伝達について説明する。
【0038】
図2に示すように、伝達部材85が第2ダイアフラム60の後退動(接続チャンバ80側への移動)を伝達する場合、まず第2ダイアフラム60が後退する。この時、第2ダイアフラム60に接続された第2可動部70、さらに第2可動部70に接続された第2ラック部材75が、それぞれ第2ダイアフラム60とともに後退する。
【0039】
ここで、第2ラック部材75は歯部76が歯車部材85aである伝達部材85と歯合しており、第2ラック部材75と対向する第1ラック部材45も歯部46が伝達部材85と歯合している。そのため、第2ラック部材75の後退により、歯合する伝達部材85が一側へ回動(図の例では反時計回り方向)されて、第1ラック部材45を前進(第1チャンバ21側への移動)させる。このように、第2ダイアフラム60の後退動が伝達部材85を介して第1ラック部材45に伝達されて前進させるため、第1ラック部材45と接続された第1可動部40、さらに第1可動部40と接続された第1ダイアフラム30が、一体に前進する。
【0040】
また、図3に示すように、伝達部材85が第2ダイアフラム60の前進動(第3チャンバ51側への移動)を伝達する場合、第2ダイアフラム60とともに第2可動部70及び第2ラック部材75が前進するため、第2ラック部材75の歯部76と歯合する伝達部材85は他側へ回動(図の例では時計回り方向)されて、第1ラック部材45を後退(接続チャンバ80側への移動)させる。このように、第2ダイアフラム60の前進動が伝達部材85を介して第1ラック部材45に伝達されて後退させるため、第1ラック部材45と接続された第1可動部40、さらに第1可動部40と接続された第1ダイアフラム30が、一体に後退する。
【0041】
上記のように、伝達部材85(歯車部材85a)は、第1ラック部材45及び第2ラック部材75とそれぞれ歯合していることから、第2ラック部材75と接続された第2ダイアフラム60の進退動を、第1ラック部材45と接続された第1ダイアフラム30に対して無駄なく伝達することができる。
【0042】
次に、第1実施例に係る定圧弁10Aの構造と被制御流体の流体圧力の関係について説明する。以下の説明では、図4,5に示すように、第1ダイアフラム30に加わる流体圧力(流入部12側の流体圧力)をP1、第2ダイアフラム60に加わる流体圧力(流出部13側の流体圧力)をP2、調圧手段65の設定圧力をP3、流入部12と流入側チャンバ20との接続部12a(弁座25)の断面積をS0、第1ダイアフラム30の流体圧力P1に対する受圧面積をS1、第2ダイアフラム60の流体圧力P2に対する受圧面積をS2、第2ダイアフラム60の設定圧力P3に対する受圧面積をS3とする。なお、各ダイアフラムにおける受圧面積とは、その可動部である薄肉の膜部からなるダイアフラム面の可動膜部が有効に圧力を受ける面積である。
【0043】
弁体35の開弁方向の力(第1ダイアフラム30を前進させる力)をFo、弁体35の閉弁方向の力(第1ダイアフラム30を後退させる力)をFc、加圧手段90の加圧力をFsとして、開弁方向の力Foと閉弁方向の力Fcは、それぞれ下記の式で表される。なお、流体から受ける圧力は、圧力(P)×受圧面積(S)で表される。
Fo=(P1×S0)+(P2×S1)+(P3×S3)
Fc=(P2×S2)+Fs
【0044】
当該定圧弁10Aの構造では、開弁方向の力Foと閉弁方向の力Fcとがバランスをとる(Fo=Fc)ように自動調整される。そこで、バランス式(Fo=Fc)は、下記の通り表される。
(P1×S0)+(P2×S1)+(P3×S3)=(P2×S2)+Fs
【0045】
上記の関係式から、第2ダイアフラム60に加わる流体圧力P2は、下記の通り表される。
P2=
S3/(S2-S1)×P3-1/(S2-S1)×Fs+S0/(S2-S1)×P1
【0046】
