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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022043999
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】光学フィルターおよびその用途
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20220309BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220309BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20220309BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20220309BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/22
G02B5/28
G03B11/00
H04N5/225 400
H04N5/225 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021130628
(22)【出願日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2020148925
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】岸田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 浩二
【テーマコード(参考)】
2H083
2H148
5C122
【Fターム(参考)】
2H083AA04
2H083AA11
2H083AA22
2H083AA26
2H083AA32
2H148AA12
2H148AA18
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
2H148GA12
5C122EA01
5C122EA54
5C122FB20
5C122GE05
5C122HB09
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】光学フィルターの外周を密閉した状態で固体撮像装置に具備した場合においても、固体撮像装置製造プロセスの加熱時に変形の少ない光学フィルターおよび該光学フィルターを用いた装置を提供すること。
【解決手段】基材を含み、一方の面から反対の面まで貫通した細孔を有する光学フィルター。前記細孔の長径は、光学フィルターの直上から観察した場合に36μm未満であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を含み、一方の面から反対の面まで貫通した細孔を有する光学フィルター。
【請求項2】
前記細孔の長径が、光学フィルターの直上から観察した場合に36μm未満である請求項1に記載の光学フィルター。
【請求項3】
光学フィルターに垂直な方向から観察した場合に、前記細孔の最小面積が5μm2以上であり、かつ、最大面積が1000μm2以下である請求項1または2に記載の光学フィルター。
【請求項4】
前記細孔が、光学フィルター外周縁から1mm以上内側に位置する請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項5】
前記細孔が、光学フィルターの一方の面の垂直方向に対して1°~60°の角度で貫通している請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項6】
前記基材の厚みが0.21mm以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項7】
光学フィルターの面積が60mm2以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項8】
少なくとも1層の樹脂層を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項9】
前記樹脂層が色素を含有する請求項8に記載の光学フィルター。
【請求項10】
前記基材が樹脂層である請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項11】
前記樹脂層が色素を含有する請求項10に記載の光学フィルター。
【請求項12】
前記基材の少なくとも一方の面に、さらに樹脂層を有する請求項11に記載の光学フィルター。
【請求項13】
誘電体多層膜をさらに含む請求項1~12のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項14】
近赤外線カットフィルターである請求項1~13のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項15】
可視光線と一部の近赤外線を透過するデュアルバンドパスフィルターである請求項1~13のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する撮像装置。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する光学センサー。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか1項に記載の光学フィルターの製造方法であって、
加速イオン照射またはレーザー照射により基材または光学フィルターに細孔を形成する工程を含む光学フィルターの製造方法。
【請求項20】
前記細孔を形成する工程が、パルスレーザー照射により行われる請求項19に記載の光学フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルターおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話、スマートフォン、ドローン、監視カメラ、車載用センシングカメラなどの固体撮像装置には、カラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されている。これら固体撮像素子は、その受光部において近赤外線に感度を有するセンサーを使用しているために、視感度補正を行うことが必要であり、光学フィルター(例えば近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
【0003】
このような光学フィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、樹脂に誘電体多層膜を積層した近赤外線カットフィルター、リン酸銅塩、ホスホン酸銅塩、スルホン酸銅塩などの銅イオンの吸収を利用した近赤外線カットフィルターなどが知られている。
【0004】
近年固体撮像装置は、より小型および薄型が求められており、視感度補正を行う光学フィルターもより薄型が求められている。
そのような薄型に対応した光学フィルターとしては、例えば、色素入り樹脂層を基板とした厚さ0.1mmの近赤外線カットフィルター(例えば特許文献1)、0.05mmのガラス基板に色素入り樹脂層および誘電体多層膜を形成した近赤外線カットフィルター(例えば特許文献2)、混合割合を最適化することで、薄膜と吸収特性を両立した銅イオンの吸収を利用した近赤外線カットフィルター(例えば特許文献3、4)が知られている。
【0005】
これら光学フィルターを固体撮像装置に具備する際、センサー表面への異物の混入を避けるために、センサーと光学フィルター間はフレームを介して密閉状態で具備される。薄型に対応した光学フィルターを密閉状態で具備した固体撮像装置では、固体撮像装置製造プロセスに必要となる加熱を行った際、加熱による気体の膨張により密閉空間の圧力が上昇し、密閉空間内部と外部に圧力差が生じる。その圧力差によって、光学フィルターの変形や、レンズと接触することによる光軸ズレや、フレームとの密着不良などが発生する場合があった。また同様に、異物除去のために真空プラズマを照射するプロセスにおいても、上記密閉状態の空間と外部真空空間との差圧によって、光学フィルターの変形や、光学フィルターとフレームとの密着不良が発生していた。
【0006】
このような製造プロセスにおける加熱による変形は、光学フィルターが薄膜化するほど顕著であり、従来の光学フィルターでは、固体撮像装置製造プロセスの温度変化または圧力変化時に変形が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-100084号公報
【特許文献2】特開2012-103340号公報
【特許文献3】特開2015-089855号公報
【特許文献4】国際公開第2019/058858号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、光学フィルターの外周を密閉した状態で固体撮像装置に具備した場合においても、固体撮像装置製造プロセスの加熱時に変形の少ない光学フィルターおよび該光学フィルターを用いた装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 基材を含み、一方の面から反対の面まで貫通した細孔を有する光学フィルター。
[2] 前記細孔の長径が、光学フィルターの直上から観察した場合に36μm未満である項[1]に記載の光学フィルター。
【0010】
[3] 光学フィルターに垂直な方向から観察した場合に、前記細孔の最小面積が5μm2以上であり、かつ、最大面積が1000μm2以下である項[1]または[2]に記載の光学フィルター。
【0011】
[4] 前記細孔が、光学フィルター外周縁から1mm以上内側に位置する項[1]~[3]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[5] 前記細孔が、光学フィルターの一方の面の垂直方向に対して1°~60°の角度で貫通している項[1]~[4]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【0012】
[6] 前記基材の厚みが0.21mm以下である項[1]~[5]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[7] 光学フィルターの面積が60mm2以上である項[1]~[6]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【0013】
[8] 少なくとも1層の樹脂層を含む項[1]~[7]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[9] 前記樹脂層が色素を含有する項[8]に記載の光学フィルター。
【0014】
[10] 前記基材が樹脂層である項[1]~[7]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[11] 前記樹脂層が色素を含有する項[10]に記載の光学フィルター。
【0015】
[12] 前記基材の少なくとも一方の面に、さらに樹脂層を有する項[11]に記載の光学フィルター。
[13] 誘電体多層膜をさらに含む項[1]~[12]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【0016】
