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▶ 澤田 ▲福衛▼の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043988
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】クラッチ装置及び衝突緩和機構
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20220309BHJP
   F16D 11/04 20060101ALI20220309BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220309BHJP
   B60L 7/12 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B60W30/09
F16D11/04 A
B60L15/20 J
B60L7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106240
(22)【出願日】2021-06-28
(62)【分割の表示】P 2020149490の分割
【原出願日】2020-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】514109330
【氏名又は名称】澤田 ▲福衛▼
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】澤田 ▲福衛▼
【テーマコード(参考)】
3D241
3J056
5H125
【Fターム(参考)】
3D241BA35
3D241BC01
3D241CA06
3D241CA08
3D241CE06
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DC01Z
3D241DC18Z
3D241DC33Z
3D241DC45Z
3J056AA70
3J056BD34
3J056BE30
3J056DA04
3J056GA02
3J056GA06
3J056GA12
5H125AA01
5H125AC08
5H125BE05
5H125CB02
5H125DD08
(57)【要約】
【課題】 衝突時における被害の緩和を図るとともに、燃費の向上や環境負荷の低減を図る。
【解決手段】 衝突すると、駆動軸12の駆動力は、慣性吸収ギア機構840を介して逆転用高負荷多板クラッチ850に伝達される。すると、駆動力は、ギア866を介してギア862に伝達され、慣性が吸収されて出力軸14を低速回転させるように作用する。一方、ギア862が回転すると、回生・後退モーター864も回転し、いわゆる回生駆動も行われるようになる。これらのため、出力軸14は、急激に回転数が低下し、正転状態から回転停止状態となる。そして、車速センサ304により車速=「0」になったことが検知されると、回生・後退モーター864を駆動し、出力軸14を数秒間逆転駆動した後、回生・後退モーター864の駆動を停止する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突時の被害を緩和する衝突緩和機構であって、
車両が衝突したことを検知する衝突検知手段,
この衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、駆動源による駆動力の伝達を遮断するクラッチ手段,
車両を急減速して停止する減速停止手段,
この減速停止手段によって車両が停止した後に、車両を後退して停止する後退手段,
前記衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、前記減速停止手段によって車両を急減速して停止するとともに、車両が停止した後に、前記後退手段によって車両を後退して停止する衝突緩和制御手段,
を備えたことを特徴とする衝突緩和機構。
【請求項2】
前記減速停止手段が、前記車両の慣性を吸収する回生手段であることを特徴とする請求項1記載の衝突緩和機構。
【請求項3】
前記後退手段をモーター手段によって構成し、このモーター手段を逆回転することで、前記回生手段としたことを特徴とする請求項2記載の衝突緩和機構。
【請求項4】
入力側の動力の出力側への伝達をON,OFFする空走機構と、前記ON,OFFを制御する空走制御装置を含むクラッチ装置であって、
前記空走機構は、
複数の磁石が交互の極性となるように配列された入力側ロータ及び出力側ロータと、
ON時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に生ずる磁力によって入力側ロータの回転を出力側ロータに伝達し、OFF時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に磁力が生じないように、少なくとも一方のロータをスライドさせるスライド手段と、
を備えており、
前記空走制御装置は、
車両の走行状態や道路の状態を検知するセンサ手段と、
このセンサ手段による検知結果に基づいて、安全に空走可能かどうかを判断して、対応する空走制御信号を前記スライド手段に出力する空走制御手段と、
を備えていることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項5】
前記入力側ロータを、前記出力側ロータの外周に複数設けるとともに、動力が入力される入力軸の動力を前記複数の入力側ロータに伝達する動力伝達機構を設けたことを特徴とする請求項4記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記センサ手段は、
アクセルペダルが踏まえているかどうかを検知するアクセルスイッチ,
車速を検知する車速センサ,
ブレーキペダルが踏まえているかどうかを検知するブレーキスイッチ,
ハンドルが切られているかどうかを検知するハンドル舵角センサ,
シフトレバーの位置を検知する変速位置スイッチ,
前方の障害物の有無を検知する前方障害物感知センサ,
路面の傾斜を検知する路面角度センサ,
