(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044150
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】圧電材料用組成物及び圧電材料
(51)【国際特許分類】
H01L 41/193 20060101AFI20220310BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20220310BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
H01L41/193
H01L41/113
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149632
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】真井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】加畑 雅之
(72)【発明者】
【氏名】水森 智也
(72)【発明者】
【氏名】松山 剛知
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08Q
4J100AL66P
4J100BA02Q
4J100BA15P
4J100BA22P
4J100BA40Q
4J100BC43P
4J100BC44Q
4J100CA04
4J100DA55
4J100DA62
4J100DA66
4J100JA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】延伸工程又はポーリング工程が不要な圧電材料を提供する。
【解決手段】式(I):
[式(I)中、R
1は、水素原子又はメチル基を表し;S
paは、2価の有機基であるスペーサー基を表し;C
yaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し;Xは、-CN、-OR
2、-F又は-OHを表す、ここでR
2は炭素数1~6のアルキル基を表す]で表される重合性単官能液晶化合物と、式(II)で表される重合性2官能液晶化合物とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式(I)中、
R
1は、水素原子又はメチル基を表し;
S
paは、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
yaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し;
Xは、-CN、-OR
2、-F又は-OHを表す、ここでR
2は炭素数1~6のアルキル基を表す]
で表される重合性単官能液晶化合物と、式(II):
【化2】
[式(II)中、
R
1は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し;
S
pbは、互いに独立に、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
ybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す]
で表される重合性2官能液晶化合物と
を含む圧電材料用組成物。
【請求項2】
Spa及びSpbは、互いに独立に、アルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる1個の-CH2-基、又は、隣接しない2個以上の-CH2-基は、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよい、ここで、Raは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す、請求項1に記載の圧電材料用組成物。
【請求項3】
C
ya及びC
ybは、互いに独立に、式(y1)又は式(y2):
【化3】
[式(y1)及び(y2)中、Aは、互いに独立に、置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表し、Yは、互いに独立に単結合又は連結基を表し、nは1~3の整数を表し、*はC
yaにおいては、S
pa又はXとの結合手を表し、C
ybにおいてはS
pbとの結合手を表す]
で表される、請求項1又は2に記載の圧電材料用組成物。
【請求項4】
式(y1)及び(y2)中、Yは、互いに独立に、単結合、-C(=O)-O-、-A-C(=O)-O-、-A-O-C(=O)-、-C(=O)-O-A-O-C(=O)-、又は-O-C(=O)-A-C(=O)-O-を表し、ここで、Aは互いに独立に置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表す、請求項1~3のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
【請求項5】
重合性単官能液晶化合物と重合性2官能液晶化合物とを1:9~9:1(重合性単官能液晶化合物:重合性2官能液晶化合物)のモル比で含む、請求項1~4のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
【請求項6】
式(I):
【化4】
[式(I)中、
R
1は、水素原子又はメチル基を表し;
S
paは、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
yaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し;
Xは、-CN、-OR
2、-F又は-OHを表す、ここでR
2は炭素数1~6のアルキル基を表す]
で表される重合性単官能液晶化合物に由来する構成単位と、式(II):
【化5】
[式(II)中、
R
1は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し;
S
pbは、互いに独立に、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
ybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す]
で表される重合性2官能液晶化合物に由来する構成単位と
を少なくとも有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む、圧電材料。
【請求項7】
Spa及びSpbは、互いに独立に、アルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる1個の-CH2-基、又は、隣接しない2個以上の-CH2-基は、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよい、ここで、Raは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す、請求項6に記載の圧電材料。
