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  • 特開-筋金棒体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044014
(43)【公開日】2022-03-16
(54)【発明の名称】筋金棒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/52 20060101AFI20220309BHJP
   B28B 23/02 20060101ALI20220309BHJP
   B29C 70/20 20060101ALI20220309BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20220309BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20220309BHJP
【FI】
B29C70/52
B28B23/02 Z
B29C70/20
B29K101:12
B29K105:08
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021142043
(22)【出願日】2021-09-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2020148625
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000211857
【氏名又は名称】中川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕茂
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬章
【テーマコード(参考)】
4F205
4G058
【Fターム(参考)】
4F205AA11
4F205AC02
4F205AD16
4F205AG14
4F205AH47
4F205HA05
4F205HA27
4F205HA37
4F205HA47
4F205HB02
4F205HC02
4F205HC15
4F205HF01
4G058GA01
4G058GB08
(57)【要約】
【課題】十分な強度を有する筋金棒体を簡易かつ安価に製造することができる筋金棒体の製造方法を提供する。
【解決手段】断面中心部に熱可塑性樹脂繊維2を配置し、熱可塑性樹脂繊維2の外周に強化繊維1を配して、熱可塑性樹脂繊維2を溶融温度以上に加熱しこれを溶融させた後、冷却して断面中心部に棒状の樹脂層91を形成するとともに当該樹脂層91の外周に繊維強化樹脂層92を形成した筋金棒体9を製造する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面中心部に熱可塑性樹脂繊維を配置し、前記熱可塑性樹脂繊維の外周に強化繊維を配して、前記熱可塑性樹脂繊維を溶融温度以上に加熱しこれを溶融させた後、冷却して前記断面中心部に棒状の樹脂層を形成するとともに当該樹脂層の外周に繊維強化樹脂層を形成したことを特徴とする筋金棒体の製造方法。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂層の外周にさらに樹脂の被覆層を形成した請求項1に記載の筋金棒体の製造方法。
【請求項3】
前記強化繊維としてバサルト繊維を使用した請求項1又は2に記載の筋金棒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリートの補強等に好適に使用できる筋金棒体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の筋金棒体として従来の鉄製のものに代えて、錆を生じずコンクリートの強度を長く維持できるバサルト繊維を使用したものが注目されている。このような筋金棒体として、例えば特許文献1に示されているように、バサルト繊維の束を芯材としてその周囲を所定厚の熱可塑性樹脂層で覆った構造のものが提案されている。そして芯材の周囲に樹脂層を形成する方法としては従来、芯材を樹脂の溶融溶液中に通すディップ法が多用されている。一方、特許文献2に示されるように、芯材を所定径の樹脂棒体で構成し、その周囲に強化繊維を巻回することによって強度を確保する試みもなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-251378
【特許文献2】WO2017/043654
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ディップ法は溶融樹脂の貯留槽を設ける必要がある等によって装置全体が大掛かりになり、製造コストが高くなるという問題がある。一方、芯材として樹脂棒体を予め準備する方法も、樹脂棒体を押出し成形等によって別に製造する手間を要する等の問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、十分な強度を有する筋金棒体を簡易かつ安価に製造することができる筋金棒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明の筋金棒体の製造方法では、断面中心部に熱可塑性樹脂繊維(2)を配置し、前記熱可塑性樹脂繊維(2)の外周に強化繊維(1)を配して、前記熱可塑性樹脂繊維(2)を溶融温度以上に加熱しこれを溶融させた後、冷却して前記断面中心部に棒状の樹脂層(91)を形成するとともに当該樹脂層(91)の外周に繊維強化樹脂層(92)を形成したことを特徴とする。
【0007】
本第1発明の製造方法により製造された筋金棒体は、断面中心部に棒状の樹脂層が形成されるとともに、当該樹脂層を囲む外周部には、樹脂中に強化繊維が埋設された繊維強化樹脂層が形成され、棒状樹脂層と繊維強化樹脂層が互いに強固に結合した十分な強度を有する筋金棒体が得られる。そして、本第1発明の製造方法によれば、従来のディップ法による場合のように溶融樹脂の貯留槽を設ける必要がないから装置構成が簡素化され、また、押出成形等によって芯材となる樹脂棒体を予め準備する必要もないから製造の手間が軽減されて、全体として製造コストを大きく低減することが可能である。
【0008】
本第2発明の筋金棒体の製造方法では、前記繊維強化樹脂層(92)の外周にさらに樹脂の被覆層(101)を形成する。
【0009】