のうちの少なくとも一つを備えていることを特徴とする請求項4又は5記載のクラッチ装置。
【請求項7】
前記空走制御手段は、前記センサ手段の検知結果を参照して、空走を安全に行うことが可能かどうかを判断し、可能と判断したときは、前記スライド手段を駆動して空走を行うことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載のクラッチ装置。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載のクラッチ装置であって、
前記出力側ロータにより回転駆動される従動シャフトに取り付けられている回転盤,
該回転盤の表裏に設けられており、前記従動シャフトに沿ってスライドするスライド体,
該スライド体に揺動可能に設けられた複数の腕,
を備えており、
前記空走機構がONからOFFとなったときに、前記腕が前記回転盤の外周側に移動することで、前記空走機構のON・OFF切替時の衝撃を軽減する衝撃軽減機構を設けたことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項9】
緊急時に前記回転盤の回転を停止するリバース駆動手段を設けたことを特徴とする請求項8記載のクラッチ装置。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の衝突緩和機構であって、
前記クラッチ手段として、請求項4~9のいずれか一項に記載のクラッチ装置を使用したことを特徴とする衝突緩和機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両用のクラッチ装置及び衝突緩和機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動車では、エンジンから機械式や電気式のクラッチやトルクコンバーターを介して、エンジンの駆動力が変速機に伝達されるようになっている。例えば、下記特許文献1には、フィールドコアと駆動プーリとの間に磁性流体を充填することで、磁路の磁気抵抗を小さくして、従来よりもコンパクトに構成できるようにした電磁クラッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-109375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、昨今は、燃費の向上や環境対策が強く要望されており、ハイブリッド方式や電気モーター方式の自動車が研究・開発されている。しかしながら、ハイブリッド方式はガソリンエンジンと電気モーターを併用することから、構造や制御が極めて複雑となってしまう。一方、電気モーター方式は、バッテリーの蓄電能力や充電手法において研究の余地があり、充電施設の整備といった課題もある。
【0005】
一方、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故も多発している。このような事故を未然に防ぐことができればよいが、次善の策として、事故が起きてしまったときにその被害を緩和することができれば、好都合である。
【0006】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、エネルギーの有効利用を図ることができ、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることである。他の目的は、衝突時における被害の緩和を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の衝突時の被害を緩和する衝突緩和機構であって、車両が衝突したことを検知する衝突検知手段,この衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、駆動源による駆動力の伝達を遮断するクラッチ手段,車両を急減速して停止する減速停止手段,この減速停止手段によって車両が停止した後に、車両を後退して停止する後退手段,前記衝突検知手段によって衝突が検知されたときに、前記減速停止手段によって車両を急減速して停止するとともに、車両が停止した後に、前記後退手段によって車両を後退して停止する衝突緩和制御手段,を備えたことを特徴とする。
【0008】
他の発明は、入力側の動力の出力側への伝達をON,OFFする空走機構と、前記ON,OFFを制御する空走制御装置を含むクラッチ装置であって、前記空走機構は、複数の磁石が交互の極性となるように配列された入力側ロータ及び出力側ロータと、ON時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に生ずる磁力によって入力側ロータの回転を出力側ロータに伝達し、OFF時は、前記入力側ロータの磁石と出力側ロータの磁石との間に磁力が生じないように、少なくとも一方のロータをスライドさせるスライド手段と、を備えており、前記空走制御装置は、車両の走行状態や道路の状態を検知するセンサ手段と、このセンサ手段による検知結果に基づいて、安全に空走可能かどうかを判断して、対応する空走制御信号を前記スライド手段に出力する空走制御手段と、を備えていることを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、衝突を検知したときに急減速を行うとともに、停止後後退を行って停止することとしたので、更なる衝突事故の拡大が低減されるようになり、被害が緩和される。また、空走機構により、安全に空走可能な状態を空走制御装置で検出して空走を行うようにしたので、簡便な構成でありながら、エネルギーの有効利用を図ることができ、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例1の空走機構の構成を示す図である。
図2】前記実施例1を矢印F2方向から見た図である。
図3】前記実施例1の空走機構の自動車における配置を示す図である。
図4】本発明の実施例の制御装置を示す図である。
図5】前記実施例1の空走制御プログラムの動作を示すフローチャートである。
図6】自動車の走行例と空走機構の動作の一例を示す図である。
