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特開2022-44134誘電膜並びにそれを用いた高分子アクチュエータ部材及びアクチュエータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044134
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】誘電膜並びにそれを用いた高分子アクチュエータ部材及びアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220310BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220310BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L101/02
H02N11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149610
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】田村 諭
(72)【発明者】
【氏名】平井 利博
(72)【発明者】
【氏名】清野 竜太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB052
4J002CP031
4J002CP191
4J002GD00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】高分子アクチュエータ部材として用いることのできる新規な誘電膜を提供する。
【解決手段】ベースポリマー中に、極性基含有有機化合物の分散相を含む誘電膜であって、この誘電膜のいずれか一方の表面に、ベースポリマーからなる緻密層を備える誘電膜。ベースポリマーは、シリコーン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリnブチルアクリレート、セルロース及び羊毛から選択される一種以上のエラストマーを含むことが好ましい。
【選択図】図1



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースポリマー中に、極性基含有有機化合物の分散相を含む誘電膜であって、前記誘電膜のいずれか一方の表面に、前記ベースポリマーからなる緻密層を備える誘電膜。
【請求項2】
前記ベースポリマーが、シリコーン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリnブチルアクリレート、セルロース及び羊毛から選択される一種以上のエラストマーを含む請求項1に記載の誘電膜。
【請求項3】
前記極性基含有有機化合物が、シアノエチル基含有有機化合物、変性シリコーンオイル、フタロシアニン類又はイオン液体である請求項1又は2に記載の誘電膜。
【請求項4】
前記シアノエチル基含有有機化合物が、シアノエチルサッカロース、シアノエチルプルラン、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルスターチ、シアノエチルジヒドロキシプロピルスターチ、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、およびシアノエチルソルビトールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1~3の何れか一項に記載の誘電膜。
【請求項5】
前記変性シリコーンオイルが、ポリシロキサン鎖と、該ポリシロキサン鎖の末端または側鎖に結合するフロロアルキル基、カルボキシル基および/またはアミノ基を有する変性シリコーンオイルである請求項1~4の何れか一項に記載の誘電膜。
【請求項6】
膜厚50~500μmの非対称性断面構造を有する請求項1~5の何れか一項に記載の誘電膜。
【請求項7】
前記分散相が球状であり、その球径が、1~100μmである請求項1~6の何れか一項に記載の誘電膜。
【請求項8】
前記緻密層の厚さが、前記誘電膜の全体の厚さの10%未満である請求項1~7の何れか一項に記載の誘電膜。
【請求項9】
前記緻密層の厚さが、5~50μmである請求項1~8の何れか一項に記載の誘電膜。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の誘電膜の両面にそれぞれ電極層を備える、高分子アクチュエータ部材。
【請求項11】
請求項10に記載の高分子アクチュエータ部材を備えるアクチュエータ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電膜並びにそれを用いた高分子アクチュエータ部材及びアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、柔軟性、軽量、成形性が容易などの特徴を有する高分子材料を用いた高分子アクチュエータは、スマート社会での実用化が期待されている。その中でも、空気中で作動する誘電エラストマーアクチュエータは、しなやかで、ソフトなアクチュエータとして研究開発されている。誘電エラストマーの材料としては、アクリル、シリコーン、ポリウレタンなどを用いた報告がある。特に、シリコーンはシロキサン結合のバンドギャップが広いことから耐熱性、耐候性、耐薬品性、絶縁性等の特徴を有し、多くの市場で高機能材料として使用されている。
【0003】
誘電エラストマーアクチュエータの駆動原理として、電極間の静電引力(マックスウェル応力)、イオンの大きさ、空間電荷分布の非対称性などが研究されている。空間電荷分布測定は、誘電体内部の電荷の量と位置を定量的に評価する手法の一つであり、特に、絶縁破壊特性の研究に広く利用されている。空間電荷分布による駆動メカニズムの研究は少ないが、PVA/DMSO、塩ビ/可塑剤の誘電性ポリマーゲル、ポリウレタンエラストマーの駆動メカニズムを、空間電荷分布の非対称性に起因するという報告がある(例えば、非特許文献1参照)。また、NBR、アクリルエラストマー及びシリコーンの空間電荷分布を測定することで、アクチュエータに適している材料は空間電荷に不均一性が有り、比較的低い電場下で誘電破壊を引き起こす材料であるとの報告例がある(非特許文献2参照)。
【0004】
近年、誘電エラストマーの研究は応用例が多く、基礎的な材料構造に着目した研究例は少ない。一般に同じ化学物質の高分子複合材料であっても、作製方法により高次構造が異なり、その物理的値は大きく異なる可能性がある。電圧下の変位挙動も材料の相構造により変化することが予想される。相構造と空間電荷分布の関係に着目した変位挙動の研究例は少ない。ポリウレタンの化学構造と変位挙動の関係(非特許文献3参照)やイオン液体とシリコーンの複合体でイオン液体の液滴現象について解析した報告(非特許文献4参照)がある。しかしながら、シリコーンをベースポリマーとする誘電膜の相構造と空間電荷に着目した変位挙動の研究はない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hirai,T.,et al.,Chapter12,Dielectric Gels, in Soft Actuators - Materials, Modeling, Applications, and Future Perspectives,pp.169-182,Springer (2014).
【非特許文献2】Tanaka,T.and Masuya,K.,Peculiar Space Charge Characteristics in Some Elastomers,Proceedings of 2008 International Symposium on Electrical Insulating Materials, September7-11,(2008)
【非特許文献3】M.Watanabe,N.Wakimoto,H.Shirai,T.Hirai,Journal of Applied Physics.,94(4),2494-2497(2003).
