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特開2022-44013ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミドフィルム、その製造方法、およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044013
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体組成物、ポリイミドフィルム、その製造方法、およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20220309BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220309BHJP
【FI】
C08G73/10
C08J5/18 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021141860
(22)【出願日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113020
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ミン ソン
(72)【発明者】
【氏名】クヮク ヒョ シン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョ ヒュン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AA81
4F071AA86
4F071AA88
4F071AF20Y
4F071AF30
4F071AF34Y
4F071AF62Y
4F071AG05
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4J043PA04
4J043PA06
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA31
4J043SA32
4J043SA36
4J043SA54
4J043SA81
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA47
4J043TA71
4J043TB01
4J043TB02
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA211
4J043UA331
4J043UA381
4J043UA451
4J043UA511
4J043UA561
4J043UA581
4J043UA591
4J043UA632
4J043UB051
4J043UB052
4J043UB401
4J043VA011
4J043VA012
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA042
4J043VA051
4J043VA061
4J043XA13
4J043YA06
4J043ZA12
4J043ZA32
4J043ZA35
4J043ZA52
4J043ZB03
4J043ZB11
4J043ZB21
4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐熱性に優れ、透明性、黄色度、およびヤング率などの物性が著しく向上したポリイミドフィルムを提供するためのポリイミド前駆体およびポリイミド前駆体溶液を提供する。
【解決手段】酸二無水物に由来する構造単位と、下記化学式で表されるジアミン化合物に由来する構造単位と、を含むポリイミド前駆体である。

式中、Aは、OまたはSであり、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸二無水物に由来する構造単位と、下記化学式1で表されるジアミン化合物に由来する構造単位と、を含むポリイミド前駆体。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1中、
Aは、OまたはSであり、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。
【請求項2】
前記化学式1中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
nおよびmは、互いに独立して、0~1の整数である、請求項1に記載のポリイミド前駆体。
【請求項3】
前記化学式1は、下記化学式2で表される、請求項1から2の何れか一項に記載のポリイミド前駆体。
[化学式2]
【化2】
前記化学式2中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。
【請求項4】
前記化学式2中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり、nおよびmは、互いに独立して、0~1の整数である、請求項3に記載のポリイミド前駆体。
【請求項5】
酸二無水物化合物は、
下記化学式3で表される、請求項1から4の何れか一項に記載のポリイミド前駆体。
[化学式3]
【化3】
前記化学式3中、
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
pは0~2の整数である。
【請求項6】
下記化学式4で表されるジアミン化合物に由来する構造単位をさらに含む、請求項1から5の何れか一項に記載のポリイミド前駆体。
[化学式4]
【化4】
前記化学式4中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
sおよびtは0~3の整数である。
【請求項7】
下記化学式11で表される繰り返し単位を含む、請求項1から6の何れか一項に記載のポリイミド前駆体。
[化学式11]
【化5】
前記化学式11中、
Aは、OまたはSであり、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
およびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C10)アルキルであり、
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数であり、
pは0~2の整数である。
【請求項8】
前記化学式11で表される繰り返し単位を10~100モル%で含む、請求項7に記載のポリイミド前駆体。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載のポリイミド前駆体および溶媒を含むポリイミド前駆体溶液。
【請求項10】
前記溶媒は、アミド類から選択される、請求項9に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項11】
前記アミド類は、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、またはこれらの混合物である、請求項10に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項12】
下記化学式12で表される繰り返し単位を含むポリイミドフィルム。
[化学式12]
【化6】
前記化学式12中、
Aは、OまたはSであり、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
mおよびnは、互いに独立して、0~2の整数であり、
pは0~2の整数である。
【請求項13】
下記化学式13で表される繰り返し単位をさらに含む、請求項12に記載のポリイミドフィルム。
[化学式13]
【化7】
前記化学式13中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり、
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり、
sおよびtは0~3の整数であり、
pは0~2の整数である。
【請求項14】
熱膨張係数が100~450℃で0超過~20ppm/℃である、請求項12または13に記載のポリイミドフィルム。
【請求項15】
ASTM E313に準じたYIが25未満であり、
ASTM D882に準じたヤング率が6.0超過である、請求項12から14の何れか一項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項16】
素子用基板、ディスプレイ用基板、光学フィルム、ICパッケージ、電着フィルム、多層FRC、テープ、タッチパネル、または光ディスク用保護フィルムに用いられる、請求項12から15の何れか一項に記載のポリイミドフィルム。
【請求項17】
請求項12から15の何れか一項に記載のポリイミドフィルムを含む光電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体、ポリイミド前駆体溶液、ポリイミドフィルム、その製造方法、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
高度の耐熱性を有し、且つ、軽くてフレキシブルな素材として、ポリイミドが着眼されている。かかるポリイミド分野において、優れた熱的寸法安定性を有する樹脂として、芳香族ポリイミドが注目されている。化学構造が剛直で直鎖状の芳香族ポリイミドからなる成形体であるポリイミドフィルムは、フレキシブル基板のベースフィルムや半導体の層間絶縁膜など、高い熱的寸法安定性(低線熱膨張係数)が求められる分野で広く用いられている。しかし、低線熱膨張係数を有する芳香族ポリイミドは、分子内共役および分子内・分子間の電荷移動の相互作用により強く着色されるため、光学用途に適用するには困難である。また、ポリイミドは、分子間力が非常に強いため、加工性に欠けるという短所を有する。
【0003】
