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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043982
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】インクジェットインク及び錠剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/328 20140101AFI20220309BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20220309BHJP
【FI】
C09D11/328
C09D11/38
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021084842
(22)【出願日】2021-05-19
(62)【分割の表示】P 2020149380の分割
【原出願日】2020-09-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】小関 晟弥
(72)【発明者】
【氏名】石川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】星野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 賢俊
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AC02
4J039BC07
4J039BC08
4J039BC09
4J039BE02
4J039BE12
4J039CA06
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性に優れたインクジェットインク及び当該インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態に係るインクジェットインクは、食用染料として、青色1号を含み、固着剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用染料として、青色1号を最も多く含み、
固着剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、
溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含み、
前記溶媒に前記プロピレングリコールが含まれる場合、前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して2質量%以上であり、
前記溶媒に前記エタノールが含まれる場合、前記エタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上である
ことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項2】
前記食用染料は、前記青色1号と同量の赤色102号を含んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記固着剤として、還元イソマルツロースを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記溶媒として、グリセリンまたはイソプロピルアルコールのうち少なくとも一方をさらに含む
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記溶媒として、前記エタノールおよびイソプロピルアルコールを含み、
前記エタノールの添加量は、前記イソプロピルアルコールの添加量よりも多い
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記食用染料の配合割合は、インク全体の質量に対して、1質量%以上15質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記固着剤の配合割合は、インク全体の質量に対して、1質量%以上20質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記溶媒として、前記プロピレングリコールを含み、
前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して、2質量%以上40質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して10質量%以上である
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記溶媒として、前記エタノールを含み、
前記エタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上40質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いて印刷した印刷部を備える
ことを特徴とする錠剤。
【請求項12】
医療用錠剤であることを特徴とする請求項11に記載の錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインク及び錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷用インク(以下、単に「インクジェットインク」とも称する。)には、例えばタール系色素等の食用染料を色材とすることにより可食性を有するものがある。
従来、インクジェットインクには、色材の劣化により、印刷した文字や画像等において色材の色味(色調)が変化する変色や、色材の彩度低下等による褪色が発生するものがある。例えばインクジェットインクにおいて耐光性が不足している場合、光の作用により色材が分解(光分解)されることによって変褪色(光変褪色)が生じ得る。このような変褪色は、印刷した文字や画像等(以下、「印刷画像」と総称する)における視認性の低下として認識される。
【0003】
こうした印刷画像の変褪色を抑制するために技術の開発が進められており、変褪色抑制のための種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、従来の方法では印刷画像の光変褪色が十分に抑制されず、インクジェットインクの耐光性を向上することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6389506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性が向上されたインクジェットインク及び当該インクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るインクジェットインクは、食用染料として、青色1号を最も多く含み、固着剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含み、前記溶媒に前記プロピレングリコールが含まれる場合、前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して2質量%以上であり、前記溶媒に前記エタノールが含まれる場合、前記エタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上であることを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る錠剤は、上記インクジェットインクを用いて印刷した印刷部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、インクジェットインクの耐光性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態におけるインクジェットインクの浸透性および耐光性について説明する概念図である。
図2】本発明の実施形態に係る錠剤(素錠)の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る錠剤(素錠)の印刷画像の一例である。
