(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044131
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】モアレ表示体、モアレ顕像化パターンの生成装置、モアレ顕像化パターンの生成システム及びモアレ顕像化パターンの生成方法
(51)【国際特許分類】
G09F 19/12 20060101AFI20220310BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20220310BHJP
B42D 25/342 20140101ALI20220310BHJP
【FI】
G09F19/12 H
B41M3/00 Z
B42D25/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149601
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 佑美
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA01
2C005JB40
2H113AA06
2H113BB02
2H113BB22
2H113CA37
2H113CA44
(57)【要約】
【課題】 従来、動きを感じるモアレ像を顕像化するパターン及びそのパターンを作成するものは存在しなかった。
【解決手段】 モアレ表示体は、第1のパターンと、第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置され、少なくとも1つの領域で、第1のパターンに対して位相が連続的に変化する第2のパターンと、を備える。例えば、第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で関数に応じて変化することとすれば、動きを感じるモアレ像を顕像化することができる。したがって、入力画像とその特徴値などのデータを入力して、自然な動きを感じるモアレ像を顕像化することができる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパターンと、
前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置され、少なくとも1つの領域で、前記第1のパターンに対して位相が連続的に変化する第2のパターンと、
を備える
ことを特徴とするモアレ表示体。
【請求項2】
前記第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で関数に応じて変化する
ことを特徴とする請求項1に記載のモアレ表示体。
【請求項3】
基準点を設定し、基準点を中心とした座標において、モアレ縞に垂直な方向の座標をx、xに垂直な座標をyとした場合、
前記第1のパターンのモアレ強度Rは、以下の式(1)を満たし、
前記第2のパターンのモアレ強度Bは、以下の式(2)を満たし、
前記第1のパターンに対する前記第2のパターンの前記位相の変化を表す位相移動量PHは、以下の式(3)を満たす
ことを特徴とする請求項2に記載のモアレ表示体。
【数5】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチ、kは位相移動量係数である。
【請求項4】
位相移動量係数kは、関数で表される
ことを特徴とする請求項3に記載のモアレ表示体。
【請求項5】
前記位相移動量係数kは、連続して変化する
ことを特徴とする請求項3に記載のモアレ表示体。
【請求項6】
前記位相移動量係数kは、k=ax+bを満たす
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のモアレ表示体。
ここで、a,bは定数である。
【請求項7】
前記位相移動量係数kは、前記基準点から放射状に変化する
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1つに記載のモアレ表示体。
【請求項8】
前記基準点は、複数存在する
ことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1つに記載のモアレ表示体。
【請求項9】
読取部と、
抽出部と、
作成部と、
を含み、
前記読取部は、
モアレ顕像化パターンの元となる入力画像と、前記モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とを取得し、
前記抽出部は、
前記入力画像における領域毎の特徴値を抽出し、
前記作成部は、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、第1のパターンを生成し、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、前記入力画像の領域毎の特徴値に応じて、前記第1のパターンに対する、前記領域毎の前記領域内の位置に応じて異なる位相変動量を定め、前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置される第2のパターンを生成し、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンからなるモアレ顕像化パターンを作成する、
ことを特徴とする、モアレ顕像化パターンの生成装置。
【請求項10】
前記モアレ情報は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンの基本構成に関する情報及びグラデーション情報を含み、
前記特徴値は、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベルのうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする、請求項9に記載のモアレ顕像化パターンの生成装置。
【請求項11】
情報処理サーバと、1つ以上のクライアント端末が通信ネットワークを介して接続されており、
前記情報処理サーバは、
モアレ顕像化パターンの生成装置を含み、
前記モアレ顕像化パターンの生成装置は、
読取部と、
抽出部と、
作成部と、
を含み、
前記読取部は、
モアレ顕像化パターンの元となる入力画像と、前記モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とを、前記通信ネットワークを介して前記1つ以上のクライアント端末から取得し、
前記抽出部は、
前記入力画像における領域毎の特徴値を抽出し、
前記作成部は、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、第1のパターンを生成し、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、前記入力画像の領域毎の特徴値に応じて、前記第1のパターンに対する前記領域毎の前記領域内の位置に応じて異なる位相変動量を定め、前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置される第2のパターンを生成し、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンからなるモアレ顕像化パターンを作成する、
ことを特徴とする、モアレ顕像化パターンの生成システム。
【請求項12】
前記モアレ情報は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンの基本構成に関する情報及びグラデーション情報を含み、
前記特徴値は、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベルのうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする、請求項11に記載のモアレ顕像化パターンの生成システム。
【請求項13】
入力画像と、モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とに基づいて、第1のパターンを生成する工程と、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、前記入力画像の領域毎の特徴値に応じて、前記第1のパターンに対する、前記領域毎の位相変動量を定め、前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置される第2のパターンを生成する工程と、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンからなるモアレ顕像化パターンを得る工程と、
を含む、
ことを特徴とする、モアレ顕像化パターンの生成方法。
【請求項14】
前記モアレ情報は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンの基本構成に関する情報及びグラデーション情報を含み、
前記特徴値は、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベルのうち少なくとも1つを含む