[14] 近赤外線カットフィルターである項[1]~[13]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[15] 可視光線と一部の近赤外線を透過するデュアルバンドパスフィルターである項[1]~[13]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
【0017】
[16] 項[1]~[15]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する撮像装置。
[17] 項[1]~[15]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
【0018】
[18] 項[1]~[15]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する光学センサー。
[19] 項[1]~[15]のいずれか1項に記載の光学フィルターの製造方法であって、
加速イオン照射またはレーザー照射により基材または光学フィルターに細孔を形成する工程を含む光学フィルターの製造方法。
【0019】
[20] 前記細孔を形成する工程が、パルスレーザー照射により行われる項[19]に記載の光学フィルターの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学フィルターの外周を密閉した状態で固体撮像装置に具備した場合においても、固体撮像装置製造プロセスの加熱時に変形の少ない光学フィルターおよび該光学フィルターを用いた装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】光学フィルターに形成された細孔の形状等を説明するための概略図である。
図2】光学フィルターに形成された細孔の貫通角度を説明するための断面概略図である。
図3】本発明の光学フィルターの態様の例を示す断面概略図である。
図4】本発明のカメラモジュールの一例を示す断面概略図である。
図5】実施例で行った変形量評価で用いた液晶ポリマーからなるフレームの概略図である。
図6】実施例で行った変形量評価で用いた変形量評価サンプルの断面概略図である。
図7】実施例1で観測した細孔を示す光学顕微鏡写真である。
図8】実施例6で形成した遮光膜を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について、必要に応じて図面に基づいて説明するが、それらの図面は単に図解のために提供されるものであり、本発明はそれらの図面に何ら限定されない。また、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、厚さの比率等は実際のものとは異なることに留意されたい。さらに、以下の説明において、同一もしくは略同一の機能および構成を有する構成用途については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
[光学フィルター]
本発明に係る光学フィルターは、一方の面から反対の面まで貫通した細孔を有する基材を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の光学フィルターの面積は、好ましくは60mm2以上、より好ましくは60~180mm2、さらに好ましくは60~120mm2である。光学フィルターの面積が前記範囲内であることにより、上述した効果がより顕著なものとなる。
【0025】
本発明の光学フィルターの厚みは、好ましくは0.02~0.22mm、より好ましくは0.035~0.195mm、さらに好ましくは0.045~0.16mmである。
【0026】
<細孔>
本発明における細孔とは、基材または該基材を含む光学フィルターの上面から下面に貫通した穴を表す。
【0027】
本発明の光学フィルターにおいて、前記細孔は、図1(A)および(B)に示すように一つでもよく、図1(C)に示すように複数でもよい。また、前記細孔の形状は、図1(A)および(B)に示すように円形状でも多角形状でもよいが、光学フィルターを固体撮像装置に具備した際、固体撮像装置から得られる画像の不良が少ない観点から、円形状が好ましい。
【0028】
また、前記細孔は、図2(A)に示すように光学フィルターの主面に対して垂直の穴でもよく、図2(B)に示すように傾斜を伴った穴でもよい。図2(B)に示すように前記細孔が傾斜を伴った穴の場合、前記細孔の貫通角度は、光学フィルターの一方の面の垂直方向に対して、好ましくは1°~60°、より好ましくは1°~45°である。
【0029】
本発明の光学フィルターにおいて、前記細孔は、図3に示すように基材を含む光学フィルター全体の一方の面から反対の面まで貫通していることが好ましい。
【0030】
前記細孔の長径は、光学フィルターを固体撮像装置に具備した際、固体撮像装置から得られる画像の不良が少ない観点から、好ましくは36μm未満、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。ここで細孔の長径とは、光学フィルターの上面から観察した領域の中で最も長い経を表す。光学フィルターが複数の細孔を有する場合、それらの値の中で最も大きな値を表す。
【0031】
前記細孔の最大面積は、光学フィルターを固体撮像装置に具備した際、固体撮像装置から得られる画像の不良が少ない観点から、好ましくは1000μm2以下、より好ましくは800μm2以下、さらに好ましくは700μm2以下、最も好ましくは500μm2以下である。ここで細孔の最大面積とは、光学フィルターの上面から観察した水平方向に抽出した領域の面積と、下面から観察した水平方向に抽出した領域の面積とを比較し、大きな値を表す。光学フィルターが複数の細孔を有する場合、それらの値の中で最も大きな値を表す。
【0032】
前記細孔の最小面積は、固体撮像装置内の密閉空間と光学フィルターを介した外部との圧力差を低減する観点から、好ましくは5μm2以上、より好ましくは10μm2以上、さらに好ましくは30μm2以上である。ここで細孔の最小面積とは、光学フィルターの上面から観察した水平方向に抽出した領域の面積と、下面から観察した水平方向に抽出した領域の面積とを比較し、小さな値を表す。光学フィルターが複数の細孔を有する場合、それらの値の中で最も小さな値を表す。
【0033】
前記細孔は、光学フィルター外周縁から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、さらに好ましくは3mm以上内側に位置するように設ける。光学フィルターの中心付近に細孔があることにより、上述した効果がより顕著なものとなる。
【0034】
<細孔の形成方法>
前記細孔の形成方法は、上記条件を満たす範囲の細孔を形成するものあれば特に限定されないが、例えば、微細な針を押し当てることによる形成、高圧微粒子の照射による形成、高圧液体の照射による形成、加速イオンの照射による形成、レーザー照射による形成などの加工法が挙げられる。これらの中でも、細孔の形状制御が良い観点から、加速イオン照射による形成またはレーザー照射による形成が好ましい。また、加工時間が短い観点からレーザー照射による形成がより好ましく、細孔周辺の劣化の影響が少ない観点から、パルスレーザー照射による形成が特に好ましい。パルスレーザー照射による細孔形成は、例えば、後述する実施例に記載の方法により行うことができる。
【0035】
前記細孔の形成は、基材のみに対して行ってもよく、基材を含む光学フィルターに対して行ってもよいが、上述した効果がより顕著なものとなる観点から、光学フィルターに対して行うことがより好ましい。
【0036】
[基材]
前記基材は透明性を有しているものが好ましい。本発明でいう透明性とは、波長420~600nmの範囲の透過率の平均値が50%以上であることを表す。このような基材の材質として、例えば、ガラス;リン酸ガラス、フツリン酸ガラス、アルミナガラス、アルミン酸イットリウム、酸化イットリウムなどの特殊ガラス;および樹脂が挙げられる。
【0037】
また、基材は、1層でも複数層から構成されてもよく、上記材料から選ばれる1種の材質から構成されても、複数種から構成されてもよく、適宜混合した材料でもよい。
基材を構成する層のうち少なくとも1層は、色素、好ましくは近赤外線吸収剤を含有するものが好ましく、また紫外線吸収剤を含有してもよい。近赤外線吸収剤が含まれる層と、紫外線吸収剤が含まれる層とは、同一の層であってもよく、異なる層であってもよい。基材とは別の樹脂と吸収剤からなる吸収層を有してもよい。
【0038】
<ガラス>
前記ガラスとしては、例えば、ケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどが挙げられる。
【0039】
<特殊ガラス>
前記リン酸ガラスや前記フツリン酸ガラスとしては、例えば、松浪硝子工業社製のBS3、BS4、BS6、BS7、BS8、BS10、BS11、BS12、BS13、BS16、BS17等、国際公開第2012/018026号に記載のフツリン酸塩系ガラスなどが挙げられる。前記アルミナガラスとしては、例えば日本ガイシ社製「ハイセラム」などが挙げられる。前記アルミン酸イットリウムや前記酸化イットリウムとしては、例えば、クアーズテック社製「EXYRIA(登録商標)」などが挙げられる。
【0040】
<樹脂>
前記樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリシクロオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エン・チオール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などが挙げられる。これらの中では、ポリシクロオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂が好ましい。
【0041】
前記樹脂は、原料成分の分子構造を調整する方法等により、屈折率を調整できる。具体的には、原料成分のポリマーの主鎖や側鎖に特定の構造を付与する方法が挙げられる。ポリマー内に付与する構造は特に限定されないが、例えば、ノルボルネン骨格、フルオレン骨格が挙げられる。
【0042】
前記樹脂として、市販品を用いてもよい。市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製「オグソール(登録商標)EA-F5003」(アクリル系樹脂、屈折率:1.60)、東京化成工業(株)製「ポリメチルメタクリレート」(屈折率:1 .49)、東京化成工業(株)製「ポリイソブチルメタクリレート」(屈折率:1.48)、三菱レイヨン(株)製「BR50」(屈折率:1.56)等が挙げられる。
【0043】
また、ポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、大阪ガスケミカル(株)製「OKP4HT」(屈折率:1.64)、「OKP4」(屈折率:1.61)、「B-OKP2」(屈折率:1.64) 、「OKP-850」(屈折率:1.65)、東洋紡(株)製「バイロン(登録商標)103」(屈折率:1.55)などが挙げられ、ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、例えば、sabic社製「LeXan(登録商標)ML9103」(屈折率:1.59)、「xylex(登録商標)7507」、三菱ガス化学(株)製「EP5000」(屈折率:1.63) 、帝人化成(株)製「SP3810」(屈折率:1.63)、「SP1516」(屈折率:1.60) 、「TS2020」(屈折率:1.59)などが挙げられ、ノルボルネン系樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製「ARTON(登録商標)」(屈折率:1.51)、日本ゼオン(株)製、「ZEONOR(登録商標)」(屈折率:1.53)、「ZEONEX(登録商標)」(屈折率:1.53)などが挙げられる。
