(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043991
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】更生体および更生方法
(51)【国際特許分類】
B29C 63/30 20060101AFI20220309BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
B29C63/30
F16L1/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114333
(22)【出願日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2020149220
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000225740
【氏名又は名称】南部化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】関根 吉史
(72)【発明者】
【氏名】石橋 秀晃
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA17
4F211SC03
4F211SD01
4F211SD19
4F211SJ22
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを含む更生体として、既設の管状構造物に対する更生パネルの固定強度を高めることができる更生体を得ること。
【解決手段】本発明の更生体100は、既設の管状構造物の内周面を更生する更生体であり、複数の支持具120と、複数の更生パネル110とを備え、複数の支持具120の各々は、内周面に固定することが可能であるように構成されており、複数の支持具120の各々は、複数の更生パネル110のうちの少なくとも1つの更生パネル110を支持することが可能であるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の管状構造物の内周面を更生する更生体であって、
前記更生体は、
複数の支持具と、
複数の更生パネルと
を備え、
前記複数の支持具の各々は、前記内周面に固定することが可能であるように構成されており、前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルを支持することが可能であるように構成されている、更生体。
【請求項2】
前記複数の支持具の各々は、
前記少なくとも1つの更生パネルを支持する支持機構と、
前記内周面と前記少なくとも1つの更生パネルとの間の距離を調整可能な調整機構と
を備える、請求項1に記載の更生体。
【請求項3】
前記支持機構は、
前記内周面に固定される基部と、
前記少なくとも1つの更生パネルに係合するための第1の係合部と、
前記第1の係合部を前記基部に連結するための第1の連結部と
を備える、請求項2に記載の更生体。
【請求項4】
前記複数の支持具の各々は、隣接する他の支持具に連結するための第2の連結部を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の更生体。
【請求項5】
前記複数の支持具の各々は、
ベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられた複数の係合部材と、
前記ベース部材を前記内周面に固定するための固定部材と
を含み、
前記複数の係合部材の各々は、前記複数の更生パネルのいずれかと係合可能な部材である、請求項1に記載の更生体。
【請求項6】
前記ベース部材のうちの前記内周面に対向する面には補強シートが設けられている、請求項5に記載の更生体。
【請求項7】
前記複数の更生パネルは第3の更生パネルを含み、前記第3の更生パネルは、他の更生パネルの一部を介して隣接する前記支持具に係合するものであり、
前記複数の支持具のうちの前記特定の更生パネルが係合している隣接する前記支持具を接続する接続部材、前記第3の更生パネルの裏面側に形成されたリブに当接する当接片を有している、請求項5または6に記載の更生体。
【請求項8】
前記複数の更生パネルの各々は、前記内周面に沿った内周方向の両端部に、隣接する他の更生パネルに係合するための第2の係合部を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の更生体。
【請求項9】
前記複数の更生パネルは、
1つ以上の第1のパネルと、
1つ以上の第2のパネルと、
1つ以上の第3のパネルと
を含み、
前記1つ以上の第1のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記内周面に沿った内周方向の一方の端部に形成された第1の溝部と、前記内周方向の他方の端部に形成された第2の溝部とを有し、
前記1つ以上の第2のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記内周方向の一方の端部に形成された第3の溝部と、前記内周方向の他方の端部に形成された第1の突出部とを有し、
前記1つ以上の第3のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記内周方向の一方の端部に形成された第2の突出部と、前記内周方向の他方の端部に形成された第3の突出部とを有し、
前記第1のパネルと前記第2のパネルと前記第3のパネルとは、前記内周方向に所定の順序で配列されている、請求項8に記載の更生体。
【請求項10】
前記第2のパネルの第1の突出部は、前記第1のパネルの前記第1の溝部に係合可能に構成されており、
前記第3のパネルの前記第2の突出部は、前記第1のパネルの前記第2の溝部と係合可能に構成されており、
前記3のパネルの前記第3の突出部は、前記第2のパネルの前記第3の溝部と係合可能に構成されている、請求項9に記載の更生体。
【請求項11】
前記複数の更生パネルは、1つ以上の第4のパネルをさらに含み、
前記1つ以上の第4のパネルは、第1の板状片と第2の板状片とを含み、前記両板状片の表面が鈍角となる前記第1の板状片の一方の長辺と第2の板状片の一方の長辺とが接合された屈曲板部を有し、
前記1つ以上の第4のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記屈曲板部における前記内周面に沿った内周方向の一方の端部に形成された第4の溝部と、前記屈曲板部における前記内周方向の他方の端部に形成された第4の突出部とを有する、請求項10に記載の更生体。
【請求項12】
前記第4のパネルの前記第4の突出部は、前記第2のパネルの前記第3の溝部に係合可能に構成されており、
前記第4のパネルの前記第4の溝部は、前記第2のパネルの前記第1の突出部に係合可能に構成されている、請求項11に記載の更生体。
【請求項13】
前記第3の更生パネルは、前記第1の更生パネルあるいは前記第2の更生パネルの一部を介して隣接する前記支持具に係合されており、
前記複数の支持具のうちの前記第3の更生パネルが係合している隣接する前記支持具を連結する部分には、前記第3の更生パネル)の裏面側に形成されたリブに当接する当接片を含む規制部材が取り付けられている、請求項8~12のいずれか一項に記載の更生体。
【請求項14】
前記複数の更生パネルの各々は、長方形の形状を有し、前記複数の更生パネルは、前記長方形の長辺が前記管状構造物の軸方向に沿って延び、かつ、前記長方形の短辺が前記内周面に沿った内周方向に沿って延びるように配列されており、
前記複数の更生パネルの各々に対して前記長方形のサイズは同一である、請求項1~13のいずれか一項に記載の更生体。
【請求項15】
前記更生パネルは、グラスファイバーを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の更生体。
【請求項16】
前記内周面に接着される炭素繊維を含む補強プレートをさらに備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の更生体。
【請求項17】
前記複数の更生パネルのうちの前記管状構造物の軸方向に並ぶ隣接する更生パネルの隙間には、電熱線を含む目地材が充填されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の更生体。
【請求項18】
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
前記内周面に複数の支持具を固定することと、
複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることと
を含み、
前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルを支持することが可能であるように構成されている、方法。
【請求項19】
前記複数の支持具の各々は、隣接する他の支持具に連結するための第2の連結部を有し、
前記内周面に前記複数の支持具を取り付けることは、
前記複数の支持具のうちの2以上の支持具を前記第2の連結部を介して連結することにより1つ以上の支持具連結体を形成することと、
前記1つ以上の支持具連結体の各々に含まれる前記複数の支持具のうちの一端に位置する先頭支持具を、前記内周面の所定位置に固定することと、
前記先頭支持具の隣に位置する支持具から前記複数の支持具のうちの他端に位置する最終支持具までを前記内周面の方向に沿って前記支持具連結体での前記複数の支持具の配列ピッチで固定することと
を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記複数の支持具の各々は、
前記複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルに係合可能な第1の係合部と、
前記少なくとも1つの更生パネルと前記内周面との間隔を調整可能な調整機構と
を備え、
前記複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることは、
前記調整機構により前記少なくとも1つの支持具で前記少なくとも1つの更生パネルと前記内周面との間隔を調整することを含む、請求項18または請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の更生パネルの各々は、前記内周方向の両端部に、隣接する他の更生パネルに係合するための第2の係合部を備え、
前記複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることは、
前記複数の更生パネルの各々を、前記第2の係合部を介して隣接する前記他の更生パネルに係合することを含む、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
ステップ1:前記内周面を、前記既設の管状構造物の内周方向に沿って並ぶ複数の分割更生面に仮想的に分割することと、
ステップ2:前記複数の分割更生面のうちの1つに複数の支持具を固定すること、
ステップ3:前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることと、
ステップ4:前記分割更生面と前記複数の更生パネルとの間に充填材を注入することと
を含み、
前記ステップ2~前記ステップ4を、前記内周方向に沿って並ぶ前記複数の分割更生面で繰り返し行うことにより、前記内周面の更生を行う、方法。
【請求項23】
前記ステップ4は、前記充填材を注入する前に前記更生パネルの縁と前記分割更生面との隙間をシールする工程を含み、
前記隙間をシールする工程は、
前記隙間に軟質部材を配置することと、
止水冶具を用いて前記軟質部材を変形させて前記隙間をシールすることと
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記止水冶具を用いて前記軟質部材を変形させることは、
前記止水冶具で前記軟質部材を前記管状構造物の内周方向とその軸方向との両方向から前記隙間に押し付けることを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることとは(
図22(a))、
前記環状構造物の軸方向に更生パネルを配置することと、
前記環状構造物の軸方向に並ぶ隣接する更生パネルの間の隙間をシールすることと
を含み、
前記隣接する更生パネルの間の隙間をシールすることは、
前記更生パネルの隙間に、電熱線を含む目地材を充填することと、
前記電熱線への通電により前記目地材を前記隣接する更生パネルに融着させることにより、前記隣接する更生パネル同士を固定することと
を含む、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記更生パネルは、樹脂製パネルである、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の管状構造物の更生に用いる更生体およびこの更生体を用いて既設の管状構造物の内周面を更生する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、老朽化した下水管などの既設管(既設の管状構造物であってもよい)に対しては、これを新たな配管に取り換える工事が大がかりなものとなることから、既設管を補強したり修復したりする工事が行われている。
【0003】
このような工事には、老朽化した既設管を新しい管と同等以上の働きをするように改良する更生工法が用いられている。
【0004】
更生工法の一例として、修復用部材として熱可塑性樹脂製の平板状の長尺体を既設管の内面に沿って管状に設置し、この修復部材からなる管と既設管との隙間に充填材(例えば、モルタル、コンクリートなど)を充填して既設管を更生する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを含む更生体として、既設の管状構造物に対する更生パネルの固定強度を高めることができる更生体を得ること、およびこのような更生体を用いて既設の管状構造物を更生可能とする更生方法、特に6000mmを超える大断面の既設管(管きょ)に対応可能な更生方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
既設の管状構造物の内周面を更生する更生体であって、
前記更生体は、
複数の支持具と、
複数の更生パネルと
を備え、
前記複数の支持具の各々は、前記内周面に固定することが可能であるように構成されており、前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルを支持することが可能であるように構成されている、更生体。
(項目2)
前記複数の支持具の各々は、
前記少なくとも1つの更生パネルを支持する支持機構と、
前記内周面と前記少なくとも1つの更生パネルとの間の距離を調整可能な調整機構と
を備える、項目1に記載の更生体。
(項目3)
前記支持機構は、
前記内周面に固定される基部と、
前記少なくとも1つの更生パネルに係合するための第1の係合部と、
前記第1の係合部を前記基部に連結するための第1の連結部と
を備える、項目2に記載の更生体。
(項目4)
前記複数の支持具の各々は、隣接する他の支持具に連結するための第2の連結部を有する、項目1~3のいずれか一項に記載の更生体。
(項目5)
前記複数の支持具の各々は、
ベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられた複数の係合部材と、