ことを特徴とする、請求項13に記載のモアレ顕像化パターンの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、モアレ表示体、モアレ顕像化パターンの生成装置、モアレ顕像化パターンの生成システム及びモアレ顕像化パターンの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「モアレ(またはモワレ)」とは、周期的な模様や構造を複数重ね合わせたときに、視覚的に発生する干渉縞である。また、物理学的にいうと、モアレとは二つの空間周波数のうなり現象といえる。
モアレは、様々な形態で発生するため、モアレを望ましくないものとして取り除く場合もあるが、逆に発生したモアレを有用なものとして利用する場合もある。
【0003】
例えば、特許文献1においては、偽造/複製の防止用のとしてモアレ像を作成したものとして、
「基材上に、
横波である波形状万線と、
前記波形状万線の背景に該波形状万線に略直交する万線パターンと、を設け、
該波形状万線は、レリーフ像を形成し、
該万線パターンは、1/2ピッチ分ずらしてある潜像部と、前記潜像部以外の非潜像部と、から構成されていることを特徴とする潜像を有する画像形成体」
が記載されている。
【0004】
また、特許文献2においては、
マーブリング模様等の複雑な模様をディスプレイとカメラの干渉によるモアレを用いてパターン生成を実施し、
モアレで発生する複雑な図柄をアートとして利用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4403694号公報
【特許文献2】特許第6218986号公報
【特許文献3】国際公開2020/096009号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては、自然な動きを感じるモアレ像を顕像化するパターン及びそのパターンを作成するものは存在しなかった。
【0007】
本開示の実施形態は斯かる問題を鑑みてなされたもので、入力画像とその特徴値などのデータを入力して、動きを感じるモアレ像を顕像化するモアレ表示体、モアレ顕像化パターンの生成装置、モアレ顕像化パターンの生成システム及びモアレ顕像化パターンの生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示の実施形態のモアレ表示体の一つは、
第1のパターンと、
前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置され、少なくとも1つの領域で、前記第1のパターンに対して位相が連続的に変化する第2のパターンと、
を備える。
なお、上記において「連続的に変化する」とは、一定の区間において一定の傾向をもって変化することを意味し、必ずしも常に連続である必要はなく、離散的に変化してもよいことを意味する。
【0009】
他の実施形態のモアレ表示体の一つでは、
前記第2のパターンの位相は、少なくとも1つの区間で関数に応じて変化している。
【0010】
他の実施形態のモアレ表示体の一つでは、
基準点を設定し、基準点を中心とした座標において、モアレ縞に垂直な方向の座標をx、xに垂直な座標をyとした場合、
前記第1のパターンのモアレ強度Rは、以下の式(1)を満たし、
前記第2のパターンのモアレ強度Bは、以下の式(2)を満たし、
前記第1のパターンに対する前記第2のパターンの前記位相の変化を表す位相移動量PHは、以下の式(3)を満たす。
【数1】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチ、kは位相移動量係数である。
【0011】
他の実施形態のモアレ表示体の一つでは、
前記位相移動量係数kは、関数で表される。
【0012】
他の実施形態のモアレ表示体の一つでは、
前記位相移動量係数kは、連続して変化する。
【0013】
他の実施形態のモアレ表示体の一つでは、
前記位相移動量係数kは、k=ax+bを満たす。
ここで、a,bは定数である。
【0014】
他の実施形態のモアレ表示体の一つでは、
前記位相移動量係数kは、前記基準点から放射状に変化する。
【0015】
他の実施形態のモアレ表示体の一つでは、
前記基準点は、複数存在する。
【0016】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示の実施形態のモアレ顕像化パターンの生成装置の一つは、
読取部と、
抽出部と、
作成部と、
を含み、
前記読取部は、
モアレ顕像化パターンの元となる入力画像と、前記モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とを取得し、
前記抽出部は、
前記入力画像における領域毎の特徴値を抽出し、
前記作成部は、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、第1のパターンを生成し、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、前記入力画像の領域毎の特徴値に応じて、前記第1のパターンに対する、前記領域毎の前記領域内の位置に応じて異なる位相変動量を定め、前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置される第2のパターンを生成し、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンからなるモアレ顕像化パターンを作成する。
【0017】
他の実施形態のモアレ顕像化パターンの生成装置の一つでは、
前記モアレ情報は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンの基本構成に関する情報及びグラデーション情報を含み、
前記特徴値は、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベルのうち少なくとも1つを含む。
【0018】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示の実施形態のモアレ顕像化パターンの生成システムの一つは、
情報処理サーバと、1つ以上のクライアント端末が通信ネットワークを介して接続されており、
前記情報処理サーバは、
モアレ顕像化パターンの生成装置を含み、
前記モアレ顕像化パターンの生成装置は、
読取部と、
抽出部と、
作成部と、
を含み、
前記読取部は、
モアレ顕像化パターンの元となる入力画像と、前記モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とを、前記通信ネットワークを介して前記1つ以上のクライアント端末から取得し、
前記抽出部は、
前記入力画像における領域毎の特徴値を抽出し、
前記作成部は、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、第1のパターンを生成し、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、前記入力画像の領域毎の特徴値に応じて、前記第1のパターンに対する前記領域毎の前記領域内の位置に応じて異なる位相変動量を定め、前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置される第2のパターンを生成し、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンからなるモアレ顕像化パターンを作成する。
【0019】
他の実施形態のモアレ顕像化パターンの生成システムの一つでは、
前記モアレ情報は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンの基本構成に関する情報及びグラデーション情報を含み、
前記特徴値は、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベルのうち少なくとも1つを含む。
【0020】
上記の課題を解決するために、代表的な本開示の実施形態のモアレ顕像化パターンの生成方法の一つは、
入力画像と、モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とに基づいて、第1のパターンを生成する工程と、
前記入力画像と、前記モアレ情報とに基づいて、前記入力画像の領域毎の特徴値に応じて、前記第1のパターンに対する、前記領域毎の位相変動量を定め、前記第1のパターンと所定の距離離れた位置に設置される第2のパターンを生成する工程と、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンからなるモアレ顕像化パターンを得る工程と、
を含む。
【0021】
他の実施形態のモアレ顕像化パターンの生成方法の一つでは、
前記モアレ情報は、前記第1のパターン及び前記第2のパターンの基本構成に関する情報及びグラデーション情報を含み、
前記特徴値は、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベルのうち少なくとも1つを含む。