【0044】
ポリエーテル系樹脂は、主鎖にエーテル結合を形成する反応により得られる重合体であり、下記式(1)および(2)で表される構造単位(以下、それぞれ「構造単位(1)」および「構造単位(2)」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位を有する重合体であることが好ましい。
【0045】
【化1】
【0046】
【化2】
【0047】
前記式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立に炭素数1~12の1価の有機基を示す。a~dは、それぞれ独立に0~4の整数を示し、好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
【0048】
炭素数1~12の1価の有機基としては、炭素数1~12の1価の炭化水素基、ならびに、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1~12の1価の有機基等が挙げられる。
【0049】
炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、炭素数1~12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基、炭素数3~12の脂環式炭化水素基および炭素数6~12の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0050】
前記炭素数1~12の直鎖または分岐鎖の炭化水素基としては、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖の炭化水素基が好ましく、炭素数1~5の直鎖または分岐鎖の炭化水素基がより好ましい。
【0051】
前記直鎖または分岐鎖の炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基およびn-ヘプチル基等が挙げられる。
【0052】
前記炭素数3~12の脂環式炭化水素基としては、炭素数3~8の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3または4の脂環式炭化水素基がより好ましい。
炭素数3~12の脂環式炭化水素基の好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基およびシクロへキシル基等のシクロアルキル基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基が挙げられる。当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素でもよい。
【0053】
前記炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基およびナフチル基等が挙げられる。当該芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香族環上のいずれの炭素でもよい。
【0054】
酸素原子を含む炭素数1~12の有機基としては、水素原子、炭素原子および酸素原子からなる有機基が挙げられ、中でも、エーテル結合、カルボニル基またはエステル結合と炭化水素基とからなる総炭素数1~12の有機基等を好ましく挙げることができる。
【0055】
エーテル結合を有する総炭素数1~12の有機基としては、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~12のアルケニルオキシ基、炭素数2~12のアルキニルオキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基および炭素数1~12のアルコキシアルキル基等が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、プロペニルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基およびメトキシメチル基等が挙げられる。
【0056】
カルボニル基を有する総炭素数1~12の有機基としては、炭素数2~12のアシル基等が挙げられ、具体的には、アセチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基およびベンゾイル基等が挙げられる。
【0057】
エステル結合を有する総炭素数1~12の有機基としては、炭素数2~12のアシルオキシ基等が挙げられ、具体的には、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、イソプロピオニルオキシ基およびベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
【0058】
窒素原子を含む炭素数1~12の有機基としては、水素原子、炭素原子および窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、シアノ基、イミダゾール基、トリアゾール基、ベンズイミダゾール基およびベンズトリアゾール基等が挙げられる。
【0059】
酸素原子および窒素原子を含む炭素数1~12の有機基としては、水素原子、炭素原子、酸素原子、および、窒素原子からなる有機基が挙げられ、具体的には、オキサゾール基、オキサジアゾール基、ベンズオキサゾール基およびベンズオキサジアゾール基等が挙げられる。
【0060】
前記式(1)におけるR1~R4としては、樹脂(1)の吸水(湿)性の点から炭素数1~12の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数6~12の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
【0061】
前記式(2)中、R1~R4およびa~dは、それぞれ独立に前記式(1)中のR1~R4およびa~dと同義であり、Yは、単結合、-SO2-または-CO-を示し、R5およびR6は、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素数1~12の1価の有機基またはニトロ基を示し、mは0または1を示す。但し、mが0の時、R5はシアノ基ではない。eおよびfは、それぞれ独立に0~4の整数を示し、好ましくは0である。
【0062】
炭素数1~12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1~12の1価の有機基と同様のものが挙げられる。
前記樹脂(1)は、前記構造単位(1)と前記構造単位(2)とのモル比(但し、両者(構造単位(1)+構造単位(2))の合計は100である。)が、光学特性、耐熱性および力学的特性の観点から、構造単位(1):構造単位(2)=50:50~100:0であることが好ましく、構造単位(1):構造単位(2)=70:30~100:0であることがより好ましく、構造単位(1):構造単位(2)=80:20~100:0であることがさらに好ましい。なお、本明細書において、力学的特性とは、樹脂の引張強度、破断伸びおよび引張弾性率等の性質のことをいう。
【0063】
また、前記樹脂(1)は、さらに、下記式(3)で表わされる構造単位および下記式(4)で表わされる構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一つの構造単位(以下「構造単位(3-4)」ともいう。)を有してもよい。前記樹脂(1)がこのような構造単位(3-4)を有すると、該樹脂(1)を含む基材の力学的特性が向上するため好ましい。
【0064】
【化3】
【0065】
【化4】
【0066】
前記式(3)中、R7およびR8は、それぞれ独立に炭素数1~12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-CONH-、-COO-または炭素数1~12の2価の有機基を示し、nは0または1を示す。gおよびhは、それぞれ独立に0~4の整数を示し、好ましくは0である。
【0067】
前記式(4)中、R5、R6、Y、m、eおよびfは、それぞれ独立に前記式(2)中のR5、R6、Y、m、eおよびfと同義であり、R7、R8、Z、n、gおよびhは、それぞれ独立に前記式(3)中のR7、R8、Z、n、gおよびhと同義である。
【0068】
炭素数1~12の1価の有機基としては、前記式(1)における炭素数1~12の1価の有機基と同様のものが挙げられる。
炭素数1~12の2価の有機基としては、炭素数1~12の2価の炭化水素基、炭素数1~12の2価のハロゲン化炭化水素基、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1~12の2価の有機基、ならびに、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1~12の2価のハロゲン化有機基等が挙げられる。
【0069】
炭素数1~12の2価の炭化水素基としては、炭素数1~12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基、炭素数3~12の2価の脂環式炭化水素基および炭素数6~12の2価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0070】
炭素数1~12の直鎖または分岐鎖の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピリデン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基およびヘプタメチレン基等が挙げられる。
【0071】
炭素数3~12の2価の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基等のシクロアルキレン基;シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基およびシクロヘキセニレン基等のシクロアルケニレン基などが挙げられる。
【0072】
炭素数6~12の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基およびビフェニレン基等が挙げられる。
炭素数1~12の2価のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1~12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基、炭素数3~12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基および炭素数6~12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0073】
炭素数1~12の直鎖または分岐鎖の2価のハロゲン化炭化水素基としては、ジフロオロメチレン基、ジクロロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、テトラクロロエチレン基、ヘキサフルオロトリメチレン基、ヘキサクロロトリメチレン基、ヘキサフルオロイソプロピリデン基およびヘキサクロロイソプロピリデン基等が挙げられる。
【0074】