図5】本発明の実施形態に係る錠剤(フィルムコーティング錠)の印刷画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という)に係るインクジェットインクは、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法で施される印刷画像等の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を改善することができるインクジェットインクに関するものである。以下、本発明の実施形態に係るインクジェットインク及びそのインクジェットインクで印刷した印刷部を備える錠剤の構成について、詳細に説明する。
【0011】
〔インクジェットインクの構成〕
本実施形態に係るインクジェットインクは、可食性を有するインクジェットインクであって食用染料(食用色素)として、食用青色1号(以下、単に「青色1号」と記載する)を含んでいる。また、本実施形態に係るインクジェットインクは、被印刷物(例えば固体製剤)の表面にインクを固着させるための固着剤として、水に対する溶解度が所定条件を満たす糖類を含んでいる。具体的には、本実施形態では、固着剤として20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類が用いられる。また、本実施形態に係るインクジェットインクは、溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含んでいる。このような構成によれば、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、インクジェットインクの耐光性を向上することができる。以下、この点について、図1を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、被印刷物(固体製剤)の表面におけるインクの固着と耐光性との関係を説明するための概念図である。ここで固体製剤として、例えば空隙が少ないフィルムコート部を備えた錠剤、即ちフィルムコート錠を用いるとする。なお、本発明はこれに限られず、素錠やカプセル錠を被印刷物としてもよい。
【0013】
図1(a)から図1(c)は、それぞれ組成の異なるインクジェットインクA~Cを錠剤(ここでは、フィルムコート錠)に印字し、一定時間経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。本例において、インクジェットインクAは、色材として特定染料4を用い、溶媒として水を用いたインクである。ここで、特定染料4には青色1号が含まれていればよい。また、インクジェットインクBは、インクジェットインクAに所定の糖類を添加したインクである。ここで、インクジェットインクBに添加した糖類は、水への溶解度が相対的に高く本実施形態における固着剤に該当しない糖類(例えば、マルトース)である。また、インクジェットインクCは、インクジェットインクAに上記固着剤に該当する二糖類を添加し、さらに溶媒として、水にプロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方を添加したインクである。
【0014】
具体的には、図1(a)は、色材として特定染料4を含有し、溶媒として水を含有するインクジェットインクAを錠剤の基材1の表面1Sに印字し、一定時間(例えば140時間)経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。また、図1(b)は、インクジェットインクBを、錠剤の基材1の表面1Sに印字し、一定時間(例えば140時間)経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。また、図1(c)は、インクジェットインクCを、錠剤の基材1の表面1Sに印字し、一定時間(例えば140時間)経過させた状態における錠剤の厚さ方向の断面模式図である。
【0015】
まず、インクジェットインクにおける糖類の添加の有無と、染料の浸透性についてインクジェットインクA,Bを例にとって説明する。
インクジェットインクに用いられる種々の色材のうち例えば食用染料として用いるタール系色素では、固体製剤などの表面に印刷した文字や画像等において変褪色が発生し得る。例えばタール系色素のうち青色1号では、時間経過に伴う固体製剤への浸透や、光分解によって印刷画像の変褪色が発生していた。これに対し、インクジェットインクに糖類を添加することで、染料が固体製剤に浸透することを抑制し、印刷画像の変褪色を抑制する方法が知られている。
【0016】
図1(a)に示すように、糖類を含まないインクジェットインクAを印字した場合、印字から一定時間が経過すると特定染料4が錠剤の基材1の内部に浸透する。ここで、当該一定時間経過後のインクジェットインクAにおける特定染料4の浸透の深さを浸透深さX(μm)とする。これに対し、図1(b)に示すように、糖類を含むインクジェットインクBを印字した場合、印字から一定時間経過後において、インクジェットインクBの浸透深さY(μm)は、インクジェットインクAの浸透深さXよりも小さくなる(X>Y)。
【0017】
インクジェットインクBでは、所定の糖類の添加によってインクの粘度の上昇等が生じ、特定染料4の錠剤の基材1の内部への浸透が抑制される。このため、インクジェットインクBを印字した場合、印字から一定時間経過後においても、錠剤の基材1内において特定染料4が表面1Sの近傍に残留することとなる。つまり、所定の糖類を含むインクジェットインクは、糖類が添加されない場合と比べて、染料(例えば青色1号)の浸透による印刷画像の変褪色を抑制することができる。一方で、所定の糖類を添加したインクジェットインクBでは、光照射による印刷画像の変褪色(光変褪色)を十分に抑制できていない。
【0018】
これに対し、本実施形態に係るインクジェットインクは、添加する糖類および溶媒の種類や物性を選択することにより、インクを被印刷物の表面に固着させて、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上するものである。本発明者らは、印刷画像の光変褪色を抑制するには、被印刷物(例えば錠剤)の表面上にインクを固着させることが有効であることを見出した。本例では、錠剤の表面1S上にインクが固着することにより、特定染料4)が表面1S上に固着され、結果として、表面1S上に高濃度で特定染料4を残存させることができる。
【0019】
錠剤の基材1の表面1S上において特定染料4の濃度が高い場合、例えば表面1S上の特定染料4のうち光分解による光変褪色が生じる色材の割合が低減される。つまり、特定染料4の一部に光変褪色が生じても影響は限定的となり、印刷画像の視認性(可読性)の低下が抑制される。これにより、印刷画像全体としての視認性が維持され、結果として印刷画像の光変褪色を十分に抑制することができる。したがって、インクジェットインクの耐光性を向上することができる。そして本発明者らは、糖類の中でも水に対する溶解度が相対的に低い二糖類が、色材として青色1号を含むインクを被印刷物の表面に固着する固着剤として機能することを発見した。さらに、本発明者らは、固着剤として用いる上記二糖類に関し、溶媒に対する溶解度が低下することでインクの固着効果が確実に発揮されることを発見した。
【0020】
具体的には、本実施形態に係るインクジェットインクは、色材であり食用染料として青色1号を含み、固着剤として溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含んでいる。このような構成によれば、被印刷物の表面に色材として用いる特定のタール系色素(本例では、青色1号)を含むインクを固着させ、当該表面に上記特定のタール系色素を高濃度で残存させることができる。これにより、本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上することができる。
【0021】
