IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー イノベーション  カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2022-44002ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
<>
  • 特開-ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル 図1
  • 特開-ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル 図2
  • 特開-ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044002
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネル
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20220309BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220309BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220309BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220309BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20220309BHJP
   C03C 17/34 20060101ALI20220309BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
G02B1/14
C09D201/00
C09D4/02
C09D7/63
B32B17/06
C03C17/34 A
G09F9/30 310
G09F9/30 308Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021133665
(22)【出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113257
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
4G059
4J038
5C094
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB02
2K009CC24
2K009CC33
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD05
2K009DD06
4F100AG00A
4F100AH02B
4F100AH06B
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100EH46B
4F100EJ08B
4F100EJ42B
4F100EJ54B
4F100GB41
4F100JK17A
4F100JM10B
4F100YY00A
4F100YY00B
4G059AA01
4G059AC16
4G059AC17
4G059FA15
4G059FA21
4G059FB03
4G059GA01
4G059GA04
4G059GA11
4J038FA071
4J038FA211
4J038GA07
4J038LA06
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA11
4J038NA12
4J038PB08
4J038PC03
5C094AA15
5C094AA36
5C094AA44
5C094BA27
5C094BA31
5C094BA43
5C094DA06
5C094DA12
5C094EB02
5C094FA02
5C094FB01
5C094FB15
5C094JA08
5C094JA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】一度のコーティング工程により、相分離により飛散防止層とハードコーティング層とが分離されて形成される、新しい形態のフレキシブルガラス基板多層構造体の提供。
【解決手段】フレキシブルガラス基板の少なくとも一面に形成される機能性層と、を含むガラス基板多層構造体であって、機能性層は、単一コーティング後、乾燥または硬化ステップにおいて相分離されて2層以上に形成される、フレキシブルガラス基板多層構造体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルガラス基板と、
前記フレキシブルガラス基板の少なくとも一面に形成される機能性層と、を含むガラス基板多層構造体であって、
前記機能性層は、単一コーティング後、乾燥または硬化ステップにおいて相分離されて2層以上に形成される、フレキシブルガラス基板多層構造体。
【請求項2】
前記機能性層は、ガラス基板と接し、破損時に飛散を防止する機能をする飛散防止層、および飛散防止層上に相分離により形成される、表面硬度が高い特性を有するハードコーティング層を含む、請求項1に記載のフレキシブルガラス基板多層構造体。
【請求項3】
前記機能性層は、アクリル系化合物およびシラン系化合物を含む混合物を塗布して形成される、請求項2に記載のフレキシブルガラス基板多層構造体。
【請求項4】
前記ガラス基板は、厚さが1~100μmである、請求項1から3の何れか一項に記載のフレキシブルガラス基板多層構造体。
【請求項5】
前記機能性層は、厚さが1μm~10μmである、請求項1から4の何れか一項に記載のフレキシブルガラス基板多層構造体。
【請求項6】
前記ガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が3H~5Hである、請求項1から5の何れか一項に記載のフレキシブルガラス基板多層構造体。
【請求項7】
機能層は、アクリル系化合物および脂環族エポキシシルセスキオキサン系化合物を混合して形成される、請求項1から6の何れか一項に記載のフレキシブルガラス基板多層構造体。
【請求項8】
フレキシブルガラス基板の一面に機能性層形成組成物を塗布するステップと、
前記塗布された機能性層形成組成物を硬化し、相分離された機能性層を形成するステップと、
を含む、フレキシブルガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項9】
前記機能性層形成組成物は、アクリル系化合物と脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物とを含む混合物を塗布し形成される、請求項8に記載のフレキシブルガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項10】