一方、フレキシブルデバイスは、搬送基板上にポリイミド前駆体組成物を塗布した後に硬化してフィルムを製膜し、薄膜トランジスタ(TFT)および有機膜蒸着などの後続工程によりデバイスを完成させた後、搬送基板から完成したデバイスを脱着させる方法により製造される。このように高温工程を伴うフレキシブルデバイスは、高温での耐熱性が求められる。特に、低温ポリシリコン(Low Temperature Poly Silicon;LTPS)を用いた薄膜トランジスタ工程を用いる場合、工程温度が500℃に近接し得るため、搬送基板上に製膜されるポリイミドフィルムは、高温工程中にも加水分解による熱分解が起こらず高耐熱性を満たさなければならない。また、貯蔵安定性だけでなく、加工後の透明性も確保されなければならない。
【0004】
そこで、フレキシブルデバイスの製造のためには、高耐熱性を満たすとともに加水分解が防止され、優れた耐化学性および貯蔵安定性を示すことができ、光学的・機械的特性を向上させることができる、新しいポリイミドの開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国公開特許公報第2019-0153225号(2019.05.23)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、耐熱性に優れ、透明性、黄色度、およびヤング率などの物性が著しく向上したポリイミドフィルムを提供するためのポリイミド前駆体およびポリイミド前駆体溶液を提供する。
【0007】
他の態様は、前記ポリイミド前駆体溶液を用いたポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供する。
また他の態様は、前記ポリイミドフィルムを含む積層体(multilayer structure)および光電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様によると、下記化学式1で表されるジアミン化合物に由来する構造単位と、酸二無水物に由来する構造単位と、を含むポリイミド前駆体を提供する。
【0009】
[化学式1]
【化1】
【0010】
(前記化学式1中、
Aは、OまたはSであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0011】
本発明の一実施形態に係る化学式1中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;nおよびmは、互いに独立して、0~1の整数であってもよい。
【0012】
本発明の一実施形態に係る化学式1は、下記化学式2で表されてもよい。
【0013】
[化学式2]
【化2】
【0014】
(前記化学式2中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0015】
本発明の一実施形態に係る化学式2中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;nおよびmは、互いに独立して、0~1の整数であってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る酸二無水物は、下記化学式3で表されてもよい。
【0017】
[化学式3]
【化3】
【0018】
(前記化学式3中、
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
pは0~2の整数である。)
【0019】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式4で表されるジアミン化合物に由来する構造単位をさらに含んでもよい。
【0020】
[化学式4]
【化4】
【0021】
(前記化学式4中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
sおよびtは0~3の整数である。)
【0022】
具体的に、本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式11で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0023】
[化学式11]
【化5】
【0024】
(前記化学式11中、
Aは、OまたはSであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
およびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C10)アルキルであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数であり;
pは0~2の整数である。)
【0025】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、前記化学式11で表される繰り返し単位を10~100モル%で含んでもよい。
【0026】
他の態様によると、前記ポリイミド前駆体および溶媒を含むポリイミド前駆体溶液を提供する。
本発明の一実施形態に係る溶媒は、アミド類であってもよい。アミド類は、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルプロピオンアミド、またはこれらの混合物であってもよい。
【0027】
また他の態様によると、下記化学式12で表される繰り返し単位を含むポリイミドフィルムを提供する。
【0028】
[化学式12]
【化6】
【0029】
(前記化学式12中、
Aは、OまたはSであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~2の整数であり;
pは0~2の整数である。)
【0030】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、下記化学式13で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0031】
[化学式13]
【化7】
【0032】
(前記化学式13中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
11は、(C1-C10)のアルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
sおよびtは0~3の整数であり;
pは0~2の整数である。)
【0033】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、熱膨張係数(CTE)が100~450℃で0超過~20ppm/℃以下であってもよく、例えば、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が25未満であり、ASTM D882に準じたヤング率が7.0超過であってもよい。
【0034】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、素子用基板、ディスプレイ用基板、光学フィルム、ICパッケージ、電着フィルム、多層FRC、テープ、タッチパネル、または光ディスク用保護フィルムに用いられてもよい。
【0035】
さらに他の態様によると、前記ポリイミドフィルムを含む積層体および光電素子を提供する。
さらに他の態様によると、前記ポリイミド前駆体溶液を基板に塗布した後に熱処理するステップを含む、ポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0036】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムの製造方法において、熱処理は、
100℃以下で行われる第1熱処理ステップと、
100℃超過300℃以下で行われる第2熱処理ステップと、
300℃超過500℃以下で行われる第3熱処理ステップと、を含んでもよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、総重量を基準に、固形分が10~13重量%で含まれてもよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の一態様に係るポリイミド前駆体は、特定の構造のジアミン化合物を採用することで、これを用いて製造されたポリイミドフィルムは、著しく向上した熱膨張係数、透明度、および耐熱性を有し、優れた黄色度、破断強度、およびヤング率を有する。
【0039】
さらに、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液を用いて製造されたポリイミドフィルムは、高い熱処理にも基板のストレスが上昇しないため、熱膨張係数および残留応力に優れており、曲がり、剥離、および破断などの問題が発生しない。
したがって、本発明の一態様に係るポリイミドフィルムは、光学的異方性の減少により優れた光学的特性を有し、均一な透過度および優れた透明性の実現が可能である。
【0040】
また、本発明の一態様に係るポリイミド前駆体溶液から製造されたポリイミドフィルムは、無色透明であるとともに、耐熱性、機械的強度、および柔軟性などに優れており、素子用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、電着フィルム(adhesive film)、多層FPC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に非常に有用に用いられることができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明における説明で用いられる用語は、単に特定の具体例を効果的に記述するためのものであり、本発明を制限する意図ではない。
本明細書で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図する。
【0042】
また、本明細書において特に言及なしに用いられた単位は、重量を基準とし、一例として、%または比の単位は、重量%または重量比を意味し、重量%は、特に定義しない限り、全体組成物のうち何れか1つの成分が組成物中で占める重量%を意味する。
【0043】
また、本明細書で用いられる数値範囲は、下限値と上限値、その範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅において論理的に誘導される増分、この中で限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本発明の明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0044】