図7】本発明の実施例2の空走機構及び衝撃軽減機構の構成を示す図である。
図8】前記実施例2の衝撃軽減機構を矢印F8方向から見た図である。
図9】前記実施例2の衝撃軽減プログラムの動作を示すフローチャートである。
図10】本発明の実施例3の衝突緩和機構を示す図である。
図11】(A)は前記実施例3の制御装置を示す図であり、(B)はその動作をフローチャートである。
図12】前記実施例3の減速・回生時の様子を示す図である。
図13】前記実施例3の後退時の様子を示す図である。
図14】前記実施例3の走行動作例を示す図である。
図15】本発明の実施例4の低速・低回転時の様子を示す図である。
図16】前記実施例4の中速・中回転時の様子を示す図である。
図17】前記実施例4の高速回転時の様子を示す図である。
図18】前記実施例4の慣性・回生時の様子を示す図である。
図19】前記実施例4の逆転・後退時の様子を示す図である。
図20】前記実施例4の動作例の全体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0012】
図1には、本実施例にかかるクラッチ装置の空走機構が示されており、同図(A)は駆動力が入力軸から出力軸に伝達される「ON」の状態であり、同図(B)は駆動力が入力軸から出力軸に伝達されない「OFF」の状態を示す。また、図2は、軸方向から見た主要部の様子を示す。これらの図において、空走機構100は、複数の外側ロータ110と、それらに挟まれて内側ロータ150が配置された構成となっている。外側ロータ110の外周には多数の磁石112が隣接して設けられており、内側ロータ150の外周には多数の磁石152が隣接して設けられている。これら磁石112,152の極性は図2(B)に示すように、磁化(着磁)方向が厚み方向ないし径方向となっており、また、交互にN,Sの極性が反対となるように磁化されている。
【0013】
外側ロータ110は、回転軸114を中心に回転可能となっており、これらの回転軸114はギア機構120によって回転駆動されるようになっている。ギア機構120は、エンジン(あるいはモーター)130の駆動シャフト132に設けられている主ギア134と、これに歯合する複数の従ギア136によって構成されており、これら複数の従ギア136が、前記外側ロータ110の回転軸114に設けられている。すなわち、エンジン130によって駆動シャフト132が回転すると、主ギア134が回転し、更には従ギア136が回転して回転軸114が回転し、外側ロータ110が回転するように構成されている。一方、内側ロータ150は、従動シャフト154によって回転可能に支持されており、この従動シャフト154の回転が自動車の車軸204(図3参照)に伝達されるようになっている。
【0014】
上述した外側ロータ110の外周面の磁石112と、内側ロータ150の外周面の磁石152との間には僅かな隙間が形成されており、両者が接触しないように構成されている。また、内側ロータ150は、スライド機構160によって従動シャフト154の方向にスライド可能に構成されている。図示の例では、従動シャフト154に取り付けられているレバー162を、一方においてはバネ164で付勢するとともに、他方において空走制御アクチュエータ166で逆方向に付勢することで、外側ロータ110をスライドさせている。
【0015】
図1(A)の状態では、レバー162がバネ164で引っ張られて、外側ロータ110の磁石112と内側ロータ150の磁石152との磁力がお互いに影響する状態となる。このため、外側ロータ110が回転すると、磁石112,152の磁力の作用によって、内側ロータ150が回転するようになる。すなわち、エンジン130の駆動力が、ギア機構120を介して外側ロータ110から内側ロータ150に伝達され、従動シャフト154が回転するようになる。この状態が空走ONの状態である。
【0016】
これに対し、同図(B)の状態では、レバー162がバネ164の力に抗して空走制御アクチュエータ166で引っ張られており、内側ロータ150が外側ロータ110の位置からスライドした位置となって、磁石112,152の磁力が互いに影響しない状態となる。このため、外側ロータ110が回転しても、磁石112,152の磁力の作用がなく、内側ロータ150は回転しない。すなわち、エンジン130の駆動力は、ギア機構120を介して外側ロータ110には伝達されるものの、内側ロータ150には伝達されず、従動シャフト154は回転しない。この状態が空走OFFの状態である。
【0017】
図3には、上述した空走機構100を含む動力伝達系統の全体が示されている。同図(A)の例では、エンジン130とクラッチ機構200との間に空走機構100が設けられており、クラッチ機構200の駆動力がミッション機構202を介して車軸204に伝達されている。クラッチ機構200とミッション機構202の間に空走機構100を設けてもよい。同図(B)の例では、エンジン130の代わりにモータ230を使用しており、その駆動力が空走機構100を介して車軸204に伝達されている。
【0018】
次に、図4及び図5を参照しながら、本実施例の空走制御装置について説明する。図4には、空走制御装置300の構成が示されており、各種のスイッチないしセンサ302~314がECU(engine control unit)320に接続された構成となっている。これらのうち、アクセルスイッチ302は、アクセルペダルが踏まれているかどうかを検知するためのスイッチで、例えばアクセルペダルが踏まれているときはON,踏まれていないときはOFFとなる。車速センサ304は、自動車の走行速度を検知するセンサである。ブレーキスイッチ306は、ブレーキペダルが踏まれているかどうかを検知するためのスイッチで、例えばブレーキペダルが踏まれているときはON,踏まれていないときはOFFとなる。
【0019】
ハンドル舵角センサ308は、カーブを走行中など、ハンドル(ステアリングホイール)を切っているかどうかを検知するためのセンサである。変速位置スイッチ310は、シフトレバーの位置を検知するスイッチで、トップギヤの位置にあるときはON,それ以外はOFFとなる。前方障害物感知センサ312は、自動車の前方に障害物があるかどうかを検知するためのセンサである。路面角度センサ314は、道路前方の路面が坂になっているかどうかを検知するセンサである。他のセンサ等については後述する。