前記硬化は、光照射後に熱硬化する、請求項8または9に記載のガラス基板多層構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項1から7の何れか一項に記載のガラス基板多層構造体を含むフレキシブルディスプレイパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガラス基板多層構造体、その製造方法、およびそれを含むフレキシブルディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展とともにディスプレイ装置の薄膜化が求められており、中でも、ユーザが望む際に曲げたり折り畳んだりできるフレキシブルディスプレイ装置、または製造工程において曲げたり折り畳んだりするステップを備えるフレキシブルディスプレイ装置が注目されている。
【0003】
従来のディスプレイ用ウィンドウとしては、機械的特性に優れた素材であるガラスまたは強化ガラスが一般的に用いられているが、ガラスは、柔軟性がなく、自体の重さにより、ディスプレイ装置の高重量化の原因になるという問題がある。
【0004】
上記のような問題を解決するために、フレキシブルガラス基板を薄膜化する技術が開発されているが、依然として曲げたり撓ませたりできるフレキシブル特性を実現することが充分ではなく、また、依然として外部の衝撃に対して容易に破損するという問題を解決できていない現状である。
【0005】
これを解決するために、フレキシブルガラス薄膜上に飛散防止層またはハードコーティング層などの機能性層を形成して問題を解決しようとする努力があったが、上記のような機能性層は、一般的にアクリル系樹脂の接着剤を介在して積層されることで、多層構造体の全体的な厚さおよび重量が増加するだけでなく、工程ステップが増加することに伴って製造費用が増加するという問題があった。
【0006】
そこで、さらに薄い厚さを有しながらも、機能性層間の付着力がさらに増加し、一度のコーティング過程により、前記飛散防止層とハードコーティング層の機能を行う層が相分離により自体的に生成されるようにすることで、工程を単純化しながらも、飛散防止層とハードコーティング層とが相分離されて形成される、新しい形態のフレキシブルガラス基板多層構造体の開発が必要である。また、かかる工程単純化および厚さ減少とともに、数千回以上の曲げおよび広げにおいても容易にクラック(crack)が発生しないなどのフレキシブルに優れるだけでなく、耐衝撃、耐飛散性などの耐久性がさらに向上し、耐熱性および光学的特性に優れながらも、工程単純化により製造費用の低減が可能な、新しいフレキシブルガラス基板多層構造体の開発が必要な現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2015-0028471号(2015.03.16.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の一課題は、一度のコーティング工程により、相分離により飛散防止層とハードコーティング層とが分離されて形成される、新しい形態のフレキシブルガラス基板多層構造体を提供することにある。これにより、本発明の態様は、優れた耐久性および耐飛散特性を有することができるため、ユーザの安全を確保することができる。
【0009】
また、本発明の一課題は、一度のコーティングによってもフレキシブルガラス基板との接着性を十分に有する飛散防止層が形成されるとともに、相分離により飛散防止層が分離されて形成されるハードコーティング層を形成する、フレキシブルガラス基板多層構造体およびその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の一課題は、フレキシブルガラス基板と接着性に優れた中間層を有しながら、相分離により生成されるハードコーティング層を有し、ボールドロップ試験(ball drop test)において高い高さからスチールボールを落としても、表面圧痕、打痕、およびクラック(crack)が発生しない優れた表面特性を有するとともに、曲げたり撓ませたりできる柔軟な特性を有するため、折り畳んだり曲げたりする動作を繰り返しても、ガラスが割れたりクラックが発生したりしないため、フレキシブルディスプレイ装置に適用可能なガラス基板多層構造体を提供することにある。
【0011】
したがって、本発明の他の一課題は、フレキシブルガラス基板上に単一コーティングにより相分離された機能性層を形成することで、従来の飛散防止層とハードコーティング層の機能を実現することができる機能性層を一度に形成可能なガラス基板多層構造体の製造方法を提供することにある。さらに、前記製造方法により製造された機能性層間の付着力が向上し、さらに薄い厚さに実現可能な機能性層を有するガラス基板多層構造体を提供することにある。
【0012】
また、本発明の一課題は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が、例えば、3H以上、4H以上、または5H以上を有し、また、ガラスとの接着性にも優れた物性を提供するフレキシブルガラス基板多層構造体を提供することにある。
【0013】
本発明の他の一課題は、ガラス基板多層構造体をさらに薄く実現し、製造工程を単純化し、製造費用を低減可能なガラス基板多層構造体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明一態様は、フレキシブルガラス基板と、前記フレキシブルガラス基板の少なくとも一面に形成される機能性層と、を含むガラス基板多層構造体であって、前記機能性層は、単一コーティング後、乾燥または硬化ステップにおいて相分離されて2層以上に形成される、フレキシブルガラス基板多層構造体であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様において、前記機能性層は、ガラス基板と接し、破損時に飛散を防止する機能をする飛散防止層、および飛散防止層上に相分離により形成される、表面硬度が高い特性を有するハードコーティング層を含んでもよい。
【0016】
本発明の一態様において、前記機能性層は、アクリル系化合物およびシラン系化合物を含む混合物を塗布して形成されてもよい。
本発明の一態様において、前記ガラス基板は、厚さが1~100μmであってもよい。
本発明の一態様において、前記機能性層は、厚さが1μm~10μmであってもよい。
【0017】
本発明の一態様において、前記ガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が3H~5Hであってもよい。
本発明の一態様において、前記機能層は、アクリル系化合物および脂環族エポキシシルセスキオキサン系化合物を混合して形成されてもよい。