【請求項8】
C
ya及びC
ybは、互いに独立に式(y1)又は(y2):
【化6】
[式(y1)及び(y2)中、Aは、互いに独立に、置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表し、Yは、互いに独立に単結合又は連結基を表し、nは1~3の整数を表し、*はC
yaにおいては、S
pa又はXとの結合手を表し、C
ybにおいてはS
pbとの結合手を表す]
で表される、請求項6又は7に記載の圧電材料。
【請求項9】
式(y1)及び(y2)中、Yは、互いに独立に、単結合、-C(=O)-O-、-A-C(=O)-O-、-A-O-C(=O)-、-C(=O)-O-A-O-C(=O)-、又は-O-C(=O)-A-C(=O)-O-を表し、ここで、Aは互いに独立に置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表す、請求項6~8のいずれかに記載の圧電材料。
【請求項10】
(メタ)アクリル系ポリマーは、重合性単官能液晶化合物に由来する構成単位と重合性2官能液晶化合物に由来する構成単位とを1:9~9:1(重合性単官能液晶化合物に由来する構成単位:重合性2官能液晶化合物に由来する構成単位)のモル比で含む、請求項6~9のいずれかに記載の圧電材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電材料用組成物及び圧電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の高分子成分が圧電材料として知られている。例えば、特許文献1には、主鎖型液晶ポリマーを含む圧電材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、液晶ポリマーを含む圧電材料を製造する際、圧電特性を発現させるためには、例えば塗膜を乾燥させてフィルムを形成後に、延伸工程、ポーリング工程等により、液晶ポリマーの配向方向を一方向に揃える必要があった。例えば特許文献1では、圧電特性を発現する前の材料に、高温下で電圧を印加する工程によって圧電特性を発現させることが記載されている。
【0005】
延伸工程を行う場合、例えば塗膜を乾燥させて得たフィルムを均一に延伸することは難しく、フィルムの物性にばらつきが生じる場合がある。また、ポーリング工程を行う場合、非常に高い電圧をフィルムに印加することが必要となるため、圧電特性以外の他の材料特性が低下する場合があることがわかった。
【0006】
そのため、本発明は、延伸工程又はポーリング工程を行わずとも圧電特性を発現させることが可能な圧電材料用組成物、及び、該圧電材料用組成物を用いて製造した圧電材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、圧電特性を有し得る種々の物質について検討を行った。その結果、特定の構造を有する重合性単官能液晶化合物と重合性2官能液晶化合物とを含む圧電材料用組成物によれば上記の課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の好適な態様を包含する。
〔1〕式(I):
【化1】
[式(I)中、
R
1は、水素原子又はメチル基を表し;
S
paは、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
yaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し;
Xは、-CN、-OR
2、-F又は-OHを表す、ここでR
2は炭素数1~6のアルキル基を表す]
で表される重合性単官能液晶化合物と、式(II):
【化2】
[式(II)中、
R
1は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し;
S
pbは、互いに独立に、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
ybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す]
で表される重合性2官能液晶化合物と
を含む圧電材料用組成物。
〔2〕S
pa及びS
pbは、互いに独立に、アルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる1個の-CH
2-基、又は、隣接しない2個以上の-CH
2-基は、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(R
a)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよい、ここで、R
aは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す、〔1〕に記載の圧電材料用組成物。
〔3〕C
ya及びC
ybは、互いに独立に、式(y1)又は式(y2):
【化3】
[式(y1)及び(y2)中、Aは、互いに独立に、置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表し、Yは、互いに独立に単結合又は連結基を表し、nは1~3の整数を表し、*はC
yaにおいては、S
pa又はXとの結合手を表し、C
ybにおいてはS
pbとの結合手を表す]
で表される、〔1〕又は〔2〕に記載の圧電材料用組成物。
〔4〕式(y1)及び(y2)中、Yは、互いに独立に、単結合、-C(=O)-O-、-A-C(=O)-O-、-A-O-C(=O)-、-C(=O)-O-A-O-C(=O)-、又は-O-C(=O)-A-C(=O)-O-を表し、ここで、Aは互いに独立に置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表す、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔5〕重合性単官能液晶化合物と重合性2官能液晶化合物とを1:9~9:1(重合性単官能液晶化合物:重合性2官能液晶化合物)のモル比で含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の圧電材料用組成物。
〔6〕式(I):
【化4】
[式(I)中、
R
1は、水素原子又はメチル基を表し;
S
paは、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
yaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し;
Xは、-CN、-OR
2、-F又は-OHを表す、ここでR
2は炭素数1~6のアルキル基を表す]
で表される重合性単官能液晶化合物に由来する構成単位と、式(II):
【化5】
[式(II)中、
R
1は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し;