炭素数3~12の2価のハロゲン化脂環式炭化水素基としては、前記炭素数3~12の2価の脂環式炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0075】
炭素数6~12の2価のハロゲン化芳香族炭化水素基としては、前記炭素数6~12の2価の芳香族炭化水素基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0076】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1~12の有機基としては、水素原子および炭素原子と、酸素原子および/または窒素原子とからなる有機基が挙げられ、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合またはアミド結合と炭化水素基とを有する総炭素数1~12の2価の有機基等が挙げられる。
【0077】
酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1~12の2価のハロゲン化有機基としては、具体的には、酸素原子および窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を含む炭素数1~12の2価の有機基において例示した基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基等が挙げられる。
【0078】
前記式(3)におけるZとしては、単結合、-O-、-SO2-、-CO-または炭素数1~12の2価の有機基が好ましく、樹脂(1)の吸水(湿)性の点から炭素数1~12の2価の炭化水素基、炭素数1~12の2価のハロゲン化炭化水素基または炭素数3~12の2価の脂環式炭化水素基がより好ましい。
【0079】
前記基材は、樹脂層を有し、かつ、該樹脂層がノルボルネン系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリエーテル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記樹脂層を有することにより、波長430~580nmにおける透明性が高く、耐熱性が高く、反りにくい、破断しにくい、面内位相差R0が低い光学フィルターが得られる。そのため、前記樹脂層を有する光学フィルターを具備する固体撮像装置は、画質が高く、製造を容易とすることができる。
【0080】
樹脂層の波長430~580nmにおける透過率の平均値は、固体撮像装置が高感度となることから、厚さ1μmにおいて70%以上であることが好ましい。
樹脂層のガラス転移温度は、固体撮像装置を低温リフロー工程で製造することができることから、140℃以上であることが好ましい。
【0081】
前記樹脂層は基材中に1層でもよく、複数層でもよく、基材が樹脂層のみから構成されてもよい。また、基材の少なくとも一方の面に、さらに樹脂層を有する構成でもよい。
前記基材の厚さは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、上限は、好ましくは0.21mm以下、より好ましくは0.18mm以下、さらに好ましくは0.15mm以下であり、下限は、好ましくは0.015mm以上、より好ましくは0.03mm以上、さらに好ましくは0.045mm以上である。厚さが前記範囲であれば、光学フィルターの反りが少なく、十分に薄い固体撮像素子が得られる。
【0082】
<樹脂層の形成方法>
前記樹脂層は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングしてもよい。
【0083】
(A)溶融成形
前記樹脂層は、樹脂と近赤外線吸収色素とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;樹脂と近赤外線吸収色素とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法;または、近赤外線吸収色素、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などにより得ることができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
【0084】
(B)キャスト成形
前記樹脂層は、近赤外線吸収色素、樹脂および溶剤を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤と、近赤外線吸収色素と、樹脂とを含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングする方法;または、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤と、色素化合物と、樹脂とを含む硬化性組成物を適当な支持体の上にキャスティングして硬化および乾燥させる方法などにより得ることもできる。
【0085】
前記支持体としては、特に限定されず、基材の材質の例として挙げたガラス板、強化ガラス板、特殊ガラスまたは樹脂からなる支持体を用いることができ、また、基材の材質以外の支持体、例えばスチールベルト、スチールドラムなどを用いてもよい。
【0086】
前記基材が樹脂製基板からなる基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、支持体から塗膜を剥離することにより得ることができ、また、前記基材が、支持体上に樹脂層が積層された基材である場合には、該基材は、キャスト成形後、塗膜を剥離しないことで得ることができる。
【0087】
前記方法で得られた樹脂層中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよく、通常樹脂層の重さに対して3質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。残留溶剤量が前記範囲にあると、光学フィルターの変形や光学特性の変化が起こりにくい、所望の機能を容易に発揮できる樹脂層が得られる。
【0088】
[近赤外線吸収剤]
前記近赤外線吸収剤は、好ましくは波長620~1200nm、より好ましくは650~1150nm、さらに好ましくは680~1100nm、特に好ましくは700~1100nmの範囲に吸収極大波長を有する。吸収極大波長が前記範囲にあることにより、波長650nm~700nmの範囲において固体撮像素子が取り込む光の量が調整され市感度補正が適切となり、また、人間の視感度が低い波長751nm以上の範囲の光が固体撮像素子に入る量を減らすことができ、固体撮像装置を人間の視感度により近づけることができる。
【0089】
前記近赤外線吸収剤としては、例えば、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素、リン酸銅塩などが挙げられる。これら色素の構造は特に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわないものであれば一般的に知られているものや市販品を使用することができる。また、本発明の効果を損なわないものであれば、光学フィルターに含有させる近赤外線吸収剤は、1種でも複数種でもよい。
【0090】
<シアニン系色素>
前記シアニン系色素としては、本発明の効果を損なわないものであれば、特に限定されないが、例えば特開2009-108267号公報、特開2010-72575号公報、特開2016-060774号公報に記載のシアニン系色素が挙げられる。
【0091】
<フタロシアニン系色素>
前記フタロシアニン系色素としては、本発明の効果を損なわないものであれば、特に限定されないが、例えば特開昭60-224589号公報、特表1005-537319号公報、特開平4-23868号公報、特開平4-39361号公報、特開平5-78364号公報、特開平5-222047号公報、特開平5-222301号公報、特開平5-222302号公報、特開平5-345861号公報、特開平6-25548号公報、特開平6-107663号公報、特開平6-192584号公報、特開平6-228533号公報、特開平7-118551号公報、特開平7-118552号公報、特開平8-120186号公報、特開平8-225751号公報、特開平9-202860号公報、特開平10-120927号公報、特開平10-182995号公報、特開平11-35838号公報、特開2000-26748号公報、特開2000-63691号公報、特開2001-106689号公報、特開2004-18561号公報、特開2005-220060号公報、特開2007-169343号公報、特開2013-195480号公報の段落[0026]~[0027]、国際公開第2015/025779号の表1等に記載の化合物等が挙げられる。
【0092】
フタロシアニン系色素は、吸収極大波長近傍が急峻な吸収特性を有することが多く、本発明の光学フィルターにフタロシアニン系色素を用いる場合には、少なくとも1種の他の近赤外線吸収剤と併用することが好ましい。
【0093】
<ジチオール系色素>
前記ジチオール系色素としては、本発明の効果を損なわないものであれば、特に限定されないが、例えば特開2006-215395号公報、WO2008/086931号に記載のジチオール系色素が挙げられる。
【0094】
また、例えばWO1998/034988号に記載のようにジチオール系色素の対イオン結合体を用いてもよい。
<スクアリリウム系色素>
前記スクアリリウム系色素としては、本発明の効果を損なわないものであれば、特に限定されないが、例えば、下記式(5)~(7)で表されるスクアリリウム系色素、特開2014-074002号公報、特開2014-052431号公報に記載のスクアリリウム系色素などが挙げられ、一般に知られている方法で合成すればよい。
【0095】
【化5】
【0096】
【化6】
【0097】
【化7】
【0098】
前記式(5)~(7)中、Xは独立に、酸素原子、硫黄原子、セレン原子または-NH-を表し、 前記R1およびR1'としてはそれぞれ独立に、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、ニトロ基が好ましく、水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、水酸基がより好ましい。R2~R8はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-L1または-NRgh基を表す。RgおよびRhはそれぞれ独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Le、-Lf、-Lg、-Lhまたは-C(O)Ri基(Riは、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。)を表し、R9は独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ld、-Le、-Lf、-Lgまたは-Lhを表す。
【0099】
1は、La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、LgまたはLhである。