本明細書の用語、「含む」とは、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
【0045】
本明細書の用語、「ポリイミド前駆体溶液」は、ポリイミドを製造するための組成物を意味し、具体的に、ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸と等価の意味を有するものであってもよい。また、前記ポリイミド前駆体溶液は、ポリアミドイミドを製造するための組成物として用いられてもよい。
【0046】
本明細書の用語、「ポリイミドフィルム」は、ポリイミド前駆体溶液から誘導されたポリイミドの成形体であり、ポリイミドと等価の意味を有するものであってもよい。
本明細書の用語、「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)原子を意味する。
【0047】
本明細書の用語、「アルキル」は、1つの水素除去により脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖状または分岐状の形態を何れも含む。
本明細書の用語、「アルコキシ」は、*-O-アルキルで表され、前記アルキルは、上述した定義と同様である。
本明細書の用語、「ハロアルキル」は、前記アルキルにおいて、1つの水素がハロゲンで置換されたものを意味する。
【0048】
本明細書の用語、「アリール」は、1つの水素除去により芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、各環に適切には4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または融合環系を含み、複数のアリールが単一結合で連結されている形態まで含む。一例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニルなどを含むが、これに限定されない。
【0049】
一態様に係るポリイミド前駆体は、特定の構造を有する新規なジアミン化合物に由来する構造単位と、酸二無水物化合物に由来する構造単位と、を含む。
前記新規なジアミン化合物は、下記化学式1で表される。
【0050】
[化学式1]
【化8】
【0051】
(前記化学式1中、
Aは、OまたはSであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0052】
前記ポリイミド前駆体が、ベンゾチアゾリル基またはベンゾオキサゾリル基を含むジアミン化合物をポリイミドモノマーとして採用することで、リニアリティおよび剛直性を有することができる。これにより、優れた熱膨張係数を有する高耐熱性、耐化学性、透明性などの著しく向上した光学的物性、および機械的物性を付与することができる。
【0053】
さらに優れた光学的物性および機械的物性を有するポリイミドフィルムを製造するという面で、化学式1中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;nおよびmは、互いに独立して、0~1の整数であってもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、前記化学式1のRおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;nおよびmは、互いに独立して、0~1の整数であってもよい。
【0055】
本発明の一実施形態において、前記化学式1は、下記化学式1-1で表されてもよい。
【0056】
[化学式1-1]
【化9】
【0057】
(前記化学式1-1中、
Aは、OまたはSであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0058】
一例として、化学式1-1中、Aは、OまたはSであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、ハロ(C1-C5)アルキル、(C1-C5)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;mおよびnは、互いに独立して、0~1の整数であってもよく、具体的に、Aは、OまたはSであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;mおよびnは、互いに独立して、0~1の整数であってもよく、より具体的に、Aは、Oであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、ハロ(C1-C5)アルキル、(C1-C5)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;mおよびnは0であってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態において、前記新規なジアミン化合物は、前述したようなベンゾチアゾリル基またはベンゾオキサゾリル基を含むとともに、特定の位置に特定の置換基であるCFを有することで、さらに向上した物性、特に、さらに高い透明度を有するポリイミドフィルムを製造することができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記化学式1は、下記化学式2で表されてもよい。
【0061】
[化学式2]
【化10】
【0062】
(前記化学式2中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0063】
本発明の一実施形態において、化学式2で表されるジアミン化合物は、アミノ基を有するベンゾオキサゾールと、特定の位置に導入された特定の置換基であるCF、およびアミノ基を有するベンゼンが単一結合で連結された化合物であって、前記化学式2で表されるジアミン化合物から誘導された構造単位を含むことで、優れた熱膨張係数および低い黄色度による優れた透明性を有するポリイミドフィルムを実現することができる。
【0064】
本発明の一実施形態に係る化学式2中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;nおよびmは、互いに独立して、0~1の整数であってもよく、好ましくは、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;nおよびmは、0であってもよい。
【0065】
具体的に、本発明の一実施形態において、前記ジアミン化合物は、下記化合物から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0066】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【0067】
一例として、前記化学式3中、R11は、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;pは0~1の整数であってもよく、より好ましくは、R11は、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;pは0であってもよい。
【0068】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、前記化学式1で表されるジアミン化合物に由来する構造単位の他に、ジアミン化合物に由来する構造単位をさらに含んでもよい。一例として、さらに含まれるジアミン化合物は、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルシラン、4,4’-ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノジフェニルN-メチルアミン、4,4’-ジアミノジフェニルN-フェニルアミン、1,4-ジアミノベンゼン(p-フェニレンジアミン)、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、ビス{4-(3-アミノフェノキシ)フェニル}スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパンなどが挙げられ、これらを単独でまたは複数を併用してもよいが、これに限定されるものではない。
【0069】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式4で表されるジアミン化合物に由来する構造単位をさらに含んでもよい。
【0070】
[化学式4]
【化17】
【0071】
(前記化学式4中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
sおよびtは0~3の整数である。)
【0072】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、前記化学式4で表されるジアミン化合物に由来する構造単位をさらに含むことで、さらに優れた光学的および機械的物性を有するポリイミドフィルムを製造することができるだけでなく、さらに制御された物性を有するポリイミドフィルムを実現することができる。
【0073】
本発明の一実施形態に係る化学式4中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;Rは、水素、または(C1-C10)アルキルであってもよく、sおよびtは0~1の整数であってもよく、具体的に、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;Rは、水素、または(C1-C5)アルキルであってもよく、sおよびtは0~1の整数であってもよく、より具体的に、sおよびtは0であってもよい。
【0074】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式5で表されるジアミン化合物に由来する構造単位をさらに含んでもよい。
【0075】
[化学式5]