S
pbは、互いに独立に、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
ybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す]
で表される重合性2官能液晶化合物に由来する構成単位と
を少なくとも有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む、圧電材料。
〔7〕S
pa及びS
pbは、互いに独立に、アルキレン基を表し、該アルキレン基に含まれる1個の-CH
2-基、又は、隣接しない2個以上の-CH
2-基は、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(R
a)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよい、ここで、R
aは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す、〔6〕に記載の圧電材料。
〔8〕C
ya及びC
ybは、互いに独立に式(y1)又は(y2):
【化6】
[式(y1)及び(y2)中、Aは、互いに独立に、置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表し、Yは、互いに独立に単結合又は連結基を表し、nは1~3の整数を表し、*はC
yaにおいては、S
pa又はXとの結合手を表し、C
ybにおいてはS
pbとの結合手を表す]
で表される、〔6〕又は〔7〕に記載の圧電材料。
〔9〕式(y1)及び(y2)中、Yは、互いに独立に、単結合、-C(=O)-O-、-A-C(=O)-O-、-A-O-C(=O)-、-C(=O)-O-A-O-C(=O)-、又は-O-C(=O)-A-C(=O)-O-を表し、ここで、Aは互いに独立に置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表す、〔6〕~〔8〕のいずれかに記載の圧電材料。
〔10〕(メタ)アクリル系ポリマーは、重合性単官能液晶化合物に由来する構成単位と重合性2官能液晶化合物に由来する構成単位とを1:9~9:1(重合性単官能液晶化合物に由来する構成単位:重合性2官能液晶化合物に由来する構成単位)のモル比で含む、〔6〕~〔9〕のいずれかに記載の圧電材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、延伸工程又はポーリング工程を行わずとも圧電特性を発現させることが可能な圧電材料用組成物、及び、該圧電材料用組成物を用いて製造した圧電材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。なお、本明細書において「~」で示される数値の範囲は、その上限と下限とを含む。
【0011】
本発明の圧電材料用組成物は、式(I):
【化7】
[式(I)中、
R
1は、水素原子又はメチル基を表し;
S
paは、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
yaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し;
Xは、-CN、-OR
2、-F又は-OHを表す、ここでR
2は炭素数1~6のアルキル基を表す]
で表される重合性単官能液晶化合物と、式(II):
【化8】
[式(II)中、
R
1は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し;
S
pbは、互いに独立に、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
ybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す]
で表される重合性2官能液晶化合物を含む。本発明の圧電材料用組成物は、式(I)で表される1種類の重合性単官能液晶化合物を含有してもよいし、2種以上の重合性単官能液晶化合物を含有してもよい。また、本発明の圧電材料用組成物は、式(II)で表される1種類の重合性2官能液晶化合物を含有してもよいし、2種以上の重合性2官能液晶化合物を含有してもよい。さらに、本発明の圧電材料用組成物は、重合性単官能液晶化合物及び2官能液晶化合物に加えて、他の成分を含有していてもよい。
【0012】
(重合性単官能液晶化合物)
本発明の圧電材料用組成物は、式(I):
【化9】
で表される重合性単官能液晶化合物を含む。式(I)で表される化合物は重合性基である(メタ)アクリレート基を1つ有する化合物である。また、重合性液晶化合物とは、重合性基を少なくとも1つ以上有する液晶化合物である。
【0013】
式(I)中のR1は、水素原子又はメチル基を表す。なお、圧電材料中の液晶ポリマーの配向方向が圧電材料の加圧方向や伸縮方向と同じ方向に揃っているほど圧電特性が高くなると考えられる。すなわち、圧電特性には、(1)液晶ポリマー一つ一つの配向方向が加圧方向や伸縮方向にどれだけ沿っているか(近いか)、(2)液晶ポリマー全体における配向方向が加圧方向や伸縮方向に近い液晶ポリマーの割合のそれぞれが関与するものと考えられる。
【0014】
式(I)中のSpaは、2価の有機基であるスペーサー基を表す。本明細書において、2価の有機基であるスペーサー基とは、該スペーサー基に隣接する-O-基及び-Cya-基又は-Cyb-基に結合する2つの結合手を有する有機基であり、主鎖の原子数が好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上、さらにより好ましくは4以上である有機基を表す。スペーサー基における主鎖の原子数は、製造性や入手の容易さの観点からは、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは12以下、さらにより好ましくは10以下、ことさら好ましくは8以下、ことさらより好ましくは6以下である。2価の有機基であるスペーサー基としては、好ましくはアルキレン基が挙げられる。ここで、該アルキレン基に含まれる1個の-CH2-基、又は、隣接しない2個以上の-CH2-基は、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられていてもよい。また、Raは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。
【0015】
2価の有機基であるスペーサー基としては、例えば、炭素数が好ましくは1~20、より好ましくは2~20、さらに好ましくは2~15、さらにより好ましくは2~12、ことさら好ましくは3~10、ことさらより好ましくは4~8のアルキレン基において、該アルキレン基に含まれる1個の-CH2-基、又は、隣接しない2個以上の-CH2-基が、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられた基が挙げられる。ここで、Raは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。