前記La~Lhは、以下の基を表す。(La)前記置換基Lを有してもよい炭素数1~12の脂肪族炭化水素基(Lb)前記置換基Lを有してもよい炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基(Lc)前記置換基Lを有してもよい炭素数3~14の脂環式炭化水素基(Ld)前記置換基Lを有してもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素基(Le)前記置換基Lを有してもよい炭素数3~14の複素環基(Lf)前記置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基(Lg)前記置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアシル基(Lh)前記置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアルコキシカルボニル基(Li)前記置換基Lを有してもよい炭素数1~12のスルフィド基またはジスルフィド基
9は独立に、水素原子、-La、-Lb、-Lc、-Ldまたは-Leを表す。
【0100】
<ジイモニウム系色素>
前記ジイモニウム系色素としては、本発明の効果を損なわないものであれば、特に限定されないが、例えば、下記式(8-1)または(8-2)で表されるジイモニウム系色素、特許第4168031号公報、特許第4252961号公報、特開昭63-165392号公報、WO2004/048480等に記載のジイモニウム系色素などが挙げられ、一般的に知られている方法で合成すればよい。
【0101】
【化8】
【0102】
式(8-1)および(8-2)中、Rdi1~Rdi12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基、リン酸基、-SRi基、-SO2i基、-OSO2i基または下記La~Lhのいずれかを表し、RgおよびRhは、それぞれ独立に水素原子、-C(O)Ri基または下記La~Leのいずれかを表し、Riは下記La~Leのいずれかを表し、(La)炭素数1~12の脂肪族炭化水素基(Lb)炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基(Lc)炭素数3~14の脂環式炭化水素基(Ld)炭素数6~14の芳香族炭化水素基(Le)炭素数3~14の複素環基(Lf)炭素数1~12のアルコキシ基(Lg)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアシル基、(Lh)置換基Lを有してもよい炭素数1~12のアルコキシカルボニル基
置換基Lは、炭素数1~12の脂肪族炭化水素基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14の脂環式炭化水素基、炭素数6~14の芳香族炭化水素基および炭素数3~14の複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
隣り合うR3同士は置換基Lを有してもよい環を形成してもよく、
nは0~4の整数を表し、
Xは電荷を中和させるのに必要なアニオンを表し、
Mは金属原子を表し、
ZはD(Ri4を表し、Dは窒素原子、リン原子またはビスマス原子を表し、
yは0もしくは1を表す。
【0103】
前記Rdi1~Rdi8は、好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基から選ばれる基であり、より好ましくはイソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ベンジル基から選ばれる基である。
【0104】
前記Rdi9~Rdi12は、好ましくは水素原子、塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、水酸基、アミノ基、ジメチルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、N-メチルアセチルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基、n-ブチルスルホニル基、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基から選ばれる基であり、より好ましくは塩素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、水酸基、ジメチルアミノ基、メトキシ基、エトキシ基、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、トリフルオロメタノイルアミノ基、ペンタフルオロエタノイルアミノ基、tert-ブタノイルアミノ基、シクロヘキシノイルアミノ基から選ばれる基であり、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基から選ばれる基である。同じ芳香環に結合しているR2の数(nの値)は、0~4であれば特に制限されないが、0もしくは1であることが好ましい。
【0105】
前記X-は電荷を中和するのに必要なアニオンであり、式(8-2)のようにアニオンが2価である場合には1イオン、式(8-2)のようにアニオンが1価の場合には2イオンが必要となる。後者の場合は2つのアニオンX-が同一であっても異なっていてもよいが、合成上の観点から同一である方が好ましい。X-またはX2-はこのようなアニオンであれば特に制限されない。
【0106】
前記近赤外線吸収剤の中でも、式(5)、式(6)、式(8-1)および式(8-2)で表わされる化合物が、可視光透過率の高さ、波長700~750nmの範囲の吸収特性、波長800~1100nmの範囲の遮蔽性能から好ましい。樹脂層への溶解性から、式(5)におけるRsq1~Rsq6は、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、およびそれらの水素基が任意の個数を置換基Lで置換した基から選ばれる基であり、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基およびそれらの水素基の任意の個数を置換基Lで置換した基から選ばれる基である。
【0107】
[紫外線吸収剤]
本発明で用いることができる紫外線吸収剤は、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、メロフタロシアニン系化合物、オキサゾール系化合物、ナフチルイミド系化合物、オキサジアゾール系化合物、オキサジン系化合物、オキサゾリジン系化合物、アントラセン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、波長300~420nmに少なくとも一つの吸収極大を持つことが好ましい。前記近赤外線吸収色素に加え、このような紫外線吸収剤を含有することにより、紫外波長領域においても入射角依存性が小さい光学フィルターを得ることができる。
【0108】
(A)アゾメチン系化合物
前記アゾメチン系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(9)で表すことができる。
【0109】
【化9】
【0110】
式(9)中、Ra1~Ra5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、炭素数1~15のアルキル基、炭素数1~9のアルコキシ基または炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を表す。
【0111】
(B)インドール系化合物
前記インドール系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(10)で表すことができる。
【0112】
【化10】
【0113】
式(10)中、Rb1~Rb5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、アラルキル基、炭素数1~9のアルキル基、炭素数1~9のアルコキシ基または炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を表す。
【0114】
(C)ベンゾトリアゾール系化合物
前記ベンゾトリアゾール系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(11)で表すことができる。
【0115】
【化11】
【0116】
式(11)中、Rc1~Rc3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アラルキル基、炭素数1~9のアルキル基、炭素数1~9のアルコキシ基、または置換基として炭素数1~9のアルコキシカルボニル基を有する炭素数1~9のアルキル基を表す。
【0117】
(D)トリアジン系化合物
前記トリアジン系化合物は、特に限定されるものではないが、例えば下記式(12)、(13)または(14)で表すことができる。
【0118】
【化12】
【0119】
【化13】
【0120】
【化14】
【0121】
式(12)~(14)中、Rd1は、独立に水素原子、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数3~8 のシクロアルキル基、炭素原子数3~8のアルケニル基、炭素原子数6~18のアリール基、炭素原子数7~18のアルキルアリール基またはアリールアルキル基を表す。ただし、これらアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基およびアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素原子数1~12のアルキル基またはアルコキシ基で置換されてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基またはイミノ基で中断されてもよい。また、前記置換及び中断は組み合わされてもよい。Rd2~Rd9は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1~15のアルキル基、炭素原子数3~8 のシクロアルキル基、炭素原子数3~8のアルケニル基、炭素原子数6~18のアリール基、炭素原子数7~18のアルキルアリール基またはアリールアルキル基を表す。
【0122】
(E)市販品
FewChemicals社製「S0511」、BASF社製「Lumogen(登録商標) Fviolet 570」、「Uvitex(登録商標)O B」、昭和化学工業(株)製「Hakkol RF-K」、日本化学工業(株)製「Nikkafluor EFS」、「Nikkafluor SB-conc」などが挙げられる。Exiton社製「A BS 407」、QCRSolutions Corp.社製「UV 381A 」、「UV 381B」 、「UV 382A 」、「UV 386A 」、BASF社製「TINUVIN 326」 、「TINUVIN 460」、「TINUVIN 479」、オリヱント化学(株)製「BONASORB UA3911」などを用いてもよい。
【0123】
<その他成分>
前記樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、酸化防止剤、分散剤、難燃剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、および金属錯体系化合物等の添加剤を含有してもよい。また、上述のキャスト成形により樹脂製基材を得る場合には、レベリング剤や消泡剤を添加することで樹脂製基材の形成を容易にすることができる。これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0124】