【発明の効果】
【0022】
本開示の実施形態によれば、入力画像とその特徴値などのデータを入力して、動きを感じるモアレ像を顕像化することができる。
上記以外の課題、構成及び効果は、以下の発明を実施するための形態における説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示に係るモアレ像を生成したい入力画像を模式的に示す図である。
【
図2】本開示に係るレイヤー情報を模式的に示す図である。
【
図3】本開示に係るモアレ表示体に関する情報を模式的に示す図である。
【
図4】本開示に係る基本パターンの例を示す図である。
【
図5】特徴値として透過率を採用し、矩形波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。
【
図6】特徴値として透過率を採用し、sin波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。
【
図7】本開示に係るストライプパターンの基本パターン(第1のパターン)および開口部/非開口部比を変化させたパターン(第2のパターン)の例を示した図である。
【
図9】本開示に係る位相移動量係数に対応した位相移動量のイメージを示す図である。
【
図10】本開示に係る位相移動量係数の変化に対するモアレ縞輝度の変化を示す。
【
図11】本開示に係るモアレ縞の視認領域の定義を示す図である。
【
図12】本開示に係る
図8に示した入力画像に対して作成されたモアレ縞を示す。
【
図14】本開示に係る位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞の一例を示す図である。
【
図15】本開示に係る位相移動量係数kが指数関数的に変化する一例を示す。
【
図16】本開示に係る位相移動量係数kが対数関数的に変化する一例を示す。
【
図17】本開示に係る位相移動量係数kが三角関数的に変化する一例を示す。
【
図18】本開示に係る位相移動量係数kが階段関数的に変化する一例を示す。
【
図19】本開示に係る位相移動量係数kが合成関数的に変化する一例を示す。
【
図20】本開示に係る位相移動量係数kがノイズを有する一例を示す。
【
図21】本開示に係る
図3に示したモアレ表示体の構成例(基本形)の断面を示す図である。
【
図22】本開示に係る他のモアレ表示体の構成例(フィルム折曲形)の断面を示す図である。
【
図23】本開示に係る他のモアレ表示体の構成例(フィルム曲面形)の断面を示す図である。
【
図24】本開示に係る他のモアレ表示体の構成例(厚紙・フィルム曲面形)の断面を示す図である。
【
図25】本開示に係る他のモアレ表示体の構成例(角配置形)を示す図である。
【
図26】本開示に係る出力パターンを画像で得る場合のフローチャートである。
【
図27】本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステムの構成を示す図である。
【
図28】本開示に係るモアレ顕像化パターン生成システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態は以下に記載する実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も、本発明の実施の形態の範囲に含まれうるものである。
【0025】
以下では、まず、モアレ像を表示する表示体及びモアレ像を顕像化するパターンの生成方法や手法について説明する。
【0026】
<1 入力情報>
図1~4は、モアレ像を顕像化するパターンの生成システムにおける入力情報の概要を説明する図である。生成システムへの入力情報としては、入力画像(
図1)の特徴値、レイヤー情報(
図2)、モアレ表示体に関する情報(
図3)、基本パターン情報(
図4)がある。
【0027】
<1-1 入力画像と特徴値>
図1は、モアレ像を生成したい入力画像の例を模式的に示した図である。本開示において、「入力画像」とは、デザイン図案などのモアレ化したい画像データを意味する。
図1においては、入力画像を分かりやすく説明するために、三角形、円、四角形の3つのパーツからなる図案を用いて示し、それぞれのパーツに前後感を持たせて表記している。しかし、入力画像はこれらに限られるものではなく、どのような画像であってもよい。また、入力画像はカラーでもモノクロでもよい。
【0028】
本開示において、「入力画像の特徴値」とは、入力画像に関する、画像の輝度、彩度、色相、濃度、透明度、明度、色度、グレースケールレベル(グレースケール値)等による値である。これらの特徴値は、入力画像の図柄、パーツごと、エリアごと、画素(ピクセル)ごと、あるいはいくつかの画素ごとに区切ったブロックごとに示しても良い。さらに、それらのエリアごとの平均値、中央値、最大値、最小値等の代表値を用いて示しても良い。
【0029】
<1-2 レイヤー情報>
図2は、
図1のデザイン図案をレイヤー(層)ごとに分け、レイヤー情報を模式的に示す図である。
【0030】
本開示において「レイヤー情報」とは、入力画像の図柄やパーツの前後感を指定する情報であり、レイヤー情報は、具体的な前後の距離感を数値で定めて表記しても良いし、前後の順序のみを示すものであっても良い。なお、このレイヤー情報を用いることにより、モアレ像において明確な奥行感を実現させることができる。また、これにより、モアレ像を見る観察者の没入感が高まる。
【0031】
図2においては、三角形、円、四角形の3つのパーツがそれぞれ3つのレイヤー(1,2,3)に分けられた様子を模式的に示しているが、レイヤーの数は3つに限定されるものではないし、レイヤーの前後の距離感は、離散的なものではなく、連続的な物であっても良い。また、レイヤーの前後の距離感は、観察者側から見て、モアレ表示体から観察者側に向けて飛び出した(浮き上がった)ように見える設定でも可能であるし、モアレ表示体から奥側にある(沈んだ)ように見える設定も可能である。
【0032】
<1-3 モアレ表示体に関する情報>
図3はモアレ表示体に関する情報を模式的に示す図である。本開示において、「モアレ表示体」とは、モアレ像を利用した表示体を意味し、一般的には、ポスター、パネル、POPなどが想定される。
【0033】
モアレ表示体4については、表現領域6のサイズ、パネルの厚み(「ギャップ」ともいう。)5、パネルを構成する材質の屈折率、平均的な観察者から表現領域までの距離である「視認距離」等の情報がモアレ表示体4に関する情報である。立体的なモアレは、観察者の両眼視差によって生じるものであるため、視差の算出のためには、観察者とパネルの位置関係に関する情報が必要である。基本的には、表現領域6の中央と観察者の目の高さが一致している場合には、観察者とパネルとの間の距離が視認距離となる。
【0034】
また、表現領域6の中央と観察者の目の高さが一致していない場合や、モアレ像の発生位置の高さが観察者の目の高さと一致していない場合には、「視認距離」をモアレ発生箇所と観察者の目の位置との関係によって補正することが可能である。
【0035】
<1-4 基本パターン情報>
本開示において、「基本パターン」とは、モアレを発生させるために、重ね合わせる、周期的な模様や構造を意味する。
【0036】
図4は、基本パターンの代表的な例を示す。基本パターンは、1方向性のパターンとして、直線パターン(
図4(a))、2方向性のパターンとして、格子状パターン(
図4(b))、チェックパターン(
図4(c))等である。基本パターンは、これらに限定されるものではなく、1方向性のパターンとしては波型やジグザグ、文字の繰り返しなどでも良い。また、2方向性のパターンとしては、ドット(水玉)等の幾何学模様だけでなく、無秩序な図柄、文字などももちいることが可能である。
【0037】
なお、以下では、当該基本パターンを「第1のパターン」と呼ぶこともあるが、この第1のパターンとは、必ずしも上述した基本パターンに限定されるものではなく、場合によって奥側パターンであってもよい。
【0038】
本開示において、「基本パターン情報」とは、上述の基本パターンについて、パターンの形状、線幅、ピッチ、L/S(Line & Space)比、角度、開口部/非開口部比などの基本パターンの形状や性状を示す情報を意味する。
【0039】
また、本開示において、「パターンの特徴値」とは、透過率、反射率、光学濃度、インク濃度、明度、グレースケールレベル(グレースケール値)等をいう。さらに、本開示において、「開口部/非開口部比」とは、パターンの性状を示す新規な概念であり、従来の線幅、ピッチ、L/S(Line & Space)比等の情報とは異なるものである。以下、「開口部/非開口部比」について説明する。
【0040】
<1-5 開口部/非開口部比>
パターンは一定周期で繰り返されるものである。このため、パターンの特徴値も周期的に値が変化することとなる。このように周期的に変化するパターンの特徴値について、1周期のうち、特徴値の値が明るさや、透明感において高い部分を開口部とし、他の部分を非開口部とする。具体的には、1周期のうち、特徴値が一定値以上である箇所を開口部としても良い。一定値を決定する際には、パターンの全体の特徴値における平均値や中央値などを採用しても良いし、最大値と最小値で正規化し、積算比を利用してもよい。