【0016】
アルキレン基としては、直鎖状又は分枝状のアルキレン基が挙げられ、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ドデシレン基等が挙げられる。製造性や入手の容易さの観点からは、アルキレン基は直鎖状のアルキレン基であることが好ましい。
【0017】
アルキレン基に含まれる1個又は隣接しない2個以上の-CH2-基が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられた基としては、上記に記載したアルキレン基の1個の-CH2-基又は隣接しない2個以上の-CH2-基が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基によって置き換えられた基が挙げられる。このような基としては、例えば、-(CH2)p-Z-で表される基、-(CH2)q-Z-(CH2)r-で表される基、-Z-(CH2)s-Z-で表される基、-(CH2)t-Z-(CH2)u-Z-で表される基等が挙げられる。ここで、式中のpは好ましくは1~19、より好ましくは2~19、さらに好ましくは1~14、さらにより好ましくは1~11、ことさら好ましくは2~9、ことさらより好ましくは3~7であり、q及びrは互いに独立に1以上の整数であり、qとrの合計は、好ましくは1~19、より好ましくは2~19、さらに好ましくは1~14、さらにより好ましくは1~11、ことさら好ましくは2~9、ことさらより好ましくは3~7であり、sは好ましくは1~18、より好ましくは1~13、さらに好ましくは1~10、さらにより好ましくは1~8、ことさら好ましくは2~6であり、t及びuは互いに独立に1以上の整数であり、tとuの合計は、好ましくは1~18、より好ましくは1~13、さらに好ましくは1~10、さらにより好ましくは1~8、ことさら好ましくは2~6である。また、上記式中のZは、互いに独立に、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基を表す。
【0018】
式(I)中のCyaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す。
【0019】
芳香族環及び脂肪族環は、単環式であってもよいし、2以上の環が各環を構成する元素の一部を共有して結合した縮合環式であってもよい。また、芳香族環は、芳香族炭化水素環であっても、芳香族ヘテロ環であってもよい。芳香族ヘテロ環である場合、炭素原子以外に含まれ得る原子としては、例えば窒素原子、硫黄原子及び酸素原子が挙げられる。芳香族環又は脂肪族環を形成する炭素原子及び炭素原子以外の原子の合計数は、特に限定されないが、好ましくは3~20、より好ましくは4~16、さらに好ましくは6~12である。
【0020】
単環式の芳香族環としては、ベンゼン環、ピリジン環、ピロール環が挙げられる。
【0021】
縮合環式の芳香族環としては、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。
【0022】
単環式の脂肪族環としては、シクロへプタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0023】
縮合環式の脂肪族環としては、ビシクロウンデカン、デカヒドロナフタレン等が挙げられる。
【0024】
芳香族環及び脂肪族環は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン基(例えばフルオロ基)及び-CN基からなる群から選択される少なくとも1つの基が挙げられる。芳香族環及び脂肪族環が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されないが、好ましくは1~3個、より好ましくは1又は2個である。
【0025】
芳香族環及び脂肪族環は、製造性や入手の容易さの観点から、好ましくは芳香族環であり、より好ましくは単環式の芳香族環であり、さらに好ましくは単環式の芳香族炭化水素環である。
【0026】
Cyaは、上記の芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む。芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が単結合で結合された構造としては、例えば、ビフェニル、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニルシクロヘキサン等が挙げられる。連結基としては、-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-及び-N(Ra)-C(=O)-O-からなる群から選択される少なくとも1種の基が挙げられる。Cyaは、製造性や入手の容易さの観点から、好ましくは、芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が単結合もしくは-O-、-O-C(=O)-及びO-C(=O)-O-からなる群から選択される基で結合された構造を表し、より好ましくは、芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が単結合もしくは-O-C(=O)-で結合された構造を表す。
【0027】
式(I)中のC
ya及び後述する式(II)中のC
ybは、製造性や入手の容易さの観点からは、互いに独立に、式(y1)又は式(y2):
【化10】
[式(y1)及び(y2)中、Aは、互いに独立に、置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環を表し、Yは、互いに独立に単結合又は連結基を表し、nは1~3の整数を表し、*はC
yaにおいては、S
pa又はXとの結合手を表し、C
ybにおいてはS
pbとの結合手を表す]
で表されることが好ましい。
Aにおける置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環について、C
yaに関して上記に述べた置換基を有していてもよい芳香族環又は脂肪族環についての記載が同様に当てはまる。Yにおける連結基について、C
yaに関して上記に述べた連結基についての記載が同様に当てはまる。
【0028】
式(I)中のXは、-CN、-OR2、-F又は-OHを表す、ここでR2は炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0029】
式(I)で表される重合性単官能液晶化合物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の合成方法に従い、適宜合成することができる。例えば、「Macromolecules」、第26巻、第6132~6134頁、1993年、Makromol.Chem.,183,2311-2321(1982)等に記載の方法によって合成することが可能である。また、市販の重合性単官能液晶化合物を用いてもよい。