【0020】
ECU320には、空走制御プログラム322が用意されており、これを実行することで、上述したスイッチないしセンサ302~314の検知結果に応じて、空走制御アクチュエータ166に動作制御信号が出力されるようになっている。図5には、その動作の流れが示されている。なお、ECU320は、上述した動作の他に、エンジンないしモーター,空調などの自動車の動作の全般を制御する機能を備えている。衝撃軽減プログラム722については後述する。
【0021】
次に、空走制御装置300における空走制御プログラム322の動作を、図5を参照して説明すると、
a,アクセルペダルが踏まれて、アクセルスイッチ302がONのときは(ステップS10のYes)、アクセルペダル操作による加減速を行う必要があると考えられるので、駆動力を伝達する必要があり、空走機構100をONとする。すなわち、空走機構100をONとする制御信号が、ECU320から空走制御アクチュエータ166に対して出力され、空走機構100はONとなって(ステップS24)、図1(A)に示したように、駆動力が伝達されるようになる。
b,車速センサ304により、加速中であることが検出されているときも(ステップS12のYes)、同様に駆動力を伝達する必要があり、空走機構100をONとする。
c,ブレーキペダルが踏まれて、ブレーキスイッチがONのときは(ステップS14のYes)、空走は危険であると考えられるので、空走機構100をONとする。
d,ハンドル舵角センサ308により、ハンドルが左もしくは右に切られているときは(ステップS16のYes)、道路がカーブしており、同様に空走すると危険であると考えられるので、空走機構100をONとする。
e,変速位置スイッチ310により、シフトレバーがトップ以外に入っていることが検知されたときは(ステップS18のNo)、加速ないし減速の途中にあると考えられるので、駆動力を伝達する必要があり、空走機構100をONとする。
f,前方障害物感知センサ312により、前方に障害物が検知されたときは(ステップS20のYes)、減速するか、ハンドルを切る必要があり、空走は危険であると考えられるので、空走機構100をONとする。
g,路面角度センサ314により、前方の路面が上り坂ないし下り坂になっていることが検知されたときは(ステップS22のYes)、加速するか、エンジンブレーキをかける必要があって、空走は危険であると考えらえられるので、空走機構100をONとする。
【0022】
一方、上記条件を満たさないときは、空走を行っても危険はないと判断され、空走機構100をOFFとする制御信号が、ECU320から空走制御アクチュエータ166に対して出力され、空走機構100は図1(B)に示すようにOFFとなる(ステップS26)。これにより、エンジン130からの動力は伝達されず、空走状態となる。
【0023】
次に、図6も参照しながら、本実施例の全体動作をを説明する。図6(A)は、自動車の加減速の一例を示すグラフで、自動車が時刻TaからTbまで加速し、その後定速運転を行い、時刻Tcから時刻Tdまで減速し、その後再び加速する場合の速度変化を示す。また、同図(B)は、空走機構100のON・OFFの状態を示している。
【0024】
まず、時刻TaからTbまでの加速期間では、アクセルペダルが踏み込まれるため、アクセルスイッチ302がONとなる(ステップS10のYes)。このため、ECU320では、空走制御プログラム322によって空走機構100をONとする制御信号が空走制御アクチュエータ166(図4参照)に出力される。これにより、空走制御アクチュエータ166は、図1(A)に示すONの状態となり(ステップS24)、エンジン130の駆動力が、ギア機構120を介して外側ロータ110から内側ロータ150に伝達され、従動シャフト154が回転し、更にはクラッチ機構200,ミッション機構202を通じて車軸204が回転し、自動車は加速することとなる。なお、坂道などで加速している場合、アクセルペダルが踏み込まれず、アクセルスイッチ302がOFFとなっている場合(ステップS10のNo)も想定されるが、車速センサ304により、加速中であることが検出されるので(ステップS12のYes)、図6(B)に示すように空走機構100はONとなって(ステップS24)、動力が伝達される。
【0025】
次に、時刻TbからTcまでの定速期間では、同様にアクセルスイッチ302がONとなっているので(ステップS10のNo)、同様に空走機構100はONのままであり、動力が伝達される。
【0026】
次に、時刻TcからTdまでの減速期間では、アクセルペダルが離されてアクセルスイッチ302がOFFとなるとともに(ステップS10のNo)、減速中となることから(ステップS12のNo)、ブレーキが踏まれていなかったり(ステップS14のNo)、ハンドルが切られていなかったり(ステップS16のNo)、シフトレバーがトップで(ステップS18のYes)、前方に障害物がなかったり(ステップS20のNo)、前方が坂道でないとき(ステップS22のNo)は、ECU320では、空走制御プログラム322によって空走機構100をOFFとする制御信号が空走制御アクチュエータ166に出力される。これにより、空走制御アクチュエータ166は、図1(B)に示すOFFの状態となり(ステップS26)、エンジン130の駆動力は車軸204に伝達されない(図6(B)参照)。すなわち、自動車は惰性で走行する空走状態となり、エンジン130は無負荷となってアイドリング状態となる。このため、エンジン130の燃料消費や排気ガスの排出量が低減されるようになり、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることができる。また、図3(B)のように、モータ230を駆動源とするときは、モータ230を完全に停止させることができ、無駄なエネルギー消費を抑制することができる。
【0027】
次に、時刻Td以降については、再び加速されるので、上述した時刻TaからTbまでと同様となり、エンジン130の駆動力が車軸204に伝達され、自動車は加速されることとなる。