【0018】
本発明の他の一態様は、フレキシブルガラス基板の一面に機能性層形成組成物を塗布するステップと、前記塗布された機能性層形成組成物を硬化し、相分離された機能性層を形成するステップと、を含む、フレキシブルガラス基板多層構造体の製造方法であることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様において、前記機能性層形成組成物は、アクリル系化合物と脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物とを混合した混合物を塗布し形成されてもよい。
本発明の一態様において、前記硬化は、光照射後に熱硬化してもよい。
【0020】
本発明のまた他の一態様は、前記ガラス基板多層構造体を含むフレキシブルディスプルレイパネルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に開示されたガラス基板多層構造体は、フレキシブルガラス基板の少なくとも一面に形成される機能性層を含む。前記機能性層は、単一コーティングにより形成される相分離層であって、従来のアクリル系化合物からなる飛散防止層に比べて、10μm以下の非常に薄いコーティング層であるにもかかわらず、飛散防止機能性層およびハードコーティング機能性層が同時に実現されることで、顕著に向上した耐飛散性および耐衝撃特性、優れた柔軟性および優れたボールドロップ特性を有するため、フレキシブルディスプレイウィンドウに好適であるという効果を有する。
【0022】
本発明の一態様は、前記機能性層として、アクリル系化合物と、シラン化合物、例えば、エポキシ化シルセスキオキサン系化合物とを含む混合溶液を塗布して硬化させることで、アクリル系化合物とシラン化合物とが、コーティング後、乾燥過程または/および硬化過程において、相分離により2層に硬化することで達成することができる。
【0023】
本発明の一態様において、前記相分離混合物としては、アクリル系化合物とシラン化合物とを含む混合物、例えば、アクリル系単量体化合物とエポキシ化シルセスキオキサン系化合物とを含む混合物が挙げられる。前記相分離を誘導する方法としては、混合物を構成する化合物の極性の差や混和性の差により、乾燥または硬化ステップにおいて、またはこれらの全てのステップにおいて、相分離させるなどの多様な方法が適用可能であるため、相分離となる混合物であり限り、特に制限されない。
【0024】
本発明の一態様において、乾燥または硬化過程において相分離されて2層に分けられる場合、飛散防止層とハードコーティング層の機能を有する機能は、ハードコーティングを形成する化合物を硬化反応を誘導して架橋することで、ハードコーティング層の機能を飛散防止層の機能と区別するようにすることができる。
【0025】
本発明の一態様において、このような一度のコーティングにより、飛散防止層とハードコーティング層の機能を付与する機能層の一例としては、特に限定されないが、機能性層は、アクリル系単量体を含む化合物とエポキシ化シルセスキオキサン系化合物との混合溶液をフレキシブルガラス基板にコーティングし乾燥または硬化することで得られる。
【0026】
また、本発明の一態様において、アクリル系化合物を含む第1溶液と、エポキシ化シルセスキオキサン系化合物を含む第2溶液とを溶液混合し、それをフレキシブルガラス基板に塗布し硬化させることで、相分離による二元化された層を一度に実現することができる。
【0027】
前記二元化された機能層は、各層の間に混和層を有することで、接着性をさらに増進させながらも、機能性層の厚さをさらに薄く実現することができる。よって、層間、層間の付着力がさらに向上するという長所を有するとともに、優れた表面硬度特性を同時に有するため、表面の欠陥の発生を減少させる。
【0028】
さらに、本発明とは異なり、本発明者により研究されたまた他の形態である、飛散防止層がラミネーション(lamination)工法により厚膜として構成される場合、積層後に表面硬度が低下し、それを補うためにハードコーティング層をさらに形成する工程を経る場合、厚さが増加し、また、界面の接着力が充分ではないという短所がある。
【0029】
しかしながら、本工程のガラス基板多層構造体は、薄膜をコーティングする方法により薄い厚さをコーティングするにもかかわらず、耐飛散性および耐衝撃特性を有しながらも、基板自体の表面硬度特性を付与する層が相分離されて形成され、薄いながらも接着力および表面特性に優れたガラス基板多層構造体を提供するという効果を有する。
【0030】
本発明の一態様においては、前記飛散防止層を形成する化合物の重合または硬化反応は、アクリル系化合物の場合、開始剤を用いて熱硬化または光開始剤を用いた光硬化が可能であり、エポキシ系シルセスキオキサン系化合物の硬化は、触媒硬化または熱硬化や光硬化の何れも可能である。機能層の各層は、互いに同一または異なる方法により同時にまたは順次に反応または硬化することができる。
【0031】
さらに、本発明に係るガラス基板多層構造体は、単一コーティングにより飛散防止層およびハードコーティング層を実現することで、工程ステップが簡素化され、製造費用を低減できるという効果を有するだけでなく、ガラス多層構造体の表面硬度特性も向上するという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係るガラス基板多層構造体の製造方法を示した模式図である。
図2】実施例1に係るガラス基板多層構造体の断面の電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope、FE-SEM)写真を示したものである。(a)は、ガラス基板多層構造体の断面をFE-SEM写真で示したものであり、(b)は、(a)の機能性層(コーティング層)を拡大したFE-SEM写真を示したものである。
図3】比較例1に係るガラス基板多層構造体の断面の電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope、FE-SEM)写真を示したものである。(a)は、ガラス基板多層構造体の断面をFE-SEM写真で示したものであり、(b)は、(a)の機能性層(コーティング層)を拡大したFE-SEM写真を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明で用いられる用語は、特に定義しない限り、当業者により一般的に理解される意味と同一な意味を有する。また、本発明において、説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限することを意図しない。
本発明の明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0034】
本発明を記述する明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