前記ベース部材を前記内周面に固定するための固定部材と
を含み、
前記複数の係合部材の各々は、前記複数の更生パネルのいずれかと係合可能な部材である、項目1に記載の更生体。
(項目6)
前記ベース部材のうちの前記内周面に対向する面には補強シートが設けられている、項目5に記載の更生体。
(項目7)
前記複数の更生パネルは第3の更生パネルを含み、前記第3の更生パネルは、他の更生パネルの一部を介して隣接する前記支持具に係合するものであり、前記複数の支持具のうちの前記第3の更生パネルが係合している隣接する前記支持具を接続する接続部材は、前記第3の更生パネルの裏面側に形成されたリブに当接する当接片を有している、項目5または6に記載の更生体。
(項目8)
前記複数の更生パネルの各々は、前記内周面に沿った内周方向の両端部に、隣接する他の更生パネルに係合するための第2の係合部を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の更生体。
(項目9)
前記複数の更生パネルは、
1つ以上の第1のパネルと、
1つ以上の第2のパネルと、
1つ以上の第3のパネルと
を含み、
前記1つ以上の第1のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記内周面に沿った内周方向の一方の端部に形成された第1の溝部と、前記内周方向の他方の端部に形成された第2の溝部とを有し、
前記1つ以上の第2のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記内周方向の一方の端部に形成された第3の溝部と、前記内周方向の他方の端部に形成された第1の突出部とを有し、
前記1つ以上の第3のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記内周方向の一方の端部に形成された第2の突出部と、前記内周方向の他方の端部に形成された第3の突出部とを有し、
前記第1のパネルと前記第2のパネルと前記第3のパネルとは、前記内周方向に所定の順序で配列されている、項目8に記載の更生体。
(項目10)
前記第2のパネルの第1の突出部は、前記第1のパネルの前記第1の溝部に係合可能に構成されており、
前記第3のパネルの前記第2の突出部は、前記第1のパネルの前記第2の溝部と係合可能に構成されており、
前記3のパネルの前記第3の突出部は、前記第2のパネルの前記第3の溝部と係合可能に構成されている、項目9に記載の更生体。
(項目11)
前記複数の更生パネルは、1つ以上の第4のパネルをさらに含み、
前記1つ以上の第4のパネルは、第1の板状片と第2の板状片とを含み、前記両板状片の表面が鈍角となる前記第1の板状片の一方の長辺と第2の板状片の一方の長辺とが接合された屈曲板部を有し、
前記1つ以上の第4のパネルの各々に含まれる前記第2の係合部は、前記屈曲板部における前記内周面に沿った内周方向の一方の端部に形成された第4の溝部と、前記屈曲板部における前記内周方向の他方の端部に形成された第4の突出部とを有する、項目10に記載
の更生体。
(項目12)
前記第4のパネルの前記第4の突出部は、前記第2のパネルの前記第3の溝部に係合可能に構成されており、
前記第4のパネルの前記第4の溝部は、前記第2のパネルの前記第1の突出部に係合可能に構成されている、項目11に記載の更生体。
(項目13)
前記第3の更生パネルは、前記第1の更生パネルあるいは前記第2の更生パネルの一部を介して隣接する前記支持具に係合するものであり、前記複数の支持具のうちの前記第3の更生パネルが係合している隣接する前記支持具を連結する部分には、前記第3の更生パネルの裏面側に形成された突起部に当接する当接片を含む規制部材が取り付けられている、項目8~12のいずれか一項に記載の更生体。
(項目14)
前記複数の更生パネルの各々は、長方形の形状を有し、前記複数の更生パネルは、前記長方形の長辺が前記管状構造物の軸方向に沿って延び、かつ、前記長方形の短辺が前記内周面に沿った内周方向に沿って延びるように配列されており、
前記複数の更生パネルの各々に対して前記長方形のサイズは同一である、項目1~13のいずれか一項に記載の更生体。
(項目15)
前記更生パネルは、グラスファイバーを含む、項目1~14のいずれか一項に記載の更生体。
(項目16)
前記内周面に接着される炭素繊維を含む補強プレートをさらに備える、項目1~15のいずれか一項に記載の更生体。
(項目17)
前記複数の更生パネルのうちの前記管状構造物の軸方向に並ぶ隣接する更生パネルの隙間には、電熱線を含む目地材が充填されている、項目1~16のいずれか一項に記載の更生体。
(項目18)
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
前記内周面に複数の支持具を固定することと、
複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることと
を含み、
前記複数の支持具の各々は、前記複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルを支持することが可能であるように構成されている、方法。
(項目19)
前記複数の支持具の各々は、隣接する他の支持具に連結するための第2の連結部を有し、
前記内周面に前記複数の支持具を取り付けることは、
前記複数の支持具の2以上の支持具を前記第2の連結部を介して連結することにより1つ以上の支持具連結体を形成することと、
前記1つ以上の支持具連結体の各々に含まれる前記複数の支持具のうちの一端に位置する先頭支持具を、前記内周面の所定位置に固定することと、
前記先頭支持具の隣に位置する支持具から前記複数の支持具のうちの他端に位置する最終支持具までを前記内周面の方向に沿って前記支持具連結体での前記複数の支持具の配列ピッチで固定することと
を含む、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記複数の支持具の各々は、
前記複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルに係合可能な第1の係合部と、
前記少なくとも1つの更生パネルと前記内周面との間隔を調整可能な調整機構と
を備え、
前記複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることは、
前記調整機構により前記少なくとも1つの支持具で前記少なくとも1つの更生パネルと前記内周面との間隔を調整することを含む、項目18または項目19に記載の方法。
(項目21)
前記複数の更生パネルの各々は、前記内周方向の両端部に、隣接する他の更生パネルに係合するための第2の係合部を備え、
前記複数の更生パネルを前記複数の支持具に取り付けることは、
前記複数の更生パネルの各々を、前記第2の係合部を介して隣接する前記他の更生パネルに係合することを含む、項目18~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
既設の管状構造物の内周面を更生する方法であって、
ステップ1:前記内周面を、前記既設の管状構造物の内周方向に沿って並ぶ複数の分割更生面に仮想的に分割することと、
ステップ2:前記複数の分割更生面のうちの1つに複数の支持具を固定すること、
ステップ3:前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることと、
ステップ4:前記分割更生面と前記複数の更生パネルとの間に充填材を注入することと
を含み、
前記ステップ2~前記ステップ4を、前記内周方向に沿って並ぶ前記複数の分割更生面で繰り返し行うことにより、前記内周面の更生を行う、方法。
(項目23)
前記ステップ4は、前記充填材を注入する前に前記更生パネルの縁と前記分割更生面との隙間をシールする工程を含み、
前記隙間をシールする工程は、
前記隙間に軟質部材を配置することと、
止水冶具を用いて前記軟質部材を変形させて前記隙間をシールすることと
を含む、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記止水冶具を用いて前記軟質部材を変形させることは、
前記止水冶具で前記軟質部材を前記管状構造物の内周方向とその軸方向との両方向から前記隙間に押し付けることを含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることとは、
前記環状構造物の軸方向に更生パネルを配置することと、
前記環状構造物の軸方向に並ぶ隣接する更生パネルの間の隙間をシールすることと
を含み、
前記隣接する更生パネルの間の隙間をシールすることは、
前記更生パネルの隙間に、電熱線を含む目地材を充填することと、
前記電熱線への通電により前記目地材を前記隣接する更生パネルに融着させることにより、前記隣接する更生パネル同士を固定することと
を含む、項目18~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記更生パネルは、前記電熱線への通電による発熱により溶融する樹脂製パネルである、項目25に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを含む更生体として、既設の管状構造物に対する更生パネルの固定強度を高めることができる更生体を得ることができる。さらに、このような更生体を用いて既設の管状構造物を更生可能とする更生方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1による更生体100を含む更生管1000の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す更生体100を含む更生管1000の内部の構成を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す支持具120の具体的な構造を説明するための平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す更生パネル110を構成する各種の第1のパネル110a~第4のパネル110dを説明するための斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す第1~第4の各種のパネル110a~110dに対応した継ぎ部材30a~30dを説明するための斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す更生体100が適用される既設管の被更生部10a(R3部分)を示す図である。
【
図7】
図7は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、複数の支持具120を連結する方法を示している。
【
図8】
図8は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、
図7に示す支持具連結体1200を既設管10の被更生部10aに取り付ける方法を示している。
【
図9】
図9は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、既設管10の被更生部10aに補強シート150を取り付けた状態を示す。
【
図10】
図10は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、補強シート150を取り付けた後に、更生パネル110を構成する各種の更生パネル110a~110dを被更生部10aに取り付ける工程を示す。
【
図11】
図11は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、スタートパネル110aを隣接する標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示す。
【
図12】
図12は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、スタートパネル110aに隣接させて標準パネル110bを隣接する標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示す。
【
図13】
図13は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、標準パネル110bに隣接させてコーナーパネル110dを隣接する標準支持具120aおよびコーナー支持具120bに跨って取り付ける様子を示す。
【
図14】
図14は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、コーナーパネル110cに隣接させて標準パネル110bを隣接するコーナー支持具120bおよび標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示す。
【
図15】
図15は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、標準パネル110bに隣接させてコーナーパネル110cを隣接する標準支持具120aおよびコーナー支持具120bに跨って取り付ける様子を示す。
【
図16】
図16は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、エンドパネル110cを標準パネル110bとスタートパネル110aとの間に位置するように、隣接する2つの標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示す。
【
図17】
図17は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、既設管10の被更生部10aの内周面の一周に渡って各種の更生パネルを配置した後に、それぞれの更生パネルに継ぎ部材30a、30b、30c、30dを取り付ける様子を示す。
【
図18】
図18は、既設管10の更生方法を説明するための図であり、既設管10の被更生部10aの内周面と複数の更生パネル110との間にモルタル130を注入する工程を示す。
【
図18A】
図18Aは、実施形態1の更生体100で用いられる、更生パネルが外れるのを抑制するパネル保持具(規制部材)50を説明するための図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態2による更生体200を含む更生管2000を説明するための図である。
【
図20】
図20は、
図19に示す更生体200で用いられる固定器具(支持具)140aの構造を説明するための図である。
【
図21】
図21は、隣接する固定器具140aを接続する接続部材160aの構造を説明するための図であり、更生パネル110cの固定器具140aとの係合の解除を規制する当接片164を示す。
【
図22】
図22は、
図20に示す固定器具140a~140cに更生パネル110a、110b、110dを取り付ける工程を説明するための図である。
【
図23】
図23は、
図22に示す固定器具140a~140cに更生パネル110a、110b、110dが取り付けられた状態を説明するための図である。
【
図24】
図24は、被更生部10aの内周面のうちの更生パネル110a、110b、110dを取り付けた部分をシールする第1の工程を説明するための斜視図である。
【
図25】
図25は、被更生部10aの内周目のうちの更生パネル110a、110b、110dを取り付けた部分をシールする第2の工程を説明するための斜視図である。
【
図26】