図1(c)に示すように、本実施形態に係るインクジェットインクに相当するインクジェットインクCを錠剤の基材1の表面1Sに印字すると、インク中の特定染料4(ここでは、青色1号)が表面1Sに固着される。具体的には、インクジェットインクCを印字した場合、印字から一定時間経過後の特定染料4の浸透深さZ(μm)は、所定の糖類を含むインクジェットインクBにおける特定染料4の浸透深さYよりもさらに低減されている(Y>Z)。例えば、インクジェットインクCでの特定染料4の浸透深さZは、インクジェットインクBでの特定染料4の浸透深さYの50%程度まで低減される。つまり、インクジェットインクCは、特定染料4の浸透をさらに抑制することができる。このため、当該表面1S上には特定染料4が高濃度で残存し、上述のように印刷画像の視認性の低下が抑制される。これにより、印刷画像の光変褪色が十分に抑制され、インクジェットインクCは、耐光性を向上することができる。
【0022】
一方、インクジェットインクBは、錠剤の基材1内部において表面1Sの近傍に特定染料4を残存させることはできるものの、特定染料4の浸透の抑制が十分でなく、表面1S上にインクを固着することはできない。つまり、インクジェットインクBでは、表面1S上に残存する特定染料4の濃度が低いため、印刷画像の光変褪色を十分に抑制できず、耐光性が向上(改善)されていない。
【0023】
このように、本実施形態に係るインクジェットインクは、固着剤として上記二糖類を添加し、さらに溶媒を上記成分構成とすることで、特定のタール系色素(青色1号)の被印刷物内部への浸透を大幅に抑制してインクを被印刷物の表面に固着させる。これにより、本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を抑制して耐光性を向上することができ、さらに、被印刷物内部への上記特定のタール系色素の浸透による印刷画像の変褪色をも抑制することができる。
【0024】
また、図1(c)に示すように、錠剤の基材1の表面1S上には、インクジェットインクCが若干盛り上がるようにして固着され得る。これにより、例えばインクジェットインクCを印字した場合、表面1S上において印字が濃く浮き出ているように認識される。このため、例えばインクジェットインクA,Bに比べて、インクジェットインクCでは、印刷画像の印刷時における視認性を向上することができる。つまり、本実施形態に係るインクジェットインクでは、印刷画像の光変褪色による視認性の低下を低減することに加え、印刷時点において印刷画像に良好な視認性を付与することができる。
【0025】
以下、本実施形態に係るインクジェットインクにおける耐光性の詳細について説明する。
本実施形態に係るインクジェットインクは、耐光試験前後でJIS Z 8781における色差△Eが15以下であればよい。ここで、耐光試験とは、例えば、本実施形態に係るインクジェットインクを用いて印刷された印刷画像について、可視光の照射前後における色度及び光学色濃度の変化量を示す色差ΔE(JIS Z 8781に準拠するもの)を比較する試験である。具体的には、当該印刷画像に累積120万ルクスの可視光を照射する前後で色差ΔEを測定し、その値を比較する。可視光の照射には、例えばキセノンウェザーメーター(東洋精機製作所 Ci4000)を用いる。また、耐光試験における印刷画像は、例えば印刷対象物である錠剤(例えばフィルムコーティング錠)にベタ印刷されたものである。
【0026】
医療用錠剤等への印刷画像の形成上必要十分な耐光性とは、120万ルクスの可視光を照射する耐光試験において、可視光の照射前後の印刷画像の色差ΔEが15以下を指す場合が多い。色差ΔEが15以下であることを十分な耐光性の判定基準とすることは、発明者らが各医療関係者も交えて実施したオピニオンテストの結果、導き出したものであり、色差ΔEが15を超えると印刷画像の視認性(例えば、印字の可読性)が低下していると認識されはじめる。つまり、可視光照射前後の色差ΔEが15以下であれば、光変褪色が十分に抑制され、耐光性に優れたインクジェットインクであるといえる。なお、一般的な商業印刷物での色差ΔEの目安である3~6よりは大きめな数字であるが、通常、曝光前後の錠剤を比較するようなことは無く、錠剤表面の印刷画像は自然と褪色することを想定しているため、この数字を得ることが出来た。
【0027】
本実施形態に係るインクジェットインクにおいて、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下であるという条件を満たす二糖類を固着剤とし、且つ上記成分構成の溶媒を用いる理由は、上記条件を満たさない糖類(例えば、20℃の水100mlに対する溶解度が52gであるマルトース)を添加した場合や、溶媒を上記成分構成としない場合は、錠剤表面における特定のタール系色素、すなわち青色1号が被印刷物表面に十分に固着されず、ベタ印刷画像について上記耐光試験を行うと色差ΔEが15を超えるためである。水に対する溶解度が上記条件を満たす二糖類を固着剤として添加し、且つ上記成分構成を満たす溶媒を用いて溶媒に対する上記二糖類の溶解度を低下させることで、耐光試験前後で色差ΔEは15を下回るようになり、インクジェットインクに優れた耐光性が付与される。
【0028】
以下、本実施形態に係るインクジェットインクを構成する各成分について、説明する。(色材)
上記のように、本実施形態によるインクジェットインクは、食用染料として少なくとも青色1号を含んでいる。青色1号は、食用タール系色素であって、ブリリアントブルーFCFとも称される。本実施形態に係るインクジェットインクにおいて、上記特定のタール系色素(青色1号)を含む食用染料の配合割合、すなわち当該食用染料の合計含有量は、インク全体の質量に対して1質量%以上15質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような構成であれば、印刷画像に良好な視認性を付与するとともに、高い間欠再開性を付与することができる。また、食用染料の合計含有量が上記範囲内であれば、上記固着剤の添加により確実に印刷物の表面に上記特定のタール系色素を高濃度で残存させて、印刷画像における光変褪色を抑制し、本実施形態に係るインクジェットインクの耐光性を向上することができる。
【0029】
これに対し、上記食用染料の合計含有量が1質量%未満であると、印刷色全体が薄くなり印刷画像の視認性が低下する傾向がある。また、含有量が15質量%を超えると、色材の溶解安定性の悪化によりインク中の色素が固体として析出したり、沈殿したりすることで、印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まりの原因となり、所謂、印刷再開性(間欠再開性)が低下し得る。
【0030】
なお、本実施形態によるインクジェットインクには、上記特定のタール系色素、すなわち青色1号以外の色素(色材)が含まれてもよい。青色1号以外の色素は可食性のものであれば特に制限はない。本実施形態によるインクジェットインクに添加可能な色素は、例えば、従来公知の合成食用色素、天然食用色素から適宜選択して添加することができる。また、本実施形態に係るインクジェットインクに食用染料として上記特定のタール系色素以外の色材を含む場合も、食用染料の合計含有量は上記範囲内(1質量%以上15質量%以下)であるとよい。これにより、インクジェットインクの耐光性を向上しつつ、印刷画像に良好な視認性を付与することができ、且つインクジェットインクに十分な間欠再開性を付与することができる。
【0031】
合成食用色素としては、例えば、タール系色素、天然色素誘導体、天然系合成色素等が挙げられる。タール系色素としては、例えば、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色40号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用青色2号、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色
3号アルミニウムレーキ、食用赤色40号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用5号アルミニウムレーキ、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ等が挙げられる。天然色素誘導体としては、例えば、ノルビキシンカリウム等が挙げられる。天然系合成色素としては、例えば、β-カロテン、リボフラビ