本発明において、用語「フレキシブル(flexible)」は、曲がったり撓んだり折り畳まれたりすることを意味する。
【0035】
本発明の発明者らは、前記課題を解決するために多くの研究をした結果、一例として、アクリル系化合物を含む第1溶液と、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物を含む第2溶液との混合溶液を用いて、フレキシブルガラス基板の少なくとも一面に塗布し、光硬化および/または熱硬化を行うことで、相分離によりガラス基板上に飛散防止層およびハードコーティング層の機能を同時に実現する。
【0036】
本発明の一態様に係る前記混合溶液を用いてコーティングし、乾燥および/または硬化時に相分離により硬化しつつ、アクリル系樹脂層、エポキシシラン樹脂層、および前記層の間にこれらの混和層が一度に形成されることで、曲げ特性、接着性、および優れたボールドロップ特性を有する。
【0037】
また、顕著に向上した耐飛散性、耐衝撃性、および光学特性を有しながらも、フレキシブル特性に優れるため、フレキシブルディスプレイパネルのカバーウィンドウへの適用に好適な、ガラス基板多層構造体を発見し、本発明を完成した。
【0038】
本発明の一態様において、前記機能性層は、相分離によりフレキシブルガラス基板上にエポキシ系シラン樹脂層が形成され、前記エポキシ系シラン樹脂層上にアクリル系樹脂層が形成される多層構造を有するだけでなく、前記エポキシ系シラン樹脂層とアクリル系樹脂層との界面にこれらの混和層が形成され、層間の付着力に優れるとともに、表面特性において、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が3H以上として、優れた表面硬度を有し、また、フレキシブルディスプレイ素子との付着性に優れ、曲がったり折り畳まれたりする特性が損なわれることなく、ボールドロップ試験(ball drop test)において高い高さからボールを落としても、圧痕、打痕、および破損が発生しない著しい効果を示す。
【0039】
以下、本発明の各構成に対して図面を参照してより具体的に説明する。但し、これは例示的なものにすぎず、本発明が例示的に説明された具体的な実施形態に制限されるものではない。
【0040】
本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、ガラス基板上に第1溶液と第2溶液とを混合した混合溶液を塗布した後、光硬化および熱硬化を行い、ガラス基板上にエポキシ系シラン樹脂層、アクリル系樹脂層、およびこれらの層の間に混和層を形成する。
すなわち、前記ガラス基板多層構造体は、一態様として、ガラス基板、エポキシ系シラン樹脂層、混和層、ウレタンアクリル系樹脂層の順に多層構造を形成する。
【0041】
本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が3H以上であってもよく、具体的には4H以上であってもよく、より具体的には5H以上であってもよい。
【0042】
また、ボールドロップ試験(ball drop test)による耐飛散性が1m以上、具体的には1.5m以上、より具体的には2m以上であってもよい。この際、ボールドロップ試験(ball drop test)は、130gの重量を有する直径30mmのスチールボール(steel ball)を落下させた際の表面打痕、圧痕、およびクラック(crack)がない状態を意味する。
【0043】
本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体は、アクリル系化合物を含む第1溶液と、エポキシ化シルセスキオキサン系化合物、具体的には、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン化合物を含む第2溶液との混合溶液を、機能性層を形成する物質として採択し、光硬化および/または熱硬化を行う製造方法を採択することで、ガラス基板の優れたフレキシブル特性や、折り畳まれる性質を損なうことなく、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が3H以上の優れた表面硬度特性とともに、ボールドロップ試験において1m以上の高い高さからも圧痕、打痕、およびクラック(crack)が形成されない優れた表面特性を提供することができる。
【0044】
また、優れた柔軟性によりフレキシブル特性の実現が容易であり、耐衝撃および耐飛散特性に優れるため、ユーザの安全を確保することができ、優れた光学的特性により透明であるため、フレキシブルディスプレイパネルのウィンドウカバーとして適用することができる。
【0045】
以下、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体をなすフレキシブルガラス基板、前記フレキシブルガラス基板の少なくとも一面に形成された機能性層についてより具体的に説明する。
【0046】
<フレキシブルガラス基板>
フレキシブル(flexible)ガラス基板は、折り畳んだり(folderble)曲がったり(curved)するガラス基板を意味し、ディスプレイ装置のウィンドウとして機能できるものであって、耐久性が良く、表面平滑性および透明度に優れるという長所がある。
【0047】
本発明の一態様において、前記フレキシブルガラス基板は、ガラスを含むものであれば制限されないが、具体的に、一般ガラス、ソーダ石灰ガラス、強化ガラスなどから選択されてもよい。
【0048】
本発明の一態様において、ガラス基板多層構造体は、フレキシブルディスプレイパネルの一面上に形成されてもよく、曲がりまたは折り畳まれに対応して曲がったり折り畳まれたりすることができる。例えば、ガラス基板多層構造体が比較的に小さい曲率半径で屈曲するかまたは大略的に折り畳まれる程度に変形するために、フレキシブルガラス基板は、超薄型ガラス基材からなってもよい。
【0049】
本発明の一態様において、フレキシブルガラス基板は、超薄型のガラス基材であってもよく、厚さは100μm以下であってもよく、具体的には、厚さが1~100μmであってもよく、より具体的には、10~100μmであってもよい。
【0050】
本発明の一態様において、前記フレキシブルガラス基板は、化学強化層をさらに含んでもよく、前記化学強化層は、フレキシブルガラス基板に含まれるガラス基材の第1面または第2面のうち何れか1面以上に化学強化処理を行って形成されてもよい。これにより、フレキシブルガラス基板の強度が向上することができる。
【0051】