【0028】
以上のように、本実施例によれば、空走機構100の外側ロータ110と内側ロータ150を、永久磁石を利用して構成するとともに、平坦な道路を直進中に減速する際に空走機構100をOFFとして、空走を行うようにしたので、簡便な構成でありながら、エネルギーの有効利用を図ることができ、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることができる。
【実施例0029】
次に、図7図9も参照しながら、本発明のクラッチ装置の実施例2について説明する。図7には、本実施例の機械的構成が示されており、同図(A)は駆動力が入力軸から出力軸に伝達される「ON」の状態であり、同図(C)は駆動力が入力軸から出力軸に伝達されない「OFF」の状態を示す。また、図8は、図7(C)の矢印F8方向から見た様子を示す図である。これらの図に示すように、本実施例2は、上述した空走機構100の出力側に、衝撃軽減機構500を設けた例である。衝撃軽減機構500は、従動シャフト154に取り付けられている回転盤510を中心に構成されており、回転盤510の前後に、従動シャフト154,出力シャフト155に沿って軸方向にスライドするスライド体520,530がそれぞれ設けられている。従動シャフト154と出力シャフト155は、図7(B)に示すように、摩擦材156を介して係合しており、一定以上の力が作用すると、両者が滑るようになっている。これにより、後述する動作が円滑に行われるようになっている。
【0030】
回転盤510は、従動シャフト154を回転軸とする回転制御ギア512が設けられており、リバース駆動部600の制御駆動力が伝達されるようになっている。すなわち、リバース駆動部600のリバースモーター602の回転軸の駆動力がリバースクラッチ604,制御駆動ギア606を介して、回転制御ギア512に伝達されるようになっている。
【0031】
上述したスライド体520には、複数の腕522が揺動可能に設けられており、これら腕522の先端にはローラ524が設けられている。また、他のスライド体530には、複数の腕532が揺動可能に設けられており、これら腕532の先端にはローラ534が設けられている。一方、回転盤510の表裏には、凹部514,516がそれぞれ設けられており、上述したローラ524,534が径方向にスライドするようになっている。
【0032】
回転盤510の入力側の凹部514では、スライド体520が従動シャフト154に沿ってスライドすることで、腕522が支点522Cを中心として径方向に開いたり閉じたりする動作が行われるようになっている。図7(A)に示す「ON」状態では閉じており、同図(B)に示す「OFF」状態では開いている。一方、回転盤510の出力側の凹部516では、スライド体530が従動シャフト154に沿ってスライドすることで、腕532が支点532Cを中心として径方向に開いたり閉じたりする動作が行われるようになっている。図7(A)に示す「ON」状態では閉じており、同図(C)に示す「OFF」状態では開いている。
【0033】
スライド体520,530は、レバー526,536によって、従動シャフト154の方向に、スプラインに沿ってスライドするようになっており、レバー526,536は、アクセルペダルの動きに連動するアクセルレバー610にワイヤーなどで接続されている。図7(A)に示すように、アクセルペダルが踏まれているONの状態では、図7(A)に示すようにスライド体520,530がいずれも閉じており、アクセルペダルが踏まれていないOFFの状態では、同図(C)に示すようにスライド体520,530がいずれも開くようになっている。
【0034】
次に、本実施例では、図4に示すように、上述したリバース駆動部600のリバースモーター602やリバースクラッチ604の他に、エアバックセンサ700等がECU320に接続されている。エアバックセンサ700は、エアバックが動作したかどうかを検知するセンサである。ジャイロセンサ702は、前後,左右,上下の各方向に対する回転ないし向きを検知したり、加速度を検知するセンサである。車間レーダ704は、前方を走行する車両との距離を検知するセンサである。ABS(Antilock Brake System)アクチュエータ706は、ABSを動作させるためのものである。
【0035】
図3(C)には、上述した衝撃軽減機構500を含む動力伝達系統の全体が示されており、エンジン130とミッション機構202との間に空走機構100と衝撃軽減機構500が設けられており、衝撃軽減機構500にリバース駆動部600が設けられた構成となっている。
【0036】
次に、図9のフローチャートも参照して本実施例の動作を説明すると、まず、図6に示した加速時及び走行時(Ta~Tc)では、図7(A)に示すように空走機構100がONの状態となり(ステップS30のYes)、スライド体520,530が回転盤510から離れた状態となる。このため、腕522,532は、いずれも閉じた状態となる。このため、衝撃軽減機構500は動作していないOFFの状態となる(ステップS32)。
【0037】
これに対し、図6に示した減速時(Tc~Td)では、図7(C)に示すように空走機構100がOFFの状態となり(ステップS30のNo)、アクセルペダルが離されてアクセルレバー610が回動する。このため、スライド体520,530が回転盤510に徐々に近づくようになり、腕522,532は、いずれも徐々に開いていく。すると、回転盤510の外側で腕522,532を引っ張るようになり、図7(A)の場合と比較して、トルクが増大し、回転数が遅くなる方向に作用し、ONの状態となる(ステップS34)。このため、空走機構100がOFFになったときの衝撃が軽減され、スムーズに空走状態に移行することができる。
【0038】