ン等が挙げられる。
【0032】
また、天然食用色素としては、例えば、アントシアニン系色素、カロチノイド系色素、キノン系色素、クロロフィル系色素、フラボノイド系色素、ベタイン系色素、モナスカス色素、その他の天然物を起源とする色素が挙げられる。アントシアニン系色素としては、例えば、赤ダイコン色素、赤キャベツ色素、赤米色素、エルダーベリー色素、カウベリー色素、グーズベリー色素、クランベリー色素、サーモンベリー色素、シソ色素、スィムブルーベリー色素、ストロベリー色素、ダークスィートチェリー色素、チェリー色素、ハイビスカス色素、ハクルベリー色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、ブラックカーラント色素、ブラックベリー色素、ブルーベリー色素、プラム色素、ホワートルベリー色素、ボイセンベリー色素、マルベリー色素、ムラサキイモ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ムラサキヤマイモ色素、ラズベリー色素、レッドカーラント色素、ローガンベリー色素、その他のアントシアニン系色素が挙げられる。カロチノイド系色素としては、例えば、アナトー色素、クチナシ黄色素、その他のカロチノイド系色素が挙げられる。キノン系色素としては、例えば、コチニール色素、シコン色素、ラック色素、その他のキノン系色素が挙げられる。フラボノイド系色素としては、例えば、ベニバナ黄色素、コウリャン色素、タマネギ色素、その他のフラボノイド系色素が挙げられる。ベタイン系色素としては、例えば、ビートレッド色素が挙げられる。モナスカス色素としては、例えば、ベニコウジ色素、ベニコウジ黄色素が挙げられる。その他の天然物を起源とする色素としては、例えば、ウコン色素、クサギ色素、クチナシ赤色素、スピルリナ青色素などが挙げられる。
【0033】
(固着剤)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上述のとおり、被印刷物の表面に特定のタール系色素(青色1号)を含むインクを固着させるための固着剤を含んでいる。具体的には、本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる固着剤は、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下である二糖類であって、例えば還元イソマルツロースである。20℃の水100mlに対する還元イソマルツロースの溶解度は、38gである。固着剤が当該構成であれば、上記成分構成の溶媒とともにインクジェットインクに添加することで、上記特定のタール系色素を含むインクを被印刷物の表面に固着させることができる。これにより、本実施形態によるインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上することができる。また、本実施形態において固着剤として用いられる上記二糖類(例えば還元イソマルツロース)は、インクジェットインクの光照射による分解(光分解)を抑制する機能も有する。このため、光変褪色の発生自体を抑制することもできる。
【0034】
本実施形態に係るインクジェットインクにおける固着剤の配合割合、すなわち上記二糖類(例えば還元イソマルツロース)の合計含有量は、インク全体の質量に対して1質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような構成であれば、上記二糖類によるインクの固着効果がより確実に発揮され、インクジェットインクの耐光性を確実に向上することができる。また、本実施形態に係るインクジェットインクに高い間欠再開性を付与することができる。
【0035】
これに対し、固着剤の配合割合が1質量%未満であると、インクの固着効果が低減し得る。また、固着剤(還元イソマルツロース)の配合割合が20質量%を超えると、インク粘度の上昇や、固着剤の溶解安定性の悪化によりインク中の固着剤が固体として析出したり、沈殿したりすることで、印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まりの原因
となり、間欠再開性が低下し得る。
【0036】
(溶媒)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上記特定のタール系色素(青色1号)および上記固着剤に加え、当該特定のタール系色素および当該固着剤を溶解(分散)させるために溶媒(分散媒)を含有している。本実施形態に係るインクジェットインクには、溶媒として、水(例えば精製水)と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方が含まれていればよい。本実施形態における溶媒は、水とプロピレングリコールを含んでいてもよいし、水とエタノールとを含んでもよいし、水、プロピレングリコールおよびエタノールを含んでもよい。
【0037】
糖類はアルコール類に溶解しづらい性質を有する。このため、本実施形態において、溶媒にプロピレングリコール、エタノールが含まれることにより、固着剤として用いられる上記二糖類の溶媒に対する溶解度が低下する。したがって、本実施形態において固着剤としての上記二糖類(還元イソマルツロース)とともに上記アルコール類(プロピレングリコール、エタノール)を含む溶媒をインクジェットインクに添加することで、インクの固着効果が確実に発揮され、インクに含まれる上記特定のタール系色素(本例では、青色1号)を被印刷物(例えば錠剤)の表面により高濃度で残存させることができる。これにより、本実施形態によるインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、耐光性を向上することができる。
また、プロピレングリコールは、湿潤剤として機能し、インクジェットノズルでのインクの乾燥を防止して、インクに十分な間欠再開性を付与することができる。また、エタノールは揮発性が高いことから、インクジェットインクの耐転写性(乾燥性)を向上することができる。
【0038】
また、本実施形態に係るインクジェットインクにおいて上記溶媒の各成分の配合割合は限定するものではないが、溶媒にプロピレングリコールが含まれる場合、当該プロピレングリコールの配合割合、即ちプロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して、2質量%以上40質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような構成であれば、溶媒に対する固着剤の溶解度が確実に低下し、上記特定のタール系色素を含むインクの固着効果がさらに向上する。このため、インクジェットインクにより優れた耐光性を付与することができる。また、プロピレングリコールの添加量は、10質量%以上であるとより好ましい。これにより、溶媒に対する固着剤の溶解度がさらに確実に低下し、上記特定のタール系色素を含むインクの固着効果がさらに向上するため、インクジェットインクにさらに優れた耐光性を付与することができる。
【0039】
一方、プロピレングリコールの添加量が2質量%未満であると、溶媒に対する固着剤の溶解度の低減効果が低下し得る。また、プロピレングリコールの添加量が40質量%を超えると、錠剤表面における印字表面の乾燥の遅れが増して、印刷した錠剤同士が接触したときに未乾燥のインクがもう一方の錠剤に付着して汚れとなるといった不具合(転写不良)の原因となることがある。
【0040】
また、溶媒にエタノールが含まれる場合、当該エタノールの配合割合、即ちエタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上40質量%以下の範囲内であることが好ましい。このような構成であれば、溶媒に対する固着剤の溶解度が確実に低下し、上記特定のタール系色素を含むインクの固着効果がさらに向上する。このため、インクジェットインクにより優れた耐光性を付与することができる。
【0041】