前記酸化防止剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,2'-ジオキシ-3,3'-ジ-t-ブチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジル-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンなどが挙げられる。なお、これら添加剤は、樹脂製基材を形成する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を製造する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100質量部に対して、通常0.01~5.0質量部、好ましくは0.05~2.0質量部である。
【0125】
上記の材料は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ、無人航空機等の撮像装置において、モアレや偽色を低減するためのローパスフィルタや波長板の材料として使用される場合がある。
【0126】
[機能膜]
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、機能膜を適宜設けることができる。
【0127】
本発明の光学フィルターは、機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターが機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
【0128】
機能膜としては、反射防止膜、傷つき防止膜、誘電体多層膜、近赤外線反射膜、帯電防止膜、紫外線吸収膜、耐光向上膜、ガスバリア膜、遮光膜などが挙げられる。
機能膜を積層する方法としては、特に限定されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材に、溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
【0129】
また、前記機能膜は、硬化性組成物をバーコーター等で基材または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射および/または加熱等により硬化することによっても得ることができる。得られる基材の破断強度の向上、傷つきにくさ、反りの低減などから、硬化性組成物の機能膜を有することが好ましい。
【0130】
前記硬化性組成物としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
【0131】
前記ウレタン系もしくはウレタンアクリレート系硬化性組成物に含まれる成分としては、例えば、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴウレタン(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらにポリウレタン(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーや、ポリエステル(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーを配合してもよい。
【0132】
前記ビニル化合物類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等を挙げることができるが、これらの例示に限定されるものではない。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0133】
前記エポキシ系もしくはエポキシアクリレート系硬化性組成物に含まれる成分としては、特に限定されないが、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。これら成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらにポリエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーを配合してもよい。
【0134】
前記硬化性組成物の市販品としては、東洋インキ製造(株)製「LCH」、「LAS」;荒川化学工業(株)製「ビームセット」;ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL」、「UVACURE」;JSR(株)製「オプスター」、「デソライトZ」などが挙げられる。
【0135】
また、前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0136】
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性が優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
【0137】
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1μm~20μm、さらに好ましくは0.5μm~10μm、特に好ましくは0.7μm~5μmである。
また、基材と機能膜および/または近赤外線反射膜との密着性や、機能膜と近赤外線反射膜との密着性を上げる目的で、基材や機能膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0139】
<近赤外線反射膜>
本発明に用いることができる近赤外線反射膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜である。このような近赤外線反射膜としては、アルミニウム蒸着膜、貴金属薄膜、酸化インジウムを主成分とし酸化錫を少量含有させた金属酸化物微粒子を分散させた樹脂膜、または後述する誘電体多層膜などが挙げられる。このような近赤外線反射膜を有すると、近赤外線をさらに効果的にカットすることができる。
【0140】
本発明では、近赤外線反射膜は基材の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りの生じにくい光学フィルターを得ることができる。
【0141】
前記近赤外線反射膜の中では、散乱が少ないことや、密着性が良いこと、波長430~580nmの範囲の可視光の透過特性が高いこと、波長800~1100nmの範囲の光の遮蔽性能が高いことから、上述した誘電体多層膜が好ましい。前記近赤外線反射膜が誘電体多層膜であると、得られる固体撮像装置の画質を良くすることができる。
【0142】
<誘電体多層膜>
前記誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層したものが挙げられる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.7~2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、または、酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウムなどを少量(例えば、主成分に対し0~10%)含有させたものなどが挙げられる。
【0143】
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7未満の材料を用いることができ、屈折率の範囲が通常は1.2以上1.7未満の材料が選択される。このような材料としては、例えば、樹脂、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウム、およびこれらを混合したもの、上記材料を屈折率1.7未満となるように空乏を設けたものなどが挙げられる。
【0144】
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これら材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、前記基材上に、直接、CVD法、真空蒸着法、スパッタ法、イオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、ラジカルアシストスパッタ法、イオンビームスパッタ法などにより、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。イオンアシスト蒸着法、イオンプレーティング法、ラジカルアシストスパッタ法は、得られる多層膜の光学膜厚が環境に応じて変化しにくい良質な膜が得られ好ましい。イオンアシスト蒸着法は得られる光学フィルターの反りが少なくさらに好ましい。
【0145】
これら高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、基材に隣接する2層および最外層以外は0.1λ~0.5λの光学厚さが好ましい。光学厚さがこの範囲にあると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さとがほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。基材に隣接する2層は物理厚さ5nm~45nm以下であることが好ましい。また最外層は0.05~0.2λの光学厚さが好ましい。基材に隣接する2層および最外層が上記範囲の厚さであれば、可視光の反射率を低減することができる。
【0146】
また、誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、5~60層、好ましくは10~50層であることが望ましい。
さらに、誘電体多層膜を形成した際に基材に反りが生じてしまう場合には、これを解消するために、基材両面に誘電体多層膜を形成したり、基材の誘電体多層膜を形成した面に紫外線等の電磁波を照射したりする方法等をとることができる。なお、電磁波を照射する場合、誘電体多層膜の形成中に照射してもよいし、形成後別途照射してもよい。
【0147】
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、視野角が広く、良好な光学特性を有することから、例えば、近赤外線カット性能に優れた近赤外線カットフィルターや、可視光と一部の近赤外線を選択的に透過させることができるデュアルバンドパスフィルター等として用いることができる。したがって、カメラモジュールのCCDやCMOSなどの固体撮像素子の視感度補正用として、または、光学センサー用として、有用である。視感度補正用としては、特に、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビ、携帯情報端末、パソコン、ビデオゲーム、携帯ゲーム機、指紋認証システム、距離測定センサー、虹彩認証システム、顔認証システム、距離測定カメラ、デジタルミュージックプレーヤー等に搭載される固体撮像装置に有用である。また、光学センサー用としては、スマートフォン、タブレット端末、携帯電話、スピーカー、スマートスピーカー、ウェアラブルデバイス、自動車、テレビ、ゲーム機、航空機、無人航空機、エアーコンディショナー、ロボット、ロボット掃除機、愛玩用ロボット、農機、指紋認証装置、静脈認証装置、虹彩認証装置、顔認証装置、距離測定装置、血流センサー、医療器具、生体認証装置等に搭載されるセンシング装置の光学センサー用として有用である。
【0148】
<撮像装置>
本発明の撮像装置(具体的には固体撮像装置)は、本発明の光学フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とはCCDやCMOSなどといった固体撮像素子を備えたイメージセンサーである。固体撮像素子を構成する部材としては、シリコンフォトダイオードや有機半導体などの特定の波長の光を電荷に変換する光電変換素子が使用される。
【0149】