【化18】
【0076】
(前記化学式5中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
aおよびbは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0077】
一例として、前記化学式5中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;aおよびbは、互いに独立して、0~1の整数であってもよく、より具体的に、aおよびbは0であってもよい。
【0078】
本発明の一実施形態において、前記酸二無水物は、酸二無水物官能基を有する化合物であれば何れを用いてもよいが、具体的に、テトラカルボン酸二無水物であってもよい。テトラカルボン酸二無水物は、(C8-C36)芳香族テトラカルボン酸二無水物、(C6-C36)脂肪族テトラカルボン酸二無水物、および(C6-C36)脂環式テトラカルボン酸二無水物から選択される化合物であってもよい。高温領域においても優れた黄色度を有するという面で、好ましくは、(C8-C36)芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。本発明の一実施形態に係るテトラカルボン酸二無水物での炭素数は、カルボキシル基に含まれる炭素の数も含む。好ましくは、本発明の一実施形態に係るテトラカルボン酸二無水物は、具体的に、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート酸無水物)、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。具体的に、(C6-C50)脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、一例として、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物などであってもよい。(C6-C36)脂環式テトラカルボン酸二無水物は、一例として、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、エチレングリコール-ビス-(3,4-ジカルボン酸無水物フェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0079】
一例として、本発明の一実施形態に係る酸二無水物は、下記化学式3で表される酸二無水物であってもよく、前記化学式3で表される酸二無水物から誘導された構造単位を含むことで、さらに優れた耐薬品性および黄色度などを実現することができる。
【0080】
[化学式3]
【化19】
【0081】
(前記化学式3中、
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
pは0~2の整数である。)
【0082】
本発明の一実施形態に係る化学式3中、R11は、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;pは0~1の整数であってもよく、より好ましくは、R11は、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;pは0であってもよい。
【0083】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式3-1で表される酸二無水物に由来する単位構造をさらに含んでもよい。
【0084】
[化学式3-1]
【化20】
【0085】
(前記化学式3-1中、
Dは、ハロ(C1-C10)アルキルで置換または非置換の(C1-C10)アルキレンであり;
12およびR13は、互いに独立して、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
qおよびrは、互いに独立して、0~2の整数である。)
【0086】
一例として、前記化学式3-1中、Dは、ハロ(C1-C5)アルキルで置換または非置換の(C1-C5)アルキレンであり;R12およびR13は、互いに独立して、(C1-C5)アルキルであり;qおよびrは、互いに独立して、0~1の整数であってもよく、具体的に、Dは、ハロ(C1-C3)アルキルで置換または非置換の(C1-C3)アルキレンであり;R12およびR13は、互いに独立して、(C1-C3)アルキルであり;qおよびrは、互いに独立して、0~1の整数であってもよく、より具体的に、Dは、ハロ(C1-C3)アルキルで置換または非置換の(C1-C3)アルキレンであり;R12およびR13は、互いに独立して、(C1-C3)アルキルであり;qおよびrは0であってもよい。
【0087】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式11で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0088】
[化学式11]
【化21】
【0089】
(前記化学式11中、
Aは、OまたはSであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
およびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C10)アルキルであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数であり;
pは0~2の整数である。)
【0090】
一例として、前記化学式11中、Aは、Oであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;R11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;RおよびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C10)アルキルであり;mおよびnは、互いに独立して、0~1の整数であり;pは0~1の整数であってもよく、具体的に、Aは、Oであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;R11は、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;RおよびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C5)アルキルであり;mおよびnは、互いに独立して、0~1の整数であり;pは0~1の整数であってもよく、より具体的に、Aは、Oであり;m、n、およびpは0であってもよい。
【0091】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、前記化学式11で表される繰り返し単位を10~100モル%で含んでもよく、具体的には30~100モル%、好ましくは40~95モル%、より具体的には50~80モル%を含んでもよい。
【0092】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式11-1で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0093】
[化学式11-1]
【化22】
【0094】
(前記化学式11-1中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
およびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C10)アルキルであり;
sおよびtは、互いに独立して、0~3の整数であり;
pは0~2の整数である。)
【0095】
一例として、前記化学式11-1中、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;Rは、水素、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;R11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;RおよびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C10)アルキルであり;sおよびtは、互いに独立して、0~3の整数であり;pは0~2の整数であってもよく、具体的に、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;Rは、水素、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;R11は、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;RおよびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C5)アルキルであり;sおよびtは、互いに独立して、0~1の整数であり;pは0~1の整数であってもよく、より具体的に、R11は、(C1-C5)アルキルであり;RおよびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C5)アルキルであり;s、t、およびpは0であってもよい。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記化学式11-1で表される繰り返し単位は、ポリイミド前駆体の総モル%に対して10~90モル%で含んでもよく、具体的には30~80モル%、より具体的には40~70モル%、さらに具体的には50~60モル%を含んでもよい。
【0097】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、下記化学式11-2および11-3で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0098】
[化学式11-2]
【化23】
【0099】
[化学式11-3]
【化24】
【0100】
(前記化学式11-2および11-3中、
Aは、OまたはSであり;