【非特許文献4】H.Okuzaki,H.Suzuki,T.Ito,J. Phys. Chem.,113,11378-11383(2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、化学架橋の代表的、且つ、電気的に安定した材料であるオルガノポリシロキサン組成物に、シアノエチル基含有有機化合物を含有させた部材が直流電場下で変位することをすでに見出している(特願2019-158169)。本発明は、このようなシリコーン極性材料複合体の変位挙動と内部構造との関係についてさらに解析し、高分子アクチュエータ部材として用いることのできる新規な誘電膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討を行った結果、シリコーン極性材料複合体の変位挙動が、材料極性、材料内部の相構造、断面構造の相互作用の影響を受けて生ずる空間電荷分布の非対称性に基づくことを見出した。本発明はこのような作動原理に基づくものであり、以下の実施形態を含む。
【0008】
(1)ベースポリマー中に、極性基含有有機化合物の分散相を含む誘電膜であって、この誘電膜のいずれか一方の表面に、ベースポリマーからなる緻密層を備える誘電膜。
(2)ベースポリマーが、シリコーン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリnブチルアクリレート、セルロース及び羊毛から選択される一種以上のエラストマーを含む(1)に記載の誘電膜。
(3)極性基含有有機化合物が、シアノエチル基含有有機化合物、変性シリコーンオイル、フタロシアニン類又はイオン液体である(1)又は(2)に記載の誘電膜。
(4)シアノエチル基含有有機化合物が、シアノエチルサッカロース、シアノエチルプルラン、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルスターチ、シアノエチルジヒドロキシプロピルスターチ、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、及びシアノエチルソルビトールからなる群より選択される少なくとも一種である(1)~(3)の何れかに記載の誘電膜。
(5)変性シリコーンオイルが、ポリシロキサン鎖と、該ポリシロキサン鎖の末端または側鎖に結合するフロロアルキル基、カルボキシル基および/またはアミノ基を有する変性シリコーンオイルである(1)~(4)の何れかに記載の誘電膜。
(6)膜厚50~500μmの非対称性断面構造を有する(1)~(5)の何れかに記載の誘電膜。
(7)分散相が球状であり、その球径が、1~100μmである(1)~(6)の何れかに記載の誘電膜。
(8)緻密層の厚さが、誘電膜の全体の厚さの10%未満である(1)~(7)の何れかに記載の誘電膜。
(9)緻密層の厚さが、5~50μmである(1)~(8)の何れかに記載の誘電膜。
(10)上記(1)~(9)のいずれかに記載の誘電膜の両面にそれぞれ電極層を備える、高分子アクチュエータ部材。
(11)上記(10)に記載の高分子アクチュエータ部材を備えるアクチュエータ。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高分子アクチュエータ部材として用いることのできる新規な内部構造を有する誘電膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る誘電膜の模式的な構造を示す。
図2図2は、空間電荷分布の測定に用いたパルス静電音響非破壊検査装置(PEANUT)の電極部分の概要を示す。
図3図3は、変形測定試料の模式図を示す。
図4図4は、変形を測定するための実験セットアップを示す。
図5図5は、溶媒としてテトラヒドロフランを使用したPDMS/CR-U(T)xと、アセトンを使用したPDMS/CR-U(A)xの各複合体の断面画像を、レーザー顕微鏡で撮影した画像を示す。
図6図6は、図5で撮影したPDMS/CR-U(T)42.9とPDMS/CR-U(A)42.9の拡大画像を示す。
図7図7は、PDMS/CR-U(T)xとPDMS/CR-U(A)xの各複合体の球径と緻密層厚さのCR-U添加量依存性を示す。
図8図8は、PDMS/CR-U(T)42.9の空気面とPET面(図8(a))及び海相と島相(図8(b))を比較した全反射測定法(ATR)による赤外分光分析の結果を示す。
図9図9は、CR-U及びPDMSのそれぞれを、THF又はACTに溶解したときの経時的な外観変化を示す。(a)はCR-U(T)50、(b)はCR-U(A)50、(c)はPDMS(T)21、(d)はPDMS(A)21、(e)はPDMS/CR-U(T)42.9、及び(f)はPDMS/CR-U(A)42.9である。
図10図10は、各種シリコーン組成物のCole-Coleプロットを示す。
図11図11は、等価解析から得られた抵抗値と静電容量について、CR-U含有量との関係を示す。
図12図12は、PDMS/CR-U(T)42.9の交流インピーダンスの電界強度依存性を示す。
図13図13は、等価解析から得られた抵抗値と静電容量の電界強度依存性の結果を示す。
図14図14は、PDMS/CR-U(T)xとPDMS/CR-U(A)xの負荷電界強度3kV/mm、30分後の変位量のCR-U添加量の依存性を示す。
図15図15は、PDMS/CR-U(T)42.9(a)と、PDMS/CR-U(A)42.9(b)の変位の電界強度依存性を示す。
図16図16は、変位量と、PDMS/CR-U(T)42.9の緻密層の位置関係を示す。(a)はPET側にPEフィルムを密着させたときの変位量を、(b)は空気側にPEフィルムを密着させたときの変位量を、そして(c)は電界強度のシークエンスを示す。
図17図17は、PDMS/CR-U(T)42.9とPDMS/CR-U(A)42.9の空間電荷測定の結果を示す。(a)は空気側がアノードであり、(b)は空気側がカソードである。
図18図18は、各複合体のバイアス極性を変えた空間電荷分布のCR-U添加量依存性を示す。(a)は空気側がアノードであり、(b)は空気側がカソードである。
図19図19は、PDMS/CR-U(T)xのヘテロ電荷ピーク値と変位量の関係を示す。
図20図20は、緻密層側を陽極にした時の陽極界面付近の空間電荷分布と変形の模式図を示す。
図21図21は、PDMS/CR-U(T)xの圧縮弾性率のCR-U添加量依存性を示す
【発明を実施するための形態】
【0011】
最初に本発明の一実施形態における誘電膜の模式的な構造を説明し、続いて、この誘電膜の材料となる組成物及び誘電膜の製造方法、並びに当該誘電膜を用いて構成される高分子アクチュエータについて説明する。
【0012】
<誘電膜>