図26は、被更生部10aの内周面を4分割して更生体100を形成する方法を説明するための図であり、4分割した内周面の4つの分割更生面S1~S4のうちの第1の分割更生面S1での更生を完了して、第2の分割更生面S2に固定器具140a殻140cおよび更生パネル110b、110dを配置する工程を示す。
【
図27】
図27は、被更生部10aの内周面を4分割して更生体100を形成する方法を説明するための図であり、第2の分割更生面S2での更生が完了して、第3の分割更生面S3に固定器具140a~140cおよび更生パネル110b、110dを配置する工程、および第3の分割更生面S3での更生が完了して、第4の分割更生面S4に固定器具140a~140cおよび更生パネル110b~110dを配置する工程を示す。
【
図27A】
図27Aは、更生済みの第1の分割更生面S1上に位置する更生パネル110と、未更生状態の第1の分割更生面S1上に位置する更生パネル110との間に、電熱線を含む目地材が充填された状態を示す。
【
図28】
図28は、隣接する更生管2001、2002のつなぎ目Jで被更生部10aの軸方向に隣接する更生パネル110の隙間をシールする方法を説明するための図である。
【
図29】
図29は、
図28に示す隣接する更生管2001、2002の間で軸がずれた場合の隣接する更生パネル110シール状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0011】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0012】
本発明は、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを含む更生体として、既設の管状構造物に対する更生パネルの固定強度を高めることができる更生体を得ることを課題とし、
既設の管状構造物の内周面を更生する更生体であって、
更生体は、
複数の支持具と、
複数の更生パネルと
を備え、
複数の支持具の各々は、内周面に固定することが可能であるように構成されており、複数の支持具の各々は、複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルを支持することが可能であるように構成されている、更生体を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0013】
従って、本発明の更生体は、既設の管状構造物の内周面を更生するものであって、既設の管状構造物の内周面に固定可能な複数の支持具を備え、これらの支持具の各々が、複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルを支持可能に構成されているものであれば、その他の構成は特に限定されるものではない。
【0014】
(既設の管状構造物)
既設の管状構造物の内周面の構造は、液体を流す流路として機能する形状であれば、任意であり得る。例えば、既設の管状構造物の内周面は、軸方向に垂直な断面の形状として円形、楕円形、菱形、平行四辺形、多角形四角形(六角形、八角形など)を有するものでもよい。さらに、既設の管状構造物の内周面は、管状構造物の軸方向に垂直な断面の形状として、馬蹄形などの形状を有していてもよい。なお、断面形状を馬蹄形にした既設の管状構造物の内周面は、U字溝のような上面壁が存在しないものであるが、ここでは、既設の管状構造物の内周面の構造は、このような上面壁の存在しない構造も含むものである。
【0015】
既設の管状構造物の材料は、鉄、ステンレスなどの金属材料でもよいし、コンクリート材でも樹脂材でもよい。また、コンクリート製の既設の管状構造物は、鉄筋を含むものでもよいし、金属製あるいは樹脂製の補強シート、炭素繊維で構成された補強シートなどの補強材を含むものでもよい。
【0016】
また、既設の管状構造物は、既設管の一部でもよいし、あるいは、既設管の全体でもよい。
【0017】
なお、以下の説明では、既設管のうちの更生の対象となる一部あるいは全部を既設管の被更生部ともいう。
【0018】
(更生体)
更生体は、既設の管状構造物の内周面を更生するものであって、複数の支持具と複数の更生パネルとを有するものであれば、その他の構成は限定されるものではなく、任意であり得る。
【0019】
(支持具)
支持具は、後述する更生パネルを支持するものであって、既設の管状構造物の内周面に固定されるものである。支持具は複数備える。複数の支持具は、既設の管状構造物の一部あるいは全部(既設管の被更生部)の内周面に固定可能に構成され、複数の更生パネルのうちの少なくとも1つの更生パネルを支持可能なものであればよく、その他の構成は限定されず、任意であり得る。
【0020】
例えば、複数の支持具の各々は、少なくとも1つの更生パネルを支持する支持機構と、管状構造物の内周面と少なくとも1つの更生パネルとの間の距離を調整可能な調整機構とを備えることが好ましい。上述の調整機構を備えることにより、例えば、既設管の被更生部の内周面の一部が凹んでいたり迫り出していたりしていたとしても、内周面と個々の更生パネルとの間の距離を調整することにより、既設管の被更生部の内周面の凸凹に拘わらず、更生パネルの表面が平坦になるように支持することができる。
【0021】
また、支持機構は、既設管の被更生部の内周面に固定される基部と、少なくとも1つの更生パネルに係合するための第1の係合部と、第1の係合部を基部に連結するための第1の連結部とを有するものでもよい。このような構成にすることにより、基部と第1の係合部との連結部に、例えば、着脱可能な締結部材を用いることで、基部と第1の係合部との相対位置を変えてこれらを固定することが可能となり、調整機構を簡単に実現できる。
【0022】
ただし、支持機構は、既設管の被更生部の内周面に固定される基部と、更生パネルに係合するための第1の係合部とが1部品で構成されており、上記のような連結部(基部と第1の係合部との連結部)を含まないものでもよい。この場合、支持機構の構成は簡単なものとなる。
【0023】
第1の係合部は、少なくとも1つの更生パネルに係合可能であれば、その形状・構造などは任意であり得る。
【0024】
さらに、複数の支持具の各々は、隣接する他の支持具に連結するための第2の連結部を有するものでもよい。このようにすることで、複数の支持具をそれぞれ第2の連結部を介して連結して支持具連結体を形成することが可能となる。支持具連結体を形成することで、複数の支持具を既設管の被更生部の内周面に固定する作業がしやすくなる。例えば、複数の支持具を既設管の被更生部の内周面に固定する場合、支持具連結体の端に位置する支持具(先頭の支持具)を既設管の被更生部の内周面に対して位置決めすると、支持具連結体の2番目以降の支持具は、これらが先頭の支持具に繋がっていることから、自動的に既設管の被更生部の内周面に対して位置決めすることが可能となり、作業の効率化を図ることができる。
【0025】
ただし、複数の支持具の各々は、隣接する他の支持具に連結するための第2の連結部を有しないものであって、複数の支持具の各々を個別に既設管の被更生部の内周面に対して位置決めして固定するものでもよいし、あるいは、複数の支持具が予め一体に接合された構造となっていてもよい。
【0026】
このように、複数の支持具を支持具連結体とすることにより、既設管の被更生部の内周面に対する更生パネルの固定強度をより強くすることが可能となる。
【0027】
さらに、複数の支持具は、既設管の被更生部の内周面に沿って一周に渡って環状に配置されることが好ましい。このように複数の支持具を配置することで、さらに、固定強度を高めることが可能となる。また、既設管の被更生部の内周面に沿って配置された複数の更生パネルを複数の支持具で分散して支持することができ、1つの支持具にかかる力を小さくできる。
【0028】
環状に配置された複数の支持具は、既設管の軸方向に沿った複数の位置に設けられていることが好ましい。これにより更生パネルを支持する力をより多くの支持具で分散して受け持つことができ、1つの支持具にかかる力をより低減することができる。
【0029】
複数の支持具は、第1の係合部の構造が異なる複数のタイプの支持具を含んでいてもよい。例えば、後述する管状構造物の内周面のうち、コーナー部に用いられる更生パネルである第4のパネルと係合する場合には、それ以外の部分に用いられる第1~第3のパネルと係合する場合とは異なる形状とするのが好ましい。
【0030】
なぜなら、既設管の被更生部におけるコーナー部分は、その内面が水平から垂直に立ち上がる部分であり、このような部分では、支持具が更生パネルの下側から支持するように更生パネルに対する支持具の配置を変えて、支持具と更生パネルとの嵌合が外れにくくなるようにする必要があるためである。
【0031】
また、複数の支持具では、隣接する支持具の第2の連結部(支持具同士を連結する部分)にパネル保持具(規制部材)が設けられ、このパネル保持具が、支持具の係合部に間接的に他の更生パネルの一部(第2の係合部である線状溝部を介して)係合した状態の更生パネルの係合解除が規制されるように、更生パネルの裏面側に形成されたリブ(例えば、線状リブ)に当接する当接片を有していることが好ましい。更生パネルが間接的に支持具に係合するタイプのパネル(第3の更生パネル)である場合は、このタイプの更生パネルは外れやすいので、上述した当接片を有するパネル保持具を設けることは有意である。
【0032】
さらに、複数の支持具は、上述した構成に限定されず、例えば、複数の支持具の各々は、ベース部材と、ベース部材に取り付けられた複数の係合部材と、ベース部材を内周面に固定するための固定部材とを含み、複数の係合部材の各々は、複数の更生パネルのいずれかと係合可能なユニット化されたもの(固定器具)でもよい。
【0033】
この場合、隣接する固定器具の間には、それぞれのベース部材同士を接続する接続部材が設けられていてもよし、あるいは、このような接続部材は設けられていなくてもよい。
【0034】
さらに、隣接する固定器具の間に接続部材が設けられている場合、接続部材は、係合部材に間接的に(他の更生パネルの係合部である線状溝部を介して)係合した状態の更生パネル(第3の更生パネル)の係合解除が規制されるように、更生パネルの裏面側に形成されたリブ(例えば、線状リブ)に当接する当接片を有していることが好ましい。接続部材がこのような当接片を有することで、係合部材に間接的に係合することで固定器具に固定されている第3の更生パネルが外れにくくなる。
【0035】
また、固定器具は、炭素繊維を含む補強シートをさらに含み、補強シートが、1つのベース部材のうちの内周面に対向する面に設けられていることが好ましい。固定器具がこのような補強シートを含むことで、固定器具を含む更生体の強度を向上することができる。
【0036】
(更生パネル)
複数の更生パネルの各々は、既設管の被更生部の内周面に沿った内周方向の両端部に、隣接する他の更生パネルに係合するための第2の係合部を含むことが好ましい。このようにすることで、複数の更生パネルは隣接するもの同士を隙間なく嵌合係合することが可能となる。その結果、複数の更生パネルで既設管の被更生部の内周面を隙間なく被覆でき、既設管のうちのひび割れあるいは亀裂が形成された部分(被更生部)の内部を流れる流体が被更生部から漏れるのを防止することが可能となる。
【0037】
さらに、隣接する更生パネル同士を嵌合可能な複数のパネルは、構造が異なる複数の種類の更生パネルを含むものでもよい。
【0038】
構造が異なる複数の更生パネルは、例えば、第1~第4の4種類のパネルである。
【0039】
第1のパネルは、パネルが配置されるべき領域の両側に他のパネルが存在しない状態で用いられるパネル(スタートパネル)である。第1のパネルに含まれる第2の係合部は、既設管の被更生部の内周面に沿った内周方向の一方の端部に形成された第1の溝部と、内周方向の他方の端部に形成された第2の溝部とを有する。
【0040】
第2のパネルは、被更生部の内周面にパネルを配置するときに、パネルが配置される領域の両側のうちの一方に他のパネルが存在し、その他方には他のパネルが存在しない状態で被更生部の内周面に配置されるパネル(標準パネル)である。
【0041】
第2のパネルに含まれる第2の係合部は、既設管の被更生部の内周方向の一方の端部に形成された第3の溝部と、内周方向の他方の端部に形成された第1の突出部とを有する。
【0042】
第3のパネルは、被更生部の内周面にパネルを配置するときに、パネルが配置される領
域の両側に他のパネルが存在する状態で用いられるパネル(エンドパネル)である。
【0043】
第3のパネルに含まれる第2の係合部は、既設管の被更生部の内周方向の一方の端部に形成された第2の突出部と、内周方向の他方の端部に形成された第3の突出部とを有する。
【0044】
これらの第1のパネルと第2のパネルと第3のパネルとは、内周方向に所定の順序で配列されるのが好ましい。
【0045】
ここで、第2のパネルの第1の突出部は、第1のパネルの第1の溝部に係合可能に構成されており、第3のパネルの第2の突出部は、第1のパネルの第2の溝部と係合可能に構成されており、第3のパネルの第3の突出部は、第2のパネルの第3の溝部と係合可能に構成されている。
【0046】
第4のパネルは、例えば、角形の筒状体である既設管のコーナー部分に配置されるパネル(コーナーパネル)である。この第4のパネルは、既設管のコーナー部分の形状に合うように、軸方向の中心軸を折り目として屈曲した構造を有する。したがって、既設管の内周面形状が円形状などであった場合は、第4のパネルは用いなくても良い。
【0047】
すなわち、第4のパネルは、第1の板状片と第2の板状片とを含み、両板状片の表面が鈍角をなすように第1の板状片の一方の長辺と第2の板状片の一方の長辺とが接合された屈曲板部を有し、第4のパネルに含まれる第2の係合部は、屈曲板部における内周面に沿った内周方向の一方の端部に形成された第4の溝部と、屈曲板部における内周方向の他方の端部に形成された第4の突出部とを有する。
【0048】
第4のパネルの第4の突出部は、第2のパネルの第3の溝部に係合可能に構成されており、第4のパネルの第4の溝部は、第2のパネルの第1の突出部に係合可能に構成されている。
【0049】
ここで、溝部および突出部は、1つのパネルを他のパネルに隣接するように配置して1つのパネルの突出部を他のパネルの溝部に差し込むことにより嵌合するように構成されている。ただし、隣接するパネル同士が隙間なく嵌合可能なパネルの構造は、限定されるものではなく、上述した第1~第4のパネルの構造以外の構造であってもよい。
【0050】
さらに、上述した各種のパネルは、既設管の被更生部と更生パネルとの間に注入された充填材に埋め込まれるリブを有するものであることが好ましい。これは、更生パネルの一部であるリブが既設管の被更生部と更生パネルとの間に注入された充填材に埋め込まれることにより、更生パネルが充填材から抜けにくくなる効果があり、さらなる固定強度の向上を図ることができる。また、上記リブを支持具の第1の係合部と係合する部分として活用することもあり得る。
【0051】
なお、複数の更生パネルの各々の材質は、任意であり得る。例えば、金属製であってもよいし、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)などの樹脂製であってもよい。また、更生パネルは、強度アップを目的にグラスファイバーや炭素繊維などを含ませてもよい。
【0052】
さらに、複数の更生パネルの各々の形状は限定されるものではないが、複数の更生パネルの各々は、例えば、長方形(短冊状など)の形状を有していてもよい。この場合、複数の更生パネルは、長方形の長辺が管状構造物の軸方向に沿って延び、かつ、長方形の短辺が内周面に沿った内周方向に沿って延びるように配列される。ここで、複数の更生パネ