本第2発明の製造方法により製造された筋金棒体は、外周に被覆層が形成されていることにより、さらにその強度を増すことが可能であるとともに耐薬品性も向上する。
【0010】
本第3発明の筋金棒体の製造方法では、前記強化繊維(1)としてバサルト繊維を使用する。
【0011】
本第3発明の製造方法により製造された筋金棒体は、強化繊維としてバサルト繊維を使用しているから、コンクリート内に設ける筋金棒体として有効である。
【0012】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の筋金棒体の製造方法によれば、十分な強度を有する筋金棒体を簡易かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態における、筋金棒体の製造方法を実施する装置の概略斜視図である。
図2】筋金棒体の概念的断面図である。
図3】本発明の第1実施形態における、筋金棒体の製造方法を実施する装置の概略側面図である。
図4】筋金棒体の概念的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0016】
(第1実施形態)
図1には本発明の筋金棒体の製造方法を実施するための装置構成の一例を示す。図1において、補強繊維としてのバサルト繊維1と、マトリクス樹脂となる熱可塑性樹脂繊維としてのポリプロピレン(PP)樹脂繊維2とがそれぞれボビン3,4に巻回されており、これらボビン3,4は図略のラックに支持されている。
【0017】
各ボビン3,4から引き出されたバサルト繊維1とPP樹脂繊維2は、予備加熱用の第1金型5の端面に開口する各貫通穴51,52に通されている。この際、PP樹脂繊維2は第1金型5の端面中心部に形成された貫通穴51に挿通され、一方、バサルト繊維1は上記第1金型5の端面外周部に形成された貫通穴52に挿通される。なお、ボビン3,4や貫通穴51,52の数、すなわちバサルト繊維1やPP樹脂繊維2の本数(束数)は、成型後の筋金棒体に要求される仕様に応じて適宜決定される。一例として、バサルト繊維1の本数は4本、太さは4800TEX、PP樹脂繊維の本数は5~6本、太さは15000dTEXである。このようなバサルト繊維1やPP樹脂繊維2は多数のストランドの束であり、ストランドの線径の一例は数μから数十μである。
【0018】
第1金型5の貫通穴51,52を通過したバサルト繊維1およびPP樹脂繊維2は、PP樹脂繊維2の溶融温度以上に加熱された第2金型6の端面中心に開口する単一の貫通穴61内に集合挿通される。そして、当該貫通穴61を通過する間に、溶融したPP樹脂繊維2は断面中心部で互いに融合するとともに、溶融樹脂の一部が断面外周部に位置するバサルト繊維1間に浸入して原棒体8が得られ、原棒体8は第2金型6の貫通穴61から送り出される。なお貫通穴61を次第に縮径させた第2金型6を複数台設けて、これら第2金型6の貫通穴61に原棒体8を順次通過させて所望断面径かつ所望断面形状の原棒体8を得るようにしても良い。
【0019】
第2金型6から送出された原棒体8は最終段の冷却装置7に通され、冷却装置7内でPP樹脂が固化して筋金棒体9となって出力される。筋金棒体9の概念的断面を図2に示す。筋金棒体9は、断面中心部に所定径の棒状の、PP樹脂のみからなる樹脂層91が形成されるとともに、当該樹脂層91を囲む外周部には、PP樹脂中にバサルト繊維1が埋設された繊維強化樹脂層92が形成されている。一例として、樹脂層91の直径は1.5mm~3.5mm、繊維強化樹脂層92の厚みは0.75mm~1.75mmである。
【0020】
このような構造の筋金棒体9は、断面中心部の棒状樹脂層91と、当該樹脂層91と一体化した断面外周部の繊維強化樹脂層92が互いに強固に結合して十分な強度を有し(一例として引張強度15kN程度)、コンクリート補強等の用途に好適に使用できる。そして本実施形態の製造方法によれば、従来のディップ法による場合のように溶融樹脂の貯留槽を設ける必要がないから装置構成が簡素化され、また、押出成形等によって芯材となる樹脂棒体を予め準備する必要もないから製造の手間が軽減されて、全体として製造コストを大きく低減することができる。
【0021】
(第2実施形態)
第1実施形態の方法で製造した筋金棒体9を図3に示すような押出成形金型20に供給して、繊維強化樹脂層92の外周に、図4に示すような所定厚の被覆層101を形成しても良い。すなわち、図3において、第1実施形態の製造方法で得た筋金棒体9を、PP樹脂ペレットを貯留するホッパ301を設けた押出機30を連結した押出成形金型20に供給して、筋金棒体9の繊維強化樹脂層92の外周に溶融PP樹脂を押し出し、後段の冷却装置40で、押し出された溶融PP樹脂を固化させて被覆層101とする。被覆層101を形成した筋金棒体10は当該被覆層を十分な厚みで形成することによってさらにその強度が増すとともに、耐薬品性を向上させることができる。
【0022】
(その他の実施形態)
上記実施形態では熱可塑性樹脂繊維としてポリプロピレン樹脂繊維を使用したが、これに限られず、ポリエチレン樹脂繊維やナイロン樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維等が使用できる。
【0023】
また、強化繊維としては、バサルト繊維に限られず、ガラス繊維、炭素繊維等の他の無機繊維やアラミド繊維、アクリル繊維等の有機繊維を使用することができる。
【0024】
被覆層は必ずしも繊維強化樹脂層の樹脂と同一のものを使用する必要はないが、同一にした方が被覆層と繊維強化樹脂層の一体化に有利である。
【0025】
なお、熱可塑性樹脂繊維や強化繊維を金型への供給時に撚るようにしても良い
【符号の説明】
【0026】
1…バサルト繊維(強化繊維)、2…ポリプロピレン樹脂繊維(熱可塑性樹脂繊維)、5…第1金型、6…第2金型、7…冷却装置、9…筋金棒体、91…樹脂層、92…繊維強化樹脂層、10…筋金棒体、101…被覆層、20…押出成形金型、40…冷却装置。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-11-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
前記繊維強化樹脂層の外周にさらに押出成形によって樹脂の被覆層を形成した請求項1に記載の筋金棒体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本第2発明の筋金棒体の製造方法では、前記繊維強化樹脂層(92)の外周にさらに押出成形によって樹脂の被覆層(101)を形成する。