このように、化学強化処理された超薄型のフレキシブルガラス基板を形成する方法には種々の方法があるが、一例として、100μm以下の厚さを有するマザーガラスを準備し、切断、面取り、焼成などを経て所定の形状に加工した後、それを化学強化処理してもよい。他の一例として、一般厚さのマザーガラスを準備し、100μm以下の厚さにスリミング(slimming)作業をした後、形状加工および化学強化処理を順次行ってもよい。この際、スリミング作業は、機械的方法および化学的方法から選択される何れか1つまたは2つの方法をともに用いて行われてもよい。
【0052】
<機能性層>
本発明の一態様において、機能性層は、前記フレキシブルガラス基板の破損時、発生するエネルギーを吸収することで、ガラス基板の破片が飛散するのを防止する層であるとともに、外部の物理的および化学的損傷から保護する機能を行うことができ、優れた表面特性、光学的、機械的特性を付与する層であってもよい。
【0053】
本発明の一態様において、前記機能性層が形成されたガラス基板多層構造体は、130gの重量を有する直径30mmのスチールボール(steel ball)を1m以上の高さから落下させた際にも、圧痕、打痕、およびクラック(crack)が発生しない優れた表面特性を提供することができる。
さらに、前記機能性層は、ASTM D3363に準じた鉛筆硬度が3H以上、具体的には4H以上、より具体的には5H以上の優れた表面硬度特性を提供することができる。
【0054】
本発明の一態様において、前記機能性層は、アクリル系樹脂層、エポキシ系シラン樹脂層、およびこれらの混和層を含んでもよい。
前記混和層は、より具体的には、ウレタンアクリル系化合物とエポキシ系シラン化合物とが互いに混ざっている状態であってもよく、前記アクリル系化合物層およびエポキシ系シラン樹脂化合物が厚さ方向に濃度勾配を有しつつ形成されてもよい。混和層が濃度勾配を有する場合、飛散防止層およびハードコーティング層は、各層を構成するそれぞれの成分を、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、または100%含んで硬化してもよい。
【0055】
本発明の一態様において、前記機能性層は、後述するアクリル系化合物を含む第1溶液と、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物を含む第2溶液との混合溶液である、機能性層形成組成物が硬化してなってもよい。より具体的に、機能性層は、前記機能性層形成組成物の一度のコーティング(塗布)により、相分離された2層以上の層を形成してもよい。
【0056】
本発明の一態様において、前記機能性層形成組成物は、第1溶液と第2溶液との混合溶液を含んでもよい。この際、前記第1溶液と第2溶液の重量比は、例えば、2:1~1:4、1.5:1~1:3.5、または1:1~1:3で混合してもよい。前記範囲の混合割合を有することで、製造される機能性層の表面硬度および耐飛散特性に優れることができる。
【0057】
以下、第1溶液および第2溶液について詳細に説明する。
<第1溶液>
本発明の一態様において、前記第1溶液は、アクリル系化合物、光重合開始剤または熱重合開始剤、および溶媒を含んでもよい。
【0058】
本発明の一態様において、前記アクリル系化合物は、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー、多官能性(メタ)アクリレート単量体、(メタ)アクリレート系モノマーおよびメタクリル酸、アクリル酸などから選択される何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
【0059】
前記多官能性アクリレートオリゴマーは、エステル系、ウレタン系、エーテル系などの多様な形態の多官能性(メタ)アクリレート系オリゴマーであってもよく、多官能性単量体は、2~6個の(メタ)アクリレート基を有する単量体を意味し得る。
【0060】
前記多官能性単量体の種類としては、例えば、アクリレートモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート(Trimethylolpropane triacrylate;TMPTA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(Tripropylene Glycol Diacrylate;TPGDA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(Dipentaerythritol hexaacrylate;DPHA)、ジ-トリメチロールプロパントリアクリレート(Di-trimethylolpropane triacrylate;DMPTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Dipentaerythritol pentaacrylate;DEPTA)、およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol tetraacrylate;PETA)などが挙げられる。
【0061】
前記第1溶液のアクリル系化合物の商業化製品としては、例えば、PU9020(Butyl acetate 30%含有、Miwon Specialty Chemical社製)やUA5095X2(Miwon Specialty Chemical社製)の製品などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
開始剤の例として、公知の熱重合開始剤を制限されずに用いてもよいが、具体的には、ペルオキシド系またはアゾ系を用いてもよく、より具体的には、熱硬化開始剤として、過酸化ベンゾイル(benzoyl peroxide)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)などを用いてもよいが、これに制限されるものではない。前記光重合開始剤は、公知の光重合開始剤であれば制限されずに用いてもよく、光開始剤の一例としては、アセトフェノン系化合物を用いてもよい。
【0063】