ルの各々に対して長方形のサイズは同一であるが、異なっていてもよい。複数の更生パネルの各々に対して長方形のサイズは横幅が異なっていてもよいし、長さが異なっていてもよいし、横幅および長さの両方が異なっていてもよい。
【0053】
例えば、1つの実施形態において、長方形からなる更生パネルのサイズは、短辺の長さが約50mm~約200mm、長辺の長さが約2500mm~約3000mmの短冊状である。このようなサイズ・形状とすることにより、既設管のサイズの変化に応じて更生パネルを選択することができ、任意のサイズの既設管に対応することが可能となる。
【0054】
さらに、本発明では、更生体は、複数の更生パネルのうちの管状構造物の軸方向に並ぶ隣接する更生パネルの隙間が電熱線を含む目地材でシールされたものでもよい。この場合、更生体は、管状構造物の軸方向に並ぶ隣接する更生パネルの隙間を、この隙間に充填した目地材を電熱線への通電により更生パネルに融着させることにより簡単かつ高いシール性を達成することが可能な構造となる。
【0055】
また、既設管の被更生部の内周面には、炭素繊維などを含む補強プレートを接着することにより、既設管の被更生部の強度を高めるようにしてもよい。
(充填材)
ここで、充填材は、一般にセメント、水および砂を混合したモルタルである。ただし、充填材はモルタルには限定されず、セメント、水、および砂にさらに砂利を混合したコンクリートでもよいし、あるいは、モルタルに樹脂性混和剤を混ぜた樹脂モルタルでもよい。
【0056】
上述した支持具、更生パネル、および充填材を用いて既設の管状構造物の内周面を構成する方法(更生方法)は、内周面に支持具を固定すること、固定した支持具に更生パネルを取り付けることを含むものであれば、その他の工程は限定されるものではなく、任意であり得る。
【0057】
例えば、この更生方法では、既設の管状構造物の被更生部(既設の管状構造物における更生の対象となる部分)の全周に渡って、支持具の固定および更生パネルの取付けを行った後に、更生パネルと内周面との間に充填材を注入するようにしてもよい。あるいは、この更生方法では、複数の分割更生面(既設の管状構造物の被更生部の内周面を内周方向に仮想的に分割して得られた内周面の領域)の各々毎に支持具の固定、更生パネルの取付け、および充填材の注入を行うことを、内周方向に沿って並ぶ複数の分割更生面で順次繰り返すことにより、被更生部の全周に渡る更生を行ってもよい。
【0058】
本発明では、既設の管状構造物の内周面を更生する方法は、複数のステップ、少なくとも、
ステップ1:内周面を、既設の管状構造物の内周方向に沿って並ぶ複数の分割更生面に仮想的に分割することと、
ステップ2:複数の分割更生面のうちの1つに複数の支持具を固定すること、
ステップ3:複数の支持具に複数の更生パネルを取り付けることと、
ステップ4:分割更生面と複数の更生パネルとの間に充填材を注入することと
を含み、
ステップ2~ステップ4を、内周方向に沿って並ぶ複数の分割更生面で繰り返し行うことにより、内周面の更生を行うものであればよく、その他のステップを含んでいてもよい。
【0059】
さらに、ステップ4は、充填材を充填する前に更生パネルの縁と分割更生面との隙間をシールする工程を含んでいてもよい。
【0060】
さらに、隙間をシールする工程は、隙間に軟質部材(軟質樹脂)を配置することと、軟質部材を治具で隙間に押し付けて変形させて隙間をシールすることとを含んでいてもよい。
【0061】
このように軟質部材と治具とを用いることで、分割更生面と複数の更生パネルの縁との隙間をシールする作業を簡単に行うことができる。また、分割更生面と複数の更生パネルとの間に充填材を注入する作業が終了し、シール部分を除去する際にも、石膏屑等も出ず簡単かつ綺麗に除去することが可能となる。
【0062】
ここで、軟質部材を治具で分割更生面と複数の更生パネルの縁との隙間に押し付けることは、軟質部材を管状構造物の内周方向とその軸方向との両方向から隙間に押し付けることが好ましい。このように2方向から軟質部材を隙間に押し込むことでより確実に隙間を塞ぐことができる。
【0063】
例えば、シール部材である軟質部材としては、軟質な樹脂(例えば、熱可塑性エラストマー樹脂やウレタンゴム、シリコンゴムといったゴム系材料)であり得る。
【0064】
また、既設の管状構造物の内周面で更生パネルを管状構造物の軸方向に配列する場合は、環状構造物の軸方向に隣接する更生パネルの間の隙間をシールすることが行われるが、この際には、更生パネルの隙間に、電熱線を含む目地材を充填し、電熱線への通電により目地材を隣接する更生パネルに融着させることにより、隣接する更生パネル同士を固定することが好ましい。
【0065】
このように電熱線を含む目地材を、環状構造物の軸方向に隣接する更生パネルの間の隙間に充填して電熱線に通電することにより目地材を隣接する更生パネルに融着させると、地震動により隣接する既設管の継手部分で、対向する既設管の被更生部の中心軸がずれた場合でも、隣接する既設管の一方の被更生部に含まれる更生パネルと、隣接する既設管の他方の被更生部に含まれる更生パネルとの隙間が、目地材で塞がれた状態を維持することができる。これにより、隣接する既設管の継手部分で、一方の既設管の被更生部の中心軸と他方の既設管の被更生部の中心軸とのずれにより、一方の既設管の更生体と他方の既設管の更生体との隙間のシールが破損するのを回避できる。
【0066】
また、更生パネルは、樹脂製パネルであることが好ましい。このようにすることで、目地材の熱線への通電による発熱が樹脂パネルにも伝わり、樹脂パネルの一部も溶融させることで強固に接合することが可能となる。
【0067】
なお、以下の実施形態では、既設の管状構造物の内周面に適用された更生体は、更生パネルとして4種類のパネルを含み、支持具として複数種類の支持具を用い、充填材としてモルタルを用いたものを挙げる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0068】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0069】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による更生体100を含む更生管1000の外観を示す斜視図である。
【0070】
この更生管1000は、既設管(図示せず)のうちの更生の対象となる被更生部10aと、被更生部10aの内周面を覆うように配置された更生体100とを含む。更生体100は、被更生部10aの内周面に沿って配置された複数の更生パネル110と、複数の更生パネル110を支持する複数の支持具120とを備えている。ここで、複数の支持具120は、被更生部10aの内周面に固定されている。そして、更生体100は、充填材130により、被更生部10aの内周面にさらに強固に固定される。
【0071】
図2は、
図1に示す更生管1000の内部の構成を示す斜視図であり、
図2(a)は、被更生部10aおよび充填材130を透視して更生管1000の構造を示し、
図2(b)は、
図2(a)における被更生部10aの底面部(R1部分)を拡大して示し、
図2(c)は、
図2(a)における被更生部10aのコーナー部(R2部分)を拡大して示す。
【0072】
この更生管1000では、複数の支持具120が既設管の被更生部10aの内周面の1周に渡って環状に配列されており、さらに、このように環状に配列された複数の支持具120のグループが、既設管10の軸方向(軸方向)に所定の間隔で複数列配置されている。
【0073】
ここでは、複数の支持具120には、複数の更生パネル110(種類の異なる第1~第4のパネル110a~110d)が取り付けられており、これらのパネル110a~110dは、既設管の被更生部10aの内周方向に沿って配列され、かつ、既設管の被更生部10aの軸方向にも配列されている。なお、以下の説明では、4種類のパネルを区別する必要があるときは、第1~第4のパネル110a~110dと記載し、4種類のパネルを区別する必要がないときは、単に更生パネル110と記載する。
【0074】
また、複数の支持具120には、標準支持具120aとコーナー支持具120bとの2種類の支持具が含まれており、コーナー支持具120bは、既設管の被更生部10aにおけるコーナー部でのみ用いられる支持具であり、標準支持具120aは、被更生部10aにおけるコーナー部に限らずその他の部分でも用いられる支持具である。なお、以下の説明では、2種類の支持具を区別する必要があるときは、標準支持具120aおよびコーナー支持具120bと記載し、2種類の支持具を区別する必要がないときは、単に支持具120と記載する。
【0075】
図3は、
図2に示す支持具120の具体的な構造を説明するための平面図であり、
図3(a)は、標準支持具120aを示し、
図3(b)は、標準支持具120aの固定ネジ23aを外した状態を示し、
図3(c)は、
図3(a)に示す標準支持具120aを伸ばした状態を示し、
図3(d)は、コーナー支持具120bを示し、
図3(e)は、コーナー支持具120bの固定ネジ23bを外した状態を示し、
図3(f)は、
図3(d)に示すコーナー支持具120bを伸ばした状態を示す。
【0076】
(第1の支持具120a)
標準支持具(第1の支持具)120aは、
図3(a)に示すように、更生パネル110に係合するパネル係合部(第1の係合部)22aと、被更生部10aの内周面に固定される基部21aと、更生パネル110と被更生部10aの内面との間隔が調整自在となるようにパネル係合部22aを基部21aにスライド可能に連結する部品連結部(第1の連結部)23aとを備えている。ここで、基部21a、パネル係合部22a、および部品連結部23aにより、更生パネル110を支持する支持機構が構成されている。また、ここでは、部品連結部23aには、基部21aに対してパネル係合部22aを締結する固定ビスなどの締結部材が用いられている。この締結部材23aを緩めると、パネル係合部22aが基部21aに対してスライド可能となり、標準支持具120aを伸縮させることが可能となる(
図3(a)、(c)参照)。従って、被更生部10aの内周面と更生パネル110との間の距離を調整可能な調整機構もまた、基部21a、パネル係合部22a、および部品連結部23aにより構成されている。図示において調節機構はスライドによる調節を示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、長さの異なるパネル係合部22aを交換することにより、長さを調整する場合などであってもよい。
【0077】
ここで、基部21aは、
図3(b)に示すように、被更生部10aの内面にアンカーボルトなどで固定されるL型の本体板部211aと、本体板部211aに取り付けられたスライドガイド212aとを有する。スライドガイド212aは、基部21aに対してパネル係合部22aがスライドする方向を標準支持具120aの高さ方向に規制する部材である。なお、本体板部211aおよびスライドガイド212aは、金属製、例えば、鉄製あるいはステンレス製の板状部材で形成されている。基部21aの本体板部211aは、短冊状の板状部材の下部を、所定の角度に(例えば、直角に)折り曲げた構造となっている。本体板部211aにはビス挿入穴1aが形成されている。
【0078】
また、パネル係合部22aは、
図3(b)に示すように、基部21aに対してスライドする縦長のスライド板部221aと、スライド板部221aの上部両側に形成された左右一対のアーム部222aと、これらのアーム部222aの先端に形成された器具連結部(第2の連結部)223aと、スライド板部221aの上端部に形成された係合片224aとを有する。
【0079】
ここで、縦長のスライド板部221aには、縦長のビス挿入長穴2aが形成されており、器具連結部(第2の連結部)223aは隣接する支持具同士を連結するための部分であり、器具連結部223aの中央には、連結用ビスを通すための連結穴3aが形成されてい
る。
【0080】
さらに、係合片224aの根元には、第1~第3のパネル110a~110cの一部に形成された係合凸部と係合する係合凹部4a1が形成され、係合片224aの先端には、第1~第3のパネル110a~110cの一部に形成された突起部(土手部101c、102c、103c、104c)(
図4参照)の先端と係合する係合カギ片4a2が形成されている。
【0081】
(第2の支持具120b)
コーナー支持具120bも標準支持具120aと同様、
図3(d)に示すように、パネル係合部(第1の係合部)22bと、基部21bと、部品連結部(第1の連結部)23bとを備えており、この部品連結部23bを緩めると、パネル係合部22bが基部21bに対してスライド可能となり、標準支持具120bを伸縮させることが可能となる(
図3(d)、(f)参照)。ここでは、基部21b、パネル係合部22b、および部品連結部23bにより、更生パネル110を支持する支持機構が構成されている。また、ここでは、部品連結部23bには、基部21bに対してパネル係合部22bを締結する固定ビスなどの締結部材が用いられている。また、被更生部10bの内周面と更生パネル110との間の距離を調整可能な調整機構もまた、基部21b、パネル係合部22b、および部品連結部23bにより構成されている。
【0082】
このコーナー支持具120bの基部21bは、
図3(e)に示すように、L型の本体板部211bとスライドガイド212bとを有する。ここで、基部21bは、標準支持具120aにおける基部21aと同じものであり、本体板部211bにはビス挿入穴1bが形成されている。
【0083】
コーナー支持具120bのパネル係合部22bも標準支持具120aのパネル係合部22aと同様、縦長のスライド板部221bと、左右一対のアーム部222bと、連結部223bと、係合部224bとを有する。
【0084】
ここで、スライド板部221b、アーム部222b、および連結部223bは標準支持具120aにおけるものと同じであり、縦長のスライド板部221bには、縦長のビス挿入長穴2bが形成されており、器具連結部223bの中央には、連結用ビスを通すための連結穴3bが形成されている。
【0085】
コーナー支持具120bのパネル係合部22bでは、係合片224bの根元に、第1~第3のパネル110a~110cの一部に形成された係合凸部と係合する係合凹部4b1が形成されているが、係合部224bの先端には、標準支持具120aの係合片224aにおける係合カギ片4a2は形成されていない。
【0086】
図4は、
図2に示す更生パネル110を構成する各種のパネル110a~110dを説明するための斜視図であり、
図4(a)はスタートパネル110aの外観を示し、
図4(b)は標準パネル110bの外観を示し、
図4(c)はエンドパネル110cの外観を示し、
図4(d)はコーナーパネル110dの外観を示す。
【0087】
(第1のパネル110a)
第1のパネル110aはスタートパネル110aであり、このパネルが配置されるべき領域は、この配置領域の両側に他のパネルが存在していない領域である。
【0088】
第1のパネル(スタートパネル)110aは、
図4(a)に示すように、天板部(略短冊型板部)106aと、天板部106aの一方の長辺に沿って形成された第1の線状溝部
(第1の溝部)101と、天板部106aの他方の長辺に沿って形成された第2の線状溝部(第2の溝部)102とを有する。ここで、天板部106aは、短冊形の板状形状を有し、天板部106aの下面には下方に延びる線状リブ105が、天板部106aの軸方向の中心軸を挟んで対向するように配置されている。線状リブ105は下端部の厚みが下端部以外の部分により厚くなっており、この線状リブ105がモルタルに埋め込まれたときにはモルタルから抜けにくい構造となっている。