Dは、ハロ(C1-C10)アルキルで置換または非置換の(C1-C10)アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
12~R13は、互いに独立して、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
およびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C10)アルキルであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数であり;
qおよびrは、互いに独立して、0~2の整数であり;
sおよびtは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0101】
一例として、化学式11-2および11-3中、Aは、Oであり;Dは、ハロ(C1-C5)アルキルで置換または非置換の(C1-C10)アルキレンであり;R~Rは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;Rは、水素、または(C1-C10)アルキルであり;R12~R13は、互いに独立して、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;RおよびRは、互いに独立して、水素、または(C1-C5)アルキルであり;m、n、q、r、s、およびtは、互いに独立して、0~1の整数であってもよい。
【0102】
本発明の一実施形態において、前記化学式11-2で表される繰り返し単位は、ポリイミド前駆体の総モル%に対して10~90モル%で含んでもよく、具体的には30~80モル%、より具体的には40~70モル%、さらに具体的には50~60モル%を含んでもよい。
【0103】
本発明の一実施形態において、前記化学式11-3で表される繰り返し単位は、ポリイミド前駆体の総モル%に対して10~50モル%で含んでもよく、具体的には30~50モル%、より具体的には40~50モル%を含んでもよい。
【0104】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、前記化学式11で表される繰り返し単位を必須に含み、これに前記化学式11-1で表される繰り返し単位をさらに含んでもよく、具体的に、前記化学式11で表される繰り返し単位を必須に含み、前記化学式11-2で表される繰り返し単位を含んでもよく、より具体的に、前記化学式11で表される繰り返し単位を必須に含み、前記化学式11-1で表される繰り返し単位および前記化学式11-2で表される繰り返し単位をさらに含んでもよく、さらに具体的に、前記化学式11で表される繰り返し単位を必須に含み、前記化学式11-1で表される繰り返し単位、前記化学式11-2で表される繰り返し単位、および前記化学式11-3で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0105】
具体的な本発明の一実施形態に係るジアミン化合物は、下記反応式1に示されたように製造されてもよいが、下記反応式1以外の通常の有機合成方法により多様に変形されてもよいことはいうまでもない。
【0106】
[反応式1]
【化25】
【0107】
(反応式1中の置換基の定義は、請求項第1項での置換基と同様であり、Xはハロゲンである。)
【0108】
また、他の態様は、ポリイミド前駆体および溶媒を含むポリイミド前駆体組成物を提供する。
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、本発明のポリイミド前駆体を含むことで、著しく向上した光学的および機械的物性を有するポリイミドフィルムを実現することができる。
【0109】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、高い透明性および耐熱性を有し、高い熱処理にも基板のストレスが上昇しないため、熱的寸法安定性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。特に、透明性に優れ、且つ、低い線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。
【0110】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ);酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトールなどのアルコール類;N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルメトキシアセトアミドなどのアミド類;などから選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0111】
一例として、前記有機溶媒は、上述したアミド類から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
一例として、前記有機溶媒は、沸点が300℃以下であってもよい。具体的に、一例として、前記有機溶媒は、N,N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N-エチルピロリドン(NEP)、N,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N,N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0112】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、組成物の総重量を基準に、前記化学式11で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体を固形分として10~13重量%含んでもよい。
【0113】
具体的に、本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体組成物は、粘度が2,000~10,000cpsを満たしてもよい。前記粘度は、具体的には8,000cps以下、より具体的には7,000cps以下を満たしてもよい。かかる粘度範囲を満たす場合、ポリイミドフィルムの加工時、脱泡の効率性に優れており、工程上の利点を提供することができる。そこで、さらに均一な表面を実現できるため好適である。この際、前記粘度は、ブルックフィールド(Brookfield RVDV-III)粘度計スピンドル(Spindle)No.52を用いて、常温(25℃)で試料を載せ、トルク値が80%となった時点で2分間安定化作業を経て測定した値を意味する。
【0114】
本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、溶媒存在下で、本発明の一実施形態に係るジアミン化合物と酸二無水物の重合により製造されてもよく、本発明の一実施形態に係るジアミン化合物と酸二無水物のモル比は2:1~1:2、または1.5:1~1:1.5、または1.1:1~1:1.1であってもよい。
本発明の一実施形態に係るジアミン化合物と酸二無水物の重合は70℃以下、または10~70℃、または20~30℃の温度で行われてもよい。
【0115】
また他の態様は、本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体、または本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体溶液をイミド化して製造されたポリイミドフィルムを提供する。
一例として、前記イミド化は、化学イミド化または熱イミド化方法により行われてもよい。
【0116】
例えば、前記イミド化は、熱イミド化方法により行われてもよい。かかる方法により、高温で熱によりイミド化する場合、フィルム全体にさらに均一な機械的な物性を付与することができる。具体的に、本発明に係るポリイミドフィルムは、上述したポリイミド前駆体溶液を基板に塗布した後に熱処理するステップを含む製造方法により製造されてもよい。
【0117】
本発明の一実施形態において、前記熱処理は500℃以下で行われてもよい。
具体的に、熱処理は、100℃以下で行われる第1熱処理ステップと、100℃超過300℃以下で行われる第2熱処理ステップと、300℃超過500℃以下で行われる第3熱処理ステップと、を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0118】
本発明の一実施形態において、前記基板としては、ガラス基板、金属基板、またはプラスチック基板などが特に制限されずに用いられてもよい。中でも、ポリイミド前駆体溶液に対するイミド化および硬化工程中に熱および化学的安定性に優れ、別の離型剤の処理がなくても、硬化後に形成されたポリイミドフィルムに対して損傷なしに容易に分離可能なガラス基板が好ましい。
【0119】
具体的に、本発明の一実施形態において、塗布のための方法は、特に限定されるものではないが、一例として、スピンコート法、浸漬法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコート法、メニスカスコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビーズコート法、エアナイフコート法、リバースロールコート法、ブレードコート法、キャスティングコート法、およびグラビアコート法などから選択される何れか1つ以上の方法を用いてもよい。
本発明の一実施形態において、熱処理するステップ後、乾燥するステップおよび基板上から分離するステップなどをさらに含んでもよい。
【0120】
本発明の一実施形態において、前記化学式11で表される繰り返し単位を含むポリイミド前駆体の分子量は、特に限定されるものではないが、一例として、重量平均分子量が20,000~150,000g/molの範囲にする場合、さらに優れた物性を得ることができる。
【0121】
また、本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、レベリング剤、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤、および可塑剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0122】