本発明の固体撮像装置には、固体撮像素子の全面に位相差フィルム、ワイヤーグリッド等の偏光子を設けてもよい。偏光素子を設けた場合、画像の位相情報が得られ、被写体の反射光を除いた像や、被写体の形状を三次元計測が可能となりより好ましい。
【0150】
本発明の固体撮像素子に設けるワイヤーグリッドは、アルミニウム、ニッケル、銀、白金、タングステン、あるいはこれらの金属を含む合金等などを用いることができ、特開2017-003878号公報、特開2017-005111号公報に記載の偏光子を設けることが好ましい。
【0151】
<カメラモジュール>
本発明のカメラモジュールは、本発明の光学フィルターを具備する。カメラモジュールの断面概略図4を示す。ここで、カメラモジュールとは、(イメージ)センサーやレンズ、フレームを具備し、画像や距離情報を電気信号として出力する装置である。焦点調整機構、あるいは位相検出機構、距離測定機構等を備えてもよい。
【0152】
<光学センサー>
本発明の光学センサーは、本発明の光学フィルターを具備する。光学センサーとしては、例えば、虹彩認証センサー、顔認証センサー、指紋認証センサー、血中酸素濃度センサーなどといった生体認証センサーや、環境光センサー、照度センサーなどが挙げられ、複数の機能を有する複合センサーとすることもできる。
【実施例0153】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
【0154】
実施例におけるパルスレーザー照射による細孔の形成方法、ならびに、各種物性の測定方法および評価方法は以下のとおりである。
<細孔形成方法>
光源としてYAG(Yttrium Aluminum Garnet) を用いたパルスレーザー照射による細孔形成を行った。また、パルスレーザーの波長は第2次高調波である515nmを用いた。以下、実施例のレーザー光源の発振条件である「パルス幅」、「パルスエネルギー」、「平均出力」、「パルス周波数」、「最大発振周波数」、「レーザー波長」、「加工手法」、「ワークの固定」について説明する。
【0155】
「パルス幅」
パルス幅とは、横軸を時間、縦軸を光の出力とした時の単一のパルスレーザーにおける当該曲線の半値幅である。レーザーのパルス幅が短いほど、加工材料に熱影響が広がる前に加工を終えることができる。材料を瞬時に蒸発させることで精密な細孔穴加工が可能となる。この加工法はアブレーション加工と呼ばれる。レーザーのパルス幅がnsec以上の場合、レーザーのパルス幅が、熱が拡散する時間に比べて長くなり、加工材料に熱影響が広がる。その結果、穴の形状がいびつとなり、穴の径も大きくなる。レーザー照射による細孔の形成方法は、好ましくはパルス幅4psec~500fsecであり、より好ましくは8psec~290fsecである。実施例で用いたパルス幅は、全て8 psecである。
【0156】
「パルス周波数」
パルス周波数とは、単一のパルスレーザーが単位時間あたりに発せられる回数である。
【0157】
「最大発振周波数」
最大発振周波数とは、単一のパルスレーザーが単位時間あたりに発せられる回数の最大値であり、発振器仕様により決まる。
【0158】
「パルスエネルギー」
パルスエネルギーとは、単一のパルスレーザーについて光の出力を時間について積分した値である。
【0159】
「平均出力」
平均出力とは、単一のパルスレーザーでの平均出力エネルギーである。また、平均出力(%)は平均出力エネルギーの最大値に対する割合である。
【0160】
「レーザー波長」
レーザー波長は、上記細孔を形成できる限り、特に限定されないが、一般的には波長100nm~12000nmである。これら波長を発するレーザー光源としては、ルビーレーザー、YAGレーザー、アレキサンドライトレーザー、YLFレーザー、YVO4レーザー、Cr:LiSAFレーザー、チタンサファイアレーザー、色素レーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、クリプトンイオンレーザー、窒素レーザー、炭酸ガスレーザー、KrFレーザー、XeClレーザー、ArFレーザー、F2レーザー、フッ化水素レーザー、ヨウ素レーザーが挙げられる。中でもパルス制御のしやすさ、およびパルスエネルギーの観点からYAGレーザーが好ましい。YAGレーザーの第3高調波である355nm、YAGレーザーの基本波長である1064nmでも同様の細孔の加工は可能である。
【0161】
「加工手法」
実施例ではビームローテーターを用いてトレパリング加工を用いた。更にトレパリング加工の内、最外周のみの多点打ちの手法(外郭円周)を用いた。トレパリングとは、穴細孔の輪郭に沿ってエネルギーを投入することによって細孔の形成を行う加工法である。
【0162】
「ワークの固定」
ワークの固定方法については、レーザー光がテーブル底面から反射することによる熱影響を低減する観点から、また細孔が貫通した際にワークの吸着力が低下してワークが動くことを避ける観点から、中空加工が可能な治具を用いた固定方法が好ましい。ここで、中空加工とは吸着テーブル等を用いず、貫通する光学フィルター上下に固定ジグを隣接しない状態で加工する方法である。
【0163】
<変形量評価>
図5に記載の縦20mm×横20mm×高さ3mm、中央に縦9mm×横9mmの穴を有する形状の液晶ポリマー(住友化学株式会社製、スミカスーパーLCP、S1000)からなるフレームを、液晶ポリマーからなるフレームの底面外周部2mmの幅部分に接着剤(デクセリアルズ株式会社製、SA-3220)を用いて、ガラス基板D263(SCHOTT社製厚さ0.3mm)に接着した。接着してから1分後、ガラス基板側からUVコンベア式露光機を用いて露光(露光量:500mJ/cm2、照度:200mW)して硬化した。
【0164】
次に、各光学フィルターを、折る刃式カッターナイフ(オルファ株式会社製、特専A型)を用いて10mm×10mmに切断した。液晶ポリマーからなるフレームの上面の穴の外周部0.5mmの幅に上記接着剤を塗布した。切断した光学フィルターを、上記液晶ポリマーからなるフレームの穴部分の上に覆い、光学フィルターを接着した。接着してから1分後、UVコンベア式露光機を用いて露光(露光量:500mJ/cm2、照度:200mW)して硬化することにより、変形量評価用サンプルを得た。サンプル構成の断面図を図6に示す。
【0165】
得られたサンプルを、ホットプレート(アズワン株式会社製1-4601-32)で160℃に加熱した。加熱後2分の段階における光学フィルターの中央部の変形量が100μm未満であるものを「○」、100μm以上であるものを「×」とした。
【0166】
<カメラ画像評価>
各光学フィルターを用いて特開2016―110067号公報と同様の方法でカメラモジュールを作成した。作成したカメラモジュールを用いて300mm×400mmサイズの白色板をD65光源(X-Rite社製標準光源装置「マクベスジャッジII」)下で撮影し、光学フィルターの細孔がカメラ画像に与える影響について評価した。全く問題がなく許容可能なレベルを「○」、画像上の黒点といった若干の画質不良が認められるもののカメラモジュールとして実用上問題がなく許容可能なレベルを「△」、画質不良の度合いがひどく一般的なカメラモジュール用途としても許容不可能なレベルを「×」と判定した。
【0167】
[実施例1]
JSR(株)製のノルボルネン樹脂「ARTON」(屈折率1.52、ガラス転移温度160℃、以下「樹脂(A)」ともいう。)100質量部に、フェノール系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブAO-20」)0.05質量部を加え、さらに塩化メチレンを加えて溶解し、固形分濃度が15質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャスト成形し、50℃で8時間、さらに減圧下100℃で1時間乾燥後に剥離し、厚さ0.04mm、一辺が80mmの基材を得た。
【0168】
得られた基材の両面に、イオンアシスト真空蒸着装置を用いて、蒸着温度120℃で誘電体多層膜からなる近赤外線反射膜を設計(1)および設計(2)[シリカ(SiO2:550nmの屈折率1.47)層とチタニア(TiO2:550nmの屈折率2.48)層とが交互に積層されてなるもの]で形成し、厚さ0.046mmの光学フィルター1を得た。前記設計(1)および設計(2)を表1に示す。
【0169】
【表1】
【0170】
得られた厚さ0.046mmの光学フィルターを(株)リプスワークス社製レーザー加工機「Pi COOLS #2」を用いて細孔形成加工を行った。加工方法にはビームローテーターを用いたトレバリング加工を用い、YAGレーザー波長515nm(第2高周波)で8psecの超短パルスの条件にて加工した。加工条件を表2に示す。
【0171】
【表2】
【0172】
得られた細孔を有する光学フィルター1の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経26μm、最大面積500μm2、最小面積80μm2の細孔を有していた(図7参照)。得られた細孔を有する光学フィルター1を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター1を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0173】
[実施例2]
3Lの4つ口フラスコに2,6-ジフルオロベンゾニトリル35.12g(0.253mol)、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン87.60g(0.250mol)、炭酸カリウム41.46g(0.300mol)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」ともいう。)443gおよびトルエン111gを添加した。続いて、4つ口フラスコに温度計、撹拌機、窒素導入管付き三方コック、ディーンスターク管および冷却管を取り付けた。次いで、フラスコ内を窒素置換した後、得られた溶液を140℃で3時間反応させ、生成する水をディーンスターク管から随時取り除いた。水の生成が認められなくなったところで、徐々に温度を160℃まで上昇させ、そのままの温度で6時間反応させた。室温(25℃)まで冷却後、生成した塩をろ紙で除去し、ろ液をメタノールに投じて再沈殿させ、ろ別によりろ物(残渣)を単離した。得られたろ物を60℃で一晩真空乾燥し、白色粉末(以下「樹脂(B)」ともいう。)を得た(収率95%)。得られた樹脂(B)は、数平均分子量(Mn)が75,000、重量平均分子量(Mw)が188,000であり、ガラス転移温度(Tg)が285℃であった。
【0174】
樹脂(B)100重量部に、近赤外線吸収剤化合物(上記式(6)におけるXが酸素、R1およびR2が水素原子、R3がt-Bu基、R4が水素原子、R5およびR6がメチル基、R7が水素原子であるスクアリリウム系化合物;以下「化合物(A)」ともいう。)0.05質量部を加え、さらにDMAcを加えて溶解し、固形濃度が15質量%の溶液を得た。
【0175】
次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャスト成形し、100℃で1時間、減圧下220℃で1時間乾燥させることで、厚さ0.04mm、一辺が80mmの基材を得た。得られた基材を、実施例1と同様の手順にて誘電体多層膜からなる近赤外線反射膜を形成し、厚さ0.046mmの光学フィルター2を得た。
【0176】