【0089】
また、スタートパネル110aに設けられている第1の溝部101は、天板部106aの一方の長辺に沿って形成された側壁部101dと、側壁部101dに対向する土手部101cと、側壁部101dと土手部101cとの間に位置する底面部101eとで構成されている。ここで、底面部101eの一方側の縁(パネル外側縁)には、標準支持具120aの係合凹部4a1に嵌合する外側線状突起101aが形成され、底面部101eの他方側の縁(パネル内側縁)には、コーナー支持具120bの係合凹部4b1に嵌合する内側線状突起101bが形成されている。また、第1の溝部101は、その土手部101cの上端に標準支持具120aの係合カギ片4a2が係合するようになっている。
【0090】
また、スタートパネル110aに設けられている第2の溝部102は、天板部106aの一方の長辺に沿って形成された側壁部102dと、側壁部102dに対向する土手部102cと、側壁部102dと土手部102cとの間に位置する底面部102eとで構成されている。ここで、底面部102eの一方側の縁(パネル外側縁)には、標準支持具120aの係合凹部4a1に嵌合する外側線状突起102aが形成され、底面部102eの他方の縁(パネル内側縁)には、コーナー支持具120bの係合凹部4b1に嵌合する内側線状突起102bが形成されている。また、第2の溝部102は、その土手部102cの上端に標準支持具120aの係合カギ片4a2が係合するようになっている。
【0091】
(第2のパネル110b)
第2のパネル110bは標準パネル110bであり、このパネルが配置されるべき領域は、この配置領域の一方側にのみ他のパネルが存在している領域である。
【0092】
第2のパネル(標準パネル)110bは、
図4(b)に示すように、天板部(略短冊型板部)106bと、天板部106bの一方の長辺に沿って形成された第3の線状溝部(第3の溝部)103と、天板部106bの他方の長辺に沿って形成された第1の線状突出部(第1の突出部)111とを有し、第1の突出部111は、スタートパネル110aの第1の溝部101、第2の溝部102、他の標準パネル110bの第3の溝部103およびコーナーパネル110dの第4の溝部104のいずれにも嵌合可能に構成されている。ここで、天板部106bは、短冊形の板状形状を有し、天板部106bの下面には、スタートパネル110aにおけるものと同様の線状リブ105が配置されている。第1の突出部111は天板部106bから下方に延びる側壁部となっている。
【0093】
また、標準パネル110bに設けられている第3の溝部103は、天板部106bの一方の長辺に沿って形成された側壁部103dと、側壁部103dに対向する土手部103cと、側壁部103dと土手部103cとの間に位置する底面部103eとで構成されている。ここで、底面部103eの一方側の縁(パネル外側縁)には、標準支持具120aの係合凹部4a1に嵌合する外側線状突起103aが形成され、底面部103eの他方側の縁(パネル内側縁)には、コーナー支持具120bの係合凹部4b1に嵌合する内側線状突起103bが形成されている。また、第3の溝部103は、その土手部103cの上端に標準支持具120aの係合カギ片4a2が係合するようになっている。
【0094】
(第3のパネル110c)
第3のパネル110cはエンドパネル110cであり、このパネルが配置されるべき領
域は、この配置領域の両側に他のパネルが存在している領域である。
【0095】
第3のパネル(エンドパネル)110cは、
図4(c)に示すように、天板部(短冊型板部)106cと、天板部106cの一方に長辺に沿って形成された第2の線状突出部(第2の突出部)112と、天板部106cの他方に長辺に沿って形成された第3の線状突出部(第3の突出部)113とを有し、第2の突出部112および第3の突出部113のどれもが、第1の溝部101、第2の溝部102、第3の溝部103および第4の溝部104のいずれにも嵌合可能に構成されている。ここで、天板部106cは、短冊形の板状形状を有し、天板部106cの下面には、スタートパネル110aにおけるものと同様の線状リブ105が配置されている。第2の突出部112および第3の突出部113は天板部106cから下方に延びる側壁部となっている。
【0096】
(第4のパネル110d)
第4のパネル110dはコーナーパネル110dであり、このパネルが配置される領域は、被更生部10aのコーナー部であって、このパネルの配置領域の一方側にのみ他のパネルが存在している領域である。
【0097】
第4のパネル(コーナーパネル)110dは、
図4(d)に示すように、天板部106dとして屈曲板部を含む。天板部106dは、天板片(第1の短冊型板状片)116dおよび天板片(第2の短冊型板状片)126dを含み、両天板片116dおよび126dの表面が鈍角(約135°)をなすように天板片116dの一方の長辺と天板片126dの一方の長辺とが接合された構造となっている。さらに、コーナーパネル110dは、天板片116dの他方の長辺に沿って形成された第4の線状溝部(第4の溝部)104と、天板片126cの他方の長辺に沿って形成された第4の線状突出部(第4の突出部)114とを有し、第4の突出部114は、スタートパネル110aの第1の溝部101、第2の溝部102、標準パネル110bの第3の溝部103、および他のコーナーパネル110cの第4の溝部104のいずれとも嵌合可能に構成されている。ここで、天板部106dを構成する両天板片116dおよび126dは、短冊形の板状形状を有し、両天板片116dおよび126dの下面には、スタートパネル110aにおけるものと同様の線状リブ105が配置されている。また、第4の突出部114は天板部106cから下方に延びる側壁部となっている。
【0098】
また、コーナーパネル110dに設けられている第4の溝部104は、天板部106dの一方の長辺に沿って形成された側壁部104dと、側壁部104dに対向する土手部104cと、側壁部104dと土手部104cとの間に位置する底面部104eとで構成されている。ここで、底面部104eの一方側の縁(パネル外側縁)には、標準支持具120aの係合凹部4a1に嵌合する外側線状突起104aが形成され、底面部104eの他方側の縁(パネル内側縁)には、コーナー支持具120bの係合凹部4b1に嵌合する内側線状突起104bが形成されている。また、第4の溝部104はその土手部104cの上端に標準支持具120aの係合カギ片4a2が係合するようになっている。
【0099】
上述した4種類のパネルは、樹脂の押し出し成型で形成され、本体部分を強度アップのためにガラスファイバー含有ポリプロピレンで形成し、天板部106aの表面にポリプロピレンをコーティングした構造となっている。
【0100】
さらに、スタートパネル110a、エンドパネル110d、およびコーナーパネル110cは、さらなる強度アップを図るために、天板部の中央部分を上下から金属板で挟み込み、上下の金属板をボルトとナットで締め付けて天板部に固定した構造としてもよい。
【0101】
(継ぎ部材)
この更生管1000では、パネルをその軸方向に隙間なく接続するための複数種類の継ぎ部材が用いられ得る。ここで、複数種類の継ぎ部材の各々は、上述した4種類のパネルの各々に対応した構造を有する。
【0102】
図5は、
図4に示す各種のパネル110a~110dに対応した継ぎ部材30a~30dを説明するための斜視図である。
【0103】
(継ぎ部材30a)
すなわち、第1の継ぎ部材30aは、スタートパネル110aをその軸方向に配列するときに、隣接するパネルの端部同士を隙間なく接続するための部材であり、スタートパネル110aの端部を収容可能な構造となっている。
【0104】
図5(a)は第1の継ぎ部材30aを
図4(a)のZ方向から見た構造を示し、
図5(b)は第1の継ぎ部材30aを
図4(a)のY方向から見た構造を示し、
図5(c)は
図5(a)のXa-Xa線断面の構造を示す。なお、第1の継ぎ部材30aを
図4(a)のY’方向から見た構造は、
図5(b)に示される構造と同じである。
【0105】
ここで、第1の継ぎ部材30aは、スタートパネル110aの端部に装着可能の構造となっている。
【0106】
すなわち、第1の継ぎ部材30aは、スタートパネル110aの天板部106aの端部を収容する天板収容部31aと、第1の溝部101の端部を収容する第1溝部収容部32aと、第2の溝部102の端部を収容する第2溝部収容部33aと、線状リブ105の端部を収容するリブ収容部34a、35aとを有する。さらに、第1の継ぎ部材30aの幅方向(紙面左右方向)の両端面にはそれぞれ、線状凸部36a、37aが天板収容部31aから溝部収容部32a、33aの底面に向かって延びるように形成されており、線状凸部36a、37aは、スタートパネル110aの側壁部101d、102dの端面に密着する密着部となっている。
【0107】
(継ぎ部材30b)
図5(d)は第2の継ぎ部材30bを
図4(b)のZ方向から見た構造を示し、
図5(e)は第2の継ぎ部材30bを
図4(b)のY’方向から見た構造を示し、
図5(f)は
図5(d)のXb-Xb線断面の構造を示す。なお、第2の継ぎ部材30bを
図4(b)のY方向から見た構造は、
図5(b)に示される構造と同じである。
【0108】
第2の継ぎ部材30bは、標準パネル110bの端部を収容可能の構造となっている。
【0109】
すなわち、第2の継ぎ部材30bは、標準パネル110bの天板部106bの端部を収容する天板収容部31bと、標準パネル110bの第3の溝部103の端部を収容する溝部収容部32bと、線状リブ105の端部を収容するリブ収容部34b、35bとを有する。さらに、第2の継ぎ部材30bの幅方向(紙面左右方向)の端面の一方には、線状凸部36bが天板収容部31bから溝部収容部32bの底面に向かって延びるように形成されており、この線状凸部36bは、標準パネル110bの側壁部103dの端面に密着する密着部となっている。
【0110】
第2の継ぎ部材30bの幅方向(紙面左右方向)の端面の他方には、角柱片37bが天板収容部31bから下方に向かって延びるように形成されており、この角柱片37bは、標準パネル110bの側壁部111の端面に密着する密着部となっている。
【0111】
(継ぎ部材30c)
図5(g)は第3の継ぎ部材30cを
図4(c)のZ方向から見た構造を示し、
図5(h)は、
図5(g)のXc-Xc線断面の構造を示す。なお、第3の継ぎ部材30cを
図4(c)のY方向あるいはY’方向から見た構造は、
図5(e)に示される構造と同じである。
【0112】
第3の継ぎ部材30cは、エンドパネル110cの端部を収容可能の構造となっている。
【0113】
すなわち、第3の継ぎ部材30cは、エンドパネル110cの天板部106cの端部を収容する天板収容部31cと、線状リブ105の端部を収容するリブ収容部34c、35cとを有する。さらに、第3の継ぎ部材30cの幅方向(紙面左右方向)の両端面には、角柱片36c、37cが天板収容部31cから下方に向かって延びるように形成されており、この角柱片36c、37cは、エンドパネル110cの側壁部112、113の端面に密着する密着部となっている。
【0114】
(継ぎ部材30d)
図5(i)は第4の継ぎ部材30dを
図4(d)のZ方向から見た構造を示し、
図5(j)は第4の継ぎ部材30dを
図4(d)のY方向から見た構造を示し、
図5(k)は第4の継ぎ部材30dを
図4(d)のY’方向から見た構造を示し、
図5(l)は
図5(i)のXd-Xd線断面の構造を示す。
【0115】
第4の継ぎ部材30dは、コーナーパネル110cの端部を収容可能の構造となっている。
【0116】
すなわち、第4の継ぎ部材30dは、コーナーパネル110dの天板部106dの端部を収容する天板収容部31dと、コーナーパネル110dの第4の溝部104の端部を収容する溝部収容部32dと、線状リブ105の端部を収容するリブ収容部34d、35dとを有する。さらに、第4の継ぎ部材30dの幅方向(紙面左右方向)の端面の一方には、線状凸部36dが天板収容部31dから溝部収容部32dの底面に向かって延びるように形成されており、この線状凸部36dは、コーナーパネル110dの側壁部104dの端面に密着する密着部となっている。
【0117】
第4の継ぎ部材30dの幅方向(紙面左右方向)の端面の他方には、角柱片37dが天板収容部31dから斜め下方に向かって延びるように形成されており、この角柱片37dは、コーナーパネル110dの側壁部114の端面に密着する密着部となっている。
【0118】
上述した継ぎ部材30a~30dの材料には、ポリエチレンが用いられているが、ポリエチレン以外の樹脂材料であるポリプロピレンでもよく、あるいはゴムなどの部材でもよい。
【0119】
また、実施形態1の更生管1000に用いた更生体100では、パネルをその軸方向に隙間なく接続するための複数種類の継ぎ部材として、パネルの端部に嵌め込むタイプのものを挙げたが、継ぎ部材は、隣接するパネルの間に隙間を埋めるように嵌め込むシール材でもよい。
【0120】
次に既設管10の被更生部10aを更生する方法を説明する。
【0121】
既設管10の被更生部10aは、既設の管状構造物の一例である下水管などの既設管のうちの更生の対象となる部分である。
【0122】
なお、以下の更生方法の説明では、既設管が地中に埋設されている下水管である場合を想定している。
【0123】
図6~
図18は、この更生方法を説明するための図である。
図6は、
図1に示す実施形態1の更生体100が適用される既設管10として地中に埋設されている下水管を示す図であり、
図6(a)は、地中に埋設された既設管10を示し、
図6(b)は、既設管10における更生の対象となる被更生部10aの構造を拡大して示す。
【0124】
具体的には、既設管10における一部(
図6(a)のR3部分)が老朽化などの理由で破損しており、この部分を更生処理の対象である被更生部10aとして既設管10の更生を行う。
【0125】
(支持具連結体1200の形成)
まず、複数の支持具120の位置合わせなどの作業を効率化するため、予め、被更生部10aの内面に取り付ける複数の支持具120を連結して支持具連結体1200を形成する。
【0126】
図7(a)は、更生方法に用いる複数の支持具120を連結する方法を示し、
図7(b)は、複数の支持具の連結により得られた支持具連結体1200を示す。
【0127】
例えば、隣接する標準支持具120aを連結する場合、標準支持具120aの器具連結部(第2の連結部)223aに形成されている連結穴3aに連結用ビス6aを通して連結用ビス6aと連結用ナット6bとで標準支持具120aの連結部223a同士を固定する。このようにして順次標準支持具120aを連結していくことで支持具連結体1200を形成することができる。
【0128】
なお、スタートパネル110aが配置される部分(
図7のR4部分)では、隣接する標準支持具120aをそれぞれの係合カギ片4a2が向かい合うように連結する。また、コーナーパネル110cが配置される部分(
図7のR5部分)では、標準支持具120aの係合凹部4a1とコーナー支持具120bの係合凹部4b1とが背き合うようにコーナー支持具120bを、すでに連結されている複数の標準支持具120aの最後の標準支持具120aに連結する(
図7(a)、(b)参照)。ここで、連結する支持具120の個数は、被更生部10aの内周面の一周分とすると長くなりすぎて扱いにくくなる場合もあるので、更生の対象となる既設管のサイズに合わせて、例えば、内周の1/4程度の長さになるように連結する。
【0129】
(支持具連結体1200の取り付け)
次に支持具連結体1200を既設管10の被更生部10aの内周面に取り付ける。