ここで、接続部12aの断面積S0と第1ダイアフラム30の受圧面積S1とが第2ダイアフラム60の受圧面積S2に対して相対的に極小の場合、例えば、第2ダイアフラム60の受圧面積S2と第1ダイアフラム30の受圧面積S1との差に対する接続部12aの断面積S0の割合{S0/(S2-S1)}が1%以下である場合、上記流体圧力P2の式において無視可能となる。したがって、流体圧力P2は、下記の通り表される。
P2=S3/(S2-S1)×P3-1/(S2-S1)×Fs
【0047】
当該定圧弁10Aは、第2ダイアフラム60に加わる流体圧力P2の関係式から理解されるように、加圧手段(弾性部材)90の加圧力Fsが一定であることから、流体圧力P2を調圧手段65の設定圧力P3に応じて容易に制御することができる。したがって、調圧手段65の設定圧力P3を一定に設定することによって、流出部13側の流体圧力P2を一定に制御することができる。
【0048】
図6図8は、本発明の第2実施例に係る定圧弁10Bであって、弁本体部11に、流入側チャンバ20Aと、流出側チャンバ50と、流入側チャンバ20Aと流出側チャンバ50とを接続する接続流路15Aと、接続チャンバ80と、加圧手段90とを備え、伝達部材85を介して第2ダイアフラム60の進退動を第1ダイアフラム30へ伝達して流出部13側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するように構成される。なお、以下の説明において、第1実施例と同一の符号は同一の構成を表すものとして説明を省略する。
【0049】
流入側チャンバ20Aは、接続流路15Aとの接続部16aに弁座25aが形成され、第1ダイアフラム30Aと、弁体35Aと、第1可動部40とが配置される。弁体35Aは、第1ダイアフラム30Aの第1チャンバ21側に設けられ弁座25aに対して第1ダイアフラム30Aとともに進退動する部位であって、特に、図9に示すように後側に流入部12側の流体圧力を受圧する膨出状の受圧部36を有する。この弁体35Aは、例えば、ポペット弁等が好適に用いられる。図9において、符号31aは第1ダイアフラム30Aのダイアフラム面となる肉薄の可動膜部、37は弁体35Aと第1ダイアフラム30Aとを接続する軸部である。
【0050】
ここで、第2実施例に係る定圧弁10Bの構造と被制御流体の流体圧力の関係について説明する。以下の説明では、図9に示すように、第1ダイアフラム30Aの可動膜部31aの中央部の直径をD1、第1ダイアフラム30Aの可動膜部31aの外周部の直径をD2、弁体(ポペット弁)35Aの軸部37の直径をD3、弁座25aの直径をD4、第1ダイアフラム30Aの流体圧力P1に対する受圧面積(第1ダイアフラム30Aの有効受圧面積)をS5、弁体35Aの膨出状の受圧部36の流体圧力P1に対する受圧面積(弁体35Aの受圧部36の有効受圧面積)をS6、接続流路15Aと流入側チャンバ20Aとの接続部16a(弁座25a)の断面積をS7とする。なお、流出側チャンバ50側(第2ダイアフラム60側)の構造は第1実施例の定圧弁10Aと同様である。
【0051】
まず、受圧部36の流体圧力P1に対する受圧面積S5と、第1ダイアフラム30Aの流体圧力P1に対する受圧面積S6は、それぞれ下記の式で表される。なお、可動膜部31aの中央部の直径D1は、{(D2-D3)/2}+D3である。
S5=(D4/2)2π-(D3/2)2π
S6=(D1/2)2π-(D3/2)2π
【0052】
開弁方向の力Foと閉弁方向の力Fcは、それぞれ下記の式で表される。
Fo=(P1×S5)+(P2×S7)+(P3×S3)
Fc=(P1×S6)+(P2×S2)+Fs
【0053】
当該定圧弁10Bの構造では、開弁方向の力Foと閉弁方向の力Fcとがバランスをとる(Fo=Fc)ように自動調整される。そこで、バランス式(Fo=Fc)は、下記の通り表される。
(P1×S5)+(P2×S7)+(P3×S3)