以上の動作時において、エアバックセンサ700でエアバック動作が検知されたとき(ステップS36のYes),ジャイロセンサ702で姿勢や加速度が一定以上変化したことが検知されたとき(ステップS38のYes),車間レーダ704により前方車両との距離が一定以下となったことが検知されたとき(ステップS40のYes),ABSアクチュエータ706によりABS動作が検知されたとき(ステップS42のYes)は、衝撃軽減プログラム722(図4参照)によってリバース駆動部600がONとなる(ステップS44)。すなわち、リバースクラッチ604がONとなるとともに、リバースモーター602が駆動される。このため、回転盤510の強制停止が行われ、従動シャフト154も回転停止し、自動車は停止する。
【0039】
このように、本実施例によれば、空走機構100に衝撃軽減機構500を付加することとしたので、
a,空走機構100のON・OFF切替時の衝撃が軽減される。
b,緊急時において自動車を停止させることができ、自動ブレーキとして機能する。
といった効果が得られる。
【実施例0040】
次に、図10図14を参照しながら、本発明の衝突緩和機構の実施例について説明する。本実施例は、自動車の衝突時における衝撃を緩和することを目的としたものである。図10において、駆動源であるエンジン(ないしモーター)130の駆動軸12は、適宜のクラッチ装置20を介して、本実施例の衝突緩和機構800に接続されている。衝突緩和機構800は、高負荷ボールクラッチ810と、逆転用高負荷多板クラッチ850を備えている。
【0041】
これらのうち、クラッチ装置20としては、公知の各種のものを適用してよいが、上述した実施例1の空走機構100を用いてもよい。高負荷ボールクラッチ810は、駆動力伝達環820と、スライド体830によって構成されている。駆動力伝達環820は、駆動軸12に接合されており、入力側伝達環822と出力側伝達環824とによって構成されている。このうち、入力側伝達環822は駆動軸12とともに回転する。一方、出力側伝達環824は、正転・逆転自在となっており、スライド体830の位置に応じて正転・逆転するようになっている。入力側伝達環822には、回転軸方向に沿ったボールレール822Aが複数設けられている。また、出力側伝達環824には、徐々に回転軸に直交する方向に向かって開くボールレール824Aが複数設けられている。ボールレール822A,824Aのいずれも、回転軸の周方向に等間隔に設けられている。
【0042】
一方、スライド体830は、入力側(エンジン側)環状ボール保持部832と、出力側環状ボール保持部834を備えている。入力側環状ボール保持部832は、内側に複数のボール832Aが前記ボールレール822Aに対応して設けられており、バネ832Bによってレール側に付勢されている。一方、反対の出力側環状ボール保持部834は、内側に複数のボール834Aが前記ボールレール824Aに対応して設けられており、バネ834Bによってレール側に付勢されている。そして、これら環状ボール保持部832,834の間には、衝突緩和レバー836が設けられており、ボールクラッチアクチュエータ838によって駆動されるようになっている。
【0043】
スライド体830の入力側環状ボール保持部832のボール832Aは、前記ボールレール822Aに当接している。前記出力側環状ボール保持部834のボール834Aは、スライド体830の位置に応じて、前記ボールレール824Aに当接するようになっている。図10の位置では、ボール834Aはボールレール824Aに当接しているが、後述する図12図13では当接していない。
【0044】
次に、上述した駆動力伝達環820の入力側伝達環822には、慣性吸収ギア機構840が設けられている。慣性吸収ギア機構840は、前記駆動力伝達環820の入力側伝達環822の外周に設けられたギア842と、これに歯合するギア844と、ギア844の回転軸844Aに設けられたギア846と、これに歯合するギア848とによって構成されており、逆転用高負荷多板クラッチ850に接続されている。慣性吸収ギア機構840は、駆動軸12が回転すれば動作し、ギア842→ギア844→ギア846→ギア848→逆転用高負荷多板クラッチ850の順に駆動力が伝達される。
【0045】
通常は逆転用高負荷多板クラッチ850がOFFであるが、後述するように衝突が検知されて逆転用高負荷多板クラッチ850がONとなると、駆動軸12の回転が逆転用高負荷多板クラッチ850を介して、回生・後退モーター864が大きな回転数で回転するように、別言すればより大きな回生負荷がかかって慣性が吸収されるように、前記各ギアのギア比が設定されている。
【0046】
逆転用高負荷多板クラッチ850は、高負荷に耐えられるように多板式となっており、逆転レバー852によって、ON・OFF(入・切)の切り替えが行われるようになっている。逆転レバー852は、多板クラッチアクチュエーター854によって駆動されるようになっている。図10は、逆転用高負荷多板クラッチ850がOFFの状態を示す。
【0047】
一方、前記駆動力伝達環820の出力側伝達環824には、駆動力の出力軸14が設けられている。この出力軸14が自動車のタイヤ側に接続されており、駆動力が伝達されるようになっている。出力側伝達環824は、上述したように正転・逆転自在となっており、従って、出力軸14も正転・逆転する。出力軸14には、逆転機構860が設けられている。逆転機構860は、前記出力軸14に設けられたギア862と、これを逆転方向に駆動する回生・後退モーター864及びギア861と、前記逆転用高負荷多板クラッチ850の出力を伝達するギア866とによって構成されている。そして、回生・後退モーター864の逆回転は、ギア861,862により、回転数は小さいものの、大きなトルクとなるように、出力軸14に伝達されるようになっている。
【0048】
ここで、以上のような構成の高負荷ボールクラッチ810の動作を説明すると、スライド体830は、通常図10に示す位置となっている。すなわち、駆動軸12の駆動力は、駆動力伝達環820の入力側伝達環822→ボールレール822A→ボール832A→スライド体830の入力側環状ボール保持部832→出力側環状ボール保持部834→ボール834A→ボールレール824A→出力側伝達環824→出力軸14の順に伝達される。すなわち、高負荷ボールクラッチ810はONの状態である。一方、ボールクラッチアクチュエータ838が駆動されると、衝突緩和レバー836により、スライド体830が図12ないし図13に示すようにスライドする。すると、出力側環状ボール保持部834のボール834Aが、出力側伝達環824のボールレール824Aがら離脱する。このため、高負荷ボールクラッチ810はOFFの状態となる。