図1は、一実施形態における誘電膜の模式的な構造を示す。図1に示す誘電膜10は、ベースポリマー13の中に、主として極性基含有有機化合物からなる分散相14を含む。そして、この誘電膜10のいずれか一方の表面(図1では上面)に、ベースポリマーからなる緻密層11を備える。緻密層11は、実質的にベースポリマーからなる均一な層(「スキン層」と称する場合もある。)であり、誘電膜全体の10%未満の厚さであることが好ましい。誘電膜10の寸法は、特に限定されないが、アクチュエータ部材として用いるための耐久性の観点から50μm以上の膜厚を有することが好ましい。また、容易に変形するためには膜厚が500μm以下であることが好ましい。したがって、緻密層11の膜厚は、約5~50μmであることが好ましい。図1において、緻密層11の下部は、ベースポリマーの連続相の中に極性基含有有機化合物の分散相を含む海島構造12を有している。分散相は、主として極性基含有有機化合物からなり、その形状は、球状(真球状又は略球状)、楕円体(楕円球)状、多角体状(多角錘状、正方体状や直方体状など多角方体状など)、板状(扁平、鱗片又は薄片状など)、ロッド状又は棒状、繊維状、不定形状などであってもよいが、球状の分散相を形成することが好ましい。
【0013】
一方、この海島構造12と緻密層11との間には、界面15が存在する。このような非対称性構造に基づいて、誘電膜10の両面に、電場を負荷したとき、海島構造内における電荷のリークが、ベースポリマーからなる緻密層11により抑制されて、その近傍にヘテロ電荷が蓄積すると考えられる。ヘテロ電荷の蓄積を効率的に引き起こす観点から、分散相14が球状であり、その球径は、約1~100μmであることが好ましい。より好ましい分散層の球径は、10~100μmである。本明細書において、「ヘテロ電荷」とは、電極の近傍に存在する当該電極と逆極性の電荷のことをいう。以下、ベースポリマー及び極性基含有有機化合物等について詳細に説明する。
【0014】
<ベースポリマー>
本実施形態のベースポリマーは、柔軟なエラストマーであればその種類は特に限定されるものではないが、例えば、シリコーン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリケトン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリnブチルアクリレート、セルロース及び羊毛から選択される一種以上のエラストマーを含むことが好ましい。エラストマーは、可塑剤、加工助剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、軟化剤、着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの比較的軟質の材料を用いることにより、本実施形態に係る誘電膜の大きな変形特性を達成することができる。特に好ましくは、後述する実施例で用いたオルガノポリシロキサン組成物を硬化させたシリコーンエラストマーである。また、シリコーンエラストマーと同様に、ポリウレタンエラストマーが直流電場下において、空間電荷の非対称的な蓄積によって容易に変形することも知られている(Watanabe M, Hirai T(2004)J Appl Phys 43:1446-1448)。さらに、ポリ塩化ビニル(PVC)などの低誘電性の樹脂に可塑剤を添加して比誘電率を高めたゲル状高分子材料であってもよい(例えば、特開2013-192333号公報参照)。
【0015】
好ましい実施形態としてのオルガノポリシロキサン組成物は、オルガノポリシロキサンを主成分(ベースポリマー)とするものであるが、その硬化方式は特に制限されず、例えば、従来公知の縮合硬化型、付加硬化型、有機過酸化物による硬化型、放射線硬化型等が挙げられる。特に、付加硬化型が好ましい。以下、本実施形態にて好適に使用可能なオルガノポリシロキサン組成物について詳細に説明する。
【0016】
(1)付加硬化型のオルガノポリシロキサン組成物
ベースポリマーとしてのオルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(1)で示されるものが好ましい。
【0017】
SiO(4-a)/2 (1)
ここで、Rは、同一または異種の置換または非置換の好ましくは炭素数1~12、特に1~10の1価炭化水素基であり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2-エチルブチル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、ヘキセニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ジフェニル基等のアリ-ル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部をハロゲン原子、シアノ基等で置換した基、更にはアミノ基、エ-テル基(-O-)、カルボニル基(-CO-)、カルボキシル基(-COOH)、スルフォニル基(-SO-)等で置換したまたは含有する基、例えばクロロメチル基、トリフロロプロピル基、2-シアノエチル基、3-シアノプロピル基等が挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。中でも、Rの80モル%以上、特に90モル%以上がメチル基であることが好ましい。aは1.90~2.05である。
【0018】
この場合、オルガノポリシロキサンとしては、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基、好ましくはビニル基を有するオルガノポリシロキサンが用いられる。アルケニル基は、分子鎖末端でも分子鎖中に有していてもよい。
【0019】
架橋剤としては、1分子中にSiH基を少なくとも2個、特に3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、公知のものを使用することができ、例えば下記平均組成式(2):
【0020】
R’SiO(4-b-c)/4 (2)
(式中、R’は、上記Rと同様の炭素数1~12、特に1~10の置換もしくは非置換の1価炭化水素基を示すが、脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。bは0≦b<3、特に0.7≦b≦2.1、cは0<c≦3、特に0.002≦c≦1、b+cは0<b+c≦3、特に0.8≦b+c≦3の正数である。)で示されるものが挙げられる。その使用量は、主成分のオルガノポリシロキサンのアルケニル基1モル当たりSiH基が0.3~10モル、特に0.5~5モルとすることが好ましい。
【0021】
付加反応触媒としては公知のものでよく、第VIII族の金属またはその化合物、特には白金化合物が好適に用いられる。この白金化合物としては、塩化白金酸、白金とオレフィン等との錯体等を挙げることができる。付加反応触媒の添加量は、ベースポリマーのオルガノポリシロキサンに対して、第VIII族の金属として、0.1~2000ppm、特に1~500ppmである。