一方、エタノールの添加量が6.5質量%未満であると、溶媒に対する固着剤の溶解度の低減効果が低下し得る。一方、エタノールの添加量が40質量%を超えると、インクジ
ェットノズルでのインクの乾燥が生じて印刷時におけるインクジェットヘッドのノズル詰まりの原因となり、間欠再開性が低下し得る。
【0042】
また、本実施形態に係るインクジェットインクは、溶媒として、グリセリンまたはイソプロピルアルコールのうち少なくとも一方をさらに含んでもよい。具体的には、上記溶媒において、グリセリンまたはイソプロピルアルコールのうちいずれか一方をさらに含んでもよいし、グリセリンおよびイソプロピルアルコールの両方をさらに含んでもよい。グリセリンは、上述のプロピレングリコールと同様に湿潤剤として機能する。また、イソプロピルアルコールは、上述のエタノールと同様に揮発性が高いことから、インクジェットインクの耐転写性(乾燥性)を向上することができる。上記成分に加え、グリセリン、イソプロピルアルコールをさらに溶媒に添加することで、インクジェットインクの耐光性をさらに向上させるとともに、各成分に応じた性能をインクジェットインクに付与することができる。また、溶媒にこれらの成分をさらに含むことにより、溶媒に対する固着剤の溶解度がさらに確実に低下し、上記特定のタール系色素を含むインクの固着効果をさらに向上させることができる。
【0043】
(内添樹脂)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上述の色素や溶媒以外に、内添樹脂を含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能な内添樹脂は、可食性を有し、且つ水溶性粉末、ペースト、フレーク状の樹脂様物質であって、印字後の乾燥により錠剤表面に皮膜を形成可能な物質であればよい。上記内添樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール4000/ポリエチレングリコール1540等の高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、セラック樹脂、メタクリル酸コポリマー(製品名:オイドラギットS100)、マルトデキストリン、エリスリトール等が挙げられる。
【0044】
(レベリング剤)
本実施形態に係るインクジェットインクは、上述の色素や溶媒、或いは内添樹脂以外に、レベリング剤を含有してもよい。本実施形態に係るインクジェットインクに添加可能なレベリング剤は、可食性を有し、且つ水溶性の界面活性剤であればよい。上記レベリング剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例:太陽化学社製ジステアリン酸デカグリセリンQ-182S、同社製モノラウリン酸デカグリセリンQ-12S)、ソルビタン脂肪酸エステル(例:日光ケミカルズ社NIKKOLSL-10)、ショ糖脂肪酸エステル(例:第一工業製薬社製 DKエステルF-110)、ポリソルベート(花王社製 エマゾールS-120シリーズ)等が挙げられる。
【0045】
〔印刷方法〕
本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷方法について特に限定されず、市販のインクジェットプリンタ等のインクジェット装置を用いた印刷が可能である。このため、本実施形態に係るインクジェットインクは、応用範囲が広く、非常に有用である。例えば、本実施形態に係るインクジェットインクは、ピエゾ素子(圧電セラミックス)をアクチュエータとする、所謂ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置で印刷し得るし、他の方式のインクジェット装置でも印刷し得る。
【0046】
ドロップオンデマンド方式のインクジェット装置としては、例えば、微小発熱素子を瞬間的に高温(200~300℃)にすることで発生する水蒸気圧力でインクジェットインクを吐出するサーマルインクジェット方式を採用した装置や、アクチュエータを静電気振動させることでインクジェットインクを吐出する静電タイプの装置、超音波のキャビテーション現象を利用する超音波方式を採用した装置等が挙げられる。また、本実施形態に係
るインクジェットインクが荷電性能を備えていれば、連続噴射式(コンティニュアス方式)を採用した装置を利用することも可能である。
【0047】
〔錠剤〕
本実施形態では、本実施形態に係るインクジェットインクを、上述の印刷方法を用いて、例えば錠剤の表面に印字、印画してもよい。つまり、本実施形態に係る錠剤は、本実施形態に係るインクジェットインク用いて印刷した印刷部、すなわち印刷画像を備えていればよい。本実施形態に係るインクジェットインクであれば、例えば、医療用錠剤の表面にインクジェット印刷法を用いて施された印刷画像(例えば、印刷画像3)の耐光性を向上させることができる。以下、実施形態に係るインクジェットインクで印刷した印刷画像を備える錠剤の構成について説明する。
本実施形態に係る錠剤は、例えば、医療用錠剤である。ここで、「医療用錠剤」とは、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、腸溶錠、口腔内崩壊錠などのほか、錠剤の最表面に水溶性表面層が形成されているフィルムコーティング錠などを含むものである。
【0048】
図2は、印刷(印字、印画)がなされた医療用錠剤(素錠)の一例を示す概略断面図である。図2には、断面視で、錠剤の基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷された素錠印刷物5が示されている。
図3は、印刷(印字、印画)がなされた医療用錠剤(フィルムコーティング錠)の一例を示す概略断面図である。図3には、断面視で、表面にフィルムコート層7が形成された錠剤の基材1の上面に文字などの印刷画像3が印刷されたフィルムコート錠印刷物9が示されている。
なお、本実施形態では、図4に示すように、素錠印刷画像11としてベタ画像を印刷してもよく、図5に示すように、フィルムコート錠印刷画像13として二次元バーコードを印刷してもよい。
【0049】
医療用錠剤中に含有される活性成分は特に限定されない。例えば、種々の疾患の予防・治療に有効な物質(例えば、睡眠誘発作用、トランキライザー活性、抗菌活性、降圧作用、抗アンギナ活性、鎮痛作用、抗炎症活性、精神安定作用、糖尿病治療活性、利尿作用、抗コリン活性、抗胃酸過多作用、抗てんかん作用、ACE阻害活性、β-レセプターアンタゴニストまたはアゴニスト活性、麻酔作用、食欲抑制作用、抗不整脈作用、抗うつ作用、抗血液凝固活性、抗下痢症作用、抗ヒスタミン活性、抗マラリア作用、抗腫瘍活性、免疫抑制活性、抗パーキンソン病作用、抗精神病作用、抗血小板活性、抗高脂血症作用等を有する物質など)、洗浄作用を有する物質、香料、消臭作用を有する物質等を含むが、それらに限定されない。
【0050】
本実施形態に係る錠剤は、必要に応じて、活性成分とともにその用途上許容される担体を配合することができる。例えば、医療用錠剤であれば、医薬上許容される担体を配合することができる。医薬上許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤等が適宜適量配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を用いることもできる。
【0051】
本実施形態では、錠剤として医療用錠剤を例に挙げて説明したが、本発明のこれに限定されるものではない。本実施形態に係るインクジェットインクの印刷対象は特に制限されず、例えば、ヒト以外の動物(ペット、家畜、家禽等)に投与する錠剤、飼料、肥料、洗浄剤、ラムネ菓子などの錠菓やサプリメント等の食品といった各種錠剤の表面に印刷してもよい。また、本実施形態に係るインクジェットインクは、印刷対象のサイズについても特に制限されず、種々のサイズの錠剤について適用可能である。
【0052】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係るインクジェットインクは、食用染料として、青色1号を含み、
固着剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含んでいる。