前記アセトフェノン系化合物は、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ)プロピルケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxy-cyclohexylphenyl keton)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-メチル-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノ-1-プロパン-1-オン(Irgacure907)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-Hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone、Irgacure184)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンからなる群から選択される少なくとも1種以上を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記溶媒は、メチルエチルケトン(methylethylketone)、エチルアセテート(ethylacetate)、シクロヘキサン(cyclohexane)、メチルイソブチルケトン(Methyl isobutyl ketone)、イソプロピルアルコール(isopropylalcohol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、ポリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(Polypropylene glycol methyl ether acetate)、メトキシトリグリコール(methoxytriglycol)、エトキシトリグリコール(ethoxytriglycol)、ブトキシトリグリコール(butoxytriglycol)、1-ブトキシエトキシ-2-プロパノール(1-butoxyethoxy-2-propanol)、およびフェニルグリコールエーテル(phenyl glycol ether)からなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合溶液であってもよい。
【0065】
<第2溶液>
本発明の一態様において、前記第2溶液は、硬化型シラン化合物であってもよい。前記硬化型シラン化合物の例を挙げると、エポキシ化シルセスキオキサン系化合物、架橋剤、および溶媒を含んでもよい。
【0066】
本発明の一態様において、前記エポキシ化シルセスキオキサン系化合物は、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン(epoxidized cycloalkyl substituted silsesquioxanes)系化合物であってもよい。
【0067】
前記脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物は、例えば、下記化学式1で表されるトリアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。
[化学式1]
A-Si(OR)
【0068】
(前記化学式1中、Aは、C2~C7のエポキシ基が置換されたC1~C10のアルキル基を意味し、Rは、互いに独立して、C1~C10のアルキルであり、前記RのC1~C10のアルキル基の炭素は、酸素で置換されてもよい。)
前記化学式1中、エポキシ基の一例としては、シクロアルキルが融合したエポキシ基であってもよく、具体的な一例は、シクロヘキシルエポキシ基などであってもよい。
【0069】
ここで、アルコキシシラン化合物の具体的な一例としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランのうち1つ以上であってもよいが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0070】
また、本発明の一態様において、シルセスキオキサン系化合物は、化学式1で表されるトリアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位とともに、下記化学式2で表されるジアルコキシシラン化合物由来の繰り返し単位を含んでもよい。この場合、シルセスキオキサン系化合物は、トリアルコキシシラン化合物100重量部に対してジアルコキシシラン化合物を0.1~100重量部を混合し、それを縮合重合して製造することができる。
【0071】
[化学式2]
A-SiR(OR)
【0072】
(前記化学式2中、Rは、C1~C5から選択される直鎖状または分岐状アルキル基であり、AおよびRは、化学式1の定義と同様である。)
【0073】
前記化学式2の化合物を具体的に例に挙げると、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルプロピルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロペンチル)エチルメチルジエトキシシランなどが挙げられるが、これに限定されるものではなく、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
本発明に係る脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物の重合方法は、公知のものであれば制限されないが、例えば、水の存在下で、上述した化学式1および2で表されるアルコキシシラン間の加水分解および縮合反応により製造することができる。この際、無機酸などの成分を含んで加水分解反応を促進させることができる。また、前記エポキシシラン系樹脂は、エポキシシクロヘキシル基を含むシラン化合物が重合されてなってもよい。
【0075】
この際、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物の重量平均分子量は、例えば、1,000~20,000g/molであってもよく、1,000~18,000g/molであってもよく、または2,000~15,000g/molであってもよい。この際、重量平均分子量は、GPCを用いて測定される。
前記範囲の重量平均分子量を有する場合、第2溶液が適宜な粘度を有するため、上述した第1溶液との混和性に優れることができる。
【0076】
本発明の一態様において、前記架橋剤は、エポキシ化シルセスキオキサン系化合物と架橋結合を形成するものであって、具体的な一例として、下記化学式3で表される化合物を含有してもよい。前記化学式3で表される化合物は、前記化学式1および化学式2の構造のエポキシ単位と同一な脂環族エポキシ化合物であって、架橋結合を促進し、曲げ特性を維持することができ、また、透明性を損なわない。
【0077】
[化学式3]
【化1】
【0078】
(前記化学式3中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1~5の直鎖状または分岐状アルキル基であり、Xは、直接結合;カルボニル基;カルボネート基;エーテル基;チオエーテル基;エステル基;アミド基;炭素数1~18の直鎖状または分岐状アルキレン基、アルキリデン基、またはアルコキシレン基;炭素数1~6のシクロアルキレン基、またはシクロアルキリデン基;またはこれらの連結基であってもよい。)
【0079】
ここで、「直接結合」とは、他の官能基なしに直接連結された構造を意味し、例えば、前記化学式3中、2つのシクロヘキサンが直接連結されたものを意味し得る。また、「連結基」は、前述した置換基が2個以上連結されたものを意味する。また、前記化学式3中、RおよびRの置換位置は、特に限定されないが、Xが連結された炭素を1番とし、エポキシ基が連結された炭素を3、4番とする際、6番の位置に置換されてもよい。