【0049】
図11には、本実施例の衝突緩和制御装置870が示されており、ECU872には、上述したクラッチ装置20,車速センサ304,ボールクラッチアクチュエータ838,多板クラッチアクチュエータ854,回生・後退モーター864の他に、衝突検知センサ874が接続されている。そして、ECU872には、衝突緩和プログラム876が用意されている。これがECU872で実行されると、図11(B)に示す動作が行われる。
【0050】
次に、図12及び図13も参照しながら、本実施例の動作を説明する。通常の走行時は、図10に示すように、クラッチ装置20がON,高負荷ボールクラッチ810がON,逆転用高負荷多板クラッチ850がOFF,となっている。このため、エンジン130の駆動力は、駆動軸12→クラッチ装置20→高負荷ボールクラッチ810→出力軸14に伝達される。このような走行状態において、衝突事故が発生し、これが衝突検知センサ874で検知されると(図11(B),ステップS800のYes)、衝突緩和プログラム876を実行しているECU872は、クラッチ装置20をOFFとするとともに(ステップS802)、高負荷ボールクラッチアクチュエータ838及び高負荷多板クラッチアクチュエータ854を駆動する(ステップS804)。これにより、ドライバがアクセルを踏み続けていたとしても、クラッチ装置20がOFFとなるため、エンジン130の駆動力は伝達されない。また、図12に示すように、高負荷ボールクラッチ810がONからOFFとなるとともに、逆転用高負荷多板クラッチ850がOFFからONとなる。
【0051】
すると、図12に示すように、駆動軸12の駆動力は、慣性吸収ギア機構840を介して逆転用高負荷多板クラッチ850に伝達される。すると、駆動力は、ギア866を介してギア862に伝達され、慣性が吸収されて出力軸14を低速回転させるように作用する(ステップS806)。一方、ギア862が回転すると、回生・後退モーター864も回転し、いわゆる回生駆動も行われるようになる。これらのため、出力軸14は、急激に回転数が低下し、正転状態から回転停止状態となる。すなわち、駆動軸12は、慣性吸収ギア機構840→逆転用高負荷多板クラッチ850→逆転機構860の作用によって急速に停止する。そして、車速センサ304により車速=「0」になったことが検知されると(ステップS808のYes)、ECU872は、図13に示すように、回生・後退モーター864を駆動し(ステップS810)、出力軸14を数秒間逆転駆動した後(ステップS812)、回生・後退モーター864の駆動を停止する。例えば、衝突時の速度が50km/hのときは5sec逆転し、40km/hのときは4sec逆転するといった具合である。このとき、上述したように、回生・後退モーター864の逆回転は、ギア861,862により、回転数は小さいものの、大きなトルクとなるように設定されているので、出力軸14は大きなトルクで逆回転する。これにより、自動車は、数秒間後退した後、停止する(ステップS814)。なお、回生・後退モーター864の逆転駆動とともに、逆転用高負荷多板クラッチ850は、OFFとなる。
【0052】
図14には、本実施例の衝突緩和機構800の動作時における車速の変化の様子が示されている。グラフGA~GEは、それぞれ速度10,20,30,40,50kmで走行している状態で、時刻TAにて衝突が検知されたとすると急減速が行われ、時刻TBに速度「0」となる。その後速度がマイナスとなって後退し、時刻TCで再び速度「0」となって停止する。図示の例では、速度10kmでは1秒間後退,20kmでは2秒間後退,30kmでは3秒間後退,40kmでは4秒間後退,50kmでは5秒間後退となっている。
【0053】
以上のように、本実施例によれば、
a,衝突を検知すると、急減速して自動車を停止させる。
b,停止後、今度は自動車を後退させる。
c,数秒間後退した後、再び自動車を停止させる。
これにより、自動車は、衝突した時点から急ブレーキがかかり、更に多少バックして停止することになり、更なる衝突事故の拡大が低減されるようになり、衝突による被害が緩和される。
【実施例0054】
次に、図15図20を参照しながら、本発明の実施例4について説明する。図15に示すように、本実施例では、上述した空走機構100,衝撃軽減機構501,衝突緩和機構800を備えている。なお、衝撃軽減機構501は、前記実施例と比較して、回転盤510の凹部517が回転制御ギア512と独立して回転するようになっており、また、リバース駆動部600の代わりに連結ギア部650が設けられている。連結ギア部650の一次側のギア652は回転制御ギア512に歯合しており、二次側のギア654はスライド体530に設けられた駆動ギア656に歯合している。また、回転制御ギア512に対して駆動ギア656が増速で回転するように、ギア652,654のギア比が設定されている。
次に、本実施例の全体動作を説明する。図20には、その様子が示されている。なお、動作状態を示す図15図19において、太線が駆動力の伝達経路を示している。
(1)低速・低回転大トルク時:この場合、図15に示すように、空走機構100はON,衝撃軽減機構501はON,衝突緩和機構800は走行状態となっている。すなわち、空走機構100をONとしたときの衝撃が軽減された状態で、走行が行われる。
(2)中速・中回転時:図16に示すように、空走機構100はON,衝撃軽減機構501は連結ギア部650の作用によりスライド体530がスライドし、入力側がONで出力側がOFFとなっており、衝突緩和機構800は走行状態となっている。すなわち、図7(A)と(B)の中間の状態となっており、衝撃を緩和しつつ、加速が行われる。
(3)高速・高回転時:図17に示すように、空走機構100はON,衝撃軽減機構501はOFF,衝突緩和機構800は走行状態となっている。