このような構成であれば、従来技術と比較して、特定の色材を用いた印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、インクジェットインクに優れた耐光性を付与することができる。
(2)本実施形態に係るインクジェットインクは、固着剤として、還元イソマルツロースを含んでいる。
このような構成であれば、従来技術と比較して、特定の色材を用いた印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、インクジェットインクに優れた耐光性を付与することができる。
【0053】
(3)また、本実施形態に係るインクジェットインクは、溶媒として、グリセリンまたはイソプロピルアルコールのうち少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、インクジェットインクに優れた耐光性を付与しつつ、溶媒の各成分に応じた性能(間欠再開性の向上や、錠剤の乾燥性の向上)をインクに付与することができる。
【0054】
(4)また、本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる食用染料の配合割合は、インク全体の質量に対して、1質量%以上15質量%以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、インクジェットインクに優れた耐光性を付与しつつ、インクジェットインクに高い視認性および間欠再開性を付与することができる。
【0055】
(5)また、本実施形態に係るインクジェットインクに含まれる固着剤の配合割合は、インク全体の質量に対して、1質量%以上20質量%以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、インクジェットインクに優れた耐光性を確実に付与しつつ、インクジェットインクに間欠再開性を付与することができる。
(6)また、本実施形態に係るインクジェットインクは、溶媒として、プロピレングリコールを含み、当該プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して、2質量%以上40質量%以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、インクジェットインクに優れた耐光性を確実に付与しつつ、インクジェットインクに十分な間欠再開性を付与することができる。
(7)また、本実施形態に係るインクジェットインクにおいて、プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して、10質量%以上であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、インクジェットインクにより優れた耐光性を確実に付与しつつ、インクジェットインクに十分な間欠再開性を付与することができる。
(8)また、本実施形態に係るインクジェットインクは、溶媒として、エタノールを含み、当該エタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上40質量%以下の範囲内であってもよい。
このような構成であれば、従来技術と比較して、インクジェットインクに優れた耐光性を確実に付与しつつ、インクジェットインクに十分な乾燥性を付与することができる。
(9)本実施形態に係る錠剤は、上述したインクジェットインクで印刷した印刷画像(印刷部の一例)3を備えている。
このような構成であれば、従来技術と比較して、錠剤の表面等に直接印刷した印刷画像3等における光変褪色を十分に抑制し、印刷画像3の耐光性を十分に向上することができる。さらに、錠剤の表面に印刷された印刷画像部分に対しても可食性を付与することができる。
(10)本実施形態に係る錠剤は、医療用錠剤であってもよい。
本実施形態によるインクジェットインクを用いることで、医療用錠剤において光変褪色が十分に抑制され、印刷画像の視認性の低下による誤った調剤や服用の発生を低減させることができる。
【0056】
[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
以下、実施例1によるインクジェットインクの調製手順を説明する。
(インクジェットインクの製造)
まず、印刷用インクを調製した。インクジェットインクは、色素(色材)、溶媒、固着剤の各成分を含んでいる。調製の順序としては、まず、溶媒に固着剤を添加して透明ベース液を得た。次いで、その透明ベース液に、食用染料を添加した。こうして、本実施例に係るインクを調製した。以下、具体的に各種成分について説明する。
【0058】
本実施例では、溶媒には精製水(イオン交換水)、プロピレングリコールおよびエタノールをそれぞれ用いた。具体的には、精製水にプロピレングリコールおよびエタノールを添加し、よく撹拌して溶媒(混合溶媒)を得た。また前述の溶媒に固着剤として還元イソマルツロースを添加し、1時間程度撹拌して透明ベース液を得た。前述の透明ベース液に、色材として食用染料である青色1号を添加して実施例1のインクジェットインクを得た。実施例1のインクジェットインク全体に対して、色材である青色1号の配合割合を4.0質量%とし、溶媒のうち精製水の配合割合を57.5質量%とし、プロピレングリコールの配合割合を28.0質量%とし、エタノールの配合割合を6.5質量%とし、さらに固着剤であるイソマルツロースの配合割合を4.0%とした。
【0059】
<実施例2>
精製水およびプロピレングリコールを混合して溶媒(混合溶媒)を得た。インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を64.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例2のインクジェットインクを得た。
【0060】
<実施例3>
精製水およびエタノールを混合して溶媒(混合溶媒)を得た。インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を82.0質量%とし、エタノールの配合割合を10.0%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例3のインクジェットインクを得た。
【0061】
<実施例4>
色材として青色1号および赤色102号を用いた。青色1号および赤色102号それぞれの配合割合をインク全体に対していずれも4.0質量%とし、色材の配合割合を合計で8.0質量%とした。また溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を53.5質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例4のインクジェットインクを得た。
【0062】
<実施例5>
インク全体に対して、色材である青色1号の配合割合を15.0質量%とした。また、溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を46.5質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例5のインクジェットインクを得た。
【0063】
<実施例6>
インク全体に対して、色材である青色1号の配合割合を1.0質量%とした。また、溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を60.5質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例6のインクジェットインクを得た。
【0064】
<実施例7>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を60.5質量%とした。また、インク全体に対して、固着剤である還元イソマルツロースの配合割合を1.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例7のインクジェットインクを得た。