【0041】
さらに、FFT(高速フーリエ変換)を利用して、開口部/非開口部を定めても良い。なお、パターンの特徴値を得るためには、パターンからの測定値や画素値そのものを用いても良いし、周辺画素の平均値又は中央値を用いても良い。
【0042】
また、パターン中の一つまたは複数の特定領域について、前記条件に関わらず、開口部、非開口部、あるいは、 開口部でも非開口部でもない領域としてもよい。ここで、特定領域とは、例えば、デザインを目的として意図的に設けられた図柄や文字、模様、ないし、製造上起き得てしまう汚れ・素抜けに相当する領域である。
【0043】
1方向性のパターンである直線パターン(
図4(a))の場合には、直線の延伸方向に垂直な方向でのパターン周期を用いて特徴値を求め、格子状パターン(
図4(b))の場合には、パターンが周期的に現れる2方向によって特徴値を求めることとなる。
【0044】
図5は、特徴値として透過率を採用し、矩形波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。この例では、透過率の最大値を示す領域が開口部となり、それ以外の領域が非開口部となる。
【0045】
図6は、特徴値として透過率を採用し、sin波状の透過率値を得た場合の開口部/非開口部の設定の例を示した模式図である。この例では、透過率値が平均値以上を示す領域が開口部となり、それ以外の領域が非開口部となる。
【0046】
<1-6 ピッチ>
本開示において、上述した「ピッチ」とは、開口部と非開口部の距離を意味するものである。このピッチは、例えば、開口部と非開口部のそれぞれの中心同士で測定してもよく、開口部と非開口部の境界同士で測定してもよい。言い換えれば、ピッチは、一定周期で繰り返されるパターンにおける1周期の距離である。
【0047】
後述するように、パターンのピッチは、観察者の移動による、モアレの見えの変化に影響を与える。一例として、ピッチが細かい(つまり、1周期の距離が短い)場合には、モアレ縞が強調され、また見かけの重なりも変化しやすいため、パターンが沈んで見える効果(奥行効果)が感じやすい。なお、この変化は、手前側パターンと奥側パターンの関係にも関係する。
【0048】
このピッチは、原則として、パターンの走査方向(つまり、開口部と非開口部が繰り返す方向)において測定される。例えば、パターンがストライプ模様の場合、直線の延伸方向と直交する向きにパターンが繰り返すため、ピッチは、直線の延伸方向と直交する方向に測定される。
【0049】
また、同様に、開口部と非開口部が直線状の領域からなり、繰り返してパターンを形成する場合には、ピッチは、パターンの繰り返す方向(曲線の延伸方向と直交する方向)に測定される。更に、開口部と非開口部が繰り返す方向が複数あるパターンの場合(例えば、チェックパターン等)、ピッチは各方向で算出されてもよく、1方向のみで算出されてもよい。
【0050】
なお、以上では、ストライプ模様やチェック模様等の規則的なパターンにおけるピッチを例として説明したが、本開示では、ピッチは、縦と横のストライプやチェック等に限らず、角度が異なるパターン(斜めに並んだストライプなど)、規則性が異なるパターン(例えば、印刷の誤差によって生じるムラ)、ピッチが不定のパターン(例えば、パターン内でピッチが変動する場合)、色が異なるパターン等で算出されてもよい。ピッチ、角度、色などが同一の画像において異なる場合には、当該画像のそれぞれの構成要素(レイヤー、領域等)毎にピッチを計算してもよい。
【0051】
また、ピッチが同一であっても、パターンの延伸方向(例えば、ストライプ模様の場合、直線方向)は、モアレの見えの変化に影響を与えることがある。例えば、パターンの角度によっては、観察者が移動する方向に対して、モアレが変化する速度が変わる場合がある。
【0052】
この現象の具体例の1つとして、例えばストライプが縦に並んだパターンの場合と、ストライプが45度で傾けて斜めに並んだパターンの場合とで、ピッチが等しくても、観察者がこれらのパターンに対して左右に移動すると、ストライプが45度方向に並んだパターンによるモアレの方が、ストライプが縦に並んだパターンによるモアレに比べて、モアレの見えの変化が観察者の移動に対して遅く感じられることがある。
【0053】
これは、パターンを観察者の視認方向に走査すると、縦に並んだパターンに対して、45度で並んだパターンの方は、ピッチが疑似的に広くなるからである。従って、パターンの延伸方向を調整することで、モアレが観察者の移動に対して変化する速度を制御することができ、モアレのデザイン性を高めることができる。
【0054】
<2 出力パターン>
本発明におけるパターン生成システムのモアレ顕像化パターンは、第1のパターン(手前側)及び第2にパターン(奥側)の2種類のパターンからなる。
モアレ像を顕像化するためのモアレ顕像化パターンは、第1のパターン及び第2のパターンを重ね合わせることを前提としており、観察者に近い方を手前側、観察者から遠い方を奥側パターンと称呼する。
【0055】
<4 モアレ外観の特性>
第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)のピッチ、開口部/非開口部比が異なることや、第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)の間にギャップが存在することにより、モアレには、以下のような効果が複合的に現れる。
【0056】
<4-1 モアレ強度>
モアレ強度は、第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)の開口部/非開口部比が1に近いほど、モアレは強く発出する傾向がある。
【0057】
<4-2 外観濃度>
本開示において、「外観濃度」とは、第1のパターン(手前側)及び第1のパターン(奥側)中の開口部/非開口部比が異なることによる、見かけの濃淡の程度を意味する。そして、パターンの開口部/非開口部比が高いほど、見かけにはパターン及びモアレが明るく見える傾向がある。
【0058】
<4-3 モアレ変化量>
第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)がギャップを介して重なっているため、観察者の位置(角度)によってモアレの位相が異なる。このとき、開口部/非開口部比が高いほどモアレは明るいまま保たれやすく、開口部/非開口部比が低いほどモアレは暗いまま保たれやすい(すなわち変化が少ない)傾向がある。また、開口部/非開口部比が1に近いほどモアレ変化量が大きい傾向がある。
【0059】
<5 モアレ外観の評価>
モアレの外観を評価する際には、上記の効果等を複合的に観察することになる。また、これらの効果以外にも、モアレ外観の特性としては、視認距離が想定より離れた場合においても、モアレ像がどの程度視認できるかといった「モアレの耐性」の観点でもモアレ外観を評価することがある。
【0060】
本発明においては、パターンの開口部/非開口部比に注目してモアレ外観を評価し、モアレを意匠的に利用する際の適合性を総合的に判断する。具体的な判断レベルは、比較法や、3段階等の段階別評価に分けて実施している(○△×など)。
また、総合的な評価のほかに、別途外観のモアレ像明暗度やモアレ像移動度など評価を付帯的に実施することがある(表現したいデザインに応じて、何を重要視するか異なるため、実施することもあればしないこともある)。
【0061】
また、本発明において、入力画像から第1のパターン(手前側)及び第2のパターン(奥側)を生成する際には、この外観評価の結果を参考に、開口部/非開口部比を選択することとなる。
一般的にモアレ等の外観は、用いているパターン、画像の構成、視認環境等条件によって異なるため、総合的な外観評価以外に特定の属性ごとに評価を実施することが望ましい。このため、本開示においては、以下の属性についても評価を行っている。
【0062】
<5-1 モアレ像明暗度>
「モアレ像明暗度」とは、モアレ外観のうち、見かけの明るさ(明暗、濃淡)に関する評価を意味する。このモアレ像明暗度は、主にモアレ強度や外観濃度の効果が複合的にあることによって差が生じる。評価は比較法や、11段階(暗:-5,-4,…,4,5:明)等の段階別評価で実施される。
【0063】
<5-2 モアレ像移動度>
「モアレ像移動度」とは、モアレ外観のうち、モアレ像の動きやちらつきに関する評価を意味する。主にモアレ強度やモアレ移動量の効果が複合的にあることによって差が生じる。評価は比較法や、6段階(小:0,1,…,4,5:大)等の段階別評価で実施される。
【0064】
<6 モアレ顕像化パターンの生成の実施例>
以下においては、ストライプパターンを用いた場合を例として取り上げ、実施例の入力画像に応じたモアレ顕像化パターンの生成方法とそのシステムについて説明する。本実施形態では、観察者の移動によって、モアレ縞が動いて見えるパターンを生成する。
本実施例では、モアレ縞に動きを持たせるために、第1のパターンに対して第2のパターンの位相を変化させる。
【0065】
<6-1 基本パターン及び変化パターン>