=(P1×S6)+(P2×S2)+Fs
【0054】
受圧部36の流体圧力P1に対する受圧面積S5と、第1ダイアフラム30Aの流体圧力P1に対する受圧面積S6が等しく構成されている場合、(P1×S5)=(P1×S6)となって相殺される。したがって、流体圧力P2は、下記の通り表される。
P2=S3/(S2-S7)×P3-1/(S2-S7)×Fs
【0055】
当該定圧弁10Bは、第2ダイアフラム60に加わる流体圧力P2の関係式から理解されるように、第1実施例の定圧弁10と同様に、流体圧力P2を調圧手段65の設定圧力P3に応じて容易に制御することができるため、調圧手段65の設定圧力P3を一定に設定することによって、流出部13側の流体圧力P2を一定に制御することができる。また、この定圧弁10Bは、接続部16a(弁座25a)のオリフィス径が第2ダイアフラム60の受圧面積S2に対して相対的に大きい場合に好適である。
【0056】
図10,11は、本発明の第3実施例に係る定圧弁10Cであって、第1実施例に係る定圧弁10Aに対して、伝達部材85が揺動可能な帯形状の歯車部材85bであり、流入側チャンバ20の第2チャンバ22内に加圧手段90aが第1可動部40を第1チャンバ21側へ加圧するように配置されている。
【0057】
帯形状の歯車部材85bは、左右両端部の歯部が各ラック部材45,75とそれぞれ歯合して揺動可能に構成される。この歯車部材85bは、円形状の歯車部材85aと同様に、第1ラック部材45及び第2ラック部材75とそれぞれ歯合することにより、第2ラック部材75と接続された第2ダイアフラム60の進退動を、第1ラック部材45と接続された第1ダイアフラム30に対して無駄なく伝達することができる。
【0058】
加圧手段90aは、第2チャンバ22内の接続チャンバ80側に位置する弁本体部11のばね受け部18と、第2チャンバ22内の第1ダイアフラム30側に位置する第1可動部40のばね受け部42との間に配置されて、第1可動部40を介して第1ダイアフラム30を第1チャンバ21側に付勢するように構成される。加圧手段90aは、第1実施例に係る定圧弁10Aの加圧手段90と設置位置が異なるものの、同様に第1ダイアフラム30を付勢することができる。また、第1可動部40が設けられる第2チャンバ22の空間を利用して加圧手段90aを配置することにより、装置の小型化を図ることができる。
【0059】
第3実施例に係る定圧弁10Cでは、第1実施形態に係る定圧弁10Aと同様に、伝達部材85である歯車部材85bを介して第2ダイアフラム60の進退動を第1ダイアフラム30へ伝達して流出部13側の被制御流体の流体圧力を一定に保持することができる。また、その際、加圧手段90aの加圧力が定圧弁10Aの加圧手段90と同様に一定に作用することから、前述の定圧弁10Aにおける流体圧力P2の関係式が成立する。したがって、同様に調圧手段65の設定圧力P3を一定に設定することによって、流出部13側の流体圧力P2を一定に制御することができる。
【0060】
図12,13は、本発明の第4実施例に係る定圧弁10Dであって、第2実施例に係る定圧弁10Bに対して、伝達部材85が揺動可能な帯形状の歯車部材85bであり、流入側チャンバ20の第2チャンバ22内に加圧手段90aが第1可動部40を第1チャンバ21側へ加圧するように配置されている。
【0061】
第4実施例に係る定圧弁10Dでは、第2実施例に係る定圧弁10Bと同様に、流出部13側の被制御流体の流体圧力を一定に保持することができる。またその際、前述の定圧弁10Bにおける流体圧力P2の関係式が成立し、調圧手段65の設定圧力P3を一定に設定することによって、流出部13側の流体圧力P2を一定に制御することができる。なお、定圧弁10Dは、定圧弁10Bと同様に、接続部16a(弁座25a)のオリフィス径が第2ダイアフラム60の受圧面積S2に対して相対的に大きい場合に好適である。