本発明は、本発明のポリイミド前駆体組成物を用いて製造されたポリイミドフィルムを提供するものであり、本発明のポリイミドフィルムは、下記化学式12で表される繰り返し単位を含んでもよい。
【0123】
[化学式12]
【化26】
【0124】
(前記化学式12中、
Aは、OまたはSであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~2の整数であり;
pは0~2の整数である。)
【0125】
一例として、前記化学式12中、Aは、Oであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;R11は、(C1-C10)アルキルであり;mおよびnは、互いに独立して、0~1の整数であり;pは0~1の整数であってもよく、具体的に、Aは、Oであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;R11は、(C1-C5)アルキルであり;mおよびnは、互いに独立して、0~1の整数であり;pは0~1の整数であってもよく、より具体的に、Aは、Oであり;RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;R11は、(C1-C5)アルキルであり;m、n、およびpは0であってもよい。
【0126】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、下記化学式12-1で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0127】
[化学式12-1]
【化27】
【0128】
(前記化学式112-1中、
Aは、OまたはSであり;
Dは、ハロ(C1-C10)アルキルで置換または非置換の(C1-C10)アルキレンであり;
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、C1-C10アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
12~R13は、互いに独立して、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
mおよびnは、互いに独立して、0~3の整数であり;
qおよびrは、互いに独立して、0~2の整数である。)
【0129】
一例として、前記化学式12-1中、Aは、Oであり;Dは、ハロ(C1-C5)アルキルで置換または非置換の(C1-C10)アルキレンであり;R~Rは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;m、n、q、r、s、およびtは、互いに独立して、0~1の整数であってもよい。
【0130】
一例として、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、下記化学式13で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0131】
[化学式13]
【化28】
【0132】
(前記化学式13中、
およびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
は、水素、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
sおよびtは0~3の整数であり;
pは0~2の整数である。)
【0133】
本発明の一実施形態に係るRおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;Rは、水素、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;R11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;sおよびtは0~1の整数であり;pは0~1の整数であってもよく、具体的に、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;Rは、水素、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;R11は、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;sおよびtは0~1の整数であり;pは0~1の整数であってもよく、より具体的に、RおよびRは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;Rは、水素、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;R11は、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;s、t、およびpは0であってもよい。
【0134】
一例として、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、下記化学式13-1で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0135】
[化学式13-1]
【化29】
【0136】
(前記化学式13-1中、
Dは、ハロ(C1-C10)アルキルで置換または非置換の(C1-C10)アルキレンであり;
~Rは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
は、水素、(C1-C10)アルキル、ハロ(C1-C10)アルキル、(C1-C10)アルコキシ、または(C6-C12)アリールであり;
12~R13は、互いに独立して、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;
qおよびrは、互いに独立して、0~2の整数であり;
sおよびtは、互いに独立して、0~3の整数である。)
【0137】
一例として、前記化学式13-1中、Dは、ハロ(C1-C5)アルキルで置換または非置換の(C1-C10)アルキレンであり;R~Rは、互いに独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、またはハロ(C1-C10)アルキルであり;Rは、水素、または(C1-C10)アルキルであり;R12~R13は、互いに独立して、(C1-C5)アルキル、またはハロ(C1-C5)アルキルであり;q、r、s、およびtは、互いに独立して、0~1の整数であってもよい。
【0138】
一例として、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、前記化学式12で表される繰り返し単位を必須に含み、これに前記化学式12-1で表される繰り返し単位をさらに含んでもよく、具体的に、前記化学式12で表される繰り返し単位を必須に含み、前記化学式12-1で表される繰り返し単位および前記化学式13で表される繰り返し単位をさらに含んでもよく、より具体的に、前記化学式12で表される繰り返し単位を必須に含み、前記化学式13で表される繰り返し単位および前記化学式13-1で表される繰り返し単位をさらに含んでもよく、さらに具体的に、前記化学式12で表される繰り返し単位を必須に含み、前記化学式12-1で表される繰り返し単位、前記化学式13で表される繰り返し単位、および前記化学式13-1で表される繰り返し単位をさらに含んでもよい。
【0139】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、熱膨張係数および黄色度が低く、曲がりや屈曲が発生せず、透明性に優れるとともにヤング率に優れることができる。
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、熱膨張係数(CTE)が100~450℃で20ppm/℃以下、例えば15ppm/℃以下、例えば12ppm/℃以下、例えば10ppm/℃以下、例えば8ppm/℃以下、例えば7ppm/℃以下であってもよく、例えば-20ppm/℃超過、例えば-10ppm/℃超過、例えば-5ppm/℃超過、例えば0ppm/℃超過であってもよい。
【0140】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、ASTM E313に準じたYIが25未満 、例えば20以下、例えば16以下であってもよく、例えば1~25、例えば3~20、例えば3~16であってもよい。
【0141】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、ASTM D882に準じたヤング率が6.0超過、例えば6.5超過であってもよく、例えば6.0超過~8.5、例えば6.5超過~8.0未満であってもよい。
【0142】
一例として、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、熱膨張係数が100~450℃で20ppm/℃以下であり、ASTM E313に準じたYIが25未満であり、ASTM D882に準じたヤング率が6.0超過であってもよく、例えば、熱膨張係数が100~450℃で15ppm/℃以下であり、ASTM E313に準じたYIが20以下であり、ASTM D882に準じたヤング率が6.5超過であってもよく、例えば、熱膨張係数が100~450℃で12ppm/℃以下であり、ASTM E313に準じたYIが16以下であり、ASTM D882に準じたヤング率が6.8以上であってもよい。
【0143】
一例として、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、熱膨張係数が100~450℃で0超過~20ppm/℃であり、ASTM E313に準じたYIが1~25未満 であり、ASTM D882に準じたヤング率が6.0超過~8.5であってもよく、例えば、熱膨張係数が100~450℃で0超過~15ppm/℃以下であり、ASTM E313に準じたYIが3~20であり、ASTM D882に準じたヤング率が6.5超過~8.5であってもよく、例えば、熱膨張係数が100~450℃で0超過~12ppm/℃であり、ASTM E313に準じたYIが3~16であり、ASTM D882に準じたヤング率が6.8~8.0未満であってもよい。