【0022】
(2)縮合反応型のオルガノポリシロキサン組成物
オルガノポリシロキサン組成物が縮合硬化型の場合には、ベースポリマーは分子鎖両末端が水酸基または炭素数1~4のアルコキシ基等のオルガノオキシ基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0023】
この縮合硬化型オルガノポリシロキサン組成物の架橋剤としては、加水分解性の基を1分子中に2個以上有するシランあるいはシロキサン化合物が好ましい。この場合、上記加水分解性の基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基等のアルケニルオキシ基、N-ブチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基等のアミノ基、N-メチルアセトアミド基等のアミド基等が挙げられる。なお、この架橋剤の配合量は、上記両末端水酸基(またはオルガノオキシ基)封鎖オルガノポリシロキサン100質量部に対し、2~50質量部、特に5~20質量部とすることが好ましい。
【0024】
縮合硬化型オルガノポリシロキサン組成物には、通常、硬化触媒が使用される。硬化触媒としては、ジブチル錫ジアセテト、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコ-ル等のチタン酸エステルまたはチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛-2-エチルオクトエート、鉄-2-エチルヘキソエート、コバルト-2-エチルヘキソエ-ト、マンガン-2-エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシランまたはシロキサン等が例示されるが、これらはその1種に限定されず、2種以上の混合物として使用してもよい。なお、これら硬化触媒の配合量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して0~10質量部、特に0.01~5質量部が好ましい。
【0025】
(3)その他硬化型のオルガノポリシロキサン組成物
オルガノポリシロキサン組成物が、有機過酸化物による硬化型シリコーンゴム組成物である場合、ベースポリマーとして使用されるオルガノポリシロキサンとしては、ガム状のものが好ましく、分子鎖末端及び/または分子鎖中にビニル基等のアルケニル基を少なくとも2個有するものが好ましい。
【0026】
硬化触媒としては、有機過酸化物が使用される。有機過酸化物の例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のアルキル系有機過酸化物、ベンゾイルパ-オキサイド、2,4-ジクロルベンゾイルパ-オキサイド等のアシル系有機過酸化物が好適な化合物として用いられる。その配合量は、ベースポリマーのオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~10質量部、特に0.2~5質量部が好ましい。
【0027】
オルガノポリシロキサン組成物が、放射線硬化型シリコーンゴム組成物である場合、ベースポリマーとして使用されるオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖末端及び/または分子鎖中にビニル基、アリル基、アルケニルオキシ基、アクリル基、メタクリル基等の脂肪族不飽和基、メルカプト基、エポキシ基、ヒドロシリル基等を2個以上有するものが用いられる。
【0028】
また、反応開始剤としては、公知のアセトフェノン、プロピオフェノン、ベンゾフェノン、キサント-ル、フルオレイン、ベンズアルデヒド、アンスラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、3-ペンチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、3-ブロモアセトフェノン、4-アリルアセトフェノン、p-ジアセチルベンゼン、3-メトキシベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-クロロ-4’-ベンジルベンゾフェノン、3-クロロキサント-ル、3,9ジクロロキサント-ル、3-クロロ-8-ノニルキサントール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエ-テル、ベンゾインブチルエ-テル、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、ベンジルメトキシケタール、2-クロロチオキサントール等が挙げられる。その配合量は、ベースポリマーのオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~20質量部、特に0.5~10質量部であることが好ましい。
【0029】
また、本実施形態中のオルガノポリシロキサン組成物には、添加剤として、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、酸化アンチモン、塩化パラフィン等の難燃剤などを配合することができる。更に、チクソ性向上剤としてのポリエ-テル、防かび剤、抗菌剤、接着助剤としてγ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-2-(アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン類、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類等が挙げられる。
【0030】
本実施形態中のオルガノポリシロキサン組成物は、上記各成分、更にはこれに充填剤および上記各種添加剤を、乾燥雰囲気中において均一に混合することにより得ることができる。なお、本実施形態のオルガノポリシロキサン組成物の硬化条件については、その硬化型に応じた常法が採用される。
【0031】
このようなオルガノポリシロキサン組成物の具体例としては、信越化学工業株式会社製のKE-1800T-A/B、KE-1031-A/B、KE-103、KE-1051J-A/B、KE-1012-A/B、KE-106、KE-1282-A/B、KE-1283-A/B等、デュポン・東レスペシャルティマテリアルズ株式会社製のSILPOT184、東芝シリコーン株式会社製の商品YSR-3022、TPR-6700、TPR-6720、TPR-6721等が挙げられる。
【0032】
<極性基含有有機化合物>
本実施形態の極性基含有有機化合物は、シアノエチル基含有有機化合物、変性シリコーンオイル、フタロシアニン類及び各種イオン液体等が含まれるがこれらに限定されない。例えば、ベースポリマーであるシリコーンエラストマーと相溶であるか、又は部分的に非相溶な種々の極性材料から選択してもよい。