図7は、本実施例で用いるストライプパターンの基本パターン(第1のパターン)および開口部/非開口部比を変化させたパターン(第2のパターン)の例を示した図である。
基本パターン(a)(第1のパターン)は、開口部/非開口部比が1.0となっており、(b)~(g)については、開口部/非開口部比をそれぞれ1.5から9.0まで変化させたパターン(第2のパターン)を示している。
【0066】
<6-2 入力画像の例>
図8は、本実施例における入力画像の例を示す図である。
図8の入力画像は、同心円の中心を基準点とし、放射状にグラデーションを付与している。なお、基準点は、中心以外に設定してもよい。このグラデーションが、入力画像の特徴値となる。入力画像の輝度が低い黒い部分は、位相の移動量が少なく、入力画像の輝度が高い白い部分は、位相の移動量が多い。黒い部分と白い部分の間は、位相の移動量が連続している。そして、第1のパターンと第2のパターンの重なりが移動すると、モアレ縞が放射方向に動いて見える。
【0067】
<6-3 入力画像の特徴値に応じたパターンの位相移動量の選定>
モアレ顕像化パターンの生成手順としては、まず、1)パターンの位相移動量を変更する領域を定め、次に、2)パターンの位相移動量を、パターンの特徴値に応じて設定する。位相移動量とは、第1のパターンに対する第2のパターンの位相の変化量であり、本実施例では、位相移動量は、少なくとも1つの領域で連続的に変化するように、グレースケール輝度を利用して求める。ここで、連続的に変化とは、少なくとも1つの区間で連続的な関数で表せることを意味する。連続的な関数とは、必ずしも連続でなくとも離散しながら一定の傾向をもって変化する関数を意味する。連続的な関数の例示については、後述する。
【0068】
1)パターンの位相移動量を変更する領域を定めるには、最も単純には、入力画像の輪郭に応じて領域を定める手法があるが、必ずしも画像の輪郭で確定する必要はなく、モアレ表示体4を利用する状況等に応じて、適宜設定してもよい。
なお、本実施例においては、説明を簡略化するため、
図8に記載されているとおり、四角形を、位相移動量を変更する領域として定めている。
次に、2)パターンの位相移動量を、パターンの特徴値に応じて設定するにあたっては、基準点からモアレ縞に垂直な方向での距離を踏まえて領域内で選定する。
【0069】
<6-4 位相移動量>
本実施例では、基準点を設定し、基準点を中心とした座標において、モアレ縞に垂直な方向の座標をx、xに垂直な座標をyとした場合、第1のパターンのモアレ強度Rは以下の式(1)を満たす。
【数2】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチである。
【0070】
また、第2のパターンのモアレ強度Bは以下の式(2)を満たす。
【数3】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチである。
【0071】
第2のパターンは、第1のパターンと比較して、式(2)のcos内の位相がPH(x,y)だけずれている。この位相のずれを示す位相移動量PHは、以下の式(3)を満たす。
【数4】
ここで、αはストライプの角度、Pはストライプのピッチ、kは位相移動量係数である。
【0072】
式(3)から、以下の表1に示すように、位相移動量係数kによって、モアレの状況を知ることができる。
【表1】
【0073】
図9は、位相移動量係数に対応した位相移動量のイメージを示す図である。表1の内容を図面で表すと、
図9に示すようになる。
図9では、奥側パターンに対して手前側パターンの位相をずらしている。正面からの観察状態は、グレースケールのレベルと対応する。
【0074】
<6-5 位相移動量係数の変化>
図10は、本実施例の位相移動量係数kの変化に対するモアレ縞輝度の変化を示す。
図10(a)は、モアレ縞に垂直な方向での位置と位相移動量係数kの値の関係を示し、
図10(b)は、モアレ縞に垂直な方向での位置とモアレ縞の輝度の関係を示す。
【0075】
原点0は、基準点であって、位相移動量を決定するための基準となる点であり、本実施例では、入力画像の中心点に対応する。また、モアレ縞に垂直な方向は、基準点を原点として位相移動量が変化する方向であり、ストライプに対して垂直な方向である。
【0076】
図10(a)に示すように、モアレ縞に垂直な方向をx、位相移動量係数をkとおくと、本実施例の位相移動量係数は、k=ax+bで表すことができる。位相移動量係数kが一次関数状に増加する場合、
図10(b)に示すように、モアレ縞の輝度は、周期的に変化する。
【0077】
なお、本実施例は、入力画像が同心円状であるため、基準点を同心円の中心に設定すれば、放射状のどの方向でも同じ位相移動量となるが、方向によって位相移動量が異なってもよい。
【0078】
<6-6 視認領域の定義>
図11は、本実施例のモアレ縞の視認領域の定義を示す図である。
図11(a)は、本実施例の観察者と第1のパターン及び第2のパターンの関係を示す。
図11(b)は、本実施例の基本視認領域の算出を示す。
【0079】
図11(a)に示すように、本実施例は、観察者が移動することによって、第1のパターンと第2のパターンの見かけの重なりがずれて、モアレ縞が動く。ここで、第1のパターンと第2のパターンの位相移動量を設定するためには、観察者が観察する視認領域を定義する必要がある。
【0080】
まず、基準点を設定し、その基準点に対して角度1~角度2の間で観察した時に、第1のパターンを通して見ることができる第2のパターンの領域を基本視認領域として設定する。本実施例の角度1及び角度2は、第1のパターンと第2のパターンの正面を0degとし、角度1を45deg、角度2を-45degとする。なお、角度1及び角度2は、ストライプパターンに垂直な方向での角度とする。
【0081】
この場合、基本視認領域は、
図11(b)に示すように、第1のパターンと第2のパターンの設置距離と角度の関係は、直角二等辺三角形になるので、基本視認領域は、第1のパターンと第2のパターンの間の設置距離×2となる。視認領域は、この基本視認領域に第1のパターンのピッチを乗じたものと定義する。
【0082】
<6-7 位相移動量係数の勾配>
本実施例では、モアレ縞に垂直な方向における視認領域において、位相移動量係数k=ax+bを求める際に、aとbを設定する必要がある。aは、0<a≦20を満たすとき、モアレ縞の動きが感じられる。好ましくは、0.5≦a≦8を満たすとよい。なお、bはどの値でもよい。
【0083】
<6-8 モアレ像>
図12は、
図8に示した入力画像に対して作成されたモアレ縞を示す。
図8に示したような基準点から放射状にグラデーションが形成された入力画像を入力すると、第1パターンと第2パターンが形成される。第1パターンと第2パターンとを所定の距離をあけて設置し、視認領域内で観察すると、
図12に示したような基準点を中心とした同心円状のモアレ縞が形成される。モアレ縞は、連続して形成され、観察者の移動によって、モアレ縞も移動するように見える。
【0084】
<7-1 他の入力画像例>
図13は、他の入力画像の例を示す。
図13(a)は、左右にグラデーションを付与した例、
図13(b)は、中央から左右両側にグラデーションを付与した例、
図13(c)は、放射状に複数のグラデーション領域を形成した例を示す。
【0085】
図13(a)の例では、グラデーションの方向と同じように、左から右、又は、右から左方向にモアレ縞が動いて見える。
図13(b)の例では、グラデーションの方向と同じように、中央から左右、又は左右から中央方向にモアレ縞が動いて見える。
図13(c)の例では、グラデーションが形成されたそれぞれの領域内でモアレ縞が動いて見える。
【0086】
<7-2 位相移動量係数とモアレの動き>
図14は、本実施例の位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞の一例を示す図である。
図14(a)は、本実施例の位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞を示す。
図14(b)は、本実施例の位相移動量係数kが単調に変化する場合のモアレ縞の動きを示す。
【0087】
図14に示す例では、画像「PUSH」を中心として、モアレ縞を連続して形成している。
図10(a)に示したように、位相移動量係数がk=ax+b等で単調に増加又は減少して変化する場合、モアレ縞は、
図14(a)に示すように一定間隔で形成される。このようにモアレ縞を形成することによって、画像を効果的に強調することができる。
【0088】
観察者が動いた際、モアレ縞は、
図14(b)に示すように、矢印m01又は矢印m02の方向に動いて見える。モアレ縞が動く方向は、観察者が動く方向によって切り替わる。モアレ縞の動きによって、中心の画像「PUSH」がより強調され、観察者の注目を集めることができる。なお、モアレ縞の中心位置は、変更することができる。
【0089】
<7-2 他の位相移動量係数の変化>
図15は、本実施例の位相移動量係数kが指数関数的に変化する一例を示す。
図15(a)は、本実施例の位相移動量係数kが指数関数的に変化する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。