得られた光学フィルター2を実施例1と同様の手順にて細孔形成加工を行った。得られた細孔を有する光学フィルター2の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経32μm、最大面積700μm2、最小面積100μm2の細孔を有していた。得られた細孔を有する光学フィルター2を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター2を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0177】
[実施例3]
ガラス(SCHOTT社製、D263、厚さ0.05mm)上に、下記樹脂組成物(c)をスピンコートで塗布した後、ホットプレート上80℃で2分間加熱し、溶剤を揮発除去することで樹脂(C)層(硬化層)を形成した。この際、該樹脂(C)層の膜厚が10μm程度となるようにスピンコーターの塗布条件を調整した。次いで、ガラス板側からUVコンベア式露光機を用いて露光(露光量:500mJ/cm2、照度:200mW)し、その後オーブン中210℃で5分間焼成し基材を得た。
【0178】
樹脂組成物(c):イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート(商品名:アロニックスM-315、東亜合成化学(株)製)30部、1,9-ノナンジオールジアクリレート20部、メタクリル酸20部、メタクリル酸グリシジル30部、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5部、1-ヒドロキシシクロヘキシルベンゾフェノン(商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカル(株)製)5部、サンエイドSI-110主剤(三新化学工業(株)製)1部及び紫外線吸収剤(UvitexO B(BASF社製)、以下「化合物(B)」ともいう。)2部を混合し、固形分濃度が50質量%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解した後、孔径0.2μmのミリポアフィルタでろ過した溶液。
【0179】
得られた基材の両面に、イオンアシスト真空蒸着装置を用いて、蒸着温度120℃で誘電体多層膜からなる近赤外線反射膜を設計(3)および設計(4)[シリカ(SiO2:550nmの屈折率1.46)層とチタニア(TiO2:550nmの屈折率2.42)層とが交互に積層されてなるもの]で形成し、厚さ0.065mmの光学フィルター3を得た。前記設計(3)および設計(4)を表3に示す。
【0180】
得られた光学フィルター3を実施例1と同様の手順にて細孔形成加工を行った。得られた細孔を有する光学フィルター3の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経26μm、最大面積500μm2、最小面積100μm2の細孔を有していた。得られた細孔を有する光学フィルター3を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター3を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0181】
【表3】
【0182】
[実施例4]
アクリル樹脂(富士フィルム和光純薬株式会社製、ポリメタクリル酸メチル)100質量部に、塩化メチレンを加えて溶解し、固形分濃度が25質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャスト成形し、50℃で8時間、さらに減圧下90℃で1時間乾燥後に剥離し、厚さ0.1mm、一辺が80mmの樹脂フィルムを得た。
【0183】
次に、樹脂(A)100質量部に、化合物(A)0.08質量部および化合物(B)0.1質量部を加え、さらに塩化メチレンを加えて溶解し、固形濃度が15質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液をバーコーターにより上記で得られた樹脂フィルム上に塗布した。50℃で8時間、さらに減圧下100℃で1時間乾燥させ、厚さ0.11mm、一辺が80mmの基材を得た。バーコーターの厚みは、乾燥後の厚み増加量が0.01mmとなるように調整した。
【0184】
次に、紫外線硬化性樹脂組成物(JSR(株)製デソライトZ-7524)を、メチルエチルケトンにより、固形分濃度が45質量%となるように希釈し、紫外線硬化性樹脂組成物(X)を得た。
【0185】
上記基材の樹脂(A)層面に、ラボコーター(安田精機製作所製オートマチックフィルムアプリケーター、型番No.542-AB)を用い、コーターバーにより上記紫外線硬化性樹脂組成物(X)が所定厚さとなるよう塗布した。イナートオーブン(ヤマト科学製イナートオーブンDN410I)を用い、80℃、3分間乾燥した後、UVコンベア(アイグラフィックス製アイ紫外硬化装置、型式US2-X040560Hz)を用い、メタルハライドランプにて照度270mW/cm2、積算光量500mJ/cm2の紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂組成物(X)を硬化させ、厚み3μmの傷つき防止膜が形成された、厚み0.113mmの光学フィルター4を得た。
【0186】
得られた光学フィルター4を実施例1と同様の手順にて4か所細孔形成加工を行った。得られた細孔を有する光学フィルター4の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経26μm、最大面積500μm2、最小面積60μm2の細孔を有していた。得られた細孔を有する光学フィルター4を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター4を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0187】
[実施例5]
実施例1と同様の手順にて基材を得た。得られた基材上に、実施例4と同様に傷つき防止膜を形成した。その後、実施例3と同様の手順にて誘電体多層膜を前記設計(3)および設計(4)で形成することで、厚み0.048mmの光学フィルター5を得た。
【0188】
得られた光学フィルター5を実施例1と同様の手順にて3か所細孔形成加工を行った。得られた細孔を有する光学フィルター5の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経32μm、最大面積700μm2、最小面積30μm2の細孔を有していた。得られた細孔を有する光学フィルター5を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター5を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0189】
[実施例6]
実施例2と同様の手順にて光学フィルター2を得た。得られた光学フィルター2の一方の面の上に、遮光性紫外線硬化型樹脂(東京応化工業(株)製CFPR-BK-416)をスピンコート法により、厚みが3μmとなるように塗布し、90℃で5分間加熱した後、その表面にフォトマスクを介して高圧水銀ランプにより露光量200mJ/cm2の紫外線を照射し硬化させた。その後、アルカリ現像液(東京応化工業(株)製「N-A3K」)で未露光部分を除去することで、光学フィルター2の一方の面に、図8(A)および(B)に示すように、10mm×10mmを外周とし、幅0.5mmの遮光膜を有する光学フィルター6を得た。
【0190】
得られた光学フィルター6を実施例1と同様の手順にて細孔形成加工を行った。得られた細孔を有する光学フィルター6の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経32μm、最大面積700μm2、最小面積100μm2の細孔を有していた。得られた細孔を有する光学フィルター6を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター6を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0191】
[実施例7]
樹脂(A)100質量部に、フェノール系酸化防止剤(ADEKA社製、「アデカスタブAO-20」)0.05質量部、化合物(A)0.02質量部、化合物(B)0.01質量部を加え、さらに塩化メチレンを加えて溶解し、固形分濃度が15質量%の溶液を得た。次いで、得られた溶液を平滑なガラス板上にキャスト成形し、50℃で8時間、さらに減圧下100℃で1時間乾燥後に剥離し、厚さ0.10mm、一辺が80mmの基材を得た。得られた基材を、実施例1と同様の手順にて誘電体多層膜からなる近赤外線反射膜を形成し、厚さ0.106mmの光学フィルター7を得た。
【0192】
得られた光学フィルター7を実施例1と同様の手順にて細孔形成加工を行った。得られた細孔を有する光学フィルター7の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経26μm、最大面積500μm2、最小面積60μm2の細孔を有していた。得られた細孔を有する光学フィルター7を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター7を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0193】
[実施例8]
実施例1と同様の手順にて光学フィルター8を得た。得られた光学フィルター8を、加工条件を表4に変更したこと以外は実施例1と同様の手順にて細孔形成加工を行った。
【0194】
【表4】
【0195】
得られた細孔を有する光学フィルター8の細孔を光学顕微鏡(ニコン株式会社製、ECLIPSE Ci-S)にて200倍で観測したところ、長経40μm、最大面積950μm2、最小面積130μm2の細孔を有していた。得られた細孔を有する光学フィルター6を用いて上記変形量評価を行ったところ「○」であり、変形量の少ない光学フィルターであった。得られた細孔を有する光学フィルター6を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では若干の画質不良が認められたものの、カメラモジュールとして実用上問題ない結果「△」であった。結果を表5に示す。
【0196】
[比較例1]
実施例1と同様の手順にて光学フィルター1を得た。得られた光学フィルター1を、細孔形成加工を行わずに用いて上記変形量評価を行ったところ「×」であり、変形量の大きい光学フィルターであった。得られた細孔形成加工を施していない光学フィルター1を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像では特に不具合は認められず、良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0197】
[比較例2]
実施例2と同様の手順にて光学フィルター2を得た。得られた光学フィルター2を、細孔形成加工を行わずに用いて上記変形量評価を行ったところ「×」であり、変形量の大きい光学フィルターであった。得られた細孔形成加工を施していない光学フィルター2を用いてカメラモジュールを作成し、カメラ画像の評価を行った。得られたカメラ画像で特に不具合は認められず良好な結果「○」であった。結果を表5に示す。
【0198】
【表5】
【符号の説明】
【0199】
1:光学フィルター
2:細孔
10:基材
11:機能膜
12:吸収層
13:遮光膜
20:撮像装置
21:センサー
22:フレーム
23:基板
24:レンズ群
31:ガラス基板
32:液晶ポリマーからなるフレーム
33:接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8