【0033】
(シアノエチル基含有有機化合物)
好ましい実施形態としての、「シアノエチル基含有有機化合物」は、分子内にシアノエチル基を有する化合物であれば特に限定されないが、シアノエチル基を含有する有機ポリマーまたは有機オリゴマーを用いることが好ましい。シアノエチル基含有有機化合物は、極性の大きなシアノエチル基を分子内に有するため、これを電界中におくと大きな双極子モーメントを形成し、高い誘電率を示す。
【0034】
シアノエチル基含有有機化合物は、比誘電率が10以上の有機誘電材料であることが好ましい。具体的には、例えば、シアノエチルサッカロース(シアノエチルスクロース、比誘電率24)、シアノエチルプルラン(比誘電率18)、シアノエチルセルロース(比誘電率16)、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース(比誘電率18)、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース(比誘電率14)、シアノエチルアミロース(比誘電率17)、シアノエチルスターチ(比誘電率17)、シアノエチルジヒドロキシプロピルスターチ(比誘電率18)、シアノエチルグリシドールプルラン(比誘電率20)、シアノエチルポリビニルアルコール(比誘電率20)、シアノエチルポリヒドロキシメチレン(比誘電率10)、シアノエチルソルビトール(比誘電率40)等のシアノエチル基含有高分子を挙げることができる。なお、本発明の目的に反しない限り、これら以外の比誘電率が10以上の有機誘電材料であってもかまわない。
【0035】
シアノエチル基含有有機化合物は、本実施形態の誘電膜を構成する組成物の総量に対し、5~60質量%含まれることが好ましく、25~45質量%含まれていることがより好ましい。シアノエチル基含有有機化合物の含有量が5質量%以上では、アクチェータとしての変位向上の効果が高く、60質量%以下では、アクチュエータ部材の安定性が高くなるからである。これらのシアノエチル基含有有機化合物は、例えば、製品名:シアノレジン(登録商標)として信越化学工業株式会社から販売されている。
【0036】
(その他の極性材料)
本実施形態の誘電膜に含まれる極性基含有有機化合物として、変性シリコーンオイル、フタロシアニン類及び各種イオン液体等を用いてもよい。
【0037】
この変性シリコーンオイルには、例えば、常温(15~25℃)で液状のもので、ポリジメチルシロキサン骨格を有する化合物を極性基で変性したシリコーンオイルを利用することができる。
【0038】
ポリジメチルシロキサンを変性する極性基としては、-CHCHCF基(フロロアルキル変性)、O(EO)n-基(ポリエーテル変性)、-OH基(ヒドロキシル変性)、-NH基(アミノ変性)、-CHOH基(カルビノール変性)、-COOH基(カルボキシル変性)等が挙げられる。これらの極性基を有する変性シリコーンオイルは、側鎖変性共重合タイプでも、直鎖変性共重合タイプでもよく、極性基で変性する部分は側鎖、片末端、両末端のいずれでもよい。
【0039】
これらのうち、変性シリコーンオイルは、-COOH基によりカルボキシル変性した変性シリコーンオイル、-CHCHCF基によりフロロアルキル変性した変性シリコーンオイル、および-NH基によりアミノ変性した変性シリコーンオイルが好ましい。
【0040】
例えば、カルボキシル変性シリコーンオイルは、ランダムポリマーでもブロックポリマーでも良い。好ましくは側鎖型で、より好ましくは25℃における粘度が1000~8000mm/s、官能基当量が2000~6000g/molの化合物である。その添加量は、高分子アクチュエータ組成物全量基準で5~60質量%であるが、好ましくは10~40質量%、より好ましくは20~30質量%である。添加量が5質量%未満ではアクチェータとしての変位向上の効果がなく、60質量%を超えると酸価が上がりすぎてアクチュエータ部材の安定性が低下する。市販されているカルボキシル変性シリコーンオイルとしては、信越化学工業株式会社製のX-22-3701E(側鎖型、25℃動粘度:2000mm/s、官能基当量:4000g/mol)X-22-162C(両末端型、25℃動粘度:220mm/s、官能基当量:2300g/mol)などが挙げられる。
【0041】
アミノ変性シリコーンとしては、シリコーンオイルの状態で25℃における動粘度が100~20000mm/sであるものが好ましく、500~10000mm/sであるのが好ましい。動粘度がこの範囲にあると、アミノ変性シリコーンオイルの製造性及び取扱性が容易になる。動粘度は、オストワルド型粘度計で測定することができる。 また、シリコーンオイルのアミノ当量は、100~10000g/molが好ましく、1200~4000g/molがより好ましい。アミノ当量は、アミノ変性シリコーンの重量平均分子量を当該アミノ変性シリコーンに含まれる窒素原子数で割ることにより求めることができる。窒素原子数は元素分析により求めることができる。
【0042】
市場で入手可能なアミノ変性シリコーンオイルの具体例としては、東レ・ダウコーニング株式会社の製品:SS-3551(動粘度1000mm/s(25℃)、アミノ当量1600g/mol)、FZ-3705(動粘度250mm/s(25℃)、アミノ当量4000g/mol)、FZ-319(動粘度2000mm2/s(25℃)、アミノ当量4000g/mol)など、および信越化学工業株式会社の製品:KF857、KF858、KF859、KF862、KF8001、KF880、及び、KF-864(動粘度1700mm/s(25℃)、アミノ当量3800g/mol)などが挙げられる。
【0043】
イオン液体としては、イミダゾリウム塩、ピペリジニウム塩、ピリジニウム化合物、ピロリジニウム塩等を用いることができるが、本実施形態の誘電膜に用いることのできるイオン液体としては、1-メチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([EMI][TFSI])の他、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([EMI][BF4])、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([BMI][BF4])、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート([HMI][BF4])、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-メトキシエトキシ)-エチルスルファート([EMI][MEES])、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスフォニル)イミド([BMP][TFSI])などが挙げられる。また、Mg、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Mo、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir又はPtを中心金属とする金属錯体であるフタロシアニン類が誘電体ポリマー層中で電荷捕捉剤としての作用し、アクチュエータ内部で帯電することも報告されている(特開2005-323482号公報参照)。
