(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044078
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】人形に装着する目玉およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A63H 3/42 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
A63H3/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149520
(22)【出願日】2020-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年10月23日にTwitter (https://mobile.twitter.com/revy_dool/status/1186960058933895168)にて発表 令和1年11月22日より通販のウェブサイト(https://minne.com/@actnaus)にて販売
(71)【出願人】
【識別番号】520344121
【氏名又は名称】眞保 紗織
(74)【代理人】
【識別番号】100160185
【弁理士】
【氏名又は名称】垣内 茂晴
(72)【発明者】
【氏名】眞保 紗織
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150BC02
2C150CA01
2C150DC17
2C150FB20
2C150FB43
2C150FD17
2C150FD31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】虹彩模様が変化する非常に綺麗な目玉およびその製造方法を提供する。
【解決手段】人形に装着する目玉1であって、窪みが形成された樹脂製の白目玉部10と、窪みに形成されたアクリル塗料層21Aと、アクリル塗料層21Aの上に形成された示温材層22Aと、示温材層22Aの上に形成された第1の偏光粉末材層23Aと、第1の偏光粉末材層23Aの上に形成された、第1の偏光粉末材層23Aより粒子が細かい第2の偏光粉末材層24Aと、窪みに入れられた、瞳孔にみたてた材料30と、瞳孔にみたてた材料30の上に盛られた樹脂製の虹彩ドーム25とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形に装着する目玉であって、
窪みが形成された樹脂製の白目玉部と、
前記窪みに形成されたアクリル塗料層と、
前記アクリル塗料層の上に形成された示温材層と、
前記示温材層の上に形成された第1の偏光粉末材層と、
前記第1の偏光粉末材層の上に形成された、前記第1の偏光粉末材層より粒子が細かい第2の偏光粉末材層と、
前記窪みに入れられた、瞳孔にみたてた材料と、
前記瞳孔にみたてた材料の上に盛られた樹脂製の虹彩ドームと
を備える目玉。
【請求項2】
前記アクリル塗料層、前記示温材層、前記第1の偏光粉末材層、および前記第2の偏光粉末材層の全体を覆うように前記虹彩ドームが盛られている請求項1に記載の目玉。
【請求項3】
人形に装着する目玉の製造方法であって、
樹脂製の白目玉部に形成された窪みにアクリル塗料を塗る第1工程と、
前記窪みに示温材を塗る第2工程と、
前記窪みに第1の偏光粉末材を塗り、紫外線硬化樹脂とともに硬化させる第3工程と、
前記窪みに前記第1の偏光粉末材より粒子が細かい第2の偏光粉末材を塗り、紫外線硬化樹脂とともに硬化させる第4工程と、
前記窪みに瞳孔にみたてた材料を入れ、その上に樹脂製の虹彩ドームを盛る第5工程と
を備える目玉の製造方法。
【請求項4】
水性の前記アクリル塗料を塗った後、湿度60%以下の環境で乾燥させる請求項3に記載の目玉の製造方法。
【請求項5】
前記アクリル塗料は、前記示温材と比較して暗色の塗料である請求項3または4に記載の目玉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球体関節人形などの人形に装着する目玉およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人形に装着する目玉(ドールアイ)として、グラスアイ、シリコンアイ、アクリルアイ、レジンアイなど、様々な素材のものが知られている(非特許文献1参照)。レジンアイは、他の素材と比べると経年劣化が起こりやすいものの、製造環境を用意しやすいという利点がある。レジンアイの製造方法や構造は様々であるが、瞳部分については、虹彩模様をプリンタで紙に印刷して封入したものが主流である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Wikipedia、“ドールアイ”、令和2年8月31日検索、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%A4>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目は人間の表情の中でも極めて重要な部分であり、人形作りにおいても綺麗な目を作ることは極めて重要である。上述したように、ドールアイには様々な素材のものが知られているが、いずれも、瞳部分については1つの虹彩模様に固定されているのが通常である。
【0005】