【0062】
図14は、本発明の第5実施例に係る定圧弁10Eの接続チャンバ80の横断面図であって、伝達部材85Aが分割可能な複数の歯車部材85c,85dで構成される。図示の伝達部材85Aは、第1ラック部材45と歯合する第1歯車部材85cと、第2ラック部材75と歯合する第2歯車部材85dとが、直列状に連結されて形成されている。伝達部材85Aが第1歯車部材85cと第2歯車部材85dに分割可能であることにより、分割された歯車部材85c,85dと対応するラック部材45,75とを個別に歯合させて組み立てることができるため、メンテナンスや組み立て作業等が容易となる。
【0063】
さらに、定圧弁Eでは、第1ラック部材45と第2ラック部材75とがそれぞれ異なる歯車部材(85c,85d)と歯合することにより、第1ラック部材45と第2ラック部材75とが並列されない。すなわち、第1ラック部材45と連結する第1ダイアフラム30と第2ラック部材75と連結する第2ダイアフラム60とを、並列以外の位置関係で配置することが可能となる。そのため、各ダイアフラムの配置の自由度が高められる。
【0064】
以上図示し説明したように、本発明の定圧弁は、第1ダイアフラムと接続された第1ラック部材と、第2ダイアフラムと接続された第2ラック部材とが、それぞれ伝達部材に歯合しており、この伝達部材を介して第2ダイアフラムの進退動を無駄なく第1ダイアフラムに対して伝達して、流出部側の被制御流体の流体圧力を一定に保持するように構成される。そのため、微少流量の被制御流体であっても高精度で供給しかつ流体の清浄度をより高い状態で維持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上のとおり、本発明の定圧弁は、微少流量の被制御流体を高精度で供給しかつ高い清浄度を維持することが可能である。従って、従来の定圧弁の代替として有望である。
【符号の説明】
【0066】
10A,10B,10C,10D,10E 定圧弁
11 弁本体部
12 被制御流体の流入部
12a 流入部と流入側チャンバとの接続部
13 被制御流体の流出部
13a 流出部と流出側チャンバとの接続部
15,15A 接続流路
16,16a 接続流路と流入側チャンバとの接続部
17 接続流路と流出側チャンバとの接続部
18 ばね受け部
20,20A 流入側チャンバ
21 第1チャンバ
22 第2チャンバ
25,25a 弁座
30,30A 第1ダイアフラム
31,31a 第1ダイアフラムの可動膜部
32 第1ダイアフラムの外周部
33 第1ダイアフラムの固定ブロック
35 弁体
35A 弁体(ポペット弁)
36 膨出状の受圧部
37 弁体の軸部
40 第1可動部
41 ピストン部
42 ばね受け部
45 第1ラック部材
46 第1ラック部材の歯部
50 流出側チャンバ
51 第3チャンバ
52 第4チャンバ
60 第2ダイアフラム
61 第2ダイアフラムの可動膜部
62 第2ダイアフラムの外周部
63 第2ダイアフラムの固定ブロック
64 ばね受け部
65 調圧手段
66 加圧気体の流入口
70 第2可動部
71 ピストン部
72 ばね受け部
75 第2ラック部材
76 第2ラック部材の歯部
80 接続チャンバ
85,85A 伝達部材
85a,85b,85c,85d 歯車部材
90,90a 加圧手段
D1 第1ダイアフラムの可動膜部の中央部の直径
D2 第1ダイアフラムの可動膜部の外周部の直径
D3 弁体(ポペット弁)の軸部の直径
D4 弁座の直径
S0 流入部と流入側チャンバとの接続部の断面積
S1 第1ダイアフラムの流体圧力に対する受圧面積
S2 第2ダイアフラムの流体圧力に対する受圧面積
S3 第2ダイアフラムの設定圧力に対する受圧面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14