【0130】
図8(a)は、
図7に示す支持具連結体1200を既設管10の被更生部10aに取り付ける方法を示し、
図8(b)は、被更生部10aの内周面に支持具連結体1200が取り付けられた状態を示す。
【0131】
図8(a)に示すように、支持具連結体1200の一端側の標準支持具120aから順に支持具120を既設管の被更生部10aの内周面にアンカーボルト(図示せず)などの固定部材で固定していく。1つの支持具連結体1200のすべての支持具120の固定が完了すると、続けて次の1つの支持具連結体1200の固定を行い、被更生部10aの内周面一周に渡って支持具120を固定する。さらに、支持具120を固定する位置を、被更生部10aの中心軸に沿ってずらして同様に被更生部10aの内面の一周に渡って支持具120を固定する作業を行う。この作業を繰り返すことにより
図8(b)に示すように、被更生部10aの内面の全面に渡って支持具120を取り付ける。
【0132】
(補強シート150の貼付け)
その後、場合によっては補強シート150を被更生部10aの内周面に接着部材や締結部材など適宜固定手段を介して貼り付けてもよい。その際、被更生部10aの内周面上では、内周方向に沿って一列に並ぶ複数の支持具120の配列が複数列形成されているので、隣接する配列の間に補強シート150が配置される。ここで、補強シート150には、例えば、樹脂繊維を編み込んだシート状部材、あるいは炭素繊維を編み込んだシート状部材が用いられる。この補強シートを被更生部10aの内周面に貼り付けることにより、さらに更生管の強度を高めることができる。
【0133】
なお、
図9は、被更生部10aの内周面に補強シート150を取り付けた状態を示す。
【0134】
(更生パネル110を構成するパネルの取り付け)
図10は、補強シート150を取り付けた後に更生パネル110を構成するパネル110a、110b、110c、110dを支持具に取り付けた状態を示す。
【0135】
図10では一部しか図示していないが、既設管の被更生部10aの底面中央、両側面中央、天井面の中央にはそれぞれ1つのスタートパネル110aが位置しているものとする。例えば、被更生部10aの底面中央に位置するスタートパネル110aから被更生部10aの側面中央(紙面左側)に位置するスタートパネル110aとの間には、5つの標準パネル110bと、2つのコーナーパネル110cと、1つのエンドパネル110dとが配置されている。
【0136】
なお、図示していないが、被更生部10aの側面中央(紙面左側)に位置するスタートパネル110aから被更生部10aの上面中央に位置するスタートパネルまでの間、被更生部10aの上面中央に位置するスタートパネルから被更生部10aの側面中央(紙面右側)に位置するスタートパネルまでの間、さらに、被更生部10aの側面中央(紙面右側)に位置するスタートパネルから被更生部10aの底面中央に位置するスタートパネル110aまでの間にも、同様の配列パターンで、標準パネル110b、コーナーパネル110c、およびエンドパネル110dが配置されている。
【0137】
以下、このような配列パターンになるように各種パネルを支持具120a、120bに取り付ける手順を説明する。
【0138】
(スタートパネル110aの取り付け)
図11(a)は、スタートパネル(第1のパネル)110aを隣接する標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示し、
図11(b)は、スタートパネル110aが、係合凹部4a1が向き合うように配置された隣接する標準支持具120aに取り付けられた状態を示す。
【0139】
例えば、
図11(a)に示すように、スタートパネル110aを
図11(a)の紙面奥手側から紙面手前側にスライドさせて(あるいは
図11(a)の紙面手前側から紙面奥手手側にスライドさせて)、被更生部10aの底面中央に係合凹部4a1が対向するように配置されている2つの標準支持具120aの間に挿入することにより取り付ける。
【0140】
このとき、隣接する標準支持具120aのうちの左側の標準支持具120aの係合凹部4a1に、スタートパネル110aの第1の溝部101の外側線状突起101aが嵌合し、左側の標準支持具120aの係合カギ片4a2がスタートパネル110aの第1の溝部101の土手部101cの上端に係合する。同様に、隣接する標準支持具120aのうち
の右側の標準支持具120aの係合凹部4a1に、スタートパネル110aの第2の溝部102の外側線状突起102aが嵌合し、右側の標準支持具120aの係合カギ片4a2がスタートパネル110aの第2の溝部102の土手部102cの上端に係合する。これにより、スタートパネル110aは隣接する標準支持具120aの間で固定される。
【0141】
なお、被更生部10aの内周面への複数の支持具120の取り付けが完了した状態では、複数の支持具120は、
図8(b)、
図9などに示すように、被更生部10aの内周方向に沿って配列されているだけでなく、被更生部10aの軸方向にも配列されている。このため、スタートパネル110aを
図11(a)の紙面奥手側から紙面手前側に向かって、すなわち、被更生部10aの軸方向にスライドさせることにより、スタートパネル110aは、被更生部10aの軸方向に並ぶ、複数の組の対向する一対の支持具120の間を通過することとなる。これにより、1つのスタートパネル110aは、被更生部10aの軸方向の複数個所で、対向する一対の支持具120により支持されることとなる。
【0142】
また、スタートパネル以外のパネル(標準パネル、エンドパネル、およびコーナーパネル)は、スタートパネルのように対向する支持具120の間を被更生部10の軸方向にスライドさせてその間に挿入するのではなく、対向する支持具120の間に被更生部10の内周面の上方から押し込むようにして挿入する。なお、スタートパネル以外のパネルもスタートパネルと同様に、被更生部10aの軸方向に並ぶ、複数の組の対向する一対の支持具120の間に挿入されることにより、被更生部10aの軸方向の複数個所で、対向する一対の支持具120により支持されることとなる。また、スタートパネルが可撓性に富む変形し易い材料で構成されている場合は、スタートパネルもスタートパネル以外のパネル(標準パネル、エンドパネル、およびコーナーパネル)のように、対向する支持具120の間に被更生部10の内周面の上方から押し込むようにして挿入してもよい。
【0143】
(1つ目の標準パネル110bの取り付け)
次に、被更生部10aの表面に配置したスタートパネル110aに隣接させて標準パネル(第2のパネル)110bを取り付ける。
【0144】
図12(a)は、スタートパネル110aに隣接させて標準パネル110bを隣接する2つの標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示し、
図12(b)は、標準パネル110bがこれらの標準支持具120aに取り付けられた状態を示す。
【0145】
このとき、隣接する標準支持具120aのうちの左側の標準支持具120aの係合凹部4a1に、標準パネル110bの第3の溝部103の外側線状突起103aが嵌合し、左側の標準支持具120aの係合カギ片4a2が第3の溝部103の土手部103cの上端に係合する。標準パネル110bの第1の突出部111は、スタートパネル110aの第1の溝部101に嵌合する。
【0146】
これにより、標準パネル110bは隣接する標準支持具120aの間で固定されるとともに、先に配置されているスタートパネル110aに連結される。
【0147】
(1つ目のコーナーパネル110dの取り付け)
その後、被更生部10aの表面が立ち上がり始めるコーナー部までパネルの取り付け作業が進むと、標準支持具120aとコーナー支持具120bとに跨ってコーナーパネル110dを取り付ける。
【0148】
図13(a)は、標準パネル110bに隣接させてコーナーパネル110dを隣接する標準支持具120aおよびコーナー支持具120bに跨って取り付ける様子を示し、
図13(b)は、コーナーパネル110dがこれらの支持具に取り付けられた状態を示す。
【0149】
このとき、左側のコーナー支持具120bの係合凹部4b1に、コーナーパネル110dの第4の溝部104の内側線状突起104bが嵌合し、右側の標準パネル110bの第3の溝部103にコーナーパネル110dの第4の突出部114が係合する。
【0150】
これにより、コーナーパネル110dは隣接する標準支持具120aとコーナー支持具120bとの間で固定されるとともに、先に配置されている標準パネル110bに連結される。
【0151】
(コーナー部での標準パネル110bの取り付け)
次に、被更生部10aの表面に配置したコーナーパネル(第4のパネル)110dに隣接させて標準パネル110bを取り付ける。
【0152】
図14(a)は、コーナーパネル110cに隣接させて標準パネル110bを、隣接するコーナー支持具120bおよび標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示し、
図14(b)は、標準パネル110bがこれらの支持具に取り付けられた状態を示す。
【0153】
このとき、コーナーパネル110dの第4の溝部104に、標準パネル110bの第1の突出部111が嵌合し、左側の標準支持具120aの係合カギ片4a2が標準パネル110bの第3の溝部103の土手部103cの上端に係合する。
【0154】
これにより、標準パネル110bは隣接するコーナー支持具120bおよび標準支持具120aの間で固定されるとともに、先に配置されているコーナーパネル110dに連結される。
【0155】
(2つ目のコーナーパネル110dの取り付け)
その後、被更生部10aの表面がさらに立ち上がるところまでパネルの取り付け作業が進むと、隣接する標準支持具120aおよびコーナー支持具120bに跨ってコーナーパネル110dを取り付ける。
【0156】
図15(a)は、標準パネル110bに隣接させて2つ目のコーナーパネル110dを、隣接する2つの標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示し、
図15(b)は、2つ目のコーナーパネル110dがこれらの支持具120に取り付けられた状態を示す。
【0157】
このとき、隣接する標準支持具120aおよびコーナー支持具120bのうちの上側のコーナー支持具120bの係合凹部4b1に、コーナーパネル110dの第4の溝部104の内側線状突起104bが嵌合する。コーナーパネル110dの第4の突出部114は、標準パネル110bの第3の溝部103に嵌合する。
【0158】
これにより、コーナーパネル110dは隣接する標準支持具120aおよびコーナー支持具120bの間で固定されるとともに、先に配置されている標準パネル110bに連結される。
【0159】
(エンドパネル110cの取り付け)
その後、標準パネル110bの取り付け作業が既に取り付けられているスタートパネル110aの手前まで進むと、係合凹部4a1が背き合って隣接する2つの標準支持具120aに跨って標準パネル110bとスタートパネル110aとの間にエンドパネル110cを取り付ける。
【0160】
図16(a)は、エンドパネル110cを標準パネル110bとスタートパネル110aとの間に位置するように、隣接する2つの標準支持具120aに跨って取り付ける様子を示し、
図16(b)は、エンドパネル110cがこれらの支持具に取り付けられた状態
を示す。
【0161】
このとき、スタートパネル110aの第2の溝部102に、エンドパネル110cの第2の突出部112が嵌合し、標準パネル110bの第3の溝部103にエンドパネル110cの第3の突出部113が嵌合する。
【0162】
これにより、エンドパネル110cは隣接する標準支持具120aの間で固定されるとともに、先に配置されている標準パネル110bおよびスタートパネル110aに連結される。
【0163】
このようにして被更生部10aの内面の一周にわたってパネルを敷き詰めると、パネルを取り付ける作業位置を、既設管10の被更生部10aの中心軸に沿ってパネルの長さ分だけ移動し、同様に、被更生部10aの内面の一周に渡ってパネルを敷き詰める作業を行う。
【0164】
この際、パネルを軸方向に接続する必要があり、同じ種類のパネル同士をパネルの長さ方向につなぐのに、それぞれの種類に合った継ぎ部材を用いる。
【0165】
(継ぎ部材30a~30dの取り付け)
図17は、既設管10の被更生部10aの内周面の一周に渡って各種パネルを配置した後に、それぞれのパネル110a~110dに継ぎ部材30a~30dを取り付ける様子を示す。
【0166】
すなわち、
図17に示すように、スタートパネル110aの端部には、スタートパネル110aの端部を収容可能な構造の第1の継ぎ部材30aを取り付ける。同様に、
図17に示すように、標準パネル110bの端部には、この端部を収容可能な構造の第2の継ぎ部材30bを取り付け、エンドパネル110cの端部には、この端部を収容可能な第3の継ぎ部材30cを取り付け、コーナーパネル110dの端部には、この端部を収容可能な第4の継ぎ部材30dを取り付ける。
【0167】
その後、既設管10の中心軸方向における新たなパネル取り付け位置で、同様に、被更生部10aの内周面の一周に渡ってパネルを敷き詰める作業を、スタートパネル110aから順に行う。
【0168】
そして、既設管10の被更生部10aの内周面の全体に渡って複数のパネルを敷き詰める作業が完了すると、複数のパネル110と被更生部10aの内面との間にモルタルを注入する。
【0169】
図18(a)は、既設管10の被更生部10aの内周面に各種パネルを取り付ける作業が完了した状態を示し、
図18(b)は、既設管10の被更生部10aと複数の更生パネル110との間にモルタル130を注入した状態を示す。
【0170】
なお、モルタルを注入する際には、モルタルが固まるまでの間、モルタルの自重で更生パネル110が内側に迫り出さないように更生パネル110を支持する型枠部材を配置してもよい。この型枠部材は、モルタルが固まった後は取り外される。
【0171】
これにより既設管10の被更生部10aを更生する作業が完了し、既設管10の被更生部10aが更生された更生管1000が得られる。
【0172】
このように実施形態1の更生管1000では、既設管(既設の管状構造物であってもよい)10における更生の対象となる部分(被更生部)10aの内周面に複数の支持具120を固定し、被更生部10aの内周面に沿って複数の更生パネルを複数の支持具に取り付けるようにしている。更生パネルは、被更生部10aの内周面に固定された支持具に取り付けられているため、既設管10の被更生部10aに対する更生パネル110の取り付け強度が、充填材の強度だけでなく、支持具の既設管との固定強度が加わり、より高い強度を得ることが可能となる。
【0173】
また、複数の支持具120の各々は、既設管10の内面に垂直な方向の寸法が調整可能なるように伸縮自在の構造となっているので、既設管10の内面の凸凹、あるいは更生パネルの板取寸法に拘わらず、更生パネルを既設管10の内面に対して平坦に取り付けることができる。
【0174】
また、複数の支持具120の各々は、複数の支持具のうちの隣接する支持具を連結するための連結部を有するので、複数の支持具120を支持具連結体とすることが可能である。支持具連結体を形成することにより、既設管10の被更生部10aに対する更生パネル110の取り付け強度をさらに向上させることが可能となる。
【0175】