<実施例8>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を41.5質量%とした。また、インク全体に対して、固着剤である還元イソマルツロースの配合割合を20.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例8のインクジェットインクを得た。
<実施例9>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例2と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を82.0質量%とし、プロピレングリコールの配合割合を10.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例9のインクジェットインクを得た。
【0065】
<実施例10>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例3と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を90.0質量%とし、プロピレングリコールの配合割合を2.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例10のインクジェットインクを得た。
<実施例11>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例3と同様とし、インク全体に対して精製水の配合割合を85.5質量%とし、エタノールの配合割合を6.5質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例11のインクジェットインクを得た。
<実施例12>
精製水、グリセリン、エタノールおよびイソプロピルアルコールを混合して溶媒(混合溶媒)を得た。インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を57.0質量%とし、グリセリンの配合割合を20.0%とし、エタノールの配合割合を10.0質量%とし、イソプロピルアルコールの配合割合を5.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例12のインクジェットインクを得た。
【0066】
<実施例13>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例2と同様とし、インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を52.0質量%とし、プロピレングリコールの配合割合を40.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして実施例13のインクジェットインクを得た。
【0067】
<比較例1>
色材として青色1号は添加せず、赤色102号を用いた。インク全体に対して、赤色102号の配合割合を5.0%とした。また、溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を71.5質量%とし、プロピレングリコールの配合割合を1.5質量%とし、エタノールの配合割合を12.0質量%とした。また、固着剤である還元イソマルツロースの配合割合をインク全体に対して10.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例1のインクジェットインクを得た。
<比較例2>
色材として赤色3号を用い、インク全体に対して当該赤色3号の配合割合を5.0質量%とした。また、溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を81.5質量%とし、プロピレングリコールの配合割合を1.5質量%とし、エタノールの配合割合を12.0質量%とした。また、糖類は添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして比較例2のインクジェットインクを得た。
<比較例3>
色材として赤色3号を用い、インク全体に対して当該赤色3号の配合割合を5.0質量%とした。それ以外は比較例1と同様にして比較例3のインクジェットインクを得た。
<比較例4>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を61.5質量%とした。また、糖類は添加しなかった。それ以外は実施例1と同様にして比較例4のインクジェットインクを得た。
<比較例5>
溶媒として精製水を単体で用い、インク全体に対して当該精製水の配合割合を86.0質量%とした。また、インク全体に対して、固着剤である還元イソマルツロースの配合割合を10.0質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして比較例5のインクジェットインクを得た。
<比較例6>
溶媒(混合溶媒)の構成成分を実施例1と同様とし、インク全体に対して、溶媒のうち精製水の配合割合を51.5質量%とした。また、糖類としてガラクトースを添加し、配合割合をインク全体に対して10.0質量%とした。それ以外は実施例1と同様にして比較例6のインクジェットインクを得た。
<比較例7>
糖類としてマルトースを添加し、配合割合をインク全体に対して10.0質量%とした。それ以外は比較例6と同様にして比較例7のインクジェットインクを得た。
【0068】
前述の実施例1~13及び比較例1~7の各インクを、それぞれメンブレンフィルターを通過させることによって液中の固体異物を除去した。具体的には、口径5.0μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させ、続いて口径0.8μmのメンブレンフィルター(酢酸セルロース膜)を1回透過させることで精製インクをそれぞれ得た。
【0069】
<評価>
上記各実施例及び各比較例のインクによる上記精製インクについて、以下の方法で耐光性、間欠再開性および錠剤乾燥性を評価した。評価結果を上記各実施例及び各比較例のインク組成と併せて後述の表1、表2に示す。
【0070】
(耐光試験)
印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数2,656の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、上記実施例1~18および比較例1~5の精製インクを1ドロップ6plの印刷ドロップ量にて画像を、下記錠剤にそれぞれ印刷した。
印刷対象の錠剤は、テスト用フィルムコーティング錠(基剤:調整澱粉、コーティング剤:ヒドロキシプロピルメチルセルロース70%・酸化チタン30%の混合、直径:6.5mm)とした。また、印刷画像は、円形のベタ画像(直径4.0mm)とした。これによりフィルムコーティング錠印刷物を得た。
【0071】
色度及び光学色濃度を測定した各実施例および各比較例の上記フィルムコーティング錠印刷物に対して、キセノンウェザーメーター(東洋精機製作所 Ci4000)を用いて累積120万ルクスの可視光を照射した。可視光を照射したフィルムコーティング錠印刷物に対し分光光度計にて色度及び光学色濃度を測定し、可視光の照射前後における色度及び光学色濃度の変化量を示す色差ΔE(JIS Z 8781に準拠するもの)を比較した。比較した結果を表1、表2に示した。上述のように、可視光の照射前後の色味の変化について、上述のように、発明者らは、JIS Z 8781における色差ΔEが15以下(ΔE≦15)であれば、光変褪色が十分に抑制され、優れた耐光性を持つことを導き出した。そこで、ΔE≦15であれば、インクジェットインクが優れた耐光性を有しているとして、本評価においては合格とした。
【0072】
(間欠再開性試験)