【0030】
(重合性2官能液晶化合物)
本発明の圧電材料用組成物は、式(II):
【化11】
[式(II)中、
R
1は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し;
S
pbは、互いに独立に、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
ybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す]
で表される重合性2官能液晶化合物も含む。式(II)で表される化合物は重合性基である(メタ)アクリレート基を2つ有する化合物である。式(II)中のR
1は、水素原子又はメチル基を表し、圧電特性を高めやすい観点からは、好ましくはメチル基である。
【0031】
式(II)中のSpbは、2価の有機基であるスペーサー基を表す。式(II)中のSpbにおける2価の有機基であるスペーサー基に関して、式(I)中のSpaに関する記載、好ましい態様が同様に当てはまる。また、式(II)中のCybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し、式(II)中のCyb関しても、式(I)中のCyaに関する記載、好ましい態様が同様に当てはまる。
【0032】
式(II)で表される重合性2官能液晶化合物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の合成方法に従い、適宜合成することができる。また、市販の重合性2官能液晶化合物を用いてもよい。
【0033】
〔圧電材料用組成物〕
本発明の圧電材料用組成物は、上記の重合性単官能液晶化合物と上記の重合性2官能液晶化合物とを少なくとも含む。上記の式(I)で表される重合性単官能液晶化合物と上記の式(II)で表される重合性2官能液晶化合物とを少なくとも含む圧電材料用組成物から得た圧電材料は、これらが共重合したポリマーを少なくとも含む。上記重合性液晶化合物を含む圧電材料用組成物を用いる場合に、延伸処理等を行わずとも圧電特性が発現される理由は明らかではないが、以下の理由によるものと推察される。上記の重合性単官能液晶化合物は、一般的に圧電材料用組成物が塗布される基材(例えば金属、プラスチック、ガラス等が挙げられるがこれに限定されない)との界面張力が大きい。また、上記の重合性単官能液晶化合物は、Spaで表されるスペーサー基(好ましくは比較的長い鎖長のスペーサー基)、および、環構造を有する比較的傘高いCyaで表される構造を有するため、隣り合う重合性単官能液晶化合物同士の分子間のエネルギーが最小になろうとする作用が発生する。これらの作用から、本発明の圧電材料用組成物を基材等に塗布した場合、各重合性単官能液晶化合物は、基材側に-Xが位置した状態で塗布面に対して略直交する方向に整列すると考えられる。そして、圧電材料用組成物を硬化させる際には、各重合性単官能液晶化合物が上述した配向状態のまま重合するとともに、共重合する重合性2官能液晶化合物が他のポリマーと結合することで、圧電材料全体として、重合性単官能液晶化合物が一方向(特に塗布面に対して略直交する方向)に向いた状態で固定された状態を維持することができるためと考えられる。したがって、圧電材料の加圧・伸縮方向は、塗布面に対して略直行する方向(略垂直方向)であり、所望の加圧・伸縮方向に応じて塗布方向を選択すればよい。加圧・伸縮方向は、代表的には、膜、フィルム、およびシートなどの面状体であれば厚さ方向、ワイヤーなどの線状体であればいわゆる径方向である。なお、当該メカニズムは、本発明を何ら限定するものではない。
【0034】
圧電材料用組成物に含まれる上記の重合性単官能液晶化合物の量は、圧電特性を高めやすい観点から、圧電材料用組成物の総量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。圧電材料用組成物に含まれる上記の重合性単官能液晶化合物の量の上限は、特に限定されず、所望される圧電材料の厚さ等に応じて適宜調整してよいが、圧電材料用組成物の総量に対して、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0035】
圧電材料用組成物に含まれる上記の重合性2官能液晶化合物の量は、圧電特性を高めやすい観点から、圧電材料用組成物の総量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。圧電材料用組成物に含まれる上記の重合性2官能液晶化合物の量の上限は、特に限定されず、所望される圧電材料の厚さ等に応じて適宜調整してよいが、圧電材料用組成物の総量に対して、例えば90質量%以下、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0036】
圧電材料用組成物に含まれる上記の重合性単官能液晶化合物と重合性2官能液晶化合物の量の合計は、圧電特性を高めやすい観点から、圧電材料用組成物の総量に対して、好ましくは2質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。圧電材料用組成物に含まれる上記の重合性2官能液晶化合物の量の上限は、特に限定されず、所望される圧電材料の厚さ等に応じて適宜調整してよいが、圧電材料用組成物の総量に対して、例えば80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0037】
本発明の圧電材料用組成物に含まれる上記の重合性単官能液晶化合物と上記の重合性2官能液晶化合物のモル比は、圧電特性を高めやすい観点から、好ましくは1:9~9:1(重合性単官能液晶化合物:重合性2官能液晶化合物)、より好ましくは2:8~8:2、さらにより好ましくは3:7~7:3である。
【0038】
本発明の圧電材料用組成物は、上記の重合性単官能液晶化合物及び重合性2官能液晶化合物以外の材料(以下、他の材料という)を含有してもよい。他の材料としては、上記の共重合体以外のポリマーやエラストマー、溶媒、重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤、熱伝導性フィラー、導電性フィラー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
〔圧電材料〕
本発明は、式(I):
【化12】
[式(I)中、
R
1は、水素原子又はメチル基を表し;
S
paは、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
yaは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表し;
Xは、-CN、-OR
2、-F又は-OHを表す、ここでR
2は炭素数1~6のアルキル基を表す]