また、既設管10(被更生部10a)の内周面に支持具を固定する作業を行う前に、複数の支持具を連結部により予めチェーン状に一列に接続した支持具連結体1200を形成しておくことにより、複数の支持具120の既設管10の内面に対する固定作業では、支持具連結体1200の先頭の支持具120を既設管10の内面に位置決めするだけで、支持具連結体1200に含まれる他の支持体120の位置決めを自動的に行うことが可能となり、複数の支持体を既設管10の内面に固定する作業を効率よく行うことが可能となる。なお、上述した実施形態1による更生体100では、第3の更生パネル(エンドパネル)110cは、その両端が、間接的に(すなわち、支持具に係合する他の更生パネルの線状溝部を介して)係合することにより支持具に固定されているため、直接支持具に係合することにより支持具に固定されている他の第1、第2、第4の更生パネル(少なくとも一端が直接支持具に係合するパネル)に比べると、支持具の係合部から外れやすい。
【0176】
そこで、第3の更生パネル110が取り付けられる隣接する支持具の連結部223aには、第3の更生パネルが外れるのを規制するパネル保持具(規制部材)50を取り付けるのが好ましい。
【0177】
図18Aは、このようなパネル保持具50を説明するための図であり、
図18A(a)は、パネル保持具50を隣接する支持具120aの連結部223a(
図2(b)のR1a部分)に取り付けた状態を示し、
図18A(b)は、
図18A(a)のYa-Ya線断面図であり、
図18A(c)は、パネル保持具50の正面図、
図18A(d)は、
図18A(c)のパネル保持具50を紙面上側から見た上面図、
図18A(e)は、
図18A(c)のパネル保持具50を紙面左側から見た側面図である。
【0178】
このパネル保持具50は、当接片54と、当接片54を支持する保持具本体50aとを有している。ここで、保持具本体50aは、隣接する支持具120aの連結部223aに固定ボルト55aおよび固定ナット55bで固定される部分であり、前面壁51、後面壁52、および上面壁53を含み、前面壁51と後面壁52とは、これらが対向するように上面壁53により連結されている。前面壁51、後面壁52には、保持具本体50aを支持具120の連結部223aに固定するための固定ボルト55a、55bを通すボルト穴51a、52aが形成されている。
【0179】
また、当接片54は、支持具の係合部に間接的に係合した状態の第3の更生パネル(エンドパネル)110cの係合解除が規制されるように、エンドパネル110cの裏面側に形成されたリブ(具体的には、線状リブ)105に当接している。当接片の形状、材質などは任意であり得る。例えば、当接片は鉄やステンレス、アルミなどの金属製のバネ部材などであり得る。しかし、本発明はこれに限定されない。当接片は樹脂などであってもよい。
【0180】
このような構成のパネル保持具50を、隣接する支持具120の連結部223aに取り付けることで、これらの支持具120に間接的に支持されるエンドパネル110cが支持具120から外れるのを抑制することができる。
【0181】
また、上述した実施形態1による更生体100では、1つの支持具120(120a、120b)は、1つの更生パネル110(110a~110d)を支持するものであるが、この更生体で用いる支持具は、1つで複数の更生パネルを支持するように構成したもの(実施形態1の支持具120をユニット化したもの)でもよく、以下の実施形態2では、このような支持具140(140a~140c)を用いた更生体200を説明する。ここで、支持具140は、水平部支持具140a、傾斜部支持具140b、垂直部支持具140cを区別せずに示している。なお、水平部支持具140aは、被更生部10aの内周面の水平部分で用いられるもの、傾斜支持具140bは、被更生部10aの内周面の傾斜部分で用いられるもの、垂直部支持具140cは、被更生部10aの内周面の垂直部分で用いられるものである。
【0182】
(実施形態2)
図19は、本発明の実施形態2による更生体200を含む更生管2000を説明するための図であり、
図19(a)は、更生管2000の外観を示し、
図19(b)は、
図19(a)のXe-Xe線断面の構造を示す。
【0183】
この実施形態2の更生管2000は、
図19(a)に示すように、実施形態1の更生管1000において、支持具120に代わる支持具140を備えたものであり、ここで、この支持具(固定器具)140は、複数の更生パネル110と係合するように構成されている。この更生管2000では、
図19(b)に示すように、支持具140として、例えば、上述したように、被更生部10aの内周面のうちの取り付けられる場所が異なる第1~第3の3つの支持具140a~140cが用いられている。また、隣接する第1の支持具140a同士、および第3の支持具140c同士は、接続部材160aにより接続され、隣接する第1の支持具140aと第2の支持具140b、および第2の支持具140bと第3の支持具140cは、コーナー接続部材160bにより接続されている。
【0184】
(支持具140)
以下、この実施形態2の更生管2000で用いられている支持具140を詳しく説明する。
【0185】
図20は、
図19に示す更生体200で用いられる第1~第3の支持具140a~140cの構造を説明するための図であり、
図20(a)は、被更生部10aに取り付けられた支持具140a~140cを示し、
図20(b)は、
図20(a)の第1の支持具140a(R6部分)を拡大して示し、
図20(c)は、
図20(a)の第1の支持具140aをXf方向から見た構造を示す。
【0186】
なお、第1~第3の支持具140a~140cは、被更生部10aの内周面における取り付けられる場所が異なるのみであり、以下、第1の支持具140aを具体的に説明する。
【0187】
第1の支持具140aは、1つのベース部材41と、複数の係合部材43aおよび43bと、2つの固定部材42とを有し、それぞれの部材が金属材料(鉄、ステンレスなど)で構成された固定金具(固定器具)である。なお、それぞれの部材は、金属材料に限らず、樹脂材料で構成されていてもよい。
【0188】
1つのベース部材41はL型アングルで構成された部材であり、2つの固定部材42により被更生部10aの内周面Sに固定され、1つのベース部材41には、複数の係合部材43、43bが取り付けられ、複数の係合部材43a、43bの各々には、複数の更生パネル110のいずれかが係合するようになっている(
図23(b)参照)。
【0189】
係合部材43aは第1の係合部材であり、更生パネル110と係合する係合片432aと、係合片432aを支持する基部431aとを有する。
【0190】
ここで、基部431aは接合部(例えば、スポット溶接部)5a3によりベース部材41に固定されている。また、係合片432aには、係合凹部5a1と係合カギ片5a2とが設けられている。ここで、係合凹部5a1は、更生パネル110(スタートパネル110a、標準パネル110b、コーナーパネル110d)の外側線状突起101a~104aが嵌合する部分であり、係合カギ片5a2は、更生パネル110(スタートパネル110a、標準パネル110b、コーナーパネル110d)の土手部101c~103cの上端と係合する部分である。
【0191】
また、係合部材43bは第2の係合部材であり、更生パネル110と係合する係合片432bと、係合片432bを支持する基部431bとを有する。
【0192】
ここで、基部431bは接合部(例えば、スポット溶接部)5b3によりベース部材41に固定されている。また、係合片432bには、係合凹部5b1が設けられている。係合凹部5b1は、更生パネル110(スタートパネル110a、標準パネル110b、コーナーパネル110d)の内側線状突起101b~104bが嵌合する部分である。
【0193】
固定部材42は、固定プレート421と、ベース受部422と、ボルト体423と、固定ナット424とを有し、固定プレート421にはベース受部422が取り付けられており、ベース受部422にはボルト体423が取り付けられており、ボルト体423には固定ナット424が装着されており、固定プレート421は、被更生部10aの内周面に固定可能な構造となっている。なお、ベース部材41には、ボルト体423を挿入するボルト挿入穴(図示せず)が形成されている。
【0194】
従って、固定プレート421を被更生部10aの内周面に固定した状態で、ボルト体423がベース部材41のボルト挿入穴を通過するようにベース部材41をベース受部422上に配置し、固定ナット424をボルト体423に対して締め付けることにより、ベース部材41を被更生部10aの内周面Sから所定の距離Lだけ離して被更生部10aに固定することができる。なお、固定部材42はこの距離Lを調整可能な機構を有していてもよい。
【0195】
ここでは、隣接する支持具140aの間には、それぞれのベース部材41同士を接続する接続部材160aが設けられている(
図19(b)参照)。
【0196】
図21は、隣接する固定器具140aを接続する接続部材160aの構造の一例を説明するための図であり、
図21(a)は、更生パネル110の、隣接する更生パネル110との係合の解除を規制する当接片164を示す平面図であり、
図21(b)は、
図21(a)のYb-Yb線断面図である。
【0197】
接続部材160aは、
図21に示すように、L字型ブロック161、矩形ブロック162、第1の締結具161a、第2の締結具162a、第3の締結具161b、および当接片164を有している。
【0198】
この接続部材160aでは、L字型ブロック161の水平部分が、隣接する第1の支持具140aのそれぞれベース部材41(具体的にはベース部材41を構成するL型アングルの横片)にまたがるようにこれらのベース部材41の下側に配置され、矩形ブロック162が、隣接する第1の支持具140aのそれぞれのベース部材41にまたがるようにこれらのベース部材41の上側に配置され、L字型ブロック161の水平部分と矩形ブロック162とが、隣接する第1の支持具140aのベース部材41を挟み込むように、第1の締結具161a(例えばボルトとナット)でL字型ブロック161および矩形ブロック162が締結されている。
【0199】
さらに、L字型ブロック161の垂直部分が、隣接する第1の支持具140aのそれぞれベース部材41(具体的にはベース部材41を構成するL型アングルの縦片)にまたがるように、かつ矩形ブロック162に対向するように配置され、矩形ブロック162とL字型ブロック161の垂直部分とが、隣接する第1の支持具140aのベース部材41を挟み込むように、第2の締結具162a(例えばボルトとナット)で矩形ブロック162およびL字型ブロック161が締結されている。
【0200】
そして、この接続部材160aは、L字型ブロック161の上部に第3の締結具161bにより固定された当接片164を有し、当接片164が、隣接する第1の支持具140aの一方の端部に位置する係合部材43aとその他方の端部に位置する係合部材43aとに跨るエンドパネル110cの線状リブ(リブ)105の先端部に当接して、エンドパネル110cとこれに隣接する標準パネル110bとの係合状態が解除されるのを規制するように構成されている。
【0201】
このエンドパネル110cは、支持具140aには直接係合せず、その他の更生パネル110の一部を介して支持具140aの係合部材43aに間接的に係合するため、支持具140aに一部が直接係合する他の更生パネル110a、110b、110dに比べると、支持具140aから外れやすいことから、このような当接片164によりエンドパネル110cと他の更生パネル110(あるいは支持具140aの係合部材43a)との係合解除を規制する接続部材160aを設けておくことは大きな意義がある。
【0202】
なお、接続部材160aの構造は
図21に示す構造に限定されるものではなく、隣接する支持具140の間でベース部材41同士を接続するものであれば、その他の構造でもよい。
【0203】
例えば、第3の支持具140c同士を接合する接続部材160aは、第1の支持具140a同士を接合する接続部材160aと同じ構造であるが、第1の支持具140aと第2の支持具140bとを接合する(あるいは第2の支持具140bと第3の支持具140cとを接合する)コーナ接続部材(更生体100のコーナー部に配置される接続部材)160bは、第1の支持具140a同士あるいは第3の支持具140c同士を接合する接続部材(更生体100の平坦部に配置される接続部材)160aとは異なる構造を有している。
【0204】
さらに、このような接続部材は必ずしも設ける必要はない。例えば、被更生部10aのサイズ(内径)が小さく、隣接する支持具140が接続されていなくても、必要とされる更生体100の強度が得られる場合は、接続部材160a、160bは不要である。
【0205】
また、支持具140(第1の支持具140a、第2の支持具140b、第3の支持具140c)は、
図22(b)に示すように、グラスファイバーなどの炭素繊維を含む補強シート45をさらに含み、補強シート45が、ベース部材41のうちの内周面に対向する面41aに設けられていることが好ましい。支持具140がこのような補強シート45を含むことで、支持具140を含む更生体200の強度を向上することができる。
【0206】
次に、実施形態2の支持具140を用いて既設管10の被更生部10aを更生する方法を、
図20~
図27を参照しながら説明する。
【0207】
実施形態2で説明する既設管10の更生方法は、既設管10の被更生部10aの内周面を仮想的に内周方向に分割して得られた内周面の領域)の各々で、支持具140の固定、更生パネル110の取付け、および充填材130の注入を行うことを、内周方向に沿って並ぶ複数の分割更生面S1~S4にて順次繰り返すことにより、被更生部10aの全周に渡る更生を行う方法である。なお、
図20、
図23、
図26、
図27における点線Fx、Fyは、既設管10の被更生部10aの内周面を仮想的に内周方向に4分割するための仮想線である。
【0208】
まず、第1の分割更生面S1(既設管10の被更生部10aの内周面を内周方向に4分割して得られた4つの分割更生面S1~S4の1つ)で、支持具140の固定、更生パネル110の取付け、および充填材130の注入を行う。
【0209】
図22は、
図20に示す固定器具(支持具)140に更生パネル110を取り付ける工程を説明するための図であり、
図22(a)は、固定器具140に更生パネル110を取り付ける手順を示し、
図22(b)は、固定器具140に補強シート45が取り付けられている場合を示す。
【0210】
具体的には、
図20(a)に示すように、既設の管状構造物の被更生部10aの内周面(S)を、管状構造物の内周方向に沿って並ぶ4つの分割更生面(S1~S4)に仮想的に分割する(ステップ1)。
【0211】
続いて、
図20(a)に示すように、被更生部10aの内周面のうちの第1の分割更生面S1に、内周方向に沿って第1の支持具(水平部支持具)140a、第2の支持具(傾斜部支持具)140b、第3の支持具(垂直部支持具)140cを固定する(ステップ2
)。
【0212】
各支持具140a~140cは、ベース部材41に複数の係合部材43a、43bと固定部材42とを取り付けたものであり、支持具140の第1の分割更生面S1への取付けは、固定部材42の固定プレート421をアンカーボルトなどで被更生部10aの内周面に固定することにより行われる。なお、ここでは、各支持具140a~140cには、
図22(b)に示すように補強シート45が形成されているものとする。
【0213】
また、支持具140a、140b、140cの取付けは、
図22(a)に示すように、被更生部10aの軸方向(軸方向)における一か所ではなく、軸方向Yaに沿った所定の範囲(例えば、更生パネル110の長さに相当する範囲)内の複数箇所で行う。
【0214】