(4)慣性及び回生発電時:図18に示すように、空走機構100はOFF,衝撃軽減機構501はON,衝突緩和機構800は回生動作状態となっている。すなわち、空走機構100がOFFとなったことの衝撃が衝撃軽減機構501で緩和される。一方、従動シャフト154の回転は、回生・後退モーター864に伝達されて回生・発電が行われ、出力軸14の回転数が低下して、やがて停止する。
(5)衝撃緩和逆回転時:図19に示すように、空走機構100はOFF,衝撃軽減機構501はON,衝突緩和機構800は逆転状態となっている。すなわち、回生・後退モーター864が回転を開始し、出力軸14が逆回転するようになる。衝撃軽減機構501がONとなっていることから、逆回転開始の衝撃が軽減される。そして、一定時間の逆転による後退の後、自動車は停止する。
【0055】
このように、本実施例によれば、空走機構100,衝撃軽減機構501,衝突緩和機構800を接続することとしたので、衝突緩和時の衝撃も軽減することができる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した外側ロータ110の磁石112や、内側ロータ150の磁石152としては、Nd-Fe-B(ネオジム-鉄-ホウ素)磁石などの希土類磁石が好適な例であるが、各種の磁石を使用してよい。
(2)前記実施例では、内側ロータ150の周囲に複数の外側ロータ110を設けたが、外側ロータ110を円筒状に形成し、その内側に磁石を配置するようにしてもよい。また、外側ロータ110と内側ロータ150のいずれをエンジン130側に接続するかも任意である。
(3)前記実施例で示した空走制御アクチュエータ166その他のアクチュエータとしては、電気式,油圧式など、各種の公知の技術を用いてよい。
(4)前記実施例で示した各種スイッチとON,OFFの関係は逆であってもよい。例えば、前記例では、アクセルペダルが踏まれたときにアクセルスイッチ302がONとなるようにしたが、逆にアクセルペダルが踏まれたときにアクセルスイッチ302をOFFとしても、アクセルペダルが踏まれているかどうかを検知することができる。他のスイッチについても同様である。
(5)前記実施例では、自動車全体の動作を制御するECU320に空走制御プログラム322等を設けたが、別途制御装置を設けるようにしてもよい。
(6)図5に示したフローチャートも一例であり、安全に空走可能な状況を検知できれば、各種の手順を適用してよい。例えば、道路の傾斜がわずかな場合や、多少のカーブがあるような場合は、空走しても差支えないものと考えられる。
(7)本発明の空走機構等を、自動車が本来備えているクラッチ機構200やミッション機構202に内装するようにしてもよい。
(8)前記実施例3もしくは4において、前記高負荷ボールクラッチ810のスライド体830のスライド方向(図10の右方向)が自動車の進行方向と一致していると、衝突時にスライド体830がスライドしやすくなり、前記高負荷ボールクラッチ810がOFFになりやすいという利点がある。
(9)前記実施例では、衝突検知センサ874によって衝突を検知したが、前方カメラないし赤外線センサによって検知するようにしてもよい。
(10)衝突時の車両の横転による傾きやスピンをジャイロセンサで検知し、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)ブレーキを作動させるようにしてもよい。
(11)本発明は、自動車が好適な適用例であるが、電車,船舶など、各種の移動体に適用してよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、衝突を検知したときに急減速を行うとともに、停止後後退を行って停止することとしたので、更なる衝突事故の拡大が低減されるようになり、衝突が緩和される。また、空走機構により、安全に空走可能な状態を空走制御装置で検出して空走を行うようにしたので、簡便な構成でありながら、エネルギーの有効利用を図ることができ、燃費の向上や環境負荷の低減を図ることができ、自動車などに好適である。
【符号の説明】
【0058】
12:駆動軸
14:出力軸
20:クラッチ装置
100:空走機構
110:外側ロータ
112,152:磁石
114:回転軸
120:ギア機構
130:エンジン
132:駆動シャフト
134:主ギア
136:従ギア
150:内側ロータ
154:従動シャフト
155:出力シャフト
156:摩擦材
160:スライド機構
162:レバー
164:バネ
166:空走制御アクチュエータ
200:クラッチ機構
202:ミッション機構
204:車軸
230:モータ
300:空走制御装置
302:アクセルスイッチ
304:車速センサ
306:ブレーキスイッチ
308:ハンドル舵角センサ
310:変速位置スイッチ
312:前方障害物感知センサ
314:路面角度センサ
320:ECU
322:空走制御プログラム
500,501:衝撃軽減機構
510:回転盤
512:回転制御ギア
514,516,517:凹部
520,530:スライド体
522,532:腕
522C,532C:支点
524,534:ローラ
526,536:レバー
600:リバース駆動部
602:リバースモーター
604:リバースクラッチ
606:制御駆動ギア
610:アクセルレバー
650:連結ギア部
652,654:ギア
656:駆動ギア
700:エアバックセンサ
702:ジャイロセンサ
704:車間レーダ
706:ABSアクチュエータ
722:衝撃軽減プログラム
800:衝突緩和機構
810:高負荷ボールクラッチ
820:駆動力伝達環
822:入力側伝達環
822A,824A:ボールレール
824:出力側伝達環
830:スライド体
832,834:環状ボール保持部
832A,834A:ボール
832B,834B:バネ
836:衝突緩和レバー
838:ボールクラッチアクチュエータ
840:慣性吸収ギア機構
842,844:ギア
844A:回転軸
846,848:ギア
850:逆転用高負荷多板クラッチ
852:逆転レバー
854:多板クラッチアクチュエーター
860:逆転機構
861,862:ギア
864:回生・後退モーター
866:ギア
870:衝突緩和制御装置
872:ECU
874:衝突検知センサ
876:衝突緩和プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20