で表される重合性単官能液晶化合物に由来する構成単位と、式(II):
【化13】
[式(II)中、
R
1は、互いに独立に、水素原子又はメチル基を表し;
S
pbは、互いに独立に、2価の有機基であるスペーサー基を表し;
C
ybは、置換基を有していてもよい芳香族環及び脂肪族環からなる群から選択される2つ以上の環が、単結合もしくは連結基を介して結合された構造を含む、2価の有機基を表す]
で表される重合性2官能液晶化合物に由来する構成単位と
を少なくとも有する(メタ)アクリル系ポリマーを含む、圧電材料も提供する。本発明の圧電材料は、圧力に比例した電荷が現れる材料であり、圧電材料には、電圧を印加することによって形状が変化するような圧電材料も包含される。
【0040】
本発明の圧電材料に関し、上記式(I)及び式(II)の好ましい態様に関しては、本発明の圧電材料用組成物について述べた上記式(I)及び式(II)に関する記載、及び、好ましい態様が同様に当てはまる。
【0041】
圧電材料に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーの構造やその量、(メタ)アクリル系ポリマーを構成する構成単位の構造やその量は、例えば、赤外分光装置(IR)、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて分析することができるが、これに限定されない。原料の仕込み比から、これらの量を算出してもよい。
【0042】
本発明の圧電材料の製造方法は特に限定されないが、例えば本発明の圧電材料用組成物を基材上に塗布して、重合性液晶化合物を重合させることによって、延伸処理やポーリング処理を行わずとも、圧電特性を発現させることができる。重合性液晶化合物を重合させる方法は、乾燥、加熱、および光照射等の一般的な重合方法が適用できるが、製造性の観点から光照射による重合が好ましい。本発明の圧電材料の製造方法の具体的な一例としては、本発明の圧電材料用組成物を基板にスピンコーター等により塗布する工程、基板に塗布した圧電材料用組成物を乾燥および/または加熱することで圧電材料用組成物中の溶剤を除去する工程、光(代表的には紫外線)を照射して重合性液晶化合物を重合させる工程、必要に応じて基板から圧電材料を剥離する工程、を有する製造方法が挙げられる。
【0043】
例えば本発明の圧電材料が圧電膜である場合、本発明の圧電材料用組成物を基材表面上に塗布して圧電膜を製造してもよく、圧電膜を基材から剥がしてフィルムやシートとしてもよい。さらに、例えば本発明の圧電材料が圧電ワイヤーである場合、本発明の圧電材料用組成物を、銅線の様な導電性の線材、例えば導電性材料からなる単線に、公知の方法で塗布してよい。
【0044】
塗布された本発明の圧電材料用組成物を乾燥する方法は特に限定されず、大気圧条件下または減圧条件下等において、溶媒が蒸発するような温度で加熱して乾燥させてよい。例えば15~80℃の温度で乾燥を行うことが好ましい。
【0045】
本発明の圧電材料は、圧電膜、圧電ワイヤー、圧電ブロック(塊)であってよい。本発明の圧電材料は、上述したように、延伸処理等を行わなくとも一定の圧電特性を有するため、本発明の圧電材料用組成物を上述した基材等へ塗布することで基材の表面に圧電材料を形成する用途に特に好適である。すなわち、本発明の圧電材料の一態様は、延伸処理がなされていない態様であり、本発明の圧電材料の製造方法の一態様は、その製造工程において、圧電材料用組成物の硬化物等に対して延伸処理を行わない態様である。本発明の圧電材料が圧電膜(圧電フィルム)である場合、その厚さは特に限定されないが、例えば1μm~50μm、好ましくは3μm~30μmであってよい。
【0046】
本発明の圧電材料は、前記特定の(メタ)アクリル系ポリマーを含むことで、従来の圧電材料よりも、圧電特性を発揮できる温度が高い。従来の圧電材料は、通常、圧電特性を得るためには延伸処理を経ることが必要である。特に、高い圧電特性を有する圧電材料を得ようとすると、延伸処理で加える力を大きくしなければならず、この力が一定以上の力となると、圧電特性が発揮される温度の上限が低くなる傾向にある。一方で、本発明の圧電材料は、延伸を行わなくとも一定の圧電特性を有する。したがって、本発明の圧電材料のように、必ずしも延伸を経なくとも一定の圧電特性を有する圧電材料は、比較的高い圧電特性が必ずしも必要でなく、かつ、比較的高温の環境で使用される圧電材料として好適である。本発明の圧電材料が圧電特性を発揮できる温度の上限は、例えば150℃以下、120℃以下、110℃以下である。さらに、必ずしも比較的高い電圧を印加しなくとも分極処理が可能となるので、圧電材料の他の特性が低下するおそれも低い。
【0047】
本発明の圧電材料の圧電特性は、例えば圧電定数d33により表すことができる。本発明の圧電材料は、後述する実施例に記載する圧電定数d33の測定方法において有意に圧電定数d33が観測できるものであればよい。後述する実施例に記載する圧電定数d33の測定方法において有意に圧電定数d33が観測できるものであれば、圧電材料の用途によっては十分な圧電特性を有していると評価できるからである。一例としては、本発明の圧電材料の圧電定数d33は、その絶対値が、好ましくは0.1pC/N以上、より好ましくは0.3pC/N以上、さらに好ましくは0.5pC/N以上、さらにより好ましくは0.8pC/N以上である。
【0048】
本発明の好ましい一態様において、本発明の圧電材料のヘイズは、得られる圧電材料に透明性を付与しやすい観点から、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。ヘイズは、JIS K 7105に準拠し、ヘイズメーターを用いて測定することができる。本発明の圧電材料用組成物によれば、ヘイズ値が低く、透明性が高い圧電材料を製造しやすい。
【0049】
本発明の圧電材料は、タッチセンサー、加速度センサー、振動センサー、超音波センサー等のセンサーの部材、歪みゲージの部材、トランスデューサーの部材等として特に適している。
【実施例0050】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、特記しない限り、例中の「%」および「部」はそれぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0051】
〔圧電定数d33〕
各実施例および比較例に係る各圧電材料の膜の圧電定数d33を、圧電定数測定装置(リードテクノ製、品名:LPF-02)を用いて測定した。
具体的には、以下の手順により測定を行った。
(1)膜を測定子で挟持した。
(2)測定子が膜に加える荷重を1Nに設定し、静置した。
(3)測定子から膜に加える荷重を3N増加させ、測定子から膜に加える荷重が4Nとなるように設定した。
(4)4Nの力が加わった瞬間に発生した電荷量を測定した。
(5)測定子から膜に加える荷重を3N減少させ1Nとした。