図15(b)は、モアレ縞の動きを示す。
【0090】
位相移動量係数kは、
図15(a)に示すように、指数関数k=ae
cx+bで変化してもよい。
図14に示したモアレ縞は、単調に動き、メリハリが少ない。これに対して、位相移動量係数kを
図15(a)に示す指数関数k=ae
cx+bで変化させた場合、
図15(b)に示すように、モアレ縞は、指数関数で決定される異なる間隔で形成される。観察者が動いた場合、モアレ縞は、緩急をつけて動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。
【0091】
また、位相移動量係数kの指数関数的な変化は、モアレ縞を形成する位置や他のイメージとの位置関係によって、視覚効果をもたらすことができる。例えば、
図15(b)に示すように、図形の輪郭部分における位相移動量係数kの指数関数的な変化は、エンボス等の視覚効果をもたらすこともできる。
【0092】
指数関数k=aecx+bは、0<aかつ0<cのとき、モアレ縞の動きを強く感じることができる。好ましくは、1≦a≦50かつ0.001≦c≦3を満たすと、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。なお、bはどの値でもよい。
【0093】
図16は、本実施例の位相移動量係数kが対数関数的に変化する一例を示す。
図16(a)は、本実施例の位相移動量係数kが対数関数的に変化する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。
図16(b)は、モアレ縞の動きを示す。
【0094】
位相移動量係数kは、
図16(a)に示すように、対数関数k=log
a(c(x+1))+bで変化してもよい。位相移動量係数kを
図16(a)に示す対数関数k=log
a(c(x+1))+bで変化させた場合、
図16(b)に示すように、モアレ縞は、対数関数で決定される異なる間隔で形成される。観察者が動いた場合、モアレ縞は、緩急をつけて動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。
【0095】
また、位相移動量係数kの対数関数的な変化は、モアレ縞を形成する位置や他のイメージとの位置関係によって、視覚効果をもたらすことができる。例えば、
図16(b)に示すように、図形の輪郭部分における位相移動量係数kの対数関数的な変化は、エンボス等の視覚効果をもたらすこともできる。
【0096】
対数関数k=loga(c(x+1))+bは、1<aかつ0<cのとき、モアレ縞の動きを強く感じることができる。好ましくは、1<a≦105かつ1≦c≦1010を満たすと、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。なお、bはどの値でもよい。
【0097】
図17は、本実施例の位相移動量係数kが三角関数的に変化する一例を示す。
図17(a)は、本実施例の位相移動量係数kが三角関数的に変化する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。
図17(b)は、モアレ縞の動きを示す。
【0098】
位相移動量係数kは、
図17(a)に示すように、三角関数k=asin(cx)+bで変化してもよい。位相移動量係数kを
図17(a)に示す三角関数k=asin(x)+bで変化させた場合、
図17(b)に示すように、モアレ縞は、三角関数で決定される間隔で形成される。観察者が動いた場合、モアレ縞は、位相移動量k=0になる付近で折り返すように動くことになる。したがって、観察者は、複雑なモアレ縞の動きを効果的に感じることができる。また、モアレ縞の折り返し部分の動きを滑らかにつなげることができる。
【0099】
また、位相移動量係数kの三角関数的な変化は、モアレ縞を形成する位置や他のイメージとの位置関係によって、視覚効果をもたらすことができる。例えば、
図17(b)に示すように、図形の輪郭部分における位相移動量係数kの三角関数的な変化は、エンボス等の視覚効果をもたらすこともできる。
【0100】
三角関数k=asin(cx)+bは、0<aかつ0<cのとき、モアレ縞の動きを強く感じることができる。好ましくは、1≦a≦20かつ1≦c≦3を満たすと、モアレ縞の動きをより強く感じることができる。なお、bはどの値でもよい。さらに、本実施例では正弦波を用いたが、余弦波k=acos(cx)+bを用いてもよい。
【0101】
図18は、本実施例の位相移動量係数kが階段関数的に変化する一例を示す。
【0102】
位相移動量係数kは、
図18に示すように、階段関数で変化してもよい。
図18に示す階段関数は、視認領域内で段階的に増加する。階段関数は、視認領域内で段階的に減少しても、段階的に増減してもよい。観察者が動いた場合、モアレ縞は、カクカクと動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きを不自然ながらも効果的に感じることができる。
【0103】
図19は、本実施例の位相移動量係数kが合成関数的に変化する一例を示す。
【0104】
位相移動量係数kは、
図19に示すように、合成関数k=x*sin(x)で変化してもよい。
図19に示す合成関数k=x*sin(x)は、視認領域内で滑らかに増減する。観察者が動いた場合、モアレ縞は、滑らか且つ不規則に動くことになる。したがって、観察者は、モアレ縞の動きを効果的に感じることができる。
【0105】
図20は、本実施例の位相移動量係数kがノイズを有する一例を示す。
図20(a)は、本実施例の位相移動量係数k(x)がノイズを有する場合のモアレ縞輝度の変化を示す。
図20(b)は、位相移動量係数k(x)と近似関数k’(x)との誤差を示す。
【0106】
位相移動量係数kは、
図20(a)に示すように、ノイズを有する実測値等を用いてもよい。この場合、位相移動量係数実測値k(x)は、近似関数k’(x)で表してもよい。近似方法は、直線近似、多項式近似、対数近似、指数近似等でよい。最小自乗法等で求めてもよい。位相移動量係数実測値k(x)と近似関数k’(x)の差Δkは、±2以内が好ましい。このようにすることにより、 モアレの動きを違和感なく、自然な動きに感じさせることができる。さらに、 Δk を ± 1以下とすると、モアレ像の動きの流麗感を一層際立たせることができる。
なお、位相移動量係数kは、連続する実測値をそのまま用いてもよい。
【0107】
<8 モアレ表示体の構成>
図21は、
図3に示したモアレ表示体4の構成例(基本形)の断面を示す図である。
図21の例においては、パターン層1が印刷された厚紙7とパターン層2が印刷されたフィルム8が橋材9で連結される。
【0108】
ここで、「パターン層」とは印刷などによってパターンが描画されている層を意味する。
図21におけるパターン層1,2は、生成システムによって出力された第1のパターン及び第2のパターンである。この基本形の場合には、厚紙7とフィルム8の間に第1のパターン,第2のパターンを印刷している。
【0109】
図21に示す例において、厚紙7は、自立できるものが好ましい。フィルム8は、透明な素材で光が透過するものでよい。橋材9は、厚紙7とフィルム8を連結し、透明な素材で光が透過するものがよいが、透明でなくてもよい。厚紙7を支持する支持部材を取り付けてもよい。厚紙7をフィルム8に代えてもよい。
【0110】
なお、
図21に示す例では、厚紙7とフィルム8の間にパネルを挟んでもよい。パネルを挟んだ場合、第1のパターン、第2のパターンがパネルと接している。このため、パターン生成を行う際に、単一のパネルの厚み(ギャップ)と屈折率を考慮すればよい。
【0111】
図22は、他のモアレ表示体4の構成例(フィルム折曲形)の断面を示す図である。
図22の例においては、フィルム8が中央又は中央付近で折り曲げられる。なお、フィルム8は、1枚を折り曲げても、2枚を繋げて構成してもよい。
【0112】
図22に示すモアレ表示体4は、厚紙7とフィルム8の間の距離が場所によって異なり、第1パターンのパターン層1と第2パターンのパターン層2との距離も異なる。したがって、より複雑なモアレ柄を形成することが可能となる。
【0113】
図23は、他のモアレ表示体4の構成例(フィルム曲面形)の断面を示す図である。
図23の例においては、フィルム8が曲面状に形成される。
【0114】
図23に示すモアレ表示体4は、厚紙7とフィルム8の間の距離が場所によって異なり、第1パターンのパターン層1と第2パターンのパターン層2との距離も異なる。したがって、より複雑なモアレ柄を形成することが可能となる。
【0115】
図24は、他のモアレ表示体4の構成例(厚紙・フィルム曲面形)の断面を示す図である。
図24の例においては、厚紙7及びフィルム8が曲面状に形成される。
【0116】
図24に示すモアレ表示体4は、厚紙7とフィルム8の間の距離が場所によって異なり、第1パターンのパターン層1と第2パターンのパターン層2との距離も異なる。また、観察者の観察する位置と方向によって、第1パターンと第2パターンの重なり方がかなり異なる。したがって、より複雑なモアレ柄を形成することが可能となる。