本発明は、人形に装着する目玉およびその製造方法に関するものであり、虹彩模様が変化する非常に綺麗な目玉およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、人形に装着する目玉であって、窪みが形成された樹脂製の白目玉部と、前記窪みに形成されたアクリル塗料層と、前記アクリル塗料層の上に形成された示温材層と、前記示温材層の上に形成された第1の偏光粉末材層と、前記第1の偏光粉末材層の上に形成された、前記第1の偏光粉末材層より粒子が細かい第2の偏光粉末材層と、前記窪みに入れられた、瞳孔にみたてた材料と、前記瞳孔にみたてた材料の上に盛られた樹脂製の虹彩ドームとを備える。
【0007】
本発明の他の一態様は、人形に装着する目玉の製造方法であって、樹脂製の白目玉部に形成された窪みにアクリル塗料を塗る第1工程と、前記窪みに示温材を塗る第2工程と、前記窪みに第1の偏光粉末材を塗り、紫外線硬化樹脂とともに硬化させる第3工程と、前記窪みに前記第1の偏光粉末材より粒子が細かい第2の偏光粉末材を塗り、紫外線硬化樹脂とともに硬化させる第4工程と、前記窪みに瞳孔にみたてた材料を入れ、その上に樹脂製の虹彩ドームを盛る第5工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、虹彩模様が変化する非常に綺麗な目玉およびその製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態における目玉の正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における目玉の側面図である。
【
図3】本発明の実施の形態における目玉の製造方法の説明図である。
【
図4】本発明の実施の形態における目玉の内部構造を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における目玉を正面から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は、あくまでも例示である。すなわち、以下に説明する実施の形態は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
【0011】
[外観]
図1は、本発明の実施の形態における目玉1の正面図であり、
図2は、その側面図である。目玉1は、球体関節人形などの人形に装着するレジンアイであって、全体的には略半球体状の外観である。人間の目の白目部分に相当する白目玉部10と、人間の目の虹彩部分に相当する虹彩部20とを備えている。虹彩部20の内部には、瞳孔にみたてた材料(瞳孔部)30が配置されている。
【0012】
具体的には、
図1に示すように、目玉1を正面から見たとき、白目玉部10と虹彩部20と瞳孔部30は同心円状に配置される。各部の大きさは限定されるものではないが、例えば、白目玉部10の直径は15mm程度であり、虹彩部20の直径は8mm程度であり、瞳孔部30の直径は3.5mm程度である。
【0013】
また、
図2に示すように、目玉1を側面から見たとき、白目玉部10の上部に虹彩部20が配置される。この例では、瞳孔部30は、白目玉部10の上端より低い位置に配置されるため、図示していない。白目玉部10と虹彩部20の境界は、滑らかな球体外面として形成されている。白目玉部10に対して虹彩部20が僅かに盛り上がっているが、白目玉部10と虹彩部20の曲率をほぼ同一にし、一体的に形成してもよい。
【0014】
[製造方法]
図3は、本発明の実施の形態における目玉1の製造方法の説明図である。以下の工程を備える限り、マシンメイドでもハンドメイドでも製造することが可能である。
【0015】
ここでは、
図3(a)に示すように、2液レジンの白目玉部10を使用する。2液レジンは、主剤と硬化剤の2つの液体を混ぜ合わせて化学反応でゆっくりと固めるタイプの樹脂である。白目玉部10の上面には略半球体状の窪みHが形成されている。白目玉部10の製造工程は本発明の主眼とするところではないため、詳しい説明を省略こととし、以下、虹彩部20の製造工程について詳しく説明する。
【0016】
まず、
図3(b)に示すように、白目玉部10に形成された窪みHに下地として黒色系のアクリル塗料21を塗る。アクリル塗料21は、ホビー・工芸用の水性アクリル絵具でよい。水溶性で乾燥も早く、乾くと耐水性になるものを使用する。
【0017】
アクリル塗料21を塗った後、湿度60%以下の環境で乾燥させるのが望ましい。しっかり乾燥させないと乾燥不良が起き、次の工程で色が混ざったり、滲んだりする。
【0018】
次に、
図3(c)に示すように、白目玉部10の窪みHに示温材22を塗る。示温材22は、ある温度に達すると色が変わる特殊な顔料を含む塗料である。温度を下げると元の色に戻る可逆性のものと、元の色に戻らない不可逆性のものがあるが、可逆性の示温材22を使用するのが望ましい。示温材22を塗った領域において温度差があると虹色に見える。示温材22を2回に分けて塗ると、この虹色が綺麗に出る。
【0019】
次に、
図3(d)に示すように、白目玉部10の窪みHに第1の偏光粉末材23を塗り、UV-レジンとともに硬化させる。第1の偏光粉末材23は、偏光粉末が分散された顔料である。UV-レジンは、紫外線に反応して硬化する紫外線硬化樹脂である。
【0020】
これにより、虹彩部20を見る角度によって色が変化し、虹彩部20の美観を高めることができる。例えば、虹彩部20を正面から見たときは青であるのに対し、斜め45度から見たときはピンクに色が変化する。
【0021】
次に、