【0144】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、全光線透過率が80%以上であってもよく、例えば85%以上であってもよい。
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、上述した特定の骨格および特定の位置に特定の官能基であるCFが導入されたジアミン化合物から製造されることで、上記のような優れた光学的物性および機械的物性を有することができる。
【0145】
具体的に、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、前記化学式1で表されるジアミン化合物に由来した繰り返し単位を含むことで、光学性、耐熱性、機械的強度、および柔軟性の何れも優れたポリイミドフィルムを提供することができる。これにより、本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、素子用基板、ディスプレイ用カバー基板、光学フィルム、IC(integrated circuit)パッケージ、電着フィルム、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に用いられることができる。
【0146】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムに含まれたポリイミドの重量平均分子量は、10,000~200,000g/mol、または20,000~100,000g/mol、または30,000~100,000g/molであってもよい。また、前記ポリイミドの分子量分布(Mw/Mn)は1.1~2.5の範囲を満たしてもよい。上述したポリイミドの重量平均分子量および分子量分布を満たす場合、光学性、耐熱性、機械的強度、および柔軟性などのポリイミドフィルムの特性にさらに優れることができる。
【0147】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムの厚さは5~15μmであってもよい。
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、温度変化に応じた耐熱特性に優れることができる。具体的に、前記ポリイミドフィルムは、上述した厚さ範囲で、100℃~450℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で1次昇温工程を行った後、400℃~100℃の温度範囲で4℃/minの冷却速度で冷却される際の熱膨張変化の様相をTMA(TA社製のTMA450)で測定した結果、20ppm/℃以下を満たしてもよい。具体的には、前記熱膨張係数(CTE)は15ppm/℃以下を満たしてもよく、より具体的には、-20~10ppm/℃の範囲を満たしてもよい。
【0148】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、前記化学式1で表されるジアミン化合物に由来する剛直な構造により、優れた光学性、耐熱性、機械的強度、および柔軟性を同時に満たすことができる。特に、高熱工程時に発生し得る熱収縮挙動に対して優れた耐熱性を示すだけでなく、優れた無色透明な光学性を示すことができるため、素子用基板、ディスプレイ用基板、光学フィルム(optical film)、IC(integrated circuit)パッケージ、電着フィルム(adhesive film)、多層FRC(flexible printed circuit)、テープ、タッチパネル、光ディスク用保護フィルムなどのような多様な分野に用いられることができる。
【0149】
本発明の一実施形態に係るポリイミドフィルムは、2以上の層に積層された形態である積層体として用いられてもよい。
また、本発明は、上述したポリイミドフィルムまたはこれらを含む積層体(multilayer film)をフレキシブル基板として含む光電素子およびフレキシブルディスプレイを提供する。
【0150】
一例として、前記光電素子は、光学部品、スイッチ、および光変調器などが挙げられ、同時に微細パターン形成特性が求められる高耐熱性の基板素材に好適である。
一例として、前記フレキシブルディスプレイは、液晶表示装置(liquid crystal display device、LCD)、有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)などが挙げられ、特に高温工程を必要とするLTPS(low temperature polysilicon)工程を用いるOLEDデバイスに好適であるが、これに限定されるものではない。
【0151】
以下、本発明の具体的な実施例および比較例を通じて本発明について説明する。下記の実施例は本発明の技術思想を説明するためのものであり、本発明が下記の実施例に限定されないことは当業者に明らかである。
【0152】
[評価方法]
1.線熱膨張係数(CTE)およびガラス転移温度(Tg)
TMA(TA instrument社製、Discovery 450)を用いて、TMA-methodにより線熱膨張係数を測定した。試験片の大きさは5mm×20mm、荷重は0.02Nとし、昇温速度は5℃/minとした。CTE値は、100℃~450℃の温度範囲の昇温区間において測定した。
Tg値は、100℃~450℃の昇温区間においてTMAグラフ変曲点で測定した。
【0153】
2.黄色度(YI)
ASTM E313の規格に準じて、厚さ10μmのポリイミドフィルムを基準として測色計(Colorimeter)(HunterLab社製、ColorQuest XE)を用いて測定した。
【0154】
3.全光線透過率
ASTM D1746の規格に準じて、厚さ10μmのポリイミドフィルムに対して、分光光度計(Spectrophotometer)(SHIMADZU社製、MPC-3100)を用いて、380~780nmの波長領域の全体において測定された全光線透過率を測定した。単位は%である。
【0155】
4.ヤング率(Young’s modulus)
ASTM D882に準じて、厚さ10μm、長さ40mm、および幅5mmのポリイミドフィルムを、25℃で、10mm/minで引っ張る条件で、Instron社製のUTM 3365を用いて測定した。モジュラス単位はGPaである。
【0156】
5.厚さ
0.5TガラスにPAAをコーティングした後、硬化した基板をKLA社製のフィルム厚さ測定機(Alpha step D500)を用いて測定した。単位はμmである。
【0157】
6.粘度
ブルックフィールド(Brookfield RVDV-III)粘度計スピンドル(Spindle)No.52を用いて、常温(25℃)で試料を載せ、トルク値が80%となった時点で2分間放置後に安定化させて測定した値を意味する。単位はcpsである。
【0158】
7.重量平均分子量
0.05MのLiBrを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCはWaters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Reflective Index detectorを用い、ColumnはOlexis、Polypore、およびmixed Dカラムを連結し、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を用いた。この際、35℃、1mL/minの流量(flow rate)で分析した。
【0159】
[製造例1]ジアミン化合物1の製造
【化30】
【0160】
ステップ1:化合物Aの製造
窒素環境で、4-ニトロ-2-トリフルオロメチル安息香酸(60g)をDCM 1Lに投入した後に0℃に冷却した。Oxalic chloride(47g)を徐々に投入してから1時間反応した後、DMF 2gを投入した。常温で6時間撹拌させた後に減圧蒸留により溶媒を除去し、4-ニトロ-2-トリフルオロメチルベンゾイルクロリド64gを得た。別の反応器に、2-アミノ-4-ニトロフェノール39gおよびTEA 7gをジオキサン390mLに溶かした後、0℃に冷却した。先に製造した塩化ベンゾイル64gをジオキサン250mLに溶かし、徐々に投入した。温度を常温に昇温した後、12時間撹拌させた後に減圧蒸留により溶媒を除去した。得られた固体を1NのHClで洗浄した後にフィルタし、黄色固体の化合物A(2-トリフルオロメチル-N-(2-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)72g(収率76%)を得た。
【0161】
ステップ2:化合物Bの製造
ステップ1で製造された化合物A(ベンズアミド)72gに、4-メチルベンゼンスルホン酸72gおよびキシレン750mLを投入し、6時間還流させた。減圧蒸留により溶媒を除去した後、EtOH/HO(1:1)で析出させ、化合物B(5,4’-ジニトロ-2’-トリフルオロメチル-2-フェニルベンゾオキサゾール)51g(収率74%)を得た。
【0162】
ステップ3:ジアミン化合物1の製造
ステップ2で得た化合物BをEtOH 500mLに溶かした後、10% PdC 5gを投入した。Hをbubblingしつつ6時間撹拌させた後、フィルタして触媒の除去および減圧蒸留により溶媒を除去した。EtOHで再結晶し、薄い褐色のジアミン化合物1(5,4’-ジアミノ-2’-トリフルオロメチル-2-フェニルベンゾオキサゾール)33g(収率78%)を得た。
【0163】
H NMR (DMSO-d, 500MHz, ppm): 7.82 (d, 1H, J=8.5Hz), 7.33 (d, 1H, J=8.5Hz), 7.06 (d, 1H, J=2 Hz), 6.882 (d, 1H, J=8.5Hz), 6.82 (d, 1H, J=2Hz), 6.63 (dd, 1H, J=8.5, 2Hz), 6.24 (s, NH2), 5.04 (Br, NH2).