【0044】
<誘電膜の内部構造及び製造方法>
図1に示した一態様において、誘電膜の内部構造は、ベースポリマーからなる連続相(海相)と主として極性基含有有機化合物からなる分散相(島相)とからなる海島構造を有する。このように構成することで、緻密層との界面にヘテロ電荷が蓄積しやすい傾向がある。その理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、次のことが考えられる。誘電率の大きな極性基含有有機化合物がある程度の大きさの分散相を形成したときに、双極子の配向や不純物などによる界面分極が最大化するからである。このような海島構造は、例えば、レーザー顕微鏡や、透過型電子顕微鏡(TEM)、電解放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)等の電子顕微鏡を用いることにより確認することができる。
【0045】
上記海島構造は、連続相構成材料と分散相構成材料とを適当な割合で混合することにより得られる。通常は、連続相構成材料の割合Aは分散相構成材料の割合Bよりも大きく、例えば、分散相構成材料の割合Bに対する連続相構成材料の割合Aの比(A/B)は、1.1以上とすることが適当であり、好ましくは1.2以上である。
【0046】
好ましい一態様では、上記海島構造は、極性基含有有機化合物(シアノエチル基含有有機化合物、変性シリコーンオイルを包含する。)を適切な溶媒中に溶解した溶液をオルガノポリシロキサン組成物の溶解物と混合撹拌し、PETフィルム等の上に塗布して所望の形状に成形し、この成形された組成物を硬化することにより製造することができる。溶媒としては、極性基含有有機化合物をオルガノポリシロキサン組成物中に分散させて上記海島構造を形成しうる適度な極性や粘性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。
【0047】
成形方法は、成形型を用いる方法や、厚さの小さいものではスペーサーを有する離型処理したフィルム間に高分子アクチュエータ用組成物を挟んで所望の厚さに間隙を制御したニップロールを通す方法を用いることができる。上記誘電膜の硬化条件としては、温度70~200℃、好ましくは80~160℃で15分~24時間が望ましい。上記誘電膜の硬化温度が70℃以上では高分子アクチュエータ部材の硬化性が高く、200℃以下では副生成物の生成を低減することができる。また、上記誘電膜の硬化時間が15分以上では高分子アクチュエータ部材の硬化性が十分であり、24時間以下では高分子アクチュエータ部材の劣化を低減することができる。
【0048】
このようにして得られた誘電膜の形状は、薄膜、フィルム、シートであってよく、厚さは0.01~1.0mm、好ましくは0.05~0.5mmであることが望ましい。上記部材の厚さが0.01mm以上では膜内の欠陥に起因する絶縁破壊が起こりにくく、1.0mm以下では印加される電界強度が高くなり、アクチュエータが駆動しやすくなるからである。
【0049】
<高分子アクチュエータ部材およびそれを用いた高分子アクチュエータ>
本発明の他の実施形態に係る高分子アクチュエータ部材は、上記誘電膜の両面に、電極を形成することにより、高分子アクチュエータを作製することができる。上記電極の材質としては、例えば、金、白金、アルミニウム、銀、銅などの金属、カーボン、カーボンナノチューブまたは、それらを樹脂に分散した導電性樹脂や導電性エラストマーも用いることができる。電極を形成する方法としては、例えば、プラズマCVD法、イオンスパッタ被覆法、真空蒸着法、スクリーン印刷などを使用することができる。
【0050】
本発明の高分子アクチュエータは、産業用や介護用のロボット、医療機器などアクチュエータとしての用途に用いられるだけでなく、その変形から電圧変化を検知するセンサとしても用いることができる。
【0051】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例0052】
(シリコーン複合材料の準備)
1.材料
ベースポリマーとしてのシリコーンは、SILPOT184/CAT184(東レ・デュポンスペシャルティマテリアルズ社)を使用した。これは、ポリメチルハイドロジエンシロキサン(PMHS)の付加反応型ポリジメチルシロキサン(PDMS)である。極性基含有物質としては、シアノエチル基(-CHCHCN)を有するシアノエチルサッカロース(CR-U、信越化学工業株式会社)を使用した。CR-Uは、粘度が高く取り扱いを容易にするため、10~50%のテトラヒドロフラン(THF)又はアセトン(ACT)溶液として使用した。THF及びACTを溶媒として使用して、CR-Uの10~50%溶液を調製した。
【0053】
2.混合溶液の調製
SILPOT184とCAT184のPDMS溶液を10:1の質量比に調整し、上記CR-U10~50%溶液を、このPDMS溶液と混合して、CR-U濃度が20~42.9質量%になるようにした。PDMS/CR-U混合溶液を調製するために、回転攪拌機(ARE-310、株式会社シンキー)を用いて2000rpmで2分間攪拌することにより混合を行った。変形測定用のシリコーンコンポジットフィルム(誘電膜)は、四辺フィルムアプリケーター(052-6、株式会社オールグッド)を用いて、ガラス板上に置いた125μmのPETフィルム上で、上記で作製した混合溶液が150~280μmの厚みになるようにキャストし、30分間放置した後、オーブン内にて150℃で30分間加熱して硬化させた。CR-Uの複合材料は、PDMS/CR-U(y)x(xはPDMS溶液に対する極性基含有物質の含有量(質量%)であり、yは溶解する溶媒のタイプを表す。PDMS/CR-U(T)xはTHF溶媒に使用され、PDMS/CR-U(A)xはアセトン溶媒に使用される。)で示す。フィルムキャスティング時のPET基板の表面側を「PET側」、反対側の空気面側を「空気側」とした。調製したPDMS/CR-U混合溶液をテフロン(登録商標)ペトリ皿に注ぎ入れ、テフロン(登録商標)ペトリ皿を真空脱泡した後、弾性係数を測定するための混合溶液を150℃のオーブンで60分間加熱して硬化させた。シリコーン複合材料は、直径30mm、厚さ5mmに調整された。
【0054】
(空間電荷分布測定)