次に、被更生部10aの第1の分割更生面S1に取り付けた支持具140a~140cのうちの隣接する支持具140の間でそれぞれのベース部材41を接続部材160a、160bを用いて接続する(
図20(a)参照)。
【0215】
その後、支持具140a~140cに更生パネル110を取り付ける(ステップ3)。
【0216】
例えば、垂直部支持具140cの上端側から、スタートパネル110a、3つの標準パネル110bを傾斜部支持具140bに取り付け、垂直部支持具140cと傾斜部支持具140bとに跨ってコーナーパネル110dを取り付ける。2つの標準パネル110bを傾斜部支持具140bに取り付け、傾斜部支持具140bと水平部支持具140aとに跨ってコーナーパネル110dを取り付け、さらに、水平部支持具140aに6つの標準パネル110bを水平部支持具140aに順次取り付ける。
【0217】
図23は、
図22に示す固定器具(各支持具)140に更生パネル110が取り付けられた状態を説明するための図であり、
図23(a)は、被更生部10aのうちの更生パネル110が取り付けられた部分を示し、
図23(b)は、
図23(a)の固定器具140(R7部分)を拡大して示し、
図23(c)は、
図23(a)の更生パネル110をXg方向から見た構造を示す。
【0218】
このように被更生部10aの第1の分割更生面S1に更生パネル110を取り付けた後(
図23参照)、被更生部10aの内周面のうちの更生パネル110を取り付けた部分をシールする(ステップ4)。
【0219】
図24は、被更生部10aの内周面のうちの更生パネル110を取り付けた部分をシールする第1の工程を説明するための斜視図であり、
図24(a)は、被更生部10aの内周面の一部に更生パネル110を配置した状態を示し、
図24(b)は、更生パネル110の両端側に側端押え具60a、60bを取り付けた状態を示す。
【0220】
更生パネル110の長手方向の端部と第1の分割更生面S1との隙間の露出部分(
図24(a)参照)が塞がれるように端部押え具60a、60bで更生パネル110の両端部を被覆する(
図24(b)参照)。
【0221】
ここで、端部押え具60a、60bは、更生パネル110が水平方向に沿って並ぶ部分に配置される水平部押え61a、61bと、更生パネル110が斜め方向に沿って並ぶ部分に配置される傾斜部押え62a、62bと、更生パネル110が垂直方向に沿って並ぶ部分に配置される垂直部押え63a、63bとを含む。
【0222】
なお、これらの押え(治具)は、更生パネル110の端部と第1の分割更生面S1との隙間を埋める軟質部材(軟質樹脂)からなるシール材を、その隙間に押し付ける部材である。
【0223】
さらに、両端に位置する更生パネル110の長手方向に沿った側縁と第1の分割更生面S1との隙間の露出部分(
図24(b)参照)が塞がれるように側縁押え具60c、60dで更生パネル110の両端部に被覆する。
【0224】
図25は、被更生部10aの内周面のうちの更生パネル110を取り付けた部分をシールする第2の工程を説明するための斜視図であり、
図25(a)は、両端の更生パネル110の縁に側縁押え具60c、60dを取り付けた状態を示し、
図25(b)は、
図25(a)に示される側縁押え具60c(R8部分)のYa-Ya線断面の構造を示す。
【0225】
ここで、側縁押え具60cの具体的な構造を説明する。
【0226】
側縁押え具(治具)60cは、更生パネル110の長手方向の側縁と第1の分割更生面S1との隙間をシールする軟質樹脂650と、その隙間に軟質樹脂650を押し当てる押当て部材640と、押当て部材640を移動可能に支持する押え具筐体610とを有している。ここで、側縁押え具60cにおいて、押当て部材640と押え具筐体610とは、軟質樹脂650を押える治具を構成している。
【0227】
押え具筐体610は、筐体下部611と筐体上部612とを含み、筐体下部611は、被更生部10aの内周面に固定された固定ブラケット620に締結部材620aにより取付けられている。
【0228】
筐体下部611の縦壁および筐体上部612の縦壁にはこれらが接合されるように横押込み調整具630aが装着され、筐体上部612の天井部には、縦押込み調整具630bが装着されている。
【0229】
横押込み調整具630aは押当て部材640を内周面に沿った方向に移動させて、軟質樹脂650を支持具140および更生パネル110の端部に押し付ける強さを調整するものであり、縦押込み調整具630bは、押当て部材640を内周面に垂直な方向に移動させて、軟質樹脂650を支持具140および更生パネル110の端部の上側からその端部に押し付ける強さを調整するものである。
【0230】
このような側縁押え具60cを用いることで、更生パネル110の長手方向の側縁と第1の分割更生面S1との隙間を簡単な作業で塞ぐことができ、しかも、更生パネル110と第1の分割更生面S1との隙間に注入する充填材が、端に位置する更生パネル110のうちの、隣接する分割更生面に配置される他の更生パネル110と嵌合する線状溝部(例えば、標準パネル110bの第3の線状溝部103)に注入されてしまうのを回避できる。
【0231】
なお、垂直部支持具140cに支持されているスタートパネル110aの側縁に隣接して配置されている側縁押え具60dは、水平部支持具140aの前端側(
図25(a)の紙面手前側)に隣接して配置されている、上述した側縁押え具60cと同一の構造を有している。また、ここでは、端部押え具60a、60b、側縁押え具60c、60dは、1つの止水治具60を構成している。
【0232】
このように、被更生部10aの内周面のうちの更生パネル110を取り付けた部分を端部押え具60a、60bおよび側縁押え具60c、60dでシールした後、更生パネル110と被更生部10aの内周面との間に充填材を注入して(ステップ4)、第1の分割更生面S1での更生作業を完了する。
【0233】
その後、端部押え具60a、60bおよび側縁押え具60c、60dを取り外す。
【0234】
続いて、第2~第4の分割更生面S2~S4で第1の分割更生面S1での作業と同様な作業(ステップ2~4)を行う。
【0235】
図26および
図27は、被更生部10aの内周面を4分割して更生体100を形成する方法を説明するための図であり、
図26(a)は、第1の分割更生面S1での更生が完了した状態を示し、
図26(b)は、第2の分割更生面S2に固定器具140および更生パネル110を配置した状態を示し、
図27(a)は、第2の分割更生面S2での更生が完了した後に、第3の分割更生面S3に固定器具140および更生パネル110を配置した状態を示し、
図27(b)は、第3の分割更生面S3での更生が完了した後に、第4の分割更生面S4に固定器具140および更生パネル110を配置した状態を示す。
【0236】
図26(a)に示すように、第1の分割更生面S1での更生作業が完了した後、第1の分割更生面S1に隣接する第2の分割更生面S2で、第1の分割更生面S1での作業と同様、支持具140の固定(ステップ2)、更生パネル110の取付け(ステップ2)を行い(
図26(b)参照)、その後、更生パネル110の端部と第2の分割更生面S2との隙間の止水治具60によるシール、および更生パネル110の端部と第2の分割更生面S2との間への充填材の注入(ステップ4)を行う。この場合、第1の分割更生面S1の更生が完了しているので、止水治具60における側縁押え具60c、60dの一方(第1の分割更生面S1側のもの)は不要である。
【0237】
次に、止水治具60を取り外して、第3の分割更生面S3で、第2の分割更生面S2での作業と同様、支持具140の固定(ステップ2)、更生パネル110の取付け(ステップ3)を行う(
図27(a)参照)。その後、更生パネル110の端部と第3の分割更生面S3との隙間の止水治具60によるシール、および更生パネル110の端部と第2の分割更生面S2との間への充填材の注入を行う(ステップ4)。この場合も、第1の分割更生面S1の更生が完了しているので、止水治具60における側縁押え具60c、60dの一方(第1の分割更生面S1側のもの)は不要である。
【0238】
さらに、止水治具60を取り外して、第4の分割更生面S4で、第3の分割更生面S3での作業と同様、支持具140の固定(ステップ2)、更生パネル110の取付け(ステップ3)を行う(
図27(b)参照)。
【0239】
続いて、その後、更生パネル110の端部と第4の分割更生面S4との隙間の止水治具60によるシール、および更生パネル110の端部と第2の分割更生面S2との間への充填材の注入(ステップ4)を行う。この場合、第1および第3の分割更生面S1およびS3の更生が完了しているので、止水治具60における側縁押え具60c、60dは両方とも不要である。その後、止水治具60を取り外す。
【0240】
その後は、被更生部10aの内周面の更生を行う作業位置を、被更生部10aの軸方向(軸方向)にずらして、上述したように、被更生部10aの内周面を4分割して得られる4つの分割更生面S1~S4で、上述した更生作業(ステップ1~4)を繰り返す。
【0241】
この場合、例えば、更生済みの第1の分割更生面S1に隣接する未更生状態の第1の分割更生面S1で、更生パネル110と被更生部10aの内周面との間に充填材を注入する作業を行うときには、更生済みの第1の分割更生面S1上に位置する更生パネル110と、未更生状態の第1の分割更生面S1上に位置する更生パネル110との間には、目地材が充填される。
【0242】
この目地材としては、可撓性のある熱可塑性樹脂に電熱線を組み込んだ目地材を用いることができ、その場合、目地材の充填後に目地材の電熱線への通電により、目地材がその両側に位置する更生パネルに融着することとなる。
【0243】
なお、
図27Aは、更生済みの第1の分割更生面S1上に位置する更生パネル110と、未更生状態の第1の分割更生面S1上に位置する更生パネル110との間に、電熱線70aを含む目地材70が充填された状態を示す。
【0244】
これにより目地材と更生パネルとの接着強度を向上できるとともに、目地材と更生パネルとの間でのより高い水密性を実現することが可能となる。
【0245】
なお、このような目地材70は、実施形態1の更生体100における、軸方向に並んで隣接する更生パネル110の隙間に適用できることは言うまでもない。
【0246】
また、このような目地材を用いて被更生部10aの軸方向(軸方向)に隣接する更生パネル110の間をシールする方法は、既設管同士が対向する既設管の継手部分(つなぎ目部分)で、既設管の更生を可能にするという効果を発揮する。
【0247】
隣接する更生パネルの一方が、既設管のつなぎ目を挟んで対向する既設管の一方の被更生部に含まれ、隣接する更生パネルの他方が、既設管のつなぎ目を挟んで対向する他方の被更生部に含まれている場合、これらの隣接する更生パネルの隙間を上述した電熱線を含む目地材でシールすると、目地材が隣接する更生パネルの両方に融着することとなり、従って、地震動などにより隣接する既設管の軸がずれた場合でも、目地材が、既設管のつなぎ目の一方側の被更生部の更生パネルと既設管のつなぎ目の他方側の被更生部の更生パネルとに接着した状態が維持されるからである。
【0248】
以下図面を用いて説明する。
【0249】
図28は、既設管のつなぎ目を挟んで対向する2つの被更生部10aの一方の更生パネル110と、対向する2つの被更生部10aの他方の更生パネル110との隙間をシールする方法を説明するための図であり、
図28(a)は、既設管のつなぎ目を挟んで対向する2つの更生管2001および2002を示し、
図28(b)は、
図28(a)のXh-Xh線断面の構造を示し、
図28(c)は、
図28(b)のR9部分を拡大して示す。
【0250】
図28(b)に示すように、既設管のつなぎ目Jを挟んで対向する2つの被更生部10aの一方の更生パネル110と、対向する2つの被更生部10aの他方の更生パネル110との隙間に目地材70が充填されている。
【0251】
この目地材70には、
図28(c)に示すように、電熱線70aが設けられており、電熱線70aへの通電による発熱により目地材70の可撓性のある熱可塑性樹脂が溶融して、対向する更生パネル110の両方に融着することとなる。
【0252】
このように目地材70が対向する更生パネル110に融着した状態では、地震動により既設管のつなぎ目Jを挟んで対向する2つの被更生部10aの一方と他方とで軸方向がずれた場合でも、目地材70が対向する2つの被更生部10aの両方に融着した状態は維持することが可能となる。
【0253】
図29は、既設管のつなぎ目を挟んで対向する2つの被更生部10aの間で軸方向がずれた場合を示す図であり、
図29(a)は、既設管のつなぎ目を挟んで対向する2つの更生管2001および2002を示し、
図29(b)は、
図29(a)のXi-Xi線断面の構造を示し、
図29(c)は、
図29(b)のR10部分を拡大して示す。
【0254】
すなわち、地震動により既設管のつなぎ目Jを挟んで対向する2つの被更生部10aの一方と他方とで軸方向がずれた場合でも(
図29(a)、
図29(b)参照)、目地材70の一端側が2つの被更生部10aの一方に接着し、目地材70の他端側が2つの被更生部10aの他方に接着した状態が維持される(
図29(c)参照)。
【0255】
その結果、既設管のつなぎ目Jを挟んで対向する2つの被更生部10aの間で軸方向がずれた場合でも、既設管のつなぎ目Jを挟んで対向する2つの更生管2001および2002の間で水密性が失われることはなく、地震動による既設管の軸ズレにも耐える更生を行うことが可能となる。
【0256】
以上説明したように、実施形態2の更生方法では、被更生部10aの内周面を仮想的に4つの分割更生面S1~S4に分割し、これらの分割更生面S1~S4の各々毎に、支持具140の固定、更生パネル110の取付け、充填材130の注入を行うので、更生作業が、被更生部10aの内周面の全周に比べて狭い領域(分割更生面S1~S4)で順次完結することとなる。その結果、1回の充填材の注入量が少なくなり、充填の際には十分は充填圧をかけることが可能となる。
【0257】
これにより、充填材130でのピンホールの発生を抑制して充填材の強度低下を防止あるいは軽減することができる。また、1回の充填材の注入量が少なくなるので、更生パネルにかかる荷重が軽減され、更生管の変形の恐れを低減することができる。
【0258】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0259】
本発明は、既設の管状構造物の内周面上に固定される更生パネルを含む更生体として、既設の管状構造物に対する更生パネルの固定強度を高めることができる更生体を得ることができるものとして有用である。
【0260】
さらに、本発明は、このような更生体を用いて既設の管状構造物を更生可能とする更生方法を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0261】
10 既設管
50 パネル保持具(規制部材)
60 止水治具
100、200 更生体
110 更生パネル
110a 第1のパネル(スタートパネル)
101 第1の溝部
111 第1の突出部
110b 第2のパネル(標準パネル)
102 第2の溝部
112 第2の突出部
110c 第3のパネル(エンドパネル)
103 第3の溝部
113 第3の突出部
110d 第4のパネル(コーナーパネル)
104 第4の溝部
114 第4の突出部
120、120a、120b 支持具
140、140a~140c 支持具(固定器具)
41 ベース部材
42 固定部材
43、43a、43b 係合部材
160a、160b 接続部材
164 当接片
1000、2000 更生体