(6)上記の(3)~(5)を4回行い、2~4回目に測定した電荷量の測定値の平均値を各実施例、比較例に係る膜の電荷量とし、この平均電荷量を測定荷重(4N)で除することにより、実施例及び比較例で得たフィルムのそれぞれの圧電定数d33を算出した。
【0052】
〔厚さ方向の位相差〕
各実施例および比較例で得たフィルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)を、偏光解析装置OPTIPRO(シンテック(株)製)にて、測定波長λ:550[nm]にて測定した。得られたレタデーション値を各フィルムの膜厚d(μm)で除して、単位厚さあたりの位相差(Rth/d)を求めた。位相差(Rth/d)は重合性液晶化合物の配向状態を示す指標であり、数値がマイナス側に大きいほど圧電材料中の液晶ポリマーの配向方向が圧電材料の加圧方向と同じ方向に揃っているといえ、圧電定数d33も高くなると期待される。
【0053】
〔へイズ〕
JIS K 7105に準拠し、市販のヘイズメーター(村上色彩技術研究所製、HM-150)を用いて測定を行った。
【0054】
〔実施例1〕
(圧電材料用組成物1の調製)
遮光された10mLガラス容器中に、式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1 0.260g、式(I-1)で表される重合性単官能液晶化合物1(BASF社製、品名:LC242) 0.056gおよびBYK-333(ビックケミー社製)0.003g、シクロペンタノン 0.330gを加え、そこに重合開始剤として、Omnirad907(BASF社製)0.009gおよびIrgacureOXE-01(BASF社製)0.006gを加え、溶解させて、重合開始剤を含有する混合物を得た。得られた混合物を、0.2umのメンブランフィルターにて濾過し、圧電材料用組成物1を得た。
【化14】
【化15】
【0055】
(フィルム1の作製)
圧電材料用組成物1を、ガラス基板に供給し、スピンコーターにより1秒間で500rpmまで加速後、この回転速度で10秒間保持し、1秒間かけて停止させることで、成膜した。得られた基板を60秒間静置した後、ホットプレート上で90℃にて180秒間乾燥させ、室温まで冷却して、塗布基板を得た。この塗布基板を紫外線で全面露光し硬化させた。露光量は500mJ/cm2程度とした。露光後、触針式プロファイリングシステム(Bruker社製、品名:Dektak150)を用いて、膜の厚みを測定したところ、8.2μmであった。得られた膜をガラス基板上から剥離し、フィルム1とした。
【0056】
〔実施例2〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1の量を0.199g、式(I-1)で表される重合性単官能液晶化合物1の量を0.102gに変更した以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物2を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.8μmのフィルム2を得た。
【0057】
〔実施例3〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1の量を0.144g、式(I-1)で表される重合性単官能液晶化合物1の量を0.165gに変更した以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物3を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚9.7μmのフィルム3を得た。
【0058】
〔実施例4〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1の量を0.142gとし、式(I-1)で表される重合性単官能液晶化合物1に代えて、式(I-2)で表される重合性単官能液晶化合物2を0.165g用いた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物4を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.2μmのフィルム4を得た。なお、式(I-2)で表される重合性単官能液晶化合物2は、Makromol.Chem.,183,2311-2321(1982)に記載の方法に準じて合成した。
【化16】
【0059】
〔実施例5〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1の量を0.134gとし、式(I-1)で表される重合性単官能液晶化合物1に代えて、式(I-3)で表される重合性単官能液晶化合物3を0.175g用いた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物5を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.2μmのフィルム5を得た。なお、式(I-3)で表される重合性単官能液晶化合物3は、「Makromol.Chem.,183,2311-2321(1982)」に記載の方法に準じて合成した。
【化17】
【0060】
〔実施例6〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1に代えて、式(II-2)で表される重合性2官能液晶化合物2を0.140g用い、重合性単官能液晶化合物1の量を0.170gに変更した以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物6を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.5μmのフィルム6を得た。なお、式(II-2)で表される重合性2官能液晶化合物2は、特開2013-253041号公報に記載の方法に準じて合成した。
【化18】
【0061】
〔実施例7〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1に代えて、式(II-3)で表される重合性2官能液晶化合物3を0.130g用い、重合性単官能液晶化合物1の量を0.180gに変更した以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物7を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚7.7μmのフィルム7を得た。なお、式(II-3)で表される重合性2官能液晶化合物3は、特開2013-253041号公報に記載の方法に準じて合成した。
【化19】
【0062】