ファイブラボ株式会社製パルス静電音響非破壊検査装置(PEANUT)を用いて空間電荷分布を測定した。図2にPEANUT装置の電極部分の概要を示す。上部電極22は半導電性ゴム、下部電極24はアルミ製である。PEANUT法では、パルス状の静電気力が電荷に作用し、電荷分布形状の弾性波が発生する。この弾性波を圧電素子で電気信号に変換し、空間電荷分布を測定した。バイアス条件は3kV/mm、パルス条件は200V×400Hzである。
【0055】
(曲げ変形測定)
1.標本の準備:
図3に変形測定試料の模式図を示す。作製したシリコーンエラストマーフィルム31を幅5mm、長さ20mmにカットし、幅4mm、長さ15mm、厚さ0.1μmの金箔32(カタニ産業株式会社)を表と裏に取り付けて、変形測定試料を作製した。
【0056】
2.変形測定:
図4は、変形を測定するための実験セットアップを示す。直流電源44は最大出力850Vの方形波出力を使用した。自重の影響を避けるため、試験片43は床面に対して垂直に設置し、ケルビンクリップで挟み(クリップから試験片の先端まで12mmを片持ち状態)、直流電圧をかけた。変形量は、試料上に置かれたデジタル顕微鏡41で、電場下で観察して測定し、コンピュータ42にて記録した。
【0057】
(電気特性)
誘電率及びインピーダンスは、インピーダンスアナライザー(SI1260、SII1296、ソーラートロン株式会社)、高電圧インターフェース(HVI-100、TOYO Corporation)及びバイポーラ増幅器(BOP-1000M、KEPCO,INC.)(電極径10mm及び標本厚さ170μm)で測定した。
【0058】
(圧縮弾性率)
シリコーン複合材料の圧縮弾性率は、テンシロン万能材料試験機(RTC-1250A、株式会社エーアンドディ)を用いて測定した。シリコーン複合材料は、5kNロードセルで0.5mm/分の速度で圧縮した。
【0059】
(構造組成)
構造組成はFT/IR-4600typeA(日本分光株式会社)を使用して入射角45度で測定した。
【0060】
(画像撮影)
試料の断面画像はレーザー顕微鏡(OLYMPUS LEXT OLS4100)で撮影した。
【0061】
結果
(試料画像)
図5に、溶媒としてテトラヒドロフランを使用したPDMS/CR-U(T)17.9(a)、PDMS/CR-U(T)24.7(b)、PDMS/CR-U(T)30.4(c)、PDMS/CR-U(T)42.9(d)と、アセトンを使用したPDMS/CR-U(A)17.9(e)、PDMS/CR-U(A)24.7(f)、PDMS/CR-U(A)30.4(g)、PDMS/CR-U(A)42.9(h)の各複合体の断面画像を示す。図6には、PDMS/CR-U(T)42.9(a)と、PDMS/CR-U42.9(A)(b)の拡大画像を示す。また、図7に各複合体の球径と緻密層厚さの添加量依存性を示す。各複合体は海島二相構造を示し、PDMS/CR-U(T)xは、CR-U添加量の増加と共に球状相の径が増大し、空気側に添加量の増加と共に厚くなる緻密層を有する非対称性断面構造であった。PDMS/CR-U(T)42.9は画像解析から平均粒子径28μm、13μmの緻密層を有する構造であった。一方、PDMS/CR-U(A)xは小粒子が均一に分散した緻密層の無い対称性断面構造で、PDMS/CR-U(A)42.9は平均粒子径2.7μmであった。
【0062】
(組成分析)
図8にPDMS/CR-U42.9(T)の空気面とPET面、並びに海相と島相を比較したATRの結果を示す。空気面とPET面の吸収曲線はPDMSとほぼ一致しているが、シロキサン結合(Si-O-Si:1100~1000,500~450cm-1)の吸収がPET面の方が空気面よりも低い吸収であった。空気面にCR-Uの明確な吸収(-CN基:2,253cm-1)が見られず、PET面に強い吸収を確認した。また、海相と島相の吸収曲線はPDMSとほぼ一致しているが、シロキサン結合の吸収は島相の方が海相よりも若干弱い結果が得られた。一方、海相に-CN基の明確な吸収が見られず、島相に強い吸収を確認した。この結果から、PET面と島相はPDMS成分と農密なCR-U成分が混在した相と考えられ、空気面と海相はPDMS成分であることが明らかになった。
【0063】
(溶液の相溶性)
各材料の相溶性を確認するために、CR-UのTHF50%溶液CR-U(T)50、ACT50%溶液CR-U(A)50、PDMSのTHF21%溶液PDMS(T)21、ACT21%溶液PDMS(A)21、及び三成分系のPDMS/CR-U(T)42.9、PDMS/CR-U(A)42.9溶液を調製した。図9に溶液を混合後、試験管に入れ、120分間静置した外観変化を示す。CR-U(T)50及びCR-U(A)50は混合直後から120分経過後も透明性を維持した。PDMS(T)21は混合直後から120分経過後も透明性を示したが、PDMS(A)21は30分後には二相に分離した。PDMS/CR-U(T)42.9は、混合直後は低粘度の白濁した溶液を示し、30分後には上部層は透明、下部層は乳白色の小径粒子の凝集した相に分離した。120分後には下層部に比較的大きな透明な球状相の凝集が見られた。下層部は粘着質であった。このことから上層部はPDMS層、下層部はCR-U層と考えられる。一方、PDMS/CR-U(A)42.9は混合直後から乳白色を示し、高粘度のチクソトロピー的な高粘度を示し、試験管内の状態は変わらなかった。
【0064】
このことはTHFを使用した場合はPDMS、CR-Uに対して親和性が高く、溶液の粘度が比較的低くいこともあり、乾燥静置工程で徐々にCR-Uの小粒子の凝集が起こり、大球径の球状相が成長、沈降したと考えられる。材料の比重がPDMSは1.08、CR-Uが1.23である点からも一致する。この状態変化から、空気側に緻密層、PET側に非緻密層を有する断面構造になったものと考えられる。一方、PDMSに対して親和性の低いACTを使用した場合は、CR-UにPDMSがからまり高粘度になったものと考える。その結果CR-U相の凝集が抑制され小粒子径の分散した断面構造となったとものと考える。
【0065】
(電気特性)
1.CR-U添加量依存性
図10にPDMS、PDMS/CR-U(T)xとPDMS/CR-U(A)42.9のバイアス3kV/mm下の交流インピーダンスのCR-U添加量依存性を示す。PDMS/CR-U(T)42.9のCole-Coleプロットだけが円弧を描き、等価回路解析から抵抗とコンデンサーの並列回路にコンデンサーが直列した等価回路が得られた。それ以外の複合体は虚数Z”が急激に立ち上がる絶縁材料の特徴を示した。図11に等価解析から得られた抵抗値と静電容量について、CR-U含有量との関係を示す。CR-Uの添加量の増加と共に静電容量は増加し、抵抗値はCR-U添加量が35.3wt%以上から急激に低下した。PDMS/CR-U(A)42.9の分極は認められず、PDMS/CR-U(T)42.9だけが分極が認められた。
【0066】
2.バイアス依存性