前記架橋剤の含量は、特に限定されず、例えば、シルセスキオキサン系化合物100重量部に対して1~150重量部で含まれてもよい。
【0080】
前記第2溶液は、追加の熱硬化剤をさらに含んでもよく、前記熱硬化剤は、一例として、スルホニウム系、アミン系、イミダゾール系、酸無水物系、アミド系の熱硬化剤などを含んでもよく、これらは単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。
【0081】
前記熱硬化剤の含量は、特に限定されず、例えば、前記エポキシシルセスキオキサン系化合物100重量部に対して5~30重量部で含まれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0082】
本発明の一態様において、溶媒の非制限的な例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのアルコール系;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系;ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどのヘキサン系;ベンゼン、トルエン、キシレンなどのベンゼン系;などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。
【0083】
本発明の一態様において、溶媒は、組成物の総重量中で残りの成分が占める量を除いた残量で含まれてもよい。
また、本発明の一態様において、第2溶液は、本発明の特性を達成する限り、前記化学式の化合物以外に多様なエポキシ化合物をさらに追加して用いてもよく、その含量は、前記化学式3の化合物100重量部に対して20重量部を越えなくてもよい。
【0084】
本発明の一態様において、前記エポキシ系単量体は、第2溶液100重量部に対して10~80重量部で含まれてもよい。前記含量である場合、粘度を調節することができ、厚さの調節が容易であり、表面が均一であり、薄膜の欠点が発生せず、また、硬度を十分に達成することができるが、これに限定されるものではない。
【0085】
本発明の一態様において、第2溶液は、無機粒子をさらに含んでもよく、前記無機粒子は、シリカおよび金属酸化物からなる群から選択された何れか1つまたは2つ以上を含んでもよい。
前記金属酸化物の具体的な一例として、アルミナ、酸化チタンなどを含んでもよく、制限されるものではないが、例えば、前記第2溶液の他の成分との相溶性の面でシリカが用いられてもよい。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよい。また、前記無機粒子は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウムなどの水酸化物;金、銀、銅、ニッケル、これらの合金などの金属粒子;カーボン、カーボンナノチューブ、フラーレンなどの導電性粒子;ガラス;セラミック;などから選択される粒子をさらに含んでもよく、これに制限されるものではない。
【0086】
本態様において、前記無機粒子は、平均粒径が1~200nmであってもよく、具体的には5~180nmであってもよく、前記平均粒径の範囲内で、2種以上の異なる平均粒径を有する無機粒子を用いてもよいが、これに制限されるものではない。また、第2溶液は、追加の滑剤をさらに含んでもよく、前記滑剤の具体的な一例としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、合成ワックス、またはモンタンワックスなどのワックス類;シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などの合成樹脂類;などが用いられてもよい。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられてもよいが、これに制限されるものではない。
【0087】
<ガラス基板多層構造体の製造方法>
以下、本発明の一態様に係るガラス基板多層構造体の製造方法について詳細に説明する。
本発明の一態様に係る、ガラス基板多層構造体の製造方法は、フレキシブルガラス基板の一面に機能性層形成組成物を塗布するステップと、前記塗布された機能性層形成組成物を硬化し、相分離された機能性層を形成するステップと、を含んでもよい。
【0088】
本発明の一態様において、前記機能性層形成組成物を塗布するステップにおける機能性層形成組成物について説明する。
本発明の一態様において、前記機能性層形成組成物の一例を挙げると、アクリル系化合物を含む第1溶液と、脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物を含む第2溶液との混合溶液であってもよい。前記第1溶液および第2溶液としては、上述した溶液を用いてもよく、この際、前記第1溶液と第2溶液の混合割合は、重量比で、2:1~1:4、1.5:1~1:3.5、または1:1~1:3で混合してもよい。前記範囲の混合割合を有することで、製造される機能性層の表面硬度および耐飛散特性に優れることができる。
上述した機能性層形成組成物をフレキシブルガラス基板上に塗布し、コーティング層を形成する。その後、硬化ステップを経つつ、二元化された機能性層を形成してもよい。
【0089】
前記塗布する方法としては、制限されるものではないが、バー(bar)コート、ディップ(dip)コート、ダイ(die)コート、グラビア(gravure)コート、コンマ(comma)コート、スリット(slit)コート、またはこれらの混合方式などの多様な方式を用いてもよい。
本発明の一態様において、前記硬化は、光硬化後に熱硬化を順次行うステップを含んでもよい。
【0090】
以下、本発明の一実施形態に係るガラス基板多層構造体を模式した図1を参照して説明する。
前記硬化は、光硬化後に熱硬化する順次的な硬化ステップを経ることで、2層以上に分離された二元化構造を有する機能性層を実現することができる。より具体的に、二元化された構造を有する機能性層は、光硬化後、コーティング層の表面上に形成されたエポキシ系シラン樹脂層とその下部の第1溶液とが共存する状態を有している。その後、熱硬化により、第1溶液が硬化し、アクリル系樹脂層と、エポキシ系シラン樹脂層、およびこれらの混和層の構造を有する機能性層が形成されてもよい。
【0091】
前記光硬化は、光照射により行われてもよく、前記光の種類は制限されないが、例えば、紫外線(UV)を用いてもよい。この際、照射量としては20~600mJ/cm、具体的には50~500mJ/cmで照射してもよく、照射時間は30秒~20分、具体的には1分~15分間照射してもよい。
【0092】