【0164】
[製造例2]ジアミン化合物2の製造
【化31】
Polymer 49(2008)2644-2649に記載されたように製造した。
【0165】
ポリイミド前駆体溶液の製造
[実施例1]
PMDA/ジアミン化合物 1(モル比1/0.999)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)184gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、ジアミン化合物(化合物1)20.13gを溶解させた。前記化学式1のジアミン溶液にPMDA(Pyromellitic Dianhydride)15.00gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌させた。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を10.5重量%になるようにDMPAを添加し、ポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液の粘度は4100cpsであった。また、前記溶液の分子量の測定結果、Mwが91000g/molであった。
【0166】
[実施例2]
6FDA/PMDA/化合物1/TFMB(モル比:0.3/0.7/0.5/0.5)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)203gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン)を10.48g、化合物1を9.59g溶解させた。前記TFMB/化合物1の溶液に、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)8.72gおよびPMDA(Pyromellitic Dianhydride)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌させた。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を10.4重量%になるようにDMPAを添加し、ポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液の粘度は4500cpsであった。また、前記溶液の分子量の測定結果、Mw 95000 g/molであった。
【0167】
[実施例3]
6FDA/PMDA/化合物2/化合物1(モル比:0.35/0.65/0.5/0.5)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)218.5gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、化合物2を10.3g、化合物1を10.33g溶解させた。前記化合物2/化合物1の溶液に、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)10.96gおよびPMDA(Pyromellitic Dianhydride)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌させた。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を10.2重量%になるようにDMPAを添加し、ポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液の粘度は4300cpsであった。また、前記溶液の分子量の測定結果、Mw 89000g/molであった。
【0168】
[比較例1]
PMDA/2,5-ジアミノベンゾオキサゾール(モル比:1/0.999)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)161gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,5-ジアミノベンゾオキサゾール15.66gを溶解させた。前記2,5-ジアミノベンゾオキサゾール溶液にPMDA(Pyromellitic Dianhydride)15gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌させた。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を9.3重量%になるようにDMPAを添加し、ポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液の粘度は4800cpsであった。また、前記溶液の分子量の測定結果、Mw 93000g/molであった。
【0169】
[比較例2]
PMDA/1H-ベンズイミダゾール-2,5-ジアミン(モル比:1/0.999)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)159gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、1H-ベンズイミダゾール-2,5-ジアミン15.40gを溶解させた。前記1H-ベンズイミダゾール-2,5-ジアミン溶液にPMDA(Pyromellitic Dianhydride)15gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌させた。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を9.1重量%になるようにDMPAを添加し、ポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液の粘度は5100cpsであった。また、前記溶液の分子量の測定結果、Mw 105000g/molであった。
【0170】
[比較例3]
PMDA/化合物2(モル比:1/0.999)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)184.2gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、ジアミン化合物(化合物2)20.07gを溶解させた。前記溶液にPMDA(Pyromellitic Dianhydride)15gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌させた。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を10.4重量%になるようにDMPAを添加し、ポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液の粘度は4300cpsであった。また、前記溶液の分子量の測定結果、Mw 95000g/molであった。
【0171】
[比較例4]
6FDA/PMDA/化合物2/TFMB(モル比:0.3/0.7/0.5/0.5)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)203gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ビフェニルジアミン)を10.48g、化合物2を9.57g溶解させた。前記TFMB/化合物2の溶液に、6FDA(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物)8.72gおよびPMDA(Pyromellitic Dianhydride)10gを同じ温度で添加し、一定時間溶解しつつ撹拌させた。前記反応から製造されたポリイミド前駆体溶液の固形分濃度を10.6重量%になるようにDMPAを添加し、ポリイミド前駆体溶液を製造した。前記ポリイミド前駆体溶液の粘度は4600cpsであった。また、前記溶液の分子量の測定結果、Mw 93000g/molであった。
【0172】
ポリイミドフィルムの製造
前記実施例1~3および比較例1~4で製造されたポリイミド前駆体溶液を10μmの厚さでガラス基板にスピンコーティングした。ポリイミド前駆体溶液が塗布されたガラス基板をオーブンに入れ、4℃/minの速度で加熱し、80℃で30分、220℃で30分、および450℃で1時間を維持して硬化工程を行った。硬化工程の完了後、ガラス基板を水に浸して、ガラス基板上に形成されたフィルムを剥ぎ取り、オーブンで100℃で乾燥し、ポリイミドフィルムを製造した。
【0173】
前記方法により製造されたポリイミドフィルムの物性は、前記評価方法により測定し、下記表1に示した。
【0174】
【表1】
【0175】
前記表1に示されたように、前記化学式1で表されるジアミン化合物に由来した構造単位を含む実施例1~3のポリイミド前駆体溶液から製造されたポリイミドフィルムは、0~15ppm/℃の熱膨張係数、80%以上の全光線透過率、25未満の黄色度、および6.0GPa以上のヤング率を有することで、フレキシブルディスプレイパネルに適用するのに好適な機械的物性および光学的物性を示すことを確認することができる。
【0176】
特に、実施例3のポリイミド前駆体溶液から製造されたポリイミドフィルムは、熱膨張係数値が負の値を示すジアミン化合物から誘導された構造単位と、熱膨張係数値が正の値を示すジアミン化合物から誘導された構造単位との組み合わせを含むことで、熱膨張係数値が0に非常に近い5.7ppm/℃であることによって、低温ポリシリコンTFT(LTPS TFT)の高温工程にさらに有利であることを確認することができる。
【0177】
したがって、本発明の一実施形態に係るポリイミド前駆体は、高い耐熱性と、優れた熱膨張係数、黄色度、およびヤング率などの光学的物性および機械的物性を同時に満たすポリイミドフィルムを製造することができる。
【0178】
以上、特定の事項と限定された実施形態により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施形態に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0179】
よって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、何れも本発明の思想の範囲に属するといえる。