図3(e)に示すように、白目玉部10の窪みHに第2の偏光粉末材24を塗り、UV-レジンとともに硬化させる。第2の偏光粉末材24には、第1の偏光粉末材23より粒子が細かいものを使用する。これにより、虹彩部20の色の変化が大きくなり、更に虹彩部20の美観を高めることができる。
【0022】
次に、
図3(f)に示すように、白目玉部10の窪みHの底に瞳孔にみたてた材料30を入れ、UV-レジンとともに硬化させ、その上に虹彩ドーム25を盛る。例えば、瞳孔にみたてた材料30としては黒色系のスワロフスキーを使用し、虹彩ドーム25としては透明のUV-レジンを使用することができる。虹彩ドーム25の盛り方は特に限定されるものではないが、1回目は低く盛り、ある程度の厚みになるまで複数回に分けて盛るのが望ましい。
【0023】
最後に、UVカットスプレーを散布し、4~5日乾燥させると完了する。湿度などの条件によっては1~2日程度の乾燥時間でもよい。UVカットスプレーを散布しておけば、経年劣化の黄変を遅らせる効果がある。
【0024】
なお、本発明者が試行錯誤した結果、下地として黒色系のアクリル塗料21を塗っておかないと、以降の工程で独特の虹色が出なくなってしまうことがわかった。また、示温材22を塗った後に偏光粉末材を塗っておかないと、温度が0度近くになったときに虹彩部20が黒く見えてしまうことがわかった。
【0025】
[内部構造]
図4は、本発明の実施の形態における目玉1の内部構造を示す断面図である。この図は模式的な図であり、説明の都合上、複数の層21A~24Aを厚く描いている。
【0026】
目玉1は、
図4に示すように、アクリル塗料層21Aと、示温材層22Aと、第1の偏光粉末材層23Aと、第2の偏光粉末材層24Aとを備える。アクリル塗料層21Aは、白目玉部10の窪みHに塗られたアクリル塗料21の層である。示温材層22Aは、アクリル塗料層21Aの上に塗られた示温材22の層である。示温材22を2回塗ることで2層の示温材層22Aが形成される場合もある。第1の偏光粉末材層23Aは、示温材層22Aの上に塗られた第1の偏光粉末材23の層である。第2の偏光粉末材層24Aは、第1の偏光粉末材層23Aの上に塗られた第2の偏光粉末材24の層である。第2の偏光粉末材24の層の上に瞳孔にみたてた材料30が置かれ、複数の層21A~24Aの全体を覆うように虹彩ドーム25が盛られている。
【0027】
[写真]
図5は、本発明の実施の形態における目玉1を正面から撮影した写真である。本発明の実施の形態によれば、
図5に示すように、非常に綺麗な目玉1を提供することができる。虹彩部20は、見る角度によって色が変わり、神秘的である。また、温度によって色が変わるため、四季おりおりの色合いを楽しむことができる。
【0028】
[本発明の特徴とその効果]
以上のように、本発明は、人形に装着する目玉1であって、窪みHが形成された樹脂製の白目玉部10と、窪みHに形成されたアクリル塗料層21Aと、アクリル塗料層21Aの上に形成された示温材層22Aと、示温材層22Aの上に形成された第1の偏光粉末材層23Aと、第1の偏光粉末材層23Aの上に形成された、第1の偏光粉末材層23Aより粒子が細かい第2の偏光粉末材層24Aと、窪みHに入れられた、瞳孔にみたてた材料30と、瞳孔にみたてた材料30の上に盛られた樹脂製の虹彩ドーム25とを備える。このような多層構造の虹彩部20によれば、示温材22の特性が発揮され、虹彩模様が変化する非常に綺麗な目玉1を提供することが可能となる。
【0029】
また、アクリル塗料層21A、示温材層22A、第1の偏光粉末材層23A、および第2の偏光粉末材層24Aの全体を覆うように虹彩ドーム25が盛られているのが望ましい。これにより、虹彩部20を多層構造とした場合でも、どの角度から見ても綺麗な仕上がりとなる。
【0030】
また、本発明は、人形に装着する目玉1の製造方法であって、樹脂製の白目玉部10に形成された窪みHにアクリル塗料を塗る第1工程と、窪みHに示温材22を塗る第2工程と、窪みHに第1の偏光粉末材23を塗り、紫外線硬化樹脂とともに硬化させる第3工程と、窪みHに第1の偏光粉末材23より粒子が細かい第2の偏光粉末材24を塗り、紫外線硬化樹脂とともに硬化させる第4工程と、窪みHに瞳孔にみたてた材料30を入れ、その上に樹脂製の虹彩ドーム25を盛る第5工程とを備える。この第1~第5工程により多層構造の虹彩部20を製造することができる。その結果、上述したように、示温材22の特性が発揮され、虹彩模様が変化する非常に綺麗な目玉1を提供することが可能となる。
【0031】
また、水性のアクリル塗料21を塗った後、湿度60%以下の環境で乾燥させるのが望ましい。これにより、アクリル塗料21をしっかり乾燥させることができるため、次の工程で色が混ざったり、滲んだりする不具合が生じにくい。
【0032】
また、アクリル塗料21は、示温材22と比較して暗色の塗料であるのが望ましい。これにより、示温材22が例えばクリーム色であっても、アクリル塗料21がしっかり下地の役割りを果たし、以降の工程で独特の虹色を出すことが可能である。
【0033】
[その他の実施の形態]
以上のように、本発明の実施の形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0034】
1 目玉
10 白目玉部
20 虹彩部
21 アクリル塗料
21A アクリル塗料層
22 示温材
22A 示温材層
23 第1の偏光粉末材
23A 第1の偏光粉末材層
24 第2の偏光粉末材
24A 第2の偏光粉末材層
25 虹彩ドーム
30 瞳孔にみたてた材料(瞳孔部)
H 窪み