図12にPDMS/CR-U(T)42.9の交流インピーダンスの電界強度依存性を示す。電界強度の増加と共にCole-Coleプロットの円弧が明確に描かれ、抵抗とコンデンサーの並列回路にコンデンサーが直列した等価回路が得られた。図13に等価解析から得られた抵抗値と静電容量の電界強度依存性の結果を示す。電界強度の増加と共に静電容量は増加し、抵抗値は徐々に減少した。以上の結果から電界強度の増加と共に分極が進み、電界強度2.35kV/mm以上で明確な分極が認められた。
【0067】
(変位測定)
1.CR-U添加量依存性
図14にPDMS/CR-U(T)xとPDMS/CR-U(A)xの電場方向を変えた場合の電界強度3kV/mm、30分後の変位量のCR-U添加量の依存性を示す。PDMS/CR-U(T)xの変位量は添加量の増大と共に次第に大きくなり24.7質量%の添加量以上から電場方向に関わらずPET側への変位を示し、35.3質量%を超えた付近から急激に増加した。PDMS/CR-U(A)xは添加量の依存性が認められず、電場方向に関わらずマイナス方向への非常に小さい変位量を示した。
【0068】
2.電界強度依存性
図15にPDMS/CR-U(T)42.9とPDMS/CR-U(A)42.9変位の電界強度依存性を示す。電界強度毎に1分間負荷し、電場方向を変えて測定した。PDMS/CR-U(T)42.9は、負荷電圧の大きさ及び電場方向に関わらずPET面方向に変位を示した。一方、PDMS/CR-U(A)42.9は、電場方向に関わらず陰極方向に小さな変位量を示した。
【0069】
3.電圧下の緻密層の挙動
緻密層の電圧負荷状態の挙動を確認するために、PDMS/CR-U(T)42.9 の空気面側、PET面側のAu箔上に、それぞれPEフィルム12μmを密着させ(ラミネート)、電界強度3kV/mm、30分間の変位量を測定した結果を図16に示す。空気面側にPEフィルムをラミネートした場合はほとんど変位しないことを確認した。これは強制的に緻密層の伸びを抑制した結果であり、変位挙動に緻密層の伸びが関与したと考えられる
【0070】
(空間電荷分布測定)
エラストマーフィルム内部では弾性波の減衰が大きいため、T.Murakamiら、IEE Japan.,11-A(6),647-648(1997)に記載の測定評価方法により空間電荷分布を測定した。圧電素子から離れた上部電極界面の空間電荷分布は不正確であり、圧電素子側(下部アルミニウム電極側)の電極界面の空間電荷分布に着目して、バイアス電圧の極性を変えて測定した。測定は、試料の表と裏の両方で行った。グラフでは、正極性と負極性の下部電極界面付近の測定結果を同じグラフで示す。フィルム内部に蓄積された正または負の電荷の最大値を異電荷ピーク値とした。
【0071】
1.添加量依存性
PDMS/CR-U(T)42.9とPDMS/CR-U(A)42.9の空間電荷測定の結果を図17に示す。グラフの横軸は陽極並びに陰極試料界面をゼロとした時の試料厚さ(position)を示し、縦軸は空間電荷密度である。PDMS/CR-U(T)42.9は電場方向に関わらず空気側電極試料界面付近の試料内部(深部)10~30μm付近に電極の極性とは逆電荷の蓄積ピークが認められた。このピーク位置は緻密層付近と一致した。これは、緻密層が電荷のリークを抑制し、緻密付近に電荷が蓄積したと考えられる。
【0072】
緻密層の無いPET側電極試料界面付近のホモ電荷蓄積は空気側と比較して少なく、試料内部は僅かにヘテロ電荷の蓄積が認められるが、空間電荷分布の非対称性が確認された。一方、PDMS/CR-U(A)42.9は電場方向に関わらず試料内部には電荷の蓄積が無い空間電荷分布の対称性を示した。
【0073】
図18に各複合体のバイアス極性を変えた空間電荷分布のCR-U添加量依存性を示す。THFを使用した複合体はCR-U35wt%以上の複合体に電場方向に関わらず空気側電極試料界面付近の試料内部にヘテロ電荷の蓄積が認められ、蓄積量は添加量の増加と共に大きくなった。PDMS/CR-U(T)42.9だけがPET側電極試料界面付近の試料内部に電場方向に関わらず、僅かにヘテロ電荷蓄積が認められる空間電荷の非対称性を示した。
【0074】
2.変位とヘテロ電荷ピーク値
図19にPDMS/CR-U(T)xのヘテロ電荷ピーク値と変位量の関係を示す。電場方向に関わらず、ヘテロ電荷ピーク値の増大と共に変位量は増加することが確認された。
【0075】
(相分離構造と分極)
球径が小さい微分散系PDMS/CR-U(A)42.9と大粒子分散系であるPDMS/CR-U(T)42.9の変位挙動は大きな差が認められた。高分子材料と無機フィラーの複合体の絶縁破壊の研究では、微粒子系複合体材料は均質材料に比較して、母材中に誘電率の異なるフィラー粒子が存在することにより,分極電荷が発生し、電気力線、等電位面が歪み,間隔も等しくなり、電位勾配は一定ではないことが知られている。また、絶縁破壊特性に関する「トリーイング破壊」はナノフィラー径が小さくなるとトリー破壊時間が長くなることが知られている。実施例におけるこれまでの結果を表1にまとめた。誘電緩和、表面抵抗率などの結果からシリコーンシアノエチルサッカロース複合体の分散系においても高分子材料と無機フィラー複合体と同様な結果を示唆している。
【0076】
【表1】
【0077】
すなわち、シリコーンシアノエチルサッカロース複合体の特異的な変位挙動は小径の微分散系では、粒子個々の電界の影響疎外が顕著であり、界面分極が小さくなり、巨視的な誘電緩和強度が小さくなったものと考える。一方、大粒子径のPDMS/CR-U(T)42.9は誘電相の三次元的ネットワークの分散構造の為、界面分極が発生し、加えて、緻密層を有する非対称性断面構造による、電荷蓄積と表裏のエラストマー特性の非対称性が特異的変位を誘引したと考えられる。図20に緻密層側を陽極にした時の陽極界面付近の空間電荷分布と変形の模式図を示す。THFを使用したシリコーン/シアノエチルサッカロースの変位はCR-Uの球状相と緻密層の界面付近に蓄積した電荷の静電反発により、緻密層が伸長した為、非緻密層方向に変位したと考えられる。
【0078】
最後にエラストマーの基本物性であるPDMS/CR-U(T)xの圧縮弾性率のCR-U添加量依存性を図21に示す。CR-Uの添加量の依存性は無く、PDMS/CR-U(T)42.9は1MPaを維持し、実用的に問題のないことを確認した。
【符号の説明】
【0079】
10 誘電膜
11 陽極/部材界面
12 海島構造
13 ベースポリマー(連続相)
14 分散相
15 界面
21 Al電極
22 上部電極(半導電性ゴム)
23、31、43 シリコーンエラストマーフィルム(誘電膜)
24 下部電極(Al)
25 ピエゾ素子(センサー)
32 金箔
41 デジタル顕微鏡
42 コンピュータ
44 直流電源

図1
図2
図3
図4
図5
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図20
図21