【0117】
図25は、他のモアレ表示体4の構成例(角配置形)を示す図である。
図25の例においては、通路等の二面の壁及び角に厚紙7及びフィルム8がパネル10を介して、曲面状に形成される。
図25に示すモアレ表示体4は、角があっても連続して表示することができる。
【0118】
以上、モアレ表示体4の構成を説明したが、パターン層をフィルムとパネルの間に設けるか、反対側に設けるか等は適宜定めることができるが、耐擦性や防塵の観点からはパターン層は、内側に設けることが好ましい。
【0119】
また、
図21から
図25で説明した構成を部分的に組み合わせたり、変更することも可能である。さらに、本実施例では、第1パターンを形成するものとして厚紙を用いたが、フィルムでもよい。他の実施例は、特許文献3に示した例を用いてもよい。
【0120】
<9-0モアレ像を顕像化するパターンの生成方法>
図26は、出力パターンを画像によって得る場合の簡易的なフローチャートの例である。ただし、入力にかかる情報(レイヤー等の情報入力)の順序はこのフローチャートに記載されたものに限らない。
【0121】
まず、ステップ101で入力画像データを読み取る。
図1に示したように、モアレ像を生成したい画像を入力画像として読み取る。本実施例では、
図8に示した入力画像をデータとして読み取る。ここで、入力画像とは、デザイン図案等のモアレ化したい画像データを示す。この入力画像は、例えばユーザに選択される画像であってもよく、遠隔の外部デバイスから送信される画像であってもよい。次に、ステップ102で入力画像の特徴値を抽出する。本実施例では、
図8に示した入力画像のグラデーションを特徴値とする。
【0122】
次に、ステップ103でレイヤー情報を入力する。レイヤー情報は、
図2に示したように、入力画像の図柄等の前後間を指定する情報である。レイヤーは、1層でも、複数でもよい。
【0123】
次に、ステップ104でモアレ表示体情報を入力する。ここでは、
図3に示したようなモアレ表示体4の具体的な構造を入力する。本実施例では、
図21~
図25に示したようなモアレ表示体4に対して、第1パターンと第2パターンの間の距離や観察角度等をモアレ表示体情報として入力する。
【0124】
次に、ステップ105で基本パターン情報を入力する。基本パターンは、
図7に示したストライプパターンでよい。次に、ステップ106で開口部/非開口部比を設定する。開口部/非開口部比は、
図7に示したストライプパターンの開口部/非開口部比を参考に設定すればよい。
【0125】
次に、ステップ107で位相移動量を設定する。本実施例は、基本となる第1のパターンに対して式(3)で示す分、第2のパターンをずらす。また、本実施例は、式(3)の位相移動量係数kを関数で表すとよい。関数は、
図10、
図15乃至
図20に示したような連続的な関数、階段関数、近似関数等でよい。
【0126】
次に、ステップ108でピッチ比率を設定する。ピッチ比率は、レイヤー毎の奥行区分において発生させる。レイヤーが1層の場合、比率の設定はない。
【0127】
ステップ103~ステップ108では、モアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報を設定している。モアレ情報は、入力画像に含まれるレイヤーの順序に関する情報(例えば、レイヤーの数、レイヤーの順序等)と、モアレ顕像化パターンの基本構成に関する情報、及び全体の(ピクセル又は距離で表現した)大きさに関する情報、グラデーション情報等のうちいずれか1つを少なくとも含むとよい。ここで、モアレ顕像化パターンの基本構成に関する情報とは、例えば、モアレ顕像化パターンの形状(ストライプ、格子等)、線の向き(縦、斜め)、ピッチ、所望の奥行感(それぞれのレイヤーのモアレをどの程度の奥行量で発生させるか)に関する情報、モアレパターンの使用方法(貼り付ける板の素材、厚み、観察する距離)、及びパターンの位相移動量等のうちいずれか1つを少なくとも含むとよい。
【0128】
次に、ステップ109で第1のパターンを出力する。第1のパターンは、ステップ101及びステップ102で抽出された入力画像と、ステップ103~ステップ108で設定されたモアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報とに基づいて生成される。
【0129】
次に、ステップ110で第2のパターンを出力する。第2のパターンは、第1のパターンに対して、少なくとも1つの基準点を有する領域で、基準点から第1のパターンに対して位相が連続して変化する。
【0130】
このように、入力画像とモアレ顕像化パターンの条件を指定するモアレ情報を入力して、第1のパターンと第2のパターンを生成することで、動きを感じるモアレ像を顕像化することができる
【0131】
<10-0モアレ像を顕像化するパターンの生成システム>
次に、
図27を参照して、本開示の実施形態を実施するためのコンピュータシステム300について説明する。本明細書で開示される様々な実施形態の機構及び装置は、任意の適切なコンピューティングシステムに適用されてもよい。
【0132】
コンピュータシステム300の主要コンポーネントは、1つ以上のプロセッサ302、メモリ304、端末インターフェース312、ストレージインタフェース314、I/O(入出力)デバイスインタフェース316、及びネットワークインターフェース318を含む。これらのコンポーネントは、メモリバス306、I/Oバス308、バスインターフェースユニット309、及びI/Oバスインターフェースユニット310を介して、相互的に接続されてもよい。
【0133】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302と総称される1つ又は複数の汎用プログラマブル中央処理装置(CPU)302A及び302Bを含んでもよい。ある実施形態では、コンピュータシステム300は複数のプロセッサを備えてもよく、また別の実施形態では、コンピュータシステム300は単一のCPUシステムであってもよい。各プロセッサ302は、メモリ304に格納された命令を実行し、オンボードキャッシュを含んでもよい。
【0134】
ある実施形態では、メモリ304は、データ及びプログラムを記憶するためのランダムアクセス半導体メモリ、記憶装置、又は記憶媒体(揮発性又は不揮発性のいずれか)を含んでもよい。メモリ304は、本明細書で説明する機能を実施するプログラム、モジュール、及びデータ構造のすべて又は一部を格納してもよい。例えば、メモリ304は、モアレ顕像化パターン生成アプリケーション350を格納していてもよい。ある実施形態では、モアレ顕像化パターン生成アプリケーション350は、後述する機能をプロセッサ302上で実行する命令又は記述を含んでもよい。
【0135】
ある実施形態では、モアレ顕像化パターン生成アプリケーション350は、プロセッサベースのシステムの代わりに、またはプロセッサベースのシステムに加えて、半導体デバイス、チップ、論理ゲート、回路、回路カード、および/または他の物理ハードウェアデバイスを介してハードウェアで実施されてもよい。ある実施形態では、モアレ顕像化パターン生成アプリケーション350は、命令又は記述以外のデータを含んでもよい。ある実施形態では、カメラ、センサ、または他のデータ入力デバイス(図示せず)が、バスインターフェースユニット309、プロセッサ302、またはコンピュータシステム300の他のハードウェアと直接通信するように提供されてもよい。
【0136】
コンピュータシステム300は、プロセッサ302、メモリ304、表示システム324、及びI/Oバスインターフェースユニット310間の通信を行うバスインターフェースユニット309を含んでもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、様々なI/Oユニットとの間でデータを転送するためのI/Oバス308と連結していてもよい。I/Oバスインターフェースユニット310は、I/Oバス308を介して、I/Oプロセッサ(IOP)又はI/Oアダプタ(IOA)としても知られる複数のI/Oインタフェースユニット312,314,316、及び318と通信してもよい。
【0137】
表示システム324は、表示コントローラ、表示メモリ、又はその両方を含んでもよい。表示コントローラは、ビデオ、オーディオ、又はその両方のデータを表示装置326に提供することができる。また、コンピュータシステム300は、データを収集し、プロセッサ302に当該データを提供するように構成された1つまたは複数のセンサ等のデバイスを含んでもよい。
【0138】
例えば、コンピュータシステム300は、心拍数データやストレスレベルデータ等を収集するバイオメトリックセンサ、湿度データ、温度データ、圧力データ等を収集する環境センサ、及び加速度データ、運動データ等を収集するモーションセンサ等を含んでもよい。これ以外のタイプのセンサも使用可能である。表示システム324は、単独のディスプレイ画面、テレビ、タブレット、又は携帯型デバイスなどの表示装置326に接続されてもよい。
【0139】