〔実施例8〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1に代えて、式(II-2)で表される重合性2官能液晶化合物2を0.145gと、式(II-3)で表される重合性2官能液晶化合物2を0.100g用い、重合性単官能液晶化合物1に代えて、式(I-4)で表される重合性単官能液晶化合物4を0.123g用いた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物8を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.1μmのフィルム8を得た。なお、式(I-4)で表される重合性単官能液晶化合物4は、Macromolecules、第26巻、第6132~6134頁、1993年に記載の方法に準じて合成した。
【化20】
【0063】
〔実施例9〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1に代えて、式(II-2)で表される重合性2官能液晶化合物2を0.145gと、式(II-3)で表される重合性2官能液晶化合物2を0.100g用い、重合性単官能液晶化合物1に代えて、式(I-5)で表される重合性単官能液晶化合物5を0.123g用いた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物9を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.2μmのフィルム9を得た。なお、式(I-5)で表される重合性単官能液晶化合物5は、Macromolecules、第26巻、第6132~6134頁、1993年に記載の方法に準じて合成した。
【化21】
【0064】
〔実施例10〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1に代えて、式(II-2)で表される重合性2官能液晶化合物2を0.145gと、式(II-3)で表される重合性2官能液晶化合物3を0.100g用い、重合性単官能液晶化合物1に代えて、式(I-6)で表される重合性単官能液晶化合物6を0.123g用いた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物8を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.5μmのフィルム10を得た。なお、式(I-6)で表される重合性単官能液晶化合物6は、Makromol.Chem.,183,2311-2321(1982)に記載の方法に準じて合成した。
【化22】
【0065】
〔実施例11〕
式(II-1)で表される重合性2官能液晶化合物1に代えて、式(II-4)で表される重合性2官能液晶化合物4を0.137g用い、重合性単官能液晶化合物1の量を0.175gに変更した以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物11を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚6.7μmのフィルム11を得た。なお、式(II-4)で表される重合性2官能液晶化合物4は、Makromol.Chem.,183,2311-2321(1982)に記載の方法に準じて合成した。
【化23】
【0066】
〔実施例12〕
重合性2官能液晶化合物1の量を0.138gとし、重合性単官能液晶化合物1の量を0.165gとし、さらに1,6-ヘキサンジアクリレート(「HDA」とも称する)0.005gを加えた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物12を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚7.8μmのフィルム12を得た。
【0067】
〔実施例13〕
重合性2官能液晶化合物1の量を0.132gとし、重合性単官能液晶化合物1の量を0.170gとし、さらに1,6-ヘキサンジアクリレート 0.016gを加えた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物13を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚8.0μmのフィルム13を得た。
【0068】
〔実施例14〕
重合性2官能液晶化合物1の量を0.122gとし、重合性単官能液晶化合物1の量を0.170gとし、さらに1,6-ヘキサンジアクリレート 0.026gを加えた以外は実施例1と同様の方法で、圧電材料用組成物14を調製し、同様にしてフィルム化を行い、膜厚7.9μmのフィルム14を得た。
【0069】
〔比較例1〕
10mLガラス容器中で、単官能液晶1ポリマー 0.189gとシクロペンタノン 0.458gおよび重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(大塚化学(株)製、以下「AIBN」と称す)0.005gを添加した。AIBNを添加してから5.5時間フラスコ内の温度を80℃に維持した状態で撹拌し、35℃以下まで冷却した。その後、BYK-333 0.02gを加え、0.2umのメンブランフィルターにて濾過を行ったものを圧電材料用組成物15とした。
圧電材料用組成物15を用いたこと以外、実施例1のフィルム1の作製と同様の方法にて、膜厚5.7μmのフィルム15を得た。
【0070】
実施例及び比較例に記載の圧電材料用組成物の組成、及び、得られたフィルムについて、厚さ方向の位相差(Rth/d)、圧電定数(d
33)及びへイズを測定した。得られた結果を次の表1に示す。
【表1】
【0071】
本発明の実施例で得たフィルムは、特定の式(I)で表される重合性単官能液晶化合物と特定の式(II)で表される重合性2官能液晶化合物とを含む圧電材料用組成物から得たフィルムであり、有意に圧電定数d33が観測できたことから、延伸工程又はポーリング工程を行わずとも圧電特性が発現されていることが確認された。したがって、これらの圧電材料用組成物は、延伸工程又はポーリング工程を行わずとも圧電特性を発現可能な圧電材料を提供するに有効な組成物であることがわかる。また、ヘイズ値も低く、透明性に優れる圧電材料を提供可能であることも確認された。さらに、本発明の実施例で得たフィルムは位相差(Rth/d)の値がマイナス方向に大きく、圧電材料中の液晶ポリマーの配向方向が圧電材料の加圧方向と同じ方向に揃っている傾向があることが確認された。そのため、圧電特性を有すると共に、ヘイズが低く透明性が高いものであると考えられる。
なお、実施例8~11のフィルムについては、圧電定数d33の測定は行っていないが、位相差(Rth/d)の値から考えて、同様の圧電定数d33を示すと考えられる。
これに対し、本発明の比較例1で得たフィルムは、特定の式(II)で表される重合性2官能液晶化合物を含むものではない圧電材料用組成物から形成されたフィルムであり、単に製膜するのみでは圧電特性を発現しないことが確認された。
【0072】
また、市販のポリ-フッ化エチレン/トリフルオロエチレン共重合体(シグマアルドリッチ製 品番:Solvene 250 P400)を用いて、上記の実施例と同様にしてフィルムの作製を行い、ヘイズを測定したところ55%であり、十分な透明性を有するものではないことも確認された。