非制限的な一態様として、前記光硬化は、光照射前に乾燥ステップをさらに含んでもよく、前記乾燥は30℃~70℃で1~30分間行われてもよいが、これに制限されるものではない。
【0093】
前記熱硬化は、常温~250℃の温度で熱処理してもよく、より具体的には、40℃~200℃の温度で熱処理してもよく、前記熱処理回数は1回以上であってもよく、同一温度または異なる温度範囲で1回以上熱処理してもよい。また、前記熱処理時間は1分~60分であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0094】
<フレキシブルディスプレイパネル>
本発明の一態様は、前記一態様に係るガラス基板多層構造体をウィンドウカバーとして含む、フレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置を提供することができる。
【0095】
本発明の一態様として、フレキシブルディスプレイ装置において、ガラス基板多層構造体は、フレキシブルディスプレイパネルの最外面ウィンドウ基板として用いられてもよい。前記フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置であってもよい。
【0096】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例および比較例は本発明をより詳細に説明するための1つの例示にすぎず、本発明が下記の実施例および比較例によって制限されるものではない。
以下、物性は次のように測定した。
【0097】
1)鉛筆硬度
ASTM D3363に準じて、鉛筆硬度計(Kipae E&T社製)を用いて、1Kgの荷重で、硬度別の鉛筆(Mitsubishi社製)を用いて、実施例および比較例で製造されたガラス基板多層構造体の表面に対する鉛筆硬度を測定した。
【0098】
2)耐飛散特性の評価(ボールドロップ試験、ball drop test)
NANOHitec社製のボールドロップ測定機を用いて常温で評価を行った。サンプル支持台に多層構造体を置き、130gの重量を有する直径30mmのスチールボールを1mの高さから、下記実施例および比較例1で製造されたガラス基板多層構造体サンプル上に落下させた後、ガラス基板多層構造体の状態を下記基準によって評価した。前記ボールドロップは、ハードコーティング層が形成された面上に落下させて測定した。
【0099】
<評価基準>
◎:打痕および圧痕がない
○:打痕および圧痕がある
×:割れ(飛散しない)
▲:2回の評価時に結果が異なる
【0100】
[製造例1]アクリル系化合物を含む第1溶液(A)の製造
PU9020(Butyl acetate 30%含有、Miwon Specialty Chemical社製)171g、およびUA5095X2(Miwon Specialty Chemical社製)280gを混合した後、固形分含量が70重量%になるようにメチルエチルケトン(methylethyl ketone、MEK)140gを追加して5時間撹拌した。その後、熱開始剤(2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、商品名Vam-110)20gを追加して3時間撹拌し、第1溶液(A)を製造した。
【0101】
[製造例2]脂環族エポキシ化シルセスキオキサン系化合物を含む第2溶液の製造
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECTMS、TCI社製)および水を24.64g:2.70g(0.1mol:0.15mol)の割合で混合して反応溶液を製造し、250mLの2-neckフラスコに入れた。前記混合物に0.1mLの水酸化テトラメチルアンモニウム触媒およびテトラヒドロフラン100mLを添加し、25℃で36時間撹拌した。その後、層分離を行い、生成物層を塩化メチレンで抽出し、抽出物を硫酸マグネシウムで水分を除去し、溶媒を真空乾燥させ、エポキシシルセスキオキサン系樹脂を得た。
【0102】
上記のように製造されたエポキシシロキサン系樹脂30g、架橋剤として(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート10gおよびビス[(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]アジペート5g、メチルエチルケトン54.5gを混合した第2溶液を製造した。
【0103】
[製造例3]アクリル系化合物を含む第1溶液(B)の製造
PU9020(Butyl acetate 30%含有、Miwon Specialty Chemical社製)171g、およびUA5095X2(Miwon Specialty Chemical社製)280gを混合した後、固形分含量が70重量%になるようにメチルエチルケトン(methylethyl ketone、MEK)140gを追加して5時間撹拌した。その後、Irgacure(918)20gを追加して2時間撹拌し、第1溶液(B)を製造した。
【0104】
[実施例1]
前記製造例1および製造例2で製造された第1溶液(A)および第2溶液を30:70の重量比で混合し、3時間撹拌して混合溶液を製造した。その後、ガラス基板(UTG 100μm)の一面に前記混合溶液を#20 layer barでコーティングし、50℃で2分間乾燥した。その後、300mJ/cmの紫外線を照射し、150℃で10分間熱処理し、6μmの厚さを有する単一層の二元化構造を有するガラス基板多層構造体を作製した。
【0105】
[比較例1]
前記実施例1において、製造例1で製造された第1溶液(A)の代わりに、製造例3で製造された第1溶液(B)を用いることを除いては、実施例1と同様に行い、ガラス基板多層構造体を製造した。
前記実施例1および比較例1で製造したガラス基板多層構造体の物性を測定し、下記表1に示した。
【0106】
【表1】
【0107】
前記表1および図2に示されたように、実施例1の場合、紫外線硬化および熱硬化の順次硬化により、相分離となり、単一コーティングにより、二元化層を形成することが分かった。また、図2において、各層は、界面には混和された層が存在することが分かった。さらに、表面硬度が3Hとして、単一コーティングによっても、優れた表面硬度を有する機能性層を形成できることを確認した。
これに対し、比較例1で製造されたガラス基板多層構造体の場合、図3に示されたように単一層に形成され、表面硬度もHBとして顕著に低下することが分かった。
【0108】
以上、特定の事項と限定された実施形態および図面により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0109】
したがって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。
図1
図2
図3