I/Oインタフェースユニットは、様々なストレージ又はI/Oデバイスと通信する機能を備える。例えば、端末インタフェースユニット312は、ビデオ表示装置、スピーカテレビ等のユーザ出力デバイスや、キーボード、マウス、キーパッド、タッチパッド、トラックボール、ボタン、ライトペン、又は他のポインティングデバイス等のユーザ入力デバイスのようなユーザI/Oデバイス320の取り付けが可能である。
【0140】
ユーザは、ユーザインターフェースを使用して、ユーザ入力デバイスを操作することで、ユーザI/Oデバイス320及びコンピュータシステム300に対して入力データや指示を入力し、コンピュータシステム300からの出力データを受け取ってもよい。ユーザインターフェースは例えば、ユーザI/Oデバイス320を介して、表示装置に表示されたり、スピーカによって再生されたり、プリンタを介して印刷されたりしてもよい。
【0141】
ストレージインタフェース314は、1つ又は複数のディスクドライブや直接アクセスストレージ装置322(通常は磁気ディスクドライブストレージ装置であるが、単一のディスクドライブとして見えるように構成されたディスクドライブのアレイ又は他のストレージ装置であってもよい)の取り付けが可能である。ある実施形態では、ストレージ装置322は、任意の二次記憶装置として実装されてもよい。
【0142】
メモリ304の内容は、ストレージ装置322に記憶され、必要に応じてストレージ装置322から読み出されてもよい。I/Oデバイスインタフェース316は、プリンタ、ファックスマシン等の他のI/Oデバイスに対するインターフェースを提供してもよい。ネットワークインターフェース318は、コンピュータシステム300と他のデバイスが相互的に通信できるように、通信経路を提供してもよい。この通信経路は、例えば、ネットワーク330であってもよい。
【0143】
ある実施形態では、コンピュータシステム300は、マルチユーザメインフレームコンピュータシステム、シングルユーザシステム、又はサーバコンピュータ等の、直接的ユーザインターフェースを有しない、他のコンピュータシステム(クライアント)からの要求を受信するデバイスであってもよい。他の実施形態では、コンピュータシステム300は、デスクトップコンピュータ、携帯型コンピュータ、ノートパソコン、タブレットコンピュータ、ポケットコンピュータ、電話、スマートフォン、又は任意の他の適切な電子機器であってもよい。
【0144】
次に、
図28を参照して、本開示に係るシステム構成について説明する。
図28は、本開示に係るモアレ顕像化パターン生成システム4900を示す図である。
【0145】
図28に示すように、本開示に係るモアレ顕像化パターン生成システム4900は、主に情報処理サーバ4905、ネットワーク4975、及びクライアント端末4985A、4985Bからなる。情報処理サーバ4905は、ネットワーク4975を介して、クライアント端末4985A、4985Bと接続される。
【0146】
情報処理サーバ4905は、クライアント端末4985A、4985B等の外部デバイスとデータ送受信を行う転送部4910、クライアント端末4985A、4985Bから受信する各種データを管理するデータ管理部4920、クライアント端末4985A、4985Bから受信する入力画像やモアレ情報を格納するためのストレージ部4930、及びモアレ顕像化パターンを生成するためのモアレ顕像化パターン生成装置4935からなる。
【0147】
また、
図28に示すように、モアレ顕像化パターン生成装置4935は、入力画像を読み取る読取部4940、入力画像の特徴値を抽出する抽出部4945、及びモアレ顕像化パターンを作成するための作成部4950を含む。
【0148】
なお、情報処理サーバ4905に含まれるそれぞれの機能部は、
図27に示すモアレ顕像化パターン生成アプリケーション350を構成するソフトウエアモジュールであってもよく、独立した専用ハードウェアデバイスであってもよい。また、上記の機能部は、同一のコンピューティング環境に実施されてもよく、分散されたコンピューティング環境に実施されてもよい。例えば、モアレ顕像化パターン管理部235を遠隔のサーバに実装し、それ以外の機能部をクライアント端末4985A、4985B等のローカルデバイスに実装する構成であってもよい。
【0149】
クライアント端末4985A、4985Bは、モアレ顕像化パターン生成装置4935によって生成されるモアレ顕像化パターンに関する情報を受信するクライアント端末である。これらのクライアント端末4985A、4985Bは、個人に利用される端末であってもよく、警察署や民間企業等の組織における端末であってもよい。これらのクライアント端末4985A、4985Bは、例えば、デスクトップパソコン、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン等、任意のデバイスであってもよい。
【0150】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく,様々な変形例が含まれる。例えば、基本パターンの形状や開口部/非開口部比の設定、手前側と奥側のパターンへの反映など様々な変更が可能である。また、実施例で用いた図面は本発明を解りやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも実施例で記載した図案等に限定されるものではない。
【0151】
例えば、以上では、本発明の実施形態を装置、システム、方法等の形態を用いて実現する例について説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されず、印刷物(表示体)やコンピュータープログラム等の形態で実施されてもよい。
【0152】
また、以上説明した位相移動量、ピッチ比率、開口部・非開口部比等の設定についても、様々な変更が可能であることはいうまでもない。なお、位相移動量は、位相変動量と言い換えてもよい。
【0153】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本開示の範囲は、図示され記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含むことができる。さらに、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴(feature)に限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴(feature)、その特徴(feature)のあらゆる組み合わせも含む。
【0154】
本開示で用いられる「部」、「システム」、「ネットワーク」という用語は、物理的存在である。物理的存在は、電気回路、その付随デバイス、または、それらを有線/無線で接続したものとできる。これらは、特定の機能を有するものとできる。特定の機能を有したこれらの組み合わせは、各機能の組み合わせにより相乗的効果を発現できる。
【0155】
本開示および特に添付の請求の範囲内で使用される用語(例えば、添付の請求の範囲の本文)は、一般的に、「オープンな」用語として意図される(例えば、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は、「含むがそれに限定されない」などと解釈されるべきである。)。
【0156】
また、用語、構成、特徴(feature)、側面、実施形態を解釈する場合、必要に応じて図面を参照すべきである。図面により、直接的かつ一義的に導き出せる事項は、テキストと同等に、補正の根拠となるべきである。
【0157】
さらに、特定の数の導入された請求項の記載が意図される場合、そのような意図は、請求項に明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、以下の添付の請求の範囲は、「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」の導入句の使用を含み、請求の列挙を導入することができる。
【0158】
しかしながら、そのような語句の使用は、不定冠詞「a」または「an」によるクレーム記載の導入が、そのようなクレームを含む特定のクレームを、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。「1つ以上」または「少なくとも1つ」の冒頭の語句および「a」または「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」)は、少なくとも「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。請求項の記述を導入するために使用される明確な記事の使用についても同様である。
【符号の説明】
【0159】
1 パターン層(第1のパターン)
2 パターン層(第2のパターン)
4 モアレ表示体
5 パネルの厚み
6 表現領域
7 厚紙
8 フィルム
9 橋材
4900 モアレ顕像化パターン生成システム
4905 情報処理サーバ
4910 転送部
4920 データ管理部
4930 ストレージ部
4935 モアレ顕像化パターン生成装置
4940 読取部
4945 抽出部
4950 作成部
4975 ネットワーク
4985A,4985B クライアント端末