印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数2,656の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、規定時間(15分間~60分間)フラッシング無く放置した後、1ドロップ6plの印刷ドロップ量にて、テストパターンを印刷し、全ノズルから不吐出量なく吐出できていることを確認した。なお、以下表1および表2では、間欠再開性の評価結果として、インクの吐出が可能な放置時間を測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:60分間以上120分間未満
〇:30分間以上60分間未満
△:15分間以上30分間未満
×:15分間未満
【0073】
(錠剤乾燥性(耐転写性)試験)
下記錠剤に、印刷解像度が主走査方向600dpi、副走査方向(錠剤等記録媒体の搬送方向)600dpi、トータルノズル数2,656の圧電セラミック駆動のドロップオンデマンド型インクジェットヘッドを用い、1ドロップ10plの印刷ドロップ量にて実施例および各比較例のインクジェットインクにより画像をそれぞれ印刷した。
印刷10秒後、印刷された錠剤に、デジタルフォースゲージに貼り付けた白色コピー用紙を4~5Nの圧力で、0.4~0.5秒間接触させ、印刷したインクが転写しないことを確認した。なお、表1および表2では、耐転写性(乾燥性)の評価結果として、転写したインクの濃度を目視した。評価基準は以下の通りである。
◎:インクの転写がない場合
○:インクの転写がごく僅かであり、目視確認が難しい場合
×:インクが色濃く転写した場合
【0074】
各実施例のインクジェットインクの組成および評価結果を表1に示す。また、各比較例のインクジェットインクの組成および評価結果を表2に示す。なお、表1、表2中で「空欄」の部分は、当該物質を使用していないことを示す。また、表1および表2においてフィルムコーティング錠を「FC錠」と略記している。また、表1および表2では、糖類に関する「20℃の水100mlに対する溶解度」について「溶解度」と略記している。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1に示すように、実施例1~13のフィルムコーティング錠印刷物においては、耐光試験の結果として、可視光の照射前後の色差△Eはいずれも15以下(ΔE≦15)となった。具体的には、実施例1~13のフィルムコーティング錠印刷物において、可視光の照射前後の色差△Eは8~14の範囲内であり、いずれも15未満となった。つまり、実施例1~13のインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、優れた耐光性が付与されていることが分かった。これに対し、表2に示すように比較例1~7のフィルムコーティング錠印刷物においては、耐光試験の結果として、可視光の照射前後の色差△Eはいずれも15を超える値(ΔE>15)となった。つまり、比較例1~7のインクジェットインクは、印刷画像の光変褪色が十分に抑制できず、耐光性が不足していることが分かった
【0078】
上記耐光試験の結果から、食用染料として、青色1号を含み、固着剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含むインクジェットインクであれば、印刷画像の光変褪色を十分に抑制し、優れた耐光性が付与されることがわかった。
【0079】
さらに、表1に示すように、実施例1~13のインクジェットインクでは、間欠再開性の評価結果が何れも「△」以上であり、優れた耐光性とともに十分な間欠再開性を有することが分かった。特に実施例5では色材の配合割合が上限(15質量%)であり、実施例8では固着剤の配合割合が上限(20質量%)であるが、プロピレングリコールの添加により、優れた間欠再開性が維持されることが分かる。
【0080】
また、表1に示すように、実施例1~13のインクジェットインクでは、耐転写性(錠剤乾燥性)の評価結果が何れも「△」以上であり、優れた耐光性とともに十分な錠剤乾燥性を有することが分かった。
【0081】
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明
の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【符号の説明】
【0082】
1 錠剤の基材
1S 表面
3 印刷画像
4 特定染料
5 素錠印刷物
7 フィルムコート層
9 フィルムコート錠印刷物
11 素錠印刷画像(ベタ画像)
13 フィルムコート錠印刷画像(二次元バーコード)
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2021-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用染料として、青色1号を含み、
固着剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、
溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含み、
前記溶媒に前記プロピレングリコールが含まれる場合、前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して2質量%以上であり、
前記溶媒に前記エタノールが含まれる場合、前記エタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上である
ことを特徴とするインクジェットインク。
【請求項2】
前記食用染料は、前記青色1号と同量の赤色102号を含んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記固着剤として、還元イソマルツロースを含む
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記溶媒として、グリセリンまたはイソプロピルアルコールのうち少なくとも一方をさらに含む
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記溶媒として、前記エタノールおよびイソプロピルアルコールを含み、
前記エタノールの添加量は、前記イソプロピルアルコールの添加量よりも多い
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記食用染料の配合割合は、インク全体の質量に対して、1質量%以上15質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記固着剤の配合割合は、インク全体の質量に対して、1質量%以上20質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
前記溶媒として、前記プロピレングリコールを含み、
前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して、2質量%以上40質量%以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して10質量%以上である
ことを特徴とする請求項8に記載のインクジェットインク。
【請求項10】
前記溶媒として、前記エタノールを含み、
前記エタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上40質量%
以下の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のインクジェットインクを用いて印刷した印刷部を備える
ことを特徴とする錠剤。
【請求項12】
医療用錠剤であることを特徴とする請求項11に記載の錠剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るインクジェットインクは、食用染料として、青色1号を含み、固着剤として、20℃の水100mlに対する溶解度が20g以上39g以下の範囲内である二糖類を含み、溶媒として、水と、プロピレングリコールまたはエタノールのうち少なくとも一方とを含み、前記溶媒に前記プロピレングリコールが含まれる場合、前記プロピレングリコールの添加量は、インク全体の質量に対して2質量%以上であり、前記溶媒に前記エタノールが含まれる場合、前記エタノールの添加量は、インク全体の質量に対して、6.5質量%以上であることを特徴とする。